説明

滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材およびその施工法

【課題】 道路標示材の施工作業時における溶融用塗料の作業時の臭気を低減し得るとともに滑り抵抗性を向上し、同時に幼児や高齢者の転倒時の怪我を減少するようにした。
【解決手段】 溶融型道路標示材に、粒度300〜1500μmからなる滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻の細粒体を、10〜30%の混合比をもって混合したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融用塗料の作業時の臭気を低減し得るとともに滑り抵抗性に優れ、しかも幼児や高齢者の転倒時の怪我を減少し得るホタテ貝殻入り溶融型道路標示材およびその施工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融型道路標示材およびその施工法において、溶融型道路標示材にホタテ貝殻の細粒体、または粉粒体あるいは細粒体と粉粒体を混入することは、例えば実用新案登録第3100949号公報、特開2003−53144号公報などに開示されている。
【特許文献1】実用新案登録第3100949号公報
【特許文献2】特開2003−53144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来技術において、実用新案登録第3100949号公報に開示されたものは、塗料としての貯蔵安定性、貯蔵時における作業性、色の変化、臭いの悪臭化を防止することを目的としたものであり、また、特開2003−53144号公報に開示されたものは、屋外大気や室内空気に面する表面構成材や路面標示などを構成する路面塗装材に用いることにより、空気中に含まれる二酸化炭素などや有害物質を吸着分解せしめて、空気を浄化することを目的としたものであって、いずれも道路標示材の施工作業時における溶融用塗料の臭気を低減し得るとともに滑り抵抗性を向上し、同時に幼児や高齢者の転倒時の怪我を減少することを目的とするものではなく、その結果、上記目的を確実に果たすことができないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材は、上記課題を解決することを目的とし、溶融型道路標示材に、粒度300〜1500μmからなる滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻の細粒体を、10〜30%の混合比をもって混合したことを特徴とする。
【0005】
また、本発明の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材は、請求項1に記載の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材において、あらかじめ100〜200℃で加熱処理したホタテ貝殻を粒度300〜1500μmの細粒となし、これを溶融型道路標示材に対し、10〜30%の混合比をもって混合したことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示施工法は、請求項1乃至2に記載の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を用いる溶融型道路標示施工法において、前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を路面上に塗布しつつ、同時に前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材上に、ガラスビーズを散布することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示施工法は、請求項1乃至2に記載の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を用いる溶融型道路標示施工法において、前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を路面上に塗布しつつ、同時に前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材上に、ガラスビーズと共にホタテ貝殻を散布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材は、上記課題を解決することを目的とし、溶融型道路標示材に、粒度300〜1500μmからなる滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻の細粒体を、10〜30%の混合比をもって混合したものであるから、ホタテ貝殻の形状が石灰石の同径の物に比較し、棒状形状になり、滑り抵抗性を確保するのに適したものとなり、その結果、車両走行時の安全性を著しく向上し得るなどの効果がある。
【0009】
また、本発明に係る滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材は、請求項1に記載の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材において、あらかじめ100〜200℃で加熱処理したホタテ貝殻を粒度300〜1500μmの細粒となし、これを溶融型道路標示材に対し、10〜30%の混合比をもって混合したものであるから、溶融用塗料の臭気を低減し得るとともに滑り抵抗性を向上し、同時に幼児や高齢者の転倒時の怪我を減少し得るなどの効果がある。
【0010】
また、本発明に係る滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を用いる溶融型道路標示施工法は、請求項1乃至2に記載の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を用いる溶融型道路標示施工法において、前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を路面上に塗布しつつ、同時に前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材上に、ガラスビーズを散布するようにしたものであるから、施工作業を迅速に行うことができるとともに、滑り抵抗性能の保持ならびに光反射に基づく高度の視認性を維持することができるなどの効果がある。
【0011】
また、本発明に係る滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を用いる溶融型道路標示施工法は、請求項1乃至2に記載の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を用いる溶融型道路標示施工法において、前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を路面上に塗布しつつ、同時に前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材上に、ガラスビーズと共にホタテ貝殻を散布するようにしたものであるから、施工作業を迅速に行うことができるとともに、光反射に基づく高度の視認性を維持しながら、滑り抵抗性能の効果をより高めることができるなどの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、加熱処理および粒度を特定したホタテ貝殻の細粒体を溶融型道路標示材に混合することにより、溶融用塗料の作業時の臭気を低減し、滑り抵抗性能の保持と幼児や高齢者の転倒時の怪我を減少することができる溶融型道路標示材および施工法を提供する。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係るり抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材およびその施工法の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を路面に施工した状態の一例を示す拡大断面図である。図2は、本発明に係る粒度600〜1000μmのホタテ貝殻細粒体の一例を示す拡大平面図である。図3は、従来の粒度600〜1000μmの石灰石細粒体の一例を示す拡大平面図である。図4は、本発明のホタテ貝殻細粒体と従来の粒度600〜1000μmの石灰石細粒体のアスペクト比(K)の一例を示す関係図である。図5は、図4で示したホタテ貝殻細粒体と石灰石細粒体の滑り抵抗値の一例を示す比較表である。
【0014】
図1において、Aは抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材であって、周知の各材料、例えば石油樹脂、顔料、体質材、骨材、反射材、添加剤などからなる溶融型道路標示材1と、粒度300〜1500μmのホタテ貝殻細粒体2とで構成されてなるものである。3はガラスビーズ、4は路面、5は石灰石細粒体である。
【0015】
本発明は、以上説明したように、施工現場において、溶融型道路標示材Aに、粒度300〜1500μmからなる滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻細粒体2を10〜30%の混合比をもって混合したものを路面4に塗布しつつ、同時に、その上からガラスビーズ3を散布をして施工を行うものであるが、この場合は、本発明の粒度300〜1500μmからなる滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻の細粒体2は、図2に示すように従来の同一粒度の石灰石細粒体5に比較して全体的に角張った棒状形状となり、図4に示すような数値の異るアスペクト比(K)を有するものとなる。
なお、上記アスペクト比(K)の数値は以下の数式によって表される。

【0016】
また、上記アスペクト比(K)の異なるホタテ貝殻細粒体2と石灰石細粒体5の滑り抵抗を従来周知の英国式ポータブル・スキッドテスタ(滑り抵抗測定器)により測定した結果、図5に示すような数値を得た。これによると、従来の石灰石細粒体5の滑り抵抗性に比し、本発明に係るホタテ貝殻細粒体2の滑り抵抗性が遙かに優れていることが明瞭に理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
なお、本実施例においては、道路標示材に限らず、例えばイベント会場、駐車場などの特定地域における路面標示などに対しても適用できること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明に係る滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を路面に施工した状態の一例を示す拡大断面図である。
【図2】 本発明に係る粒度600〜1000μmのホタテ貝殻細粒体の一例を示す拡大平面図である。
【図3】 本発明に係る粒度600〜1000μmの石灰石細粒体の一例を示す拡大平面図である。
【図4】 本発明のホタテ貝殻細粒体と従来の石灰石細粒体のアスペクト比の一例を示す拡大関係図である。
【図5】 本発明のホタテ貝殻細粒体と石灰石細粒体の滑り抵抗値の一例を示す比較表である。
【符号の説明】
【0019】
A 滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材
1 溶融型道路標示材
2 滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻細粒体
3 ガラスビーズ
4 路面
5 石灰石細粒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融型道路標示材に、粒度300〜1500μmからなる滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻の細粒体を、10〜30%の混合比をもって混合したことを特徴とする滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材。
【請求項2】
請求項1に記載の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材において、あらかじめ100〜200℃で加熱処理したホタテ貝殻を粒度300〜1500μmの細粒となし、これを溶融型道路標示材に対し、10〜30%の混合比をもって混合したことを特徴とする滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材。
【請求項3】
請求項1乃至2に記載の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を用いる溶融型道路標示施工法において、前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を路面上に塗布しつつ、同時に前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材上に、ガラスビーズを散布することを特徴とする滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示施工法。
【請求項4】
請求項1乃至2に記載の滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を用いる溶融型道路標示施工法において、前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材を路面上に塗布しつつ、同時に前記滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示材上に、ガラスビーズと共にホタテ貝殻を散布することを特徴とする滑り抵抗性に優れたホタテ貝殻入り溶融型道路標示施工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−322290(P2006−322290A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171577(P2005−171577)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【出願人】(000190172)信号器材株式会社 (19)
【Fターム(参考)】