説明

滑水性被膜及びその製造方法

【課題】滑落性の大きい被覆を基材上に簡便、安価に製造する。
【解決手段】炭化水素ポリマーを含有し、且つ、下記に定義する滑落速度が0.5cm/秒より大きいことを特徴とする、基材上に形成された滑水性の大きな被膜。
滑落速度:温度20±5℃及び相対湿度50±10%の環境下に、水平面に対して15度傾斜して載置された試料に蒸留水を50μl滴下して水滴を形成し、水滴が90mm移動する時間を測定して算出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑水性の大きな被膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体表面をフッ素樹脂やシリコン樹脂などによってコーティングする等の化学的処理により撥水性を付与する技術はよく知られている。一方で、このような撥水性だけでなく、基材表面の水滴の滑落性に着目した技術も知られてきている。例えば、特許文献1には、親水性基(メタンスルホニル基)を有する親水性有機ケイ素化合物と疎水性の有機ケイ素化合物とを混合して用いることにより、特許文献2には、シリコーン化合物の基材表面への導入量を増加させることにより、水滴の滑落性を向上させた技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、フッ素樹脂等の撥水性のバインダー樹脂、撥水撥油剤等の分散剤、及びカーボンブラック等の低熱容量の粒子を含有する表面処理剤で基材表面を処理することにより、高滑水被膜が得られることが記載されている。
【特許文献1】特開2000−8026号公報
【特許文献2】特開2000−144056号公報
【特許文献3】特開2005−132919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の一方で、非フッ素系、非シリコーン系の材料で撥水性を付与する技術も提案されている。
特許文献4(特開2005−53104号公報)では、高分子系材料により3次元連続構造の網状骨格構造を有する超撥水表面を作成しているが、該表面はミクロな凹凸構造(μmオーダー)で超撥水性を達成しているため、耐久性が維持できない問題がある。また、滑水性という観点からも不十分である。
【0005】
特許文献5(特開2004‐155936号公報)は、二次接着性に優れた防水材用樹脂表面に関する。作成に必須なワックス状炭化水素が表面を被覆して下層の重合反応を生じさせることが特徴であるが、同様に表面形成に必須の成分として使用され、該ワックスとミセルを形成する、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの親水性官能基が表面に単一層として存在するため、滑水性という観点からは不十分である。
特許文献6(特開2004‐359834号公報)では、シリコーンおよびフッ素を含まない撥水性性基を有する(メタ)アクリレートを必須の共重合成分として含む共重合体を用い、耐汚染性表面を形成している。
【0006】
特許文献7(特開2005‐325338号公報)では、非フッ素系のポリマーとコロイダルシリカを用いて汚染防止表面を作成しているが、無機固形分を導入しているため、表面に凹凸が生じることから滑水性が不十分であり、またポットライフが短いという問題もある。
【0007】
本発明は、上記の従来技術に鑑み、従来の水滑落性表面の形成方法とは別異の、高滑落性被膜を形成する新規技術を提供するものである。本発明は更に、安価で汎用な素材を用いて、簡便に、優れた水滑落性表面を得る技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、炭化水素ポリマーを用いて基材上に表面形成することにより、極めて高滑水の被膜を得ることができることを見出し、本発明に到達したものである。すなわち、本発明の構成は下記の通りである。
(1) 炭化水素ポリマーを含有し、且つ、下記に定義する滑落速度が0.5cm/秒より大きいことを特徴とする、基材上に形成された滑水性被膜。
滑落速度:温度20±5℃及び相対湿度50±10%の環境下に、水平面に対して15度傾斜して載置された試料に蒸留水を50μl滴下して水滴を形成し、水滴が90mm移動する時間を測定して算出した。
【0009】
(2) 該炭化水素ポリマーがポリスチレンである上記(1)に記載の滑水性の大きな被膜。
(3) 炭化水素ポリマーを全ポリマー中に対し50質量%以上含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の滑水性被膜。
(4) 親水性ポリマーを、炭化水素ポリマーに対して15質量%以下含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の滑水性被膜。
【0010】
(5) 該被膜の表面粗さRaが100nm以下であることを特徴とする上記(1)記載の滑水性被膜。
(6) 炭化水素ポリマー及び溶剤を含有する塗布組成物を基材上に塗布して得た上記(1)〜(5)のいずれかに記載の滑水性被膜。
(7) ポリスチレン及び溶剤を含有する塗布組成物を基材上に塗布して得た上記(1)〜(5)のいずれかに記載の滑水性被膜。
(8) 該溶剤が芳香族系溶剤である上記(6)または(7)記載の滑水性被膜。
(9) ポリスチレン及び溶剤を含有する塗布組成物を基材上に塗布することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の滑水性被膜の製造方法。
【0011】
本発明の滑落速度は「温度20±5℃及び相対湿度50±10%の環境下に、水平面に対して15度傾斜して載置された試料に蒸留水を50μl滴下して水滴を形成し、水滴が90mm移動する時間を測定して、(滑落速度)=(移動距離/時間)にて算出した。本発明の滑水の大きい被膜は、上記滑落速度が0.5cm/秒以上であり、好ましくは0.7cm/秒以上、より好ましくは1.0cm/秒以上である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、滑落速度が0.5cm/秒以上の高滑水性の被膜を簡便かつ安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の滑水性の大きい被膜は、基材上に形成される。基材は、特に限定されず、無機物でも高分子などの有機物質からなる基材のいずれも用いることが出来る。無機物質からなる基材としては、ガラス、シリコン、アルミ、ステンレス、および金、銀、亜鉛、銅等などの金属、およびITO、酸化錫、アルミナ、酸化チタン、などの金属酸化物を表面に設けた基材などを使用することが出来る。
【0014】
また高分子基材としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレー卜、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂からなる基材を使用することができる。
【0015】
これらの高分子基材は、基材上に設けられる滑水性の大きい被膜との密着性を向上するために、コロナ処理、プラズマ処理などの前処理や、表面に微細な凹凸を設けた基材であってもよい。基材の形状は特に限定されるものではない。
【0016】
本発明の高滑水性被膜は、炭化水素ポリマーを含有することを特徴とする。
炭化水素ポリマーは、炭素と水素の質量含有率が70%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましい。たとえばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンあるいはこれらの混合物が挙げられる。
中でも、芳香族炭化水素を含有するポリマーが好ましく、ポリスチレン系ポリマーが特に好ましい。
ポリマーの分子量は1000から1000000が好ましく、溶剤への溶解性および膜の形成の観点から分子量は5000から500000がより好ましい。
【0017】
本発明の被膜中には、上記炭化水素ポリマー以外の他のポリマーを、膜の強度、その他の物性改良のために含有していてもよい。ただし、良好な滑水表面を得るためには、炭化水素ポリマーを被膜の全ポリマー中50質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0018】
また、上記炭化水素ポリマーの他に、親水性ポリマーを炭化水素ポリマーに対して15質量%以下添加することにより、顕著に滑水性を向上させることが可能である。ここで本発明における親水性ポリマーとは、上記炭化水素ポリマーと比較して相対的に接触角の小さいポリマーを指す。
親水性ポリマーとしては、具体的に、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメタクリル酸などのポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ乳酸、PETなどのポリエステル類、あるいはポリイミド、ポリスルホン、ポリアミド、ポリケトンなどのポリマーが好ましい。
これらの親水性ポリマーは、上記炭化水素ポリマーに対して、15質量%以下添加することがより好ましく、10質量%〜0.01質量%が特に好ましい。親水性ポリマーの添加量を上記範囲とすることで、炭化水素ポリマーの性状を維持したまま滑水性の効果が得られる。
親水性ポリマーの分子量は溶解性の観点から2500〜50000が好ましく、5000〜30000がより好ましい。
【0019】
また、膜の物性改良のために、ポリマー以外の低分子化合物を添加してもよく、例えば4−ブチル−2−メチルフェノール、メチレンビス(2,4-ジメチルフェノール)などのアルキルフェノール化合物、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどのアミド化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル化合物、ジブチルチオエーテル、フェニルオクチルチオエーテルなどのチオエーテル化合物等が挙げられる。
これらの低分子化合物は滑水性を損なうことなく膜の物性を改良するためには固形分濃度として1重量%以下の濃度で添加することが好ましい。
【0020】
本発明の滑水の大きい被膜は、表面に撥水処理がなされた微小な凹凸層であることが好ましく、微小な凹凸層の平均表面粗さRaが100nm以下であることが好ましい。
ここで、「平均粗さRa」は、通常の表面粗さ計に標準装備されているパラメータであり、通常の表面粗さ計によって容易に測定することができる。「平均粗さRa」というのは、一般的に、微小凸凹の低部から頂部までの距離の標準偏差をとった場合の中線の高さを意味する。光の散乱は通常、波長の1/10〜1/5程度の大きさから顕著になり、可視光の波長が主には400〜800nm程度であることから、この波長域で透明性を確保するためには、物質の表面の平均粗さ(Ra)を100nm以下に抑えることが好ましい。より好ましくは50nm以下である。
【0021】
基材上に、炭化水素ポリマーを含有する滑水の大きい被膜を形成する方法は特に限定的でなく、例えば、塗布、蒸着、貼付、圧着などが挙げられる。好ましくは、炭化水素ポリマーを含有する塗布溶液を調製し、基材上に塗布乾燥する方法である。
【0022】
塗布方法としては、浸漬引き上げ、スプレー、スピンコート、カーテンコート等既知の塗布手段を用いることができる。
塗布溶液は、塗布方法などの必要に応じて有機溶媒などで希釈して用いることができる。使用する有機溶媒としては、塗布溶液中に含まれる化合物が均一に溶解するものであれば単独で用いてもあるいは2種以上混合して用いても、いずれの方法でもよい。例えばメタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール等の一級アルコール類、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどの二級アルコール、ターシャリーブチルアルコールなどの三級アルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジタ−シャリーブチルエーテル等のエ一テル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族系溶剤などの一般的な溶媒が挙げられる。
【0023】
また、基材との密着性向上のために、前記炭化水素ポリマーを含有する高滑水被膜を形成する前に、基材上の不純物を取り除き、基材表面の汚れを除去することが好ましい。除去方法としては、特に限定されず、ガスによる吹きつけ、アルカリ洗浄、UV/オゾン処理、プラズマ処理等を挙げることができる。中でも、十分な効果が得られ、操作が簡便な点から、アルカリ洗浄、UV/オゾン処理、プラズマ処理が好ましい。
【0024】
本発明の滑水性の大きい被膜は、微小な水滴を容易に滑落させることができるので、特に、着氷や着雪により損害が発生したり、機能が低下したり、人に傷害を及ぼす恐れのある器具、装置、設備、建造物、及びそれらの部分等に有効に適用することができる。具体的には、各種アンテナ、通信ケーブル等の屋外電気通信機器類、船舶や列車などの窓ガラス、デッキ、ステップ、外装等の輸送車両物、屋根瓦、タイル、窓ガラス等の建造物類、その他ソーラーパネルカバー等を挙げることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例により例証するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1
10cm角(厚さ0.7mm)の白板ガラスをUVオゾンクリーナー(日本レーザー電子株式会社製、NL−UV253)に5分間曝した。1質量%のポリスチレンのトルエン溶液をスピンコート(700rpm20秒)により塗布した後、室温で10分間、100℃で20分間乾燥した。
この基板をAFMにて観察したところ、ポリスチレンからなる微小凹凸が一様に分布した表面となっており、この微小凹凸の高さを測定したところ、Ra値で約10nmであった。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下した。反対の端に転落するまでの転落時間を5回測定したところ3.0秒であった。
【0027】
実施例2
実施例1の1質量%のポリスチレンのトルエン溶液のかわりに1質量%(ポリスチレン/ポリメチルメタクリレート=3:1質量比)のトルエン溶液を用いた以外は実施例1の方法により基板を作成した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下した。反対の端に転落するまでの転落時間を5回測定したところ3.2秒であった。
【0028】
実施例3
実施例1の1質量%のポリスチレンのトルエン溶液のかわりに1質量%(ポリスチレン/ポリメチルメタクリレート=1:1質量比)のトルエン溶液を用いた以外は実施例1の方法により基板を作成した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下した。反対の端に転落するまでの転落時間を5回測定したところ3.2秒であった。
【0029】
実施例4
実施例1のガラス基板のかわりにシリコン基板を用いた以外は実施例1の方法により基板を作成した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下した。反対の端に転落するまでの転落時間を5回測定したところ3.0秒であった。
【0030】
比較例1
実施例1の1質量%のポリスチレンのトルエン溶液のかわりに1質量%ポリメチルメタクリレートのメチルエチルケトン溶液を用いた以外は実施例1の方法により基板を作成した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下したところ途中で止まってしまい反対の端まで転落しなかった。
【0031】
比較例2
実施例1の1質量%のポリスチレンのトルエン溶液のかわりに1質量%(ポリスチレン/ポリメチルメタクリレート=1:3質量比)のトルエン溶液を用いた以外は実施例1の方法により基板を作成した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下したところ途中で止まってしまい反対の端まで転落しなかった。
比較例3
ポリテトラフルオロエチレンのシートを5cm角に切り出し、アルカリ洗浄した後100℃で2分間乾燥させた。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下したところ途中で止まってしまい反対の端まで転落しなかった。
【0032】
比較例4
SILGARD184(東レダウコーニング)で作成した1.0mm厚のシリコンポリマーのシートを5cm角に切り出し、ガラス基板上に接着させた。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下したところ途中で止まってしまい反対の端まで転落しなかった。
【0033】
実施例5
10cm角(厚さ0.7mm)の白板ガラスをUVオゾンクリーナー(日本レーザー電子株式会社製、NL−UV253)に5分間曝した。1質量%の(ポリメチルメタクリレート/ポリスチレン=1/8(質量比))のトルエン溶液をスピンコート(3000rpm30秒)により塗布した後、室温で10分間、100℃で30分間乾燥した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下した。反対の端に転落するまでの転落時間を5回測定したところ3.0秒であった。
【0034】
実施例6
10cm角(厚さ0.7mm)の白板ガラスをUVオゾンクリーナー(日本レーザー電子株式会社製、NL−UV253)に5分間曝した。1質量%の(ポリメチルメタクリレート/ポリスチレン=1/128(質量比))のトルエン溶液をスピンコート(3000rpm30秒)により塗布した後、室温で10分間、100℃で30分間乾燥した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下した。反対の端に転落するまでの転落時間を5回測定したところ3.2秒であった。
【0035】
実施例7
10cm角(厚さ0.7mm)の白板ガラスをUVオゾンクリーナー(日本レーザー電子株式会社製、NL−UV253)に5分間曝した。1質量%の(ポリメチルメタクリレート/ポリスチレン=1/2000(質量比))のトルエン溶液をスピンコート(3000rpm30秒)により塗布した後、室温で10分間、100℃で30分間乾燥した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下した。反対の端に転落するまでの転落時間を5回測定したところ3.1秒であった。
【0036】
実施例8
10cm角(厚さ0.7mm)の白板ガラスをUVオゾンクリーナー(日本レーザー電子株式会社製、NL−UV253)に5分間曝した。1質量%の(ポリメチルメタクリレート/ポリスチレン=1/33000(質量比))のトルエン溶液をスピンコート(3000rpm30秒)により塗布した後、室温で10分間、100℃で30分間乾燥した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下した。反対の端に転落するまでの転落時間を5回測定したところ3.3秒であった。
【0037】
比較例5
10cm角(厚さ0.7mm)の白板ガラスをUVオゾンクリーナー(日本レーザー電子株式会社製、NL−UV253)に5分間曝した。1質量%のポリスチレンのトルエン溶液をスピンコート(3000rpm30秒)により塗布した後、室温で10分間、100℃で30分間乾燥した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下した。反対の端に転落するまでの転落時間を5回測定したところ反対側の端まで転落しなかった。
【0038】
比較例6
10cm角(厚さ0.7mm)の白板ガラスをUVオゾンクリーナー(日本レーザー電子株式会社製、NL−UV253)に5分間曝した。1質量%の(ポリメチルメタクリレート/ポリスチレン=8/1(質量比))のトルエン溶液をスピンコート(3000rpm30秒)により塗布した後、室温で10分間、100℃で30分間乾燥した。
作成した基板を15°に傾け50μlの水を1cmの高さから基板の上方の端に滴下したところ液滴は基板上に落下の後も転落しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素ポリマーを含有し、且つ、下記に定義する滑落速度が0.5cm/秒より大きいことを特徴とする、基材上に形成された滑水性被膜。
滑落速度:温度20±5℃及び相対湿度50±10%の環境下に、水平面に対して15度傾斜して載置された試料に蒸留水を50μl滴下して水滴を形成し、水滴が90mm移動する時間を測定して算出した。
【請求項2】
該炭化水素ポリマーがポリスチレンである請求項1記載の滑水性被膜。
【請求項3】
炭化水素ポリマーを全ポリマー中に対し50質量%以上含有することを特徴とする請求項1または2記載の滑水性被膜。
【請求項4】
親水性ポリマーを、炭化水素ポリマーに対して15質量%以下含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の滑水性被膜。
【請求項5】
該被膜の表面粗さRaが100nm以下であることを特徴とする請求項1記載の滑水性被膜。
【請求項6】
炭化水素ポリマー及び溶剤を含有する塗布組成物を基材上に塗布して得た請求項1〜5のいずれかに記載の滑水性被膜。
【請求項7】
ポリスチレン及び溶剤を含有する塗布組成物を基材上に塗布して得た請求項1〜5のいずれかに記載の滑水性被膜。
【請求項8】
該溶剤が芳香族系溶剤である請求項6または7記載の滑水性被膜。
【請求項9】
ポリスチレン及び溶剤を含有する塗布組成物を基材上に塗布することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の滑水性被膜の製造方法。

【公開番号】特開2007−291314(P2007−291314A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207997(P2006−207997)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】