説明

漏水箇所検知方法

【課題】簡易な構成及び手法によって漏水箇所を具体的に検知することのできる漏水箇所検知方法を提供する。
【解決手段】配管に沿って設置された導線の電流を測定して配管の漏水箇所を検知する漏水箇所検知システムにおいて、任意に設定した電流測定用箇所で漏水箇所検知回路の電流を測定する電流測定工程を備え、電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を下回った場合には、電源と測定した電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断し、電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を上回った場合には、測定した電流測定用箇所と電気抵抗との間に漏水箇所が存在すると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏水箇所検知方法、特に、配管からの漏水を検知する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、大型施設の空調機器用の配管の損傷等によって漏水が発生した場合に、かかる配管の損傷等をそのまま放置すれば、損傷が拡大して漏水が拡大することとなり、配管の周辺環境に影響を及ぼすこととなる。従って、配管に漏水の原因となる損傷等がある場合は、かかる損傷等が拡大する前に、早期に修繕されることが望ましく、そのためには、漏水を早期に検知する必要がある。そこで、配管からの漏水を検知するための技術が、種々提案されている。
【0003】
一例として、浸水により絶縁性が低下する濃色に着色された第1被覆部材で被覆された導線を一端側で電気抵抗を介して折り返し、他端側に電源を有する空調制御盤を配して閉回路を形成し、往路側導線と復路側導線とを密接させて往路側導線と復路側導線とを第1被覆部材よりも淡色に着色された第2被覆部材で被覆して所定長さ伸長させた漏水箇所検知回路を備え、この漏水箇所検知回路を配管の伸張方向に沿って配管の全域に張設させた漏水箇所検知システムを用いて、漏水箇所を検知する手法が知られている。
【0004】
これによると、配管からの漏水によって漏水箇所検知回路の導線が浸水すると、空調制御盤に設けられた警報装置によって漏水警報が上がり、監視員が、漏水警報が上がった漏水箇所検知回路が配置された配管まで赴き、漏水箇所を目視調査することとなる。漏水箇所検知回路の導線は、浸水すると、濃色で着色された第1被覆部材が淡色で着色された第2被覆部材を透過して、導線の他の部分に対して変色するので、かかる変色部分が監視員による目視調査によって検知されて、漏水箇所が特定される。
【0005】
他の例として、特許文献1には、漏水に接触すると、流れる電流の合計値が変化するセンサ線を備えた漏水検知システムが開示されている。この特許文献1で開示される漏水検知システムについて、図8を用いて説明する。
【0006】
図8は、漏水検知システム100の概略を説明する図である。図示のように、漏水検知システム100は、液体の接触により通電状態が変化する複数のセンサ線102−1〜102−n及びこのセンサ線102−1〜102−nによって接続される遅延スイッチ104−1〜104−nを備え、センサ線102−1〜102−nの一端側に、電圧源106及び図示しない通信部を有する検出装置108が順次接続される。この検出装置108の通信部は、図示しないモニタ等の外部機器に接続される。
【0007】
センサ線102−1〜102−nには、絶縁被覆の一部が除去された図示しない非絶縁部分が複数形成されている。非絶縁部分に液体が接触すると、センサ線102−1〜102−n間において電圧降下が発生するとともに、センサ線102−1〜102−nのうち非絶縁部分が存在する部分のセンサ線102−1〜102−n間に短絡部分が発生して、センサ線102−1〜102−n間に流れる電流量が変化する。
【0008】
漏水検知システム100に電圧が印加されると、センサ線102−2への電圧の印加が、最初のセンサ線102−1への電圧の印加から所定時間経過後に印加されるように遅延スイッチ104−1によって制御される。同様に、センサ線102−3〜102〜nへの電圧の印加が、センサ線102−2〜102−nへの電圧の印加から所定時間経過後に印加されるように遅延スイッチ104−2〜104−nによって制御される。そして、漏水検知システム100に流れる電流値が所定の閾値を超えて変化した場合に、検出装置108によって漏水が発生したと判断される。検出装置108では、電流値が閾値を超えて変化したと判断された時点において、遅延スイッチ104−1〜104−nのうちいずれの遅延スイッチが入力されてセンサ線102−1〜102−nのうちいずれのセンサ線にまで電圧が印加されたときに漏水が発生したかが判明するので、漏水が発生したセンサ線を特定することができる。
【0009】
そして、漏水検知システム100の各遅延スイッチ104−1〜104−nを電流が流れたときの経過時間及びそのときの電流値が、検出装置108の通信部からモニタ等の外部機器に送信されて表示される。従って、監視員がモニタ等によって漏水を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−198487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に、大型施設においては、空調機器用の配管はバックヤード(例えば機械室)等に設けられることが多く、比較的暗所でかつ狭隘な空間であることが多い。従って、上記した漏水箇所検知回路の導線の変色を目視で確認する手法によると、漏水箇所検知回路の導線の変色を目視で確認することが困難であるか、あるいは変色を確認できないことが懸念される。
【0012】
上記特許文献1に開示された漏水検知システム100によると、いずれのセンサ線において漏水が発生したことを検知して漏水した範囲をある程度絞り込むことは可能となるものの、システムの構成が複雑であり、例えば、大型施設の空調機器等の配管に漏水検知システム100を設置する際にはシステム構築のためのコストが嵩んで設置コストが増大するとともに、部材点数の増加による故障の可能性の増大が懸念される。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成及び手法によって漏水箇所を具体的に検知することのできる漏水箇所検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明による漏水箇所検知方法は、浸水により絶縁性が低下する被覆部材で被覆された導線を一端側で電気抵抗を介して折り返し、他端側に電源を配して閉回路を形成し、往路側導線と復路側導線とを密接させて所定長さ伸長させた漏水箇所検知回路を備え、該漏水箇所検知回路を前記配管の検知対象範囲にその伸張方向に沿って、かつ近接させて配置した漏水箇所検知システムを用いて前記配管の漏水箇所を検知する漏水箇所検知方法において、任意に設定した電流測定用箇所で前記漏水箇所検知回路の電流を測定する電流測定工程を備え、該電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を下回った場合には、前記電源と前記測定した電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断し、前記電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を上回った場合には、前記測定した電流測定用箇所と前記電気抵抗との間に漏水箇所が存在すると判断することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、絶縁部材で被覆された導線及び電気抵抗を用いて閉回路を形成するという簡易な構成によって形成される漏水箇所検知回路を用いて漏水箇所検知方法を実行することができるので、製造コスト及び稼動コストを抑制したうえで、電流を測定する簡易な手法で配管の漏水箇所を短時間で検知することができる。その結果、配管の損傷等による漏水を早期に検知することができ、配管の修繕や交換を速やかに行うことが可能となるので、漏水による配管の周辺環境への影響を抑制することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明による漏水箇所検知方法は、請求項1に記載の漏水箇所検知方法において、前記電流測定工程において、第1回目の電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を下回った場合には、前記電流値が前記所定電流値を上回るまで、前記電流測定用箇所を前記電源側に順次移行して電流測定工程を行い、測定した電流値が前記所定電流値を上回ったときに、当該電流測定用箇所と前記所定電流値を下回った最後の電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断し、前記第1回目の電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を上回った場合には、前記電流値が前記所定電流値を下回るまで、前記電流測定用箇所を前記電気抵抗側に順次移行して電流測定工程を行い、測定した電流値が前記所定電流値を下回ったときに、当該電流測定用箇所と前記所定電流値を上回った最後の電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断する、ことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、請求項1または2に記載の漏水箇所検知システムの漏水箇所検知回路の任意の箇所に電流測定用箇所を形成して、この電流測定用箇所で電流値を測定することができる。電流値が所定電流値と同等となった場合、例えば測定された電流値が0Aであれば、電源と0Aを測定した電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断することができるので、漏水箇所を具体的に特定すべく、電流値が所定電流値を上回るまで電流測定用箇所を電源側に順次移行させる。移行した電流測定用箇所で測定された電流値が所定電流値を上回った場合、例えば測定された電流値が1.5Aであれば、1.5Aを測定した最後の電流測定用箇所と0Aを測定した電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断できる。
【0018】
一方、電流値が所定電流値を上回った場合、例えば測定された電流値が1.5Aであれば、電源と1.5Aを測定した電流測定用箇所との間には漏水箇所が存在しないと判断することができるので、漏水箇所を検知すべく、電流値が所定電流値と同等となるまで電流測定用箇所を電気抵抗側に順次移行させる。移行した電流測定用箇所で測定された電流値が所定電流値と同等となった場合、例えば測定された電流値が0Aであれば、0Aを測定した最後の電流測定用箇所と1.5Aを測定した電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断できる。
【0019】
従って、電流測定用箇所を順次移行させて電流値を測定する電流測定工程において精細に電流値を測定することができるので、電流値を測定するという簡易な手法によって配管の漏水箇所を短時間で検知することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明による漏水箇所検知方法は、請求項1または2に記載の漏水箇所検知方法において、前記漏水箇所検知回路の電圧を測定する電圧測定工程を備え、前記測定した電圧が、所定の電圧値を下回ったときに前記電流測定工程に移行して漏水箇所の判断を行うことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、漏水箇所検知回路の電圧を測定する電圧測定工程を備えることによって、回路の電圧を測定することができる。電圧降下が生じている場合は、配管に漏水が発生して漏水箇所検知回路に浸水していると判断することができるので、より短時間で漏水箇所を検知することができる。従って、請求項1または2の発明の目的を効果的に達成することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、絶縁部材で被覆された導線及び電気抵抗を用いて閉回路を形成するという簡易な構成によって形成される漏水箇所検知回路を用いて漏水箇所検知方法を実行することができるので、製造コスト及び稼動コストを抑制したうえで、電流を測定する簡易な手法で配管の漏水箇所を短時間で検知することができる。その結果、配管の損傷等による漏水を早期に検知することができ、配管の修繕や交換を速やかに行うことが可能となるので、漏水による配管の周辺環境への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】空調機器の空調制御系統及び本発明の実施の形態に係る漏水箇所検知方法が適用される漏水箇所検知回路網の概略を説明する図である。
【図2】同じく、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法によって漏水が検知される大型施設の空調機器用の配管の概略を説明する図である。
【図3】同じく、本実施の形態に係る漏水箇所検知帯の概略を説明する図である。
【図4】同じく、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法の概略を説明するフローチャートである。
【図5】同じく、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法の工程の概略を説明する図である。
【図6】同じく、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法の電流測定工程の概略を説明する図である。
【図7】他の実施の形態に係る漏水箇所検知方法の概略を説明する図である。
【図8】従来の漏水箇所検知システムの概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について、図1〜図6に基づいて説明する。なお、本実施の形態において、漏水箇所検知方法が適用される設備が、大型施設(例えば総合病院)の空調機器用の配管である場合を例として説明する。
【0025】
まず、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法によって漏水箇所が検知される大型施設の空調機器の空調制御系統及びこの空調制御系統に従って配設される配管の概略について説明する。
【0026】
図1は、空調機器の空調制御系統110及び本実施の形態に係る漏水箇所検知システム1及びこのシステムに適用される漏水箇所検知方法の概略を説明する図であり、図2(a)は、本実施の形態における漏水箇所検知システム1及びこのシステムに適用される漏水箇所検知方法によって漏水箇所が検知される空調機器用の配管の概略を説明する図であり、図2(b)は、図2(a)のII−II線断面図である。
【0027】
図1で示すように、空調機器の空調制御系統110は、図示しない空調機器によって空調制御される経路に従って配管100が配設されて構成され、例えば、空調制御系統110−1によって大型施設の1フロアの空調制御がなされる場合は、この空調制御系統110−1に従って配管100が配設されるので、各フロアの一の空調制御系統110に従って配管100が配設される。
【0028】
図2(a)及び図2(b)で示すように、配管100は、保温材100cによって被覆された本管100a及び本管100aに連結される分管100bによって構成される。かかる配管100が、図示しない大型施設の建物内における空調機器の空調制御系統110ごとに配設される。そして、配管100の下部には、縛帯102によって導線となる漏水箇所検知帯20が張設されて、空調機器の空調制御系統110ごとに漏水箇所検知回路10−1〜10−nが形成され、これら漏水箇所検知回路10−1〜10−nによって漏水箇所検知システム1が構成される。
【0029】
漏水箇所検知回路10−1〜10−nは、電源となる空調制御盤30、空調制御盤30に接続された漏水箇所検知帯20、漏水箇所検知帯20の端部に接続された抵抗40を備える。空調制御盤30から電圧Vが印加されると、抵抗40を介して漏水箇所検知帯20に電流Iが流れる。本実施の形態では、空調制御盤30から印加される電圧が9V、抵抗40の抵抗値が20Ωであり、漏水箇所検知帯20に流れる電流が0.45Aである場合を例として説明する。
【0030】
漏水箇所検知回路10−1は、本実施の形態では、例えば、大型施設の1階に配設される空調制御系統110−1に形成され、漏水箇所検知回路10−2及び10−3は大型施設の2階及び3階にそれぞれ配設される空調制御系統110−2及び110−3に形成され、漏水箇所検知回路10−nは大型施設のn階に配設される空調制御系統110−nに形成される。
【0031】
図3は、本実施の形態に係る漏水箇所検知帯20の概略を説明する図であり、図3(a)は、図2の矢線A部を拡大して一部破断させた図、図3(b)は、図3(a)のIII−III線断面図である。図示のように、漏水箇所検知帯20は、被覆部材となる第1被覆布26で被覆された2本の導線22a及び22bが互いに捩られて、これらの導線22a及び22bが更に第2被覆布28で被覆されて形成される。なお、本実施の形態では、第1被覆布26は赤色に着色され、第2被覆布28は白色に着色されている場合を想定して説明する。
【0032】
次に、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法について説明する。
【0033】
ここで再び、図1を参照して説明する。図示のように、大型施設のn階に配設された空調制御系統110−nの配管100に漏水が発生すると、この空調制御系統110−nに形成された漏水箇所検知回路10−nの漏水箇所検知帯20に水滴が付着して、検知対象領域Lが生じる。検知対象領域Lによって、漏水箇所検知回路10−nは検知対象領域Lにおいて短絡する。この検知対象領域Lを検知すべく、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法が適用される。
【0034】
図4は、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法の工程を示すフローチャートであり、図5は、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法の工程の概略を説明する図である。なお、図5(a)〜(d)において、漏水箇所検知回路10−nは、図面の視認性の向上のため、図1における漏水箇所検知回路10−nに対して縮小して記載している。図示のように、漏水箇所検知方法は、電圧測定工程S1、電流測定用箇所形成工程S2を備えるとともに、電流測定工程を構成する電流測定第1工程S3、電流測定第2工程S4及び測定幅縮小工程S5を備える。
【0035】
まず、大型施設において定期的に行われる空調機器における配管100の漏水確認作業において、空調制御系統110−1〜110−nごとに形成された漏水箇所検知回路10−1〜10−nに印加される電圧Vをそれぞれ測定する(電圧測定工程S1)。図5(a)で示すように、電圧Vの測定は、計測端子52a及び52bの先端部分が針状に形成された電圧測定器となるテスタ50を用いて実行する。漏水箇所検知回路10−1〜10−nにおける漏水箇所検知帯20の導線22aの任意の箇所に計測端子52aを刺し込むとともに、導線22bの任意の箇所に計測端子52bを刺し込んで、テスタ50に表示される電圧値を読み取る。
【0036】
漏水が発生していない空調制御系統110−1〜110−3における漏水箇所検知回路10−1〜10−3の電圧値は、空調制御回路30で印加された9Vのままである一方、漏水によって検知対象領域Lが生じた漏水箇所検知回路10−nの電圧値は、本実施の形態では4V以下に降下する。電圧降下の生じていない漏水箇所検知回路10−1〜10−3が形成された空調制御系統110−1〜110−3においては漏水が発生していないと判断され、電圧降下が生じた漏水箇所検知回路10−nが形成された空調制御系統110−nの配管100において漏水が発生していると判断される。
【0037】
漏水が発生している空調制御系統110−nが特定された後、電流測定用箇所形成工程S2に移行する。図5(b)で示すように、漏水箇所検知回路10−nの漏水箇所検知帯20の任意の箇所において第2絶縁布28を破断し、第1絶縁布26に被覆された状態の導線22aと導線22bとを互いに分離して、第1測定箇所24aを形成する。
【0038】
電流測定用箇所形成工程S2において電流測定用箇所を形成した後、電流測定工程に移行する。電流測定工程では、電流測定用箇所で測定した電流値が所定の電流値を下回るか、あるいは所定の電流値を上回るかによって、漏水箇所の検知を行う。なお、本実施の形態では、所定の電流値は0Aである場合を例として説明するが、0Aに漸近する値(例えば0.01A)であってもよい。
【0039】
電流測定第1工程S3では、同じく図5(b)で示すように、形成された第1測定箇所24aにおいて、磁界を測定して電流を測定するクランプメータ60のトランスコア62を導線22aまたは導線22bのいずれか一方にセットして、電流Iを測定する。なお、クランプメータ60は公知技術を適用したものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0040】
漏水箇所検知回路10−nが検知対象領域Lにおいて短絡することによって、電圧Vを漏水箇所検知帯20に印加する空調制御盤30と短絡地点である検知対象領域Lとの間で漏水箇所検知小回路14−1が形成されて、かかる漏水箇所検知小回路14−1内で、導線22a及び22bの導線抵抗、検知対象領域Lの抵抗に応じた電流Iが流れる。一方で、漏水箇所検知回路10内で漏水箇所検知小回路14−1と重複していない部分には、検知対象領域Lにおける短絡によって、電流Iは流れない。第1測定箇所24aはこの漏水箇所検知小回路14−1内に形成されているので、クランプメータ60によって漏水箇所検知小回路14−1内に流れる電流Iの電流値が測定される。従って、空調制御盤30と第1測定箇所24aとの間には、検知対象領域Lすなわち配管100の漏水が発生していないと判断される。
【0041】
第1測定箇所24aにおいて電流Iが測定された後、電流測定第2工程S4に移行する。空調制御盤30と第1測定箇所24aとの間には、配管100の漏水が発生していないと判断されたので、図5(c)で示すように、電流測定第2工程S4では、第1測定箇所24aに対して空調制御盤30から更に離間した第2測定箇所24bにおいて電流Iの電流値が測定される。第2測定箇所24bの形成は第1測定箇所24aの形成と同様の手法によって形成され、また、第2測定箇所24bにおける電流値の測定も第1測定箇所24aにおける電流値の測定と同様の手法によって測定される。
【0042】
第2測定箇所24bは、漏水箇所検知小回路14−1内に形成されているので、クランプメータ60によって漏水箇所検知小回路14−1内に流れる電流Iの電流値が測定される。従って、空調制御盤30と第2測定箇所24bとの間には、検知対象領域Lが存在しないと判断される。
【0043】
空調制御盤30と第2測定箇所24bとの間では、配管100の漏水が発生していないと判断されたので、図5(d)で示すように、第1測定箇所24a及び第2測定箇所24bに対して空調制御盤30から更に離間した第3測定箇所24cにおいて電流Iの電流値が測定される。第3測定箇所24cの形成は第1測定箇所24aの形成と同様の手法によって形成され、また、第3測定箇所24cにおける電流値の測定も第1測定箇所24aにおける電流値の測定と同様の手法によって測定される。
【0044】
第3測定箇所24cは、漏水箇所検知回路10−n内で漏水箇所検知小回路14−1と重複していない部分に該当するので、検知対象領域Lにおける短絡によって、電流Iは流れない。従って、第3測定箇所24cでの電流値は、0Aとなる。これにより、第2測定箇所24bと第3測定箇所24cとの間に検知対象領域Lが存在すると判断される。
【0045】
第2測定箇所24bと第3測定箇所24cとの間に検知対象領域Lが存在すると判断された後、測定幅縮小工程S5に移行する。すなわち、第3測定箇所24cと第2測定箇所24bとの間を漸次縮小させながら導線22a、22bにおいて電流値を測定して、図5(d)で示すように、第2測定箇所24bと第3測定箇所24cとの間に存在する検知対象領域Lのより具体的な地点を特定する。
【0046】
まず、第3測定箇所24cに対して第2測定箇所24b側に近接する地点に、第1測定箇所24aの形成と同様の手法によって図示しない第4測定箇所を形成し、かかる範囲においてクランプメータ60によって電流Iを測定する。このとき、電流値が0Aであれば、第4測定箇所から更に第2測定箇所24b側に近接する地点に図示しない第5測定箇所を形成して、電流Iを測定する。このように、漏水箇所検知回路10−nにおいて空調制御盤30と新たに形成された測定箇所との間で通電状態となる位置、すなわち電流Iの測定値が0Aでなくなる地点まで、第2測定箇所24bに近接する第n測定箇所を形成して、電流Iを測定する。
【0047】
第4測定箇所〜第n測定箇所のいずれかの地点において電流Iの測定値が0Aを上回った場合、すなわち0Aでなくなった場合、例えば、第5測定箇所において電流Iが流れていることが測定された場合、最後の電流測定用箇所となる第5測定箇所と第2測定箇所24bとの間に検知対象領域Lが存在していると判断される。この第5測定箇所と第2測定箇所24bとの間における距離は、第2測定箇所24bと第3測定箇所24cとの間における距離に対して短距離となっている。これにより、検知対象領域Lが目視で確認できる位置を特定することができる。
【0048】
一方、図6で示すように、検知対象領域Lが空調制御盤30に近接する地点に存在する場合は、空調制御盤30と短絡地点である検知対象領域Lとの間で漏水箇所検知小回路14−2が形成されて、かかる漏水箇所検知小回路14−2内で、導線22a及び22bの導線抵抗、検知対象領域Lの抵抗に応じた電流Iが流れる。一方で、漏水箇所検知回路10−n内で漏水箇所検知小回路14−2と重複していない部分には、検知対象領域Lにおける短絡によって、電流Iは流れない。
【0049】
電流測定第1工程S3において、第1測定箇所24aを形成してこの範囲において電流Iを測定すると、第1測定箇所24aは漏水箇所検知小回路14−2の外に形成されているので、第1測定箇所24aにおける電流Iの測定値は0Aとなる。これにより、第1測定箇所24aと空調制御盤30との間に検知対象領域Lが存在すると判断される。
【0050】
第1測定箇所24aと空調制御盤30との間に検知対象領域Lが存在すると判断されると、測定幅縮小工程S5に移行する。すなわち、第1測定箇所24aと空調制御盤30との間を漸次縮小させながら導線22a、22bの電流値を測定して、図6で示すように、第1測定箇所24aと空調制御盤30との間に存在する検知対象領域Lのより具体的な地点を特定する。
【0051】
まず、第1測定箇所24aに対して空調制御盤30側に近接する地点に、図示しない第2測定箇所を形成し、かかる箇所においてクランプメータ60によって電流Iを測定する。このとき、電流値が0Aであれば、第2測定箇所から更に空調制御盤30側に近接する地点に図示しない第3測定箇所を形成して、電流Iを測定する。このように、漏水箇所検知回路10−nにおいて、空調制御盤30と新たに形成された測定箇所との間で非通電状態となる位置、すなわち電流Iの測定値が0Aでなくなる地点まで、空調制御盤30に近接する第n測定箇所を形成して、電流Iを測定する。
【0052】
第2測定箇所〜第n測定箇所のいずれかの地点において電流Iの測定値が0Aでなくなった場合、例えば、第3測定箇所において電流Iが流れていることが測定された場合、第2測定箇所と空調制御盤30との間に検知対象領域Lが存在していると判断される。この第2測定箇所と空調制御盤30との間における距離は、第1測定箇所24aと空調制御盤30との間における距離に対して短距離となっている。これにより、検知対象領域Lが目視で確認できる位置を特定することができる。
【0053】
漏水箇所検知回路10−nを構成する漏水箇所検知帯20に発生した検知対象領域Lにおいては、本実施の形態では、赤色に着色された第1被覆布26が白色に着色された第2被覆布28を透過する。従って、検知対象領域Lの発生した漏水箇所検知帯20の部分は、漏水箇所検知帯20における他の部分に対して変色している。その結果、目視によって、検知対象領域Lを特定することができる。
【0054】
空調制御系統110−nにおける配管100の次回以降の漏水確認作業では、電流測定第1工程S3及び電流測定第2工程S4、測定幅縮小工程S5で形成された第1測定箇所24a〜第n測定箇所を用いて、本実施の形態に係る漏水箇所検知方法を適用することができる。
【0055】
上記構成を有する漏水箇所検知方法によれば、空調制御盤30から電圧Vが印加される漏水箇所検知回路10−1〜10−nを空調制御系統110−1〜110−nごとに形成するという簡易な構成によって、製造コスト及び稼動コストを抑制したうえで、大型施設の空調制御系統110−1〜110−nを構成する配管100の漏水を検知することができる。
【0056】
また、簡易な手法によって短時間で漏水箇所である検知対象領域Lを検知することができ、かつ、より詳細な検知対象領域Lの検知も、電流測定第1工程S3、電流測定第2工程S4における電流値の測定及び漏水箇所検知帯20の変色によって、容易に行うことができる。その結果、配管100の損傷等による漏水を早期に検知することができ、配管100の修繕や交換を速やかに行うことが可能となるので、漏水による配管100の周辺環境への影響を抑制することができる。
【0057】
空調制御系統110−nにおける配管100の次回以降の漏水確認作業では、前回の漏水検知によって形成された第1測定箇所24a〜第n測定箇所をそのまま用いることができ、改めて第1測定箇所24a〜第n測定箇所を形成する必要がないので、漏水の検知を更に容易に実行することができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、電流測定第1工程S3で第1測定箇所24aを形成し、電流測定第2工程S4で第2測定箇所24bを形成する場合を例として説明したが、図7(a)で示すように、電流測定第1工程において、第1測定箇所24a及び第2測定箇所24bを所定の間隔を隔てて形成し、これら第1測定箇所24a及び第2測定箇所24bにクランプメータ60をそれぞれセットして電流Iを測定して、検知対象領域Lを検知してもよい。このとき、第1測定箇所24a及び第2測定箇所24bは、検知対象領域Lにおいて短絡して形成された漏水箇所検知小回路14−1内に形成されているので、導線22a及び22bの導線抵抗、検知対象領域Lの抵抗に応じた電流Iが、第1測定箇所24a及び第2測定箇所24bにそれぞれセットされたクランプメータ60によって測定される。従って、空調制御盤30と第2測定箇所24bとの間には検知対象領域Lが存在しないと判断される。
【0059】
その後、第2測定箇所24bから所定間隔を隔てて第3測定箇所24c及び第3測定箇所24cから所定間隔を隔てて第4測定箇所24dを形成し、これらの測定箇所にクランプメータ60をそれぞれセットして電流Iを測定する。このとき、第3測定箇所24cと第4測定箇所24dとの間には検知対象領域Lが存在するので、第4測定箇所24dにおける電流Iの測定値は、0Aとなる。従って、第3測定箇所24cと第4測定箇所24dとの間に検知対象領域Lが存在すると判断される。
【0060】
これにより、検知対象領域Lの特定を更に迅速に行うことができ、漏水の早期検知によって配管100の修繕、交換が促進されるので、漏水による配管100の周辺環境への影響を効率的に抑制することができる。
【0061】
また、上記実施の形態では、第1測定箇所24a〜第n測定箇所を電流測定第1工程S3及び電流測定第2工程S4、測定幅縮小工程S5において各々形成する場合を例として説明したが、漏水確認作業を行う前に予め第1測定箇所24a〜第n測定箇所を形成しておいてもよい。これにより、漏水検知方法を円滑に実行することができ、作業時間及び作業コストの軽減に資する。
【0062】
上記実施の形態では、漏水箇所検知帯20の第1被覆布26が赤色、第2被覆布28が白色に着色された場合を例として説明したが、第1被覆布26が第2被覆布28を透過する色であればよく、着色限定されるものではない。
【符号の説明】
【0063】
1 漏水箇所検知システム
10−1〜10−n 漏水箇所検知回路
14−1、14−2 漏水箇所検知小回路
20 漏水箇所検知帯
22a 導線
22b 導線
24a 第1測定箇所(電流測定用箇所)
24b 第2測定箇所(電流測定用箇所)
24c 第3測定箇所(電流測定用箇所)
26 第1被覆布(被覆部材)
28 第2被覆布
30 空調制御盤(電源)
40 抵抗(電気抵抗)
50 テスタ
60 クランプメータ
L 検知対象領域
S1 電圧測定工程
S2 電流測定第1工程
S3 電流測定第2工程
S4 測定幅縮小工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水により絶縁性が低下する被覆部材で被覆された導線を一端側で電気抵抗を介して折り返し、他端側に電源を配して閉回路を形成し、往路側導線と復路側導線とを密接させて所定長さ伸長させた漏水箇所検知回路を備え、該漏水箇所検知回路を前記配管の検知対象範囲にその伸張方向に沿って、かつ近接させて配置した漏水箇所検知システムを用いて前記配管の漏水箇所を検知する漏水箇所検知方法において、
任意に設定した電流測定用箇所で前記漏水箇所検知回路の電流を測定する電流測定工程を備え、
該電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を下回った場合には、前記電源と前記測定した電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断し、前記電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を上回った場合には、前記測定した電流測定用箇所と前記電気抵抗との間に漏水箇所が存在すると判断することを特徴とする漏水箇所検知方法。
【請求項2】
前記電流測定工程において、第1回目の電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を下回った場合には、前記電流値が前記所定電流値を上回るまで、前記電流測定用箇所を前記電源側に順次移行して電流測定工程を行い、測定した電流値が前記所定電流値を上回ったときに、当該電流測定用箇所と前記所定電流値を下回った最後の電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断し、
前記第1回目の電流測定工程で測定された電流値が所定電流値を上回った場合には、前記電流値が前記所定電流値を下回るまで、前記電流測定用箇所を前記電気抵抗側に順次移行して電流測定工程を行い、測定した電流値が前記所定電流値を下回ったときに、当該電流測定用箇所と前記所定電流値を上回った最後の電流測定用箇所との間に漏水箇所が存在すると判断する、ことを特徴とする請求項1に記載の漏水箇所検知方法。
【請求項3】
前記漏水箇所検知回路の電圧を測定する電圧測定工程を備え、
前記測定した電圧が、所定の電圧値を下回ったときに前記電流測定工程に移行して漏水箇所の判断を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の漏水箇所検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−145244(P2011−145244A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7889(P2010−7889)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(504325623)中国企業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】