説明

潜像担持体圧接部材、弾性ローラ、現像剤担持体、現像装置、及び画像形成装置

【課題】 装置の全体的な長寿命化を図り、使用勝手を向上させるような潜像担持体圧接部材を提供する。
【解決手段】 本発明の潜像担持体圧接部材は、潜像を担持する潜像担持体に対して圧接する潜像担持体圧接部材2において、該潜像担持体圧接部材が前記潜像担持体に対して圧接する圧接部における硬度が当該潜像担持体圧接部材の長手方向中央部よりも長手方向端部の方が低くされていることを特徴とする。長手方向端部の硬度が低くなるため、圧接する感光ドラム1などの潜像担持体の端部における膜減りなどの現象の発生を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の印刷装置などに用いられる潜像担持体圧接部材やその潜像担持体圧接部材を用いた現像装置及び画像形成装置に関し、特に装置に長寿命化を図ることが可能な潜像担持体圧接部材やその潜像担持体圧接部材を用いた現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式の印刷装置では、感光ドラムのような潜像を担持する潜像担持体に対してトナーの如き現像剤を供給して潜像の現像を行う現像装置が配設されており、このような現像装置には、潜像担持体に接触しながら現像を行う弾性ローラなどの現像剤担持体が設けられている。このような現像剤担持体では、現像剤が一旦担持体上で保持された後、当該現像剤担持体が静電潜像担持体に当接することで、現像剤担持体上で保持される現像剤が静電潜像担持体上に供給される。
【0003】
ところで、このような現像機構においては、良好な現像剤の保持特性を得るために、現像剤担持体の表面には凹凸が設けられており、このような凹凸について、周方向と軸方向で何れかの一方向に顕著な凹凸が形成されてしまうと、印刷結果においてある一方向にスジが現れたり、ドット抜けが生じてしまうなどの問題が発生する。このような問題を解決する技術として、粗面化された表面で現像剤を担持して供給する現像剤担持体において、各方向で均一な表面形状になるように粗面化した担持体構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−243358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような現像装置を用いて静電潜像担持体を現像した場合には、各方向における面粗さの形状の差を低減することができ、ドット抜けやスジの発生などの印刷不良を防止することも可能である。しかしながら、このような現像装置を用いた場合、現像剤担持体と静電潜像担持体の間の圧力が強い状態で印字を行ったときでは、時間の経過に従って静電潜像担持体の両端部付近にて静電潜像担持体表面の感光層が剥離してしまうという問題が発生する。この両端部付近での静電潜像担持体表面の感光層が剥離するという問題により、静電潜像担持体と現像剤担持体の間の圧力が強いほど、装置の寿命が短くなる傾向があり、使用勝手の観点から装置の全体的な長寿命化が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、上述の技術的な課題に鑑み、装置の全体的な長寿命化を図り、使用勝手を向上させるような潜像担持体圧接部材、現像剤担持体や現像装置、さらにはこのような現像装置を用いた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的な課題を解決するため、本発明の潜像担持体圧接部材は、潜像を担持する潜像担持体に対して圧接する潜像担持体圧接部材において、該潜像担持体圧接部材が前記潜像担持体に対して圧接する圧接部における硬度が当該潜像担持体圧接部材の長手方向中央部よりも長手方向端部の方が低くされていることを特徴とする。
【0008】
ここで潜像担持体圧接部材は、長手方向に延長される回転軸を中心に回転可能な芯金と、その芯金の周囲に配設される弾性層とを有する構造であっても良く、その場合には、前記芯金の長手方向の端部における径が長手方向の中央部における径よりも小さくされるように芯金を構成しても良い。芯金の径を変化させる手段としては、長手方向の端部に長手方向の中央部よりも径を小さくする段差を設けても良い。また、弾性層の長手方向端部に楔状の空隙部を設けることもできる。さらに圧接部の形状としては、全幅に亘って同じ外径を有する形状としても良い。なお、本発明において、潜像担持体圧接部材は潜像担持体に圧接する構造の部材であって広く解されるものであり、現像ローラなどの現像剤担持体は含まれることは勿論であるが、さらに潜像担持体圧接部材にはクリーニングローラやクリーニングブレードなども含まれるものであり、転写ローラ、転写ベルトなども含まれるものである。
【0009】
また、潜像担持体圧接部材の硬度をその軸方向で変化させる手段としては、当該潜像担持体圧接部材の長手方向の端部における表面粗さが長手方向の中央部における表面粗さよりも低くしても良く、例えばこれら表面粗さを表面の10点平均粗さで求めて、潜像担持体圧接部材の長手方向中央部と長手方向端部の10点平均粗さの比率範囲が、前記潜像担持体圧接部材の長手方向中央部と長手方向端部の硬度比をFとしたとき、10点平均粗さの比率範囲下限Rzminが-0.8F+1.786とされ、比率範囲上限Rzmaxが-0.8F+2.063とされるように設定することで、長寿命化を図ることも可能である。
【0010】
さらに、このような潜像担持体圧接部材は、当該潜像担持体圧接部材に現像剤を供給する現像剤供給部と組み合わせて現像装置を構成でき、その現像装置は該現像装置と連動する潜像担持体と組み合わせて画像形成装置を構成する。
【発明の効果】
【0011】
上述の潜像担持体圧接部材によれば、長期の使用によって静電潜像担持体の両端部付近で感光層が剥離してしまう現象の発生を抑制する効果が得られ、装置全体の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の潜像担持体圧接部材の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の潜像担持体圧接部材は、電子写真方式の画像形成装置に搭載される両端部の硬度が中央部より低い現像ローラであり、現像ローラを備えた現像装置について詳しく説明する前に電子写真方式の印刷装置である画像形成装置について説明する。
【0013】
図1は本実施形態にかかる潜像担持体圧接部材を用いた画像形成装置の概略断面図である。本実施形態の電子写真方式の画像形成装置27は、紙などの印刷媒体を格納するトレイから該媒体を搬送するための搬送機構部と、トナーを現像剤とし画像信号に対応した画像を形成するための現像装置28と、印刷媒体上に転写されたトナーを定着させる定着装置15と、印刷された印刷媒体を排出する排出機構部とを有している。
【0014】
現像装置28は、その内部にトナーカートリッジ7から補給されたトナー8が収容され、静電潜像が形成される潜像担持体としての感光ドラム1、感光ドラム1に対向して配置される回転可能な潜像担持体圧接部材であり、現像剤担持体としての現像ローラ2、現像ローラ2にトナー8を供給するトナー供給ローラ3、感光ドラム1を所定の電圧に帯電させる帯電ローラ4、現像ローラ2上に供給されたトナー8を薄層形成する現像ブレード9を有しており、感光ドラム1上の転写残トナーを回収するためのクリーニングブレード5により掻き落とされた廃トナーを回収容器に搬送するための部材(スクリュー等)が収められるスペース6も有している。また、現像ローラ2はシール材33に接触し、感光ドラム1、現像ローラ2、トナー供給ローラ3、帯電ローラ4はそれぞれ図示する矢印方向に回転する。LEDヘッド10は感光ドラム1に静電潜像を形成する露光手段であり、発光ダイオードを複数配列させたアレイと光学系の部材からなる。
【0015】
紙などの印刷媒体11は矢印12a、12b、12c、12dの方向に搬送されものであり、筐体の下部のトレイから用紙搬送ローラ13aによってシートごとに分離され、ガイドに沿って搬送されて搬送ローラ13bによってスキュー等が修正されて感光ドラム1と転写ローラ14の間に搬送される。定着後は、搬送ローラ13cによって、筐体の上端側に印刷媒体11が導かれ、筐体の上部のスタッカに積層される。転写ローラ14は感光ドラム1に形成されたトナー像を記録媒体11に転写するためのローラである。転写されたトナー像は定着器15で記録媒体11に定着される。
【0016】
図2は本実施形態で使用した現像装置28の構成を示すブロック図である。帯電ローラ用電源18は制御部20の指示によって帯電ローラ4に電圧を印加させ、感光ドラム1の表面を帯電させる。そして、現像ローラ用電源19は静電潜像にトナー8を付着させるために現像ローラ2に所定の電圧を印加する電源であり、供給ローラ用電源21は現像ローラ2にトナー8を供給するためにトナー供給ローラ3に所定の電圧を印加する電源であり、転写ローラ用電源22は感光ドラム1に形成されたトナー像を記録媒体11に転写するために転写ローラ14に所定の電圧を印加する電源である。制御部20は所定のアプリケーションを使用しながら当該印刷装置の各部を制御する装置であり、内部にはドラムの回転数を計上するドラムカウンタ16も配設される。
【0017】
図3に本実施形態の画像形成装置に使用する現像ローラ2の周方向に沿って切り取った概略断面図を示す。快削鋼(SUM)からなる導電性シャフト(芯金)2aと、ウレタンゴムにカーボンブラックなどの導電剤を含む導電性ゴム層2bと、該導電性ゴム層2bの表面に帯電性付与剤、表面改質剤等によって処理を行った表面層2cを形成する。本実施形態では表面処理液にウレタン溶液の表面処理液にフッ素を添加したものを使用している。なお、本実施形態では、導電性ゴム層2bは1層であるが、本実施形態のものに限らず、2層以上の多層構造であっても良い。
【0018】
本実施形態においては、現像ローラ2は両端部でゴム厚が厚い形状とされ、感光ドラム1の両端部で感光層が剥離するような現象が改善される構造を有している。図4に現像ローラ2の軸方向に沿った断面図を示す。導電性シャフト(芯金)2aは端部50mmの位置から端部にかけて徐々に径小となるクラウン形状に加工しており、導電性シャフト(芯金)2aの上に弾性層2dをストレート形状で形成させる。この加工により、現像ローラ2の端部のゴム厚は中央付近のゴム厚に比べ大きくなり、現像ローラ2の端部のゴム硬度は中央のゴム硬度に比べ小さくなって、端部では中央部に比べて柔らかい構成とされる。本実施形態で使用した現像ローラ2の外径はその圧接部が全幅で同径とされるストレート形状で外径は19.6mm、導電性シャフト(芯金)2aの径は12mmであり、クラウン加工を行わない場合の弾性層2bと処理層2cを合わせた層厚は7.6mmとなる。また、ローラ表面の10点平均粗さRz(JIS B0601−1994)は約3〜5μmであり、抵抗値は5〜10[logΩ]である。また、本実施形態において導電性ゴム層2b自体の硬度はアスカーC硬度で48度である。現像ローラ2をその圧接部が全幅で同径とされる形状とすることで、長時間にわたって当該装置を動かさない場合でもローラの変形を防ぐことが出来る。
【0019】
また、図5に本実施形態で使用した感光ドラム1を部分拡大して示す。円筒型に加工された導電性支持体1a上に感光層を塗布した感光層1bから成りたっている。また、本実施形態での感光ドラム1の素管部分の外径は30mmで肉厚は1mmである。
【0020】
表1に図4で示したA〜Dの位置でのそれぞれ中央と端部の導電性シャフト(芯金)2aの径差、弾性層2bと処理層2cを合わせた端部の層厚差、とゴム硬度(アスカーC)およびその中央との差の関係を示す。
【0021】
【表1】

【0022】
この表1からも明らかなように、導電性シャフト(芯金)2aをクラウン加工することで現像ローラ2の端部のゴム硬度は中央のゴム硬度に比べ低くなる傾向であることが分かる。本実施形態で使用する現像ローラ2はクラウン状に加工した導電性シャフト(芯金)2aの上に弾性層2bをストレート形状で形成させることで現像ローラ2の中央と端部において硬度差を持たせている。
【0023】
このようなクラウン加工した現像ローラの変形例として、例えば図6に示すような現像ローラを構成しても良い。図6に示す現像ローラは、例えば快削鋼(SUM)からなり中央部42a2ではストレート形状とされ端部42a1に近づくにつれて径小とされたクラウン形状の導電性シャフト(芯金)42aと、該導電性シャフト42aの端部周面に配設された比較的に低硬度の導電性ゴム層42eと、ウレタンゴムにカーボンブラックなどの導電剤を含み円筒形状の導電性ゴム層42bと、該導電性ゴム層42bの表面に帯電性付与剤、表面改質剤等によって処理を行った表面層42cと有する構成とされている。圧接部の端部付近では、低硬度の導電性ゴム層42eと導電性ゴム層42bの多層構造となり、現像ローラの端部の圧力を弱めることができ、感光ドラム1を長寿命化することができる。また、円筒形状の導電性ゴム層42bを形成する前に、低硬度の導電性ゴム層42eがクラウン形状のテーパー部分を埋めるように形成されているため、導電性ゴム層42b更には全体を寸法精度良く形成できる。
【0024】
また、現像ローラ2をストレート形状に保ちつつ端部の硬度を低下させるその他の方法として次の如き手法がある。その1つは、図7に示すように、導電性シャフトの端部をクラウン状ではなく段差形状とする。また、もう1つの手法は、図8に示すように、ストレート形状のシャフト上にストレート形状の弾性層形成後、側面から楔形の針48を打ち込むことにより楔形の空洞を作るものである。
【0025】
図7は段差形状のシャフトを有する現像ローラの断面図である。図7に示す現像ローラは、端部から50mmほどの領域からなる両端部で径小とされ中央部で径大とされる2段階の径を有する段差付き円筒形状の導電性シャフト52aと、ウレタンゴムにカーボンブラックなどの導電剤を含み長手方向の端部が中央部より径大とされて外周は円筒形状とされた導電性ゴム層52bと、該導電性ゴム層52bの表面に帯電性付与剤、表面改質剤等によって処理を行った表面層52cと有する構成とされている。導電性ゴム層52b及び表面層52cが合わせて弾性層として機能する。導電性ゴム層52bは、導電性シャフト52aの段差を補う形状を有し、導電性シャフト52aが両端部で細くされている分だけ導電性ゴム層52bはその厚みが厚くされ、導電性ゴム層52bの外周は中央部も両端部も同じ径となっている。導電性シャフト52aは例えば快削鋼(SUM)からなる。
【0026】
図8は楔形の空洞を有する導電性ゴム層62bを有する現像ローラの断面図である。図8に示す現像ローラは、例えば快削鋼(SUM)からなるストレート形状の導電性シャフト(芯金)62aと、ウレタンゴムにカーボンブラックなどの導電剤を含み円筒形状の導電性ゴム層62bと、該導電性ゴム層62bの表面に帯電性付与剤、表面改質剤等によって処理を行った表面層62cと有する構成とされている。導電性ゴム層62b及び表面層62cが弾性層として機能する。導電性ゴム層62bの端部から、その軸方向に沿って側面から楔形の針48が打ち込まれ、その結果として楔状の空隙部63が複数形成されている。このような楔状の空隙部63を複数形成することで、現像ローラの端部の圧力を弱めることができ、感光ドラム1を長寿命化することができる。
【0027】
これら段差形状のシャフトを有する現像ローラ(図7)と楔形の空洞を導電性ゴム層に備えた現像ローラ(図8)の特性を表に示す。次の表2は図7のA,Bの位置での中央と端部のシャフト径差、弾性層+処理層層厚差、アスカーC硬度及び中央とのアスカーC硬度差の関係を示し、表3は図8のA,Bの位置での中央と端部のシャフト径差、アスカーC硬度及びアスカーC硬度差の関係を示す。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
また、さらに他の変形例として、図9に示すような構成の現像ローラを用いても良い。図9に示す現像ローラは、中央部と両端部で異なる硬度の導電性ゴム層を配設した構造を有する。この現像ローラは、ストレート形状の導電性シャフト72aと、その周囲に配設される導電性ゴム層72b−1、72b−2を有している。導電性ゴム層72b−1は、当該現像ローラの両端部に配設され、導電性ゴム層72b−2は当該現像ローラの中央部に配設される。端部に位置する導電性ゴム層72b−1はその硬度が中央部に位置する導電性ゴム層72b−2よりも低くされ、このため現像ローラが感光ドラムに当接した際に感光ドラムの端部表面で生ずる磨耗を防止できる。導電性ゴム層72b−1、72b−2の表面に帯電性付与剤、表面改質剤等によって処理を行った表面層72cが所定の膜厚で形成される。これら表面層72cと導電性ゴム層72b−1、72b−2により弾性層72dが形成される。なお、表面層自体も中央部と両端部で異なる硬度とすることも可能である。
【0031】
本件発明者らは、本実施形態にかかる画像形成装置を用いて、感光ドラムの膜減りについての実験を行っており、以下に説明する。なお、本実施形態では、現像ローラ2と感光ドラム1の回転軸の軸間距離Lを調整することにより、現像ローラ2と感光ドラム1のニップ量を調整することができるが、ニップ量調整を行う際の指標として、フィルムを現像ローラ2と感光ドラム1の間に挿入し、現像ローラ2と感光ドラム1が回転した時にフィルムが引っ張られる力(以後、引っ張り力)を用いることとした。
【0032】
まず、比較例として従来の中央、端部の硬度差がない現像ローラを使用した印刷装置を用い、5%デューティのパターン(図10に示した面積デューティが5%となるようなべタのパターン)を30000枚印刷した後、図11に示すような100%デューティのパターンを印字した。印字環境は温度10℃、湿度20%であった。印刷時に各部材に印加した電圧はそれぞれ、現像ローラ2:−200V、供給ローラ3:−300V、帯電ローラ4:−1100V、現像ブレード9:−300Vであった。100%デューティのパターンを印字した時、初期の前記引っ張り力が高ければ高いほど図12に示すように画像上の端部から50mmまでの範囲でカスレが生じ画像を形成できない現象が発生した。感光ドラムと現像ローラ問の摩擦により感光ドラムの感光層が削られてしまうことが原因であると考えられ、実際に感光ドラムの端部側で感光層の剥離が確認されており、素管が剥き出しになっていた。
【0033】
次に、100%デューティのパターン印字後、現像ローラを現像装置から取り出し、ケット科学研究所製の膜厚計(LH330−J)において比較例となる感光ドラムの感光層の膜厚を測定した。図14は初期の引っ張り力1.6Nで、30000枚印字後、感光ドラムの感光層の膜厚グラフである。膜厚は中央部81に比べて端部82で非常に減っており、100%デューティのパターンの画像とも対応している。表4は初期引張り力と感光ドラムの感光層膜厚の膜減り比(30000枚印刷時/初期)との関係、及び端部82のカスレ判定結果を示す。判定は100%デューティのパターン上で端部のカスレの有無である。×はトナーがほとんど感光ドラム上に乗らず、印字できない状態である。○は端部においてカスレが目立たない状態である。×では感光ドラムの磨耗が激しく、画像形成装置の寿命が短い状況であったと言える。そこで、従来の現像ローラを使用した画像形成装置において30000枚印字後に画像端部で擦れが目立たない初期引張り力の下限は1.2Nであると言える。また、画像端部で擦れ現象が目立たなくなる感光ドラムの感光層膜厚の膜減り比(30000枚印刷時/初期)は0.65以上(膜厚12μm以上)である。しかしながら、両端部のニップ量が低下していくことで白抜けの現象などが発生し印字上に問題が生じことになる。
【0034】
【表4】

【0035】
これらの問題を回避するため、本実施形態では両端の硬度を低下させた現像ローラ2を使用している。次の表5は本実施例にて使用した現像ローラ2の内訳である。現像ローラ2の作成時に導電性シャフト(芯金)2aの外径をクラウン状にし、中央と端部の径差を変える事で様々な硬度差の現像ローラ2を作成した。表2では現像ローラ2の端部と中央の比率を示している。これらの現像ローラ2を現像装置28にそれぞれ実装し、同条件下において端部カスレについての評価を行った。
【0036】
【表5】

【0037】
評価の手順として、現像ローラ2を使用した画像形成装置を用い、5%デューティのパターンを30000枚印刷した後、100%デューティのパターンを印字した。印字環境は温度10℃、湿度20%であった。初期引張り力は1.6Nに設定し、印刷時に各部材に印加した電圧はそれぞれ、現像ローラ2は−200V、供給ローラ3は−300V、帯電ローラ4は−1100V、現像ブレード9は−300Vであった。100%デューティのパターン印字後、現像ローラ2を現像装置から取り出し、ケット科学研究所製の膜厚計(LH330−J)において感光ドラム1の感光層の膜厚を測定し、その測定結果を表6に示す。
【0038】
【表6】

【0039】
中央と端部のアスカーC硬度比率を変えた現像ローラにおける感光ドラム感光層膜厚膜減り比の判定の結果として、図15に示すように現像ローラ2の端部硬度を低下させたことにより感光ドラム1の感光層の剥離を抑えることができた。つまり、現像ローラ2の両端部の硬度を低下させたことにより、現像ローラ2と感光ドラム1のニップ量を下げたことと同等の効果が得られ、感光ドラム1の感光層の剥離を抑えることができた。また、画像端部でカスレの低下が目立たなくなる感光ドラムの感光層膜厚の膜減り比(30000枚印刷時/初期)0.65以上(膜厚12μm以上)を満足する現像ローラ2の端部と中央の硬度比率は0.87以下である。なお、表5、6に示す硬度比の下限値0.77について、アスカーC硬度比率が0.77未満である場合は、中央部と端部での硬度差が大きくなりすぎ、例えば、中央部での感光ドラムと現像ローラ間の圧力が大きくなりすぎてしまい、感光ドラムの中央部での感光層の剥離が発生するおそれがある。また、アスカーC硬度比率が0.77未満である場合は、端部の硬度が小さくなるため、感光ドラムや現像ブレードなどの当接部分が変形してしまい、その変形が原因で印字不良も発生し易くなる。このためアスカーC硬度比率が0.77未満となる場合について、本実施形態では、その評価を求めることは省略している。
【0040】
以上のような実験結果によれば、弾性層のアスカーC硬度を端部と中央の比率0.87以下で作成した現像ローラを画像印刷装置に実装することにより、経時において感光ドラム1の両端部付近にて表面の感光層が剥離してしまう現象について改善する効果が得られ、よって、両端の硬度を低下させた現像ローラを画像印刷装置に実装することで、装置の長寿命化を図ることができることが分かる。
【0041】
[第2の実施形態]
本実施形態は、現像ローラの端部の硬度を中央部よりも低くし、さらに現像ローラの端部の表面粗さを増加させた例である。
【0042】
図16に示すように、本実施形態にかかる潜像担持体圧接部材を用いた現像ローラ90は、弾性層のアスカーC硬度を端部と中央の比率0.87以下で作成した現像ローラにおいて硬度を低下させた部分の表面の10点平均粗さRz(JIS B0601−1994)を増加させて構成される。詳しくは、この現像ローラ90は、快削鋼(SUM)からなる中央部で円柱形状を有し端部で徐々に径が細くされた導電性シャフト93と、その周囲に配設される所定の硬度を有した導電性ゴム層91を有している。このような導電性シャフト93の形状から現像ローラ90の端部の硬度は中央部よりも低くされる。導電性ゴム層91の表面に帯電性付与剤、表面改質剤等によって処理を行った表面層94、95が所定の膜厚で形成される。これら表面層94、95は表面粗さが異なるものとされており、端部側に位置する表面層95の表面粗さは中央部側の表面粗さよりも粗いように設定されている。弾性層は導電性ゴム層91と表面層94、95を合わせた領域を指す。このような表面粗さを異ならせた表面層94、95の作成方法としては弾性層成形後、中央部に比べ端部から例えば50mmの範囲におけるフィニッシャー研磨の研磨時間を増加させる。もしくはフィニッシャー紙の研磨目の粗さを増加させる等の方法がある。
【0043】
両端部付近にて表面の感光層が剥離してしまう現象を防止するために現像ローラの端部の硬度を中央部よりも低くした構成では、次のような濃度段差についての課題があることが、実験結果から得られている。すなわち、先の実施形態にて使用した弾性層のアスカーC硬度を端部と中央の比率0.87以下で作成した現像ローラを使用した画像形成装置を用い、初期引張り力を1.6Nに設定し、100%デューティのパターンを印字した。この時印字環境は温度10℃、湿度20%であった。印刷時に各部材に印加した電圧はそれぞれ、現像ローラ2は−200V、供給ローラ3は−300V、帯電ロ一ラ4は−1100V、現像ブレード9は−300Vの各電圧を印加した。
【0044】
次に図13に示した、印字上のa、b、c3点の濃度を測定し、中央と端部の濃度差を導出した。この際、印刷上でのa点の濃度であるDaとb点c点の濃度平均であるDbの比率(濃度段差率)σを端部と中央の濃度の比率として用いた。濃度測定にはX−Rite社製のX−Rite500分光濃度計を使用した。濃度段差率σはDb/Daで表すことができ、その結果を表7に示す。
【0045】
【表7】

【0046】
濃度段差率を基準として、中央と端部の濃度の差が視覚的に確認できないような判定Oはσ>0.96である。表7は先の実施形態で評価した現像ローラを初期状態において濃度を測定した際の端部と中央の濃度段差率である。端部中央のアスカーC硬度比が0.92以下のローラを使用した場合、中央端部の濃度の段差が視覚的に目立つレベルになる。この結果、現像ローラの端部の硬度を低くしただけでは感光ドラムの膜減りは防げるものの、中央端部の濃度段差が目立ってしまうという状況に陥る。
【0047】
そこで本実施形態ではそれぞれ中央端部の硬度比とRz比を振ったサンプルを準備し、中央端部の濃度段差比の結果判定を行った。準備した現像ローラ90を現像装置にそれぞれ実装し、構成と同条件下において中央端部の濃度段差比の評価を行った。図17に評価結果のグラフを示す。結果として、端部のRzを増加させれば濃度段差比は1に近づく。また、増加しすぎると逆に端部のほうが濃度は高くなってしまう。中央端部の濃度の段差が視覚的に目立たないRz比の範囲は硬度比が広がるとRz比大の方向にシフトしていく。この結果、図17の判定○の領域からその境界線を式の形式に表し、中央端部の濃度の段差が視覚的に目立たないような現像ローラの条件は以下の式で表される。
【0048】
端部と中央の硬度比をFとした時、
濃度段差を満足させる端部と中央部のRz比上限Rzman=−0.8F+2.063
濃度段差を満足させる端部と中央部のRz比下限Rzmix=−0.8F+1.786
のように設定される。
【0049】
以上のように、図17に示す実験結果によれば、弾性層のアスカーC硬度を端部と中央の比率0.87以下とし、さらに上記の条件式の下限値(Rzmix=−0.8F+1.786)及び上限値(Rzman=−0.8F+2.063)の範囲内で、硬度比に応じて端部のRzを増加させて作成した現像ローラ90を画像形成装置に実装することにより、経時において感光ドラム1の両端部付近にて表面の感光層が剥離してしまう現象が改善し、さらに初期の中央端部における濃度段差を解消する効果が得られる。
【0050】
第1の実施形態、第2の実施形態ともに、画像形成装置がタンデム方式の直接印刷方式を採用する場合について説明したが、いわゆる中間転写方式の画像形成装置でも適用可能である。また、MFP、ファックス及び複写機にも利用できる。
【0051】
また、上述の各実施形態及びその変形例において、端部の範囲を例えば50mmとして説明したが、この数値は一例に過ぎず、例えば10mmや30mm、或いは75mmのように画像形成装置ごとに適宜設定される範囲である。更に上述の各実施形態及びその変形例において、中央部と端部で硬度を異ならせるものとして説明したが、硬度の変え方として中央部と端部の境界で全く硬度を違う値にすることもでき、境界の前後で連続的に徐々に変化させるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる潜像担持体圧接部材を用いた画像形成装置の概略断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の制御系のブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる現像ローラを軸方向に垂直な面で切断した概略断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかる現像ローラを軸方向に平行な面で切断した概略断面図である。
【図5】図1に示す画像形成装置の感光ドラムの表面における構造を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかる現像ローラの変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる現像ローラの他の変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態にかかる現像ローラの更に他の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態にかかる現像ローラのまた更に他の変形例を示す断面図である。
【図10】5%デューティの印刷パターンを示す模式図である。
【図11】100%デューティの印刷パターンを示す模式図である。
【図12】100%デューティの印刷パターンと端部の擦れ現象を示す模式図である。
【図13】100%デューティの印刷パターン上の濃度測定位置を示す模式図である。
【図14】従来の現像ローラ使用時の印字による感光ドラム端部の膜減り状態を説明する膜厚値の測定図である。
【図15】従来の現像ローラ使用と本実施形態の現像ローラ使用時の印字による感光ドラム端部の膜減り状態を比較して説明する膜厚値の測定図である。
【図16】本発明の第2の実施形態にかかる現像ローラを軸方向に平行な面で切断した概略断面図である。
【図17】現像ローラの硬度比と10点平均表面粗さRz比の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0053】
1 感光ドラム
1a 感光層
1b 素管
2 現像ローラ
2a 導電性シャフト
2b 導電性ゴム層
2c 表面層
2d 弾性層
3 トナー供給ローラ
4 帯電ローラ
5 クリーニングブレード
6 スペース
7 トナーカートリッジ
8 トナー
9 現像ブレード
10 LEDヘッド
11 印刷媒体
13a 用紙搬送ローラ
13b、13c 搬送ローラ
14 転写ローラ
15 定着ローラ
16 ドラムカウンタ
18 帯電ローラ用電源
19 現像ローラ用電源
20 制御部
21 供給ローラ用電源
22 転写ローラ用電源
27 画像形成装置
28 現像装置
42a 導電性シャフト
42b 導電性ゴム層
42c 表面層
42d 弾性層
52a 導電性シャフト
52b 導電性ゴム層
52c 表面層
62a 導電性シャフト
62b 導電性ゴム層
62c 表面層
72a 導電性シャフト
72b−1、72b−2 導電性ゴム層
72c 表面層
81 中央部
82 端部
91 導電性ゴム層
93 導電性シャフト
94、95 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を担持する潜像担持体に対して圧接する潜像担持体圧接部材において、該潜像担持体圧接部材が前記潜像担持体に対して圧接する圧接部における硬度が当該潜像担持体圧接部材の長手方向中央部よりも長手方向端部の方が低くされていることを特徴とする潜像担持体圧接部材。
【請求項2】
前記潜像担持体圧接部材は、長手方向に延長される回転軸を中心に回転可能な芯金と、その芯金の周囲に配設される弾性層とを有し、前記芯金は長手方向の端部における径が長手方向の中央部における径よりも小さくされていることを特徴とする請求項1記載の潜像担持体圧接部材。
【請求項3】
前記芯金の長手方向の端部には、長手方向の中央部よりも径を小さくする段差が形成されていることを特徴とする請求項2記載の潜像担持体圧接部材。
【請求項4】
前記潜像担持体圧接部材は、長手方向に延長される回転軸を中心に回転可能な芯金と、その芯金の周囲に配設される弾性層とを有し、前記弾性層はその密度が当該潜像担持体圧接部材の長手方向中央部よりも長手方向端部の方が低くされていることを特徴とする請求項1記載の潜像担持体圧接部材。
【請求項5】
前記弾性層は長手方向端部に楔状の空隙部を有していることを特徴とする請求項4記載の潜像担持体圧接部材。
【請求項6】
前記圧接部は全幅に亘って同径とされることを特徴とする請求項1記載の潜像担持体圧接部材。
【請求項7】
前記潜像担持体圧接部材は当該潜像担持体圧接部材の長手方向の端部における表面粗さが長手方向の中央部における表面粗さよりも低くされていることを特徴とする請求項1記載の潜像担持体圧接部材。
【請求項8】
前記表面粗さは表面の10点平均粗さで求められることを特徴とする請求項7記載の潜像担持体圧接部材。
【請求項9】
前記潜像担持体圧接部材の長手方向中央部と長手方向端部の10点平均粗さの比率範囲が、前記潜像担持体圧接部材の長手方向中央部と長手方向端部の硬度比をFとしたとき、10点平均粗さの比率範囲下限Rzminが-0.8F+1.786とされ、比率範囲上限Rzmaxが-0.8F+2.063とされることを特徴とする請求項7記載の潜像担持体圧接部材。
【請求項10】
回転しながら圧接する弾性ローラにおいて、当該弾性ローラの弾性層の表面における硬度が当該弾性ローラの長手方向中央部よりも長手方向端部の方が低くされていることを特徴とする弾性ローラ。
【請求項11】
前記弾性ローラは、長手方向に延長される回転軸を中心に回転可能な芯金と、その芯金の周囲に配設される弾性層とを有し、前記芯金は長手方向の端部における径が長手方向の中央部における径よりも小さくされていることを特徴とする請求項10記載の弾性ローラ。
【請求項12】
前記弾性ローラの弾性層は全幅に亘って同径とされることを特徴とする請求項10記載の弾性ローラ。
【請求項13】
潜像を担持する潜像担持体に対して圧接し現像剤を供給する現像剤担持体において、当該現像剤担持体の弾性層の表面における硬度が当該現像剤担持体の長手方向中央部よりも長手方向端部の方が低くされていることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項14】
前記現像剤担持体は、長手方向に延長される回転軸を中心に回転可能な芯金と、その芯金の周囲に配設される弾性層とを有し、前記芯金は長手方向の端部における径が長手方向の中央部における径よりも小さくされていることを特徴とする請求項13記載の現像剤担持体。
【請求項15】
前記現像剤担持体の弾性層は全幅に亘って同径とされることを特徴とする請求項13記載の現像剤担持体。
【請求項16】
請求項1に記載の潜像担持体圧接部材と、該潜像担持体圧接部材に現像剤を供給する現像剤供給部とを有することを特徴とする現像装置。
【請求項17】
請求項1に記載の潜像担持体圧接部材が実装された現像装置と、該現像装置に連動する潜像担持体とを有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−222970(P2009−222970A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67124(P2008−67124)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】