説明

潤滑剤供給装置及びこれを組み込んだ潤滑剤供給装置付運動案内装置

【課題】必要に応じて転動体転走溝や転動体に潤滑剤を供給するとともに、移動部材の往復運動に伴う摺動抵抗を低減し、潤滑剤を塗布する塗布体の摩耗を抑制することができる潤滑剤供給装置および、これを組み込んだ潤滑剤供給装置付運動案内装置を提供する。
【解決手段】長手方向に沿って延びる軸部材と、軸部材に沿って往復移動可能に取り付けられた移動部材と、を備える運動案内装置に取り付けられ、軸部材に潤滑剤を塗布する塗布体を有する潤滑剤供給装置において、潤滑剤供給装置は、枠体と、潤滑剤を貯留して枠体に収容されると共に塗布体を備える潤滑剤収容体と、潤滑剤収容体に隣接して配置される移動板とを備え、潤滑剤収容体と移動板はそれぞれ移動力伝達部材を備え、移動力伝達部材は、潤滑剤収容体を移動部材の進行方向に応じて軸部材に対して近接または離間するように移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部材に対して移動可能に組み付けられた移動部材の移動に伴って、軸部材に潤滑剤を塗布する潤滑剤供給装置、およびこの潤滑剤供給装置が組み込まれた潤滑剤供給装置付運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テーブルなどの案内対象の直線運動や曲線運動を案内するための機械要素として、案内部分に転動体を介在させた運動案内装置が知られている。これらの運動案内装置は、軽快且つ高精度に案内対象を案内できるので、ロボット、工作機械、半導体・液晶製造装置、医療機器、アミューズメント装置など種々の分野で用いられている。
【0003】
このような運動案内装置は、転動体の転走によって案内対象を案内しているので、転動体が転走する転動体転走溝や転動体表面を良好に潤滑する必要がある。転動体転走溝や転動体表面を無給油のまま使用を継続すると、製品寿命短縮の原因となる。このような問題を解決するために、転動体転走溝や転動体に潤滑剤を塗布する方法としては種々の方法が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された運動案内装置は、外面に転動体転走溝を有して長手方向に延びる軌道部材に移動部材が遊嵌され、該移動部材は軌道部材の転動体転走溝に対向する負荷転動体転走溝及びこの負荷転動体転走溝の両端部に湾曲路を介して連結された転動体戻し路からなる転動体循環路を備え、転動体循環路に軌道部材に沿って移動部材を相対移動させる複数の転動体が装填されるとともに、移動部材の両サイドには移動部材と軌道部材との間の隙間の開口をシールするシール装置を備えた運動案内装置に係り、シール装置は、移動部材の端面に当接して固定する補強部材と該補強部材を介して移動部材に取り付ける潤滑剤含有ポリマ部材とによりなり、補強部材には、移動部材との接合面に、軌道部材の外面を取り囲むようにして潤滑剤含有ポリマ部材の厚さとほぼ同じ深さの凹状の段部を設け、該凹状の段部内に潤滑剤含有ポリマ部材がその外周面と凹状の段部の内周面との間に僅かな隙間を介して嵌め込んであり、かかるシール装置の補強部材を移動部材の端面に固定すると共に潤滑剤含有ポリマ部材の内周のシール部を軌道部材の被シール面に摺接せしめる構成となっている。
【0005】
このような構成によると、軌道部材の面に接触させて移動部材の両端に配設したシール装置の潤滑剤含有ポリマ部材から潤滑剤が経時的に徐々に染み出し、軌道部材を介して転動体の面に均一に供給される。そのため、長期間にわたって安定した潤滑を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−247145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の運動案内装置の構成によると、潤滑剤含有ポリマ部材等の潤滑剤を塗布するための部材が、常に軌道部材の外周面に接触しているため、移動部材の往方向及び復方向のいずれの方向の運動に対しても軌道部材の面に対して潤滑剤を塗布しており、不必要な箇所にも潤滑剤を塗布している場合があった。
【0008】
また、潤滑剤含有ポリマ部材等の潤滑剤を塗布するための部材が、常に軌道部材の外周面に接触しているため、移動部材の移動に対して摺動抵抗が常に発生してしまう。この摺動抵抗は静止摩擦抵抗が最も大きいため、移動部材が静止状態から動き始めの際が最も大きくなり、高精度の案内に支障を及ぼすという問題があった。さらに、潤滑剤含有ポリマ部材等の潤滑剤を塗布するための部材が常に軌道部材の外周面に接触しているため、潤滑剤含有ポリマ部材等の潤滑剤を塗布するための部材の摩耗が大きいといった問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、必要に応じて転動体転走溝や転動体に潤滑剤を供給するとともに、移動部材の往復運動に伴う摺動抵抗を低減し、潤滑剤を塗布する塗布体の摩耗を抑制することができる潤滑剤供給装置および、これを組み込んだ潤滑剤供給装置付運動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る潤滑剤供給装置は、長手方向に沿って延びる軸部材と、前記軸部材に沿って往復移動可能に取り付けられた移動部材と、を備える運動案内装置に取り付けられ、前記軸部材に潤滑剤を塗布する塗布体を有する潤滑剤供給装置において、前記潤滑剤供給装置は、枠体と、前記潤滑剤を貯留して前記枠体に収容されると共に前記塗布体を備える潤滑剤収容体と、前記潤滑剤収容体に隣接して配置される移動板とを備え、前記潤滑剤収容体と前記移動板はそれぞれ移動力伝達部材を備え、前記移動力伝達部材は、前記潤滑剤収容体を前記移動部材の進行方向に応じて前記軸部材に対して近接または離間するように移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塗布体が取り付けられた潤滑剤収容体が移動板によって軸部材に対して近接又は離間するように移動可能に配置されているので、枠体の移動に伴って塗布体を近接又は離間するように移動することができ、必要に応じて転動体転走溝や転動体に潤滑剤を供給することができると共に、摺動抵抗の抑制や塗布体の摩耗の抑制を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る潤滑剤供給装置を組み込んだ潤滑剤供給装置付運度案内装置を示す斜視図。
【図2】本実施形態に係る潤滑剤供給装置を示す斜視図。
【図3】本実施形態に係る潤滑剤供給装置の構成を説明するための分解図。
【図4】本実施形態に係る潤滑剤供給装置の背面を示す斜視図。
【図5】潤滑剤収容体の構造を説明するための斜視図。
【図6】図2におけるA−A断面図。
【図7】図6におけるB部拡大図。
【図8】本実施形態に係る潤滑剤供給装置の動作を説明するための図。図中(a)は移動部材が往方向へ移動した場合の動作を示し、(b)は移動部材が復方向へ移動した場合の動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る運動案内装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る潤滑剤供給装置を組み込んだ潤滑剤供給装置付運度案内装置を示す斜視図であり、図2は、本実施形態に係る潤滑剤供給装置を示す斜視図であり、図3は、本実施形態に係る潤滑剤供給装置の構成を説明するための分解図であり、図4は、本実施形態に係る潤滑剤供給装置の背面を示す斜視図であり、図5は、潤滑剤収容体の構造を説明するための斜視図であり、図6は、図2におけるA−A断面図であり、図7は、図6におけるB部拡大図であり、図8は、本実施形態に係る潤滑剤供給装置の動作を説明するための図であり、図中(a)は移動部材が往方向へ移動した場合の動作を示し、(b)は移動部材が復方向へ移動した場合の動作を示す。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る運動案内装置1は、長手方向に沿って延びる軸部材10と、この軸部材10の長手方向に沿って往復運動する移動部材20と、軸部材10と移動部材20の間に配列して介在された複数の転動体30…を備えている。
【0016】
軸部材10は、断面略四角形状の長尺の部材であり、軸部材10の左右両側面には、それぞれ2条ずつ合計4条の転動体転走溝11が外周面の長手方向に沿って形成されている。転動体転走溝11は、断面が転動体30の半径よりも若干大きな曲率を有する単一の円弧、所謂サーキュラアーク形状に形成されている。また、軸部材10は、締結孔12が形成されており、締結孔12にボルト等の締結手段を用いてテーブル等に固定することができるようになっている。
【0017】
移動部材20は、断面略コ字状に形成された部材であり、軸部材10に組み付けられると共に、鋼製のブロック本体21とブロック本体21の両端面に取り付けられた樹脂製の側蓋22とを備えている。
【0018】
ブロック本体21は、軸部材10の上面に対向する中央部と、中央部の幅方向の両端から垂下して延びる一対の脚部とを有している。ブロック本体21の内側には、軸部材10の転動体転走溝11と対向する合計4条の負荷転動体転走溝23が形成されている。なお、ブロック本体21の中央部の上面には、移動部材20を案内対象に取り付けるためのねじ部25が形成されている。
【0019】
また、ブロック本体21には、ブロック本体21の進行方向に貫通する転動体戻し通路24が形成されている。転動体戻し通路24は、負荷転動体転走溝23と平行に延びて形成されており、合計4条形成されている。
【0020】
側蓋22は、ブロック本体21の断面形状と略同一の断面略コ字状をしており、軸部材10の上面に対向する中央部と、中央部の幅方向の両端から垂下して延びる一対の脚部とを有している。また、ブロック本体21と対向する面にはU字形状の方向転換路(不図示)が形成されている。方向転換路は、負荷転動体転走溝23と転動体戻し通路24との両端をそれぞれ連絡しており、転動体転走溝11,負荷転動体転走溝23,方向転換路及び転動体戻し通路24とによって無限循環路を形成している。なお、転動体転走溝11及び負荷転動体転走溝23は、断面が転動体30の半径よりも若干大きな曲率を有する単一の円弧、所謂サーキュラアーク形状に形成されている。
【0021】
また、転動体転走溝11と負荷転動体転走溝23との間に介在された転動体30は、帯状の保持器31によって一連に保持されている。このように、移動部材20を軸部材10に沿って移動させると、転動体転走溝11と負荷転動体転走溝23との間に介在された転動体30は転がり運動を行う。負荷転動体転走溝23の一端まで転走した転動体30は、側蓋22の掬い上げ部で掬い上げられ、方向転換路に導かれる。方向転換路で進行方向を反転させた転動体30は、転動体戻し通路24に導かれ、反対側の方向転換路を経由した後、再び転動体転走溝11と負荷転動体転走溝23との間に戻される。
【0022】
図1に示すように、一方の側蓋22の端面には、潤滑剤供給装置40が取り付けられている。また、潤滑剤供給装置40の端部にはエンドシール50が取り付けられている。エンドシール50は、軸部材10の断面形状に合わせた開口を有しており、軸部材10の外表面と摺接するように配置されることで、軸部材10の表面に付着した異物を除去し、移動部材20内へこれらの異物が侵入することを防止する。
【0023】
次に、図2から図6を参照して潤滑剤供給装置40について説明を行う。図2及び図3に示すように、潤滑剤供給装置40は、潤滑剤を軸部材10の転動体転走溝11に塗布する塗布体41を有し、潤滑剤を収納した潤滑剤収容体43と、潤滑剤収容体43の端面に組み付けられた移動板44とを内部に収納する枠体42から構成されている。
【0024】
枠体42は、図4に示すように、潤滑剤収容体43を軸部材10の長手方向と交差する方向に移動することができるように、潤滑剤収容体43の軸部材10の長手方向と交差する方向の寸法よりも所定の隙間を有して大きく形成された潤滑剤収容体収納部43aと、枠体42の軸部材10の長手方向と交差する方向に沿って延設する案内壁45と、潤滑剤収容体43の軸部材10の長手方向と交差する方向の移動を規制する停止部43bとを有している。なお、軸部材10の長手方向と交差する方向とは、本実施例においては軸部材10の幅方向を含む概念と定義する。
【0025】
潤滑剤収容体43は、図5に示すように、潤滑剤収容体43の内部と連通し、潤滑剤収容体43に収納した潤滑剤を供給する塗布体41と、枠体42に形成された案内壁48と組み合わされる案内溝45とを備えている。また、潤滑剤収容体43の軸部材10の長手方向の一端面には、断面矩形状の凹部47が形成されており、凹部47の軸部材10の長手方向と交差する方向の少なくとも一方の壁部は移動方向から所定の角度傾斜した斜面47a,47a´が形成されている。
【0026】
なお、潤滑剤収容体43内には、空隙率80%のレーヨンに羊毛フェルトが加えられたフェルト等からなる潤滑剤貯蔵体に潤滑剤を含浸させており、この潤滑剤貯蔵体に塗布体41を接触させることで、毛細管現象によって潤滑剤を塗布体41から転動体転走溝11に塗布している。なお、塗布体41は、フェルトから構成されており、例えば空隙率50%程度の羊毛フェルトが好適に用いられる。また、羊毛フェルトの他、化学繊維や含油樹脂を適用することも可能である。さらに、潤滑剤は、摺動面油、タービン油などの潤滑油が用いられても構わないし、リチウム系グリス、ウレア系グリス等のグリスを用いてもよい。
【0027】
移動板44は、板状の部材であり、潤滑剤収容体43と対向する面には、潤滑剤収容体43に向かって突出して形成され、且つ凹部47と対応して形成された凸部としての楔部46が一体に形成されている。楔部46は、軸部材10の長手方向と交差する方向の少なくとも一方の端面に軸部材10の長手方向と交差する方向に向かって傾斜する傾斜面46a,46a´が形成されている。また、移動板44は、軸部材10の外表面に摺接して配置されており、さらに、潤滑剤収容体43の案内溝45に対応するように、案内溝部45aが形成されている。なお、潤滑剤収容体43の凹部47の斜面47a,47a´と移動板44の楔部46の傾斜面46a,46a´は、移動方向に対して約45度に形成されると好適である。
【0028】
図6に示すように、潤滑剤供給装置40は、枠体42に潤滑剤収容体43及び移動板44が組み付けられており、潤滑剤収容体43の凹部47には、移動板44の楔部46が嵌め込まれて移動力伝達部材を構成している。
【0029】
次に、移動力伝達部材の作用について説明を行う。図7に示すように、移動方向Fに沿って往方向に潤滑剤供給装置40が移動すると、軸部材10に接触したエンドシール50及び移動板44の摺動摩擦により、移動板44は移動方向Fと反対の方向F´に力を受けて枠体42内を方向F´に沿って移動する。移動板44の位置が変化すると、楔部46の一方の傾斜面46aが潤滑剤収容体43の凹部47の斜面47aと摺接して潤滑剤収容体43に対して軸部材10の長手方向と交差する方向Wに力を生じる。この軸部材10の長手方向と交差する方向Wの向きの力により、潤滑剤収容体43は軸部材10の長手方向と交差する方向Wに向けて移動する。
【0030】
また、図8に示すように、潤滑剤収容体43は、案内壁48によって案内溝45を案内しているので、軸部材10の長手方向と交差する方向Wに生じた力によって潤滑剤収容体43は軸部材10に向かって軸部材10の長手方向と交差する方向Wに沿って移動することができる。さらに、潤滑剤収容体43の移動によって、潤滑剤収容体43に取り付けられた塗布体41は、軸部材10の転動体転走溝11に近接するように移動し、所定の接触圧で押し付けるように作用する。なお、潤滑剤収容体43は、軸部材10の長手方向と交差する方向Wに沿って移動する際、枠体42に形成された停止部43bに当接することで適切な接触圧となるように調整されている。このように、潤滑剤収容体43は、枠体42に形成された案内壁48及び停止部43bによって形成される規制部に沿って摺動案内されている。
【0031】
このように、移動部材20が往方向に移動した場合には、塗布体41が軸部材10の転動体転走溝11に押し付けられるので、潤滑剤を転動体転走溝11に塗布することができる。
【0032】
また、移動部材が復方向に移動した場合、図7における移動方向Fに向かって移動板44が移動するため、楔部46の他方の傾斜面46a´が潤滑剤収容体43の凹部47の斜面47a´と摺接して潤滑剤収容体43に対して軸部材10の長手方向と交差する方向Wと反対の方向に力を生じる。この略直角方向Wと反対の向きの力により、潤滑剤収容体43は軸部材10の長手方向と交差する方向Wと反対の方向に向けて移動する。
【0033】
このように、移動部材20が復方向に移動した場合には、塗布体41が軸部材10の転動体転走溝11から離間するので、潤滑剤を転動体転走溝11に塗布することがなく、潤滑が必要のない復方向の移動の際に潤滑剤を不必要に塗布することがない。また、潤滑剤を往方向の移動の際のみに軸部材10に塗布するので、往復の両方向のいずれの移動の際にも常に潤滑剤を塗布する場合に比べて、潤滑剤収容体43に収納した潤滑剤の消費量を半分にすることができ、潤滑剤の補給等のメンテナンス期間を延ばすことができる。
【0034】
また、復方向の移動の際には、塗布体41が軸部材10に接触していないので、塗布体41と軸部材10との間に摺動摩擦が生じることがなく、摺動抵抗の低減を図ることができる。さらに、塗布体41は復方向の移動の際は軸部材10から離間しているので、塗布体41の摩耗を防止することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲において、種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では、転動体転走溝及び負荷転動体転走溝はサーキュラアーク形状に形成した場合について説明したが、これらの形状はこれに限られず、転動体の曲率半径よりも若干大きな曲率半径の2つの円弧からなる所謂ゴシックアーチ形状に形成しても構わない。
【0036】
また、楔部は、移動板に一体に形成された場合について説明したが、楔部は移動板と別体に形成して接着、ボルトによる締結など周知の接合手段を用いて組み合わせても構わない。
【0037】
また、本実施形態では、潤滑剤供給装置40の端部にエンドシール50を取り付けた場合について説明したが、移動板を軸部材と移動部材との間をシールする側面シールとして構成しても構わない。このように構成するとエンドシール50を削減することができるので、部品点数や製造コストの抑制を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、潤滑剤収容体43に凹部47を形成し、移動板44に凸部としての楔部46を形成した場合について説明したが、潤滑剤収容体43に凸部を形成し、移動板44に凹部を形成しても構わない。
【0039】
また、本実施形態では、凹部と凸部のいずれにも傾斜面及び斜面を形成した場合について説明したが、軸部材の長手方向と交差する方向に向かって傾斜する傾斜面を凹部又は凸部のいずれか一方に形成しても構わない。
【0040】
また、本実施形態では、凸部としての楔部を断面矩形状に形成した場合について説明したが、凸部を凹部に形成した傾斜面と摺接するように構成すれば、その形状は円柱状に形成することもできる。
【0041】
また、転動体にはボールのほか、円筒状のローラを用いても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る潤滑剤供給装置及び、これを組み込んだ潤滑剤供給装置付運動案内装置は、移動部材の往復運動に応じて塗布体が軸部材に対して接触及び離間するように移動するので、必要に応じて潤滑剤を軸部材に塗布することができると共に、移動部材の摺動抵抗も低減することができる潤滑剤供給装置、及びこれを組み込んだ潤滑剤供給装置付運動案内装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 潤滑剤供給装置付運動案内装置, 10 軸部材, 11 転動体転走溝, 20 移動部材, 22 側蓋, 23 負荷転動体転走溝, 24 転動体戻し通路, 30 転動体, 40 潤滑剤供給装置, 41 塗布体, 42 枠体, 43 潤滑剤収容体, 44 移動板, 45 案内溝, 46 楔部, 46a 傾斜面, 47 凹部, 47a 斜面, 48 案内壁。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って延びる軸部材と、前記軸部材に沿って往復移動可能に取り付けられた移動部材と、を備える運動案内装置に取り付けられ、
前記軸部材に潤滑剤を塗布する塗布体を有する潤滑剤供給装置において、
前記潤滑剤供給装置は、
枠体と、前記潤滑剤を貯留して前記枠体に収容されると共に前記塗布体を備える潤滑剤収容体と、前記潤滑剤収容体に隣接して配置される移動板とを備え、
前記潤滑剤収容体と前記移動板はそれぞれ移動力伝達部材を備え、
前記移動力伝達部材は、前記潤滑剤収容体を前記移動部材の進行方向に応じて前記軸部材に対して近接または離間するように移動させることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑剤供給装置において、
前記移動板は、前記軸部材に摺接して配置され、前記移動部材が往復移動することによって生じる摺動抵抗によって、前記枠体内を前記移動方向に沿って移動することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の潤滑剤供給装置において、
前記潤滑剤収容体は、前記軸部材の長手方向と交差する方向に移動することを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の潤滑剤供給装置において、
前記移動伝達部材は、前記潤滑剤収容体及び前記移動板のいずれか一方に形成された凹部と、前記潤滑剤収容体及び前記移動板のいずれか他方に形成された前記凹部に対応する凸部を備え、
前記凹部又は凸部の少なくともいずれか一方には、前記軸部材の長手方向と交差する方向に向かって傾斜する傾斜面を備えることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の潤滑剤供給装置において、
前記潤滑剤収容体は、前記枠体に形成された規制部に沿って摺動案内されることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の潤滑剤供給装置において、
前記移動板は、前記潤滑剤収容体に取り付けられた側面シールであることを特徴とする潤滑剤供給装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の潤滑剤供給装置を、前記運動案内装置に装着してなる潤滑剤供給装置付運動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−2602(P2013−2602A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136735(P2011−136735)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】