説明

潤滑油添加剤としてのジブロックモノポリマー、およびジブロックモノポリマーを含有する潤滑剤調合物

【課題】 排ガス制御システムに悪影響を与えず、乏しい天然資源を消耗させることのない、潤滑面の間の摩擦係数および磨耗を低減する方法の提供。
【解決手段】 当該方法には、潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された、一定量の油溶性または油分散性の成分を提供することが含まれる。当該の成分を含有した潤滑剤組成物を、潤滑しようとしている表面に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施態様は、ジブロックモノポリマーを含有する完全に調合された潤滑剤を使用した、摩擦低減および磨耗減少の方法に関する。特に、油溶性の成分は潤滑剤調合物中で、その摩擦係数の低減のためおよびその磨耗減少剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は液体、ペースト、または固体状であり、中でも液体の潤滑剤が最も多く使用されている。潤滑油は、自動車のエンジン、変速機、ベアリング、ギア、工業用ギア、およびその他の機械に使用され、摩擦および磨耗を低減させ、また省燃費を増加させる。分散剤、清浄剤、摩擦調整剤、耐磨耗剤、抗酸化剤、および防食剤を含むがこれらに限定されることのない多くの成分が、完全に調合された潤滑油中に一般的に存在する。潤滑剤の多くの用途のため、粘度指数向上剤もまた主要成分として含まれる。
【0003】
エネルギー資源が消耗され、より厳しい環境規制が受け入れられているため、自動車の省燃費を増加し、排ガスの放出を減少させる必要性がこれまで以上に存在する。現在は、省燃費を増加させるために、有機摩擦調整剤が潤滑油に加えられている。しかしながら、有機摩擦調整剤によって得られる省燃費のレベルには限度がある。従って、省燃費の向上を実現するための代替的な方法が必要となる。
【0004】
省燃費を増加させる一つの方法に、粘度グレードの低い潤滑油を提供することがある。粘度の低い潤滑油を提供することにより、省燃費は劇的に増加するかもしれないが、このような潤滑油はまた、磨耗をも増加させる。磨耗は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDTP)のような耐磨耗剤を使用することにより、部分的に低減させることができる。しかしながら、ZDTPにはリンが含有されており、その分解産物は、車の排ガス制御のための触媒システムに悪影響を及ぼす。従って、排ガス制御システムに悪影響を与えず、また乏しい天然資源をさらに消耗することなく、摩擦および磨耗を低減させる方法が、ますます必要となってくる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に関し、本明細書に記載の例示的な実施態様は、潤滑面間の摩擦係数および磨耗を低減する方法を提供する。この方法には、潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の、光架橋の可能なポリ(2−シンアモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよび/またはジブロックアクリレートコポリマーのコロナから選択された、少なくとも一つの一定量の油溶性あるいは油分散性の成分を供給することが含まれる。本方法に基づき、当該の成分を含有する潤滑剤組成物が、潤滑しようとしている表面に適用される。
【0006】
従って、本発明の一つの目的は、油溶性ナノ粒子の前駆物質を添加剤成分として潤滑剤中に組み入れることによって摩擦および磨耗の減少が達成できるという、潤滑剤の性能の発見を開示することである。この前駆物質は、そのブロックの一つが光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシルエチルアクリレート)あるいはポリ[(2−シンナモイルオキシルエチルアクリレート)−ラン−(2−オクタノイルオキシエチルアクリレート)]で、第二のブロックが油溶性のブロックであるような、ジブロックモノポリマーである。このようなジブロック前駆体ポリマーは、基油中でミセルを形成することができる。また、本明細書中ではこれらの前駆物質を「成分」とも呼ぶ。EHC−45基油中のこのような前駆物質あるいは成分のそれぞれの単純な混合物により、当該の前駆物質が、GMO(グリセロールモノオレエート)のような従来型の摩擦調整剤よりも優れた摩擦低減能力を有することが示されている。
【0007】
本開示は、別の実施態様において、油溶性ナノ粒子の前駆物質(ジブロックポリマー)の潤滑剤または燃料中への取り入れを示す。前駆物質そのものは油溶性であり、潤滑油に摩擦低減および磨耗減少をもたらす。この種の添加剤テクノロジーを利用することのできる類の潤滑剤には、エンジンオイル、ギアオイル、自動変速機液、手動変速機液、油圧液、金属加工液、および工業用オイルなどが含まれる。この発明によってもたらされる利点は、摩擦および磨耗の減少、油中での可溶性、および架橋の必要性がないこと、の三点である。従って本開示は、一つの実施態様で、エンジンオイル、ギアオイル、自動変速機液、油圧オイル、金属加工液、および工業用オイルから成る群から選択された潤滑油に、摩擦調整または磨耗減少をもたらすための前駆物質あるいは成分の使用を提供する。
【0008】
当該の前駆物質(成分)はまた、低硫黄および超低硫黄ディーゼル燃料のような燃料に、潤滑性としても知られる摩擦調整をもたらすことができる。
【0009】
本開示は、(a)ガソリン、ディーゼル、およびバイオディーゼル燃料から成る群から選択された燃料、および(b)光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された成分を含んで成る燃料組成物を提供する。本開示はまた、(a)ガソリン、ディーゼル、およびバイオディーゼル燃料から成る群から選択された燃料、および(b)光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された成分、を含んで成る燃料組成物を提供する。
【0010】
油溶性のジブロックポリマーは、一つの実施態様で、二つのブロックを含有する。一つのブロックは光架橋が可能で、ヒドロカルビル基の追加あるいは併用による可溶化の恩恵を受け、またもう一つのブロックは油溶性の部分である。これらが合成化学反応によって結合された場合、ポリマー分子全体が油に可溶性となるか、あるいは少なくとも分散可能となる。光架橋前のジブロックポリマーは、オイル中でミセルを形成することが可能である。
【0011】
別の実施態様では、潤滑剤組成物を含むエンジンの操作中にエンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低減させる方法が提供される。当該の方法には、エンジンの部品を、潤滑粘度の基油、および光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよび/またはジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、油溶性の成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下まで摩擦係数を低下させるのに十分な量の油溶性の成分から成る、完全に調合された潤滑剤組成物と接触させることが含まれる。一つの実施態様で、当該の成分のコアの直径は、約10ナノメーターから約100ナノメーターである。
【0012】
本開示のさらなる実施態様は、潤滑油を使用して可動部間の磨耗を減少させる方法を提供する。当該の方法には、基油を含有する潤滑剤組成物と、磨耗減少剤を含むオイル添加剤パッケージを、一つ以上の可動部の潤滑油として使用することが含まれる。当該の磨耗減少剤は、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよび/またはジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、油溶性の成分である。
【0013】
本開示のさらなる実施態様では、潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアお
よび/またはジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性の成分を提供し、当該の成分を含有する潤滑剤組成物を潤滑しようとしている表面に適用することを含んで成る、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低下させる方法が提供される。一つの実施態様では、当該の成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい。
【0014】
本開示のさらなる実施態様は、エンジンの部品を潤滑粘度の基油と、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよび/またはジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、摩擦係数を油溶性の成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下に低下させるのに十分な量の油溶性の成分を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物に接触させることを含んで成る、潤滑剤組成物を含むエンジンの操作中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低下させる方法を提供する。ここで当該の成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい。
【0015】
上記に簡単に述べられたように、本開示の実施態様は、潤滑剤および/または燃料組成物の摩擦係数を著しく改善し、比較的粘度の低い潤滑剤組成物の磨耗を低減させる独自の完成した潤滑剤および/または燃料組成物を提供する。油溶性の成分を含有する添加剤パッケージは、可動部間の表面に適用される油性の流体と混合される。他の用途では、油溶性の成分を含有する添加剤パッケージが完全に調合された潤滑剤組成物中に加えられる。
【0016】
本明細書に記載の方法は、自動車の公害防止装置の汚染を低減するために特に好適であり、また一方で、当該の組成物は潤滑剤組成物の摩擦係数特性および磨耗性能を向上させるために好適である。フラーレンや無機ナノ粒子と異なり、本明細書に記載の成分は、潤滑剤の効果を高めるために有益となる、粒子のサイズや形状のより優れたコントロールを可能にする。本明細書に記載の方法のその他の特徴、および利点は、本明細書に記載の実施態様を制限することを意図せず、例示的な実施の態様を例証することを目的とした、以下の詳細な説明を参照することにより明らかである。
【0017】
前述の概要および以下の詳しい説明は、共に例示および説明のみを目的としたものであり、開示・請求された実施態様のさらなる説明を提供することが意図されたものであると理解される。
【0018】
本開示のさらなる利点は、図面と併せて考慮し、好適な実施態様の詳細な説明を参照することによって明白となる。ここで、以下のいくつかの図面を通して、同類の参照符号は同類あるいは同様の成分を指している:
図1は、油溶性ジブロックポリマーに、MTM装置中のGMO(グリセロールモノオレエート)のような従来型の摩擦調整剤よりも、摩擦および磨耗をより低下させる能力があることを示したデータのグラフである。
図2は、本発明の成分の摩擦係数がより低いことを示したグラフである。
【0019】
本開示の目的のため、「炭化水素に可溶性」、「油溶性」、または「分散性」などの用語は、これらの化合物が炭化水素化合物またはオイル中にあらゆる比率で可溶性である、溶ける、混和性がある、あるいは懸濁が可能であるという意味を表すものではない。しかしながらこれらは、例えばオイルが使用される環境下において、意図された効果を及ぼすために十分なだけオイル中で可溶性であるまたは安定的に分散可能であることを意味する。さらに、他の添加剤を追加的に混入することにより、必要に応じてより高いレベルの特定の添加剤の混入が可能になる。
【0020】
本明細書中で使用される「炭化水素」とは、炭素、水素、および/または酸素を多様な組み合わせで含む、任意の多数の化合物を意味する。「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子が分子の残りの部分に直接結合しており、また主に炭化水素の特性を有する基を
指す。
【0021】
ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、また芳香族、脂肪族、および脂環基によって置換された芳香族置換基、また環が分子の別の部分によって完成されている(例えば二つの置換基が一緒になって脂環式ラジカルを形成している)ような環状置換基;
(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の状況下で、主に炭化水素である置換基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)などを変化させないような、非炭化水素基を含んだ置換基;
(3)ヘテロ置換基、すなわち、主に本発明の状況下で、主に炭化水素の特性を有しながら、そうでなければ炭素原子から成る環または鎖の中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、および窒素があり、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。通常、ヒドロカルビル基中、炭素原子10個につき二つ以下、望ましくは一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。一般的にはヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0022】
本明細書中で有用な成分には、実質的に油不溶性のコアおよびコアに付着している油溶性のコロナが含まれる。当該成分のコアは、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)から作られたもの、あるいはポリ(ヒドロキシルアルキルアクリレート)またはPHAAのヒドロキシル基と塩化シンナモイルとを反応させることによって作られたPCAAブロックである。コア12のガラス転移温度は、ポリ[(2−シンナモイルエチルアクリレート)−ラン−(2−オクタノイルオキシエチルアクリレート)]のようなポリ[(2−シンナモイルアルキルアクリレート)−ラン−(2−オクタノイルオキシアルキルアクリレート)]、あるいは以下の化学式で表されるP(CEA−r−OEA)を得るために、少量のヒドロキシアルキルアクリレートと塩化オクタノイルとを反応させることによって調整される:
【0023】
【化1】

【0024】
式中xは約0.1から約1.0の間、またzは約20から約500の間である。コアの直径(CD)は、ジブロックのモル質量を変化させることにより選択され、一般的に直径約10ナノメーターから約50ナノメーターである。
【0025】
油溶性のブロックコポリマーが、例えばコアを取り囲むコロナとして提供される。従って適切なブロックコポリマーは、ポリ[(2−エチルヘキシルアクリレート)−ラン−(t−ブチルアクリレート)]−ブロック−ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)のような、ポリ[(2−エチルアルキルアクリレート)−ラン−(アルキルアクリレート)]−ブロック−ポリ(2−ヒドロキシアルキルアクリレート)、または以下の化学式で表されるP(EXA−r−tBA)−b−PHEAから作られる:
【0026】
【化2】

【0027】
式中yは約0.001から約0.5、mは約20から約500、nは約20から約500の間である。コロナは、全体の平均直径が約20ナノメーターから約100ナノメーターとなるように、成分の流体力学直径(HD)を著しく増加させる。
【0028】
当該成分が主にパラフィン、芳香族、およびナフテン(シクロパラフィン)から成る潤滑性の基油中で可溶性であるため、当成分にコロナを提供するためにP(EXA−r−tBA)ブロックが選択された。しかしながら、潤滑性の基油中における当該成分の溶解度を向上させるため、本発明において、他の可溶化炭化水素を使用することもできる。tBAが選択的に加水分解され、金属あるいはその他の基板の表面への成分の吸着を促進するための、アクリル酸またはAA基が生成されるように、例えば1.5%未満の小さなモル比率yのtBAを、コロナのためのブロックコポリマー中に取り入れることができる。例えばPHEAブロックは、その誘導体化が容易であるために選択される。PHEAのヒドロキシル基は塩化シンナモイルと反応して、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシエチルアクリレート)、またはPCEAブロックを生成する。誘導体化されたPHEAブロックのガラス転移温度は、ポリ((2−シンナモイルオキシエチルアクリレート)−ラン−(2−オクタノイルオキシエチルアクリレート))、またはP(CEA−r−OEA)を得るために、少量のHEAヒドロキシル基と塩化オクタノイルとを反応させることによって調整される。
【0029】
本発明の成分は、P(EXA−r−tBA)ブロックのブロック選択的溶媒であると考えられている、ヘキサン、あるいはヘキサン含有量の高いテトラヒドロフラン/ヘキサン中で調製される。このようなブロック選択的溶媒中で、不溶性のPCEAまたはP(CEA−r−OEA)ブロックは、ジブロックおよび溶媒のn/m値に基づき、球状あるいは円筒状の集合体のいずれかのコアを形成する。可溶性のP(EXA−r−tBA)ブロックはコロナを提供する。このような集合体のコアは、構造を固定するために光化学的に架橋され、実質的に永久的な摩擦調整成分あるいは磨耗減少成分がもたらされる。
【0030】
[実施例1] P(EXA−r−tBA)−b−PHEAの合成
コロナを提供するポリマーのベースセットP(EXA−r−tBA)−b−PHEAは、P(EXA−r−tBA)−b−P(HEA−TMS)を加水分解することにより調製され、ここでP(HEA−TMS)とはポリ(2−トリメチルシロキシエチルアクリレート)を意味する。P(EXA−r−tBA)−b−P(HEA−TMS)は、PBA−b−(P(HEA−TMS)を作る原子移動ラジカル重合(ATRP)プロセスによって合成され、ここでPBAとはポリ(ブチルアクリレート)を意味する。開始システムには、メチル2−ブロモプロピオネート(CHCHBrCOCH)、臭化銅(I)、および化学式((CHNCHCHNCHのN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)などが含まれる。
【0031】
P(EXA−r−tBA)−b−P(HEA−TMS)は、トルエンのような無極性溶媒中でEXAと少量のtBAとを共重合することにより調製される。供給比におけるtBAのモル分率は、1.5%未満でなくてはならない。第一のブロックは、精製された後、
第二のモノマー、トリメチルシリルオキシエチルアクリレート、あるいはHEA−TMSをポリマー化するため、マクロイニシエーターとして使用される。TMS基は、数滴の酢酸を加えることにより、THF水溶液中での加水分解によって除去される。
【0032】
[実施例2] P(EXA−r−tBA)−b−PCEAの合成
実施例1に基づいて作られたP(EXA−r−tBA)−b−PHEAを、ピリジン中で塩化シンナモイルと反応させ、P(EXA−r−tBA)−b−PCEAを得ることができる。PCEAは、本発明の摩擦調整あるいは磨耗減少成分を光架橋させるため、好適である。コアを形成するブロックコポリマーのガラス転移温度Tgを低下させるため、一つの実施態様において、ヒドロキシル基の一部が、P(EXA−r−tBA)−b−P(CEA−r−OEA)を得るために過剰量の塩化シンナモイルと反応させられる前に、塩化オクタノイルと反応させられる。コアの効果的な架橋を促進するため、ブロックコポリマー中のCEAのモル分率は、望ましくは50%を下回らない。
【0033】
理論によって拘束されることを意図することなく、潤滑油は主に二つのメカニズムにより潤滑を実現すると考えられている。流体力学の法則に基づき、二つの摺動面を押し分ける流体力学上の圧力は、二つの滑り面が最も近くにある部分で最も高い。当該圧力は負荷を支え、流体力学上の潤滑(HDL)状態における摺動面の直接的接触を回避する。負荷が高いおよび/または速度の遅い状態では、潤滑剤システムは混合潤滑(ML)または境界潤滑(BL)状態に入り、表面の隆起は必然的に部分的あるいは広範囲の接触状態になる。両親媒性の分子を含んだ潤滑剤は、表面に薄膜を形成することにより、隆起の直接的接触を回避する。吸着膜は金属表面から容易に剥ぎ取られ、可動部が互いから離れた後に金属表面に再形成することができるため、摩擦を低減する。さらに、マイカ摺動面上に形成されたポリマー・ブラシで実証されたように、吸着膜は互いに反発しあう。
【0034】
上述のブロックコポリマー成分は、次のメカニズムの一つ以上によって摩擦調整剤および/または耐磨耗剤として作用すると考えられている:a)当該成分による摺動面の物理的分離、b)摺動面間の滑り摩擦の、表面と当該成分の間の転がり摩擦への変換、およびc)当該成分または成分の断片による隣接面のコーティング。フラーレンあるいは無機ナノ粒子と異なり、本発明の成分は、粒子のサイズおよび形状のより幅広いコントロールを可能にする。
【0035】
上述の油溶性の成分は、潤滑組成物中に有利に組み込まれている。従って当該の油溶性の成分を、完成した潤滑油組成物に直接添加することができる。しかしながら一つの実施態様では、添加剤濃縮物を形成するため、当該の油溶性の成分は、鉱油、合成油(例えばジカルボン酸のエステル)、ナフサ、アルキル化された(例えばC10−C13のアルキル)ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどのような、実質上不活性で通常は液体である有機希釈剤で希釈される。この添加剤濃縮物には、約0重量%から約99重量%の希釈油および油溶性の成分が含有される。
【0036】
潤滑油調合物の調製において、炭化水素油、例えば鉱物性の潤滑油、またはその他の好適な溶媒中の1重量%から99重量%の活性成分の形態で添加剤濃縮物が添加されるのが一般的である。通常これらの濃縮物は、DIパッケージの重量部当りの0.01重量部から50重量部の潤滑油を含有する分散剤/阻害剤(DI)添加剤パッケージおよび粘度指数(VI)向上剤とともに潤滑油中に添加され、例えばクランクケースモーターオイルなどの完成した潤滑剤を形成する。好適なDIパッケージについては、例えば米国特許第5,204,012号および6,034,040号に記載されている。DI添加剤パッケージに含まれるタイプの添加剤としては、清浄剤、分散剤、耐磨耗剤、摩擦調整剤、シール膨潤剤、抗酸化剤、発泡防止剤、潤滑剤、防錆剤、腐食防止剤、乳化破壊剤、粘度指数向上剤、その他がある。これらの成分のいくつかは、当技術分野に精通した技術者には周知の物であり、また本明細書に記載の添加剤および組成物とともに、標準的な量で使用されている。
【0037】
上述の成分で作られた潤滑剤組成物は、多種多様な用途で使用される。圧縮点火エンジンや火花点火エンジン用としては、当該潤滑剤組成物は、既報のAPI−CI−4またはGF−4基準を満たすあるいは超えることが望ましい。上述のAPI−CI−4またはGF−4基準に基づいた潤滑剤組成物には、完全に調合された潤滑剤を提供するため、基油、DI添加剤パッケージ、および/またはVI向上剤が含まれる。本開示に基づく潤滑剤用の基油は、天然潤滑油、合成潤滑油およびそれらの混合物の中から選択された、潤滑粘度のオイルである。このような基油には、自動車やトラックのエンジン、海洋および鉄道用のディーゼルエンジン、その他のような、火花点火および圧縮点火の内燃エンジン用のクランクケース潤滑油として従来使用されていたものが含まれる。
【0038】
上述の成分は、完全に調合された自動変速機液、完全に調合されたクランクケース液、完全に調合されたヘビーデューティーのギア液、その他に使用される。このような成分は摩擦係数や磨耗を低減させるのに効果的である。
【0039】
一つの実施態様では、当該の成分は、潤滑組成物中に、完全に調合された潤滑剤組成物の約5重量%以下の量で存在する。別の例では、当該成分は、完全に調合された潤滑剤組成物の約0.1重量%から約5重量%の量で存在する。さらに別の例では、当該成分は、完全に調合された潤滑剤組成物の約0.5重量%から約2重量%の量で存在する。
【0040】
一つの実施態様における好適な成分のコアの直径は約10nmから約100nm、流体力学直径は約10nmから約120nmである。他の実施態様では、それよりも大きな成分または小さな成分が使用されていることもある。
【0041】
分散剤成分
DIパッケージに含有された分散剤には、分散される粒子と結びつく能力のある官能基を有した油溶性でポリマー性の炭化水素骨格が含まれるが、これらに限定はされない。一般的に当該の分散剤には、アミン、アルコール、アミド、またはしばしば架橋基によってポリマー骨格に結合しているエステルの極性部分が含有される。分散剤は、米国特許第3,697,574号および3,736,357号に記載のマンニッヒ分散剤、米国特許第4,244,435号および4,636,322号に記載の無灰コハク酸イミド分散剤、米国特許第3,219,666号、3,565,804号、および5,633,326号に記載のアミン分散剤、米国特許第5,936,041号、5,643,859号、および5,627,259号に記載のコッホ分散剤、そして米国特許第5,851,965号、5,853,434号、および5,792,729号に記載のポリアルキレンコハク酸イミド分散剤の中から選択される。
【0042】
酸化防止剤成分
酸化防止剤または抗酸化剤は、ベースストックの使用中の劣化の傾向を低下させる。劣化は、金属表面上に堆積するスラッジやワニス状の堆積物のような酸化の産物や、完成した潤滑剤の粘度の上昇などによって明らかとなる。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、硫化ヒンダードフェノール、CからC12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、硫化アルキルフェノール、硫化アルキルフェノールあるいは硫化されていないアルキルフェノールの金属塩、例えばカルシウムノニルフェノールスルフィド、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、リン硫化炭化水素または硫化炭化水素、リンエステル、金属チオカルバメート、および米国特許第4,867,890号に記載の油溶性銅化合物などが含まれる。
【0043】
使用されるその他の抗酸化剤に、立体障害フェノールおよびジアリールアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物、および無灰ジアルキルジチオカルバメートが含まれる。立体障害フェノールの非限定的な例には、2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、2,6−ジ−第三級ブチルメチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ブチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ペンチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ヘキシル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ヘプチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−(2−エチルヘキシル)−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−オクチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ノニル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−デシル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ウンデシル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ドデシル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、メチレン架橋立体障害フェノール、たとえば4,4−メチレンビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4−メチレンビス(2−t−アミル−o−クレゾール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、および米国特許公報第2004/0266630号に記載のそれらの混合物、を含むメチレン架橋の立体障害フェノールなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0044】
ジアリールアミン抗酸化剤には、以下の化学式を有するジアリールアミンが含まれるが、これに限定はされない:
【0045】
【化3】

【0046】
式中R’およびR’’はそれぞれ独立して、炭素数が約6から約30の置換または非置換アリール基を表す。アリール基の置換基の具体例には、炭素数が約1から約30のアルキル基のような脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸またはエステル基、あるいはニトロ基などが含まれる。
【0047】
アリール基は、好適には置換された、あるいは置換されていないフェニルまたはナフチルであり、特にこのとき、一つあるいは両方のアリール基は、炭素数が4から30、望ましくは炭素数が4から18、もっとも望ましくは炭素数が4から9の、少なくとも一つのアルキルで置換されている。一つあるいは両方のアリール基が置換されていること、例えばモノ−アルキル化ジフェニルアミン、ジ−アルキル化ジフェニルアミン、またはモノ−アルキル化ジフェニルアミンとジ−アルキル化ジフェニルアミンの混合物などが望ましい。
【0048】
ジアリールアミンは、分子内に一つ以上の窒素原子を含有する構造のものであり得る。従って、ジアリールアミンには少なくとも二つの窒素原子を含有し得る。ここで、例えば一つの窒素原子に二つのアリールを有すると共に第二級窒素原子をも有しているような様々なジアミンの場合と同様に、少なくとも一つの窒素原子に二つのアリール基が結合している。
【0049】
使用されるジアリールアミンの例には、ジフェニルアミン;アルキル化された各種ジフェニルアミン;3−ヒドロキシジフェニルアミン;N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン;N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン;モノブチルジフェニルアミン;ジブチルジフェニルアミン;モノオクチルジフェニルアミン;ジオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;ジノニルジフェニルアミン;モノテトラデシルジフェニルアミン;ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン;モノオクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン;フェニル−ベータ−ナフチルアミン;モノヘプチルジフェニルアミン;ジヘプチル−ジフェニルアミン;p−配向スチレン化ジフェニルアミン;混合ブチルオクチルジフェニルアミン;および混合オクチルスチリルジフェニルアミンなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0050】
別の種類のアミン系抗酸化剤には、フェノチアジンまたは以下の化学式のアルキル化フェノチアジンが含まれる:
【0051】
【化4】

【0052】
式中Rは直鎖または分岐鎖の約Cから約C24のアルキル、アリール、ヘテロアルキルまたはアルキルアリール基であり、Rは水素、または直鎖あるいは分岐鎖のCからC24のアルキル、ヘテロアルキル、あるいはアルキルアリール基である。アルキル化フェノチアジンは、モノテトラデシルフェノチアジン、ジテトラデシルフェノチアジン、モノデシルフェノチアジン、ジデシルフェノチアジン、モノノニルフェノチアジン、ジノニルフェノチアジン、モノオクチル−フェノチアジン、ジオクチルフェノチアジン、モノブチルフェノチアジン、ジブチルフェノチアジン、モノスチリルフェノチアジン、ジスチリルフェノチアジン、ブチルオクチルフェノチアジン、およびスチリルオクチルフェノチアジンから成る群から選択される。
【0053】
硫黄を含有した抗酸化剤には、それらの製造に使用されるオレフィンの種類と抗酸化剤の最終的な硫黄含有量を特徴とする硫化オレフィンが含まれるが、それらに限定はされない。高分子量のオレフィン、すなわち、平均分子量が168g/モルから351g/モルであるようなオレフィンが望ましい。使用されるオレフィンの非限定的な例としては、アルファオレフィン、異性化されたアルファオレフィン、分岐オレフィン、環状オレフィン、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0054】
アルファオレフィンには、CからC25の任意のアルファオレフィンが含まれるが、それらに限定はされない。アルファオレフィンは、硫化反応の前、または硫化反応の最中に異性化される。内部二重結合および/または分岐を有するアルファオレフィンの、構造および/または配座異性体もまた使用される。例えばイソブチレンは、アルファオレフィン−1−ブテンの分岐オレフィン対応物である。
【0055】
オレフィンの硫化反応で使用される硫黄源には、元素硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、および硫化プロセスの同じ段階または別の段階で加えられたそれらの混合物などが含まれる。
【0056】
不飽和オイルもまた、それらが不飽和であるため、硫化され、抗酸化剤として使用される。使用されるオイルまたは脂質の例に、コーン油、カノーラ油、綿実油、グレープシードオイル、オリーブ油、ヤシ油、ピーナツ油、ココナッツ油、菜種油、ベニバナ種油、ゴ
マ油、大豆油、ヒマワリ油、獣脂、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0057】
完成した潤滑剤に供給される硫化オレフィンあるいは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィンあるいは脂肪油の硫黄含有量、および完成した潤滑剤に供給される希望の硫黄レベルに基づいている。例えば、20重量%の硫黄を含んだ硫化脂肪油あるいはオレフィンは、1.0重量%の処理レベルで完成した潤滑剤に添加されたとき、2,000ppmの硫黄を完成した潤滑剤に供給する。10重量%の硫黄を含んだ硫化脂肪油あるいはオレフィンは、1.0重量%の処理レベルで完成した潤滑剤に添加されたとき、1,000ppmの硫黄を完成した潤滑剤に供給する。200ppmから2,000ppmの間の硫黄を供給するため、完成した潤滑剤に硫化オレフィンあるいは硫化脂肪油を加えることが望ましい。上述のアミン系、フェノチアジン、および硫黄を含有した抗酸化剤については、例えば米国特許第6,599,865号に記載されている。
【0058】
抗酸化添加剤として使用される無灰ジアルキルジチオカーバメートには、添加剤パッケージ内で可溶性または分散可能な化合物が含まれる。無灰ジアルキルジチオカーバメートが、分子量が250ダルトン以上、望ましくは400ダルトン以上の低揮発性のものであることもまた望ましい。使用される無灰ジチオカーバメートの例には、メチレンビス(ジアルキルジチオカーバメート)、エチレンビス(ジアルキルジチオカーバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジアルキルジチオカーバメート)、ヒドロキシアルキル置換のジアルキルジチオカーバメート、不飽和化合物から調製されたジチオカーバメート、ノルボルニレンから調製されたジチオカーバメート、およびエポキシドから調製されたジチオカーバメートなどが含まれるが、それらに限定はされない。ここで、ジアルキルジチオカーバメートのアルキル基は1から16の炭素原子を有することが望ましい。使用されるジアルキルジチオカーバメートの例は、米国特許第5,693,598号、4,876,375号、4,927,552号、4,957,643号、4,885,365号、5,789,357号、5,686,397号、5,902,776号、2,786,866号、2,710,872号、2,384,577号、2,897,152号、3,407,222号、3,867,359号、および4,758,362号に開示されている。
【0059】
無灰ジチオカーバメートの例には、メチレンビス−(ジブチルジチオカーバメート)、エチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジブチルジチオカーバメート)、ジブチルN,N−ジブチル(ジチオカーバミル)コハク酸エステル、2−ヒドロキシプロピルジブチルジチオカーバメート、ブチル(ジブチルジチオカーバミル)アセテート、およびS−カーボメトキシ−エチル−N,N−ジブチルジチオカーバメートなどがある。最も望ましい無灰ジチオカーバメートはメチレンビス−(ジブチルジチオカーバメート)である。
【0060】
当該成分に加え、ジンクジアルキルジチオホスフェート(「Zn DDP」)もまた、潤滑油中で使用される。Zn DDPは、優れた耐摩耗および抗酸化剤特性を有し、Seq.IVAおよびTU3摩耗試験のような、カムの摩耗試験にパスするために使用されている。米国特許第4,904,401号、4,957,649号、および6,114,288号を含む多くの特許が、Zn DDPの製造および用途を扱っている。通常のZn DDPの非限定的な種類に、第一級Zn DDP、第二級Zn DDP、および第一級と第二級のZn DDPの混合物がある。
【0061】
同様に、摩擦調整剤として使用される化合物を含有している有機モリブデンもまた、抗酸化剤の機能を示す。米国特許第6,797,677号には、完成された潤滑剤組成物中で使用される、有機モリブデン化合物、アルキルフェノチジンおよびアルキルジフェニルアミンの組み合わせが記載されている。摩擦調整剤を含有した好適なモリブデンの非限定
的な例については、下記の「摩擦調整剤成分」の項で説明する。
【0062】
本明細書に記載の摩擦調整および磨耗減少成分は、任意のあらゆる組み合わせおよび比率で、上記の任意のあるいはすべての抗酸化剤と共に使用される。フェノール系添加剤、アミン系添加剤、硫黄含有添加剤およびモリブデン含有添加剤などの様々な組み合わせが、ベンチテストやエンジンテスト、または分散剤、VI向上剤、基油、あるいはその他の任意の添加剤の修正に基づいて、完成した潤滑剤組成物用に最適化されるものと考えられている。
【0063】
摩擦調整剤成分
その他の摩擦調整剤として使用される、硫黄およびリンを含有しない有機モリブデン化合物は、硫黄およびリンを含有しないモリブデン源を、アミノ基および/またはアルコール基を含有した有機化合物と反応させることによって調製される。硫黄およびリンを含有しないモリブデン源の例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸カリウムが含まれる。アミノ基は、モノアミン、ジアミン、またはポリアミンである。アルコール基は、一置換のアルコール、ジオールあるいはビスアルコール、またはポリアルコールである。ある例としては、ジアミンと脂肪油の反応により、硫黄およびリンを含有しないモリブデン源との反応が可能な、アミノ基とアルコール基の両方を含有した生産物が生成される。
【0064】
硫黄およびリンを含まない有機モリブデン化合物の例には、以下のものが含まれる:
1. 米国特許第4,259,195号および4,261,843号に記載されるように、特定の塩基性窒素化合物をモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。2. 米国特許第4,164,473号に記載されるように、ヒドロカルビル置換のヒドロキシアルキル化アミンをモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
3. 米国特許第4,266,945号に記載されるように、フェノールアルデヒド縮合生成物、モノアルキル化アルキレンジアミン、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
4. 米国特許第4,889,647号に記載されるように、脂肪油、ジエタノールアミン、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
5. 米国特許第5,137,647号に記載されるように、脂肪油または酸と、2−(2−アミノエチル)アミノエタノール、およびモリブデン源とを反応させることによって調製される化合物。
6. 米国特許第4,692,256号に記載されるように、第二級アミンをモリブデン源と反応させることによって調製される化合物。
7. 米国特許第5,412,130号に記載されるように、ジオール、ジアミノ、またはアミノアルコール化合物と、モリブデン源とを反応させることによって調製される化合物。
8. 米国特許第6,509,303号に記載されるように、脂肪油、モノアルキル化アルキレンジアミン、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
9. 米国特許第6,528,463号に記載されるように、脂肪酸、モノアルキル化アルキレンジアミン、グリセリド、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
【0065】
これらの物質の正確な化学組成は完全には理解されておらず、また事実上いくつかの有機モリブデン化合物の多数の構成要素の混合物である可能性もあるが、脂肪油、ジエタノールアミン、および米国特許第4,889,647号に記載のモリブデン源を反応させることによって調製されるモリブデン化合物は、しばしば以下の構造式で例証され、式中Rは脂肪アルキル鎖である:
【0066】
【化5】

【0067】
硫黄を含有した有機モリブデン化合物は、多様な方法で使用され、また調製される。一つの方法には、硫黄およびリンを含まないモリブデン源を、アミノ基および一つ以上の硫黄源と反応させることが含まれる。硫黄源には、例えば二硫化炭素、硫化水素、硫化ナトリウムおよび硫黄元素が含まれるが、これらに限定はされない。一方、硫黄を含有したモリブデン化合物は、硫黄を含有したモリブデン源を、アミノ基またはチウラム基、および任意的に第二の硫黄源と反応させることによって調製される。
【0068】
硫黄およびリンを含まないモリブデン源の例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびハロゲン化モリブデンが含まれる。アミノ基はモノアミン、ジアミン、あるいはポリアミンである。ある例では、三酸化モリブデンと、第二級アミンおよび二硫化炭素の反応により、モリブデンジチオカーバメートが生成される。一方、(NHMo13n(HO)と二硫化テトラアルキルチウラムとの反応により、三核硫黄含有モリブデンジチオカーバメートが生成されるが、ここでnは0から2の間の数である。
【0069】
特許および特許出願に出てくる、硫黄を含有した有機モリブデン化合物の例には、以下のものが含まれる:
1. 米国特許第3,509,051号および3,356,702号に記載されるように、三酸化モリブデンと第二級アミンおよび二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。
2. 米国特許第4,098,705号に記載されるように、硫黄を含まないモリブデン源と、第二級アミン、二硫化炭素、および追加的な硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
3. 米国特許第4,178,258号に記載されるように、ハロゲン化モリブデンと、第二級アミンおよび二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。
4. 米国特許第4,263,152号、4,265,773号、4,272,387号、4,285,822号、4,369,119号、および4,395,343号に記載されるように、モリブデン源と、塩基性窒素化合物および硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
5. 米国特許第4,283,295号に記載されるように、テトラチオモリブデン酸アンモニウムと、塩基性窒素化合物とを反応させることによって調製される化合物。
6. 米国特許第4,362,633号に記載されるように、オレフィン、硫黄、アミン、およびモリブデン源を反応させることによって調製される化合物。
7. 米国特許第4,402,840号に記載されるように、テトラチオモリブデン酸アンモニウムと、塩基性窒素化合物および有機硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
8. 米国特許第4,466,901号に記載されるように、フェノール系化合物、アミン、およびモリブデン源を、硫黄源とを反応させることによって調製される化合物。
9. 米国特許第4,765,918号に記載されるように、トリグリセリド、塩基性窒素化合物、モリブデン源、および硫黄源を反応させることによって調製される化合物。
10. 米国特許第4,966,719号に記載されるように、アルカリ金属アルキルチオキサントゲン酸塩と、ハロゲン化モリブデンとを反応させることによって調製される化合物。
11. 米国特許第4,978,464号に記載されるように、二硫化テトラアルキルチウラムと、モリブデンヘキサカルボニルとを反応させることによって調製される化合物。12. 米国特許第4,990,271号に記載されるように、アルキルジキサントゲンと、モリブデンヘキサカルボニルとを反応させることによって調製される化合物。
13. 米国特許第4,995,996号に記載されるように、アルカリ金属アルキルキサントゲン酸塩と、テトラ酢酸ジモリブデンとを反応させることによって調製される化合物。
14. 米国特許第6,232,276号に記載されるように、(NHMo13*2HOと、アルカリ金属ジアルキルジチオカーバメートまたは二硫化テトラアルキルチウラムとを反応させることによって調製される化合物。
15. 米国特許第6,103,674号に記載されるように、エステルまたは酸と、ジアミン、モリブデン源、および二硫化炭素とを反応させることによって調製される化合物。
16. 米国特許第6,117,826号に記載されるように、アルカリ金属ジアルキルジチオカーバメートを、3−クロロプロピオン酸、続いて三酸化モリブデンと反応させることによって調製される化合物。
【0070】
モリブデンジチオカーバメートは以下の構造式によって例証され:
【0071】
【化6】

【0072】
式中、Rは4つから18の炭素を含有するアルキル基あるいはHであり、またXはOあるいはSである。
【0073】
グリセリドは、単独で使用されることも、他の摩擦調整剤と組み合わせて使用されることもある。好適なグリセリドには以下の化学式のグリセリドが含まれる:
【0074】
【化7】

【0075】
式中、各Rは独立して、HおよびC(O)R’から成る群から選択されるが、ここでR’は炭素数が3から23の飽和または不飽和アルキル基である。使用されるグリセリドの例としては、モノラウリン酸グリセロール、モノミリスチン酸グリセロール、モノパルミチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、およびヤシ酸、獣脂酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸などから得られるモノグリセリドが含まれる。一般的な市販のモノグリセリドには、相当量の対応するジグリセリドおよびトリグリセリドが含有されている。これらの物質がモリブデン化合物の生産に害を及ぼすことはなく、実際にはより活性である場合もある。モノグリセリドとジグリセリドは任意の比率で使用されるが、30%から70%の利用可能な位置に遊離ヒドロキシル基が含有されることが好ましい(すなわち上記の化学式で表されるグリセリドのR基全体のうち30%から70%は水素である)。好適なグリセリドは、通常オレイン酸およびグリセロールから得られたモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの混合物であるような、グリセロールモノオレエートである。
【0076】
その他の添加剤
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、および陰イオン性のスルホン酸アルキルから成る群から選択された防錆剤が使用される。
【0077】
少量の乳化破壊成分が使用されることもある。好適な乳化破壊成分は、欧州特許第330,522号に記載されている。このような乳化破壊成分は、酸化アルキレンを、ビスエポキシドと多価アルコールの反応から得られる付加化合物、と反応させることによって得られる。乳化破壊剤は、有効成分が0.1質量%を上回らないレベルで使用しなくてはならない。0.001質量%から約0.05質量%の有効成分の処理率が好ましい。
【0078】
別名潤滑油の流動性向上剤としても知られる流動点降下剤は、流体が流動するか、または流体を注ぐことができるようになる最低温度を低下させる。このような添加剤は周知のものである。流体の低温における流動性を向上させる流動点降下剤の典型的なものとして、CからC18のジアルキルフマル酸/酢酸ビニルコポリマーやメタクリル酸ポリアルキル、その他がある。
【0079】
泡の制御は、例えばシリコンオイルやポリジメチルシロキサンなど、ポリシロキサンタイプの消泡剤を含む多くの化合物によってなされる。
【0080】
また、例えば米国特許第3,794,081号および4,029,587号に記載のシール膨張剤が使用されることもある。
【0081】
粘度調整剤(VM)は、潤滑油に高温および低温での操作性を与えるために機能する。使用されるVMは、単一機能であることも多機能性であることもある。
【0082】
さらに、分散剤としても機能する多機能性の粘度調整剤が知られている。好適な粘度調整剤には、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高級アルファオレフィンのコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルのインターポリマー、またスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分的に水素化されたコポリマー、およびブタジエンとイソプレンおよびイソプレン/ジビニルベンゼンの部分的に水素化されたホモポリマーがある。
【0083】
使用される機能化されたオレフィンコポリマーにはまた、無水マレイン酸のような活性モノマーでグラフト化され、次にアルコールあるいはアミンで誘導体化されたプロピレンとエチレンとのインターポリマーが含まれる。その他のこのようなコポリマーとして、窒素化合物でグラフト化されたプロピレンとエチレンとのコポリマーがある。
【0084】
上述の各添加剤が使用される場合、これらは潤滑剤に所望の特性を与えるために機能的に有効な量で使用される。従って、例えば添加剤が腐食防止剤である場合、この腐食防止剤の機能的に有効な量とは、潤滑剤に所望の腐食防止特性を与えるのに十分なだけの量である。通常、これらの添加剤のそれぞれの使用時の濃度は、潤滑油組成物の重量に基づいて約20重量%以下であり、一つの実施態様では、約0.001重量%から約20重量%、また一つの実施態様では、潤滑油組成物の重量に基づき、約0.01重量%から約10重量%である。
【0085】
本明細書に記載の成分は、潤滑油組成物に直接加えられる。しかしながら一つの実施態様では、添加剤濃縮物を形成するため、これらは、鉱油、合成油、ナフサ、アルキル化(例えばC10−C13のアルキル)ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどのような、実質上不活性で通常は液体である有機希釈剤で希釈される。これらの濃縮物には、通常約1重量%から約100重量%、また一つの実施態様では、約10重量%から約90重量%の成分が含有される。
【0086】
基油
本明細書に記載の組成物、添加剤および濃縮物の調合において使用するのに適した基油は、合成油、天然油、またはそれらの混合物のいずれかから選択される。合成基油には、ジカルボン酸、ポリグリコールおよびアルコールのアルキルエステル;末端ヒドロキシル基がエステル化やエーテル化などによって変成された、ポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコンオイル、および酸化アルキレンポリマー、インターポリマー、コポリマー、およびそれらの誘導体などを含むポリアルファオレフィンが含まれ、ここで末端ヒドロキシル基はエステル化、エーテル化、その他によって変成されている。合成油にはさらにガス・ツー・リキッド合成油も含まれる。
【0087】
天然基油には、動物性油および植物性油(例えばキャスターオイル、ラードオイル)、石油、および水素化精製、溶媒処理あるいは酸処理された、パラフィン系、ナフテン系およびパラフィン・ナフテン混合系の鉱物潤滑油が含まれる。石炭あるいは頁岩から得られた、潤滑粘度のオイルもまた有用な基油である。当基油の100℃での粘度は、一般に約2.5cStから約15cSt、望ましくは約2.5cStから約11cStである。
【0088】
以下の実施例は、実施の態様を例示することを目的とするものであり、実施態様をいかようにも制限することを意図したものではない。
【0089】
[実施例3] 油溶性成分の境界摩擦係数
以下の実施例では、基油(EXXON EHC45)を一つ以上のジブロックモノポリマー成分を含有した、基油中の成分の濃度が約0.07重量パーセントになるように、溶液の70重量%が基油となるまでテトラヒドロフラン(TEIF)中で可溶化された成分に加えることができる。異なったサイズの成分を含有する成分溶液の境界摩擦係数は、温度30℃で、高周波往復運動試験装置(HFRR)で測定される。またTHFと基油の30/70重量%の混合物も、対照例として試験される。
【0090】
結果は、当該の成分が純粋な滑り状態で摩擦を低減するのに効果的であることを示す。
【0091】
各成分を含有するオイルの境界摩擦を、エンジンオイル、あるいはその他の潤滑剤の境界摩擦の試験に通常使用される条件に該当する温度で測定するため、当該成分の1重量パーセントの溶液をグループIIの基油に懸濁させる。当該の成分と(EXXON EHC45のような)基油の溶液の境界摩擦係数を、次に100℃で測定する。結果は、当該成分を含まない基油に対し、当該成分が摩擦を低減させることを表す。
【0092】
約0.5重量%から約1.0重量%、あるいはそれ以上の油溶性の成分を含有する調合物により、従来同様、またはより優れた摩擦係数性能や利点を達成し、オイルの腐食性への悪影響が殆どなく、あるいは全くなくしながら、自動車の公害防止設備の性能を向上させるために必要とされる、従来型のリンおよび硫黄耐磨耗剤の量の減少が可能となると期待されている。
【0093】
当明細書の全体を通した多くの箇所で、多数の米国特許が参照されている。このような引用文献はすべて、完全に記載されたものとして当開示に明白に組み込まれている。
【0094】
前述の実施態様はその実施においてかなり変化する余地がある。従って当実施態様は、上記に述べられた特定の例証に制限されることを意図したものではない。むしろ前述の実施態様は、法律的に使用可能なそれらの均等物を含む、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0095】
当特許権者は、開示された実施態様のいずれをも一般に提供することは意図しておらず、また開示された修正または変更は、それらがすべて文言上請求項の範囲内に収まらないとしても、均等論により本発明の一部であると見なされる。
【0096】
本発明の主な特徴及び態様を示せば以下のとおりである。
1. 潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された物質を含んで成る、一定量の油溶性または油分散性の成分を供給すること、および当該の成分を含有した潤滑剤組成物を潤滑しようとしている表面に適用することを含んで成る、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低下させる方法。
2. 潤滑された表面がエンジンドライブトレインを含んで成る、上記1に記載の方法。3. 潤滑された表面が内燃エンジンの内部表面または部品を含んで成る、上記1に記載の方法。
4. 潤滑された表面が圧縮点火エンジンの内部表面または部品を含んで成る、上記1に記載の方法。
5. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性の成分の量が約5重量パーセント以下である、上記1に記載の方法。
6. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性の成分の量が約0.1重量パーセントから約5重量パーセントである、上記1に記載の方法。
7. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性の成分の量が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントである、上記1に記載の方法。
8. エンジンの部品を、潤滑粘度の基油、および光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択され、油溶性または油分散性の成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下まで摩擦係数を低下させるのに十分な量の油溶性または油分散性の成分を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物に接触させることを含んで成る、潤滑剤組成物を含んだエンジンの操作中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低下させる方法。
9. エンジンがヘビーデューティーのディーゼルエンジンを含んで成る、上記8に記載の方法。
10. 完全に調合された潤滑剤組成物中の成分の量が約5重量パーセント以下である、上記8に記載の方法。
11. 完全に調合された潤滑剤組成物中の成分の量が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントである、上記8に記載の方法。
12. 潤滑油を使用して、可動部間の磨耗を低減させる方法であって、当該方法は、基油、および磨耗減少剤を含むオイル添加剤パッケージを含有する潤滑剤組成物を一つ以上の可動部のための潤滑油として使用することを含んでなり、ここで当該の磨耗減少剤は、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された成分より成る方法。
13. 可動部がエンジンの可動部を含んで成る、上記12に記載の方法。
14. エンジンが圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジンから成る群から選択される、上記12に記載の方法。
15. エンジンにクランクケースを備えた内燃エンジンが含まれ、また潤滑油がエンジンのクランクケース中に存在するクランクケースオイルを含んで成る、上記12に記載の方法。
16. 潤滑油がエンジンを含む車両のドライブトレイン中に存在するドライブトレイン潤滑剤を含んで成る、上記12に記載の方法。
17. 磨耗減少剤が約5重量パーセント以下の量で潤滑剤組成物中に存在する、上記12に記載の方法。
18. 磨耗減少剤が約0.1重量パーセントから約5重量パーセントの量で潤滑剤組成物中に存在する、上記12に記載の方法。
19. 磨耗減少剤が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントの量で潤滑剤組成物中に存在する、上記12に記載の方法。
20. 潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された物質を含んで成る、一定量の油溶性または油分散性の成分を供給すること、また当該成分を含有する潤滑剤組成物を潤滑しようとしている表面に適用することを含んで成る、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低下させる方法であって、ここで当該成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい方法。
21. エンジンの部品を、潤滑粘度の基油、および光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択され、油溶性または油分散性の成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下まで摩擦係数を低下させるのに十分な量の油溶性または油分散性の成分を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物に接触させることを含んで成る、潤滑剤組成物を含んだエンジンの操作中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低下させる方法であって、ここで当該成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい方法。
22. (a)ガソリン、ディーゼル、およびバイオディーゼル燃料から成る群から選択された燃料、および(b)光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された成分、を含んでなる燃料組成物。
23. (a)ガソリン、ディーゼル、およびバイオディーゼル燃料から成る群から選択された燃料、および(b)第一のブロックと第二のブロックを有する、油溶性または油分散性のジブロックポリマー、を含んでなる燃料組成物。
24. 潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の、第一のブロックと第二のブロックを有する、油溶性または油分散性のジブロックポリマーを供給すること、及びジブロックポリマーを含有する潤滑剤組成物を潤滑しようとしている表面に適用することを含んで成る、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低下させる方法。
25. 上述の第一のブロックが光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアであり、上述の第二のブロックが油溶性のジブロックアクリレートコポリマーのコロナである、上記24に記載の方法。
26. 上述の第一のブロックが基本的にポリ(2−シンナモイルオキシエチルアクリレート)、ポリ[2−シンナモイルオキシエチルアクリレート)−ラン−(2−オクタノイルオキシエチルアクリレート)]、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されたものである、上記24に記載の方法。
27. 上述の第一のブロックと第二のブロックが化学反応してミセルを形成する、上記24に記載の方法。
28. 潤滑された表面がエンジンドライブトレインを含んで成る、上記24に記載の方法。
29. 潤滑された表面が内燃エンジンの内部表面または部品を含んで成る、上記24に記載の方法。
30. 潤滑された表面が圧縮点火エンジンの内部表面または部品を含んで成る、上記24に記載の方法。
31. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分の量が約5重量パーセントまでの範囲である、上記24に記載の方法。
32. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分の量が約0.1重量パーセントから約5重量パーセントの範囲である、上記24に記載の方法。
33. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分の量が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントの範囲である、上記24に記載の方法。
34. エンジンの部品を、潤滑粘度の基油、および光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下まで摩擦係数を低下させるのに十分な量の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物に接触させることを含んで成る、潤滑剤組成物を含んだエンジンの操作中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低下させる方法。
35. エンジンがヘビーデューティーディーゼルエンジンを含んで成る、上記34に記載の方法。
36. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分の量が約5重量パーセント以下である、上記34に記載の方法。
37. 完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分の量が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントである、上記34に記載の方法。
38. 潤滑油を使用して、可動部間の磨耗を低減させる方法であって、当該方法は、基油、および磨耗減少剤を含むオイル添加剤パッケージを含有する潤滑剤組成物を一つ以上の可動部のための潤滑油として使用することを含んで成り、ここで当該の磨耗減少剤は、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んでなる方法。
39. 可動部がエンジンの可動部を含んで成る、上記38に記載の方法。
40. エンジンが圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジンから成る群から選択される、上記39に記載の方法。
41. エンジンがクランクケースを備えた内燃エンジンを含み、また潤滑油がエンジンのクランクケース中に存在するクランクケースオイルを含んで成る、上記39に記載の方法。
42. 潤滑油がエンジンを含む車両のドライブトレイン中に存在するドライブトレイン潤滑剤を含んで成る、上記39に記載の方法。
43. 磨耗減少剤が約5重量パーセント以下の範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する、上記38に記載の方法。
44. 磨耗減少剤が約0.1重量パーセントから約5重量パーセントの範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する、上記38に記載の方法。
45. 磨耗減少剤が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントの範囲の量で潤滑剤組成物中に存在する、上記38に記載の方法。
46. 潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を供給すること、及びジブロックポリマー成分を含有する潤滑剤組成物を潤滑しようとしている表面に適用することを含んで成る、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低下させる方法であって、ここで、当該ジブロックポリマー成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい方法。
47. エンジンの部品を、潤滑粘度の基油、および光架橋の可能なポリ(2−シンナモ
イルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下まで摩擦係数を低下するのに十分な量の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んで成り、完全に調合された潤滑剤組成物に接触させることを含んで成り、潤滑剤組成物を含んだエンジンの操作中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低下させる方法であって、ここで当該ジブロックポリマー成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい方法。
48. 第一のブロックと第二のブロックとを有する、油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分、および潤滑粘度の基油を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物。49. 上述の第一のブロックが光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアであり、上述の第二のブロックが油溶性ジブロックアクリレートコポリマーのコロナである、上記48に記載の組成物。
50. 上述のジブロックポリマー成分を含有する上述の潤滑剤組成物が、可動部間の磨耗を、上述のジブロックポリマー成分を含まない潤滑剤組成物中の磨耗の量よりも低く低減させる、上記48に記載の組成物。
51. 上述のジブロックポリマー成分が、隣接した潤滑表面の摩擦係数を、油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含まない潤滑剤組成物の摩擦係数以下に低下させるのに十分な量で存在する、上記48に記載の組成物。
52. 上述のジブロックポリマー成分が、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を、油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含まないエンジン潤滑剤組成物の摩擦係数以下に低下させるのに十分な量で存在する、上記48に記載の組成物。
53. エンジンオイル、ギアオイル、自動変速機液、手動変速機液、油圧オイル、金属加工液、および工業用オイルから成る群から選択された潤滑油に、摩擦低減または磨耗減少をもたらすための成分の使用方法であって、ここで上述の成分は、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択される方法。
54. (a)光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された油溶性または油分散性の成分;および
(b)潤滑粘度の基油、を含んでなる完全に調合された潤滑剤組成物。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】油溶性ジブロックポリマーに、MTM装置中のGMO(グリセロールモノオレエート)のような従来型の摩擦低減剤よりも、摩擦および磨耗をより低下させる能力があることを示したデータのグラフである。
【図2】発明の成分の摩擦係数がより低いことを示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された物質を含んで成る、一定量の油溶性または油分散性の成分を供給すること、および当該の成分を含有した潤滑剤組成物を潤滑しようとしている表面に適用することを含んで成る、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低下させる方法。
【請求項2】
エンジンの部品を、潤滑粘度の基油、および光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択され、油溶性または油分散性の成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下まで摩擦係数を低下させるのに十分な量の油溶性または油分散性の成分、を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物に接触させることを含んで成る、潤滑剤組成物を含んだエンジンの操作中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低下させる方法。
【請求項3】
潤滑油を使用して、可動部間の磨耗を低減させる方法であって、当該方法は、基油、および磨耗減少剤を含むオイル添加剤パッケージを含有する潤滑剤組成物を一つ以上の可動部のための潤滑油として使用することを含んで成り、ここで当該の磨耗減少剤は、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された成分より成る方法。
【請求項4】
潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された物質を含んで成る、一定量の油溶性または油分散性の成分を供給すること、また当該成分を含有する潤滑剤組成物を潤滑しようとしている表面に適用することを含んで成る、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低下させる方法であって、ここで当該成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい方法。
【請求項5】
エンジンの部品を、潤滑粘度の基油、および光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択され、油溶性または油分散性の成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下まで摩擦係数を低下させるのに十分な量の油溶性または油分散性の成分を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物に接触させることを含んで成る、潤滑剤組成物を含んだエンジンの操作中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低下させる方法であって、ここでこのとき当該成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい方法。
【請求項6】
(a)ガソリン、ディーゼル、およびバイオディーゼル燃料から成る群から選択された燃料、および(b)光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された成分、を含んでなる燃料組成物。
【請求項7】
(a)ガソリン、ディーゼル、およびバイオディーゼル燃料から成る群から選択された燃料、および(b)第一のブロックと第二のブロックを有する、油溶性または油分散性のジブロックポリマー、を含んでなる燃料組成物。
【請求項8】
潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の、第一のブロックと第二のブロックを有する、油溶性または油分散性のジブロックポリマーを供給すること、及びジブロックポリマーを含有する潤滑剤組成物を潤滑しようとしている表面に適用することを含んで成る、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低下させる方法。
【請求項9】
エンジンの部品を、潤滑粘度の基油、および光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下まで摩擦係数を低下させるのに十分な量の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物に接触させることを含んで成る、潤滑剤組成物を含んだエンジンの操作中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低下させる方法。
【請求項10】
エンジンがヘビーデューティーディーゼルエンジンを含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分の量が約5重量パーセント以下である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
完全に調合された潤滑剤組成物中の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分の量が約0.5重量パーセントから約2重量パーセントである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
潤滑油を使用して、可動部間の磨耗を低減させる方法であって、当該方法は、基油、および磨耗減少剤を含むオイル添加剤パッケージを含有する潤滑剤組成物を一つ以上の可動部のための潤滑油として使用することを含んでなり、ここで当該の磨耗減少剤は、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んで成る方法。
【請求項14】
潤滑粘度の基油を含有した完全に調合された潤滑剤組成物中の光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、一定量の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を供給すること、及びジブロックポリマー成分を含有する潤滑剤組成物を潤滑しようとしている表面に適用することを含んで成る、隣接した潤滑表面の摩擦係数を低下させる方法であって、ここで、当該ジブロックポリマー成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい方法。
【請求項15】
エンジンの部品を、潤滑粘度の基油、および光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから得られた、油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んでいない潤滑剤組成物の摩擦係数以下まで摩擦係数を低下するのに十分な量の油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分を含んで成り、完全に調合された潤滑剤組成物に接触させることを含んで成り、潤滑剤組成物を含んだエンジンの操作中に、エンジン潤滑剤組成物の摩擦係数を低下させる方法であって、ここで当該ジブロックポリマー成分のコアの直径は潤滑剤組成物の膜厚よりも大きい方法。
【請求項16】
第一のブロックと第二のブロックとを有する、油溶性または油分散性のジブロックポリマー成分、および潤滑粘度の基油を含んで成る、完全に調合された潤滑剤組成物。
【請求項17】
エンジンオイル、ギアオイル、自動変速機液、手動変速機液、油圧オイル、金属加工液、および工業用オイルから成る群から選択された潤滑油に、摩擦低減または磨耗減少をもたらすための成分の使用方法であって、ここで上述の成分は、光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択される方法。
【請求項18】
(a)光架橋の可能なポリ(2−シンナモイルオキシアルキルアクリレート)コアおよびジブロックアクリレートコポリマーのコロナから成る群から選択された油溶性または油分散性の成分;および
(b)潤滑粘度の基油、
を含んでなる完全に調合された潤滑剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−297622(P2007−297622A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109719(P2007−109719)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】