説明

火災報知設備

【課題】小規模な建物に設置されている簡易な火災感知器を点検する場合において、火災感知器の動作を確実に点検した結果である点検票であって、点検作業の履歴を保持する点検票を作成するためのデータを生成することができる火災報知設備を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも1つの感知器回線が引き出される火災受信機と、上記感知器回線に必要数が接続されている火災感知器とを備える火災報知設備において、上記火災受信機は、上記感知器回線の火災信号を検出したときにおける情報である回線情報を記憶する記憶手段、または、上記記憶手段が着脱される端子部を有し、上記火災感知器は、各火災感知器を個別に識別する固有の識別情報を保持し、外部のリーダによって上記固有の識別情報が非接触で読み出されるICタグを有する火災報知設備である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知設備に係り、特に、点検作業を確実にチェックすることができる火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の防火対象物となる建物等には、消防用設備として火災報知設備の設置が義務付けられている。また、火災報知設備を定期的に点検することも義務付けられ、火災感知器が正常に動作して火災警報を発するかどうかを点検し、この点検結果を消防署等に提出する必要がある。このようにして、設備の維持管理が図られている。
【0003】
火災感知器には、煙感知器や熱感知器等が用いられ、熱感知器を動作させるためには、動作試験器として、長いロッドの先に筒状のチャンバを付け、チャンバ内に設けられているヒータ等によって熱を加える加熱試験器を、熱感知器に当接し、熱感知器を動作させる。煙感知器を動作させるためには、上記チャンバ内で擬似的な煙を発生させる加煙試験器を、天井面等に設置されている煙感知器に当接し、煙感知器を動作させる。
【0004】
このような火災感知器の点検作業を行い、しかも、火災感知器の点検漏れをなくすために、各火災感知器の型式番号、製造年、製造番号等の情報を読み出すシステムが知られ、電磁誘導波によって非接触かつ省電力で情報を読み書きできるICタグを利用することが提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−177695号公報
【特許文献2】特開2005−208885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
火災報知設備の点検作業において、動作試験器を当接させた火災感知器から情報を読み出し、動作させた火災感知器を特定したとしても、各火災感知器が火災信号を出力していない場合もある。
【0007】
つまり、火災感知器に設けられている動作表示灯の点灯を、作業時に目視で確認することによって、火災感知器の動作をチェックすることはでき、また、火災受信機が発した警報音を作業時に聞くことによって火災感知器の動作をチェックすることはできる。しかし、動作表示灯が点灯していないのに、点検の作業員が点灯状態を見たと錯覚し、また、火災受信機が警報音を発しないのに、警報音を聞いたと錯覚することがある。この場合には、火災感知器が正常に火災信号を発しないのに、正常に火災発報したという点検結果が出る。さらに、点検結果の情報を保持しないので、点検作業後に、点検結果をチェックすることができない。
【0008】
近年、小規模の建物で多数の死者が出る火災が発生している。小規模な建物の場合、コスト面から、簡素な機器で火災報知設備が構成されることが多く、自動点検機能や火災信号の履歴をデータとして保持する機能を設けることができない。したがって、上記のように、点検結果を正確にチェックすることができず、また、点検作業の履歴を保持することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、小規模な建物に設置されている簡易な火災感知器を点検する場合において、火災感知器の動作を確実に点検した結果である点検票とし、点検作業の履歴を保持する点検票を作成するためのデータを生成することができる火災報知設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも1つの感知器回線が引き出される火災受信機と、上記感知器回線に必要数が接続されている火災感知器とを備える火災報知設備において、上記火災受信機は、上記感知器回線の火災信号を検出したときにおける情報である回線情報を記憶する記憶手段、または、上記記憶手段が着脱される端子部を有し、上記火災感知器は、各火災感知器を個別に識別する固有の識別情報を保持し、外部のリーダによって上記固有の識別情報が非接触で読み出されるICタグを有することを特徴とする火災報知設備である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小規模な建物に設置されている簡易な火災感知器を点検する場合において、火災感知器の動作を確実に点検した結果である点検票とし、点検作業の履歴を保持する点検票を作成するためのデータを生成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1である火災報知設備100のシステム構成を示す図である。
【図2】実施例1における動作試験の作業手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1である火災報知設備100のシステム全体を示す構成図である。
【0015】
火災報知設備100は、熱感知器SE1、SE2、SE3と、ICタグT1、T2、T3と、火災受信機20と、複数でもよい感知器回線30と、動作試験器としての加熱試験器40と、信号処理装置50と、プリンタ60とを有する。
【0016】
熱感知器SE1は、たとえば火災によって発生する熱による温度上昇を捕らえる差動スポット型熱感知器であり、ICタグT1が貼り付けられている。また、熱感知器SE1は、動作すると動作表示灯(図示せず)を点灯し、感知器回線30に火災信号を出力する。火災を感知すると、いわゆるスイッチング回路によって、C、Lの2本の電線間が低インピーダンス状態になり、これによって、火災受信機20に火災信号が送出される。なお、火災信号の出力方式は、この方式に限る必要はない。熱感知器SE1は、監視区画の大きさ等に応じて、必要数が感知器回線30に接続されている。
【0017】
熱感知器SE2、SE3の構成は、熱感知器SE1の構成と同様である。
【0018】
なお、火災感知器として熱感知器を設ける必要はなく、煙感知器等を設けるようにしてもよい。また、熱感知器と煙感知器とが混在されていてもよい。
【0019】
ICタグT1は、熱感知器SE1の本体外周面に貼付され、図示しないが、シート状の基板に、ICチップ部とアンテナ部とが平面状に設けられいるものである。ICタグT1のICチップ部には、熱感知器SE1を個別に識別する固有の識別番号が格納されている。この固有の識別番号は、同一設備の中で、さらには同一回線の中で、個々の火災感知器を区別する番号である。また、ICタグT1は、自身では電源を持たず、加熱試験器40に設けられているリーダ41からの電磁誘導波によって与えられた電力によって作動し、識別情報としての識別番号を送信する。
【0020】
また、ICタグT1は、感知器の固有の識別番号のみを保持するだけで十分であるが、熱感知器SE1の型式番号や製造年等の情報をも同時に格納するようにしてもよい。このようにすることによって、いわゆる型式失効となっている場合や、不具合品を回収したい場合に、上記格納された情報を利用することができ、点検作業とは異なる場面で利用することができる。これらの情報を、リーダ41が同時に読み出すことができるようにしてもよい。
【0021】
なお、上記固有の識別番号として、同じ番号の火災感知器が他に存在しないような大きな数、たとえば、2の45乗までの数字を準備するようにしてもよい。このように大きな数を上記固有の識別番号とし使用することによって、熱感知器SE1にICタグT1を無作為に貼付しても、識別番号が重複することがない。また、ICタグT1を含む大量のICタグを一度に製造しても、識別番号の重複がなく、コスト面で有利であり、小規模な設備において、大きな負担なしに導入できるというメリットがある。
【0022】
なお、熱感知器SE2には、熱感知器SE2の固有の識別情報を格納し、ICタグT1と同様のICタグT2が貼り付けられ、熱感知器SE3には、熱感知器SE3の固有の識別情報を格納し、ICタグT1と同様のICタグT3が貼り付けられている。
【0023】
以下の説明では、熱感知器SE1〜SE3を代表して、熱感知器SE1に着目して説明し、必要な場合には熱感知器SE2、SE3にも記述する。
【0024】
火災受信機20は、熱感知器SE1が出力する火災信号を、感知器回線30を介して受信し、火災警報等の必要な火災動作を行い、詳細な説明は省略するが、火災受信機20の盤面において、火災発生の表示を行うとともに、いわゆる主音響が鳴動され、また、必要な地区音響の鳴動(一斉鳴動または地区鳴動の方式で)を制御する。
【0025】
火災受信機20は、いわゆるP型である。感知器回線30を低インピーダンス状態にすることによって火災信号が出力されるので、この状態を監視して、火災信号を検出する受信回路(図示せず)が、火災受信機20に設けられている。
【0026】
また、火災受信機20には、端子部22を介して、記憶装置24が設けられ、記憶装置24は、回線毎に火災信号の数を計数するカウンタ21と、火災受信機20のカウンタ21が計数した火災信号の数を記憶する記憶手段23とを有する。カウンタ21が計数した火災信号の数を、以下では、回線情報という。
【0027】
記憶手段23は、火災受信機20内に固定されてもよいが、火災受信機20の端子部22に着脱可能とされており、この場合、通常状態では、記憶装置24は端子部22に接続されていなくてもよく、信号処理装置50で信号処理するに先立って、端子部22に記憶手段23を接続し、発報回数を記憶手段23に格納した後に、記憶装置24を端子部22から取り外し、信号処理装置50に装着するようにできる。
【0028】
感知器回線30は、火災受信機20の筐体内に引き込まれ、所定の端子に接続されることによって、火災受信機20の受信回路に接続され、また、別途、記憶装置24が着脱される端子部22にも接続され、記憶装置24が感知器回線30の状態を監視することができ、火災信号を検出できる。
【0029】
感知器回線30は、火災受信機20から引き出され、熱感知器SE1のような火災感知器が接続されるものであり、設置されている建物等の規模に応じて、1または複数設置される。建物等、または、フロア毎等のように、複数の地区が設定され、地区毎に、感知器回線30が配線されている。上記地区には、地区番号が付与され、この地区番号に合わせて、感知器回線30が、回線番号で管理されている。
【0030】
加熱試験器40は、熱感知器SE1を動作試験するために用いられる動作試験器であり、ロッドの先端に設けたフード内に設けられているヒータ等の発熱体または蓄熱体から熱感知器SE1に熱を伝え、熱感知器SE1を動作させる。ここで、熱感知器SE1に対して加熱試験器40を用いるが、火災感知器が煙感知器である場合には、加煙試験器が用いられ、火災感知器の種別に応じて対応する試験器が用いられる。
【0031】
この加熱試験器40には、リーダ41と、記憶手段42とが設けられている。リーダ41は、電磁誘導波を利用して非接触で、ICタグT1に格納されている識別情報(識別番号)を読み出す。記憶手段42は、リーダ41が読み出した識別情報を、発報情報として格納する。
【0032】
リーダ41は、ICタグT1のアンテナ部に電磁誘導波を発するアンテナ(図示せず)を備え、この電磁誘導波によって、ICタグT1に作動電力を供給する。リーダ41は、電磁誘導波の発信後に、ICタグT1から、熱感知器SE1の固有の識別情報を無線受信する。
【0033】
信号処理装置50は、比較手段51と、点検票のデータ作成手段52とを有する。比較手段51は、加熱試験器40の記憶手段42が記憶している熱感知器の識別情報の数と、火災受信機20の記憶手段23が記憶している受信した火災信号の数とを比較する。点検票のデータ作成手段52は、熱感知器の識別情報の数と、火災受信機20の記憶手段23が記憶している受信した火災信号の数とが同数であれば、動作試験が正常に行われたと判断し、プリンタ60に点検票打ち出し指令信号を送信する。
【0034】
次に、実施例1の動作について説明する。
【0035】
図2は、実施例1における動作試験の手順を示すフローチャートである。
【0036】
まず、S1で、準備段階を実行する。火災受信機20に記憶手段23が設けられている。火災受信機20に記憶手段23が設けられていなければ、準備段階として、火災受信機20の端子部22に、着脱自在の記憶手段23を装着する。ここで、設置されている各熱感知器SE1、SE2、SE3には、それぞれICタグT1、T2、T3が予め貼付されている。動作試験を開始する前に、熱感知器にICタグが貼付されていなければ、動作試験前に、ICタグを熱感知器に貼付する。
【0037】
また、準備段階において、火災受信機20は、いわゆる保守モードに設定される。この保守モードは、火災信号を受けた後に直ちに自動復旧するモードである。すなわち、火災受信機20の機能は、通常、熱感知器が発した火災信号を自動復旧することはできない。つまり、同じ感知器回線30を介して、1つ目の火災信号を受けると、復旧の操作をしない限り、2つ目の火災信号を受信できない。しかし、動作試験時においては、保守モードに設定し、火災信号を受けた後に直ちに自動復旧するように設定する。これによって、動作試験時に火災受信機20の近傍に作業員を配置する必要がない。なお、自動復旧させない場合には、火災受信機20の盤面に、別の作業員を張り付かせ、熱感知器を動作させる作業員と連絡を取りながら、別の作業員が火災信号を復旧させる操作を行なわせる。
【0038】
次に、実際に動作試験する作業段階について説明する。
【0039】
S2で、動作試験する作業段階を実行し、この作業段階では、3つの、熱感知器SE1、SE2、SE3について動作試験を行なうとする。作業段階において、加熱試験器40を用いて、作業員が、熱感知器SE1、SE2、SE3を順次加熱し、熱感知器SE1、SE2、SE3を動作させる。
【0040】
まず、加熱試験器40を、熱感知器SE1に近づけ、熱感知器SE1が動作し、電磁誘導波によって、加熱される熱感知器SE1に設けられているICタグT1に電力が供給され、加熱試験器40に設けられているスイッチ(図示せず)を操作することによって、リーダ41が起動され、ICタグT1から、熱感知器SE1の固有の識別番号を、非接触で読み出す。読み出された識別番号を、発報情報として、加熱試験機40に設けられている記憶手段42に保存する。
【0041】
なお、リーダ41が熱感知器SE1の識別情報を読出す動作は、非接触であり、しかも半永久的に行うことができる。リーダ41とICタグT1とが離れていても、その間隔が少なければ、識別情報を読み出すことが可能である。また、加熱試験器40を熱感知器SE1にほとんど接触させる程度に近づけて動作試験するので、加熱試験器40における消費電力が少ない。また、熱感知器SE1とこの隣に設置されている熱感知器SE2との間隔が十分にあるので、2台の熱感知器SE1、SE2が識別情報を同時に発することがなく、仮に識別情報を同時に発したとしても、加熱試験器40から遠い位置に存在している熱感知器SE2から、その識別情報を加熱試験器40が受信することがない。
【0042】
そして、加熱試験器40を、熱感知器SE2に近づけ、熱感知器SE2が動作し、加熱試験器40に設けられている上記スイッチを操作することによって、リーダ41が起動され、熱感知器SE2に設けられているICタグT2に電力が供給され、ICタグT2から、熱感知器SE2の固有の識別番号を、非接触で読み出す。熱感知器SE3についても、上記と同様にして、ICタグT3から、熱感知器SE3の固有の識別番号を、非接触で読み出す。
【0043】
なお、リーダ41を設ける代わりに、リード機能とライタ機能とを併せ持つ読み書き装置を設け、ICタグT1、T2、T3に所定情報を書き込みするようにしてもよい。上記書き込む所定情報として、動作試験の実施日の情報が考えられる。
【0044】
つまり、動作試験として、熱感知器SE1、SE2、SE3を順次動作させると、熱感知器SE1、SE2、SE3の識別番号を、発報情報として、順次、記憶手段42に蓄積する。
【0045】
この作業段階において、動作した熱感知器SE1、SE2、SE3が、感知器回線30を介して、火災受信機20に火災信号を出力するが、熱感知器を動作させている作業者には、火災信号を目視することができない。この火災信号は、感知器回線30を介して、火災受信機20に到達し、火災受信機20の受信回路が火災信号を検出する。このときに、火災受信機20に設けられているカウンタ21が、火災信号を検出した回線毎に火災信号を計数し、カウンタ21が計数した計数値を、回線情報として記憶手段23が保持する。
【0046】
次に、S3で確認段階を実行する。この確認段階では、加熱試験器40の記憶手段42が記憶している熱感知器の識別情報の数と、火災受信機20の記憶手段23が記憶している受信した火災信号の数とを、比較手段51が突合せ、互いに同数であれば、動作試験が正常に行われたと判断する。なお、同一の識別番号が複数設定されていることはないが、同一の識別番号を複数検出した場合、その識別番号は1つであるとして計数する。
【0047】
そして、S4で作成段階を実行する。この作成段階では、信号処理装置50は、動作試験が正常に行なわれたと判断されると、プリンタ60に点検票打ち出し指令信号と点検票作成のデータとを送信し、プリンタ60が、動作試験の結果を示す点検票を出力する。すなわち、上記の動作試験による点検作業の結果を、所定の様式で記載した点検票を作成し、消防署等の関係機関に報告する。その際に、この信号処理装置50を用い、点検票61を作成し、この点検票61を見れば、上記確認段階で動作試験が正常終了したと判断されたことを認識することができる。
【0048】
このように、実施例1は、火災受信機20に記憶手段23が設けられ、火災感知器としての各熱感知器SE1〜SE3に、識別情報が格納されているICタグT1〜T3が貼付されている状態で、リーダ41と記憶手段42とを備えた動作試験器である加熱試験器40を用いて、各熱感知器SE1〜SE3を順次動作させる作業段階と、この作業段階で蓄積された、記憶手段23の回線情報と記憶手段24の発報情報とを対比して、動作試験が正常に行われたと判断する確認段階と、この確認段階で動作試験が正常に行われたと判断された場合に、プリンタ60から動作試験の結果を示す点検票を出力する作成段階とからなる火災報知設備の動作試験方法であって、各火災感知器が動作したことを確認した場合にのみ点検票を出力することができる。
【0049】
なお、熱感知器SE1が動作すると、熱感知器SE1に設けられている動作表示灯(図示せず)が点灯するので、熱感知器SE1を動作させる作業員がこの点灯を見れば、熱感知器SE1が動作したことを、作業員が確認することができる。
【0050】
この場合、熱感知器SE1の動作表示灯が点灯することによって発生した光を検出する受光手段を加熱試験器40に設け、熱感知器SE1の動作表示灯の点灯を上記受光手段が検出することによって、熱感知器SE1の動作を確認できた場合にのみ、加熱試験器40に設けられている記憶手段42が識別番号を保存できるようにしてもよい。また、識別番号とは別に、動作表示灯の点灯の有無を、情報として、記憶手段42に同時に保存するようにしてもよい。
【0051】
上記実施例において、信号処理装置50に、設置情報を予め記憶しておくようにしてもよい。上記設置情報は、各熱感知器に予め付与されている識別番号を把握し、この識別番号が付与されている熱感知器が設置されている場所と上記識別番号とを対応させた情報である。
【0052】
そして、記憶手段42に格納されている識別情報を使い、上記設置情報から、熱感知器が設定されている場所の情報を取り出し、回線毎の個数として算出する。
【0053】
ここで、たとえば、熱感知器内の少なくとも1つが火災信号を出力していないとすると、上記比較の結果、ある地区における両者の数が合わないので、数の合わない感知器回線30の地区について、動作試験を改めて実行する対応か、その地区に設けられている熱感知器のそれぞれの機能をチェックすること等の対応が必要になる。
【0054】
なお、火災感知器として、熱感知器SE1だけでなく、場所によっては煙感知器も利用されるので、火災感知器の種類に応じた発報情報を、加煙試験器のような動作試験器の記憶手段から信号処理装置50に取り込めるようにすることが望ましい。そして、信号処理装置50内で複数の発報情報を足し合わせた後に、上記のように、回線情報と発報回数と比較する。
【0055】
上記手順において、動作試験による火災信号の確認を、発報情報(加熱試験器40のリーダ41が読み取った火災感知器の識別番号の数)と回線情報(回線毎に熱感知器から受信した火災信号の個数)とを比較する。このようにする代わりに、個々の熱感知器毎に、火災信号の有無を確認する方法として、情報取得時の時刻を利用して火災信号の発生の有無を判断するようにしてもよい。すなわち、加熱試験器40のリーダ41が、熱感知器SE1の識別番号を読み出した時刻(読出し時刻)を、記憶手段42に記憶し、また、感知器回線30から火災信号を火災受信機20が検出した時刻(検出時刻)を、火災受信機20の記憶手段23が格納するようにしてもよい。なお、上記火災信号を受信した時刻も、回線情報である。
【0056】
熱感知器が火災信号を発する時刻は、その熱感知器の識別番号をリーダ41が読み出した時刻と同時またはその後であり、火災受信機40が火災信号を検出する時刻は、リーダ41が識別番号を読出した時刻と同時またはその後となる。そして、検出時刻を挟まずに、読出し時刻が連続して発生することがない。つまり、経時的に各時刻を見ると、読出し時刻、検出時刻、読出し時刻、検出時刻、の順に時刻が発生し、すなわち、読出し時刻と、検出時刻とが交互に発生する。
【0057】
火災信号が発生しなければ、1つの読み出し時刻の次に、検出時刻が発生せずに、次の読出し時刻が発生し、読出し時刻が連続するので、この連続した読出し時刻のうちで、先に発生した読出し時刻に対応する識別番号が付与されている熱感知器が、火災信号を発生していないと判断することができる。このように、時刻を利用して、火災信号を発生していない熱感知器を特定することができる。
【0058】
また、上記確認段階において、信号処理装置50は、発報情報と回線情報とを比較するが、予め把握している設置情報を参照することが好ましい。この設置情報は、熱感知器の設備図を参照し、動作試験した熱感知器が少ない地区がどの地区であるかを示す情報や、火災信号を出力しなかった熱感知器の設置位置を示す情報である。これによって、動作試験した熱感知器が少ない地区や、火災信号を出力しなかった熱感知器の設置位置を簡単に理解することができる。
【0059】
上記実施例によれば、各火災感知器が固有の識別情報を有し、動作試験時に動作させた火災感知器を互いに区別できるので、各火災感知器から出力した火災信号数に関する情報を作成でき、また、動作させた火災感知器からの火災信号を受信する火災受信機が、火災信号を検出することによって、火災信号数に関する情報を作成することができ、これらを比較することによって、動作させた火災感知器から火災信号が確実に出力されていることを認識することができる。
【0060】
また、各火災感知器から識別情報を非接触で読み出すリーダ41を動作試験器40に設ければ、動作試験器40を用いるときに火災感知器から識別情報を読み出すことができ、これによって、順次動作させる火災感知器のそれぞれから識別情報を読み出し、蓄積することができる。
【0061】
なお、上記実施例において、熱感知器SE1〜SE3が、自己アドレスを付与され、火災信号とともに自己アドレスを火災受信機20に送信するR型では、回線を伝送される伝送信号が、上記回線情報である。
【0062】
上記のように、実施例1は、少なくとも1つの感知器回線30が引き出される火災受信機20と、上記感知器回線30に必要数が接続されている火災感知器とを備える火災報知設備において、上記火災受信機20は、上記感知器回線30の火災信号を検出したときにおける情報である回線情報を記憶する記憶手段23、または、記憶手段23が着脱される端子部22を有し、上記火災感知器としての熱感知器SE1〜SE3は、各火災感知器を個別に識別する識別情報を保持し、外部のリーダ41によって上記固有の識別情報が非接触で読み出されるICタグT1〜T3を有する。
【0063】
この結果、小規模な建物に設置されている簡易な火災感知器としての熱感知器SE1〜SE3等を点検する場合において、熱感知器の動作を確実に点検した結果である点検票として、点検作業の履歴を保持する点検票を作成するためのデータを生成することができる。
【0064】
さらに、この実施例1では、上記回線情報は、上記火災信号の数、上記火災信号を受信した時刻、伝送信号のうちの少なくとも1つであり、また、リーダ41は、動作試験器としての加熱試験器40に設けられ、加熱試験器40を火災感知器としての熱感知器SE1〜SE3に近づけたときに、動作させる火災感知器の識別情報としての識別番号を読み出す手段である。
【0065】
またさらに、上記回線情報は、上記火災信号を受信した時刻であり、火災受信機20は、上記火災信号を受信した時刻を記憶する第1の記憶手段としての記憶手段23、または、記憶手段23が着脱される端子部22を有し、リーダ41は、上記識別情報とともに上記識別情報を読み取った時刻を記憶する第2の記憶手段としての記憶手段24を有することができ、この結果、熱感知器SE1〜SE3の動作を、火災信号の受信との関係として時刻で対比できるように、点検作業の履歴を保持する点検票を作成するためのデータを生成することができる。
【符号の説明】
【0066】
SE1、SE2、SE3…熱感知器、T1、T2、T3…ICタグ、20…火災受信機、22…端子部、23…記憶手段、30…感知器回線、40…加熱試験器、41…リーダ、42…記憶手段、50…信号処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの感知器回線が引き出される火災受信機と、上記感知器回線に必要数が接続されている火災感知器とを備える火災報知設備において、
上記火災受信機は、上記感知器回線の火災信号を検出したときにおける情報である回線情報を記憶する記憶手段、または、上記記憶手段が着脱される端子部を有し、
上記火災感知器は、各火災感知器を個別に識別する固有の識別情報を保持し、外部のリーダによって上記固有の識別情報が非接触で読み出されるICタグを有することを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
請求項1において、
上記回線情報は、上記火災信号の数、上記火災信号を受信した時刻、伝送信号のうちの少なくとも1つであることを特徴とする火災報知設備。
【請求項3】
請求項1において、
上記リーダは、動作試験器に設けられ、上記動作試験器を上記火災感知器に近づけたときに、上記動作させる火災感知器の識別情報を読み出す手段であることを特徴とする火災報知設備。
【請求項4】
請求項1において、
上記回線情報は、上記火災信号を受信した時刻であり、
上記火災受信機は、上記火災信号を受信した時刻を記憶する第1の記憶手段を有し、
上記リーダは、上記識別情報を読み取った時刻を記憶する第2の記憶手段を有することを特徴とする火災報知設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−215893(P2011−215893A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83558(P2010−83558)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】