火災検知システムおよび火災検知システムの制御方法
【課題】構成を簡略化することができる火災検知システムおよび火災検知システムの制御方法を提供する。
【解決手段】各火災検知ユニット5A〜5Jが、火災発生の危険状態および、または火災を検知するセンサと、このセンサ3が火災発生の危険状態および、または火災を検知したときに所定のアドレス情報Adを含む検知信号Fを発信する検知信号発信部13と、隣接する火災検知ユニット5または隣接する処理部6との信号の送受信機能を有し、最下流位置の火災検知ユニット5Jから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値Adと所定の数Sを用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部25を備える。
【解決手段】各火災検知ユニット5A〜5Jが、火災発生の危険状態および、または火災を検知するセンサと、このセンサ3が火災発生の危険状態および、または火災を検知したときに所定のアドレス情報Adを含む検知信号Fを発信する検知信号発信部13と、隣接する火災検知ユニット5または隣接する処理部6との信号の送受信機能を有し、最下流位置の火災検知ユニット5Jから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値Adと所定の数Sを用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部25を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災検知システムおよび火災検知システムの制御方法に関するものであり、広い検知領域を多数の火災検知ユニットを用いて監視する装置に関して、簡便な接続方法で、個々の火災検知ユニットのアドレス設定などを行わずに火災箇所を特定できる火災検知システムおよび火災検知システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検知対象となる領域に複数の火災検知ユニットを散在させることにより、火災の発生を検知し、その場所を特定することができる火災検知システムが用いられている。図11は特許文献1に開示された従来の火災検知システム91の一例を示す図である。
【0003】
図11において、92は検知対象となる領域の各部に設置された火災検知ユニット、93は各火災検知ユニット92に接続されて、これらを制御すると共に各火災検知ユニット92からの検知信号を受信して火災を検知した部分を特定する処理部、94は処理部93と各火災検知ユニット92を接続して双方向の通信を行なうことができるように構成された多重伝送線である。
【0004】
処理部93は、例えば各火災検知ユニット92のアドレスをそれぞれ順番にトークン発呼し、各火災検知ユニット92は自らのアドレスのトークン発呼があったときに、検知結果を処理部93に応答することができるように構成されている。このようなトークンリングネットワークなどのネットワークを構成する火災検知システム91においては、各火災検知ユニット92が、個々の固有のアドレスを割り当てられることにより、各火災検知ユニット92と処理部93は1つの多重伝送線94を共有して利用して必要な情報の交換を行なうことができる。
【0005】
したがって、各火災検知ユニット92には、他の火災検知ユニット92と重なることのない独特のアドレスが設定されているので、処理部93は1つの多重伝送線94に多くの火災検知ユニット92が接続されていても、火災を検知した火災検知ユニット92を特定することができ、これによって火災発生部分を特定することができる。ゆえに、このような火災検知システム91を用いることにより、火災発生の有無を常時検知して、万一火災が発生したときには直ちに消火活動を行なうことができる。
【特許文献1】特開平11−96470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような火災検知システム91では、予め各火災検知ユニット92を他と重ならないようにして固有のアドレスを割り当てて設定しておくことが極めて重要であった。このため、火災検知ユニット92の台数が数十台を越える場合に、各火災検知ユニット92のアドレスの設定が非常に煩雑で、手間がかかるという問題があった。加えて、各火災検知ユニット92の操作ミスによってアドレスの設定を間違えることも考えられ、これによって火災検知ユニット92と処理部93との通信が不良となり、前記トークンリングネットワークなどの通信が正常に行えなかったり、部分的に火災を検知できない領域が生じることがあった。
【0007】
また、個々の火災検知ユニット92に固有アドレスを識別させるための特別なハードウェア(例えば設定用スイッチなど)が必要となるだけでなく、各火災検知ユニット92に複雑なネットワークを構成するための回路やソフトウェアを必要としているので、火災検知ユニット92の製造コストが高くなるという問題があった。そして、前記双方向通信を行うことができる多重伝送線94は、一般的に高価であるから、この点においても火災検知システム91の製造コストが引き上げられるという問題があった。
【0008】
加えて、従来の火災検知システム91では、火災検知ユニット92の劣化などに伴う故障に対応して、火災検知ユニット92の取換えを行なう場合にも、まず、交換前の火災検知ユニット92に割当てられていたアドレスを確認し、新しく取付ける火災検知ユニット92に対して、以前と同じアドレスを割り当てる必要があった。
【0009】
さらに、処理部93が全ての火災検知ユニット92の動作確認を行なうためには、各火災検知ユニット92のアドレスを1つずつ呼び出して、その動作を確認する必要があった。つまり、動作確認だけのために長い通信時間を必要とするだけでなく、処理部93は多重伝送線94に接続されている各火災検知ユニット92の数のみならず、各火災検知ユニット92に割り当てられているアドレスも最初からを認識している必要があった。あるいは、処理部93がもっと複雑な通信プロトコルを用いて、多重伝送線94に接続されている各火災検知ユニット92の数やアドレスを確認する必要があるが、これにはさらに複雑な回路およびソフトウェアを必要とするという問題があった。
【0010】
本発明は上記のような実情を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、配線や設定などの設置作業を簡便にすることができ、各火災検知ユニットの構成を簡略化することができる火災検知システムおよび火災検知システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1発明に係る火災検知システムは、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、各火災検知ユニットが、火災発生の危険状態および/または火災を検知するセンサと、このセンサが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに所定のアドレス情報を含む検知信号を発信する検知信号発信部と、隣接する火災検知ユニットまたは隣接する処理部との信号の送受信機能を有し、さらに、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信する機能を有する通信部とを備え、前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴としている(請求項1)。なお、前記所定の数は正の値だけなく負の値であることも考えられ、その場合は前記通信部によって行われる加算は減算を意味する。
【0012】
第2発明に係る火災検知システムは、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットとの通信,上位システムまたは他のシステムとの通信,表示,操作を行なう中継処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、各火災検知ユニットが、火災発生の危険状態および/または火災を検知して所定のアドレス情報を含む検知信号を発信する検知部と、他の火災検知ユニットまたは中継処理部からの信号を受信する受信部と、各信号を他の火災検知ユニットまたは中継処理部に送信する送信部と、前記検知部からの検知信号を送信部に出力し、受信部が受信した信号のアドレス情報が示す値に所定の数値を加算して得られる信号を送信部に出力する信号処理部とを備え、前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴としている(請求項2)。なお、前記所定の数は正の値だけなく負の値であることも考えられ、その場合は前記通信部によって行われる加算は減算を意味する。
【0013】
第3発明に係る火災検知システムは、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、処理部が、アドレスの初期値に基づくアドレス情報を含む初期設定信号を最上流側の火災検知ユニットに発信する初期設定部を備える一方、各火災検知ユニットが、火災発生の危険状態および/または火災を検知するセンサと、隣接する火災検知ユニットまたは隣接する処理部との信号の送受信機能を有し、さらに、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信する機能を有する通信部と、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値を用いて自らのアドレスとして設定するアドレス自動設定部と、前記センサが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに前記自らのアドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号を発信する検知信号発信部とを備え、さらに、前記処理部が、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値から、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴としている(請求項3)。なお、前記所定の数は正の値だけなく負の値であることも考えられ、その場合は前記通信部によって行われる加算は減算を意味する。
【0014】
前記通信線がシリアル通信の通信線であってもよい(請求項4)。
【0015】
前記各火災検知ユニットおよび処理部が、前記上流側の通信線を接続する受信ポートと下流側の通信線を接続する送信ポートとを備え、前記受信ポートが上流側の通信線を介して上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の送信ポートに接続され、前記送信ポートが下流側の通信線を介して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の受信ポートに接続してあってもよい(請求項5)。なお、前記送信ポートおよび/または受信ポートに送信データおよび/または受信データのバッファを設けてあることが望ましい。
【0016】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に動作確認信号を最上流側の火災検知ユニットに発信して各火災検知ユニットの動作確認を行なう動作確認部を備えていてもよい(請求項6)。さらに、前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、下流側の火災検知ユニットまたは処理部に異常信号を発信する異常信号発信部を備えていてもよい(請求項7)。
【0017】
第4発明に係る火災検知システムの制御方法は、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有する火災検知システムにおいて、各火災検知ユニットが、火災発生の危険状態および/または火災を検知したときには、所定のアドレス情報を含む検知信号を下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に発信する一方、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から信号を受信したときには、この信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信し、前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定することを特徴としている(請求項8)。なお、前記所定の数は正の数のみならず負の数であってもよく、負の数の加算はすなわち、その絶対値の減算を意味する。
【0018】
第5発明に係る火災検知システムの制御方法は、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有する火災検知システムにおいて、処理部が、アドレスの初期値に基づくアドレス情報を含む初期設定信号を最上流側の火災検知ユニットに発信し、各火災検知ユニットが、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から初期設定信号を受信したときには、受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値を用いて自らのアドレスの初期設定を行ない、この初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信し、火災発生の危険状態および/または火災を検知したときには、前記自らのアドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号を下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に発信する一方、前記処理部が、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値から、この信号の発信源を特定することを特徴としている(請求項9)。なお、前記所定の数は正の数のみならず負の数であってもよく、負の数の加算はすなわち、その絶対値の減算を意味する。
【0019】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に所定のアドレス情報を含む動作確認信号を最上流位置の火災検知ユニットに発信し、最下流位置の火災検知ユニットから動作確認信号を受信することにより各火災検知ユニットの動作確認を行なってもよい(請求項10)。加えて、前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、異常信号を下流側の火災検知システムの制御方法または処理部に伝送してもよい(請求項11)。
【発明の効果】
【0020】
請求項1および請求項2のような特徴構成を有する第1発明および第2発明の火災検知システムによれば、各火災検知ユニットが火災を検知したときに同じ所定のアドレス情報を含む検知信号を発信するものであるから、各火災検知ユニットに予めアドレスを割り当てる必要がない。つまり、各火災検知ユニットにアドレスを設定するための特別な装置(例えば、ディップスイッチなどスイッチ)を必要としておらず、各火災検知ユニットの構成をできるだけ簡素にすることができる。
【0021】
そして、各火災検知ユニットは同じ所定のアドレス情報を含む検知信号を発信し、この下流側の火災検知ユニットがそれぞれアドレス情報に特定の数を加えるので、発信部特定部が、最下流側の火災検知ユニットから受信した検知信号に含まれるアドレス情報から、所定の数が加算された回数を求めることにより、この検知信号が発信された火災検知ユニットを特定することができる。
【0022】
また、前記通信部はアドレス情報に対して単純な加算演算を行なうものであるから、その回路構成またはソフトウェア構成を簡素にすることができ、それだけ、火災検知システムの製造コストを削減できる。そして、発信源特定部は前記アドレス情報に加算(または減算)された数を所定の数で除算するだけの比較的単純な演算処理により、最下流側の火災検知ユニットから何番目の火災検知ユニットが発信源となっているのかを判断することができる。前記加減算や除算は簡単な演算回路やソフトウェアによって容易に行なうことができる程度の処理であるから、装置を不必要に複雑にすることがない。
【0023】
なお、前記特定の数は1または−1であれば、前記通信部によって行われる加減算は極めて簡単なインクリメント処理またはデクリメント処理を行なう回路によって実現可能であり、発信源特定部も除算を行なうことなく発信源の特定を行なうことができるので、前記通信部の回路構成またはソフトウェアの構成のさらなる簡素化を達成できる。
【0024】
請求項3のような特徴構成を有する第3発明の火災検知システムによれば、各火災検知ユニットが、処理部から発信された初期設定信号を受信するときに、アドレス自動設定部が自らのアドレスを自動設定し、通信部が前記アドレス情報が示す値に所定の数を加えて下流側の火災検知ユニットに送信するので、各火災検知ユニットに予めアドレスを割り当てなくても、各火災検知ユニットに他と重なることのないアドレスを自動的に設定することができる。つまり、各火災検知ユニットにアドレスを設定するための特別な装置(例えば、ディップスイッチなどスイッチ)を必要としておらず、各火災検知ユニットの構成をできるだけ簡素にすることができる。
【0025】
そして、各火災検知ユニットが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときは前述の自動設定されたアドレス情報を含む検知信号を発信するので、発信部特定部が、このアドレス情報から、この検知信号が発信された火災検知ユニットを容易に特定することができる。
【0026】
なお、前記通信部は初期設定信号に含まれるアドレス情報に対して単純な加算演算を行なうものであるから、その回路構成またはソフトウェア構成を簡素にすることができ、それだけ、火災検知システムの製造コストを削減できる。さらに、前記特定の数は1または−1であれば、前記通信部によって行われる加減算は極めて簡単なインクリメント処理またはデクリメント処理を行なう回路によって実現可能であるから、前記通信部の回路構成またはソフトウェアの構成のさらなる簡素化を達成できる。
【0027】
したがって、第1発明〜第3発明の何れの火災検知システムでも、各火災検知ユニットにアドレスを設定する必要がないので、各火災検知ユニットと処理部を通信線によってリング状に接続するだけで、これを火災検知システムとして動作させることができ、設置作業が極めて容易となる。また、動作不良などが発生した火災検知ユニットを交換するときも、アドレスの割当てが不要であるから、別の火災検知ユニットと交換するだけでよく、従来のようにアドレス設定のための作業を一切無くすことができると共に、アドレスの誤設定による通信不良などのトラブルが生じることもない。
【0028】
前記通信線がシリアル通信の通信線である場合(請求項4)には、通信線の構成が簡単である。つまり、シリアル通信の場合、各火災検知ユニット間の接続は信号線1本ですむので、きわめて簡潔である。なお、通信線としてたとえ電源線を同時に配線したとしても、2本の電源線と1本の信号線の3本だけである。また、本発明の火災検知システムは何れも信号の流れが基本的に一方向であるから、図11に示す従来の火災検知システム91のように、通信線として双方向の通信を行なうための高価な多重伝送線94を用いる必要がなく、その配線コストを低減することができる。
【0029】
前記各火災検知ユニットおよび処理部が、前記上流側の通信線を接続する受信ポートと下流側の通信線を接続する送信ポートとを備え、前記受信ポートが上流側の通信線を介して上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の送信ポートに接続され、前記送信ポートが下流側の通信線を介して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の受信ポートに接続されてなる場合(請求項5)には、通信線によってデータ通信されるのは、隣接する火災検知ユニットまたは処理部の間の送信ポートから受信ポートまでであるから、図11に示すような長い多重伝送線94内を全ての信号が流れるものに比べてノイズが重畳しにくく信頼性が高くなる。また、各通信線によって別々の情報を通信することも可能であるから、例えば複数の火災検知ユニットが同時に火災を検知した場合にも、処理部が全ての検知信号を確実かつ効率的に受け取ることが可能となる。
【0030】
なお、前記送信ポートおよび/または受信ポートに送信データおよび/または受信データのバッファを設けることにより、各信号線を用いて複数のデータが通信されるときに、通信不良などの問題が発生しにくくなるので、その信頼性をさらに向上させることができる。
【0031】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に動作確認信号を最上流側の火災検知ユニットに発信して各火災検知ユニットの動作確認を行なう動作確認部を備えてなる場合(請求項6)には、動作確認部が単一の動作確認信号を発信することにより、その応答を確認するだけで、各火災検知ユニットおよび通信線の動作確認を行なうことができる。つまり、図11に示すようなトークンリングのようなネットワークを有するもののように、各火災検知ユニットを順次スキャンして、その動作確認を行なう必要がない。
【0032】
前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、下流側の火災検知ユニットまたは処理部に異常信号を発信する異常信号発信部を備えてなる場合(請求項7)には、火災検知ユニットおよび/または通信線の異常によって通信不能になった部分が発生した場合にも、これよりも下流側の火災検知システムの異常信号発信部が異常信号を発信するので、処理部はこの異常信号を受信することにより、異常の発生を認識することができる。
【0033】
請求項8のような特徴構成を有する第4発明の火災検知システムの制御方法によれば、各火災検知ユニットが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに同じアドレス情報を含む検知信号を発信するから、各火災検知ユニットに予めアドレスを割り当てる必要がない。
【0034】
そして、各火災検知ユニットは同じアドレス情報を含む検知信号を発信し、この下流側の火災検知ユニットがそれぞれアドレス情報に対して単純な加算演算を行なうので、処理部は前記アドレス情報に加算(前記所定の数が負のときは減算)された数を所定の数で除算するだけの比較的単純な演算処理によって、最下流側の火災検知ユニットから何番目の火災検知ユニットが発信源となっているのかを判断することができる。なお、前記特定の数は1または−1であれば、前記加算(または減算)の演算は極めて簡単なインクリメント(またはデクリメント)であって、高速に処理することができる。
【0035】
請求項9のような特徴構成を有する第5発明の火災検知システムの制御方法によれば、各火災検知ユニットが、処理部から発信された初期設定信号を受信するときに、アドレス自動設定部が自らのアドレスを自動設定し、通信部が前記アドレス情報が示す値に所定の数を加えて下流側の火災検知ユニットに送信するので、各火災検知ユニットに予めアドレスを割り当てなくても、各火災検知ユニットに他と重なることのないアドレスを自動的に設定することができる。そして、各火災検知ユニットが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときは前述の自動設定されたアドレス情報を含む検知信号を発信するので、処理部が、このアドレス情報から、この検知信号が発信された火災検知ユニットを容易に特定することができる。
【0036】
なお、各火災検知ユニットは受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報に対して単純な加算(前記所定の数が負のときは減算)を行なってこれを下流側に送信するから、極めて簡単にかつ高速に処理を行なうことができる。さらに、前記特定の数は1または−1であれば、前記通信部によって行われる加算(または減算)の演算は極めて簡単なインクリメント(またはデクリメント)であるから、高速に処理することができる。
【0037】
第4発明および第5発明の何れの火災検知システムの制御方法であっても、各火災検知ユニットにアドレスを設定する必要がないので、各火災検知ユニットと処理部を通信線によってリング状に接続するだけで、これを火災検知システムとして動作させることができ、設置作業が極めて容易となる。また、動作不良などが発生した火災検知ユニットを交換するときも、アドレスの割当てが不要であるから、別の火災検知ユニットと交換するだけでよく、従来のようにアドレス設定のための作業を一切無くすことができると共に、アドレスの誤設定による通信不良などのトラブルが生じることもない。
【0038】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に所定のアドレス情報を含む動作確認信号を最上流位置の火災検知ユニットに発信し、最下流位置の火災検知ユニットから動作確認信号を受信することにより各火災検知ユニットの動作確認を行なう場合(請求項10)には、処理部が単一の動作確認信号を発信し、その応答を確認するだけで、各火災検知ユニットおよび通信線の動作確認を行なうことができる。
【0039】
前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、異常信号を下流側の火災検知システムの制御方法または処理部に伝送する場合(請求項11)には、火災検知ユニットおよび/または通信線の異常によって通信不能になった部分が発生した場合にも、これよりも下流側の火災検知システムが異常信号を発信するので、処理部はこの異常信号を受信することにより、異常の発生を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1実施例に係る例えば自動車運搬船の火災検知システム1の概要図であり、このシステム1は、例えば自動車格納室内に縦横に配列し格納された車両2の表面温度を測定し、その測定温度情報から火災発生の危険状態および/または火災を検知する火災検知用温度センサ3をボックス4内に収納し、各温度センサ3の視野角に合わせて検知対象領域の全体を監視できるように幾らかの間隔を開けて配置された複数(本例では10個)の火災検知ユニット5(以下、区別が必要なときは火災検知ユニット5A〜5Jと表現する)と、各火災検知ユニット5を制御して各火災検知ユニット5から得られる信号を処理する処理部6と、隣接する火災検知ユニット5および処理部6を互いに接続することにより、全体として環状の通信ラインLを形成する通信線7とを有する。
【0041】
前記温度センサ3は一例として二次元方向の温度分布を測定可能とするサーモパイルセンサであり、各火災検知ユニット5がそれぞれ測定した温度分布を処理部6に送信することにより、処理部6が検知対象領域内のどの部分でどの程度の火災発生の危険状態および/または火災が発生しているかを識別できるように構成されている。なお、火災発生の危険状態とは、例えば温度センサ3を用いる場合、周囲に配置された物体の発火点に近い高温を検出した状態を示している。
【0042】
そして、各火災検知ユニット5は、伝送する信号の上流側の通信線7を接続する受信ポート(受信部の一例)5rと、下流側の通信線7を接続する送信ポート(送信部の一例)5sとを備えている。つまり、火災検知ユニット5B〜5Jの受信ポート5rが上流側の通信線7を介して上流側に隣接する火災検知ユニット5A〜5Iの送信ポート5sに接続され、火災検知ユニット5A〜5Iの受信ポート5rが上流側の通信線7を介して上流側に隣接する火災検知ユニット5B〜5Jの送信ポート5sに接続されるように接続される。
【0043】
なお、本実施例では説明を簡単にするために、火災検知システム1を構成する火災検知ユニット5の数が10である例を示しているが、本発明はこの点に限定されるものではない。つまり、本発明の火災検知システム1は、とりわけ多くの火災検知ユニット5が接続されている場合に有用である。
【0044】
同様に、前記処理部6は、伝送する信号の最上流側の火災検知ユニット5Aの受信ポート5rに通信線7を介して接続される送信ポート6sと、最下流側の火災検知ユニット5Jの送信ポート5sに通信線7を介して接続される受信ポート6rとを備えている。つまり、隣接する各火災検知ユニット5および処理部6はそれぞれ別の通信線7によって接続されて、それぞれ独立した通信を行なうことができるように構成されている。
【0045】
したがって、各通信線7の長さを必要最小限にすることができ、かつ、1つの通信線7によって1対1の通信を行なうので、この通信線7に入る外部ノイズによる影響を小さくすることができる。ゆえに、通信線7にかかるコストを引き下げることができる。
【0046】
前記通信線7は例えば電源線2本とシリアル通信の信号線1本とからなり、この電源線を用いて処理部6から各火災検知ユニット5に電力を供給すると共に、信号線を用いて例えば図示時計回り方向に順次シリアル信号を伝送できるように構成されている。本実施例のように通信線7がシリアル通信を行なうものであることにより、信号線の数を1本にすることが可能となり、これによって通信線7にかかるコストを削減することが可能であるが、本発明は通信線7がシリアル通信のためのものであることに限定されるものではない。同様に各火災検知ユニット5の電源線を信号線と共に配線することは必須要件ではない。
【0047】
図2は各火災検知ユニット5の構成を説明するブロック図である。なお、図2に示すブロック図は本発明を説明するために機能をまとめたものであるから、本発明の構成はこのブロック図に示される構成に限定されるものではない。
【0048】
図2において、10は受信ポート5rおよび送信ポート5sに接続された通信部、11は通信部10によって受信されたコマンドC,アドレス情報Ad,データDなどの情報(以下の説明ではアドレス情報が示す値を符号Adで表わすこともある)を用いて各部を設定する設定部、12は火災発生の危険状態および/または火災として検知する温度の閾値レベルThなど、火災検知ユニット5が検知信号を出力するための各種設定を記憶する設定記憶部、13は前記温度センサ3に接続されると共に設定記憶部12に設定された閾値レベルThなどの内容に従って検知信号Fを発信する検知信号発信部、14は後述する動作確認信号Nを受信した時点から次の動作確認信号Nを受信するまでの時間T(例えば数秒)を計測するタイマー、15はタイマー14が所定の間隔Tよりも許容時間t(例えば数秒)以上長い時間を計測するときに異常信号Eを発信する異常信号発信部である。
【0049】
本実施例の前記通信部10は、受信ポート5rを介して上流側に隣接する火災検知ユニット5または処理部6から一連のデータを受信すると、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値Adをインクリメント(所定の数Sとして1を加算)し、送信ポート5sを介して下流側に隣接する火災検知ユニット5または処理部6に送信するように構成されている。つまり、前記各部10〜15のそれぞれの動作は複雑なものではないので、容易にワンチップの集積回路にまとめることができる。
【0050】
また、前記温度センサ3と検知信号発信部13は、火災発生の危険状態および/または火災を検知して検知信号Fを発信する検知部5aとして機能する。さらに、前記各部10〜12,14,15を一つの信号処理部5bとしてまとめて形成することが可能であり、この信号処理部5aは、各信号が検知部5aから発せられたのか受信部からのものかを識別し、この信号が検知部5aからのものと識別した場合には、検知部5aからの検知信号Fを送信部に出力し、信号が受信部5rからのものと識別した場合には、この信号のアドレス情報が示す値に所定の数値を加算して得られる信号を送信部に出力することができるように構成される。
【0051】
図3は処理部6の構成を説明するブロック図である。なお、図3に示すブロック図も本発明を説明するために機能をまとめたものであるから、本発明の構成はこのブロック図に示される構成に限定されるものではない。
【0052】
図3において、20は受信ポート(受信部の一例)6rおよび送信ポート(送信部の一例)6sに接続された通信部、21は通信部20を介して前記通信ラインLに初期設定信号Iを発信してその応答を用いて各種初期設定を行なう初期設定部、22は通信ラインLに存在する火災検知ユニット5の総数Nall などの各種設定を記憶する設定記憶部、23は通信部20を介して前記通信ラインLに動作確認信号Nを発信してその応答を確認する初期設定部、24は前記初期設定信号Iおよび動作確認信号Nを発信した時点から応答が戻ってくるまでの時間を計測するタイマー、そして、25が各火災検知ユニット5からの検知信号Fや異常信号Eを解析してこの信号の発信源を特定する発信源特定部である。
【0053】
また、本実施例の処理部6には上位コンピュータまたは他のシステムとの通信ポート26を形成し、発信源特定部25によって解析された火災検知場所の特定情報やその規模情報などを上位コンピュータまたは他のシステムに通信できるように構成してある。なお、前記各部20〜25の動作は比較的単純であるから、これらを容易にワンチップの集積回路にまとめることができる。
【0054】
以上のように、本実施例の火災検知システム1では、隣接する火災検知ユニット5が順次通信線7によって接続されると共に、信号の最上流側の火災検知ユニット5Aおよび最下流側の火災検知ユニット5Jに隣接させるように処理部6が接続され、各火災検知ユニット5の通信部10が上流側に隣接する火災検知ユニット5または処理部6から受信した信号I,N,F,Eに含まれるアドレス信号Adに所定の数Sを加算して下流側に隣接する火災検知ユニット5または処理部6に送信するように構成されているので、各火災検知ユニット5は自らのアドレスを設定する必要が全くない。
【0055】
従って、各火災検知ユニット5の構成を可及的に簡素化して、その製造コストを削減できるだけでなく、火災検知ユニット5の設置にかかる手間を少なくして、設定ミスなどに伴う動作不良を皆無とすることができる。
【0056】
以下、図4〜7を用いて、図1〜3に示す本実施例の火災検知システム1の基本的な動作について、各信号I,N,F,Eの一例を挙げて説明する。なお、図4は図1に示す全体構成に、各通信線7によって伝送される信号I,N,F,Eの一例を記載したものである。また、図5〜7に示す流れ図によって説明する各プログラムは図3に示す各部21,23,25の具体的な構成を示すものである。つまり、前記初期設定部21,動作確認部23,発信源特定部25は何れも各種動作を処理部6内のCPUによって実行するためのプログラムまたはそのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を示す。なお、これらを電子回路のようなハードウェアによって形成してもよいことはいうまでもない。
【0057】
図5は初期設定プログラム(初期設定部)21の動作を示す図である。
図5において、Si1は初期設定信号Iの発信を行なうステップを示し、ここでは、例えば初期設定信号Iとして”I000005”という一連の文字列を通信ラインLに伝送する例を示している。
【0058】
なお、以下の全ての説明において共通する点であるが、本実施例の通信ラインLによって伝送する信号I,N,F,Eは、例えば1バイトのコマンドCと、3バイトのアドレス情報Adと、3バイトのデータDを含む信号であり、他にもパリティーチェック、チェックサム、CRC、フレームエラー検出信号のような誤り検出情報や終端情報などが含まれる。
【0059】
そして、処理部6から発信された初期設定信号Iは、各火災検知ユニット5A,5B,…へと順番に伝送されるときに、そのアドレス情報Adが各通信部10において順次カウントされる。したがって、最下流側の火災検知ユニット5Jから処理部6に送信される初期設定信号Iは”I010005”となる。また、各火災検知ユニット5は初期設定信号Iの受信に伴って、設定部11がそのデータDに含まれる情報”005”を用いて検知する温度の閾値レベルThなどの各種設定を行なう。したがって、この閾値レベルThを調節することにより火災発生の危険状態を検知することも火災が発生した状態を検知することも可能である。なお、この初期設定の際に火災検知ユニット5に何らかの異常が発生した場合には、詳細には後述する異常発生信号Eを発信する。
【0060】
Si2は前記初期設定信号Iの応答を確認するステップであり、Si3は前記ステップSi2において応答の確認ができなかったときに、前記タイマー24を用いてタイムアウトを確認するステップである。なお、タイマー24は例えば初期設定信号Iの発信時から測定を始めて初期設定信号Iの応答があった時点でリセットされる。したがって、処理部は初期設定信号Iを発信した時点からタイマー24がタイムアウトするまで初期設定信号Iの応答を待ち続けるように構成されている。
【0061】
Si4はステップSi3においてタイムアウトが発生したときに実行され、異常発生を通知するものである。これは図外のアラームによる警告や警告ランプによる表示によって行ってもよいが、例えば”応答なし”といったメッセージを図外の表示部に表示したり、上位コンピュータに出力することによって行われることにより、異常の発生状態を明確にすることができる。
【0062】
Si5は前記ステップSi2において応答ありと判断されたときに実行され、応答の内容が初期設定信号Iの応答であるか異常発生信号Eであるかを判断するステップである。ここで異常発生信号Eであると判断された場合は、ステップSi6に示すように異常信号Eからアドレス情報Ad(本例の場合、”005”)を抽出し、ステップSi7に示すように抽出したアドレス情報Adから異常が発生した火災検知ユニット5(本例の場合、最下流側のユニットから(5+1)番目すなわち火災検知ユニット5E)で異常が発生したことを識別する。
【0063】
Si8は前記異常発生を通知するステップである。この場合も異常発生の通知は、アラームやランプによる表示、表示部への”○番目の火災検知ユニットで異常発生”といったメッセージの表示、上位コンピュータまたは他のシステムへの異常メッセージ出力によって行ってもよい。なお、異常発生信号の発信源の特定方法の詳細は後述する。
【0064】
Si9は前記ステップSi5において初期設定信号Iの応答を確認したときに実行され、火災検知システム1が正常であることを判断するステップである。
【0065】
Si10は応答した初期設定信号Iからアドレス情報Adを抽出するステップである。
【0066】
そして、Si11は前記抽出したアドレス情報Ad(本例の場合10)から、火災検知システム1に含まれる火災検知ユニット5の総数Nall を登録するステップである。つまり、本例では初期設定部21がアドレス情報Adを”000”(本例の場合は、アドレスの初期値A0 が0である)とする初期設定信号Iを発信し、各火災検知ユニット5がそれぞれこのアドレス情報が示す値Adをインクリメント(本例の場合は所定の値Sとして1を加算)したので、応答した初期設定信号Iのアドレス情報が示す値Adはそのまま火災検知ユニット5の総数Nall となる。
【0067】
つまり、本発明の火災検知システム1は火災検知ユニット5と処理部6を通信線7によって環状に接続して、処理部6が1つの初期設定信号Iを発信するだけで、この火災検知システム1に何個の火災検知ユニット5が接続されているのかを確認することができる。また、閾値レベルThのような各種設定も極めて効率的に行なうことができる。
【0068】
しかしながら、前記アドレス情報Adの初期値A0 は0以外の所定の数であってもよく、各火災検知ユニット5が順次アドレス情報が示す値Adに加える数Sも1以外の数であってもよい。
【0069】
次に、図6は動作確認プログラム(動作確認部)23の動作を示す図である。
図6において、Sn1は動作確認信号Nの発信を行なうステップを示し、ここでは、例えば動作確認信号Nとして”N000000”という一連の文字列を通信ラインLに伝送する例を示している。そして、処理部6から発信された動作確認信号Nのアドレス情報Adが各通信部10において順次カウントされ、最下流側の火災検知ユニット5Jから処理部6に送信される動作確認信号Nは”N010000”となる。
【0070】
Sn2は前記動作確認信号Nの応答を確認するステップ、Sn3は前記ステップSn2において応答の確認ができなかったときに、前記タイマー24を用いてタイムアウトを確認するステップである。この場合も、タイマー24は例えば動作確認信号Nの発信時から測定を始めて動作確認信号Nの応答があった時点でリセットされるので、このタイマー24がタイムアウトするまで動作確認信号Nの応答を待ち続ける。
【0071】
Sn4はステップSn3においてタイムアウトが発生したときに実行され、異常発生を通知するものである。これは初期設定信号Iの場合のステップSi4の動作と同様である。
【0072】
Sn5は前記ステップSn2において応答ありと判断されたときに実行され、応答の内容が動作確認信号Nの応答であるか異常発生信号Eであるかを判断するステップである。ここで異常発生信号Eであると判断された場合は、ステップSn6に示すように異常信号Eからアドレス情報Adを抽出し、ステップSn7に示すように抽出したアドレス情報Adから異常が発生した火災検知ユニット5を識別する。Sn8は前記異常発生を通知するステップである。これらのステップSn5〜Sn8も初期設定信号Iの場合のステップSi5〜Si8の動作と同様である。
【0073】
Sn9は前記ステップSn5において動作確認信号Nの応答を確認したときに実行され、火災検知システム1が正常であることを判断するステップである。なお、ここで応答した動作確認信号Nからアドレス情報Adを抽出し、抽出したアドレス情報Adから、現在火災検知システム1に含まれる火災検知ユニット5の総数(本例の場合10)を求め、これを設定記憶部22に記憶された総数Nall と比較して、火災検知システム1の状態を確認してもよい。
【0074】
Sn10は所定の時間待ちを行なうステップである。そして、所定の時間T(例えば数秒)の時間待ちを行った後に再びステップSn1に戻り、動作確認信号Nを発信する。つまり、本実施例の火災検知システム1はここで定められる間隔毎に、1つの動作確認信号Nを発信するだけで、全ての火災検知ユニット5を個々に呼び出さなくても、各火災検知ユニット5および各通信線7の動作確認を行なうことができる。
【0075】
次に、図2と図4と図7を用いて、火災検知ユニット5が火災発生の危険状態および/または火災による高い温度を検出した場合の動作について説明する。
【0076】
今、一つの火災検知ユニット5F内の温度センサ3を構成する3個の温度検出素子によって検出された温度が、閾値レベルTh以上の温度を検知したとすると、例えば検知信号発信部13は検知信号Fとして”F000003”を発信する。すなわち、検知レベルとして例えば閾値レベルThを越えた素子の数を示す”003”を有する検知信号Fを発信する。なお、火災検知ユニット5A〜5Jの検知信号発信部13は同じアドレス情報(例えば”000”)を有する検知信号Fを発信する。
【0077】
そして、前記検知信号Fは火災検知ユニット5G〜5Jを介して処理部6まで伝送されるが、このときアドレス情報が1ずつ順次加算されるので、処理部6が受信する検知信号Fは図4に示すように”F004003”となる。
【0078】
図7は、発信源特定プログラム(発信源特定部)25の動作を示す図である。
図7において、Sf1は前記検知信号Fを受信するステップである。なお、処理部6による各信号I,N,F,Eの受信時(前記ステップSi2,Sn2,Sf1に関係する)には、受信ポート6rまたは通信部20からの割り込み処理が行われることが望ましいが、本実施例では、図示によるその詳細な説明を省略する。
【0079】
Sf2は受信した検知信号Fからアドレス情報Ad(本例の場合は”004”)とデータD(”003”)を抽出して、これらが示す値をそれぞれ位置情報Nx,火災レベルLevとするステップである。
【0080】
Sf3は火災発生領域、すなわち、検知信号の発信源を特定するステップである。なお、本実施例では、各火災検知ユニット5A〜5Jが火災を検知したときに、全て同じアドレス情報Adとして”000”(アドレスの値が0であることを意味する)を含む検知信号Fを発信し、各火災検知ユニット5(本例の場合は火災検知ユニット5G〜5J)がアドレス情報Adが示す値に特定の値として1を順次加算する。したがって、本実施例ではステップSf3において、火災検知システム1内の火災検知ユニット5の総数Nall から前記抽出した値Nxを減算することにより、検知信号Fの発信源の位置Nfを求めることができる。
【0081】
なお、前記発信源の位置Nfを特定するための演算は、前記火災検知ユニット5で発信する信号のアドレス情報Adの初期値A0 と、前記所定の数Sを用いて行なう。したがって、初期値A0 が0以外である場合や、所定の数Sが1以外の場合には、前記検知信号Fの発信源の位置Nfを求めるためには、Nall −(Nx−A0 )/Sの計算を行なうことができる。
【0082】
Sf4はステップSf3によって求められた発信源の位置Nfと火災レベルLevを火災検知情報として通知するステップである。この火災検知情報の通知は、アラームやランプによる表示、表示部への”○番目の火災検知ユニットでレベル×の火災を検知しました”といった文字や、予め用意された各火災検知領域の地図と火災を検知した領域を示す図などの火災検知メッセージを表示してもよい。あるいは、上位コンピュータまたは他のシステムへ前記火災検知メッセージを出力してもよい。
【0083】
次に、火災検知システム1に異常が発生した場合の動作を説明する。本実施例では、一例として火災検知ユニット5Dと火災検知ユニット5Eを接続する通信線7に断線などの異常が発生した場合について考える。
【0084】
前記各火災検知ユニット5はそのタイマー14が前記動作確認信号を受信する間隔を計測し、これが所定の間隔Tよりも許容時間t(例えば数秒)以上長くなるときに、異常信号発生部15が下流側の火災検知ユニット5または処理部6に異常信号Eを発信する。このとき異常信号発生部15が発信する異常信号Eは本例では、”E000000”である。つまり、各火災検知ユニット5A〜5Jの異常信号発生部15が同じアドレス情報”000”を含む異常信号Eを下流側の火災検知ユニット5B〜5Jまたは処理部6に発信する。
【0085】
したがって、本例の場合は火災検知ユニット5Eが異常信号Eを発信し、各火災検知ユニット5F〜5Jを介して伝送された異常信号Eを処理部6が受信する。このとき、処理部6が受信する異常信号Eは”E005000”であり、そのアドレス情報Adが”005”であるから、前記発信源特定プログラム(発信源特定部)25は異常信号Eの発信源が本例の場合5番目の火災検知ユニット5Eであることを特定することができる。
【0086】
次いで、前記ステップSf4の処理において、異常の発生をアラームやランプによる表示、図外の表示部への”○番目の火災検知ユニットで異常を検知しました”といった文字や、予め用意された各火災検知領域の地図と異常を検知した火災検知ユニットの位置を示す図などの異常検知メッセージの表示を行なう。あるいは、上位コンピュータまたは他のシステムへ前記異常検知メッセージを出力してもよい。
【0087】
なお、前記異常信号発生部15による異常信号Eの発信は動作確認信号Nが受信できないとき以外にも、例えば、設定部11による初期設定ができないなど、各部回路の動作に異常が発生したときに発信するようにしてもよい。また、異常の種類を異常信号Eに含ませるデータDとして発信するようにしてもよい。
【0088】
上述したように、本実施例の火災検知システム1では、各火災検知ユニット5に自己アドレスを一切設定しなくても、検知信号Fや異常信号Eの発信源を特定することができるので、火災検知ユニット5の構成を可及的に簡素にすることができる。また、設置時に各火災検知ユニット5に自己アドレスの設定を行なう必要が一切なく、設置にかかる手間を大幅に削減できる。加えて、各火災検知ユニット5に異常が発生した場合にも、これを新しい火災検知ユニット5と交換するだけで自己アドレスの設定を行なう必要がない。ゆえに、火災検知ユニット5の設置および交換において、人為的な設定ミスが入り込む余地がないので、火災検知システム1の信頼性が向上する。
【0089】
しかしながら、前記初期設定信号Iや動作確認信号Nの受信に伴って各火災検知ユニット5が自己アドレスの自動設定を行なうように構成してあってもよい。
【0090】
図8は第2実施例の火災検知システム1’の全体的な構成を示す図であり、図9はこの火災検知システム1’を構成する火災検知ユニット5’の構成を示す図である。図8,9において、図1〜7と同じ符号を付した部分は同一または同等の部分であるから、その詳細な説明を省略する。
【0091】
図9に示す火災検知ユニット5’が第1実施例の火災検知ユニット5と異なる点は、自己アドレスを記憶するアドレス記憶部30を備えている点と、前記通信部10が初期設定信号Iおよび動作確認信号Nに関してのみ、これらの信号I,Nに含まれるアドレス情報が示す値Adに所定の値S(本例の場合1)を加算する点と、前記設定部11が前記初期設定信号I(動作確認信号Nであってもよい)の受信時に、この信号I(N)に含まれるアドレス情報が示す値Adを前記アドレス記憶部30に記憶させるアドレス自動設定部11aを備えてなる点にある。
【0092】
そして、前記自己アドレスの記憶に伴って、前記タイマー14に前記値Afに比例する前記許容時間tを設定する。この許容時間tは例えば数ミリ秒に前記値Afを乗算した時間とする。これによって、タイマー14は各火災検知ユニット5の接続位置に合わせた許容時間tの設定を行なうことができる。
【0093】
したがって、第2実施例の火災検知システム1’では処理部6が通信ラインLに初期設定信号Iとしてアドレスの初期値A1 (本例の場合0)に基づくアドレス情報”000”を含む”I000005”を伝送すると、各火災検知ユニット5A〜5Jが自己アドレス000〜009をそれぞれ自動設定することができる。ゆえに、各火災検知ユニット5A〜5Jは自己アドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号Fや異常信号Eを発信することができ、処理部6の発信源特定部はこれらの信号F,Eに含まれるアドレス情報から、これらの信号F,Eの発信源を容易に特定することができる。
【0094】
なお、本例では前記アドレスの初期値A1 を0としており、信号I,Nに含まれるアドレス情報が示す値Adに加算する所定の値Sを1としているので、前記信号F,Eの発信源の位置は、この信号F,Eに含まれるアドレス情報が示す値Adに1を加えたところとなる。しかしながら、前記値A1 が0以外または値Sが1以外の場合は、前記発信源の位置を(Ad−A1 )/S+1によって求めることができる。
【0095】
第2実施例の火災検知システム1’は、各火災検知ユニット5が自己アドレスを有するものであるが、この自己アドレスは各火災検知ユニット5A〜5Jと処理部6を環状に接続し、処理部6が初期設定信号I(または動作確認信号N)を発信して初めて自動的に設定されるものである。したがって、設置時に作業者が火災検知ユニット5に自己アドレスの設定をする必要がないので、火災検知ユニット5の設置や交換にかかる手間を省き、人為的な設定ミスの心配がないだけでなく、火災検知ユニット5のハードウェア構成を簡略化することもできる。
【0096】
なお、上述の各実施例では火災検知ユニット5に備えた温度センサ3が、表面温度の二次元分布を測定することにより、その測定温度情報から火災発生の有無を検知(判断)する例を示しているが、本発明はこのセンサ3の種類に限定されるものではなく、煙センサや温度センサと煙センサの組合せによって火災発生あるいは火災に至りかねない状態の検知を行ってもよいことはいうまでもない。また、センサ3が二次元情報を出力するものであり、火災検知ユニット5がこれを火災レベルLevとして出力するので、処理部6は火災の広がり状態をより正確に検出することが可能であるが、この火災レベルLevは温度の高さや煙の濃度などに基づいて出力されてもよい。
【0097】
また、上記各実施例では、単一の温度センサ3による単位検知範囲を1台の車両2が検知できる範囲に設定したもので説明したが、単一の温度センサ3による単位検知範囲を隣接格納された複数台の車両2が検知できる範囲に設定してもよい。さらに、1つの火災検知ユニット5に複数の温度センサ3を設けて1つの火災検知ユニット5の検知範囲、つまり、検知できる自動車台数を増大してもよい。加えて、前記温度センサ3を首振り式あるいはスライド式に構成し、その温度センサ3の首振りあるいはスライドにより複数台の自動車の表面温度をスキャニング測定できるようにしてもよい。
【0098】
前記各信号I,N,F,Eのフォーマットは本発明を説明しやすいように示すものであるから、本発明は上述の各実施例に示す信号の形式に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0099】
さらに、上記実施例では、説明していないが、火災検知信号に基づいて、火災発生の可能性や火災が発生した自動車に向けて散水するスプリンクラーやCO2 消火装置などの自動消火装置を設けてもよいこともちろんである。
【0100】
図10は、図1〜9に示す火災検知システム1,1’を複数接続した第3実施例の火災検知システム40の構成を示す図である。
図10において、1A,1B,1C…は図1〜9を用いて説明した火災検知システム1,1’であり、6A,6B,6C…は各火災検知システム1A,1B,1C…の処理部6(本実施例の場合は、上位システムと各火災検知ユニット5との中間に位置するので、以下の説明では中間処理部という)である。41は各中間処理部6A,6B,6C…をLANなどの通信手段によって接続する通信ケーブルであり、42は各中間処理部6A,6B,6C…に接続されて火災検知システム40の全体を制御するホストコンピュータ(火災検知ユニット5からの信号を処理する処理部)である。
【0101】
本実施例のように火災検知ユニット5を幾つかのグループに分けて接続することにより、通信線7の断線などの異常が発生したときに、通信不良となる部分を小さくすることができ、それだけ火災検知システム40全体の信頼性を向上できる。
【0102】
なお、本実施例ではLANを構成する通信ケーブル41としているが、この通信ケーブル41を用いた信号の通信に代えて、一点鎖線に示すように、図1,4,8を用いて説明したような環状の通信ラインL’を形成し、ホストコンピュータ42と各中間処理部6A,6B,6C…の間で既に詳述したようなアドレス情報Adの授受を行なって、各信号の発生源を特定できるようにしてもよい。
【0103】
本実施例の場合、各中間処理部6A,6B,6C…は、信号の上流側に隣接する中間処理部6A,6B,6C…またはホストコンピュータ42から受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値Adに対して、各火災検知システム1A,1B,1C…内の火災検知ユニット5の数Nall(またはこれより大きい数)を加算して、下流側に隣接する中間処理部6B,6C…またはホストコンピュータ42に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施例に係る火災検知システムの構成を示す図である。
【図2】前記火災検知システムの一部の構成を示す図である。
【図3】前記火災検知システムの別の部分の構成を示す図である。
【図4】前記火災検知システムの動作を説明する全体図である。
【図5】前記火災検知システムにおける初期設定の方法を説明する図である。
【図6】前記火災検知システムにおける動作確認の方法を説明する図である。
【図7】前記火災検知システムにおける信号の発信源特定方法を説明する図である。
【図8】第2実施例に係る火災検知システムの動作を説明する図である。
【図9】前記火災検知システムの一部の構成を示す図である。
【図10】第3実施例に係る火災検知システムの構成を説明する図である。
【図11】従来の火災検知システムの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1,1’,40 火災検知システム
3 センサ
5(5A〜5J) 火災検知ユニット
5a 検知部
5b 信号処理部
5r,6r 受信部
5s,6s 送信部
6 処理部
6A,6B… 中間処理部
7 通信線
10 通信部
11a アドレス自動設定部
13 検知信号発信部
15 異常信号発信部
21 初期設定部(初期設定プログラム)
23 動作確認部(動作プログラム)
25 発信源特定部(発信源特定プログラム)
Ad アドレス情報が示す値
E 異常信号
F 検知信号
I 初期設定信号
N 動作確認信号
T 所定の間隔
t 許容時間
S 所定の数
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災検知システムおよび火災検知システムの制御方法に関するものであり、広い検知領域を多数の火災検知ユニットを用いて監視する装置に関して、簡便な接続方法で、個々の火災検知ユニットのアドレス設定などを行わずに火災箇所を特定できる火災検知システムおよび火災検知システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検知対象となる領域に複数の火災検知ユニットを散在させることにより、火災の発生を検知し、その場所を特定することができる火災検知システムが用いられている。図11は特許文献1に開示された従来の火災検知システム91の一例を示す図である。
【0003】
図11において、92は検知対象となる領域の各部に設置された火災検知ユニット、93は各火災検知ユニット92に接続されて、これらを制御すると共に各火災検知ユニット92からの検知信号を受信して火災を検知した部分を特定する処理部、94は処理部93と各火災検知ユニット92を接続して双方向の通信を行なうことができるように構成された多重伝送線である。
【0004】
処理部93は、例えば各火災検知ユニット92のアドレスをそれぞれ順番にトークン発呼し、各火災検知ユニット92は自らのアドレスのトークン発呼があったときに、検知結果を処理部93に応答することができるように構成されている。このようなトークンリングネットワークなどのネットワークを構成する火災検知システム91においては、各火災検知ユニット92が、個々の固有のアドレスを割り当てられることにより、各火災検知ユニット92と処理部93は1つの多重伝送線94を共有して利用して必要な情報の交換を行なうことができる。
【0005】
したがって、各火災検知ユニット92には、他の火災検知ユニット92と重なることのない独特のアドレスが設定されているので、処理部93は1つの多重伝送線94に多くの火災検知ユニット92が接続されていても、火災を検知した火災検知ユニット92を特定することができ、これによって火災発生部分を特定することができる。ゆえに、このような火災検知システム91を用いることにより、火災発生の有無を常時検知して、万一火災が発生したときには直ちに消火活動を行なうことができる。
【特許文献1】特開平11−96470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような火災検知システム91では、予め各火災検知ユニット92を他と重ならないようにして固有のアドレスを割り当てて設定しておくことが極めて重要であった。このため、火災検知ユニット92の台数が数十台を越える場合に、各火災検知ユニット92のアドレスの設定が非常に煩雑で、手間がかかるという問題があった。加えて、各火災検知ユニット92の操作ミスによってアドレスの設定を間違えることも考えられ、これによって火災検知ユニット92と処理部93との通信が不良となり、前記トークンリングネットワークなどの通信が正常に行えなかったり、部分的に火災を検知できない領域が生じることがあった。
【0007】
また、個々の火災検知ユニット92に固有アドレスを識別させるための特別なハードウェア(例えば設定用スイッチなど)が必要となるだけでなく、各火災検知ユニット92に複雑なネットワークを構成するための回路やソフトウェアを必要としているので、火災検知ユニット92の製造コストが高くなるという問題があった。そして、前記双方向通信を行うことができる多重伝送線94は、一般的に高価であるから、この点においても火災検知システム91の製造コストが引き上げられるという問題があった。
【0008】
加えて、従来の火災検知システム91では、火災検知ユニット92の劣化などに伴う故障に対応して、火災検知ユニット92の取換えを行なう場合にも、まず、交換前の火災検知ユニット92に割当てられていたアドレスを確認し、新しく取付ける火災検知ユニット92に対して、以前と同じアドレスを割り当てる必要があった。
【0009】
さらに、処理部93が全ての火災検知ユニット92の動作確認を行なうためには、各火災検知ユニット92のアドレスを1つずつ呼び出して、その動作を確認する必要があった。つまり、動作確認だけのために長い通信時間を必要とするだけでなく、処理部93は多重伝送線94に接続されている各火災検知ユニット92の数のみならず、各火災検知ユニット92に割り当てられているアドレスも最初からを認識している必要があった。あるいは、処理部93がもっと複雑な通信プロトコルを用いて、多重伝送線94に接続されている各火災検知ユニット92の数やアドレスを確認する必要があるが、これにはさらに複雑な回路およびソフトウェアを必要とするという問題があった。
【0010】
本発明は上記のような実情を考慮に入れてなされたものであって、その目的は、配線や設定などの設置作業を簡便にすることができ、各火災検知ユニットの構成を簡略化することができる火災検知システムおよび火災検知システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1発明に係る火災検知システムは、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、各火災検知ユニットが、火災発生の危険状態および/または火災を検知するセンサと、このセンサが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに所定のアドレス情報を含む検知信号を発信する検知信号発信部と、隣接する火災検知ユニットまたは隣接する処理部との信号の送受信機能を有し、さらに、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信する機能を有する通信部とを備え、前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴としている(請求項1)。なお、前記所定の数は正の値だけなく負の値であることも考えられ、その場合は前記通信部によって行われる加算は減算を意味する。
【0012】
第2発明に係る火災検知システムは、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットとの通信,上位システムまたは他のシステムとの通信,表示,操作を行なう中継処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、各火災検知ユニットが、火災発生の危険状態および/または火災を検知して所定のアドレス情報を含む検知信号を発信する検知部と、他の火災検知ユニットまたは中継処理部からの信号を受信する受信部と、各信号を他の火災検知ユニットまたは中継処理部に送信する送信部と、前記検知部からの検知信号を送信部に出力し、受信部が受信した信号のアドレス情報が示す値に所定の数値を加算して得られる信号を送信部に出力する信号処理部とを備え、前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴としている(請求項2)。なお、前記所定の数は正の値だけなく負の値であることも考えられ、その場合は前記通信部によって行われる加算は減算を意味する。
【0013】
第3発明に係る火災検知システムは、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、処理部が、アドレスの初期値に基づくアドレス情報を含む初期設定信号を最上流側の火災検知ユニットに発信する初期設定部を備える一方、各火災検知ユニットが、火災発生の危険状態および/または火災を検知するセンサと、隣接する火災検知ユニットまたは隣接する処理部との信号の送受信機能を有し、さらに、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信する機能を有する通信部と、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値を用いて自らのアドレスとして設定するアドレス自動設定部と、前記センサが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに前記自らのアドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号を発信する検知信号発信部とを備え、さらに、前記処理部が、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値から、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴としている(請求項3)。なお、前記所定の数は正の値だけなく負の値であることも考えられ、その場合は前記通信部によって行われる加算は減算を意味する。
【0014】
前記通信線がシリアル通信の通信線であってもよい(請求項4)。
【0015】
前記各火災検知ユニットおよび処理部が、前記上流側の通信線を接続する受信ポートと下流側の通信線を接続する送信ポートとを備え、前記受信ポートが上流側の通信線を介して上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の送信ポートに接続され、前記送信ポートが下流側の通信線を介して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の受信ポートに接続してあってもよい(請求項5)。なお、前記送信ポートおよび/または受信ポートに送信データおよび/または受信データのバッファを設けてあることが望ましい。
【0016】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に動作確認信号を最上流側の火災検知ユニットに発信して各火災検知ユニットの動作確認を行なう動作確認部を備えていてもよい(請求項6)。さらに、前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、下流側の火災検知ユニットまたは処理部に異常信号を発信する異常信号発信部を備えていてもよい(請求項7)。
【0017】
第4発明に係る火災検知システムの制御方法は、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有する火災検知システムにおいて、各火災検知ユニットが、火災発生の危険状態および/または火災を検知したときには、所定のアドレス情報を含む検知信号を下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に発信する一方、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から信号を受信したときには、この信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信し、前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定することを特徴としている(請求項8)。なお、前記所定の数は正の数のみならず負の数であってもよく、負の数の加算はすなわち、その絶対値の減算を意味する。
【0018】
第5発明に係る火災検知システムの制御方法は、複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有する火災検知システムにおいて、処理部が、アドレスの初期値に基づくアドレス情報を含む初期設定信号を最上流側の火災検知ユニットに発信し、各火災検知ユニットが、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から初期設定信号を受信したときには、受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値を用いて自らのアドレスの初期設定を行ない、この初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信し、火災発生の危険状態および/または火災を検知したときには、前記自らのアドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号を下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に発信する一方、前記処理部が、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値から、この信号の発信源を特定することを特徴としている(請求項9)。なお、前記所定の数は正の数のみならず負の数であってもよく、負の数の加算はすなわち、その絶対値の減算を意味する。
【0019】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に所定のアドレス情報を含む動作確認信号を最上流位置の火災検知ユニットに発信し、最下流位置の火災検知ユニットから動作確認信号を受信することにより各火災検知ユニットの動作確認を行なってもよい(請求項10)。加えて、前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、異常信号を下流側の火災検知システムの制御方法または処理部に伝送してもよい(請求項11)。
【発明の効果】
【0020】
請求項1および請求項2のような特徴構成を有する第1発明および第2発明の火災検知システムによれば、各火災検知ユニットが火災を検知したときに同じ所定のアドレス情報を含む検知信号を発信するものであるから、各火災検知ユニットに予めアドレスを割り当てる必要がない。つまり、各火災検知ユニットにアドレスを設定するための特別な装置(例えば、ディップスイッチなどスイッチ)を必要としておらず、各火災検知ユニットの構成をできるだけ簡素にすることができる。
【0021】
そして、各火災検知ユニットは同じ所定のアドレス情報を含む検知信号を発信し、この下流側の火災検知ユニットがそれぞれアドレス情報に特定の数を加えるので、発信部特定部が、最下流側の火災検知ユニットから受信した検知信号に含まれるアドレス情報から、所定の数が加算された回数を求めることにより、この検知信号が発信された火災検知ユニットを特定することができる。
【0022】
また、前記通信部はアドレス情報に対して単純な加算演算を行なうものであるから、その回路構成またはソフトウェア構成を簡素にすることができ、それだけ、火災検知システムの製造コストを削減できる。そして、発信源特定部は前記アドレス情報に加算(または減算)された数を所定の数で除算するだけの比較的単純な演算処理により、最下流側の火災検知ユニットから何番目の火災検知ユニットが発信源となっているのかを判断することができる。前記加減算や除算は簡単な演算回路やソフトウェアによって容易に行なうことができる程度の処理であるから、装置を不必要に複雑にすることがない。
【0023】
なお、前記特定の数は1または−1であれば、前記通信部によって行われる加減算は極めて簡単なインクリメント処理またはデクリメント処理を行なう回路によって実現可能であり、発信源特定部も除算を行なうことなく発信源の特定を行なうことができるので、前記通信部の回路構成またはソフトウェアの構成のさらなる簡素化を達成できる。
【0024】
請求項3のような特徴構成を有する第3発明の火災検知システムによれば、各火災検知ユニットが、処理部から発信された初期設定信号を受信するときに、アドレス自動設定部が自らのアドレスを自動設定し、通信部が前記アドレス情報が示す値に所定の数を加えて下流側の火災検知ユニットに送信するので、各火災検知ユニットに予めアドレスを割り当てなくても、各火災検知ユニットに他と重なることのないアドレスを自動的に設定することができる。つまり、各火災検知ユニットにアドレスを設定するための特別な装置(例えば、ディップスイッチなどスイッチ)を必要としておらず、各火災検知ユニットの構成をできるだけ簡素にすることができる。
【0025】
そして、各火災検知ユニットが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときは前述の自動設定されたアドレス情報を含む検知信号を発信するので、発信部特定部が、このアドレス情報から、この検知信号が発信された火災検知ユニットを容易に特定することができる。
【0026】
なお、前記通信部は初期設定信号に含まれるアドレス情報に対して単純な加算演算を行なうものであるから、その回路構成またはソフトウェア構成を簡素にすることができ、それだけ、火災検知システムの製造コストを削減できる。さらに、前記特定の数は1または−1であれば、前記通信部によって行われる加減算は極めて簡単なインクリメント処理またはデクリメント処理を行なう回路によって実現可能であるから、前記通信部の回路構成またはソフトウェアの構成のさらなる簡素化を達成できる。
【0027】
したがって、第1発明〜第3発明の何れの火災検知システムでも、各火災検知ユニットにアドレスを設定する必要がないので、各火災検知ユニットと処理部を通信線によってリング状に接続するだけで、これを火災検知システムとして動作させることができ、設置作業が極めて容易となる。また、動作不良などが発生した火災検知ユニットを交換するときも、アドレスの割当てが不要であるから、別の火災検知ユニットと交換するだけでよく、従来のようにアドレス設定のための作業を一切無くすことができると共に、アドレスの誤設定による通信不良などのトラブルが生じることもない。
【0028】
前記通信線がシリアル通信の通信線である場合(請求項4)には、通信線の構成が簡単である。つまり、シリアル通信の場合、各火災検知ユニット間の接続は信号線1本ですむので、きわめて簡潔である。なお、通信線としてたとえ電源線を同時に配線したとしても、2本の電源線と1本の信号線の3本だけである。また、本発明の火災検知システムは何れも信号の流れが基本的に一方向であるから、図11に示す従来の火災検知システム91のように、通信線として双方向の通信を行なうための高価な多重伝送線94を用いる必要がなく、その配線コストを低減することができる。
【0029】
前記各火災検知ユニットおよび処理部が、前記上流側の通信線を接続する受信ポートと下流側の通信線を接続する送信ポートとを備え、前記受信ポートが上流側の通信線を介して上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の送信ポートに接続され、前記送信ポートが下流側の通信線を介して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の受信ポートに接続されてなる場合(請求項5)には、通信線によってデータ通信されるのは、隣接する火災検知ユニットまたは処理部の間の送信ポートから受信ポートまでであるから、図11に示すような長い多重伝送線94内を全ての信号が流れるものに比べてノイズが重畳しにくく信頼性が高くなる。また、各通信線によって別々の情報を通信することも可能であるから、例えば複数の火災検知ユニットが同時に火災を検知した場合にも、処理部が全ての検知信号を確実かつ効率的に受け取ることが可能となる。
【0030】
なお、前記送信ポートおよび/または受信ポートに送信データおよび/または受信データのバッファを設けることにより、各信号線を用いて複数のデータが通信されるときに、通信不良などの問題が発生しにくくなるので、その信頼性をさらに向上させることができる。
【0031】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に動作確認信号を最上流側の火災検知ユニットに発信して各火災検知ユニットの動作確認を行なう動作確認部を備えてなる場合(請求項6)には、動作確認部が単一の動作確認信号を発信することにより、その応答を確認するだけで、各火災検知ユニットおよび通信線の動作確認を行なうことができる。つまり、図11に示すようなトークンリングのようなネットワークを有するもののように、各火災検知ユニットを順次スキャンして、その動作確認を行なう必要がない。
【0032】
前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、下流側の火災検知ユニットまたは処理部に異常信号を発信する異常信号発信部を備えてなる場合(請求項7)には、火災検知ユニットおよび/または通信線の異常によって通信不能になった部分が発生した場合にも、これよりも下流側の火災検知システムの異常信号発信部が異常信号を発信するので、処理部はこの異常信号を受信することにより、異常の発生を認識することができる。
【0033】
請求項8のような特徴構成を有する第4発明の火災検知システムの制御方法によれば、各火災検知ユニットが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに同じアドレス情報を含む検知信号を発信するから、各火災検知ユニットに予めアドレスを割り当てる必要がない。
【0034】
そして、各火災検知ユニットは同じアドレス情報を含む検知信号を発信し、この下流側の火災検知ユニットがそれぞれアドレス情報に対して単純な加算演算を行なうので、処理部は前記アドレス情報に加算(前記所定の数が負のときは減算)された数を所定の数で除算するだけの比較的単純な演算処理によって、最下流側の火災検知ユニットから何番目の火災検知ユニットが発信源となっているのかを判断することができる。なお、前記特定の数は1または−1であれば、前記加算(または減算)の演算は極めて簡単なインクリメント(またはデクリメント)であって、高速に処理することができる。
【0035】
請求項9のような特徴構成を有する第5発明の火災検知システムの制御方法によれば、各火災検知ユニットが、処理部から発信された初期設定信号を受信するときに、アドレス自動設定部が自らのアドレスを自動設定し、通信部が前記アドレス情報が示す値に所定の数を加えて下流側の火災検知ユニットに送信するので、各火災検知ユニットに予めアドレスを割り当てなくても、各火災検知ユニットに他と重なることのないアドレスを自動的に設定することができる。そして、各火災検知ユニットが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときは前述の自動設定されたアドレス情報を含む検知信号を発信するので、処理部が、このアドレス情報から、この検知信号が発信された火災検知ユニットを容易に特定することができる。
【0036】
なお、各火災検知ユニットは受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報に対して単純な加算(前記所定の数が負のときは減算)を行なってこれを下流側に送信するから、極めて簡単にかつ高速に処理を行なうことができる。さらに、前記特定の数は1または−1であれば、前記通信部によって行われる加算(または減算)の演算は極めて簡単なインクリメント(またはデクリメント)であるから、高速に処理することができる。
【0037】
第4発明および第5発明の何れの火災検知システムの制御方法であっても、各火災検知ユニットにアドレスを設定する必要がないので、各火災検知ユニットと処理部を通信線によってリング状に接続するだけで、これを火災検知システムとして動作させることができ、設置作業が極めて容易となる。また、動作不良などが発生した火災検知ユニットを交換するときも、アドレスの割当てが不要であるから、別の火災検知ユニットと交換するだけでよく、従来のようにアドレス設定のための作業を一切無くすことができると共に、アドレスの誤設定による通信不良などのトラブルが生じることもない。
【0038】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に所定のアドレス情報を含む動作確認信号を最上流位置の火災検知ユニットに発信し、最下流位置の火災検知ユニットから動作確認信号を受信することにより各火災検知ユニットの動作確認を行なう場合(請求項10)には、処理部が単一の動作確認信号を発信し、その応答を確認するだけで、各火災検知ユニットおよび通信線の動作確認を行なうことができる。
【0039】
前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、異常信号を下流側の火災検知システムの制御方法または処理部に伝送する場合(請求項11)には、火災検知ユニットおよび/または通信線の異常によって通信不能になった部分が発生した場合にも、これよりも下流側の火災検知システムが異常信号を発信するので、処理部はこの異常信号を受信することにより、異常の発生を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1実施例に係る例えば自動車運搬船の火災検知システム1の概要図であり、このシステム1は、例えば自動車格納室内に縦横に配列し格納された車両2の表面温度を測定し、その測定温度情報から火災発生の危険状態および/または火災を検知する火災検知用温度センサ3をボックス4内に収納し、各温度センサ3の視野角に合わせて検知対象領域の全体を監視できるように幾らかの間隔を開けて配置された複数(本例では10個)の火災検知ユニット5(以下、区別が必要なときは火災検知ユニット5A〜5Jと表現する)と、各火災検知ユニット5を制御して各火災検知ユニット5から得られる信号を処理する処理部6と、隣接する火災検知ユニット5および処理部6を互いに接続することにより、全体として環状の通信ラインLを形成する通信線7とを有する。
【0041】
前記温度センサ3は一例として二次元方向の温度分布を測定可能とするサーモパイルセンサであり、各火災検知ユニット5がそれぞれ測定した温度分布を処理部6に送信することにより、処理部6が検知対象領域内のどの部分でどの程度の火災発生の危険状態および/または火災が発生しているかを識別できるように構成されている。なお、火災発生の危険状態とは、例えば温度センサ3を用いる場合、周囲に配置された物体の発火点に近い高温を検出した状態を示している。
【0042】
そして、各火災検知ユニット5は、伝送する信号の上流側の通信線7を接続する受信ポート(受信部の一例)5rと、下流側の通信線7を接続する送信ポート(送信部の一例)5sとを備えている。つまり、火災検知ユニット5B〜5Jの受信ポート5rが上流側の通信線7を介して上流側に隣接する火災検知ユニット5A〜5Iの送信ポート5sに接続され、火災検知ユニット5A〜5Iの受信ポート5rが上流側の通信線7を介して上流側に隣接する火災検知ユニット5B〜5Jの送信ポート5sに接続されるように接続される。
【0043】
なお、本実施例では説明を簡単にするために、火災検知システム1を構成する火災検知ユニット5の数が10である例を示しているが、本発明はこの点に限定されるものではない。つまり、本発明の火災検知システム1は、とりわけ多くの火災検知ユニット5が接続されている場合に有用である。
【0044】
同様に、前記処理部6は、伝送する信号の最上流側の火災検知ユニット5Aの受信ポート5rに通信線7を介して接続される送信ポート6sと、最下流側の火災検知ユニット5Jの送信ポート5sに通信線7を介して接続される受信ポート6rとを備えている。つまり、隣接する各火災検知ユニット5および処理部6はそれぞれ別の通信線7によって接続されて、それぞれ独立した通信を行なうことができるように構成されている。
【0045】
したがって、各通信線7の長さを必要最小限にすることができ、かつ、1つの通信線7によって1対1の通信を行なうので、この通信線7に入る外部ノイズによる影響を小さくすることができる。ゆえに、通信線7にかかるコストを引き下げることができる。
【0046】
前記通信線7は例えば電源線2本とシリアル通信の信号線1本とからなり、この電源線を用いて処理部6から各火災検知ユニット5に電力を供給すると共に、信号線を用いて例えば図示時計回り方向に順次シリアル信号を伝送できるように構成されている。本実施例のように通信線7がシリアル通信を行なうものであることにより、信号線の数を1本にすることが可能となり、これによって通信線7にかかるコストを削減することが可能であるが、本発明は通信線7がシリアル通信のためのものであることに限定されるものではない。同様に各火災検知ユニット5の電源線を信号線と共に配線することは必須要件ではない。
【0047】
図2は各火災検知ユニット5の構成を説明するブロック図である。なお、図2に示すブロック図は本発明を説明するために機能をまとめたものであるから、本発明の構成はこのブロック図に示される構成に限定されるものではない。
【0048】
図2において、10は受信ポート5rおよび送信ポート5sに接続された通信部、11は通信部10によって受信されたコマンドC,アドレス情報Ad,データDなどの情報(以下の説明ではアドレス情報が示す値を符号Adで表わすこともある)を用いて各部を設定する設定部、12は火災発生の危険状態および/または火災として検知する温度の閾値レベルThなど、火災検知ユニット5が検知信号を出力するための各種設定を記憶する設定記憶部、13は前記温度センサ3に接続されると共に設定記憶部12に設定された閾値レベルThなどの内容に従って検知信号Fを発信する検知信号発信部、14は後述する動作確認信号Nを受信した時点から次の動作確認信号Nを受信するまでの時間T(例えば数秒)を計測するタイマー、15はタイマー14が所定の間隔Tよりも許容時間t(例えば数秒)以上長い時間を計測するときに異常信号Eを発信する異常信号発信部である。
【0049】
本実施例の前記通信部10は、受信ポート5rを介して上流側に隣接する火災検知ユニット5または処理部6から一連のデータを受信すると、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値Adをインクリメント(所定の数Sとして1を加算)し、送信ポート5sを介して下流側に隣接する火災検知ユニット5または処理部6に送信するように構成されている。つまり、前記各部10〜15のそれぞれの動作は複雑なものではないので、容易にワンチップの集積回路にまとめることができる。
【0050】
また、前記温度センサ3と検知信号発信部13は、火災発生の危険状態および/または火災を検知して検知信号Fを発信する検知部5aとして機能する。さらに、前記各部10〜12,14,15を一つの信号処理部5bとしてまとめて形成することが可能であり、この信号処理部5aは、各信号が検知部5aから発せられたのか受信部からのものかを識別し、この信号が検知部5aからのものと識別した場合には、検知部5aからの検知信号Fを送信部に出力し、信号が受信部5rからのものと識別した場合には、この信号のアドレス情報が示す値に所定の数値を加算して得られる信号を送信部に出力することができるように構成される。
【0051】
図3は処理部6の構成を説明するブロック図である。なお、図3に示すブロック図も本発明を説明するために機能をまとめたものであるから、本発明の構成はこのブロック図に示される構成に限定されるものではない。
【0052】
図3において、20は受信ポート(受信部の一例)6rおよび送信ポート(送信部の一例)6sに接続された通信部、21は通信部20を介して前記通信ラインLに初期設定信号Iを発信してその応答を用いて各種初期設定を行なう初期設定部、22は通信ラインLに存在する火災検知ユニット5の総数Nall などの各種設定を記憶する設定記憶部、23は通信部20を介して前記通信ラインLに動作確認信号Nを発信してその応答を確認する初期設定部、24は前記初期設定信号Iおよび動作確認信号Nを発信した時点から応答が戻ってくるまでの時間を計測するタイマー、そして、25が各火災検知ユニット5からの検知信号Fや異常信号Eを解析してこの信号の発信源を特定する発信源特定部である。
【0053】
また、本実施例の処理部6には上位コンピュータまたは他のシステムとの通信ポート26を形成し、発信源特定部25によって解析された火災検知場所の特定情報やその規模情報などを上位コンピュータまたは他のシステムに通信できるように構成してある。なお、前記各部20〜25の動作は比較的単純であるから、これらを容易にワンチップの集積回路にまとめることができる。
【0054】
以上のように、本実施例の火災検知システム1では、隣接する火災検知ユニット5が順次通信線7によって接続されると共に、信号の最上流側の火災検知ユニット5Aおよび最下流側の火災検知ユニット5Jに隣接させるように処理部6が接続され、各火災検知ユニット5の通信部10が上流側に隣接する火災検知ユニット5または処理部6から受信した信号I,N,F,Eに含まれるアドレス信号Adに所定の数Sを加算して下流側に隣接する火災検知ユニット5または処理部6に送信するように構成されているので、各火災検知ユニット5は自らのアドレスを設定する必要が全くない。
【0055】
従って、各火災検知ユニット5の構成を可及的に簡素化して、その製造コストを削減できるだけでなく、火災検知ユニット5の設置にかかる手間を少なくして、設定ミスなどに伴う動作不良を皆無とすることができる。
【0056】
以下、図4〜7を用いて、図1〜3に示す本実施例の火災検知システム1の基本的な動作について、各信号I,N,F,Eの一例を挙げて説明する。なお、図4は図1に示す全体構成に、各通信線7によって伝送される信号I,N,F,Eの一例を記載したものである。また、図5〜7に示す流れ図によって説明する各プログラムは図3に示す各部21,23,25の具体的な構成を示すものである。つまり、前記初期設定部21,動作確認部23,発信源特定部25は何れも各種動作を処理部6内のCPUによって実行するためのプログラムまたはそのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を示す。なお、これらを電子回路のようなハードウェアによって形成してもよいことはいうまでもない。
【0057】
図5は初期設定プログラム(初期設定部)21の動作を示す図である。
図5において、Si1は初期設定信号Iの発信を行なうステップを示し、ここでは、例えば初期設定信号Iとして”I000005”という一連の文字列を通信ラインLに伝送する例を示している。
【0058】
なお、以下の全ての説明において共通する点であるが、本実施例の通信ラインLによって伝送する信号I,N,F,Eは、例えば1バイトのコマンドCと、3バイトのアドレス情報Adと、3バイトのデータDを含む信号であり、他にもパリティーチェック、チェックサム、CRC、フレームエラー検出信号のような誤り検出情報や終端情報などが含まれる。
【0059】
そして、処理部6から発信された初期設定信号Iは、各火災検知ユニット5A,5B,…へと順番に伝送されるときに、そのアドレス情報Adが各通信部10において順次カウントされる。したがって、最下流側の火災検知ユニット5Jから処理部6に送信される初期設定信号Iは”I010005”となる。また、各火災検知ユニット5は初期設定信号Iの受信に伴って、設定部11がそのデータDに含まれる情報”005”を用いて検知する温度の閾値レベルThなどの各種設定を行なう。したがって、この閾値レベルThを調節することにより火災発生の危険状態を検知することも火災が発生した状態を検知することも可能である。なお、この初期設定の際に火災検知ユニット5に何らかの異常が発生した場合には、詳細には後述する異常発生信号Eを発信する。
【0060】
Si2は前記初期設定信号Iの応答を確認するステップであり、Si3は前記ステップSi2において応答の確認ができなかったときに、前記タイマー24を用いてタイムアウトを確認するステップである。なお、タイマー24は例えば初期設定信号Iの発信時から測定を始めて初期設定信号Iの応答があった時点でリセットされる。したがって、処理部は初期設定信号Iを発信した時点からタイマー24がタイムアウトするまで初期設定信号Iの応答を待ち続けるように構成されている。
【0061】
Si4はステップSi3においてタイムアウトが発生したときに実行され、異常発生を通知するものである。これは図外のアラームによる警告や警告ランプによる表示によって行ってもよいが、例えば”応答なし”といったメッセージを図外の表示部に表示したり、上位コンピュータに出力することによって行われることにより、異常の発生状態を明確にすることができる。
【0062】
Si5は前記ステップSi2において応答ありと判断されたときに実行され、応答の内容が初期設定信号Iの応答であるか異常発生信号Eであるかを判断するステップである。ここで異常発生信号Eであると判断された場合は、ステップSi6に示すように異常信号Eからアドレス情報Ad(本例の場合、”005”)を抽出し、ステップSi7に示すように抽出したアドレス情報Adから異常が発生した火災検知ユニット5(本例の場合、最下流側のユニットから(5+1)番目すなわち火災検知ユニット5E)で異常が発生したことを識別する。
【0063】
Si8は前記異常発生を通知するステップである。この場合も異常発生の通知は、アラームやランプによる表示、表示部への”○番目の火災検知ユニットで異常発生”といったメッセージの表示、上位コンピュータまたは他のシステムへの異常メッセージ出力によって行ってもよい。なお、異常発生信号の発信源の特定方法の詳細は後述する。
【0064】
Si9は前記ステップSi5において初期設定信号Iの応答を確認したときに実行され、火災検知システム1が正常であることを判断するステップである。
【0065】
Si10は応答した初期設定信号Iからアドレス情報Adを抽出するステップである。
【0066】
そして、Si11は前記抽出したアドレス情報Ad(本例の場合10)から、火災検知システム1に含まれる火災検知ユニット5の総数Nall を登録するステップである。つまり、本例では初期設定部21がアドレス情報Adを”000”(本例の場合は、アドレスの初期値A0 が0である)とする初期設定信号Iを発信し、各火災検知ユニット5がそれぞれこのアドレス情報が示す値Adをインクリメント(本例の場合は所定の値Sとして1を加算)したので、応答した初期設定信号Iのアドレス情報が示す値Adはそのまま火災検知ユニット5の総数Nall となる。
【0067】
つまり、本発明の火災検知システム1は火災検知ユニット5と処理部6を通信線7によって環状に接続して、処理部6が1つの初期設定信号Iを発信するだけで、この火災検知システム1に何個の火災検知ユニット5が接続されているのかを確認することができる。また、閾値レベルThのような各種設定も極めて効率的に行なうことができる。
【0068】
しかしながら、前記アドレス情報Adの初期値A0 は0以外の所定の数であってもよく、各火災検知ユニット5が順次アドレス情報が示す値Adに加える数Sも1以外の数であってもよい。
【0069】
次に、図6は動作確認プログラム(動作確認部)23の動作を示す図である。
図6において、Sn1は動作確認信号Nの発信を行なうステップを示し、ここでは、例えば動作確認信号Nとして”N000000”という一連の文字列を通信ラインLに伝送する例を示している。そして、処理部6から発信された動作確認信号Nのアドレス情報Adが各通信部10において順次カウントされ、最下流側の火災検知ユニット5Jから処理部6に送信される動作確認信号Nは”N010000”となる。
【0070】
Sn2は前記動作確認信号Nの応答を確認するステップ、Sn3は前記ステップSn2において応答の確認ができなかったときに、前記タイマー24を用いてタイムアウトを確認するステップである。この場合も、タイマー24は例えば動作確認信号Nの発信時から測定を始めて動作確認信号Nの応答があった時点でリセットされるので、このタイマー24がタイムアウトするまで動作確認信号Nの応答を待ち続ける。
【0071】
Sn4はステップSn3においてタイムアウトが発生したときに実行され、異常発生を通知するものである。これは初期設定信号Iの場合のステップSi4の動作と同様である。
【0072】
Sn5は前記ステップSn2において応答ありと判断されたときに実行され、応答の内容が動作確認信号Nの応答であるか異常発生信号Eであるかを判断するステップである。ここで異常発生信号Eであると判断された場合は、ステップSn6に示すように異常信号Eからアドレス情報Adを抽出し、ステップSn7に示すように抽出したアドレス情報Adから異常が発生した火災検知ユニット5を識別する。Sn8は前記異常発生を通知するステップである。これらのステップSn5〜Sn8も初期設定信号Iの場合のステップSi5〜Si8の動作と同様である。
【0073】
Sn9は前記ステップSn5において動作確認信号Nの応答を確認したときに実行され、火災検知システム1が正常であることを判断するステップである。なお、ここで応答した動作確認信号Nからアドレス情報Adを抽出し、抽出したアドレス情報Adから、現在火災検知システム1に含まれる火災検知ユニット5の総数(本例の場合10)を求め、これを設定記憶部22に記憶された総数Nall と比較して、火災検知システム1の状態を確認してもよい。
【0074】
Sn10は所定の時間待ちを行なうステップである。そして、所定の時間T(例えば数秒)の時間待ちを行った後に再びステップSn1に戻り、動作確認信号Nを発信する。つまり、本実施例の火災検知システム1はここで定められる間隔毎に、1つの動作確認信号Nを発信するだけで、全ての火災検知ユニット5を個々に呼び出さなくても、各火災検知ユニット5および各通信線7の動作確認を行なうことができる。
【0075】
次に、図2と図4と図7を用いて、火災検知ユニット5が火災発生の危険状態および/または火災による高い温度を検出した場合の動作について説明する。
【0076】
今、一つの火災検知ユニット5F内の温度センサ3を構成する3個の温度検出素子によって検出された温度が、閾値レベルTh以上の温度を検知したとすると、例えば検知信号発信部13は検知信号Fとして”F000003”を発信する。すなわち、検知レベルとして例えば閾値レベルThを越えた素子の数を示す”003”を有する検知信号Fを発信する。なお、火災検知ユニット5A〜5Jの検知信号発信部13は同じアドレス情報(例えば”000”)を有する検知信号Fを発信する。
【0077】
そして、前記検知信号Fは火災検知ユニット5G〜5Jを介して処理部6まで伝送されるが、このときアドレス情報が1ずつ順次加算されるので、処理部6が受信する検知信号Fは図4に示すように”F004003”となる。
【0078】
図7は、発信源特定プログラム(発信源特定部)25の動作を示す図である。
図7において、Sf1は前記検知信号Fを受信するステップである。なお、処理部6による各信号I,N,F,Eの受信時(前記ステップSi2,Sn2,Sf1に関係する)には、受信ポート6rまたは通信部20からの割り込み処理が行われることが望ましいが、本実施例では、図示によるその詳細な説明を省略する。
【0079】
Sf2は受信した検知信号Fからアドレス情報Ad(本例の場合は”004”)とデータD(”003”)を抽出して、これらが示す値をそれぞれ位置情報Nx,火災レベルLevとするステップである。
【0080】
Sf3は火災発生領域、すなわち、検知信号の発信源を特定するステップである。なお、本実施例では、各火災検知ユニット5A〜5Jが火災を検知したときに、全て同じアドレス情報Adとして”000”(アドレスの値が0であることを意味する)を含む検知信号Fを発信し、各火災検知ユニット5(本例の場合は火災検知ユニット5G〜5J)がアドレス情報Adが示す値に特定の値として1を順次加算する。したがって、本実施例ではステップSf3において、火災検知システム1内の火災検知ユニット5の総数Nall から前記抽出した値Nxを減算することにより、検知信号Fの発信源の位置Nfを求めることができる。
【0081】
なお、前記発信源の位置Nfを特定するための演算は、前記火災検知ユニット5で発信する信号のアドレス情報Adの初期値A0 と、前記所定の数Sを用いて行なう。したがって、初期値A0 が0以外である場合や、所定の数Sが1以外の場合には、前記検知信号Fの発信源の位置Nfを求めるためには、Nall −(Nx−A0 )/Sの計算を行なうことができる。
【0082】
Sf4はステップSf3によって求められた発信源の位置Nfと火災レベルLevを火災検知情報として通知するステップである。この火災検知情報の通知は、アラームやランプによる表示、表示部への”○番目の火災検知ユニットでレベル×の火災を検知しました”といった文字や、予め用意された各火災検知領域の地図と火災を検知した領域を示す図などの火災検知メッセージを表示してもよい。あるいは、上位コンピュータまたは他のシステムへ前記火災検知メッセージを出力してもよい。
【0083】
次に、火災検知システム1に異常が発生した場合の動作を説明する。本実施例では、一例として火災検知ユニット5Dと火災検知ユニット5Eを接続する通信線7に断線などの異常が発生した場合について考える。
【0084】
前記各火災検知ユニット5はそのタイマー14が前記動作確認信号を受信する間隔を計測し、これが所定の間隔Tよりも許容時間t(例えば数秒)以上長くなるときに、異常信号発生部15が下流側の火災検知ユニット5または処理部6に異常信号Eを発信する。このとき異常信号発生部15が発信する異常信号Eは本例では、”E000000”である。つまり、各火災検知ユニット5A〜5Jの異常信号発生部15が同じアドレス情報”000”を含む異常信号Eを下流側の火災検知ユニット5B〜5Jまたは処理部6に発信する。
【0085】
したがって、本例の場合は火災検知ユニット5Eが異常信号Eを発信し、各火災検知ユニット5F〜5Jを介して伝送された異常信号Eを処理部6が受信する。このとき、処理部6が受信する異常信号Eは”E005000”であり、そのアドレス情報Adが”005”であるから、前記発信源特定プログラム(発信源特定部)25は異常信号Eの発信源が本例の場合5番目の火災検知ユニット5Eであることを特定することができる。
【0086】
次いで、前記ステップSf4の処理において、異常の発生をアラームやランプによる表示、図外の表示部への”○番目の火災検知ユニットで異常を検知しました”といった文字や、予め用意された各火災検知領域の地図と異常を検知した火災検知ユニットの位置を示す図などの異常検知メッセージの表示を行なう。あるいは、上位コンピュータまたは他のシステムへ前記異常検知メッセージを出力してもよい。
【0087】
なお、前記異常信号発生部15による異常信号Eの発信は動作確認信号Nが受信できないとき以外にも、例えば、設定部11による初期設定ができないなど、各部回路の動作に異常が発生したときに発信するようにしてもよい。また、異常の種類を異常信号Eに含ませるデータDとして発信するようにしてもよい。
【0088】
上述したように、本実施例の火災検知システム1では、各火災検知ユニット5に自己アドレスを一切設定しなくても、検知信号Fや異常信号Eの発信源を特定することができるので、火災検知ユニット5の構成を可及的に簡素にすることができる。また、設置時に各火災検知ユニット5に自己アドレスの設定を行なう必要が一切なく、設置にかかる手間を大幅に削減できる。加えて、各火災検知ユニット5に異常が発生した場合にも、これを新しい火災検知ユニット5と交換するだけで自己アドレスの設定を行なう必要がない。ゆえに、火災検知ユニット5の設置および交換において、人為的な設定ミスが入り込む余地がないので、火災検知システム1の信頼性が向上する。
【0089】
しかしながら、前記初期設定信号Iや動作確認信号Nの受信に伴って各火災検知ユニット5が自己アドレスの自動設定を行なうように構成してあってもよい。
【0090】
図8は第2実施例の火災検知システム1’の全体的な構成を示す図であり、図9はこの火災検知システム1’を構成する火災検知ユニット5’の構成を示す図である。図8,9において、図1〜7と同じ符号を付した部分は同一または同等の部分であるから、その詳細な説明を省略する。
【0091】
図9に示す火災検知ユニット5’が第1実施例の火災検知ユニット5と異なる点は、自己アドレスを記憶するアドレス記憶部30を備えている点と、前記通信部10が初期設定信号Iおよび動作確認信号Nに関してのみ、これらの信号I,Nに含まれるアドレス情報が示す値Adに所定の値S(本例の場合1)を加算する点と、前記設定部11が前記初期設定信号I(動作確認信号Nであってもよい)の受信時に、この信号I(N)に含まれるアドレス情報が示す値Adを前記アドレス記憶部30に記憶させるアドレス自動設定部11aを備えてなる点にある。
【0092】
そして、前記自己アドレスの記憶に伴って、前記タイマー14に前記値Afに比例する前記許容時間tを設定する。この許容時間tは例えば数ミリ秒に前記値Afを乗算した時間とする。これによって、タイマー14は各火災検知ユニット5の接続位置に合わせた許容時間tの設定を行なうことができる。
【0093】
したがって、第2実施例の火災検知システム1’では処理部6が通信ラインLに初期設定信号Iとしてアドレスの初期値A1 (本例の場合0)に基づくアドレス情報”000”を含む”I000005”を伝送すると、各火災検知ユニット5A〜5Jが自己アドレス000〜009をそれぞれ自動設定することができる。ゆえに、各火災検知ユニット5A〜5Jは自己アドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号Fや異常信号Eを発信することができ、処理部6の発信源特定部はこれらの信号F,Eに含まれるアドレス情報から、これらの信号F,Eの発信源を容易に特定することができる。
【0094】
なお、本例では前記アドレスの初期値A1 を0としており、信号I,Nに含まれるアドレス情報が示す値Adに加算する所定の値Sを1としているので、前記信号F,Eの発信源の位置は、この信号F,Eに含まれるアドレス情報が示す値Adに1を加えたところとなる。しかしながら、前記値A1 が0以外または値Sが1以外の場合は、前記発信源の位置を(Ad−A1 )/S+1によって求めることができる。
【0095】
第2実施例の火災検知システム1’は、各火災検知ユニット5が自己アドレスを有するものであるが、この自己アドレスは各火災検知ユニット5A〜5Jと処理部6を環状に接続し、処理部6が初期設定信号I(または動作確認信号N)を発信して初めて自動的に設定されるものである。したがって、設置時に作業者が火災検知ユニット5に自己アドレスの設定をする必要がないので、火災検知ユニット5の設置や交換にかかる手間を省き、人為的な設定ミスの心配がないだけでなく、火災検知ユニット5のハードウェア構成を簡略化することもできる。
【0096】
なお、上述の各実施例では火災検知ユニット5に備えた温度センサ3が、表面温度の二次元分布を測定することにより、その測定温度情報から火災発生の有無を検知(判断)する例を示しているが、本発明はこのセンサ3の種類に限定されるものではなく、煙センサや温度センサと煙センサの組合せによって火災発生あるいは火災に至りかねない状態の検知を行ってもよいことはいうまでもない。また、センサ3が二次元情報を出力するものであり、火災検知ユニット5がこれを火災レベルLevとして出力するので、処理部6は火災の広がり状態をより正確に検出することが可能であるが、この火災レベルLevは温度の高さや煙の濃度などに基づいて出力されてもよい。
【0097】
また、上記各実施例では、単一の温度センサ3による単位検知範囲を1台の車両2が検知できる範囲に設定したもので説明したが、単一の温度センサ3による単位検知範囲を隣接格納された複数台の車両2が検知できる範囲に設定してもよい。さらに、1つの火災検知ユニット5に複数の温度センサ3を設けて1つの火災検知ユニット5の検知範囲、つまり、検知できる自動車台数を増大してもよい。加えて、前記温度センサ3を首振り式あるいはスライド式に構成し、その温度センサ3の首振りあるいはスライドにより複数台の自動車の表面温度をスキャニング測定できるようにしてもよい。
【0098】
前記各信号I,N,F,Eのフォーマットは本発明を説明しやすいように示すものであるから、本発明は上述の各実施例に示す信号の形式に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0099】
さらに、上記実施例では、説明していないが、火災検知信号に基づいて、火災発生の可能性や火災が発生した自動車に向けて散水するスプリンクラーやCO2 消火装置などの自動消火装置を設けてもよいこともちろんである。
【0100】
図10は、図1〜9に示す火災検知システム1,1’を複数接続した第3実施例の火災検知システム40の構成を示す図である。
図10において、1A,1B,1C…は図1〜9を用いて説明した火災検知システム1,1’であり、6A,6B,6C…は各火災検知システム1A,1B,1C…の処理部6(本実施例の場合は、上位システムと各火災検知ユニット5との中間に位置するので、以下の説明では中間処理部という)である。41は各中間処理部6A,6B,6C…をLANなどの通信手段によって接続する通信ケーブルであり、42は各中間処理部6A,6B,6C…に接続されて火災検知システム40の全体を制御するホストコンピュータ(火災検知ユニット5からの信号を処理する処理部)である。
【0101】
本実施例のように火災検知ユニット5を幾つかのグループに分けて接続することにより、通信線7の断線などの異常が発生したときに、通信不良となる部分を小さくすることができ、それだけ火災検知システム40全体の信頼性を向上できる。
【0102】
なお、本実施例ではLANを構成する通信ケーブル41としているが、この通信ケーブル41を用いた信号の通信に代えて、一点鎖線に示すように、図1,4,8を用いて説明したような環状の通信ラインL’を形成し、ホストコンピュータ42と各中間処理部6A,6B,6C…の間で既に詳述したようなアドレス情報Adの授受を行なって、各信号の発生源を特定できるようにしてもよい。
【0103】
本実施例の場合、各中間処理部6A,6B,6C…は、信号の上流側に隣接する中間処理部6A,6B,6C…またはホストコンピュータ42から受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値Adに対して、各火災検知システム1A,1B,1C…内の火災検知ユニット5の数Nall(またはこれより大きい数)を加算して、下流側に隣接する中間処理部6B,6C…またはホストコンピュータ42に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施例に係る火災検知システムの構成を示す図である。
【図2】前記火災検知システムの一部の構成を示す図である。
【図3】前記火災検知システムの別の部分の構成を示す図である。
【図4】前記火災検知システムの動作を説明する全体図である。
【図5】前記火災検知システムにおける初期設定の方法を説明する図である。
【図6】前記火災検知システムにおける動作確認の方法を説明する図である。
【図7】前記火災検知システムにおける信号の発信源特定方法を説明する図である。
【図8】第2実施例に係る火災検知システムの動作を説明する図である。
【図9】前記火災検知システムの一部の構成を示す図である。
【図10】第3実施例に係る火災検知システムの構成を説明する図である。
【図11】従来の火災検知システムの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1,1’,40 火災検知システム
3 センサ
5(5A〜5J) 火災検知ユニット
5a 検知部
5b 信号処理部
5r,6r 受信部
5s,6s 送信部
6 処理部
6A,6B… 中間処理部
7 通信線
10 通信部
11a アドレス自動設定部
13 検知信号発信部
15 異常信号発信部
21 初期設定部(初期設定プログラム)
23 動作確認部(動作プログラム)
25 発信源特定部(発信源特定プログラム)
Ad アドレス情報が示す値
E 異常信号
F 検知信号
I 初期設定信号
N 動作確認信号
T 所定の間隔
t 許容時間
S 所定の数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の火災検知ユニットと、
各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、
隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、
各火災検知ユニットが、
火災発生の危険状態および/または火災を検知するセンサと、
このセンサが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに所定のアドレス情報を含む検知信号を発信する検知信号発信部と、
隣接する火災検知ユニットまたは隣接する処理部との信号の送受信機能を有し、さらに、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信する機能を有する通信部とを備え、
前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴とする火災検知システム。
【請求項2】
複数の火災検知ユニットと、
各火災検知ユニットとの通信,上位システムまたは他のシステムとの通信,表示,操作を行なう中継処理部と、
隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、
各火災検知ユニットが、
火災発生の危険状態および/または火災を検知して所定のアドレス情報を含む検知信号を発信する検知部と、
他の火災検知ユニットまたは中継処理部からの信号を受信する受信部と、
各信号を他の火災検知ユニットまたは中継処理部に送信する送信部と、
前記検知部からの検知信号を送信部に出力し、受信部が受信した信号のアドレス情報が示す値に所定の数値を加算して得られる信号を送信部に出力する信号処理部とを備え、
前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴とする火災検知システム。
【請求項3】
複数の火災検知ユニットと、
各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、
隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、
処理部が、アドレスの初期値に基づくアドレス情報を含む初期設定信号を最上流側の火災検知ユニットに発信する初期設定部を備える一方、
各火災検知ユニットが、
火災発生の危険状態および/または火災を検知するセンサと、
隣接する火災検知ユニットまたは隣接する処理部との信号の送受信機能を有し、さらに、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信する機能を有する通信部と、
上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値を用いて自らのアドレスとして設定するアドレス自動設定部と、
前記センサが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに前記自らのアドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号を発信する検知信号発信部とを備え、
さらに、前記処理部が、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値から、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴とする火災検知システム。
【請求項4】
前記通信線がシリアル通信の通信線である請求項1〜3の何れかに記載の火災検知システム。
【請求項5】
前記各火災検知ユニットおよび処理部が、前記上流側の通信線を接続する受信ポートと下流側の通信線を接続する送信ポートとを備え、
前記受信ポートが上流側の通信線を介して上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の送信ポートに接続され、
前記送信ポートが下流側の通信線を介して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の受信ポートに接続されてなる請求項1〜4の何れかに記載の火災検知システム。
【請求項6】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に動作確認信号を最上流側の火災検知ユニットに発信して各火災検知ユニットの動作確認を行なう動作確認部を備えてなる請求項1〜5の何れかに記載の火災検知システム。
【請求項7】
前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、下流側の火災検知ユニットまたは処理部に異常信号を発信する異常信号発信部を備えてなる請求項6に記載の火災検知システム。
【請求項8】
複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有する火災検知システムにおいて、
各火災検知ユニットが、
火災発生の危険状態および/または火災を検知したときには、所定のアドレス情報を含む検知信号を下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に発信する一方、
上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から信号を受信したときには、この信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信し、
前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定することを特徴とする火災検知システムの制御方法。
【請求項9】
複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有する火災検知システムにおいて、
処理部が、アドレスの初期値に基づくアドレス情報を含む初期設定信号を最上流側の火災検知ユニットに発信し、
各火災検知ユニットが、
上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から初期設定信号を受信したときには、受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値を用いて自らのアドレスの初期設定を行ない、
この初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信し、
火災発生の危険状態および/または火災を検知したときには、前記自らのアドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号を下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に発信する一方、
前記処理部が、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値から、この信号の発信源を特定することを特徴とする火災検知システムの制御方法。
【請求項10】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に所定のアドレス情報を含む動作確認信号を最上流位置の火災検知ユニットに発信し、最下流位置の火災検知ユニットから動作確認信号を受信することにより各火災検知ユニットの動作確認を行なう請求項8または9に記載の火災検知システムの制御方法。
【請求項11】
前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、異常信号を下流側の火災検知システムの制御方法または処理部に伝送する請求項10に記載の火災検知システムの制御方法。
【請求項1】
複数の火災検知ユニットと、
各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、
隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、
各火災検知ユニットが、
火災発生の危険状態および/または火災を検知するセンサと、
このセンサが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに所定のアドレス情報を含む検知信号を発信する検知信号発信部と、
隣接する火災検知ユニットまたは隣接する処理部との信号の送受信機能を有し、さらに、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信する機能を有する通信部とを備え、
前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴とする火災検知システム。
【請求項2】
複数の火災検知ユニットと、
各火災検知ユニットとの通信,上位システムまたは他のシステムとの通信,表示,操作を行なう中継処理部と、
隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、
各火災検知ユニットが、
火災発生の危険状態および/または火災を検知して所定のアドレス情報を含む検知信号を発信する検知部と、
他の火災検知ユニットまたは中継処理部からの信号を受信する受信部と、
各信号を他の火災検知ユニットまたは中継処理部に送信する送信部と、
前記検知部からの検知信号を送信部に出力し、受信部が受信した信号のアドレス情報が示す値に所定の数値を加算して得られる信号を送信部に出力する信号処理部とを備え、
前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴とする火災検知システム。
【請求項3】
複数の火災検知ユニットと、
各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、
隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有し、
処理部が、アドレスの初期値に基づくアドレス情報を含む初期設定信号を最上流側の火災検知ユニットに発信する初期設定部を備える一方、
各火災検知ユニットが、
火災発生の危険状態および/または火災を検知するセンサと、
隣接する火災検知ユニットまたは隣接する処理部との信号の送受信機能を有し、さらに、上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信する機能を有する通信部と、
上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値を用いて自らのアドレスとして設定するアドレス自動設定部と、
前記センサが火災発生の危険状態および/または火災を検知したときに前記自らのアドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号を発信する検知信号発信部とを備え、
さらに、前記処理部が、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値から、この信号の発信源を特定する発信源特定部を備えてなることを特徴とする火災検知システム。
【請求項4】
前記通信線がシリアル通信の通信線である請求項1〜3の何れかに記載の火災検知システム。
【請求項5】
前記各火災検知ユニットおよび処理部が、前記上流側の通信線を接続する受信ポートと下流側の通信線を接続する送信ポートとを備え、
前記受信ポートが上流側の通信線を介して上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の送信ポートに接続され、
前記送信ポートが下流側の通信線を介して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部の受信ポートに接続されてなる請求項1〜4の何れかに記載の火災検知システム。
【請求項6】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に動作確認信号を最上流側の火災検知ユニットに発信して各火災検知ユニットの動作確認を行なう動作確認部を備えてなる請求項1〜5の何れかに記載の火災検知システム。
【請求項7】
前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、下流側の火災検知ユニットまたは処理部に異常信号を発信する異常信号発信部を備えてなる請求項6に記載の火災検知システム。
【請求項8】
複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有する火災検知システムにおいて、
各火災検知ユニットが、
火災発生の危険状態および/または火災を検知したときには、所定のアドレス情報を含む検知信号を下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に発信する一方、
上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から信号を受信したときには、この信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信し、
前記処理部が、最下流位置の火災検知ユニットから受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値と前記所定の数を用いて、この信号の発信源を特定することを特徴とする火災検知システムの制御方法。
【請求項9】
複数の火災検知ユニットと、各火災検知ユニットからの信号を処理する処理部と、隣接する火災検知ユニットを順次接続すると共に前記処理部を信号の最上流側の火災検知ユニットおよび最下流側の火災検知ユニットに隣接させるように接続する通信線とを有する火災検知システムにおいて、
処理部が、アドレスの初期値に基づくアドレス情報を含む初期設定信号を最上流側の火災検知ユニットに発信し、
各火災検知ユニットが、
上流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部から初期設定信号を受信したときには、受信した初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値を用いて自らのアドレスの初期設定を行ない、
この初期設定信号に含まれるアドレス情報が示す値に所定の数を加算して下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に送信し、
火災発生の危険状態および/または火災を検知したときには、前記自らのアドレスに基づくアドレス情報を含む検知信号を下流側に隣接する火災検知ユニットまたは処理部に発信する一方、
前記処理部が、受信した信号に含まれるアドレス情報が示す値から、この信号の発信源を特定することを特徴とする火災検知システムの制御方法。
【請求項10】
前記処理部が、所定の間隔で定期的に所定のアドレス情報を含む動作確認信号を最上流位置の火災検知ユニットに発信し、最下流位置の火災検知ユニットから動作確認信号を受信することにより各火災検知ユニットの動作確認を行なう請求項8または9に記載の火災検知システムの制御方法。
【請求項11】
前記各火災検知ユニットが、前記動作確認信号を受信した時点から次の動作確認信号を受信する時点までの時間を計測し、この時間が前記所定の間隔よりも許容時間以上長くなるときに、異常信号を下流側の火災検知システムの制御方法または処理部に伝送する請求項10に記載の火災検知システムの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−99394(P2006−99394A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284315(P2004−284315)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
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