説明

炊飯器及び炊飯器の制御方法

【課題】省エネを図りつつ短時間で炊飯でき、更に低温外気環境下でも安定した炊飯が行える炊飯器及び炊飯器の制御方法を提供する。
【解決手段】内釜20は、径方向に伸縮可能な円筒状の内釜収納部2に所定の隙間を介して収納される。管状アクチュエータ60は形状記憶合金で構成され、内釜収納部2の外周面に沿って取付けられる。また、胴ヒーター62は内釜収納部2の円筒の側面に取り付けられる。炊飯の沸騰工程において、基板カバー12からの指示により胴ヒーター62が加熱動作すると、管状アクチュエータ60が胴ヒーター62によって加熱され、その長さが短くなることにより、内釜収納部2の円筒の直径も小さくなり、内釜収納部2が内釜20に密着する。これにより、内釜20は主加熱部である誘導加熱コイル5と、胴ヒーター62とによって効率良く加熱され、短時間で炊飯できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭用に用いられる電磁誘導加熱式の炊飯器及び炊飯器の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、保温時の消費電力軽減のために内釜の外周部に相対した内釜収納部に空気層を設け、更に内釜の外周部に熱伝導率の低い樹脂成形部を形成した炊飯器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−440号公報(第1頁〜第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で示される従来の炊飯器では炊飯時(加熱時)には断熱材(樹脂成形部)が邪魔になり加熱速度が遅く炊飯時間が長くなるという問題と、断熱材の持つ熱容量の増加により炊飯時のエネルギー消費量が増加するという問題がある。
解決しようとする課題は、断熱材の持つ熱容量の増加であった。また、冬など外気が低温になったときも十分な断効果を得る為には、断熱材の厚みを増やす必要があり、これにより断熱材の熱容量が増えるので更に炊飯時のエネルギー消費量が増加するという問題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、第1の目的は炊飯時に加熱速度の低下がなく、炊飯時のエネルギー消費量が増加することのない炊飯器及び炊飯器の制御方法を提供することである。また、第2の目的は冬場の低温外気環境下でも安定した炊飯を行える炊飯器及び炊飯器の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る炊飯器は、主加熱部を底部に有する炊飯器本体と、炊飯器本体に着脱自在に収納される内釜と、内釜の外周を所定の隙間を介して覆い、径方向に変形可能な円筒状の内釜収納部と、内釜収納部の側面に取り付けられた補助加熱手段と、補助加熱手段の加熱動作に同期して内釜収納部を内釜に密着させる可動手段と、所定の条件の下で補助加熱手段の加熱動作を制御する制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の炊飯器は、炊飯開始から予熱工程時は内釜と内釜収納部の側面は離れており、隙間があるので主加熱のエネルギーは内釜と被加熱物に伝達され、隙間の空気の熱伝達は低いので内釜収納部へ奪われて外へ逃げる熱を少なくするという効果がある。
また、沸騰工程時は補助加熱手段を備えた内釜収納部を内釜に密着させることで、主加熱部の熱に加えて補助加熱手段の熱を直接内釜に伝達できるので熱伝達効率が高くなり短時間に内釜を加熱できるようになるので加熱の反応がよくなり温度調整の精度が向上し、さらに、ヒーターへの入力電力を少なくでき省エネにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における電磁誘導加熱式の炊飯器の縦断面図である。
図1に示すように、炊飯器は、炊飯器の外郭となる外枠1と、外枠1に一体に成形され底面3と共に炊飯器本体を構成する内釜収納部2と、前記内釜収納部2に着脱自在に収納される内釜20とから構成される。また、内釜収納部2と内釜20の間に隙間(空気層2a)がある。内釜収納部2の外周面に沿うように配置した管状アクチュエータ60(可動手段を構成する)は、熱負荷或いは電流の負荷の有無で形状を変化させるTiとNiを含む合金、或いはTiとNiとCoを含む合金で構成される。内釜収納部2の外周面に管状アクチュエータ60を固定する固定部材61、管状アクチュエータ60の管内に配置される胴ヒーター62(補助加熱手段を構成する)がある。
【0008】
温度検出装置4(温度検出手段を構成する)は底面3の中央に取り付けられ、内釜20の底面によって圧接される。誘導加熱コイル5は内釜収納部2の底面3に取り付けられる。また、フェライト6は前記誘導加熱コイル5の下部に相対して取り付けられ、コイルカバー7にて一体に固定されている。ボトム8は底部外郭をなすもので冷却用ファン11の吸気孔9及び排気孔10を有する。
【0009】
本体内部の下方には制御キバン12(制御手段を構成する)がキバンカバー13を介してコイルカバー7に取り付けられている。また、ふた部15はふたヒーター16を貼付した放熱板17をスプリング18を介して取り付け、外枠1に設けられたヒンジ部1aを支点とし回動して内釜20の上端部を閉塞し、フックボタン19でロックされるように構成されている。
【0010】
図2aは、本実施の形態1の内釜20を含む内釜収納部2周辺の構成を示す斜視図である。また、図2bは図2aの一部をカットした部分カット図である。図2aにおいて、内釜収納部2は円筒形状の側面を有する内釜20を囲むように円筒状を成しているが内釜収納部2は無端円筒ではなく合わせ部65を少なくとも一つ持つ。また、合わせ部65は距離変動する隙間65aを設ける。
【0011】
図3a及び図3bは、内釜20と内釜収納部2、管状アクチュエータ60の動作を説明するための平面図及び縦断面図である。
図4は、この発明の実施の形態1の炊飯工程を示す図であり、炊飯工程と胴ヒーター62のON−OFF制御動作、収納部2の直径の変化の関係を示す。
【0012】
次に、その動作について図1〜図4で説明する。使用者が内釜20内に適量の米と水を入れ炊飯スイッチ(図示せず)を入れると制御キバン12の動作により誘導加熱コイル5に電源が供給され、誘導加熱によって内釜20が発熱し炊飯が開始する。この時、誘導加熱コイル5で発生させた高周波磁界は磁性金属材料である内釜20にのみ作用して熱に変換される。
【0013】
炊飯中は温度検出装置4の温度情報に基づいて制御キバン12からの指示で誘導加熱が制御される。炊飯は図4のように概略4つの工程に分けられ、予熱工程(温度T1となるように誘導加熱コイル5を制御)、沸騰工程(温度T2=略100℃となるように誘導加熱コイル5を制御)、ドライアップ(温度T3)を経た後、むらし工程に移行する。炊飯時(特に沸騰時)は内釜20が高温になり内釜収納部2にも熱が伝わり空気層2aの空気が温まる。
【0014】
炊飯時は制御キバン12も高温になるが、冷却ファン11によりボトム8に設けた吸気孔9より外気を取込み冷却し排気孔10より排出することにより低温を保つ。
【0015】
この図4で示す炊飯工程において、予熱工程で胴ヒーター62はOFF、沸騰工程では周期t1で胴ヒーター62のON-OFFを間欠的に行い、むらし工程では周期t2で胴ヒーター62のON-OFFを間欠的に行い、保温工程では保温温度T5を維持するように胴ヒーター62のON-OFF時間を制御する。
【0016】
管状アクチュエータ60は形状記憶作用をもつNi-Tiの合金、或いはNi-Ti-Coの合金であるので、胴ヒーター62及び内釜2から伝わる熱により温度が上昇し、温度Txを境に図3a、bのように形状が変化する。
図3aは管状アクチュエータ60の温度<Txの時の形状を示しており、直径はDLで管状アクチュエータ60と接続する内釜収納部2は内釜20とは接触せず空気層2aの隙間を持つ。また、合わせ部65の隙間65a所定値より大きくなる。
図3bは管状アクチュエータ60の温度≧Txの時の形状を示しており、直径はDsで管状アクチュエータ60と接続する内釜収納部2は内釜20と接触し、空気層2aは消滅する。このとき合わせ部65の隙間65aは図3(a)の場合よりも小さくなる。
つまり、炊飯開始から内釜20の内部の米など被加熱物の温度がT1℃になるまでは、内釜収納部2は大径の直径DLとして、内釜20と側壁との間に隙間を設けた状態を維持する。T1℃に達したら、同時に胴ヒーター62による加熱(ヒーターON-OFF)を開始し、内釜収納部2の直径をDsにして内釜20の外側壁を密着する。むらし工程の終段のご飯温度を下げる段階で直径をDLにもどして密着を解除して隙間を設け、胴ヒーター62のON-OFF周期を長めにする。
【0017】
予熱工程において、管状アクチュエータ60の温度<Txであり、内釜収納部2と内釜20との間の空気層2aがあるので、空気層2aによる断熱効果により予熱温度T1℃に維持するための加熱のエネルギーは少なくできる。
【0018】
沸騰工程及びむらし工程において、胴ヒーター62及び内釜2から伝わる熱により管状アクチュエータ60及び内釜収納部2が加熱され、管状アクチュエータ60の温度≧Txとなり、内釜収納部2の直径はDsになり内釜20の外側壁を密着する。すなわち胴ヒーター62の加熱エネルギーが直接内釜20に伝わり、伝熱のロスがなく効率良く胴ヒーター62の熱を内釜20へ伝えることができる。
【0019】
このようにして炊飯が進行し内釜20内の水分がなくなると炊飯を完了して自動的に、或いはユーザーの選択により保温工程に移行する。保温工程では保温温度(T4=略60℃〜74℃)にまで米飯温度が低下すると温度検出装置4が働きふたヒーター16、胴ヒーター62及び誘導加熱コイル5に通電され内釜20を加熱する。加熱により内釜20の温度が上がり温度検出装置4の温度が上がると加熱を停止し、以後この繰り返しによって保温温度を維持する。
夏場など外気温が高い場合は胴ヒーター62をONする回数が少なく、管状アクチュエータ60の温度<Txであり、内釜収納部2と内釜20との間の空気層2aがあるので、空気層2aによる断熱効果により保温温度が維持できるので省エネな保温ができる。
冬場など外気温が極度に低い場合は炊飯器の外郭となる外枠1から放熱が大きいため、胴ヒーター62が頻繁にONする事になり、このとき管状アクチュエータ60の温度≧Txとなり、内釜収納部2の直径はDsになり内釜20の外側壁を密着することで効率良く加熱エネルギーを伝える事ができ、冬場でも省エネで且つ安定した温度で保温できる。
【0020】
保温工程において、放熱板17と内釜20との略密閉空間内では米飯温度より低温の部位が結露する現象が生じるが、内釜収納部2と内釜20との間の空気層2aを設けたことによって断熱効果が高く放熱を最小にすることが出来るため内釜20の側面での結露を防止でき、夏、冬の外気環境に応じた胴ヒーター62と内釜20との接触、非接触の制御による補助加熱で側面での夏、冬の外気環境に左右されず結露を防止できる。
また、接触と非接触で効率良く伝熱する胴ヒーター62に加えて、内釜20の上部では放熱板17を接触させ、ふたヒーター16の熱を効率良く伝え、内釜20底部では誘導加熱コイル5によって内釜20自体が発熱し、結露を防止できる。
上記実施の形態の炊飯器により、効率良く加熱でき、夏冬の外気環境の影響なく米飯状態を良好に保つことができ、高い省エネの効果が期待できる。
【0021】
なお、上記の例では、形状記憶合金により内釜収納部の円筒の直径を変化させたが、これに限る必要はなく、図5に示すようなX字状のXリンク70を設け、このXリンク70の一方の両先端である壁側支持部71を内釜収納部2の円筒先端の合わせ部のそれぞれに係合させ、他方の両先端をバネ72を取り付けた軸73とソレノイド74に取り付け、この軸73をソレノイド74によって左右方向に駆動するように構成して機械的に円筒の直径を変化させてもよい。この場合、ソレノイド74によって軸73を駆動することでXリンク70のソレノイド側の両先端は左右方向に往復動作する。これにより、Xリンク70の他方の両先端である壁側支持部71も支点75を中心として左右方向に往復動作し、内釜収納部2の合わせ部を強制的に引っ張ったり、逆方向に戻したりする。このようにして、内釜収納部2の円筒の直径を機械的に変化させることができる。
また、内釜収納部2を金属などの熱伝動率の高い材料で構成してもよい。これにより、胴ヒーター62によって加熱された熱は内釜収納部2全体に均一に伝動されるので、内釜の側面全体を均一に加熱することができ、ムラのない調理が可能となる。また、胴ヒーターを内釜収納部2の円筒の内側でなく外側に配置できるので、内側に配置した場合に比べ収納スペースおよび隙間形成の点で有利となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の活用例として、マホービン、電気給湯機がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1を示す右面視からの断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す内釜と内釜収納部の構成を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す内釜と内釜収納部の構成を示す平面図及び断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1の炊飯工程と胴ヒーターの動作を示す工程図である。
【図5】この発明の実施の形態1を示す内釜収納部とXリンクの構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0024】
1 外枠、2 内釜収納部、2a 空気層、3 底面、4 温度検出装置、5 誘導加熱コイル、6 フェライト、7 コイルカバー、8 ボトム、9 吸気孔、10 排気孔、11 冷却用ファン、12 制御キバン、13 キバンカバー、15 ふた部、16 ふたヒーター、17 放熱板、18 スプリング、19 フックボタン、20 内釜、60 管状アクチュエータ、61 固定部材、62 胴ヒーター、65 合わせ部、65a 隙間、70 Xリンク、71 壁側支持部、72 バネ、73 軸、74 ソレノイド、75 支点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主加熱部を底部に有する炊飯器本体と、
この炊飯器本体に着脱自在に収納される内釜と、
この内釜の外周を所定の隙間を介して覆い、径方向に変形可能な円筒状の内釜収納部と

前記内釜収納部の側面に取り付けられた補助加熱手段と、
この補助加熱手段の加熱動作に同期して前記内釜収納部を前記内釜に密着させる可動手段と、
所定の条件の下で、前記補助加熱手段の加熱動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記可動手段は前記内釜収納部の周方向に沿って設けられ、前記補助加熱手段の加熱動作に基づいてその長さが短くなることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記可動手段は形状記憶合金で構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記内釜収納部は、熱伝動率の高い材料で構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、炊飯の沸騰工程において、前記補助加熱手段を所定の周期で間欠的に加熱動作させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項6】
外気温度を検出する温度検出手段を備え、
前記制御手段は、炊飯の保温工程において、前記温度検出手段の出力が所定値以下の場合には前記補助加熱手段を加熱動作させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項7】
請求項1記載の炊飯器に用いられ、
前記内釜を第1の温度で予熱する予熱工程と、
前記内釜を前記第1の温度より高い第2の温度で炊飯する沸騰工程と、
前記内釜を前記第2の温度から前記第1の温度と前記第2の温度の間の第3の温度まで自然冷却させる蒸らし工程と、
前記内釜を前記第3の温度に維持する保温工程と、を備え、
前記沸騰工程において、前記補助加熱手段が加熱動作することで前記内釜収納部が変形して前記内釜に接触し、前記内釜を前記補助加熱部により加熱動作し、それ以外の工程においては前記補助加熱手段の加熱動作が停止することで前記内釜収納部と前記内釜との間に隙間が形成されることを特徴とする炊飯器の制御方法。
【請求項8】
請求項6記載の炊飯器に用いられ、
前記内釜を第1の温度で予熱する予熱工程と、
前記内釜を前記第1の温度より高い第2の温度で炊飯する沸騰工程と、
前記内釜を前記第2の温度から前記第1の温度と前記第2の温度の間の第3の温度まで自然冷却させる蒸らし工程と、
前記内釜を前記第3の温度に維持する保温工程と、を備え、
前記保温工程において、外気温度が所定値以下の場合には、前記補助加熱手段が加熱動作することを特徴とする炊飯器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−110364(P2010−110364A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283073(P2008−283073)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】