説明

炭化水素の改質触媒、該改質触媒を用いた水素の製造方法及び燃料電池システム

酸化マンガンおよびアルミナを含む担体に、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加した担体、または珪素酸化物、酸化マンガンおよびアルミナを含む担体に、ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を担持することにより、長時間の熱履歴後も該担体の強度が維持され、触媒活性の高い炭化水素の改質触媒を調製し、該改質触媒を用いて、(1)水蒸気改質、(2)自己熱改質、(3)部分酸化改質、(4)二酸化炭素改質を行うことにより水素を製造する。また、前記改質触媒を備えた改質器と、該改質器より製造される水素を燃料とする燃料電池とから、燃料電池システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素の改質触媒、該触媒を用いた水素の製造方法及び燃料電池システムに関する。さらに詳しくは、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物と、酸化マンガンとアルミナとを含む担体、または珪素酸化物と酸化マンガンおよびアルミナとを含む担体に、ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を担持させてなる、触媒の活性、耐久性(圧縮強度)および耐熱性の向上(表面積低下の抑制、強度低下の抑制)した炭化水素の改質触媒、該改質触媒を用いた水素の製造方法及びこの改質触媒を利用した燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題から新エネルギー技術が脚光を浴びており、この新エネルギー技術の一つとして燃料電池が注目を集めている。この燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換させるものであって、エネルギーの利用効率が高いという特徴を有しており、民生用、産業用あるいは自動車用などとして、実用化研究が積極的になされている。
【0003】
この燃料電池には、使用する電解質の種類に応じて、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形、固体高分子形などのタイプが知られている。一方、水素源としては、メタノール、メタンを主体とする液化天然ガス、この天然ガスを主成分とする都市ガス、天然ガスを原料とする合成液体燃料、さらにはナフサや灯油などの石油系炭化水素等の研究がなされている。
【0004】
これらの炭化水素を用いて水素を製造する場合、一般に、該炭化水素に対して、触媒の存在下に水蒸気改質処理がなされる。ここで石油系炭化水素の水蒸気改質処理の触媒として、従来から担体にルテニウム成分を活性成分として担持したものが研究されており、比較的高活性でかつ低スチーム/カーボン比の運転条件下でも炭素の析出が抑制されるなどの利点を有し、近年、長寿命の触媒を必要とする燃料電池への適用が期待されている。
【0005】
酸化セリウムや酸化ジルコニウムがルテニウム触媒の助触媒的効果があることが見いだされてから、酸化セリウムや酸化ジルコニウムとルテニウムをベースとした触媒の研究がなされ、いくつかの特許が出願されている。また、活性成分としてルテニウム成分以外にも白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分、イリジウム成分、ニッケル成分をベースにした触媒の研究もなされている。しかしながら、炭化水素の水蒸気改質触媒としての活性が未だ十分とは言えず、また、カーボンの析出量も多いという課題が残されていた。
【0006】
水素を製造するには、水蒸気改質処理の他に、自己熱改質処理、部分酸化改質処理、二酸化炭素改質処理についても研究され、一般に同じ改質触媒で、上記の全ての改質処理ができることはわかっている。さらに、条件を若干変えることにより上記の全ての改質処理について、合成ガスの製造ができることもわかっている。上記の自己熱改質処理、部分酸化改質処理、二酸化炭素改質処理についても、触媒として、ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分、イリジウム成分及びニッケル成分等が研究されているが、活性的に未だ不十分であった。
【0007】
酸化マンガンを含む担体にルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分、イリジウム成分およびニッケル成分から選ばれる少なくとも1種の成分を担持してなる、活性の向上した炭化水素の改質用触媒、その製造法および該触媒を用いた炭化水素の水蒸気改質方法、自己熱改質方法、部分酸化改質方法、二酸化炭素改質方法が提案されている(特許文献1)。
【0008】
また、酸化マンガンを含む担体に、ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分、イリジウム成分およびニッケル成分から選ばれる少なくとも1種の成分を担持させた触媒を少なくとも一種の塩素含有化合物を用いて調製した後、アルカリ水溶液で分解処理し、次いで水洗処理することにより塩素原子が除去された、炭化水素の改質触媒、その製造方法およびその改質触媒を用いた炭化水素の改質方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、ここに開示の改質触媒は、改質反応においては高活性であるが、強度特に圧縮強度が未だ不十分で耐久性に難点があった。
【0009】
【特許文献1】国際公開第02/078840号パンフレット
【特許文献2】特開2003−265963公報
【発明の開示】
【0010】
本発明は、かかる状況下でなされたものであり、長時間の熱履歴後も担体の強度とりわけ圧縮強度、耐熱性が維持され、活性が高く、長時間の熱履歴後もその活性が持続する炭化水素の改質触媒および耐熱性(表面積低下抑制、強度低下抑制)が向上した炭化水素の改質触媒並びにこれらの改質触媒を用いた水素の製造方法を提供することを目的とするものである。
また、このように優れた改質触媒を備えた改質器と、該改質器により製造される水素を燃料とする燃料電池とを有する、優れた燃料電池システムを提供することを目的とするものである。
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、酸化マンガンおよびアルミナを含む担体に、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加した担体を用いることによりアルミナの表面拡散およびα相の核生成を抑制し、長時間の熱履歴後も該担体の強度が維持され、また、担体表面にルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分もしくはイリジウム成分がより分散して担持されるため、得られる改質触媒の活性が高くなり、長時間の熱履歴後もその活性が持続することを見出し、また、酸化マンガンおよびアルミナを含む担体に、珪素酸化物を添加した担体を用いることにより、担体表面にルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分もしくはイリジウム成分が担持された改質触媒が、上記の耐熱性の向上した改質触媒になることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成した。
【0012】
本発明は下記から構成される。
(1)(a)酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)酸化マンガンと(c)アルミナとを含む担体に、(d)ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を担持してなる炭化水素の改質触媒。
【0013】
(2)担体が、(a')ランタン化合物、セリウム化合物およびジルコニウム化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物と(b')マンガン化合物とを(c)アルミナ担体に含浸、焼成して得られたものである上記(1)に記載の炭化水素の改質触媒。
【0014】
(3)焼成温度800〜1000℃で焼成して得られたものである上記(2)に記載の炭化水素の改質触媒。
【0015】
(4)担体が、(a')ランタン化合物、セリウム化合物およびジルコニウム化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を(c)アルミナに含浸し、温度400〜600℃で焼成し、次いで、これに(b')マンガン化合物を含浸して、温度800〜1000℃で焼成して得られたものである上記(1)に記載の炭化水素の改質触媒。
【0016】
(5).酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が、改質触媒に対して、1〜20質量%である上記(1)に記載の炭化水素の改質触媒。
【0017】
(6).(f)珪素酸化物と(b)酸化マンガンおよび(c)アルミナを含む担体に、(d)ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を担持してなる炭化水素の改質触媒。
【0018】
(7).担体が、最初に、(f')珪素化合物を(c)アルミナに含浸、焼成し、その後、(b')マンガン化合物を含浸、焼成して得られたものである上記(6)に記載の炭化水素の改質触媒。
【0019】
(8).担体が、最初に(b')マンガン化合物を(c)アルミナに含浸、焼成し、その後、(f')珪素化合物を含浸、焼成して得られたものである上記(6)に記載の炭化水素の改質触媒。
【0020】
(9).担体が、(f')珪素化合物と(b')マンガン化合物を混合し、同時に(c)アルミナに含浸、焼成して得られたものである上記(6)に記載の炭化水素の改質触媒。
【0021】
(10).(f')珪素化合物がテトラエトキシシランである上記(6)〜(9)のいずれか1項に記載の炭化水素の改質触媒。
【0022】
(11).(f)珪素酸化物の含有量が、1〜20質量%である上記(6)〜(10)のいずれか1項に記載の炭化水素の改質触媒。
【0023】
(12).(b')マンガン化合物が酢酸マンガンである上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の炭化水素の改質触媒。
【0024】
(13).ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分の含有量が改質触媒に対して、貴金属元素として、0.1〜8質量%である上記(1)または(6)に記載の炭化水素の改質触媒。
【0025】
(14).(b)酸化マンガンの含有量が、改質触媒に対して、3〜20質量%である上記(1)または(6)に記載の炭化水素の改質触媒。
【0026】
(15).さらにアルカリ金属成分またはアルカリ土類金属成分から選ばれる少なくとも1種を含む上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の炭化水素の改質触媒。
【0027】
(16).上記(1)〜(15)のいずれか1項に記載の改質触媒を用い、炭化水素を改質することを特徴とする水素の製造方法。
【0028】
(17).改質が、水蒸気改質、自己熱改質、部分酸化改質および二酸化炭素改質の中から選ばれるいずれか1つである上記(16)に記載の水素の製造方法。
【0029】
(18).上記(1)〜(15)のいずれか1項に記載の改質触媒を備える改質器と、該改質器により製造される水素を燃料とする燃料電池とを有することを特徴とする燃料電池システム。
【0030】
本発明によれば、長時間の熱履歴後も担体の強度特に圧縮強度が維持され、活性が高く、長時間の熱履歴後もその活性が持続する炭化水素の改質触媒および耐熱性が向上した炭化水素の改質触媒並びにこれらの改質触媒を用いた水素の製造方法を提供することができる。また、このように優れた改質触媒を備えた改質器と、該改質器により製造される水素を燃料とする燃料電池とを有する、優れた燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の燃料電池システムの概略の流れ図の一例である。
【符号の説明】
【0032】
1:気化器
11:水供給管
12:燃料導入管
15:接続管
21:燃料タンク
22:燃料ポンプ
23:脱硫器
24:水ポンプ
31:改質器
31A:改質器のバーナ
32:CO変成器
33:CO選択酸化器
34:燃料電池
34A:燃料電池負極
34B:燃料電池正極
34C:燃料電池高分子電解質
35:空気ブロワー
36:気水分離器
37:排熱回収装置
37A:熱交換器
37B:熱交換器
37C:冷却器
37D:冷媒循環ポンプ
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の炭化水素の改質触媒は、
(a)酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物と(b)酸化マンガンと(c)アルミナとを含む担体に、(d)ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を担持してなる炭化水素の改質触媒および(f)珪素酸化物と(b)酸化マンガンおよび(c)アルミナとを含む担体に、(d)ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を担持してなる炭化水素の改質触媒である。
【0034】
上記改質触媒について、その製造方法とともに説明する。
酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物と酸化マンガンとアルミナとを含む担体を調製し、さらに改質触媒を製造する方法としては、例えば
(i)ランタン化合物例えば硝酸ランタン、セリウム化合物例えば硝酸セリウムおよびジルコニウム化合物例えば硝酸ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を水に溶解し、これをアルミナに含浸した後、(ii)乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間1〜10時間程度で乾燥し、その後、加熱炉で温度400〜600℃程度、好ましくは500℃程度で1〜10時間程度、好ましくは2〜5時間程度焼成し、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種を含有するアルミナ担体を調製する。(iii)次いで、マンガン化合物例えば酢酸マンガンを水に溶解し、これを上記(ii)で得られた、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種を含有するアルミナ担体に含浸した後、(iv)乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間1〜10時間程度で乾燥し、その後、加熱炉で温度800〜1000℃程度、好ましくは800℃程度で1〜10時間程度、好ましくは2〜5時間程度焼成し、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種と酸化マンガンとアルミナとを含有する担体を調製する。(v)次にルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を水に溶解し、上記(iv)で調製した担体に含浸する。(vi)その後30〜180分間程度、自然乾燥、ロータリーエバポレーターもしくは送風乾燥機等による乾燥を行う。(vii)次いで1〜10モル/リットル程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液に上記(vi)で得た触媒前駆体を数時間程度含浸して担持化合物の分解を行い、(viii)引き続き、上記(vii)で得られたものを蒸留水等でよく洗浄し、乾燥機等で温度100〜200℃程度、乾燥時間1〜10時間程度で乾燥して目的の改質触媒を得る方法を挙げることができる。
【0035】
この他の製造方法としては、例えば、
(ix)最初にマンガン化合物例えば酢酸マンガンを水に溶解し、アルミナに含浸した後、(x)乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間1〜10時間程度で乾燥し、その後、加熱炉で温度800〜1000℃程度、好ましくは800℃程度で、1〜10時間好ましくは2〜5時間程度焼成し、酸化マンガン含有アルミナ担体を調製する。(xi)次いで、ランタン化合物例えば硝酸ランタン、セリウム化合物例えば硝酸セリウムおよびジルコニウム化合物例えば硝酸ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を水に溶解し、(xii)これを上記(x)で調製した酸化マンガン含有アルミナ担体に含浸し、(xiii)その後、乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間1〜10時間程度で乾燥し、その後、加熱炉で温度800〜1000℃程度、好ましくは800℃程度で1〜10時間程度、好ましくは2〜5時間程度焼成しアルミナと、酸化マンガンと、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種とを含有する担体を調製する。
(xiv)その後、上記(v)〜(viii)に記載の操作を順次実施して目的の改質触媒を製造する方法をあげることもできる。
【0036】
この他にも、マンガン化合物例えば酢酸マンガンと、ランタン化合物例えば硝酸ランタン、セリウム化合物例えば硝酸セリウムおよびジルコニウム化合物例えば硝酸ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を水に溶解し、これをアルミナに含浸した後、乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間1〜10時間程度で乾燥し、その後、加熱炉で温度800〜1000℃程度、好ましくは800℃程度で1〜10時間程度、好ましくは2〜5時間程度焼成してアルミナと、酸化マンガンと、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種とを含有する担体を調製し、その後、上記(v)〜(viii)に記載の操作を順次実施して目的の改質触媒を製造する方法を採用することもできる。
【0037】
珪素酸化物と酸化マンガンおよびアルミナを含む担体に、ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を担持してなる炭化水素の改質触媒の製造方法としては、例えば、
(イ)珪素化合物例えばテトラエトキシシランをエタノールに溶解させた溶液をアルミナに浸漬し、温度30〜80℃で1〜5時間程度撹拌しながら反応させ、その後、(ロ)エタノールを蒸発させて除去し、乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間5〜20時間程度で乾燥した後、加熱炉で800〜1000℃程度、好ましくは800℃程度で1〜10時間程度、好ましくは、3〜5時間程度で焼成し、珪素酸化物を含有するアルミナ担体を調製する。(ロ)次いで、マンガン化合物例えば、酢酸マンガンを水に溶解し、これを上記(イ)で調製した珪素酸化物を含有するアルミナ担体に含浸した後、乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間5〜20時間程度で乾燥した後、加熱炉で800〜1000℃程度、好ましくは800℃程度で1〜10時間程度、好ましくは、3〜5時間程度で焼成し、酸化マンガンを含有する珪素酸化物含有アルミナ担体を製造する方法を挙げることができる。
【0038】
この他の製造方法としては、(ハ)最初に、マンガン化合物例えば酢酸マンガンを水に溶解させた溶液をアルミナに含浸した後、乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間5〜20時間程度で乾燥した後、(ニ)珪素化合物例えばテトラエトキシシランをエタノールに溶解させた溶液に浸漬し、温度30〜80℃で1〜5時間程度撹拌しながら反応させる。その後、(ホ)エタノールを蒸発させて除去し、乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間5〜20時間程度で乾燥した後、加熱炉で800〜1000℃程度、好ましくは800℃程度で1〜10時間程度、好ましくは、3〜5時間程度で焼成して珪素酸化物を含有する酸化マンガン含有アルミナ担体とする製造方法も挙げられる。
【0039】
これ以外にも、珪素化合物例えばテトラエトキシシランをエタノールに溶解させた溶液と、マンガン化合物例えば酢酸マンガンを水に溶解させた溶液を撹拌、混合し、同時にアルミナを含浸した後、乾燥機で温度100〜200℃程度、乾燥時間5〜20時間程度で乾燥した後、加熱炉で800〜1000℃程度、好ましくは800℃程度で1〜10時間程度、好ましくは、3〜5時間程度焼成して珪素酸化物、酸化マンガンを含有するアルミナ担体とする製造方法も挙げられる。
【0040】
このようにして得られた珪素酸化物および酸化マンガンを含有するアルミナ担体に、ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を水に溶解した溶液を含浸する。その後30〜180分間程度、自然乾燥、ロータリーエバポレーターもしくは送風乾燥機等による乾燥を行い、次いで1〜10モル/リットル程度の濃度の水酸化ナトリウム水溶液に得られた乾燥物を数時間程度含浸して担持化合物の分解を行い、引き続き、蒸留水等を添加してよく洗浄し、濾過等で水分を除去した後、乾燥機等で温度100〜200℃程度、乾燥時間1〜10時間程度で乾燥して目的の改質触媒を得る方法を挙げることができる。
【0041】
酸化マンガンとしては、MnO、Mn3 4、Mn23 、MnO2、MnO3、Mn27等の各原子価の酸化マンガンを使用できるが、入手可能な点と安定な点で4価の二酸化マンガン(MnO2 )が好ましい。このMnO2として、市販の二酸化マンガンを使用できるが、酢酸マンガン〔Mn(CH3COO)2・4H2O〕、硫酸マンガン〔MnSO4・5H2 O〕、硝酸マンガン〔Mn(NO3 2・6H2O〕、塩化マンガン〔MnCl2・4H2O〕等を焼成して得られるものも使用できる。
【0042】
酸化マンガンの含有量は改質触媒に対して、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。
担体のアルミナとしては、市販のα、β、γ、η、θ、κ、χのいずれの結晶形態のものも使用できるが、触媒の活性の点からα−アルミナ、α−アルミナ相を含むアルミナまたはγ−アルミナが好ましい。
【0043】
ベーマイト、バイアライト、ギブサイト等のアルミナ水和物を焼成したものも使用できる。この他に、硝酸アルミニウムにpH8〜10のアルカリ緩衝液を加えて水酸化物の沈殿を生成させ、これを焼成したものを使用してもよいし、塩化アルミニウムを焼成してもよい。また、アルミニウムイソプロポキシド等のアルコキシドを2−プロパノール等のアルコールに溶解させ、加水分解用の触媒として塩酸等の無機酸を添加してアルミナゲルを調製し、これを乾燥、焼成するゾル・ゲル法によって調製したものを使用することもできる。
【0044】
酸化マンガンとアルミナとの併用は、アルミナと酸化マンガンを混合して使用してもよいが、アルミナに酢酸マンガン〔Mn(CH3COO)2・4H2O〕、硫酸マンガン〔MnSO4・5H2O〕、硝酸マンガン〔Mn(NO32・6H2O〕、塩化マンガン〔MnCl2・4H2O〕等のマンガン化合物の水溶液を含浸させ後、焼成することにより調製することもできる。
【0045】
本発明で用いるランタン化合物としては、水に易溶性の化合物が好ましく、例えば、塩化ランタン(LaCl3、LaCl3・7H2O)、臭化ランタン(LaBr3)、沃化ランタン(LaI3)、硝酸ランタン[La(NO33・6H2O]、酢酸ランタン[La(CH3COO)3・1.5H2O]等を挙げることができる。
セリウム化合物は原子価3価と4価のものが存在するが安定性の点から3価のものが好ましく、塩化セリウム(CeCl3)、臭化セリウム(CeBr3)、沃化セリウム(CeI3)、硝酸セリウム[Ce(NO33・6H2O]、炭酸セリウム[Ce2(CO33・5H2O]、硫酸セリウム[Ce2(SO43・nH2O]等を挙げることができる。
ジルコニウム化合物は原子価が2価、3価、4価のものが存在し、塩化ジルコニウム(ZrCl2、ZrCl3、ZrCl4)、臭化ジルコニウム(ZrBr2、ZrBr3、ZrBr4)、沃化ジルコニウム(ZrI2、ZrI3、ZrI4)、硝酸ジルコニウム[Zr(NO32・2H2O]、硝酸ジルコニア[ZrO(NO32・H2O]、硫酸ジルコニウム[Zr(SO42、Zr(SO42・4H2O]、酢酸ジルコニウム[Zr(CH3CO24]、酢酸ジルコニア[ZrO(CH3CO22]等を挙げることができる。
【0046】
珪素化合物としては、有機溶剤例えばエタノール等に易溶で保存性にも優れた有機シラン化合物を用いることができるが、化合物内に塩素原子等のハロゲン原子を含まない珪素化合物が好ましく、テトラアルコキシシランが好ましく用いられる。テトラアルコキシシランの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。
【0047】
上記マンガン化合物、ランタン化合物、セリウム化合物、ジルコニウム化合物の水溶液をアルミナに含浸して担持する際には、これらの化合物を溶解させる水の量を、溶解水量比が0.7〜1.3の範囲になるように調整することが好ましい。
上記の溶解水量比は、下記の式(1)で求められる。
溶解水量比=使用した水量(ml)/溶解水量(ml) ・・・(1)
ここで、使用した水量は、マンガン化合物、ランタン化合物、セリウム化合物、ジルコニウム化合物の結晶水からの水も含む値である。また、溶解水量はアルミナ担体の吸水量をいい、下記の式(2)で求められる。
溶解水量(ml)=担体の細孔容積(ml/g)×担体量(g)・・・(2)
ここで、アルミナ担体の細孔容積は水銀圧入法より求めたものである。なお、本発明で使用したアルミナ担体の細孔容積は、KHO−24(住友化学工業株式会社製);0.42ml/gであった。
【0048】
マンガン化合物、ランタン化合物、セリウム化合物、ジルコニウム化合物を数回に分けて含浸させるときには、その都度、溶解水量比の範囲は0.7〜1.3であることが好ましい。
【0049】
前記のマンガン化合物と、ランタン化合物、セリウム化合物およびジルコニウム化合物の中から選ばれる少なくとも1種を担持したアルミナは、通常800〜1,000℃の温度範囲で焼成するのが触媒活性の点で好ましい。焼成雰囲気は酸素、空気の他、マンガン化合物の種類によっては、窒素、アルゴン等の不活性のガスでもよい。好ましくは、800〜900℃の範囲である。すなわち、担体の原料であるアルミナもしくはマンガン化合物と、ランタン化合物、セリウム化合物およびジルコニウム化合物の中から選ばれる少なくとも1種とを担持した後のアルミナのどちらかを800〜1,000℃の高温で処理すればよいわけで、両者とも高温で処理してもよいが、経済的には、マンガン化合物と、ランタン化合物、セリウム化合物およびジルコニウム化合物の中から選ばれる少なくとも1種とを担持した後のアルミナを高温処理した方がよい。800〜1000℃の範囲にあれば、触媒活性の向上効果が発揮されるとともに、シンタリングにより触媒活性が低下する恐れも少ない。
また、アルミナに、ランタン化合物、セリウム化合物およびジルコニウム化合物の中から選ばれる少なくとも1種のみを最初に担持するときは焼成温度400〜600℃程度、好ましくは500℃程度の温度で焼成する。
【0050】
また、アルミナに、マンガン化合物および珪素化合物を担持した後の焼成温度も800〜1000℃の範囲にあれば、触媒活性の向上効果が発揮されるとともに、シンタリングにより触媒活性が低下する恐れも少ない。
【0051】
次いで、上記の酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物と、酸化マンガンとアルミナとを含む担体および酸化マンガンと、酸化珪素とアルミナを含む担体に、(d)ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分から選ばれる少なくとも一種の成分を担持し、更に、必要により(e)アルカリ金属成分またはアルカリ土類金属成分から選ばれる少なくとも一種の成分を担持する。
担持操作は、上記(d)成分、または上記(d)成分と(e)成分を溶解させた溶液を使用し、逐次、別々に行ってもよいが、同時に行った方が経済上好ましい。
その担持操作については、加熱含浸法,常温含浸法,真空含浸法,常圧含浸法,含浸乾固法,ポアファイリング法等の各種含浸法、浸漬法、軽度浸潤法、湿式吸着法、スプレー法、塗布法などの各種の方法が採用できるが、含浸法が好ましい。
【0052】
その担持操作の条件については、従来の場合と同様に、大気圧下または減圧下で好適に行うことができ、その際の操作温度としては特に制限はなく、室温または室温付近で行うことができるし、必要に応じて加熱または加温し、例えば室温〜150℃程度の温度で好適に行うことができる。また、接触時間は1分間〜10時間である。
【0053】
ルテニウム成分源のルテニウム化合物として、例えば、RuCl3・nH2 O、Ru(NO33、Ru2(OH)2Cl4・7NH3・3H2O、K2(RuCl5(H2O))、(NH42 (RuCl5(H2O))、K2 (RuCl5(NO))、RuBr3・nH2O、Na2RuO4 、Ru(NO)(NO33、(Ru3O(OAc)6 (H2O)3)OAc・nH2O、K4 (Ru(CN)6)・nH2O、K2 (Ru(NO24(OH)(NO))、(Ru(NH36)Cl3、(Ru(NH36)Br3、(Ru(NH36)Cl2、(Ru(NH36)Br2、(Ru32 (NH314)Cl6・H2O、(Ru(NO)(NH35)Cl3、(Ru(OH)(NO)(NH3 4)(NO32 、RuCl2(PPh33、RuCl2(PPh34 、(RuClH(PPh33)・C78、RuH2 (PPh34、RuClH(CO)(PPh33 、RuH2(CO)(PPh33 、(RuCl2 (cod))n、Ru(CO)12、Ru(acac)3、(Ru(HCOO)(CO)2n、Ru24(p−cymene)2などのルテニウム化合物を挙げることができる。これらの化合物を一種単独でも、二種以上を併用してもよい。好ましくは、取扱い上の点でRuCl3・nH2O、Ru(NO33、Ru2(OH)2Cl4・7NH3・3H2Oが用いられ、特に、RuCl3・nH2Oが好ましい。
【0054】
白金成分源の白金化合物として、例えば、PtCl4 、H2PtCl6、Pt(NH34Cl2、(NH42PtCl2、H2PtBr6、NH4〔Pt(C24)Cl3〕、Pt(NH34 (OH)2、Pt(NH32(NO22などを挙げることができる。これらの化合物を一種単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0055】
ロジウム成分源のロジウム化合物として、Na3RhCl6、(NH42RhCl6、Rh(NH35Cl3、RhCl3などを挙げることができる。
これらの化合物を一種単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0056】
パラジウム成分源のパラジウム化合物として、(NH42PdCl6、(NH42PdCl4、Pd(NH34 Cl2、PdCl2、Pd(NO32などを挙げることができる。これらの化合物を一種単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0057】
イリジウム成分源のイリジウム化合物として、(NH42IrCl6、IrCl3、H2IrCl6などを挙げることができる。これらの化合物を一種単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0058】
アルカリ金属成分として、カリウム、セシウム、ルビジウム、ナトリウム、リチウムが好適に用いられる。
アルカリ金属成分源の化合物としては、例えば、K21016、KBr、KBrO3、KCN、K2CO3、KCl、KClO3、KClO4、KF、KHCO3、KHF2、KH2PO4、KH5(PO42、KHSO4、KI、KIO3 、KIO4、K429、KN3、KNO2、KNO3、KOH、KPF6、K3PO4、KSCN、K2SO3、K2SO4、K223、K225、K226、K228 、K(CH3COO)等のK塩;CsCl、CsClO3 、CsClO4、CsHCO3、CsI、CsNO3、Cs2SO4、Cs(CH3COO)、Cs2CO3、CsF等のCs塩;Rb21016、RbBr、RbBrO3、RbCl、RbClO3、PbClO4、RbI、RbNO3 、Rb2SO4、Rb(CH3COO)、Rb2CO3等のRb塩;Na247 、NaB1016、NaBr、NaBrO3、NaCN、Na2 CO3、NaCl、NaClO、NaClO3、NaClO4、NaF、NaHCO3、NaHPO3、Na2HPO3、Na2HPO4、NaH2PO4、Na3HP26、Na22 27、NaI、NaIO3、NaIO4、NaN3、NaNO2、NaNO3、NaOH、Na2 PO3、Na3PO4、Na42 7、Na2 S、NaSCN、Na2SO3、Na2SO4、Na225、Na226、Na(CH3COO)等のNa塩;LiBO2 、Li247、LiBr、LiBrO3 、Li2CO3 、LiCl、LiClO3、LiClO4、LiHCO3 、Li2HPO3 、LiI、LiN3、LiNH4SO4 、LiNO2、LiNO3、LiOH、LiSCN、Li2 SO4、Li3 VO4等のLi塩を挙げることができる。これらの化合物を一種単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0059】
アルカリ土類金属成分として、バリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムが好適に用いられる。
アルカリ土類金属成分源の化合物として、BaBr2、Ba(BrO32、BaCl2、Ba(ClO22、Ba(ClO32、Ba(ClO42、BaI2、Ba(N32、Ba(NO2 2、Ba(NO32、Ba(OH)2、BaS、BaS2 6、BaS46、Ba(SO3 NH22等のBa塩;CaBr2、CaI2、CaCl2、Ca(ClO3 2、Ca(IO3 2、Ca(NO22、Ca(NO32、CaSO4、CaS23、CaS26、Ca(SO3NH22 、Ca(CH3COO)2、Ca(H2PO42等のCa塩;MgBr2、MgCO3、MgCl2、Mg(ClO3 2、MgI2、Mg(IO32、Mg(NO22、Mg(NO32、MgSO3 、MgSO4 、MgS26、Mg(CH3COO)2 、Mg(OH)2、Mg(ClO42等のMg塩;SrBr2、SrCl2、SrI2、Sr(NO32、SrO、SrS23、SrS2 6 、SrS46、Sr(CH3COO)2、Sr(OH)2 等のSr塩を挙げることができる。これらの化合物を一種単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0060】
上記(d)成分の、ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分及びイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の成分の担持量は、貴金属元素として、改質触媒に対して通常0.1〜8質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
酸化ランタン、酸化セリウムもしくは酸化ジコニウムの含有量は、改質触媒に対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2.5〜10質量%である。
【0061】
珪素酸化物の含有量は、改質触媒に対して、好ましくは1〜20質量%、より好ましく
は2.5〜10質量%である。
【0062】
上記の担持操作を行った後、必要により乾燥させる。乾燥方法としては、例えば自然乾燥、ロータリーエバポレーターもしくは送風乾燥機による乾燥が行われる。
【0063】
調製される改質触媒の形状及びサイズとしては、特に制限はなく、例えば、粉末状、球状、粒状、ハニカム状、発泡体状、繊維状、布状、板状、リング状など、一般に使用されている各種の形状及び構造のものが利用可能である。
【0064】
上記調製された触媒を改質器に充填した後、水素還元を行う。この還元処理には、水素を含む気流中で処理する気相還元法と、還元剤で処理する湿式還元法が用いられる。前者の気相還元処理は、通常、水素を含む気流下、500〜800℃、好ましくは600〜700℃の温度で、1〜24時間、好ましくは3〜12時間行うものである。
【0065】
後者の湿式還元法としては、液体アンモニア/アルコール/Na,液体アンモニア/アルコール/Liを用いるBirch還元、メチルアミン/Li等を用いるBenkeser還元、Zn/HCl,Al/NaOH/H2 O,NaH,LiAlH4 及びその置換体、ヒドロシラン類、水素化ホウ素ナトリウム及びその置換体、ジボラン、蟻酸、ホルマリン、ヒドラジン等の還元剤で処理する方法がある。この場合、通常、室温〜100℃で、10分〜24時間、好ましくは、30分〜10時間行うものである。
【0066】
次に、本発明の改質用触媒を使用した炭化水素の改質方法について説明する。
まず、本発明の改質触媒を用いた炭化水素の水蒸気改質反応について説明する。
この反応に用いられる原料炭化水素としては、例えば、メタン,エタン,プロパン,ブタン,ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタン,ノナン,デカン等の炭素数が1〜16程度の直鎖状は分岐状の飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン,シクロオクタン等の脂環式飽和炭化水素、単環及び多環芳香族炭化水素、都市ガス,LPG,ナフサ,灯油等の各種の炭化水素を挙げることができる。
【0067】
また一般に、これらの原料炭化水素中に硫黄分が存在する場合には、脱硫工程を通して、通常、硫黄分が0.1ppm以下になるまで脱硫を行うことが好ましい。原料炭化水素中の硫黄分が0.1ppm程度より多くなると、水蒸気改質触媒が失活する原因になることがある。脱硫方法は特に限定されないが、水添脱硫、吸着脱硫などを適宜採用することができる。なお、水蒸気改質反応に使用する水蒸気としては特に制限はない。
【0068】
反応条件としては、通常、スチーム/カーボン(モル比)が1.5〜10、好ましくは1.5〜5、より好ましくは2〜4となるように炭化水素量と水蒸気量を決定すればよい。このようにスチーム/カーボン(モル比)を調整することにより、水素ガスを効率よく得ることができる。
反応温度は、通常、200〜900℃、好ましくは250〜900℃、さらに好ましくは300〜800℃である。反応圧力は、通常0〜3MPa・G、好ましくは0〜1MPa・Gである。
【0069】
灯油あるいはそれ以上の沸点を有する炭化水素を原料とする場合、水蒸気改質触媒層の入口温度を630℃以下、好ましくは600℃以下に保って水蒸気改質を行うのがよい。入口温度が630℃を超えると、炭化水素の熱分解が促進され、生成したラジカルを経由して触媒あるいは反応管壁に炭素が析出して、運転が困難になる場合がある。なお、触媒層出口温度は特に制限はないが、650〜800℃の範囲が好ましい。650℃未満では水素の生成量が充分でないおそれがあり、800℃を超えると、反応装置は耐熱材料を必要とする場合があり、経済的に好ましくない。
なお、水蒸気は多めに入れ、反応温度は低めで、反応圧力は低めに設定する。
【0070】
次に、本発明の改質用触媒を用いた炭化水素の自己熱改質反応、部分酸化改質反応、二酸化炭素改質反応について説明する。
自己熱改質反応は炭化水素の酸化反応と炭化水素と水蒸気の反応が同一リアクター内または連続したリアクター内で起こり、水素製造の反応条件としては、通常、反応温度は200〜1,300℃、好ましくは400〜1,200℃、より好ましくは500〜900℃である。スチーム/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜10、好ましくは0.4〜4である。酸素/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜1、好ましくは0.2〜0.8である。反応圧力は、通常、0〜10MPa・G、好ましくは0〜5MPa・G、より好ましくは0〜3MPa・Gである。炭化水素としては、水蒸気改質反応と同様なものが使用される。
【0071】
部分酸化改質反応は炭化水素の部分酸化反応が起こり、水素製造の反応条件としては、通常、反応温度は350〜1,200℃、好ましくは450〜900℃である。酸素/カーボン(モル比)は、通常、0.4〜0.8、好ましくは0.45〜0.65である。反応圧力は、通常、0〜30MPa・G、好ましくは0〜5MPa・G、より好ましくは0〜3MPa・Gである。炭化水素としては、水蒸気改質反応と同様なものが使用される。
【0072】
二酸化炭素改質反応は炭化水素と炭酸ガスの反応が起こり、水素製造の反応条件としては、通常、反応温度は200〜1,300℃、好ましくは400〜1,200℃、より好ましくは500〜900℃である。炭酸ガス/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜5、好ましくは、0.1〜3である。水蒸気を入れる場合には、スチーム/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜10、好ましくは0.4〜4である。酸素を入れる場合には、酸素/カーボン(モル比)は、通常、0.1〜1、好ましくは0.2〜0.8である。反応圧力は、通常、0〜10MPa・G、好ましくは0〜5MPa・G、より好ましくは0〜3MPa・Gである。炭化水素としては、通常はメタンが用いられるが、水蒸気改質反応と同様なものが使用される。
【0073】
以上の改質反応の反応方式としては、連続流通式、回分式のいずれの方式であってもよいが、連続流通式が好ましい。連続流通式を採用する場合、炭化水素の液空間速度(LHSV)は、通常、0.1〜10hr-1、好ましくは0.25〜5hr-1である。また、炭化水素としてメタンなどのガスを用いる場合は、ガス空間速度(GHSV)は、通常、200〜100,000hr-1である。
【0074】
反応形式としては、特に制限はなく、固定床式,移動床式,流動床式いずれも採用できるが、固定床式が好ましい。反応器の形式としても特に制限はなく、例えば管型反応器等を用いることができる。
上記のような条件で本発明の改質触媒を用いて、炭化水素の水蒸気改質反応、自己熱改質反応、部分酸化反応、炭酸ガス改質反応を行なわせることにより水素を得ることができ、燃料電池の水素製造プロセスに好適に使用される。
【0075】
本発明の燃料電池システムは、前述の改質触媒を備える改質器と、該改質器により製造される水素を燃料とする燃料電池とを有することを特徴とする。この燃料電池システムを図1により説明する。
燃料タンク21内の燃料は燃料ポンプ22を経て脱硫器23に導入される。脱硫器23には例えば活性炭、ゼオライト又は金属系の吸着剤などを充填することができる。脱硫器23で脱硫された燃料は水タンクから水ポンプ24を経た水と混合した後、気化器1に導入されて気化され、次いで空気ブロアー35から送り出された空気と混合され改質器31に送り込まれる。改質器31には前述の改質触媒が充填されており、改質器31に送り込まれた燃料混合物(炭化水素、水蒸気及び酸素を含む混合気)から、前述した改質反応のいずれかによって水素が製造される。
【0076】
このようにして製造された水素はCO変成器32、CO選択酸化器33を通じてCO濃度が燃料電池の特性に及ぼさない程度まで低減される。これらの反応器に用いる触媒例としては、CO変成器32には、鉄−クロム系触媒、銅−亜鉛系触媒あるいは貴金属系触媒が挙げられ、CO選択酸化器33には、ルテニウム系触媒、白金系触媒あるいはそれらの混合触媒が挙げられる。改質反応で製造された水素中のCO濃度が低い場合、CO変成器32とCO選択酸化器33を取り付けなくてもよい。
【0077】
燃料電池34は負極34Aと正極34Bとの間に高分子電解質34Cを備えた固体高分子形燃料電池の例である。負極側には上記の方法で得られた水素リッチガスが、正極側には空気ブロアー35から送られる空気が、それぞれ必要であれば適当な加湿処理を行った後(加湿装置は図示せず)導入される。
この時、負極側では水素ガスがプロトンとなり電子を放出する反応が進行し、正極側では酸素ガスが電子とプロトンを得て水となる反応が進行し、両極34A、34B間に直流電流が発生する。その場合、負極には、白金黒もしくは活性炭担持のPt触媒あるいはPt−Ru合金触媒などが使用され、正極には、白金黒もしくは活性炭担持のPt触媒などが使用される。
【0078】
負極34A側に改質器31のバーナ31Aを接続して余った水素を燃料とすることができる。また、正極34B側に気水分離器36を接続し、正極34B側に供給された空気中の酸素と水素との結合により生じた水と排気ガスとを分離し、水を水蒸気の生成に利用することができる。燃料電池34では発電に伴って熱が発生するため、排熱回収装置37を付設してこの熱を回収して有効利用することができる。排熱回収装置37は、燃料電池34に付設され反応時に生じた熱を奪う熱交換器37Aと、この熱交換器37Aで奪った熱を水と熱交換するための熱交換器37Bと、冷却器37Cと、これら熱交換器37A、37B及び冷却器37Cへ冷媒を循環させるポンプ37Dとを備え、熱交換器37Bにおいて得られる温水は他の設備などで有効に利用することができる。
【実施例】
【0079】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら制限されるものではない。
(1)触媒の圧縮強度の測定は木屋式強度測定器を用いて測定した(ASTM D4179に準拠)。
(2)触媒活性は、以下に示すC1転化率(%)を測定することにより行った。
粒径0.5〜1mmに粉砕した各触媒を1.5ミリリットルにSiCを3.5ミリリットル加え、改質器に充填した、改質器内で触媒を水素気流中で、600℃、1時間水素還元処理を行った後、硫黄分0.01ppm以下まで脱硫した市販のJIS1号灯油を原料炭化水素として用い、LHSV=4.6hr-1、スチーム/カーボン(モル比)=1.5の条件でJIS1号灯油及び水蒸気を導入し、常圧、反応温度600℃(触媒層の中央部)で水蒸気改質反応(加速劣化試験)を実施し、5時間後得られたガスをサンプリングしてガスクロマトグラフィーにてその成分と濃度を測定した。この結果をもとに、C1転化率を下記式により求めた。
C1転化率(%)=(A/B)×100
〔上記式において、A=COモル流量+CO2モル流量+CH4モル流量(いずれも反応器出口における流量)、B=反応器入口側の灯油の炭素モル流量である。〕
【0080】
(3)スチーミング処理(1)試験
0.5〜1mm径に粉砕した各触媒5ミリリットルを、内径20mmの小型マイクロリアクターに充填した。触媒の充填された該リアクター内にH2ガスを200Nml/分、H2Oを0.132g/分の割合で供給し、温度800℃で5時間通気してスチーミング処理を行った。
【0081】
(3)スチーミング処理(2)試験
0.5〜1mm径に粉砕した各触媒5ミリリットルを、マイクロリアクターに充填した。触媒の充填された該リアクター内にH2ガスを200Nml/分、H2Oを1.019g/分の割合で供給し、温度850℃で96時間通気してスチーミング処理を行った。
【0082】
(4)耐熱性の評価
各触媒をマッフル炉にて温度950℃で12時間焼成し、焼成前後の各触媒の表面積、圧縮強度を測定し、耐熱性を評価した。
なお、触媒の表面積は表面積測定(窒素吸着法)BET1点法で行なった。
【0083】
実施例1
3Ru/6MnO2(A)/5La2O3/KHO-24(触媒1)の調製、(A)は酢酸塩を表す。
(i)硝酸ランタン(La(NO33・6H2O,和光純薬工業株式会社製)2.82gを7.1mlの水に溶解し、これをγ−アルミナ(住友化学工業株式会社製:KHO−24)20gに含浸させた。
(ii)その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で500℃、3時間焼成し、酸化ランタンを5質量%含有するアルミナ担体を調製した。
(iii)酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O:和光純薬工業株式会社製)3.64gを6.2mlの水に溶解し、これを上記(ii)の酸化ランタン含有アルミナ担体20gに含浸させた。
(iv) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後マッフル炉で800℃。3時間焼成し、酸化マンガン6質量%および酸化ランタン5質量%を含有する担体を調製した。
(v) 塩化ルテニウム(RuCl3:田中貴金属工業株式会社製、Ru含有量39.9質量%)1.55gを7.8mlの水に溶解させ、上記(iv)で調製した担体に塩化ルテニウムを含浸させた。
(vi) その後、約30分間放置、乾燥させて粗触媒を得た。
(vii) 続いて、5モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液25mlに上記(vi)で得た粗触媒を浸し、1時間含浸させ、化合物の分解を行った。
(viii) 引き続き、蒸留水でよく洗浄し、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、触媒1を調製した。
触媒中のRu含有量は3.0質量%であった。
【0084】
実施例2
3Ru/5La2O3/6MnO2(A)/KHO-24(触媒2)の調製、(A)は酢酸塩を表す。
(i) 酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O:和光純薬工業株式会社製)3.64gを7.5mlの水に溶解し、これをγ−アルミナ((住友化学工業株式会社製:KHO−24)20gに含浸させた。
(ii) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で800℃、3時間焼成し、酸化マンガンを6質量%含有するアルミナ担体を調製した。
(iii) 硝酸ランタン(La(NO33・6H2O,和光純薬工業株式会社製)2.82gを6.2mlの水に溶解し、これを上記(ii)の酸化マンガン含有アルミナ担体20gに含浸させた。
(iv) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で800℃、3時間焼成し、酸化マンガンを6質量%および酸化ランタン5質量%を含有する担体を調製した。
(v) 以下、上記実施例1の触媒1の調製法(v)〜(viii)に準拠して触媒2を調製した。
【0085】
実施例3
3Ru/6MnO2(A)+5La2O3/KHO-24(触媒3)の調製、(A)は酢酸塩を表す。
(i) 酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O:和光純薬工業株式会社製)3.64gおよび硝酸ランタン(La(NO33・6H2O,和光純薬工業株式会社製)2.82gを同時に6.3mlの水に溶解し、これをγ−アルミナ((住友化学工業株式会社製:KHO−24)20gに含浸させた。
(ii) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で800℃、3時間焼成し、酸化マンガンを6質量%および酸化ランタン5質量%を含有する担体を調製した。
(iii) 以下、上記実施例1の触媒1の調製法(v)〜(viii)に準拠して触媒3を調製した。
【0086】
実施例4
3Ru/6MnO2(A)/5La2O3/KHO-24 (触媒4)の調製、(A)は酢酸塩を表す。
(i) 硝酸ランタン(La(NO33・6H2O,和光純薬工業株式会社製)2.82gを7.1mlの水に溶解し、これをγ−アルミナ((住友化学工業株式会社製:KHO−24)20gに含浸させた。
(ii) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で500℃、3時間焼成し、酸化ランタンを5質量%含有するアルミナ担体を調製した。
(iii) 酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O:和光純薬工業株式会社製)3.64gを6.2mlの水に溶解し、これを上記(ii)の酸化ランタン含有アルミナ担体20gに含浸させた。
(iv) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で950℃、3時間焼成し、酸化マンガン6質量%および酸化ランタン5質量%を含有する担体を調製した。
(v) 以下、上記実施例1の触媒1の調製法(v)〜(viii)に準拠して触媒4を調製した。
【0087】
実施例5
3Ru/10MnO2(N)/5La2O3/KHO-24(触媒5)、(N)は硝酸塩を表す。
(i) 硝酸ランタン(La(NO33・6H2O,和光純薬工業株式会社製)2.82gを7.1mlの水に溶解し、これをγ−アルミナ((住友化学工業株式会社製:KHO−24)20gに含浸させた。
(ii) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で500℃、3時間焼成し、酸化ランタン5質量%を含有するアルミナ担体を調製した。
(iii) 硝酸マンガン(Mn(NO3)2・6H2O:和光純薬工業株式会社製)7.41gを6.2mlの水に溶解し、これを上記(ii)の酸化ランタン含有アルミナ担体20gに含浸させた。
(iv) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で950℃、3時間焼成し、酸化マンガン10質量%および酸化ランタン5質量%を含有する担体を調製した。
(v) 以下、上記実施例1の触媒1の調製法(v)〜(viii)に準拠して触媒5を調製した。
触媒中のRuの含有量は3.0質量%であった。
【0088】
実施例6
3Ru/6MnO2(A)/5CeO2/KHO-24(触媒6)の調製、(A)は酢酸塩を表す。
(i) 硝酸セリウム(Ce(NO3)3・6H2O:和光純薬工業株式会社製)2.71gを7.1mlの水に溶解し、これをγ−アルミナ((住友化学工業株式会社製:KHO−24)20gに含浸させた。
(ii) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で500℃、3時間焼成し、酸化セリウム5質量%を含有するアルミナ担体を調製した。
(iii) 酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O:和光純薬工業株式会社製)3.64gを6.2mlの水に溶解し、これを上記(ii)で調製した酸化セリウム含有アルミナ担体20gに含浸させた。
(iv) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で800℃、3時間焼成し、酸化マンガン6質量%および酸化セリウム5質量%を含有する担体を調製した。
(v) 以下、上記実施例1の触媒1の調製法(v)〜(viii)に準拠して触媒6を調製した。
触媒中のRu含有量は3.0質量%であった。
【0089】
実施例7
3Ru/6MnO2(A)/5ZrO2/KHO-24(触媒7)の調製、(A)は酢酸塩を表す
(i) 硝酸ジルコニウム(Zr(NO3)2・2H2O:和光純薬工業株式会社製)2.33gを6.9mlの水に溶解し、これをγ−アルミナ((住友化学工業株式会社製:KHO−24)20gに含浸させた。
(ii) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で500℃、3時間焼成し、酸化ジルコニウム5質量%を含有するアルミナ担体を調製した。
(iii) 酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O:和光純薬工業株式会社製)3.64gを6.2mlの水に溶解し、これを上記(ii)の酸化ジルコニウム含有アルミナ担体20gに含浸させた。
(iv) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で800℃、3時間焼成し、酸化マンガンを6質量%および酸化ジルコニウムを5質量%含有する担体を調製した
(v) 以下、上記実施例1の触媒1の調製法(v)〜(viii)に準拠して触媒7を調製した。
触媒中のRu含有量は3.0質量%であった。
【0090】
比較例1
3Ru-6MnO2/KHO-24(触媒8)の調製
(i) 酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O:和光純薬工業株式会社製)3.64gを7.5mlの水に溶解し、これをγ−アルミナ((住友化学工業株式会社製:KHO−24)20gに含浸させた。
(ii) その後、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、その後、マッフル炉で500℃、3時間焼成し、酸化マンガン6質量%を含有するアルミナ担体を調製した。
(iii) 塩化ルテニウム(RuCl3:田中貴金属工業株式会社製、Ru含有量39.9質量%)1.55gを7.8mlの水に溶解し、上記(ii)で調製した担体に含浸させた。
その後、乾燥機で80℃、3時間乾燥した。
(iv) 続いて、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液25mlに浸し、1時間含浸させて化合物の分解を行った。
(v) 引き続き、蒸留水でよく洗浄し、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、触媒8を得た。
触媒中のRu含有量は3.0質量%であった。
【0091】
試験例1
実施例1〜7および比較例1で得られた各触媒を用いて、上記の条件で触媒活性評価のためのC1転化率の測定、スチーミング処理(1)試験、スチーミング処理(2)試験およびこれらスチーミング処理後の触媒強度の測定および触媒活性の測定として前記と同様のC1転化率の測定を行い、それらの結果をまとめて第1表に示した。
【0092】
【表1】

【0093】
比較例2
3Ru/KHO-24(触媒9)の調製
(i)塩化ルテニウム(RuCl3:田中貴金属工業株式会社製、Ru含有量39.9質量%)1.55gを7.8mlの水に溶解させ、市販のγ−アルミナ(住友化学株式会社製KHO−24)に、塩化ルテニウム水溶液を含浸させた。その後、約30分間放置、乾燥させて粗触媒を得た。続いて、5モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液25mlに上記で得た粗触媒を浸し、1時間含浸させ、化合物の分解を行った。引き続き、蒸留水でよく洗浄し、乾燥機で120℃、3時間乾燥して触媒9を得た。
【0094】
実施例8
3Ru/6MnO2(A)/3SiO2/KHO-24 (触媒10)の調製 (A)は酢酸塩を表す。
(i)テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4;信越化学工業)4.60gを100mlのエタノールに溶解させ,ここにγ−アルミナ(住友化学製: KHO−24)20gを浸漬し,60℃で1時間攪拌しながら反応させた。その後,ロータリーエバポレーターでエタノールを蒸発させ,その後,乾燥機にて120℃で一晩乾燥し,さらにその後,マッフル炉にて800℃,3時間焼成し,珪素酸化物を3質量%含有するアルミナ担体(3SiO2/KHO-24)を調製した。次に、酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O ;和光純薬工業)3.64gを7.5mlの水に溶解させ,これを、前記珪素酸化物を3質量%含有するアルミナ担体(3SiO2/KHO-24)に含浸させ、その後、マッフル炉にて800℃,3時間焼成して酸化マンガンを含有する珪素酸化物含有アルミナ担体(6MnO2(A)/3SiO2/KHO-24)を調製した。
(ii)次に、塩化ルテニウム(RuCl3:田中貴金属工業株式会社製、Ru含有量39.9質量%)1.55gを7.8mlの水に溶解させ、上記で調製した、酸化マンガンを含有する珪素酸化物含有アルミナ担体に塩化ルテニウム水溶液を含浸させた。その後、約30分間放置、乾燥させて粗触媒を得た。続いて、5モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液25mlに上記で得た粗触媒を浸し、1時間含浸させ、化合物の分解を行った。引き続き、蒸留水でよく洗浄し、乾燥機で120℃、3時間乾燥し、触媒10を調製した。
触媒中のRu含有量は3.0質量%であった。
【0095】
実施例9
3Ru/3SiO2/6MnO2(A)/KHO-24 (触媒11)の調製 (A)は酢酸塩を表す。
(i)酢酸マンガン(Mn(CH3COO)2・4H2O ;和光純薬工業)3.64gを7.5mlの水に溶解させ,これをアルミナに含浸させ、その後、乾燥機で120℃の温度で3時間乾燥し、さらにその後、マッフル炉にて800℃、3時間焼成し、酸化マンガン含有アルミナ担体(6MnO2/KHO-24)を調製した。次に、テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4;信越化学工業)4.60gを100mlのエタノールに溶解させ,これに、先に調製した酸化マンガン含有アルミナ担体20gを浸漬し、60℃で1時間攪拌しながら反応させた。
その後,ロータリーエバポレーターでエタノールを蒸発させ,その後,乾燥機にて120℃で一晩乾燥し,さらにその後,マッフル炉にて800℃,3時間焼成し,珪素酸化物を3質量%含有する酸化マンガン含有アルミナ担体3SiO2/6MnO2/KHO-24を調製した。
(ii)得られた珪素酸化物を3質量%含有する酸化マンガン含有アルミナ担体(3SiO2/6MnO2(A)/KHO-24)を用いて実施例8の(ii)に準拠して、触媒11を調製した。触媒中のRu含有量は3.0質量%であった。
【0096】
比較例3
3Ru/5La2O3(N)/KHO-24(触媒12)の調製 (N)は硝酸塩を表す。
(i)硝酸ランタン(La(NO3)3・6H2O;和光純薬工業)2.82gを7.1mlの水に溶解させ,これをγ−アルミナ(住友化学製: KHO−24)20gに含浸させた。
その後,乾燥機にて120℃,3時間乾燥し,さらにその後,マッフル炉にて800℃,3時間焼成し,酸化ランタンを5質量%含有するアルミナ担体を調製した。
(ii)得られた酸化ランタンを5質量%含有するアルミナ担体を用いて、実施例8の(ii)に準拠して、触媒12を調製した。
【0097】
試験例2
実施例8、9および比較例2、3で得られた各触媒を用いて、耐熱性の評価を行なった。その結果を第2表に示した。
【0098】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、長時間の熱履歴後も担体の強度特に圧縮強度が維持され、活性が高く、長時間の熱履歴後もその活性が持続する炭化水素の改質触媒および耐熱性が向上した炭化水素の改質触媒並びにこれらの改質触媒を用いた水素の製造方法を提供することができる。また、このように優れた改質触媒を備えた改質器と、該改質器により製造される水素を燃料とする燃料電池とを有する、優れた燃料電池システムを提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)酸化マンガンおよび(c)アルミナとを含む担体に、(d)ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を担持してなる炭化水素の改質触媒。
【請求項2】
担体が、(a')ランタン化合物、セリウム化合物およびジルコニウム化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物と(b')マンガン化合物を(c)アルミナ担体に含浸、焼成して得られたものである請求項1に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項3】
焼成温度800〜1000℃で焼成して得られたものである請求項2に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項4】
担体が、(a')ランタン化合物、セリウム化合物およびジルコニウム化合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を(c)アルミナに含浸し、温度400〜600℃で焼成し、次いで、これに(b')マンガン化合物を含浸して温度800〜1000℃で焼成して得られたものである請求項1に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項5】
酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの中から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が、改質触媒に対して、1〜20質量%である請求項1に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項6】
(f)珪素酸化物と(b)酸化マンガンおよび(c)アルミナを含む担体に、(d)ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分を担持してなる炭化水素の改質触媒。
【請求項7】
担体が、最初に、(f')珪素化合物を(c)アルミナに含浸、焼成し、その後、(b')マンガン化合物を含浸、焼成して得られたものである請求項6に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項8】
担体が、最初に(b')マンガン化合物を(c)アルミナに含浸、焼成し、その後、(f')珪素化合物を含浸、焼成して得られたものである請求項6に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項9】
担体が、(f')珪素化合物と(b')マンガン化合物を混合し、同時に(c)アルミナに含浸、焼成して得られたものである請求項6に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項10】
(f')珪素化合物がテトラエトキシシランである請求項6〜9のいずれか1項に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項11】
(f)珪素酸化物の含有量が、1〜20質量%である請求項6〜10のいずれか1項に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項12】
(b')マンガン化合物が酢酸マンガンである請求項1〜11のいずれか1項に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項13】
ルテニウム成分、白金成分、ロジウム成分、パラジウム成分およびイリジウム成分の中から選ばれる少なくとも一種の貴金属成分の含有量が改質触媒に対して、貴金属元素として、0.1〜8質量%である請求項1または6に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項14】
(b)酸化マンガンの含有量が、改質触媒に対して、3〜20質量%である請求項1または6に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項15】
さらにアルカリ金属成分またはアルカリ土類金属成分から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜14のいずれか1項に記載の炭化水素の改質触媒。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の改質触媒を用い、炭化水素を改質することを特徴とする水素の製造方法。
【請求項17】
改質が、水蒸気改質、自己熱改質、部分酸化改質および二酸化炭素改質の中から選ばれるいずれか1つである請求項16に記載の水素の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の改質触媒を備える改質器と、該改質器により製造される水素を燃料とする燃料電池とを有することを特徴とする燃料電池システム。


【図1】
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【国際公開番号】WO2005/079978
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510218(P2006−510218)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002432
【国際出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】