説明

炭水化物組成物の製造方法

本発明は、ラクトースからガラクトースの10〜50%、グルコースの0〜48%、フルクトースの1〜25%、グルコン酸の1〜48%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖の0〜25%の混合物を含む炭水化物の組成物を製造する方法、ならびにこの方法によって製造される組成物とこれら組成物を含有する食品および飲料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類の混合物を含む炭水化物の組成物を製造する方法、具体的には専らシラップとしてのみではないが出発材料のラクトースから炭水化物の組成物を製造する方法に関する。本発明はまた、本発明の方法によって製造される組成物ならびにこれら組成物を含有する食物および飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトース、グルコース、ガラクトース、フルクトースなどの糖類の混合物を含む炭水化物の組成物は、市販用の食物および飲料の製造において食物および飲料の添加物として有用である。例えばガラクトースを約40〜50%、フルクトースを約25〜30%、およびグルコースを約25〜30%含む組成物は、スポーツマン向け、菓子店向け、または糖尿病患者などの特殊な食物を必要とする人々向けのスポーツ飲料類およびエネルギースナック類の製造に有用である(欧州特許公開第0499165号)。
【0003】
このような組成物を製造するための周知の方法には、必要な量の個々の精製した糖を単純に混ぜる方法がある。しかしながらそれらの純粋な形態の糖はかなり高価であるかも知れず、また純度、したがって各糖の品質が供給先ごとに変わる可能性があり、結果として最終組成物の変動の原因となる。
【0004】
他の周知の方法には、1種類または複数種類の酵素で或る糖を別の糖に転化し、それによって少なくとも2種類の糖の混合物を生成する方法がある。次いで追加の糖類を精製した供給源から加えて所望の組成物を完成することができる。
【0005】
例えば米国特許第3,852,496号は、固定化したβガラクトシダーゼ(ラクターゼ)とグルコースイソメラーゼを用いてラクトースを含有するホエーから甘味組成物を製造する方法を記載している。ラクトースは、固定化ラクターゼを含有するフロースルーカラムを通過してグルコース、ガラクトース、および未加水分解ラクトースを生成する。この組成物を直接使用するか、またはグルコースイソメラーゼで処理してフルクトース、グルコース、ガラクトース、およびラクトースを含有する組成物を製造する。
【0006】
Poutanen等(1978)は、固定化酵素技術を用いたグルコースイソメラーゼ処理により、加水分解したホエーとラクトースシラップ中でのグルコースのフルクトースへの転化について記載している。この方法の効率を高める目的で、フルクトースの相対含有量を高める、したがって得られる組成物の甘味を高めるために異性化反応に先立ってグルコースの精製した供給源をこの加水分解したラクトースシラップに加えた。
【0007】
ChiuおよびKoskowaski(1985)は、ホエーラクトースの加水分解、続いて追加されたグルコースに関するグルコース異性化反応、およびその後のフルクトースシラップの精製について記載している。
【0008】
HarjuおよびKruela(1980)は、糖類の混合物を製造するためのホエーラクトースの加水分解について記載し、これにより加水分解が80%完了する極限まで甘味を増加させる。このレベルを超える更なる加水分解は、甘味を増加させず、加水分解のコストを著しく増加させる。更に甘味を増すにはグルコースを異性化してフルクトースにする。
【0009】
上記従来技術の方法は、主として極限の甘味を有する炭水化物の組成物を得る方法に関する。ガラクトースは殊更甘くない炭水化物であり、したがってこれら従来技術による組成物の望ましい成分ではない。
【0010】
ガラクトースは、容易かつ迅速に吸収されて急速なエネルギー源および肝臓中のグリコーゲン予備の補給の促進を可能にするのでスポーツ飲料などに有用な組成物の特に望ましい成分である(米国特許第5,780,094号)。不幸にして現在ではガラクトース源を大規模な一般消費者向け製品用に充分な工業的な量で入手できないので、純粋なガラクトースを簡単に従来技術による組成物に添加することはできない。更に、たとえ充分な量が入手できたとしても、そのようなガラクトースはひどく高価であり、スクロースなど市販のスポーツ飲料に使用される通常の安価なエネルギー源と競争することができなかった。これは、グルコース、アラビノース、マンノース、フルクトースなどの一緒に天然に産出する他の糖類からガラクトースを分離することが困難なためである。最も一般的なガラクトース源は、ミルク由来のもの、または側鎖として存在し、複雑な分離工程を必要とするペクチン由来のものである。高価な中間体および最終製品の収率の低下が起こり、その結果このような分離工程を工業化という視点から現実味のないものにすることもまた、分離工程についての共通の問題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ガラクトースを含めた糖類の混合物を含む組成物の製造方法を提供すること、および/または前述の問題を少なくとも或る程度まで克服し、かつ/もしくは有用な選択の自由を一般の人々に提供する精製ガラクトースを製造するための安価で便利な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、存在する全炭水化物の%としてガラクトースの約10〜50%、グルコースの0〜48%、フルクトースの1〜25%、グルコン酸の1〜48%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖を含む「その他」0〜25%の混合物を含む組成物の製造方法を提供する。好ましくはこの組成物は、ガラクトース30〜50%、グルコースの10〜40%、フルクトース5〜25%、グルコン酸の1〜15%、および「その他」1〜10%を含む。最も好ましくはこの組成物は、ガラクトース45〜50%、グルコース23〜33%、フルクトースの15〜23%、グルコン酸の1〜5%、および「その他」7%未満を含む。
【0013】
第一の実施形態において本発明は、精製の工程を必要とせずに、ガラクトースと、グルコースと、フルクトースと、グルコン酸と、未転化ラクトースと、非ラクトース二糖およびオリゴ糖との混合物を含む組成物を製造するための、
【0014】
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程、
(ii)このグルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、および
(iii)このグルコースを部分酸化してグルコン酸にする工程
を含む方法を提供する。
この方法は、連続、半連続、バッチ、シーケンスバッチ、または単一ポットのプロセスとして行うことができる。
【0015】
異性化の工程(ii)は、酸化の工程(iii)の前または後のいずれでも行うことができる。
【0016】
加水分解の工程(i)および酸化の工程(iii)は、同時に行うこともできる。
別法では、工程(i)の生成物を3つの流れに分け、第一の流れは更に処理せず、第二および第三の流れはそれぞれ工程(ii)または(iii)に従って処理し、各流れの生成物を合わせて本発明による最終組成物を得ることもできる。
【0017】
第二の実施形態において本発明は、ガラクトースと、グルコースと、フルクトースと、グルコン酸と、未転化ラクトースと、非ラクトース二糖およびオリゴ糖との混合物を含む、この方法により製造される組成物を提供する。この希釈していない組成物は、一般にブリックス度40〜80のシラップの形態であるが、これは任意の所望濃度に希釈することができる。
【0018】
この組成物は、ガラクトースの約10〜50%、グルコースの0〜48%、フルクトースの1〜25%、グルコン酸の1〜48%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖を含む「その他」0〜25%の混合物を含む。好ましくはこの組成物は、ガラクトース30〜50%、グルコースの10〜40%、フルクトース5〜25%、グルコン酸の1〜15%、および「その他」1〜10%を含む。最も好ましくはこの組成物は、ガラクトース45〜50%、グルコース23〜33%、フルクトースの15〜23%、グルコン酸の1〜5%、および「その他」7%未満を含む。
【0019】
第三の実施形態において本発明は、本発明の組成物を含有する食物および飲料、特にスポーツエネルギーバーまたは1リットル当たり25ミリモル未満のナトリウムを含有するスポーツ飲料を提供する。
【0020】
第四の実施形態において本発明は、
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程、
(ii)このグルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、
(iii)このグルコースを部分酸化してグルコン酸にする工程、
(iv)ガラクトースを結晶化して母液を生成する工程、および
(v)この母液からガラクトースの結晶を回収する工程
を含むガラクトースの製造方法を提供する。
第五の実施形態において本発明は、本発明の方法により製造されたガラクトースを提供する。
【0021】
第六の実施形態において本発明は、本発明の方法により製造された母液を含む組成物、および食品業界、特に乳製品業界における甘味料としてのその使用法を提供する。
【0022】
次に本発明を添付図面の図を参照して説明することにする。
本発明は、出発材料としてのラクトースから、ガラクトース、グルコース、フルクトース、グルコン酸、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖の混合物を含む組成物を製造する方法に関する。このような組成物は、運動の前、間、または後の容易に吸収可能なエネルギー源としてのスポーツ飲料およびスポーツバーの調製に特に有用である。ガラクトースはこの点で特に有用であり、本発明はまたガラクトースの製造方法に関する。
【0023】
第一の実施形態において本発明は、精製の工程を必要とせずに、ガラクトースと、グルコースと、フルクトースと、グルコン酸と、未転化ラクトースと、非ラクトース二糖およびオリゴ糖との混合物を含む組成物を製造するための、
【0024】
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程、
(ii)このグルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、および
(iii)このグルコース部分酸化してグルコン酸にする工程
を含む工程を提供する。この工程を図1に図式的に示す。
この工程は、連続、半連続、バッチ、シーケンスバッチ、または単一ポットのプロセスとして行うことができる。
【0025】
異性化の工程(ii)は、酸化の工程(iii)の前または後のいずれでも行うことができる。
【0026】
加水分解の工程(i)および酸化の工程(iii)は、同時に行うこともできる。
別法では、工程(i)の生成物を3つの流れに分け、第一の流れは更に処理せず、第二および第三の流れはそれぞれ工程(ii)または(iii)に従って処理し、各流れの生成物を合わせて本発明による最終組成物を得ることもできる。
【0027】
別法では、部分異性化の工程(ii)の生成物を分け、一部を部分酸化(工程(iii))にかけ、残部をこの部分酸化工程の生成物と合わせて本発明の組成物を製造することもできる。
【0028】
別法では、部分酸化の工程(iii)の生成物を分け、一部を部分異性化(工程(ii))にかけ、残部をこの部分異性化の工程の生成物と合わせて本発明の組成物を製造することもできる。
【0029】
好ましくはこの工程は、加水分解の工程(i)、続いて部分酸化の工程(iii)を含み、この流れの大部分(例えば85%)を部分異性化の工程(ii)によって更に処理し、この流れの残りの部分(バイパス)を工程(ii)の生成物と合わせて所望のフルクトース含量を有する本発明の組成物を製造する。
【0030】
ラクトース源は、ミルク、あるいは全乳、脱脂乳、ホエー、または乳清から得られるUF透過液、あるいは純粋なラクトース、あるいはホエー、あるいは除タンパクホエー、あるいは脱塩ホエー、あるいは脱灰ホエー、あるいは除タンパク、脱塩、または脱灰ホエーから得られるUF透過液、あるいはそれらの任意の組合せを含む群から選択することができる。
【0031】
加水分解の工程(i)は、酸、強陽イオン交換樹脂の使用を含めて化学的に達成するか、あるいは1種類もしくは複数種類の加水分解酵素を用いて酵素の働きにより達成するか、あるいはバイオリアクター中で達成することができる。
【0032】
これらの酸は、塩酸、硫酸、リン酸、もしくは硝酸などの強鉱酸、および/またはクエン酸などの有機酸から選択される1種類もしくは複数種類の酸の弱溶液(ラクトースの全重量の0.001〜0.1%)を含むことができる。
【0033】
加水分解酵素(βガラクトシダーゼ、またラクターゼとしても知られる)は、遊離でも固定化されてもよく、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces marxianus、Saccharomyces fragilis、Streptococcus thermophilus、Aspergillus oryzae、Aspergillus niger、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus helviticus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Streptococcus lactis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium breve、Bacillus subtilis、Escherichia coli、Sulfolobusの種(特にSulfolobus solfataricus)、Pyrococcus fusiosus、熟していないコーヒー豆、ナタマメ、ウシの肝臓、ウシの精巣、および単独または組合せのいずれかの任意の他の好適な供給源から入手することができる。
【0034】
熟練者には分かっているように、また製造業者の手引書中に述べられているように、加水分解反応混合物をその酵素源、その活性、温度とpHの最適条件、および出発材料の量に従って適切な条件下に保つ。Kluyveromycesから得られる酵素の場合、反応混合物を必要に応じて酸またはアルカリ(例えば、NaOH、KOH、HCl、KHPO、KH PO、クエン酸カリウムまたはナトリウム、炭酸マグネシウム、硫酸、クエン酸、またはこれらの混合物)を用いてpH 6.8〜7.5、好ましくは7.1〜7.3、最も好ましくは7.2に、かつ40〜50℃に約8時間保つ。Aspergillusから得られる酵素の場合、反応混合物をpH 3.5〜7.5、好ましくは4.5〜7.0に、かつ40〜60℃に保つ。
【0035】
異性化の工程(ii)は化学的または酵素により達成することができる。酵素を使用する場合、そのようなグルコースイソメラーゼ酵素は遊離でも固定化されてもよく、Actinoplanes missiourensis、Bacillus coagulans、Streptomyces murinus、Escherichia coli、およびArthrobacterの種から入手することができる。この場合もまた反応条件はその酵素源次第であり、製造業者の助言に従うことができる。一般に好ましい条件は、高濃度のフルクトースコーンシロップの工業的製造において、デンプンから得られるデキストロースをフルクトース/デキストロース混合物に転化する場合に用いられる条件と同様である。本発明の場合、一般的な条件は55〜62℃および0.5〜5カラム体積/時である。
【0036】
この工程は膜バイオリアクター中で行うことができる。好ましくはこの工程はカラム形式で固定化酵素を用いて行われた。
【0037】
スポーツ飲料およびスポーツ食品については多くの場合一般に比較的低いグリセミック指数を有することが望ましく、したがってこのような飲料および食品を配合する場合、グルコース以外の糖類または小腸でグルコースに転化することができる糖類が存在することが重要である。例えばガラクトースは、スポーツ飲料または食品バー中のグリセミック指数を下げるように作用する。高度グリセミックなグルコースをグルコン酸にする酸化の工程(iii)を通じて更なるグリセミック指数の低下を実現することが本発明の基本的な特徴である。これは、味感を変えるのに必要な酸味料を提供することと、そのような食品および飲料の品質を保つことを同時に達成する。
【0038】
この酸化の工程(iii)は化学的または酵素の働きにより達成することができる。酵素転化の工程は2種類の酵素、グルコースオキシダーゼとカタラーゼを必要とする。これらの酵素は、混合した活性製品または別々の製品として購入することができる。両方の酵素を反応混合物に別々に加えることも混合製品として一緒に加えることもでき、または混合製品中の活性は一方または両方の別々の製品を加えることにより補うこともできる。このような酵素は遊離でも固定化されてもよい。酸化酵素は、Penicillium notatum、Penicilliumglaucanum、Penicillium amagosakiense、およびAspergillus nigerから入手することができる。カタラーゼ酵素は、Aspergillus niger、Penicilliumの種(上記オキシダーゼの場合と同様)、およびMicrococcus lysodeikitcusから入手することができる。これら反応条件は、酵素源、その活性、反応物の量などに左右され、製造業者の手引書に従うことができる。一般に反応は、空気/酸素と接触させながら45〜60℃、好ましくは55〜58℃で2〜4時間行われる。反応混合物のpHは、塩基を加えることによって約4.5〜6.5、好ましくは5.6に保つ。別法ではこの酸化の工程(iii)は膜バイオリアクター中で行うこともできる。この工程はまた、米国特許第4,345,031号に記載のように高圧酸素条件下で行うこともできる。
【0039】
この酸化の工程は反応混合物中に存在するグルコースの一部をグルコン酸に転化する。グルコン酸は、幾つかの理由で本発明の組成物の特に望ましい成分であると考えられる。第一に、さきに考察したようにその組成物中に存在するグルコースの量を減らすことによって組成物のグリセミック指数を下げる。第二に、グルコン酸の酸度はスポーツ飲料用途にとって望ましく、また第三に、存在するグルコン酸はナトリウムの風味を隠すのを助けるので組成物、およびその後の希釈したスポーツ飲料の風味を改良するように作用する。
【0040】
加水分解の工程(i)と酸化の工程(iii)は、熟練した従業員ならば分かるように条件が許す場合、例えばpHを制御するために用いられる薬品が加水分解と両立できる場合は同時に行うことができる。
【0041】
本発明の方法はまた、熟練者ならば分かるようにこの方法によって製造されるシラップの精製のために濾過、イオン交換、および炭素による複数の任意選択の精製の工程を含んでもよい。この方法はまた、その方法の全体の効率を改善するために周期的に行われるpH調整を含むこともできる。
【0042】
この方法によって製造される組成物は、存在する最終炭水化物の%としてガラクトースの約10〜50%、グルコースの0〜48%、フルクトースの1〜25%、グルコン酸の1〜48%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖を含む「その他」0〜25%の混合物を含む。好ましくはこの組成物は、ガラクトース30〜50%、グルコースの10〜40%、フルクトース5〜25%、グルコン酸の1〜15%、および「その他」1〜10%を含む。最も好ましくはこの組成物は、ガラクトース45〜50%、グルコース23〜33%、フルクトースの15〜23%、グルコン酸の1〜5%、および「その他」7%未満を含む。
【0043】
未転化ラクトースとともに非ラクトース二糖およびオリゴ糖(「その他」)は、この組成物の全炭水化物含有量の約5%を構成する。この「その他」成分はビフィズス菌生成材料を含み、スポーツ飲料、スポーツバー、ならびにこの組成物が加えられる他の食品および飲料において有益な健康効果を有することがある。更にこの「その他」成分は、幾らかの発熱量を提供することができる。理論に縛られないが、これら二糖およびオリゴ糖は上部胃腸管で吸着されるとは思わないけれども、それらは短鎖脂肪酸に転化され、結腸で吸着されてエネルギー源を提供することはありそうである。これはまた、この「その他」成分、特に非ラクトース二糖およびオリゴ糖成分がすべての糖類を溶液状態に保つように作用するか、またはある程度まで結晶化を妨げるように作用する点で本発明の濃縮したシラップの利点である。
【0044】
本発明の方法により製造した組成物は、一般にブリックス度約5のシラップの形態である。この組成物は、更なる希釈なしに直接スポーツ飲料に使用することができる。しかしながら好ましくは本発明の方法により製造されるこの組成物は、ブリックス度40〜80、より好ましくはブリックス度70〜75の濃縮したシラップの形態である。この組成物は、1回または複数回の蒸発の工程により濃縮される。具体的には、工程(i)を単独で行うかまたは工程(iii)と組み合わせる場合、この工程は希釈条件、すなわち水>75%〜95%(または全固形物含量5〜25%)のもと、および工程(ii)に先立って行う熱による蒸発の工程のもとで行って全固形物を40〜60%まで増加させる。もし望むなら更にこのシラップを、例えば蒸発器中で乾燥することもできる。
【0045】
好ましくはこの組成物は、濃縮したシラップの形態であり、スポーツ飲料およびスポーツバーの中に添加剤として加えることができる。一般には2.5〜2.7%のシラップ固形物を水およびフレーバーなどの他の成分に加えてスポーツ飲料を製造する。本発明の方法の主な利点は、任意の所望の組成の最終のシラップを製造するために変えることができるその工程工程の柔軟性である。しかしながら本発明の組成物を用いて作られるスポーツ飲料は、常に25ミリモル/リットル未満のナトリウム含有量を有し、したがって米国特許第5,780,094号に記載のスポーツ飲料から区別される。
【0046】
本発明のシラップに関連する一つの問題は、シラップの濃度に応じて−10℃から+30℃の範囲の温度でガラクトース成分が結晶化する傾向のあることである。したがって結晶化を避けるにはシラップをこの範囲外の温度に保たなければならない。いったんその濃縮したシラップを希釈してスポーツ飲料にしてしまったらこれは問題ではない。前述のように組成物の「その他」成分中のガラクトオリゴ糖類の存在は、結晶化を妨げるように作用すると考えられるが、詳細にはガラクトースの結晶化は上記温度範囲を越えてなお起こる可能性がある。
【0047】
しかしながらさきに考察したように純粋なガラクトース源は商取引上の大量の品物として容易に入手できず、本発明の更なる実施形態は、
【0048】
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程、
(ii)このグルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、
(iii)このグルコース部分酸化してグルコン酸にする工程、および
(iv)蒸発および/または冷却によりガラクトースを結晶化して母液を生成する工程、および
【0049】
(v)この母液からガラクトース結晶を回収する工程、
を含むガラクトースの製造方法を提供する。
この方法の工程(i)、(ii)、および(iii)は前述と同一であり、前述の順序およびやり方で行うことができる。工程(iv)は本発明のシラップを−10℃から+30℃、好ましくは4℃から20℃の範囲の温度まで冷却することによって行うことができ、それによって純粋なガラクトースの結晶が始まる。ガラクトースは、低温であるほど効率的に溶液から結晶化する。好ましい条件は48時間までは4℃である。次いでこの結晶を、遠心分離または濾過と、氷に近い冷水による洗浄とによる工程(v)で回収し、このガラクトースを流動床乾燥装置を用いて空気乾燥することができる。この工程は、本発明のシラップ組成物中に存在するガラクトースの約50%を結晶化するのに効果的である。例えばシラップが炭水化物の48%をガラクトースとして含有する場合、このうち約24〜32%がガラクトースとして結晶化することになる。この工程は、ガラクトースの小規模または大規模な製造に使用することができる。
【0050】
結晶化の効率には、上記のようにシラップの濃度と温度が、また存在する糖類の複雑さが影響する。シラップ中に存在する炭水化物が複雑であればあるほど結晶化は妨げられる。具体的には、存在する「その他」成分が多ければ多いほど結晶化は妨げられる。シラップの濃度が高ければ高いほど恐らく結晶化は起こるであろう。例えば、高度に濃縮したシラップ(例えばブリックス度80)は−10℃から70℃の間の温度で結晶化する可能性がある。このような高度に濃縮したシラップは、熟練従業員ならば分かるように結晶化を避けるにはこの範囲外の温度に保たなければならない。
【0051】
この上澄み液(または母液)は、全炭水化物重量を基準にしてフルクトース20%、グルコース40%、グルコン酸5%、ガラクトース30%、およびその他5%を含み、除去されたガラクトースは残っている炭水化物混合物よりも甘くないので、この上澄み液は工程(i)、(ii)、および(iii)によって製造される組成物よりも甘い。
【0052】
したがって「母液」組成物は、食品業界における甘味料として有用であり、特にこれは乳製品源すなわちラクトースから製造されるのでヨーグルト、ムース、アイスクリーム、クリーム、加糖乳飲料などの乳製品の甘味料として有用である。
【0053】
この「母液」は、ガラクトースの含有量がより少なく、「その他」成分に富み、したがって結晶化の傾向が少ないので、第一の実施形態の工程によって製造されるシラップよりも安定である。
【0054】
この「母液」は、熟練従業員ならば分かるように工程工程(i)、(ii)、および/または(iii)、あるいはこれらの任意の組合せにかけてその組成を更に変えることができる。
【0055】
本発明の方法により製造される精製したガラクトースを本発明の組成物に加えてガラクトース含量を高めることができ、これはスポーツ飲料またはスポーツバーに使用するすぐれたシラップを提供することになる。具体的には、純粋なガラクトースを本発明の組成物に加えて所望レベルまでガラクトース含量を高めることができる。
【0056】
次に本発明を例示することにする。
【実施例】
【0057】
実施例1
ラクトース一水和物(BDH、45g)を水道水255gに溶解した。この溶液のpHをクエン酸でpH 5に調整した。そのフラスコを湯浴中で50℃に加熱し、攪拌しながらラクターゼ(Zymus International, New Zealandから入手可能なEnzidase Fungal Lactase 50,000、0.90g)を加えた。加水分解を50℃で24時間進行させた。次いでこの溶液を冷却し、グルコースについて分析した。グルコース濃度は7.1%であった。
【0058】
次いでこの溶液を2つの部分、A の200gおよびB の100gに分割した。フラスコ中でB部分に炭酸カルシウム(1.94g)と、グルコースオキシダーゼ(Fermizyme 1500、0.1g)およびカタラーゼ(Catazyme 25L、0.1g)とを加え、機械式ふりまぜ機により50℃の湯浴中で4時間激しく振とうした。
【0059】
A部分をフラスコに入れ、60℃に加熱した。グルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT、2g)を加え、振とう式インキュベーター中で60℃で穏やか振とうすることにより懸濁状態を保った。2時間後にSweetzyme を沈降させ、濾紙(Whatman 541)を通して上澄み液をこの沈降した酵素からデカントした。
【0060】
両方の部分、AおよびBをラクトース、ガラクトース、およびグルコースについて分析し、次いでこれら溶液を混合した。生成物の組成(w/w)は、グルコース4.56%、ガラクトース7.01%、フルクトースの1.37%、オリゴ糖/二糖の0.42%、およびグルコン酸の1.1%であり、またブリックス度14.5であった。これは、乾燥重量ベースでグルコース31.5%、ガラクトース48.5%、フルクトース9.5%、グルコン酸7.6%、およびオリゴ糖/二糖2.9%の糖組成物に相当した。
【0061】
実施例2
乳透過液を脱脂乳の限外濾過により得て、その組成はラクトース4.6%、灰分0.47%、pH 6.5であった。乳透過液(1 kg)をフラスコに入れ、炭酸マグネシウム(0.1g)でpH 7.2に調整した。このフラスコを湯浴中で40℃に加熱し、穏やかに攪拌した。ラクターゼ(Maxilact L2000、1.25g)を加え、40℃で4時間インキュベートした。間隔を置いて乳透過液のpHを測定し、1M HCl(全体で1.25mL)を加えることにより7.4から7.2に保った。4時間後、乳透過液のアリコートをグルコース分析用に抜き取った。そのグルコース含量は2.0%であった。
【0062】
次いでこの乳透過液を55℃に加熱し、空気流で激しく曝気した。グルコースオキシダーゼ(FermizymegO 4000 L、0.1mL)とカタラーゼ(Catazyme 25L、1.0mL)を加え、pHをモニターした。pHが4.5に達したら炭酸マグネシウムを加えてpHを5.2に上昇させた。次いで3.41gの炭酸マグネシウムが加えられるまでpH のモニターと炭酸マグネシウムの添加を続けることによってpHを4.5と5.2の間に保った。空気流を止め、フラスコの温度を60℃に上げた。
【0063】
炭酸マグネシウムの添加によりこの溶液のpHを7.5に上昇させた。次いでグルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT、10g)を加え、オーバーヘッドスターラーで穏やかに攪拌することにより懸濁状態を保ち、2時間インキュベートした。次いでこの溶液を冷却し、Sweetzymeを沈降させた。濾紙(Whatman 541)を通して上澄み液をこの沈降した酵素からデカントした。
【0064】
この溶液をHPLCによりグルコース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、およびグルコン酸について分析した。溶液の組成(w/w%)は、グルコースの0.70%、ガラクトースの1.78%、フルクトースの0.47%、オリゴ糖/二糖の0.64%、およびグルコン酸の1.05%であり、またブリックス度4.6であった。これは、乾燥重量ベースでグルコースの15.0%、ガラクトース38.4%、フルクトースの10.1%、グルコン酸22.6%、およびオリゴ糖/二糖13.7%の糖組成物に相当した。
【0065】
実施例3
全乳の限外濾過により得られ、ラクトース4.6%、灰分0.47%を含む乳透過液(1 kg)中にラクトース水和物(BDH、50g)を溶解した。リン酸水素二カリウム(32g)の添加によりこの溶液のpHを8.0に上昇させた。この溶液を50℃に加熱し、この温度を15分間保った。次いでこれを冷却し、遠心分離した。
【0066】
上澄み液をpH 7.2に調整し、ラクターゼ(Lactozyme 3000L、2.5g)を加えた。温度を45℃に上げ、加水分解を6時間進行させた。この溶液をグルコースについて分析した。そのグルコース濃度は5.13%であった。
【0067】
次いで温度を60℃に上げ、塩化マグネシウム六水和物(0.5g)とグルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT、10g)を加え、オーバーヘッドスターラーで穏やかに攪拌することにより懸濁状態を保った。インキュベーションを2.5時間続け、次いでこの溶液を冷却し、Sweetzyme を沈降させた。濾紙(Whatman 541)を通して上澄み液をこの沈降した酵素からデカントした。
【0068】
この異性化した溶液を50℃に加熱し、酸素でスパージした。次いでグルコースオキシダーゼ(Enzidase GO 1500、0.25g)とカタラーゼ(Catazyme 25L、1.0g)を炭酸カルシウム3.5gと一緒に加え、酵素反応を7時間進行させた。この生成物の組成(w/w%)は、グルコースの0.04%、ガラクトース4.80%、フルクトースの1.77%、オリゴ糖/二糖の0.94%、およびグルコン酸4.86%であり、またブリックス度12.4であった。これは、乾燥重量ベースでグルコースの0.3%、ガラクトース38.7%、フルクトースの14.3%、グルコン酸39.2%、およびオリゴ糖/二糖7.7%の糖組成物に相当した。
【0069】
実施例4
Wyndaleの精製した食用ラクターゼ(200g)を脱イオン水(800g)に溶解し、クエン酸三カリウム0.1g、リン酸水素二カリウム0.03g、およびリン酸二水素カリウム0.12gで pH 7.2に調整した。この溶液の温度を湯浴中で45℃に上げ、ラクターゼ(Lactozyme 3000L、3.7g)を加えた。酵素加水分解を12時間継続させた。pHを時々調べ、リン酸水素二カリウムを加えてpHを7.0〜7.3に保った。12時間後にグルコース濃度を調べ、9.7%であることが分かった。
【0070】
このフラスコの温度を55℃に上げ、溶液を酸素でスパージした。グルコースオキシダーゼ(Enzidase GO 1500、0.56g)を加え、pHを5.2まで低下させ、次いで10M水酸化ナトリウムの添加によりこのpHを保った。溶液中のグルコースの7.0%がグルコン酸(3.6m L)に転化するまでアルカリを加え、次いで酸素流を止め、pHを7.5に上昇させた。
【0071】
この溶液を60℃に加熱し、次いで1時間当たり2.5カラム体積の割合でグルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT)のカラムを通って浸出させた。次いでこの溶出液を、その固形物含量がブリックス度73に達するまで回転蒸発器中で蒸発させた。
【0072】
この溶液の組成(w/w%)は、グルコース25.92%、ガラクトース35.11%、フルクトース6.94%、グルコン酸2.56%、およびオリゴ糖/二糖2.46%であり、またブリックス度73であった。これは、乾燥重量ベースでグルコース35.5%、ガラクトース48.1%、フルクトース9.5%、グルコン酸3.5%、およびオリゴ糖/二糖3.4%の糖組成物に相当した。
【0073】
この溶液を室温(20℃)まで冷却するに任せた。2時間後、結晶が現れ始めた。3日間放置した後、結晶は元の糖類の約24%の量に達し、これを濾過し、他のシラップとの混合用に保存した。この上澄みのシラップの組成(w/w%)は、グルコース23.17%、ガラクトース25.60%、フルクトース5.93%、グルコン酸2.41%、およびオリゴ糖/二糖3.28%であり、これは乾燥重量ベースでグルコース38.37%、ガラクトース42.39%、フルクトース9.82%、グルコン酸3.99%、およびオリゴ糖/二糖5.43%の糖組成物に相当した。この結晶の組成はガラクトースの約89%であった。
【0074】
実施例5
ラクトース水和物(BDH、30g)を蒸留水150gに溶解し、90℃に加熱し、次いで水素の形態の陽イオン交換樹脂(Dowex 50−X8)のカラムを90℃で1時間当たり0.15カラム体積で下方へ浸出させた。このカラムからの加水分解したシラップの発生を屈折計法でモニターし、溶出液をその糖組成について分析した。全体の糖濃度は16.17%であり、グルコース濃度は6.88%であった。
【0075】
この加水分解したシラップを炭酸マグネシウムでpH 7.5に調整した。このシラップを60℃に加熱し、次いで固定化グルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT)のカラムを60℃かつ1時間当たり0.3カラム体積の割合で下方へ浸出させた。次いでこの異性化したシラップを直ちに60℃で活性炭(Norit GAC 1240)のカラムを通過させた。
【0076】
次いでこのシラップ(120mL)を60℃のpHスタット中に置いた。フラスコの温度を55℃に上げ、この溶液を酸素でスパージした。グルコースオキシダーゼ(Enzidase GO 1500、0.033mL)とカタラーゼ(Catazyme 25L、0.133mL)を加えた。この実施中、2回の更なるCatazymeの添加(0.033mL )を行って速やかな酸化速度を維持した。pHを10M水酸化ナトリウムの添加により 6.8と7.2の間に保った。全体で75%のグルコースのグルコン酸転化に相当するアルカリ1.52mLを加えた。
【0077】
最終のシラップをHPLCによりグルコース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、およびグルコン酸について分析した。この溶液の組成(w/w%)は、グルコースの0.90%、ガラクトース6.7%、フルクトースの1.89%、オリゴ糖/二糖2.59%、およびグルコン酸2.71%であり、またブリックス度14.8であった。これは、乾燥重量ベースでグルコース6.1%、ガラクトース45.3%、フルクトースの12.8%、グルコン酸の18.3%、およびオリゴ糖/二糖17.5%の糖組成物に相当した。
【0078】
実施例6
乳透過液をミルクの限外濾過により得た。その組成はラクトース3.37%、灰分0.47%
【0079】
、カルシウム0.013%であった。乳透過液(1 kg)をカリウム形態の湿潤陽イオン交換樹脂(Dowex 50−X8)200mLと共に30分間攪拌した。樹脂を沈降させ、濾紙(Whatman 541)を通してこの乳透過液をデカントした。この処理後の溶液のカルシウム含量は検知できなかった。若干の希釈が起こり、ラクトース濃度は3.06%に低下した。この酸性溶液を水酸化カリウム(0.1M)でpH 5に調整した。次いでFungal Lactase(1g)により50℃で18時間加水分解した。pHを時々調べ、5に保った。加水分解後、ラクトース濃度は0.13%に低下し、またグルコース濃度は1.53%であった。次いでこの溶液をAおよびBの二つに分けた。
【0080】
A半分を55℃に上げ、酸素で激しくスパージした。グルコースオキシダーゼ(Novozyme 37007、0.1%)とカタラーゼ(Catazyme 25L、1.0mL)を加え、pHをモニターした。pHが4.5に達したら炭酸カルシウムを加えてpHを5.2に上げた。次いでpHを連続的にモニターすること、および1.6gの炭酸カルシウムが加えられるまで炭酸カルシウムを加えることにより、このpHを4.5と5.2の間に保った。この時点で実質的にすべてのグルコースがグルコン酸へ酸化された。酸素流を止め、溶液を冷却し、濾過(Whatman No 4)してタンパク質様の沈降物を除去した。
【0081】
B半分を60℃に上げ、グルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT、5g)を加え、オーバーヘッドスターラーで穏やかに攪拌することにより懸濁状態を保った。インキュベーションを2.5時間続け、次いでこの溶液を冷却し、Sweetzymeを沈降させた。濾紙(Whatman No 4)を通して沈降した酵素から上澄み液をデカントした。
【0082】
AおよびBの両部分をオリゴ糖/二糖、ガラクトース、グルコース、フルクトース、およびグルコン酸について分析し、次いでこれら溶液を混合した。生成物の組成(w/w%)は、グルコースの0.63%、ガラクトースの1.43%、フルクトースの0.17%、オリゴ糖/二糖の0.13%、およびグルコン酸0.74%であり、またブリックス度3.1であった。これは、乾燥重量ベースでグルコース20.3%、ガラクトース46.1%、フルクトース5.5%、グルコン酸23.9%、およびオリゴ糖/二糖4.2%の糖組成物に相当した。
【0083】
実施例7
Wyndaleブランドの精製した食用ラクターゼ(1000 kg)を、クエン酸カリウム2.5 kgおよび塩化マグネシウム2.5 kgと共に脱塩水に溶解し、加熱して75℃で20%TS溶液を形成した。この溶液をリン酸水素二カリウムでpH 7.2に調整し、46℃まで冷却した。酵素Maxilact L2000(18.8 kg)を加え、この溶液を12時間インキュベートした。
【0084】
次いで槽中に酸素を10 L/分でスパージし、Enzidase GO 1500を250g、その上にCatazyme 25Lを50mL加えた。 NaOHを50%溶液として加えてpH 6.2に保った。酸化の間、槽を1時間当たり10℃で加熱し、次いで55℃に保った。
【0085】
次いで60℃で出て行くこの反応混合物を40%TSまで蒸発し、次いでSweetzyme 13.3 kg を入れたカラム、次いで1μmセキュリティフィルターを通して3.3 L/分で送った。このシラップを80℃で13秒間熱処理し、ブリックス度72まで蒸発した。
【0086】
最終のシラップをHPLCによりグルコース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、およびグルコン酸について分析した。この糖の組成は、グルコース28.2%、ガラクトース47.4%、フルクトースの17.6%、オリゴ糖/二糖3.6%、およびグルコン酸3.3%であった。
【0087】
実施例8
次の配合表に従ってスポーツ飲料を調製した(1杯分500mL当たり)。
実施例7で調製したシラップ 35g
塩化ナトリウム 0.2g
クエン酸 0.2g
オレンジ‐レモン香味料 0.5g
アスコルビン酸 0.2g
水 464g
この飲料を調合し、次いで80℃で30秒間熱処理し、80℃で330mLペットボトルに加熱充填した。
【0088】
この飲料は、
ガラクトース 2.4%
グルコース 1.4%
フルクトース 0.9%
二糖/オリゴ糖 0.2%
グルコン酸 5ミリモル/L
クエン酸 2ミリモル/L
アスコルビン酸 2ミリモル/L
ナトリウム 13ミリモル/L
カリウム 4ミリモル/L
マグネシウム 1ミリモル/L
塩化物 7ミリモル/L
リン 1ミリモル/L
を含有した。
この飲料は、pH 3.9および浸透圧モル濃度170ミリオスモル/kgと測定された。この飲料は、きわめてわずか乳白色を有し、室温に放置した場合に安定であった。この飲料は、認識できる塩からさの背景のまったくない甘味とさっぱりした酸味との非常によいバランスのさっぱりしたさわやかな香味を有した。被験者は、運動の前に1人分330mLを簡単に飲み尽くし、この飲料が非常に口に合い、その後の激しい運動でさえ胃の不快感を少しも与えなかったと報告しており、水とグルコースを主成分とする代替品と比較して疲労の徴候を減らす結果となった。
【0089】
実施例9
次の配合表に従ってスポーツエネルギーバーを調製した(1個分100g当たり)。
実施例7で調製したシラップ 20.0g
レンネットカゼイン 17.0g
乳タンパク質濃縮物 6.2g
ホエータンパク質分離物 2.2g
乳脂 8.9g
ローカストビーンガム 0.13g
リン酸二ナトリウム二水和物 1.60g
クエン酸 0.68g
アンズ片 11.5g
アンズ香味料 0.40g
水 31.4g
このバーは100g当たり、
タンパク質 21.6g
脂肪 8.9g
炭水化物 20.2g
エネルギー 1039 kJ
を与えると算定された。
このバーは、柔らかく噛みでのある歯ごたえと甘い果物に似た香味を有した。消費者の審査員団はこれを非常に口に合いかつ食べるのに申し分のないものと評価した。
【0090】
本発明は上記実施例のみに限定するものではなく、熟練従業者には容易に分かるように添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの変形例が可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のプロセスの概略図である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類の混合物を含む炭水化物の組成物を製造する方法、具体的には専らシラップとしてのみではないが出発材料のラクトースから炭水化物の組成物を製造する方法に関する。本発明はまた、本発明の方法によって製造される組成物ならびにこれら組成物を含有する食物および飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトース、グルコース、ガラクトース、フルクトースなどの糖類の混合物を含む炭水化物の組成物は、市販用の食物および飲料の製造において食物および飲料の添加物として有用である。例えばガラクトースを約40〜50%、フルクトースを約25〜30%、およびグルコースを約25〜30%含む組成物は、スポーツマン向け、菓子店向け、または糖尿病患者などの特殊な食物を必要とする人々向けのスポーツ飲料類およびエネルギースナック類の製造に有用である(欧州特許公開第0499165号)。
【0003】
このような組成物を製造するための周知の方法には、必要な量の個々の精製した糖を単純に混ぜる方法がある。しかしながらそれらの純粋な形態の糖はかなり高価であるかも知れず、また純度、したがって各糖の品質が供給先ごとに変わる可能性があり、結果として最終組成物の変動の原因となる。
【0004】
他の周知の方法には、1種類または複数種類の酵素で或る糖を別の糖に転化し、それによって少なくとも2種類の糖の混合物を生成する方法がある。次いで追加の糖類を精製した供給源から加えて所望の組成物を完成することができる。
【0005】
例えば米国特許第3,852,496号は、固定化したβガラクトシダーゼ(ラクターゼ)とグルコースイソメラーゼを用いてラクトースを含有するホエーから甘味組成物を製造する方法を記載している。ラクトースは、固定化ラクターゼを含有するフロースルーカラムを通過してグルコース、ガラクトース、および未加水分解ラクトースを生成する。この組成物を直接使用するか、またはグルコースイソメラーゼで処理してフルクトース、グルコース、ガラクトース、およびラクトースを含有する組成物を製造する。
【0006】
Poutanen等(1978)は、固定化酵素技術を用いたグルコースイソメラーゼ処理により、加水分解したホエーとラクトースシラップ中でのグルコースのフルクトースへの転化について記載している。この方法の効率を高める目的で、フルクトースの相対含有量を高める、したがって得られる組成物の甘味を高めるために異性化反応に先立ってグルコースの精製した供給源をこの加水分解したラクトースシラップに加えた。
【0007】
ChiuおよびKoskowaski(1985)は、ホエーラクトースの加水分解、続いて追加されたグルコースに関するグルコース異性化反応、およびその後のフルクトースシラップの精製について記載している。
【0008】
HarjuおよびKruela(1980)は、糖類の混合物を製造するためのホエーラクトースの加水分解について記載し、これにより加水分解が80%完了する極限まで甘味を増加させる。このレベルを超える更なる加水分解は、甘味を増加させず、加水分解のコストを著しく増加させる。更に甘味を増すにはグルコースを異性化してフルクトースにする。
【0009】
上記従来技術の方法は、主として極限の甘味を有する炭水化物の組成物を得る方法に関する。ガラクトースは殊更甘くない炭水化物であり、したがってこれら従来技術による組成物の望ましい成分ではない。
【0010】
ガラクトースは、容易かつ迅速に吸収されて急速なエネルギー源および肝臓中のグリコーゲン予備の補給の促進を可能にするのでスポーツ飲料などに有用な組成物の特に望ましい成分である(米国特許第5,780,094号)。不幸にして現在ではガラクトース源を大規模な一般消費者向け製品用に充分な工業的な量で入手できないので、純粋なガラクトースを簡単に従来技術による組成物に添加することはできない。更に、たとえ充分な量が入手できたとしても、そのようなガラクトースはひどく高価であり、スクロースなど市販のスポーツ飲料に使用される通常の安価なエネルギー源と競争することができなかった。これは、グルコース、アラビノース、マンノース、フルクトースなどの一緒に天然に産出する他の糖類からガラクトースを分離することが困難なためである。最も一般的なガラクトース源は、ミルク由来のもの、または側鎖として存在し、複雑な分離工程を必要とするペクチン由来のものである。高価な中間体および最終製品の収率の低下が起こり、その結果このような分離工程を工業化という視点から現実味のないものにすることもまた、分離工程についての共通の問題である。
【0011】
【非特許文献1】Poutanen K; Linko Y; Linko P., Treatment of hydrolyzed whey lactose syrup with immobilized glucose isomerase for increased sweetness, 1978; Milchwissenschaft, 33(7)435−438.
【非特許文献2】Chiu CP, Kosikowaski FV, Conversation of glucose in lactoase-hydrolyzed whey permeate to fructose with immobilized glucose isomerase, Dairy Sci., 1985:69:959−964
【非特許文献3】Harju M, Kruela M., Lactose hydrolysates., Valio Finnish Cooperative Dairies Association, 1980;233−242.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ガラクトースを含めた糖類の混合物を含む組成物の製造方法を提供すること、および/または前述の問題を少なくとも或る程度まで克服し、かつ/もしくは有用な選択の自由を一般の人々に提供する精製ガラクトースを製造するための安価で便利な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、存在する全炭水化物の%としてガラクトースの約10〜50%、グルコースの0〜48%、フルクトースの1〜25%、グルコン酸の1〜48%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖を含む「その他」0〜25%の混合物を含む組成物の製造方法を提供する。好ましくはこの組成物は、ガラクトース30〜50%、グルコースの10〜40%、フルクトース5〜25%、グルコン酸の1〜15%、および「その他」1〜10%を含む。最も好ましくはこの組成物は、ガラクトース45〜50%、グルコース23〜33%、フルクトースの15〜23%、グルコン酸の1〜5%、および「その他」7%未満を含む。
【0014】
第一の実施形態において本発明は、精製の工程を必要とせずに、ガラクトースと、グルコースと、フルクトースと、グルコン酸と、未転化ラクトースと、非ラクトース二糖およびオリゴ糖との混合物を含む組成物を製造するための、
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程、
(ii)このグルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、および
(iii)このグルコースを部分酸化してグルコン酸にする工程
を含む方法を提供する。
この方法は、連続、半連続、バッチ、シーケンスバッチ、または単一ポットのプロセスとして行うことができる。
【0015】
異性化の工程(ii)は、酸化の工程(iii)の前または後のいずれでも行うことができる。
【0016】
加水分解の工程(i)および酸化の工程(iii)は、同時に行うこともできる。
別法では、工程(i)の生成物を3つの流れに分け、第一の流れは更に処理せず、第二および第三の流れはそれぞれ工程(ii)または(iii)に従って処理し、各流れの生成物を合わせて本発明による最終組成物を得ることもできる。
【0017】
第二の実施形態において本発明は、ガラクトースと、グルコースと、フルクトースと、グルコン酸と、未転化ラクトースと、非ラクトース二糖およびオリゴ糖との混合物を含む、この方法により製造される組成物を提供する。この希釈していない組成物は、一般にブリックス度40〜80のシラップの形態であるが、これは任意の所望濃度に希釈することができる。
【0018】
この組成物は、ガラクトースの約10〜50%、グルコースの0〜48%、フルクトースの1〜25%、グルコン酸の1〜48%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖を含む「その他」0〜25%の混合物を含む。好ましくはこの組成物は、ガラクトース30〜50%、グルコースの10〜40%、フルクトース5〜25%、グルコン酸の1〜15%、および「その他」1〜10%を含む。最も好ましくはこの組成物は、ガラクトース45〜50%、グルコース23〜33%、フルクトースの15〜23%、グルコン酸の1〜5%、および「その他」7%未満を含む。
【0019】
第三の実施形態において本発明は、本発明の組成物を含有する食物および飲料、特にスポーツエネルギーバーまたは1リットル当たり25ミリモル未満のナトリウムを含有するスポーツ飲料を提供する。
【0020】
第四の実施形態において本発明は、
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程、
(ii)このグルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、
(iii)このグルコースを部分酸化してグルコン酸にする工程、
(iv)ガラクトースを結晶化して母液を生成する工程、および
(v)この母液からガラクトースの結晶を回収する工程
を含むガラクトースの製造方法を提供する。
第五の実施形態において本発明は、本発明の方法により製造されたガラクトースを提供する。
【0021】
第六の実施形態において本発明は、本発明の方法により製造された母液を含む組成物、および食品業界、特に乳製品業界における甘味料としてのその使用法を提供する。
【0022】
次に本発明を添付図面の図を参照して説明することにする。
本発明は、出発材料としてのラクトースから、ガラクトース、グルコース、フルクトース、グルコン酸、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖の混合物を含む組成物を製造する方法に関する。このような組成物は、運動の前、間、または後の容易に吸収可能なエネルギー源としてのスポーツ飲料およびスポーツバーの調製に特に有用である。ガラクトースはこの点で特に有用であり、本発明はまたガラクトースの製造方法に関する。
【0023】
第一の実施形態において本発明は、精製の工程を必要とせずに、ガラクトースと、グルコースと、フルクトースと、グルコン酸と、未転化ラクトースと、非ラクトース二糖およびオリゴ糖との混合物を含む組成物を製造するための、
【0024】
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程、
(ii)このグルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、および
(iii)このグルコース部分酸化してグルコン酸にする工程
を含む工程を提供する。この工程を図1に図式的に示す。
この工程は、連続、半連続、バッチ、シーケンスバッチ、または単一ポットのプロセスとして行うことができる。
【0025】
異性化の工程(ii)は、酸化の工程(iii)の前または後のいずれでも行うことができる。
【0026】
加水分解の工程(i)および酸化の工程(iii)は、同時に行うこともできる。
別法では、工程(i)の生成物を3つの流れに分け、第一の流れは更に処理せず、第二および第三の流れはそれぞれ工程(ii)または(iii)に従って処理し、各流れの生成物を合わせて本発明による最終組成物を得ることもできる。
【0027】
別法では、部分異性化の工程(ii)の生成物を分け、一部を部分酸化(工程(iii))にかけ、残部をこの部分酸化工程の生成物と合わせて本発明の組成物を製造することもできる。
【0028】
別法では、部分酸化の工程(iii)の生成物を分け、一部を部分異性化(工程(ii))にかけ、残部をこの部分異性化の工程の生成物と合わせて本発明の組成物を製造することもできる。
【0029】
好ましくはこの工程は、加水分解の工程(i)、続いて部分酸化の工程(iii)を含み、この流れの大部分(例えば85%)を部分異性化の工程(ii)によって更に処理し、この流れの残りの部分(バイパス)を工程(ii)の生成物と合わせて所望のフルクトース含量を有する本発明の組成物を製造する。
【0030】
ラクトース源は、ミルク、あるいは全乳、脱脂乳、ホエー、または乳清から得られるUF透過液、あるいは純粋なラクトース、あるいはホエー、あるいは除タンパクホエー、あるいは脱塩ホエー、あるいは脱灰ホエー、あるいは除タンパク、脱塩、または脱灰ホエーから得られるUF透過液、あるいはそれらの任意の組合せを含む群から選択することができる。
【0031】
加水分解の工程(i)は、酸、強陽イオン交換樹脂の使用を含めて化学的に達成するか、あるいは1種類もしくは複数種類の加水分解酵素を用いて酵素の働きにより達成するか、あるいはバイオリアクター中で達成することができる。
【0032】
これらの酸は、塩酸、硫酸、リン酸、もしくは硝酸などの強鉱酸、および/またはクエン酸などの有機酸から選択される1種類もしくは複数種類の酸の弱溶液(ラクトースの全重量の0.001〜0.1%)を含むことができる。
【0033】
加水分解酵素(βガラクトシダーゼ、またラクターゼとしても知られる)は、遊離でも固定化されてもよく、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces marxianus、Saccharomyces fragilis、Streptococcus thermophilus、Aspergillus oryzae、Aspergillus niger、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus helviticus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Streptococcus lactis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium breve、Bacillus subtilis、Escherichia coli、Sulfolobusの種(特にSulfolobus solfataricus)、Pyrococcus fusiosus、熟していないコーヒー豆、ナタマメ、ウシの肝臓、ウシの精巣、および単独または組合せのいずれかの任意の他の好適な供給源から入手することができる。
【0034】
熟練者には分かっているように、また製造業者の手引書中に述べられているように、加水分解反応混合物をその酵素源、その活性、温度とpHの最適条件、および出発材料の量に従って適切な条件下に保つ。Kluyveromycesから得られる酵素の場合、反応混合物を必要に応じて酸またはアルカリ(例えば、NaOH、KOH、HCl、KHPO、KH PO、クエン酸カリウムまたはナトリウム、炭酸マグネシウム、硫酸、クエン酸、またはこれらの混合物)を用いてpH 6.8〜7.5、好ましくは7.1〜7.3、最も好ましくは7.2に、かつ40〜50℃に約8時間保つ。Aspergillusから得られる酵素の場合、反応混合物をpH 3.5〜7.5、好ましくは4.5〜7.0に、かつ40〜60℃に保つ。
【0035】
異性化の工程(ii)は化学的または酵素により達成することができる。酵素を使用する場合、そのようなグルコースイソメラーゼ酵素は遊離でも固定化されてもよく、Actinoplanes missiourensis、Bacillus coagulans、Streptomyces murinus、Escherichia coli、およびArthrobacterの種から入手することができる。この場合もまた反応条件はその酵素源次第であり、製造業者の助言に従うことができる。一般に好ましい条件は、高濃度のフルクトースコーンシロップの工業的製造において、デンプンから得られるデキストロースをフルクトース/デキストロース混合物に転化する場合に用いられる条件と同様である。本発明の場合、一般的な条件は55〜62℃および0.5〜5カラム体積/時である。
【0036】
この工程は膜バイオリアクター中で行うことができる。好ましくはこの工程はカラム形式で固定化酵素を用いて行われた。
【0037】
スポーツ飲料およびスポーツ食品については多くの場合一般に比較的低いグリセミック指数を有することが望ましく、したがってこのような飲料および食品を配合する場合、グルコース以外の糖類または小腸でグルコースに転化することができる糖類が存在することが重要である。例えばガラクトースは、スポーツ飲料または食品バー中のグリセミック指数を下げるように作用する。高度グリセミックなグルコースをグルコン酸にする酸化の工程(iii)を通じて更なるグリセミック指数の低下を実現することが本発明の基本的な特徴である。これは、味感を変えるのに必要な酸味料を提供することと、そのような食品および飲料の品質を保つことを同時に達成する。
【0038】
この酸化の工程(iii)は化学的または酵素の働きにより達成することができる。酵素転化の工程は2種類の酵素、グルコースオキシダーゼとカタラーゼを必要とする。これらの酵素は、混合した活性製品または別々の製品として購入することができる。両方の酵素を反応混合物に別々に加えることも混合製品として一緒に加えることもでき、または混合製品中の活性は一方または両方の別々の製品を加えることにより補うこともできる。このような酵素は遊離でも固定化されてもよい。酸化酵素は、Penicillium notatum、Penicilliumglaucanum、Penicillium amagosakiense、およびAspergillus nigerから入手することができる。カタラーゼ酵素は、Aspergillus niger、Penicilliumの種(上記オキシダーゼの場合と同様)、およびMicrococcus lysodeikitcusから入手することができる。これら反応条件は、酵素源、その活性、反応物の量などに左右され、製造業者の手引書に従うことができる。一般に反応は、空気/酸素と接触させながら45〜60℃、好ましくは55〜58℃で2〜4時間行われる。反応混合物のpHは、塩基を加えることによって約4.5〜6.5、好ましくは5.6に保つ。別法ではこの酸化の工程(iii)は膜バイオリアクター中で行うこともできる。この工程はまた、米国特許第4,345,031号に記載のように高圧酸素条件下で行うこともできる。
【0039】
この酸化の工程は反応混合物中に存在するグルコースの一部をグルコン酸に転化する。グルコン酸は、幾つかの理由で本発明の組成物の特に望ましい成分であると考えられる。第一に、さきに考察したようにその組成物中に存在するグルコースの量を減らすことによって組成物のグリセミック指数を下げる。第二に、グルコン酸の酸度はスポーツ飲料用途にとって望ましく、また第三に、存在するグルコン酸はナトリウムの風味を隠すのを助けるので組成物、およびその後の希釈したスポーツ飲料の風味を改良するように作用する。
【0040】
加水分解の工程(i)と酸化の工程(iii)は、熟練した従業員ならば分かるように条件が許す場合、例えばpHを制御するために用いられる薬品が加水分解と両立できる場合は同時に行うことができる。
【0041】
本発明の方法はまた、熟練者ならば分かるようにこの方法によって製造されるシラップの精製のために濾過、イオン交換、および炭素による複数の任意選択の精製の工程を含んでもよい。この方法はまた、その方法の全体の効率を改善するために周期的に行われるpH調整を含むこともできる。
【0042】
この方法によって製造される組成物は、存在する最終炭水化物の%としてガラクトースの約10〜50%、グルコースの0〜48%、フルクトースの1〜25%、グルコン酸の1〜48%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖を含む「その他」0〜25%の混合物を含む。好ましくはこの組成物は、ガラクトース30〜50%、グルコースの10〜40%、フルクトース5〜25%、グルコン酸の1〜15%、および「その他」1〜10%を含む。最も好ましくはこの組成物は、ガラクトース45〜50%、グルコース23〜33%、フルクトースの15〜23%、グルコン酸の1〜5%、および「その他」7%未満を含む。
【0043】
未転化ラクトースとともに非ラクトース二糖およびオリゴ糖(「その他」)は、この組成物の全炭水化物含有量の約5%を構成する。この「その他」成分はビフィズス菌生成材料を含み、スポーツ飲料、スポーツバー、ならびにこの組成物が加えられる他の食品および飲料において有益な健康効果を有することがある。更にこの「その他」成分は、幾らかの発熱量を提供することができる。理論に縛られないが、これら二糖およびオリゴ糖は上部胃腸管で吸着されるとは思わないけれども、それらは短鎖脂肪酸に転化され、結腸で吸着されてエネルギー源を提供することはありそうである。これはまた、この「その他」成分、特に非ラクトース二糖およびオリゴ糖成分がすべての糖類を溶液状態に保つように作用するか、またはある程度まで結晶化を妨げるように作用する点で本発明の濃縮したシラップの利点である。
【0044】
本発明の方法により製造した組成物は、一般にブリックス度約5のシラップの形態である。この組成物は、更なる希釈なしに直接スポーツ飲料に使用することができる。しかしながら好ましくは本発明の方法により製造されるこの組成物は、ブリックス度40〜80、より好ましくはブリックス度70〜75の濃縮したシラップの形態である。この組成物は、1回または複数回の蒸発の工程により濃縮される。具体的には、工程(i)を単独で行うかまたは工程(iii)と組み合わせる場合、この工程は希釈条件、すなわち水>75%〜95%(または全固形物含量5〜25%)のもと、および工程(ii)に先立って行う熱による蒸発の工程のもとで行って全固形物を40〜60%まで増加させる。もし望むなら更にこのシラップを、例えば蒸発器中で乾燥することもできる。
【0045】
好ましくはこの組成物は、濃縮したシラップの形態であり、スポーツ飲料およびスポーツバーの中に添加剤として加えることができる。一般には2.5〜2.7%のシラップ固形物を水およびフレーバーなどの他の成分に加えてスポーツ飲料を製造する。本発明の方法の主な利点は、任意の所望の組成の最終のシラップを製造するために変えることができるその工程工程の柔軟性である。しかしながら本発明の組成物を用いて作られるスポーツ飲料は、常に25ミリモル/リットル未満のナトリウム含有量を有し、したがって米国特許第5,780,094号に記載のスポーツ飲料から区別される。
【0046】
本発明のシラップに関連する一つの問題は、シラップの濃度に応じて−10℃から+30℃の範囲の温度でガラクトース成分が結晶化する傾向のあることである。したがって結晶化を避けるにはシラップをこの範囲外の温度に保たなければならない。いったんその濃縮したシラップを希釈してスポーツ飲料にしてしまったらこれは問題ではない。前述のように組成物の「その他」成分中のガラクトオリゴ糖類の存在は、結晶化を妨げるように作用すると考えられるが、詳細にはガラクトースの結晶化は上記温度範囲を越えてなお起こる可能性がある。
【0047】
しかしながらさきに考察したように純粋なガラクトース源は商取引上の大量の品物として容易に入手できず、本発明の更なる実施形態は、
【0048】
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程、
(ii)このグルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、
(iii)このグルコース部分酸化してグルコン酸にする工程、および
(iv)蒸発および/または冷却によりガラクトースを結晶化して母液を生成する工程、および
【0049】
(v)この母液からガラクトース結晶を回収する工程、
を含むガラクトースの製造方法を提供する。
この方法の工程(i)、(ii)、および(iii)は前述と同一であり、前述の順序およびやり方で行うことができる。工程(iv)は本発明のシラップを−10℃から+30℃、好ましくは4℃から20℃の範囲の温度まで冷却することによって行うことができ、それによって純粋なガラクトースの結晶が始まる。ガラクトースは、低温であるほど効率的に溶液から結晶化する。好ましい条件は48時間までは4℃である。次いでこの結晶を、遠心分離または濾過と、氷に近い冷水による洗浄とによる工程(v)で回収し、このガラクトースを流動床乾燥装置を用いて空気乾燥することができる。この工程は、本発明のシラップ組成物中に存在するガラクトースの約50%を結晶化するのに効果的である。例えばシラップが炭水化物の48%をガラクトースとして含有する場合、このうち約24〜32%がガラクトースとして結晶化することになる。この工程は、ガラクトースの小規模または大規模な製造に使用することができる。
【0050】
結晶化の効率には、上記のようにシラップの濃度と温度が、また存在する糖類の複雑さが影響する。シラップ中に存在する炭水化物が複雑であればあるほど結晶化は妨げられる。具体的には、存在する「その他」成分が多ければ多いほど結晶化は妨げられる。シラップの濃度が高ければ高いほど恐らく結晶化は起こるであろう。例えば、高度に濃縮したシラップ(例えばブリックス度80)は−10℃から70℃の間の温度で結晶化する可能性がある。このような高度に濃縮したシラップは、熟練従業員ならば分かるように結晶化を避けるにはこの範囲外の温度に保たなければならない。
【0051】
この上澄み液(または母液)は、全炭水化物重量を基準にしてフルクトース20%、グルコース40%、グルコン酸5%、ガラクトース30%、およびその他5%を含み、除去されたガラクトースは残っている炭水化物混合物よりも甘くないので、この上澄み液は工程(i)、(ii)、および(iii)によって製造される組成物よりも甘い。
【0052】
したがって「母液」組成物は、食品業界における甘味料として有用であり、特にこれは乳製品源すなわちラクトースから製造されるのでヨーグルト、ムース、アイスクリーム、クリーム、加糖乳飲料などの乳製品の甘味料として有用である。
【0053】
この「母液」は、ガラクトースの含有量がより少なく、「その他」成分に富み、したがって結晶化の傾向が少ないので、第一の実施形態の工程によって製造されるシラップよりも安定である。
【0054】
この「母液」は、熟練従業員ならば分かるように工程工程(i)、(ii)、および/または(iii)、あるいはこれらの任意の組合せにかけてその組成を更に変えることができる。
【0055】
本発明の方法により製造される精製したガラクトースを本発明の組成物に加えてガラクトース含量を高めることができ、これはスポーツ飲料またはスポーツバーに使用するすぐれたシラップを提供することになる。具体的には、純粋なガラクトースを本発明の組成物に加えて所望レベルまでガラクトース含量を高めることができる。
【0056】
次に本発明を例示することにする。
【実施例】
【0057】
実施例1
ラクトース一水和物(BDH、45g)を水道水255gに溶解した。この溶液のpHをクエン酸でpH 5に調整した。そのフラスコを湯浴中で50℃に加熱し、攪拌しながらラクターゼ(Zymus International, New Zealandから入手可能なEnzidase Fungal Lactase 50,000、0.90g)を加えた。加水分解を50℃で24時間進行させた。次いでこの溶液を冷却し、グルコースについて分析した。グルコース濃度は7.1%であった。
【0058】
次いでこの溶液を2つの部分、A の200gおよびB の100gに分割した。フラスコ中でB部分に炭酸カルシウム(1.94g)と、グルコースオキシダーゼ(Fermizyme 1500、0.1g)およびカタラーゼ(Catazyme 25L、0.1g)とを加え、機械式ふりまぜ機により50℃の湯浴中で4時間激しく振とうした。
【0059】
A部分をフラスコに入れ、60℃に加熱した。グルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT、2g)を加え、振とう式インキュベーター中で60℃で穏やか振とうすることにより懸濁状態を保った。2時間後にSweetzyme を沈降させ、濾紙(Whatman 541)を通して上澄み液をこの沈降した酵素からデカントした。
【0060】
両方の部分、AおよびBをラクトース、ガラクトース、およびグルコースについて分析し、次いでこれら溶液を混合した。生成物の組成(w/w)は、グルコース4.56%、ガラクトース7.01%、フルクトースの1.37%、オリゴ糖/二糖の0.42%、およびグルコン酸の1.1%であり、またブリックス度14.5であった。これは、乾燥重量ベースでグルコース31.5%、ガラクトース48.5%、フルクトース9.5%、グルコン酸7.6%、およびオリゴ糖/二糖2.9%の糖組成物に相当した。
【0061】
実施例2
乳透過液を脱脂乳の限外濾過により得て、その組成はラクトース4.6%、灰分0.47%、pH 6.5であった。乳透過液(1 kg)をフラスコに入れ、炭酸マグネシウム(0.1g)でpH 7.2に調整した。このフラスコを湯浴中で40℃に加熱し、穏やかに攪拌した。ラクターゼ(Maxilact L2000、1.25g)を加え、40℃で4時間インキュベートした。間隔を置いて乳透過液のpHを測定し、1M HCl(全体で1.25mL)を加えることにより7.4から7.2に保った。4時間後、乳透過液のアリコートをグルコース分析用に抜き取った。そのグルコース含量は2.0%であった。
【0062】
次いでこの乳透過液を55℃に加熱し、空気流で激しく曝気した。グルコースオキシダーゼ(FermizymegO 4000 L、0.1mL)とカタラーゼ(Catazyme 25L、1.0mL)を加え、pHをモニターした。pHが4.5に達したら炭酸マグネシウムを加えてpHを5.2に上昇させた。次いで3.41gの炭酸マグネシウムが加えられるまでpH のモニターと炭酸マグネシウムの添加を続けることによってpHを4.5と5.2の間に保った。空気流を止め、フラスコの温度を60℃に上げた。
【0063】
炭酸マグネシウムの添加によりこの溶液のpHを7.5に上昇させた。次いでグルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT、10g)を加え、オーバーヘッドスターラーで穏やかに攪拌することにより懸濁状態を保ち、2時間インキュベートした。次いでこの溶液を冷却し、Sweetzymeを沈降させた。濾紙(Whatman 541)を通して上澄み液をこの沈降した酵素からデカントした。
【0064】
この溶液をHPLCによりグルコース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、およびグルコン酸について分析した。溶液の組成(w/w%)は、グルコースの0.70%、ガラクトースの1.78%、フルクトースの0.47%、オリゴ糖/二糖の0.64%、およびグルコン酸の1.05%であり、またブリックス度4.6であった。これは、乾燥重量ベースでグルコースの15.0%、ガラクトース38.4%、フルクトースの10.1%、グルコン酸22.6%、およびオリゴ糖/二糖13.7%の糖組成物に相当した。
【0065】
実施例3
全乳の限外濾過により得られ、ラクトース4.6%、灰分0.47%を含む乳透過液(1 kg)中にラクトース水和物(BDH、50g)を溶解した。リン酸水素二カリウム(32g)の添加によりこの溶液のpHを8.0に上昇させた。この溶液を50℃に加熱し、この温度を15分間保った。次いでこれを冷却し、遠心分離した。
【0066】
上澄み液をpH 7.2に調整し、ラクターゼ(Lactozyme 3000L、2.5g)を加えた。温度を45℃に上げ、加水分解を6時間進行させた。この溶液をグルコースについて分析した。そのグルコース濃度は5.13%であった。
【0067】
次いで温度を60℃に上げ、塩化マグネシウム六水和物(0.5g)とグルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT、10g)を加え、オーバーヘッドスターラーで穏やかに攪拌することにより懸濁状態を保った。インキュベーションを2.5時間続け、次いでこの溶液を冷却し、Sweetzyme を沈降させた。濾紙(Whatman 541)を通して上澄み液をこの沈降した酵素からデカントした。
【0068】
この異性化した溶液を50℃に加熱し、酸素でスパージした。次いでグルコースオキシダーゼ(Enzidase GO 1500、0.25g)とカタラーゼ(Catazyme 25L、1.0g)を炭酸カルシウム3.5gと一緒に加え、酵素反応を7時間進行させた。この生成物の組成(w/w%)は、グルコースの0.04%、ガラクトース4.80%、フルクトースの1.77%、オリゴ糖/二糖の0.94%、およびグルコン酸4.86%であり、またブリックス度12.4であった。これは、乾燥重量ベースでグルコースの0.3%、ガラクトース38.7%、フルクトースの14.3%、グルコン酸39.2%、およびオリゴ糖/二糖7.7%の糖組成物に相当した。
【0069】
実施例4
Wyndaleの精製した食用ラクターゼ(200g)を脱イオン水(800g)に溶解し、クエン酸三カリウム0.1g、リン酸水素二カリウム0.03g、およびリン酸二水素カリウム0.12gで pH 7.2に調整した。この溶液の温度を湯浴中で45℃に上げ、ラクターゼ(Lactozyme 3000L、3.7g)を加えた。酵素加水分解を12時間継続させた。pHを時々調べ、リン酸水素二カリウムを加えてpHを7.0〜7.3に保った。12時間後にグルコース濃度を調べ、9.7%であることが分かった。
【0070】
このフラスコの温度を55℃に上げ、溶液を酸素でスパージした。グルコースオキシダーゼ(Enzidase GO 1500、0.56g)を加え、pHを5.2まで低下させ、次いで10M水酸化ナトリウムの添加によりこのpHを保った。溶液中のグルコースの7.0%がグルコン酸(3.6m L)に転化するまでアルカリを加え、次いで酸素流を止め、pHを7.5に上昇させた。
【0071】
この溶液を60℃に加熱し、次いで1時間当たり2.5カラム体積の割合でグルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT)のカラムを通って浸出させた。次いでこの溶出液を、その固形物含量がブリックス度73に達するまで回転蒸発器中で蒸発させた。
【0072】
この溶液の組成(w/w%)は、グルコース25.92%、ガラクトース35.11%、フルクトース6.94%、グルコン酸2.56%、およびオリゴ糖/二糖2.46%であり、またブリックス度73であった。これは、乾燥重量ベースでグルコース35.5%、ガラクトース48.1%、フルクトース9.5%、グルコン酸3.5%、およびオリゴ糖/二糖3.4%の糖組成物に相当した。
【0073】
この溶液を室温(20℃)まで冷却するに任せた。2時間後、結晶が現れ始めた。3日間放置した後、結晶は元の糖類の約24%の量に達し、これを濾過し、他のシラップとの混合用に保存した。この上澄みのシラップの組成(w/w%)は、グルコース23.17%、ガラクトース25.60%、フルクトース5.93%、グルコン酸2.41%、およびオリゴ糖/二糖3.28%であり、これは乾燥重量ベースでグルコース38.37%、ガラクトース42.39%、フルクトース9.82%、グルコン酸3.99%、およびオリゴ糖/二糖5.43%の糖組成物に相当した。この結晶の組成はガラクトースの約89%であった。
【0074】
実施例5
ラクトース水和物(BDH、30g)を蒸留水150gに溶解し、90℃に加熱し、次いで水素の形態の陽イオン交換樹脂(Dowex 50−X8)のカラムを90℃で1時間当たり0.15カラム体積で下方へ浸出させた。このカラムからの加水分解したシラップの発生を屈折計法でモニターし、溶出液をその糖組成について分析した。全体の糖濃度は16.17%であり、グルコース濃度は6.88%であった。
【0075】
この加水分解したシラップを炭酸マグネシウムでpH 7.5に調整した。このシラップを60℃に加熱し、次いで固定化グルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT)のカラムを60℃かつ1時間当たり0.3カラム体積の割合で下方へ浸出させた。次いでこの異性化したシラップを直ちに60℃で活性炭(Norit GAC 1240)のカラムを通過させた。
【0076】
次いでこのシラップ(120mL)を60℃のpHスタット中に置いた。フラスコの温度を55℃に上げ、この溶液を酸素でスパージした。グルコースオキシダーゼ(Enzidase GO 1500、0.033mL)とカタラーゼ(Catazyme 25L、0.133mL)を加えた。この実施中、2回の更なるCatazymeの添加(0.033mL )を行って速やかな酸化速度を維持した。pHを10M水酸化ナトリウムの添加により 6.8と7.2の間に保った。全体で75%のグルコースのグルコン酸転化に相当するアルカリ1.52mLを加えた。
【0077】
最終のシラップをHPLCによりグルコース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、およびグルコン酸について分析した。この溶液の組成(w/w%)は、グルコースの0.90%、ガラクトース6.7%、フルクトースの1.89%、オリゴ糖/二糖2.59%、およびグルコン酸2.71%であり、またブリックス度14.8であった。これは、乾燥重量ベースでグルコース6.1%、ガラクトース45.3%、フルクトースの12.8%、グルコン酸の18.3%、およびオリゴ糖/二糖17.5%の糖組成物に相当した。
【0078】
実施例6
乳透過液をミルクの限外濾過により得た。その組成はラクトース3.37%、灰分0.47%、カルシウム0.013%であった。乳透過液(1 kg)をカリウム形態の湿潤陽イオン交換樹脂(Dowex 50−X8)200mLと共に30分間攪拌した。樹脂を沈降させ、濾紙(Whatman 541)を通してこの乳透過液をデカントした。この処理後の溶液のカルシウム含量は検知できなかった。若干の希釈が起こり、ラクトース濃度は3.06%に低下した。この酸性溶液を水酸化カリウム(0.1M)でpH 5に調整した。次いでFungal Lactase(1g)により50℃で18時間加水分解した。pHを時々調べ、5に保った。加水分解後、ラクトース濃度は0.13%に低下し、またグルコース濃度は1.53%であった。次いでこの溶液をAおよびBの二つに分けた。
【0079】
A半分を55℃に上げ、酸素で激しくスパージした。グルコースオキシダーゼ(Novozyme 37007、0.1%)とカタラーゼ(Catazyme 25L、1.0mL)を加え、pHをモニターした。pHが4.5に達したら炭酸カルシウムを加えてpHを5.2に上げた。次いでpHを連続的にモニターすること、および1.6gの炭酸カルシウムが加えられるまで炭酸カルシウムを加えることにより、このpHを4.5と5.2の間に保った。この時点で実質的にすべてのグルコースがグルコン酸へ酸化された。酸素流を止め、溶液を冷却し、濾過(Whatman No 4)してタンパク質様の沈降物を除去した。
【0080】
B半分を60℃に上げ、グルコースイソメラーゼ(Sweetzyme IT、5g)を加え、オーバーヘッドスターラーで穏やかに攪拌することにより懸濁状態を保った。インキュベーションを2.5時間続け、次いでこの溶液を冷却し、Sweetzymeを沈降させた。濾紙(Whatman No 4)を通して沈降した酵素から上澄み液をデカントした。
【0081】
AおよびBの両部分をオリゴ糖/二糖、ガラクトース、グルコース、フルクトース、およびグルコン酸について分析し、次いでこれら溶液を混合した。生成物の組成(w/w%)は、グルコースの0.63%、ガラクトースの1.43%、フルクトースの0.17%、オリゴ糖/二糖の0.13%、およびグルコン酸0.74%であり、またブリックス度3.1であった。これは、乾燥重量ベースでグルコース20.3%、ガラクトース46.1%、フルクトース5.5%、グルコン酸23.9%、およびオリゴ糖/二糖4.2%の糖組成物に相当した。
【0082】
実施例7
Wyndaleブランドの精製した食用ラクターゼ(1000 kg)を、クエン酸カリウム2.5 kgおよび塩化マグネシウム2.5 kgと共に脱塩水に溶解し、加熱して75℃で20%TS溶液を形成した。この溶液をリン酸水素二カリウムでpH 7.2に調整し、46℃まで冷却した。酵素Maxilact L2000(18.8 kg)を加え、この溶液を12時間インキュベートした。
【0083】
次いで槽中に酸素を10 L/分でスパージし、Enzidase GO 1500を250g、その上にCatazyme 25Lを50mL加えた。 NaOHを50%溶液として加えてpH 6.2に保った。酸化の間、槽を1時間当たり10℃で加熱し、次いで55℃に保った。
【0084】
次いで60℃で出て行くこの反応混合物を40%TSまで蒸発し、次いでSweetzyme 13.3 kg を入れたカラム、次いで1μmセキュリティフィルターを通して3.3 L/分で送った。このシラップを80℃で13秒間熱処理し、ブリックス度72まで蒸発した。
【0085】
最終のシラップをHPLCによりグルコース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、およびグルコン酸について分析した。この糖の組成は、グルコース28.2%、ガラクトース47.4%、フルクトースの17.6%、オリゴ糖/二糖3.6%、およびグルコン酸3.3%であった。
【0086】
実施例8
次の配合表に従ってスポーツ飲料を調製した(1杯分500mL当たり)。
実施例7で調製したシラップ 35g
塩化ナトリウム 0.2g
クエン酸 0.2g
オレンジ‐レモン香味料 0.5g
アスコルビン酸 0.2g
水 464g
この飲料を調合し、次いで80℃で30秒間熱処理し、80℃で330mLペットボトルに加熱充填した。
【0087】
この飲料は、
ガラクトース 2.4%
グルコース 1.4%
フルクトース 0.9%
二糖/オリゴ糖 0.2%
グルコン酸 5ミリモル/L
クエン酸 2ミリモル/L
アスコルビン酸 2ミリモル/L
ナトリウム 13ミリモル/L
カリウム 4ミリモル/L
マグネシウム 1ミリモル/L
塩化物 7ミリモル/L
リン 1ミリモル/L
を含有した。
この飲料は、pH 3.9および浸透圧モル濃度170ミリオスモル/kgと測定された。この飲料は、きわめてわずか乳白色を有し、室温に放置した場合に安定であった。この飲料は、認識できる塩からさの背景のまったくない甘味とさっぱりした酸味との非常によいバランスのさっぱりしたさわやかな香味を有した。被験者は、運動の前に1人分330mLを簡単に飲み尽くし、この飲料が非常に口に合い、その後の激しい運動でさえ胃の不快感を少しも与えなかったと報告しており、水とグルコースを主成分とする代替品と比較して疲労の徴候を減らす結果となった。
【0088】
実施例9
次の配合表に従ってスポーツエネルギーバーを調製した(1個分100g当たり)。
実施例7で調製したシラップ 20.0g
レンネットカゼイン 17.0g
乳タンパク質濃縮物 6.2g
ホエータンパク質分離物 2.2g
乳脂 8.9g
ローカストビーンガム 0.13g
リン酸二ナトリウム二水和物 1.60g
クエン酸 0.68g
アンズ片 11.5g
アンズ香味料 0.40g
水 31.4g
このバーは100g当たり、
タンパク質 21.6g
脂肪 8.9g
炭水化物 20.2g
エネルギー 1039 kJ
を与えると算定された。
このバーは、柔らかく噛みでのある歯ごたえと甘い果物に似た香味を有した。消費者の審査員団はこれを非常に口に合いかつ食べるのに申し分のないものと評価した。
【0089】
本発明は上記実施例のみに限定するものではなく、熟練従業者には容易に分かるように添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの変形例が可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明のプロセスの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程(step)、
(ii)前記グルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、および
(iii)前記グルコースを部分酸化してグルコン酸にする工程を含み;且つ、
ガラクトースと、グルコースと、フルクトースと、グルコン酸と、未転化(unconverted)ラクトースと、非ラクトース二糖およびオリゴ糖との混合物を含む組成物を、任意の精製工程を必要とせずに製造する方法。
【請求項2】
存在する全炭水化物の%として、ガラクトースの約10〜50%、グルコースの0〜48%、フルクトースの1〜25%、グルコン酸の1〜48%、未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖の0〜25%の混合物を含む組成物を製造するための請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、ガラクトース30〜50%、グルコースの10〜40%、フルクトース5〜25%、グルコン酸の1〜15%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖1〜10%を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、ガラクトース45〜50%、グルコース23〜33%、フルクトースの15〜23%、グルコン酸の1〜5%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖7%未満を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
連続、半連続、バッチ、シーケンスバッチ、または単一ポットのプロセスとして行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記異性化の工程(ii)を前記酸化の工程(iii)の後に行う請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記加水分解の工程(i)と酸化の工程(iii)を同時に行う請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(i)の生成物を3つの流れに分け、第一の流れは更に処理せず、第二および第三の流れはそれぞれ前記工程(ii)または(iii)に従って処理し、各流れの生成物を合わせて請求項2〜4のいずれか一項に記載の最終組成物を得る請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記部分異性化の工程(ii)の生成物を分け、一部を部分酸化(工程(iii))にかけ、残部をこの部分酸化の工程の生成物と合わせて請求項2〜4のいずれか一項に記載の組成物を製造する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記部分酸化の工程(iii)の生成物を分け、一部を部分異性化(工程(ii))にかけ、残部をこの部分異性化の工程の生成物と合わせて請求項2〜4のいずれか一項に記載の組成物を製造する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ラクトース源が、ミルク、あるいは全乳、脱脂乳、ホエー、または乳清から得られるUF透過液、あるいは純粋なラクトース、あるいはホエー、あるいは除タンパクホエー、あるいは脱塩ホエー、あるいは脱灰ホエー、あるいは除タンパク、脱塩、または脱灰ホエーから得られるUF透過液、あるいはこれらの任意の組合せを含む群から選択される請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記加水分解の工程(i)を化学的に達成するか、あるいは1種類または複数種類の加水分解酵素を用いて酵素の働きにより達成するか、あるいはバイオリアクター中で達成する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記加水分解の工程(i)を、酸または強陽イオン交換樹脂の使用により化学的に達成する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酸が、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、およびクエン酸から選択される1種類または複数種類の酸の弱溶液(ラクトースの全重量の0.001〜0.1%)を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記加水分解酵素が、ラクターゼとしても知られるβガラクトシダーゼであり、遊離または固定化され、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces marxianus、Saccharomyces fragilis、Streptococcus thermophilus、Aspergillus oryzae、Aspergillus niger、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus helviticus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Streptococcus lactis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium breve、Bacillus subtilis、Escherichia coli、Sulfolobusの種、Pyrococcus fusiosus、熟していないコーヒー豆、ナタマメ、ウシの肝臓、ウシの精巣、および単独または組合せいずれかの任意の他の好適な供給源に由来する(sourced from)請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記酵素がSulfolobus solfataricusに由来する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記異性化の工程(ii)を、グルコースイソメラーゼを用いて酵素の働きにより達成する請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記グルコースイソメラーゼが遊離または固定化され、Actinoplanes missiourensis、Bacillus coagulans、Streptomyces murinus、Escherichia coli、またはArthrobacterの種、あるいは単独または組合せいずれかの任意の他の好適な供給源に由来する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化の工程(iii)を2種類の酵素、グルコースオキシダーゼおよびカタラーゼを用いて酵素の働きにより達成する請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記両酵素が、遊離または固定化され、かつ前記酸化酵素がPenicillium notatum、Penicilliumglaucanum、Penicillium amagosakiense、およびAspergillus nigerに由来し、また前記カタラーゼ酵素がAspergillus niger、1種類または複数種類のPenicilliumの種、およびMicrococcus lysodeikitcusに由来し、あるいは前記両酵素が単独または組合せいずれかの任意の他の好適な供給源に由来する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、ガラクトースと、グルコースと、フルクトースと、グルコン酸と、未転化ラクトースと、非ラクトース二糖およびオリゴ糖との混合物を含む請求項1〜20のいずれか一項の方法により製造される組成物。
【請求項22】
希釈されていない形態において前記組成物がブリックス度40〜80のシラップの形態である請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
希釈剤を更に含む請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
存在する全炭水化物の%としてガラクトースの約10〜50%、グルコースの0〜48%、フルクトースの1〜25%、グルコン酸の1〜48%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖の0〜25%の混合物を含む請求項21〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
ガラクトース30〜50%、グルコースの10〜40%、フルクトース5〜25%、グルコン酸の1〜15%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖1〜10%を含む請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
ガラクトース45〜50%、グルコース23〜33%、フルクトースの15〜23%、グルコン酸の1〜5%、ならびに未転化ラクトースおよび非ラクトース二糖およびオリゴ糖7%未満を含む請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項21〜26のいずれか一項に記載の組成物を含む食品。
【請求項28】
スポーツエネルギーバーを含む請求項27に記載の食品。
【請求項29】
請求項21〜26のいずれか一項に記載の組成物を含む飲料。
【請求項30】
1リットル当たり25ミリモル未満のナトリウムを含有するスポーツ飲料を含む請求項29に記載の飲料。
【請求項31】
(i)ラクトースを加水分解してグルコースおよびガラクトースを生成する工程、
(ii)前記グルコースを部分異性化してフルクトースにする工程、
(iii)前記グルコースを部分酸化してグルコン酸にする工程、
(iv)ガラクトースを結晶化して母液を製造する工程、および
(v)前記母液からガラクトースの結晶を回収する工程
を含むガラクトースの製造方法。
【請求項32】
請求項31の方法により製造されるガラクトース。
【請求項33】
請求項31の方法により製造される前記母液を含む組成物。
【請求項34】
食品業界における甘味料としての請求項33の組成物の使用。
【請求項35】
前記食品業界が乳製品業界である請求項34に記載の使用法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−515510(P2006−515510A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558574(P2004−558574)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/NZ2003/000270
【国際公開番号】WO2004/052900
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(504214246)フォンテラ コ−オペレイティブ グループ リミティド (17)
【Fターム(参考)】