説明

炭素ドーピング、抵抗率制御、温度勾配制御を伴う、剛性サポートを備える半導体結晶を成長させるための方法および装置

【課題】III−V族、II−VI族および関連する単結晶半導体化合物が、封止されたアンプルの剛性サポート、炭素ドーピングおよび抵抗率の制御、および熱勾配の制御によって成長する。
【解決手段】サポート・シリンダは、統合されて封止されたアンプル・るつぼ装置を支持し、その一方で、サポート・シリンダの内部の低密度断熱材が対流および伝導伝熱を防止している。低密度材料を貫通する輻射チャネルによって、シード・ウェルおよび結晶成長るつぼの移行領域に出入する輻射熱が伝達される。シード・ウェルの直下に位置する断熱材中の中空コアによって成長している結晶の中心部が冷却され得、結晶インゴットの均一・水平な成長と、平坦な結晶−溶融帯の界面が得られ、従って、均一な電気的特性を備えたウェーハを得る事が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2001年7月5日に出願された「ガリウム砒素の成長における非接触炭素ドーピングおよび抵抗率の制御」と言う名称の米国特許仮出願第60/303189号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、広義にはIII−V属、II−VI属および関連する単結晶半導体化合物の成長に関する。より詳細には、剛性サポート、炭素ドーピングおよび抵抗率制御、および熱勾配制御によってこれらの化合物を成長させる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電子および光学的電子デバイスメーカーは、商業化された大サイズで均一の単結晶半導体を常時必要とし、これらはスライシング・ポリッシングされ、マイクロ・エレクトロニクス・デバイスの生産用の基板を供給する。半導体結晶の成長は、多結晶の原料をその融点(1200℃超)まで加熱するステップと、溶解した半導体を高品質の種結晶と接触させるステップと、溶解した半導体を結晶化させるステップを備える。これによって、多結晶の原料よりも下部に配置された種結晶を備えた垂直軸に沿って略円筒状に結晶が形成される事が可能になる。半導体結晶を形成するのに必要な設備は、結晶成長炉、アンプル、るつぼ、および、るつぼサポートを含む。るつぼは、シード・ウェルと称される狭隘部分を底部に有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の結晶成長プロセスおよび結晶成長装置において、いくつかの問題が存在する。第1に、多くの場合、炭素のようなドーパントの添加を制御する事は、半絶縁のガリウム砒素材料のような半導体結晶を成功裏に成長させるための主要因である。ガリウム砒素のような半導体結晶を成長させるための従来の技術において、炭素の添加を制御する事が困難である事が知られている。一般に、これらの技術は、溶融したガリウム砒素に炭素を含んだドーパントを配置し、溶融した充填物に接触させることによりガリウム砒素を添加する事を含んでいる。
【0005】
第2に、結晶成長装置は超高温に耐えることが出来なければならない。さらに、装置の構成要素は、結晶が成長する際にシステム中に通常存在する強い乱れおよび対流条件にもかかわらず、るつぼ、および成長している結晶を保持するだけの剛性および強度を有する必要がある。結晶成長装置の構成要素の如何なるずれ、クラックまたは動きが、充填物の一部または全部の損失と言う結果をもたらし得る。るつぼサポートは、耐熱および剛性を提供する事と、るつぼへの伝熱を実質的に遮断する事を同時に達成出来ない。実際、るつぼの内の温度勾配を正確に制御する事は多くの結晶成長技術の根本であり、また、るつぼサポートがるつぼの充填物への加熱を妨害するべきではない。
【0006】
温度勾配制御は、成長プロセスにおける固体と溶融帯の界面の平坦度に影響するので、均一の電気的特性を備えた基板を産出するような結晶を製造する際に重要である。均一の電気的特性を備えた基板を産出するために、固体と溶融帯の界面は、可能な限り平坦であるべきである。充填物および装置の周縁部は中心よりも容易に冷却される傾向があるので、平坦な界面を維持する事は困難である。例えば、高温の状態において、固体のガリウム砒素の熱伝導率がより低いので(0.7W/cm・K)、液体−固体の界面の平坦度を維持する事は更に困難であり、より遅い成長速度が要求される。液体および固体のガリウム砒素の熱伝導率はるつぼと比較してより低いので、インゴットの周縁部に沿ってるつぼによって伝導された熱は、円錐形の移行領域中の界面の形状を決定する際により重要になる。結晶はシード・ウェルの方向へ向かうに従って括れており、軸方向の伝導伝熱のために利用可能な断面積は縮小し、半径方向の温度勾配が発生し、固体と溶融帯の界面は凹状になる。シードの直上における固体と溶融帯の界面を平坦に形成するために、るつぼサポートにおける半径方向の熱損失を低減するための方法が必要とされている。
【0007】
るつぼの下部の狭隘領域における熱勾配が制御されていない場合、核形成の欠陥、転位クラスタ、リネージ、多結晶および双晶の欠陥が移行領域の中で形成される傾向がある。結晶化が充填物内を上方に向かって進んで行くのにつれて、るつぼの下部で形成される問題は結晶全体に広がってしまう。一方、高品質の結晶成長がるつぼのより大きな直径の部分へ成功裏に伸びる場合、格子欠陥が生成される可能性は低くなる傾向にある。従って、ドーパントの添加を制御する能力、温度制御の質、および垂直方向の温度勾配を制御し、かつ装置の底部近傍の等温線を維持する能力は、結晶の品質および結晶の生産量に全面的に影響する。
【0008】
るつぼサポートおよび温度制御勾配の点において、広範囲の解決法が本産業において実施されている。多くの従来のるつぼサポートのための解決法は、対流または伝導による伝熱を促進するためにベントされ得る固形のセラミックの構造物を備える。一般的に、固形のセラミックのるつぼサポートは有効な断熱を提供するが、るつぼの下部における温度制御が困難になる。強度および安定性が必要とされるという点においては固形状の構造物が必要であるという事を示唆するが、るつぼのシード・ウェルの領域において炉が熱せられる必要性によって他の問題が生ずる。セラミックは膨張・収縮するので、固形状のセラミックによるサポートは本質的に不安定であり、クラッキングまたは変形の可能性がある。さらに、るつぼサポートは、原料および結晶の溶融帯への熱エネルギーの流れを妨害するべきではない。構成要素を加熱する炉から、アンプルおよびその内容物まで伝導によって熱を伝えるために、固形のるつぼサポートが必要となる。不都合なことに、伝導による加熱は高温における制御が困難であり、実際上、多くの結晶成長技術に求められる正確・平坦な温度勾配を形成するためには逆効果である。
【0009】
同様に、シード・ウェルを対流によって加熱する場合、シード・ウェルの温度制御が不完全になり、その結果、るつぼの移行領域の温度勾配の正確さが損なわれる。いくつかの従来のるつぼサポートの技術は対流伝熱を特徴とし、るつぼサポートは多数のセラミックリングおよびスペーサーから構成されている。固形のるつぼサポートの設計によって温度制御が難しくなるのと同様に、気体または液体による対流伝熱に基づく技術は、垂直温度勾配凝固法(「VGF」)のような殆どの結晶成長技術の特定の温度勾配制御の必要性を満足させる事は不可能であろう。
【0010】
伝導伝熱および対流伝熱のアプローチに基づく従来の技術では、シード・ウェルの加熱を正確に制御する事も出来ないし、多量の結晶の生産の為に適した信頼性の高い物理的な安定性を提供する事も出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の形態は、剛性サポート、炭素ドーピングおよび抵抗率制御、および熱勾配制御による、III−V族、II−VIおよび関連する単結晶半導体化合物の成長に関する。一実施形態中において、半絶縁のガリウム砒素材料が、ドーパントとしての炭素が制御されて添加される中で成長する。シード領域/ウェルを有するるつぼ、および下側領域と上側領域を有するアンプルが提供される。種結晶が、るつぼ内部のシード領域/井戸に載置される。ガリウム砒素原料および酸化ホウ素(B)材料がるつぼにロードされる。その後、種結晶、ガリウム砒素原料およびB材料を含むるつぼが、るつぼの外側のアンプルの下側領域に供給される固形炭素物質と共にアンプルに挿入される。固形炭素材料およびるつぼを含むアンプルは、真空封止される。密封したアンプルは、ガリウム砒素原料が溶融するように、制御されて加熱される。B材料を通して溶融したガリウム砒素材料と反応する炭素ガスを生成する為に、熱が固体炭素物質に伝達される、そして、封止したアンプルは、制御されて冷却される。
【0012】
他の実施形態において、超高温の加熱サイクルにおける、炉内のアンプル、るつぼ、およびその内容物を保持するためのアンプル強度と安定度を提供する、結晶成長用のるつぼサポートが提供される。これによって、シード・ウェルの正確な温度制御が可能になる。例えば、輻射伝熱によってシード・ウェル温度を正確に制御可能であるのと同時に、VGFシステムにおける封止された石英アンプルが安定した状態で支持され得る。一実施形態において、るつぼへの支持を提供する方法は、VGF法による結晶成長炉の床部に固体薄肉シリンダを載置するステップと、低密度断熱材でシリンダ内部を充填するステップと、低密度断熱材の中心に、軸方向の中空コアを供給するステップと、軸方向の中空コアがアンプル・シード・ウェルを受け入れ、アンプルが前記シリンダによって支持されるように、るつぼを内部に含んだアンプルを石英シリンダの最上部に載置するステップとを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態は、広義には剛的なサポート、ドーピングと抵抗率の制御、および熱勾配の制御を伴う環境下におけるIII−V族、II−VI族および関連する単結晶半導体の成長に関する。ガリウム砒素のVGF法による成長が実例として用いられ、VGF法による成長プロセスにおける炭素ドーピングおよび抵抗率制御の方法、およびVGF法による成長炉で使用されるるつぼサポートを提供する方法の実施形態が以下記述される。
【0014】
VGF法は、大きな単結晶インゴットが、非常に高いレベルの構造的均質性、低い欠陥密度でもって成長する結晶成長技術、装置およびプロセスを包含する。一実施形態において、結晶のインゴットは、4インチ越の直径、6インチ越の長さを有する略円筒である。この略円筒状の結晶は、多結晶の原料の下部に設けられた種結晶を伴って、垂直軸に沿って成長する。
【0015】
一実施形態において、半絶縁のガリウム砒素中の炭素レベルおよび抵抗率の制御は、溶融した充填物と接触する事無く、成長るつぼの外側にドーパント材料を配置することにより達成される。ドーパント材料が溶融帯あるいはるつぼの内部壁から離間しているので、本工程は、高い単結晶成長率を達成するのには好都合である。
【実施例】
【0016】
本発明の一実施形態おける、半絶縁のガリウム砒素材料の成長において炭素の制御された添加を達成する工程が図1〜図5を参照して以下記述される。
【0017】
1.炭素のドープ源が供給される。これらのドーパントは、例えば、図1の塊状グラファイト(105)、図2の粉末状グラファイト(205)、図3の塊状グラファイト(105)と粉末状グラファイト(205)の組み合わせ、図4のキャップ状グラファイト(405)、図5の棒状グラファイト(505)、および(または)高純度のバルクのグラファイトの小片である。
【0018】
2.図1〜図5において、通常のVGF法による成長では、合成ガリウム砒素原料(110)の初期充填物がパイロリティックボロンナイトライド(「PBN」)のるつぼ(115)にロードされる。また、適量の酸化ホウ素 (「B(120)」)がるつぼ(115)に配置される。
【0019】
3.図1〜図5に示されるように、一般的に、上述された様々な炭素をドープするドープ源が、石英アンプル(130)の下端(125)の様々な場所に配置される。その後、ガリウム砒素充填物(110)を備えたPBNるつぼ(115)が石英アンプル(130)に載載される。
【0020】
4.その後、ドーパント、PBNるつぼ(115)、ガリウム砒素充填物(110)およびB(120)を含む石英アンプル(130)が真空封止される。
【0021】
5.充填物(110)を溶融し、次に、PBNるつぼ(115)の下端のシードから充填物の尾部まで移動していく液体−固体の界面を制御することによって結晶が成長させられる。
【0022】
6.半絶縁のガリウム砒素の抵抗率および炭素レベルは、使用されるドーパント(105)の量およびドーパントの温度によって制御され得る。
【0023】
図1〜図5において、炭素ドーピング源は石英材料(SI0)中の酸素と反応する。この反応によって、高度に封止された石英アンプル(130)中において、一酸化炭素(「CO」)および他の炭素酸化物が生成される。その後、炭素酸化物はB(120)と反応し得、溶融したガリウム砒素(110)へ炭素が添加される。炭素ドーパントの量が多ければ多いほど、そして炭素ドーパントの温度が高ければ高いほど大きい反応がおこり、従って、ガリウム砒素に対する炭素のドーピング量および抵抗率がより高くなる。
【0024】
この非接触の炭素ドーピング法はガリウム砒素の半絶縁特性を再現可能に達成するために使用することが出来、その結果、抵抗率は数百万Ω/cmから数億Ω/cmの範囲に及び、その際の移動度は6000cm/Vsより高い。さらに、本技術は、垂直ブリッジマン法(「VB」)のような封止した環境中における他の成長技術に適用されても良い。
【0025】
図6は、本発明の一実施形態における、るつぼサポート(2000)を備えるVGF法による成長のシステムの断面図を示す。図1〜図5に示されたるつぼとアンプルの任意の組み合わせ、または他の種類のるつぼとアンプルの組み合わせがるつぼサポート(2000)に載置されて良い。るつぼサポート(2000)はVGF炉(1000)の内側に図示される。るつぼサポート(2000)は、アンプル(4000)およびその内容物(原料(図示せず)、種結晶(図示せず)、およびるつぼ(3000))を物理的に支持し、その熱勾配が制御されることを可能にする。
【0026】
一実施形態において、原料がその内部において溶融し結晶が成長するるつぼ(3000)は、円筒状の結晶成長領域(3010)と、より小さい直径のシード・ウェル・シリンダ(3030)とテーパ状の移行領域(3020)を備えたPBNの構造体である。結晶成長領域(3010)はるつぼ(3000)の最上部において開放されており、結晶製品の所望の直径と等しい直径を有する。現在の業界標準は、直径4インチおよび6インチのウェーハである。るつぼ(3000)の底部において、シード・ウェル・シリンダ(3030)は閉じた底部を有し、高品質種結晶よりわずかに大きな、例えば約6〜25mmの直径を有し、その長さは30〜100mmのオーダーである。もしくは、他の寸法が使用されても良い。主要な成長領域(3010)およびシード・ウェル・シリンダ(3030)は真直ぐな壁を有していても良く、あるいはるつぼ(3000)からの結晶の除去を促進するために1度から数度のオーダーで外側に向かってテーパが付けられていても良い。成長領域(3010)とシード・ウェル・シリンダ(3030)の間にあるテーパ状移行領域(3020)は、45度に傾斜した側壁を備え、側壁の広い側の直径は成長領域の壁の直径と同一であり、かつ成長領域の壁と接続され、側壁の狭い側の直径はシード・ウェルの壁の直径と同一であり、かつシード・ウェルの壁と接続される。傾斜のつけられた側壁の角度は、45度より大きくても小さくても良い。
【0027】
VGF結晶成長炉(1000)の中への挿入に先立って、るつぼ(3000)中に材料がロードされ、るつぼキャップ(3040)で覆われて、そして、アンプル(4000)中に挿入される。例えば、アンプル(4000)は石英で作られていて良い。アンプル(4000)の形状は、るつぼ(3000)の形状と類似している。アンプル(4000)は、種子成長領域(4010)において円筒状であり、シード・ウェル領域(4030)ではより小さい直径を有し、テーパ状の移行領域(4020)を有する。るつぼ(3000)は、るつぼ(3000)より僅かに大きいアンプル(4000)の内部に嵌入する。るつぼ(3000)と同様、アンプル(4000)は、シード・ウェル領域(4030)の底部において閉じられており、またるつぼと原料が装填された後、その最上部が封止される。アンプルの底部の形状は、るつぼと同様にファンネル形状である。
【0028】
アンプルとるつぼの組み合わせがファンネル形状を有するので、るつぼサポート(2000)は、このファンネル形状を収容し、VGF炉(1000)の内部においてアンプル(4000)を安定かつ直立に保持する事が要求される。他の実施形態において、アンプルとるつぼの組み合わせは異なる形状を有していても良い。また、るつぼサポート(2000)の基本的な構造はこの異なる形状に適合させる為に変更されるであろう。本発明の一実施形態において、アンプルとその内容物の安定性および強度は、るつぼサポート(2000)の固形の薄肉シリンダ(2050)によって提供される。固形の薄肉シリンダ(2050)は、アンプル構造物(4000)のファンネル端を収容する。一実施形態において、るつぼサポート・シリンダ(2050)は、好ましくは石英のような熱伝導材料によって製作される。他の実施形態において、炭化けい素およびセラミックがるつぼサポート・シリンダ(2050)を生成するために用いられても良い。シリンダ(2050)は、アンプル(4000)との接触円を形成する。そこにおいて、シリンダ(2050)の上部のリムが、アンプルのテーパ状領域(4020)の肩部と接触する。このような構成をとることによって、固体−個体間の接触が最小限とされ、これによって、制御の困難な伝導伝熱が起こる事はほとんど無いか、全く起こらないということが保証される。その結果、より制御性の高い他のプロセスによって加熱が行われ得る。
【0029】
セラミックファイバのような低密度断熱材(2060)が、サポート・シリンダ(2050)の内部の大半に充填され、断熱材(2060)の略中心の中空コア(2030)だけが、アンプル(4000)のシード・ウェル領域(4030)を受け入れる為に中空となっている。他の実施形態において、低密度断熱材はアルミナ繊維(1800℃)、アルミナ−シリカ繊維(1426℃)、および(または)ジルコニア繊維(2200℃)を含んでも良い。断熱材(2060)は、るつぼサポート(2000)に注意深く載置される。アンプル(4000)はシリンダ(2050)の上に位置するので、アンプル(4000)の重量が断熱材(2060)を押し下げて、傾斜した断熱材エッジ(2020)が形成される。低密度断熱材によってシリンダ内部の大半を充填することによって、空気の流れが低減され、これによって、制御が困難な対流伝熱が起こる事がほとんど無いか、全く無い事が保証される。伝導のように、対流伝熱は、VGF法および他の結晶成長プロセスに損失を与えるような、制御困難な伝熱方法である。
【0030】
図6の実施形態において、アンプルのシード・ウェル領域(4030)と略同一の直径を有する中空コア(2030)は、アンプルのシード・ウェル領域(4030)の底部の下部において下方に少し延長する。別の実施形態において、中空コア(2030)は、シード・ウェルの底部から炉(1000)の底部まで、るつぼサポートを貫通して延長する。中空コア(2030)は、結晶の中心部からの冷却パスを提供する。これは、シード・ウェル内部、および成長している結晶の中心部を冷却する事に寄与する。この構造によって、熱エネルギーは、固体の結晶およびシードの中心を通って下方へ放熱され得、さらに結晶サポート(2000)内の断熱材(2060)中の中空コア(2030)を通って放熱され得る。
【0031】
中空コア(2030)が存在しない場合、冷却されているインゴットの中心部の温度は、該表面近傍の結晶の温度よりも当然高い。この場合、任意の水平断面中のインゴットの中心部は、その周囲が凝固した後に結晶化される。これらの条件の下では、一定の電気的特性を備えた結晶を生成する事が出来ない。この結晶サポート法に含まれる中空コア(2030)を備える事によって、熱エネルギーは、アンプル(4000)の底部および中空コア(2030)を通して下方に伝導によって伝えられ、そこからは輻射チャネル(2070)によって外部に放射される。等温面が結晶の直径を横断する方向において平坦になされるように、成長している結晶の中心部からの熱エネルギーを低減することは重要である。結晶と溶融帯の界面を平坦に維持する事によって、均一な電気的・物理的な特性を有する結晶を生産する事ができる。
【0032】
シリンダ(2050)内の低密度断熱材(2060)は、シード・ウェル領域(4030)において、炉のヒート・エレメント(1010)からアンプル(4000)までの輻射による伝熱を妨げるので、この方法は、断熱材(2060)を貫通する水平の輻射伝熱用のチャネル/開口部/トンネル(2070)を要する。輻射チャネル(2070)は、炉のヒート・エレメント(1010)からアンプルのシード・ウェル領域(4030)まで熱を制御可能に伝達するための輻射伝熱の出口を提供するために、断熱材(2060)内を貫通する。
【0033】
輻射チャネル(2070)の数、形および直径は特定の条件に依存して変化する。輻射チャネルは傾斜していても良いし、曲がっていても良いし、波形状であっても良い。さらに、輻射チャネルは連続的である必要は無く、断熱材(2060)の一部を貫通するだけでも良い。これは、対流伝熱を最小限にする事に寄与する。一実施形態において、これらのチャネルの直径は鉛筆の直径のオーダーと同じくらいに小さい。その結果、対流伝熱は余り重要な位置を占めない。他の実施形態においては、平方インチのオーダーまたはそれ以上の断面積を備えたより大きな穴を使用しても良い。断熱材(2060)中の輻射チャネル(2070)は、結晶の中心部からの熱エネルギーを放射するために断熱材(2060)の中心部の中空コア(2030)と共働し、かつ平面状の等温温度勾配層をを伴って結晶を冷却する。輻射チャネル(2070)は温度制御を可能にし、結晶成長の産出に直接関与する。
【0034】
図7は、本発明の一実施形態に従って構築されたるつぼサポート(2000)の斜視図である。るつぼサポート(2000)の外観図は、サポート・シリンダ(2050)、サポート・シリンダ(2050)の上部リム(2100)、窓(2080)、断熱材(2060)および中空コア(2030)を示している。サポート・シリンダ(2050)は、アンプルへの接触を最小限に保ちつつ、アンプル・ストラクチャー(図示されず)を支持する。サポート・シリンダ(2050)の上部のリム(2100)は、円上においてアンプルと接触している。したがって、伝導伝熱は最小に保たれる。シリンダは、さらに気流への障壁となり、窓(2080)へ向かう輻射チャネル(図示されず)中の対流伝熱を阻止する一方で、輻射伝熱が妨げられる事は無い。更に、他の実施形態において、窓(2080)は輻射チャネルの端部であっても良い。また輻射チャネルの直径が小さいと言う事によって、るつぼサポート(2000)内の対流がさらに抑制される。
【0035】
従って、アンプルおよびその内容物をサポート・シリンダで支持し、低密度断熱材でサポート・シリンダの中央のコア部分以外を低密度断熱材で充填し、輻射チャネルを断熱材に貫通させる事によって、結晶成長プロセスにおける熱勾配制御が可能になる。結晶成長の異なる段階において、加熱および水平方向の温度勾配を管理する事ができる。るつぼ中の結晶成長領域および種結晶ウェルの双方のの温度制御はるつぼの移行領域中の温度勾配の確立および制御において重要なので、この温度制御は、VGF法および他の種類種類の結晶成長にとって不可欠なものである。るつぼの移行領域中の正確な温度勾配制御は、VGF法および他の種類の成長プロセスにおける単結晶の生成の為に不可欠である。
【0036】
本発明において、伝導と対流による伝熱は最小化され、本方法におけるVGF法の炉のヒート・エレメントからシード・ウェルまでの熱は主に輻射によって伝達される。約数百〜1,200℃超の結晶成長炉の温度範囲においては、輻射伝熱は最も有効な熱伝達の方法である。輻射は、対流または伝導よりも正確に制御可能であるので、アンプルおよび充填物を加熱する最も望ましい手段である。この構造で使用されるサポート・シリンダは、熱輻射に対して透過的である。従って、サポート・シリンダは、固体の障壁として対流を低減するのに寄与するが、輻射伝熱を妨害しない。
【0037】
これらの方法の特徴および改良の累積的な影響を考慮して、本発明における実施形態は、アンプル・シード・ウェルの効率的かつ正確な温度制御を可能にする一方でVGF法によるアンプル、るつぼおよび充填物の高い安定性に寄与するるつぼサポート技術を有する。
【0038】
以上記載された本発明における実施形態は、本発明の原理の明確な理解のために記載した実施可能な例に過ぎない、と言う事が強調されなければならない。これらは、網羅的であったり、本発明を開示された正確な文言通りに制限したりすることを目的としていない。本発明の精神と原則から逸脱する事無く、以上に記載された本発明の実施形態に様々な変更および修正が成され得る。例えば、VGF法と同様または同一の方法でIII−IV族、II−VI族および関連する単結晶半導体を生成する他の結晶成長プロセスが、炭素ドーピングおよび抵抗率制御の実施形態、および(または)、温度勾配制御を伴った剛性サポートの実施形態を用いる事が可能である。全てのこの種の修正および変更は、本発明の精神と範囲に含まれる事が意図され、以下の請求項によって保護される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態における、垂直温度勾配凝固法(「VGF」)によるガリウム砒素の成長に際して、塊状グラファイトによる非接触炭素ドーピングおよび抵抗率の制御を提供するシステム(100)を示す。
【図2】本発明の一実施形態における、垂直温度勾配凝固法(「VGF」)によるガリウム砒素の成長に際して、粉末状グラファイトによる非接触炭素ドーピングおよび抵抗率の制御を提供するシステム(200)を示す。
【図3】本発明の一実施形態における、垂直温度勾配凝固法(「VGF」)によるガリウム砒素の成長に際して、粉末状グラファイトと塊状グラファイトによる非接触炭素ドーピングおよび抵抗率の制御を提供するシステム(300)を示す。
【図4】本発明の一実施形態における、垂直温度勾配凝固法(「VGF」)によるガリウム砒素の成長に際して、キャップ状グラファイトによる非接触炭素ドーピングおよび抵抗率の制御を提供するシステム(400)を示す。
【図5】本発明の一実施形態における、垂直温度勾配凝固法(「VGF」)によるガリウム砒素の成長に際して、棒状グラファイトによる非接触炭素ドーピングおよび抵抗率の制御を提供するシステム(500)を示す。
【図6】本発明の一実施形態に従って構築されたるつぼサポートを備える垂直温度勾配凝固法(「VGF」)による成長システムの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に従って構築されたるつぼサポートの斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
105...塊状グラファイト、110...合成ガリウム砒素原料、115...るつぼ、120...酸化ホウ素(B)、130...石英アンプル、205...粉末状グラファイト、405...キャップ状グラファイト、505...棒状グラファイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーパントとして炭素ガスを制御して添加しつつ半絶縁のガリウム砒素材料を成長させる方法であって、
シード領域を有するるつぼを供給するステップと、
前記るつぼ内部の前記シード領域に種結晶を配置するステップと、
前記るつぼにガリウム砒素原料をロードするステップと、
前記るつぼに酸化ホウ素(B)材料をロードするステップと、
下側領域および上側領域を備えるアンプルを提供するステップと、
アンプルに、前記種結晶、ガリウム砒素原料およびB材料を含む前記るつぼを供給するステップと、
前記るつぼの外側において、前記アンプルの前記下側領域に固体炭素物質を供給するステップと
前記固体炭素物質および前記るつぼを備える前記アンプルを真空封止するステップと、
前記ガリウム砒素原料が溶融するように、前記封止したアンプルを制御して加熱するステップと、
前記封止したアンプルを制御して冷却するステップと
を備え、
材料を通して溶融したガリウム砒素材料と反応する炭素ガスを生成する為に、前記加熱ステップにおける熱が前記固体炭素物質に伝達される、
方法。
【請求項2】
所定の量の前記固体炭素物質を選択するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体炭素物質が、塊状のグラファイトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固体炭素物質が、粉末状のグラファイトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記固体炭素物質が、キャップ状のグラファイトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記固体炭素物質が、棒状のグラファイトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記固体炭素物質が、グラファイトの小片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ドーパントとして炭素ガスを制御して添加しつつ半絶縁のガリウム砒素材料を成長させる装置であって、
シード領域を含むるつぼと、
下側領域と上側領域を含むアンプルと、
を備え、
前記るつぼは前記アンプル中に供給され、
前記るつぼの外側において、前記アンプルの前記下側領域に固体炭素物質が供給され、
前記固体炭素物質と前記るつぼを有する前記アンプルが真空封止される、
装置。
【請求項9】
前記固体炭素物質が粉末状グラファイトを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記固体炭素物質がグラファイトの小片を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
ドーパントとして炭素ガスを制御して添加しつつ半絶縁のガリウム砒素材料を成長させるシステムであって、
種結晶を含むシード領域を有し、内部にガリウム砒素原料および酸化ホウ素(B)材料を有するるつぼと、
下側領域と上側領域を有するアンプルと、
前記アンプルの周囲に配置される加熱部と
を備え、
前記るつぼは前記アンプルの内部に供給され、
前記るつぼの外側において、前記アンプルの前記下側領域に固体炭素物質が供給され、
前記固体炭素物質と前記るつぼを有する前記アンプルが真空封止される
システム。
【請求項12】
前記固体炭素物質が粉末状グラファイトを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記固体炭素物質がグラファイトの小片を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
るつぼを支持する方法であって、
VGF法による結晶成長炉の床部に固体シリンダを載置するステップと、
低密度材料で前記固体シリンダを充填するステップと、
前記低密度材料の中心に、軸方向の中空コアを供給するステップと、
前記軸方向の中空コアが前記アンプル・シード・ウェルを受け入れ、前記るつぼが前記シリンダによって支持されるように、前記種結晶、原料、るつぼおよびるつぼキャップを含む封止された石英アンプルを前記石英シリンダの最上部に載置するステップと
を備える方法。
【請求項15】
前記低密度断熱材を前記固体結晶へ挿入する前に、前記低密度断熱材に複数の水平の放射状の輻射伝熱チャネルが貫通する、請求項14に記載のるつぼを支持する方法。
【請求項16】
前記垂直の固体シリンダは本質的に石英から構成される、請求項14に記載のるつぼを支持する方法。
【請求項17】
前記垂直の固体シリンダは本質的に炭化けい素から構成される、請求項14に記載のるつぼを支持する方法。
【請求項18】
前記垂直の固体シリンダがセラミックである、請求項14に記載のるつぼを支持する方法。
【請求項19】
前記低密度断熱材がセラミック繊維である、請求項14に記載のるつぼを支持する方法。
【請求項20】
前記低密度断熱材がアルミナ繊維(1800℃)である、請求項14に記載のるつぼを支持する方法。
【請求項21】
前記低密度断熱材がアルミナ−シリカ繊維(1426℃)である、請求項14に記載のるつぼを支持する方法。
【請求項22】
前記低密度断熱材がジルコニア繊維(2200℃)である、請求項14に記載のるつぼを支持する方法。
【請求項23】
前記水平の放射状の輻射伝熱チャネルが、1平方インチと等しい断面積を有する、請求項15に記載のるつぼを支持する方法。
【請求項24】
るつぼを支持する装置であって、
VGF法による結晶成長炉の床部上にの固体シリンダを備え、
前記固体シリンダが低密度材料で充填され、
前記低密度断熱材の中心に軸方向の中空コアが形成され、
前記軸方向の中空コアがアンプル・シード・ウェルを受け入れる、
装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−126644(P2012−126644A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−78848(P2012−78848)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2008−265616(P2008−265616)の分割
【原出願日】平成14年7月3日(2002.7.3)
【出願人】(500406056)エーエックスティー,インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】