説明

炭素鋼、特に帯鋼にベイナイト組織を連続的に形成するための方法および装置

本発明は、炭素鋼(1)をオーステナイト化温度を上回る温度でオーステナイト化し、オーステナイト化された炭素鋼(1)を、該炭素鋼(1)をオーステナイト化温度よりも僅かな温度に冷却するための急冷媒体(21)を備えた浴(2)内に供給し、炭素鋼(1)をベイナイトに対する変態温度に調整し、炭素鋼(1)を所定の期間にわたって変態温度で保持し、次いで、炭素鋼を冷却するステップを有する、炭素鋼、特に帯鋼にベイナイト組織を連続的に形成するための方法に関する。この方法は、炭素鋼(1)の全組織に対する規定可能な割合のベイナイト組織が、急冷媒体(21)を備えた浴(2)内で形成されるまで、炭素鋼(1)が、オーステナイト化後、急冷媒体(21)を備えた浴(2)を通走し、該浴(2)からの炭素鋼(1)の進出時に、該炭素鋼(1)の表面の急冷媒体(21)の残分を吹払いによって除去し、次いで、ベイナイトへの炭素鋼(1)の組織成分の残変態を等温の温度調整ステーション(13)において、該等温の温度調整ステーション(13)を通る通走時の炭素鋼(1)の各変向なしに行うことによって改良される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素鋼をオーステナイト化温度を上回る温度でオーステナイト化し、オーステナイト化された炭素鋼を、該炭素鋼をオーステナイト化温度よりも僅かな温度に冷却するための急冷媒体を備えた浴内に供給し、炭素鋼をベイナイトに対する変態温度に調整し、炭素鋼を所定の期間にわたって変態温度で保持し、次いで、炭素鋼を冷却するステップを有する、炭素鋼、特に帯鋼にベイナイト組織を連続的に形成するための方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、炭素鋼、特に帯鋼にベイナイト組織またはソルバイト組織を形成するための装置、特に前述した方法を実施するための装置であって、オーステナイト化ステーションが設けられており、該オーステナイト化ステーションによって、炭素鋼が、オーステナイト化温度を上回る温度にもたらされるようになっており、オーステナイト化された炭素鋼をオーステナイト化温度よりも僅かな温度に冷却するための急冷媒体を備えた浴が設けられており、炭素鋼を所定の期間にわたって変態温度で保持するための等温の温度調整ステーションが設けられており、炭素鋼を引き続き冷却するための冷却ステーションが設けられている形式のものに関する。
【0003】
連続法での炭素鋼、特に帯鋼の調質は、帯鋼の強度特性に影響を与えるためのしばしば実地に適した方法である。この場合、相応の連続装置内で帯鋼が、まず、加熱と、これに続く冷却とによって焼き入れられ、その後、焼戻しと、これに続く冷却とによって、その靱性に関して変化させられる。この場合、調質のために焼入れ時だけでなく、焼戻し時にも必要となる熱は、種々異なる形式で帯鋼に供給することができ、たとえば誘導的な方法、伝導的な方法または高温の浴もしくはガス火炎を通る帯鋼の案内によって供給することができる。この場合、帯鋼の、調整される材料特性には、どのようにして熱が帯鋼内に導入され、冷却時に再び帯鋼から導出されるのかということが顕著に影響を与える。組織変態と、加熱過程もしくは冷却過程の速度と、規定された温度および組織での連続的な保持時間とが、帯鋼の材料特性に影響を与えるための極めて多種の可能性を生ぜしめる。このような帯鋼に対する材料として、しばしば炭素鋼が使用される。
【0004】
炭素鋼の調質時の特に有利な組織は、いわゆる「ベイナイト」である。ベイナイト組織は、このようなベイナイト組織を備えたワークピースの処理可能性に関して極めて良好な特性を有していて、したがって、産業上の多数の使用事例において、特に比較的肉薄の薄板材料またはこれに類するものとしても必要になる。この場合、このようなベイナイト組織の形成は、所望の組織を単に付加的にではなく、このような炭素鋼の組織構造全体に生ぜしめるために、処理パラメータに関して極めて良好に維持されなければならない。したがって、特に純粋なベイナイト組織の形成は、金属組織学的に手間のかかる、欠陥が生じやすい過程である。この場合、炭素鋼のオーステナイト化後、ベイナイト組織を損傷させる別の組織成分が炭素鋼に得られないように、ベイナイト組織の形成が、等温の条件の正確な維持下で保証されることが著しく重要となる。ベイナイト組織の品質にほとんど要求を課さない簡単な使用目的は、包装帯材の製作である。
【0005】
種々異なるベイナイト組織を形成するために、ベイナイトの所要の品質に応じて、種々異なる形成装置ひいては方法ガイドも基本的に知られている。したがって、たとえば米国特許第6632301号明細書に基づき、オーステナイト化後、帯鋼を急冷のために金属溶融浴を通して案内し、この金属浴を通る帯鋼の通過後、帯材を金属浴の残滓から少なくとも大部分で洗浄し、引き続き、帯材を、ベイナイト組織への炭素鋼の等温の変態が行われるチャンバ内でメアンダ状に案内しかつ変向させることが公知である。この過程では、等温の変態ユニット内での炭素鋼の複数回の巻付けによって、ベイナイト形成に関する炭素鋼の特性が悪化させられ、このような帯材の平坦性も減少することが不利である。
【0006】
ベイナイトの組織を形成するための別の方法が知られている。この方法は、炭素鋼の変態を完全に金属浴またはこれに類する箇所で実施する。これによって、通走長さひいては金属浴自体が極めて大きな寸法を有していなければならず、これによって、たとえば金属充填物または塩充填物に対する高い固定のコストと、塩浴の熱膨張時の問題とが生ぜしめられる。
【0007】
したがって、本発明の課題は、炭素鋼への高価値のベイナイト組織の形成を極めて正確に実施することができ、このベイナイト組織の特性を極めて均一に維持することができる方法と、この方法を実施するために適した装置とを提案することである。
【0008】
この課題を解決するために本発明の方法では、炭素鋼が、オーステナイト化後、体積に関して僅かな量の急冷媒体を備えた浴を通走し、この場合、炭素鋼の全組織に対する規定可能な割合のベイナイト組織が、急冷媒体を備えた浴内で形成されるまで、炭素鋼を急冷媒体に接触させ、浴からの炭素鋼の進出時に、該炭素鋼の表面の急冷媒体の残分をガスの作用によって炭素鋼から除去し、引き続き、ベイナイトへの炭素鋼の残りの組織成分の変態を、後置された等温の温度調整ステーションにおいてベイナイトに対する変態温度で、等温の温度調整ステーションを通る通走時の炭素鋼の各変向なしに、ベイナイト組織が完全に炭素鋼の内部に形成されるまで行うようにした。
【0009】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼の組織に対する、急冷媒体を備えた浴の作用時間を、炭素鋼のベイナイト組織のほぼ半分が、急冷媒体を備えた浴内で形成されるまで選択する。
【0010】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、急冷媒体を備えた浴の作用時間と、等温の温度調整ステーション内での炭素鋼の滞留時間とが、ベイナイト形成の典型的な全期間に相当している。
【0011】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、急冷媒体を備えた浴から等温の温度調整ステーションへの移行を、ほぼ炭素鋼の温度変化なしにベイナイト組織の形成を継続して行う。
【0012】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼の表面からの急冷媒体の残分の除去を炭素鋼からの急冷媒体の吹払いによって実施する。
【0013】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、急冷媒体の吹払いを保護ガス雰囲気下で、有利には温度調整された不活性ガスによって行う。
【0014】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼からの急冷媒体の吹払いに用いられるガス、有利には不活性ガスの温度調整を調整し、これによって、炭素鋼の温度の変化をベイナイト組織の連続的な形成時に回避する。
【0015】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼からの急冷媒体の吹払いに用いられるガス、有利には不活性ガスの温度調整を調整し、これによって、急冷媒体を備えた浴からの進出時に生ぜしめられる、炭素鋼における変態熱を、温度調整された不活性ガスによって導出し、炭素鋼の温度をほぼコンスタントにベイナイトに対する変態温度に保持する。
【0016】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、急冷媒体の吹払いの領域で、たとえば変向ローラによる炭素鋼の変向を行わない。
【0017】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、等温の温度調整ステーション内での等温の温度ガイドの長さを炭素鋼の通走速度に関連して調整し、これによって、等温の温度調整ステーションの内部で炭素鋼に完全なベイナイト組織を形成する。
【0018】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼が、ベイナイト形成の完全な終了後、冷却装置を通走する。
【0019】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼を冷却装置内で、表面変化、特に表面の酸化または変色を阻止する温度に冷却する。
【0020】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、冷却装置を保護ガス雰囲気下で運転し、これによって、表面変化、特に表面の酸化または変色を阻止する。
【0021】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、冷却装置を空気下で運転し、これによって、炭素鋼のブルーイングの形の表面変化を発生させる。
【0022】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼を冷却装置からほぼ100℃またはそれ未満の進出温度で進出させる。
【0023】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、急冷媒体として金属浴を使用する。
【0024】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、急冷媒体として塩浴/鉛浴/ビスマス浴を使用する。
【0025】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、オーステナイト化ステーション内に進入するまだ比較的低温の炭素鋼が、オーステナイト化ステーション内への進入前に前温度調整のために加熱浴、有利には急冷媒体を備えた浴の領域を通走する。
【0026】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼が、すでにオーステナイト化ステーション内への進入前に浴を通走し、オーステナイト化後の炭素鋼の冷却時に放出された急冷熱を、まだ比較的低温でオーステナイト化ステーション内に進入する炭素鋼に放出し、その後、該炭素鋼がオーステナイト化ステーション内に進入することによっても、急冷媒体を備えた浴を炭素鋼のベイナイト形成に対する変態温度に保持する。
【0027】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼のオーステナイト化の領域で該炭素鋼を、オーステナイト化ステーション内に進入したまだ比較的低温の炭素鋼が、オーステナイト化温度にもたらされた、オーステナイト化ステーションの進出側における炭素鋼の熱放射線によって一緒に加熱されるように案内する。
【0028】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、オーステナイト化ステーションの進出側における、すでにより高く温度調整された炭素鋼の、進入したまだ比較的低温の炭素鋼に放出される熱放射線が、炭素鋼を極めて均一に加熱し、オーステナイト化時の定常の温度調整状況と、炭素鋼のオーステナイト組織の均質化とを生ぜしめる。
【0029】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、オーステナイト化ステーション内の炭素鋼の滞留時間を、すでにより高く温度調整された炭素鋼から放出される熱放射線の影響下で、均質のオーステナイト組織が炭素鋼に生ぜしめられるように長く選択する。
【0030】
本発明の方法の有利な実施態様によれば、炭素鋼をオーステナイト化ステーション内で誘導加熱する。
【0031】
さらに、前述した課題を解決するために本発明の装置では、等温の温度調整ステーションが、ほぼ鉛直方向に塔状に形成されており、等温の温度調整ステーションを通る炭素鋼の自由な通走の長さが、ベイナイトへの残りの組織の変態を炭素鋼の変向なしに許容しているようにした。
【0032】
本発明の装置の有利な構成によれば、炭素鋼の全組織に対する規定可能な割合を備えたベイナイト組織の形成によって、浴内の急冷媒体の体積が最小化可能である。
【0033】
本発明の装置の有利な構成によれば、急冷媒体を備えた浴の内部に変向ローラが配置されており、これによって、浴からのかつ等温の温度調整ステーション内への炭素鋼の引上げおよび/またはオーステナイト化ステーションから浴内への炭素鋼の浸漬が、ほぼ鉛直方向に行われるようになっている。
【0034】
本発明の装置の有利な構成によれば、急冷媒体を備えた浴と等温の温度調整ステーションとの間に、急冷媒体の残分を炭素鋼の表面から除去するための装置、特に急冷媒体を炭素鋼から吹き払うための吹払い装置が配置されている。
【0035】
本発明の装置の有利な構成によれば、等温の温度調整ステーション内のかつ/または冷却ステーション内の保護ガス雰囲気の温度調整のために、調整される保護ガス加熱手段または水熱交換器が配置されている。
【0036】
本発明の装置の有利な構成によれば、加熱装置が、等温の温度調整ステーション内の保護ガス雰囲気を温度調整するようになっている。
【0037】
本発明の装置の有利な構成によれば、炭素鋼が、オーステナイト化の領域を通走するようになっており、これによって、オーステナイト化ステーション内に進入したまだ比較的低温の炭素鋼が、オーステナイト化温度にもたらされた、オーステナイト化ステーションの進出側における炭素鋼の熱放射線によって一緒に加熱されるようになっている。
【0038】
本発明の装置の有利な構成によれば、ほぼ塔状に形成された温度調整ステーションが、ハウジングを有しており、等温に保持したい炭素鋼が、急冷媒体を備えた浴から第1のチャンバ内で鉛直方向に下方から上方に通走しかつ冷却したい炭素鋼が、隣り合って配置された第2のチャンバ内で鉛直方向に上方から下方に通走するように、ハウジングが分割されている。
【0039】
本発明の装置の有利な構成によれば、塔状のハウジングの一番上側の点に変向ユニットが配置されており、該変向ユニットによって、そこで完全にベイナイトに変態された炭素鋼が、等温の温度調整ステーションから冷却ステーション内に変向させられるようになっている。
【0040】
本発明の装置の有利な構成によれば、急冷媒体を備えた浴内に塩混合物/鉛混合物/ビスマス混合物が注入されている。
【0041】
本発明の装置の有利な構成によれば、急冷媒体を備えた浴が、ソルバイトへの炭素鋼の変態のために必要になる温度に保持されるようになっており、ソルバイト組織が、完全にまたはほぼ完全に形成されるまで、炭素鋼が、急冷媒体に接触させられるようになっており、次いで、後置された等温の温度調整ステーション内で、主として、もはや形成されたソルバイト組織を備えた炭素鋼の冷却しか実施可能でないことによって、当該装置が、ソルバイト組織を形成するために使用可能である。
【0042】
請求項1記載の本発明は、第1のステップにおいて、オーステナイト化温度を上回る温度での炭素鋼のオーステナイト化を実施し、その後、炭素鋼をオーステナイト化温度よりも僅かな温度に冷却するための急冷媒体を備えた浴内へのオーステナイト化された炭素鋼の供給を行い、炭素鋼をベイナイトに対する変態温度に調整し、その後、変態温度での所定の期間にわたる炭素鋼の保持と、炭素鋼の後続の冷却とを行う、炭素鋼、特に帯鋼にベイナイト組織を連続的に形成するための方法から出発する。上位概念を成すこのような方法は、炭素鋼が、オーステナイト化後、体積に関して僅かな量の急冷媒体を備えた浴を通走し、この場合、炭素鋼の全組織に対する規定可能な割合のベイナイト組織が、急冷媒体を備えた浴内で形成されるまで、炭素鋼を急冷媒体に接触させ、浴からの炭素鋼の進出時に、この炭素鋼の表面の急冷媒体の残分をガスの作用によって炭素鋼から除去し、引き続き、ベイナイトへの炭素鋼の残りの組織成分の変態を、後置された等温の温度調整ステーションにおいてベイナイトに対する変態温度で、等温の温度調整ステーションを通る通走時の炭素鋼の各変向なしに、ベイナイト組織が完全に炭素鋼の内部に形成されるまで行うことによって改良される。
【0043】
急冷媒体および等温の温度調整ステーションにおける連続する2つの区分への炭素鋼のベイナイト組織の調整の分割は、急冷媒体を備えた浴を体積に関して比較的小さく保つことができ、ベイナイトの変態の一部が浴内で行われさえすればよいという利点を提供する。同時に、等温の温度調整ステーションを通る通走長さを最小限に抑えることもできる。なぜならば、すでに変態の一部が、急冷媒体を備えた浴内で行われ、これによって、そのほかに必要となる、等温の温度調整ステーションの内部での炭素鋼の複数回の変向が回避されるからである。これによって、特にたとえば帯鋼として形成された炭素鋼の平坦性の、ベイナイトを形成するための公知の方法では回避することができない損害を回避することができる。また、浴および等温の温度調整ステーションでのベイナイトの形成の割合の変化は、ベイナイトの形成に影響を与え、これによって、炭素鋼の種々異なる品質も形成することができるという多種多様な可能性も提供する。このためには、特にたとえば浴の温度および等温の温度調整ステーション内の温度もしくはベイナイト形成の両区分を通る炭素鋼の通走時間が変えられてよい。
【0044】
さらに、急冷媒体を備えた浴から等温の温度調整ステーションへの移行の領域で、炭素鋼の表面からの急冷媒体の残分の除去が、ガスの作用によって実施されることが著しく重要となる。非接触式にガスによって実施される、炭素鋼の表面からの急冷媒体の残分のこの除去は、等温の温度調整ステーションと、後続のステーションとでの典型的に帯状の炭素鋼の後続処理のために極めて重要となる。なぜならば、急冷媒体の各連去りは、急冷媒体が炭素鋼に堆積させられるかまたは外部から炭素鋼に被着された別の物質の作用が変化させられることによって、炭素鋼の表面の損傷を招き得るからである。これによって、過度に多くの急冷媒体が浴から取り出され、これによって、新たな急冷媒体での浴の常時の補充が必要となり、これによって、不要なコストが生ぜしめられることも回避される。この場合、急冷媒体の残滓を除去するためのガスの使用は、このような残滓の除去のための正確に制御可能な穏やかな可能性を許容する。この可能性は、炭素鋼の表面の機械的な損傷も阻止する。
【0045】
さらに、製造された炭素鋼の品質に対して、ベイナイト組織が完全に炭素鋼の内部に形成されるまで、等温の温度調整ステーション内での炭素鋼の変向が回避されることが重要となる。なぜならば、各変向または形成されたベイナイト組織の別の機械的な負荷が、形成されたベイナイト組織の品質もしくは量にマイナスの影響を与え、これによって、等温の温度調整ステーションを通る炭素鋼の通走の間のあらゆる形式の変向もしくは別の機械的な負荷が回避されることが望ましいからである。まさにこの点でも、提案された方法が、ベイナイト組織に対する既知の形成法の主要な欠点を排除する。
【0046】
本発明による方法の改良形では、炭素鋼のベイナイト組織のほぼ半分が、急冷媒体を備えた浴内で形成されるまで、炭素鋼の組織に対する急冷媒体を備えた浴の作用時間が選択されると特に有利である。これによって、ベイナイト組織の形成を制御することができ、急冷媒体を備えた浴と等温の温度調整ステーションとの間の移行時に、炭素鋼の温度における大きな急激変化を確実に回避することができる。この急激変化は、ベイナイト組織の、まだそれほど十分に実施されていない形成時には抑制しがたい恐れがある。しかし、基本的には、急冷媒体を備えた浴の内部で、前述した約50%よりも低いかまたは高い割合のベイナイト組織を形成することも可能である。
【0047】
さらに、急冷媒体を備えた浴の作用時間と、等温の温度調整ステーションでの炭素鋼の滞留時間とが、ベイナイト形成の典型的な全期間に相当していると有利である。これによって、典型的な炭素鋼において、一般的に、オーステナイト相からベイナイトへの組織の完全な変態を達成することができる。この場合、分割は、すでに前述したように、浴および等温の温度調整ステーションでのベイナイト組織の形成に応じて種々異なる形式で調整されてよい。
【0048】
ベイナイトへの炭素鋼の組織の完全な変態の実施時の成果に対して、急冷媒体を備えた浴から等温の温度調整ステーションへの移行が、ほぼ炭素鋼の温度変化なしにベイナイト組織の形成を継続して行われることが重要となる。ベイナイトの形成は、正確に規定された温度状況をベイナイト組織の比較的長い形成の間に要求する。この場合、この時間の間の炭素鋼の温度のすでに小さな変化が、組織の品質に著しい影響を与え得る。急冷媒体を備えた浴と等温の温度調整ステーションとの間には、周辺と炭素鋼とのそれぞれ異なる接触状況が生ぜしめられ(まず典型的には、浴内の金属混合物/塩混合物および等温の温度調整ステーション内の不活性ガス)、さらに、浴から等温の温度調整ステーションへの移行時のこの媒体急激変化が、炭素鋼の温度の急激な変化も生ぜしめ得るので、この場合に場合により生ぜしめられる温度ピークを完全に回避するかまたは許容可能な値に制限することが特に重要となる。この温度ピークが回避されないかもしくは制限されない場合には、浴と温度調整ステーションとの間のインタフェースにおけるこの温度ピークを通る炭素鋼の通走時に少なくとも短時間、ベイナイト組織の所望の状態と異なる組織状態が生ぜしめられる。これによって、全体的にベイナイト組織の品質が減少させられる。
【0049】
急冷媒体を備えた浴と等温の温度調整ステーションとの間の移行の改善のためには、オーステナイト化ステーションから、急冷媒体を備えた浴への炭素鋼の移行が、浴表面に対して垂直に行われても有利となり得る。これによって、浴からの炭素鋼の進出に関する極めて均一なかつ規定可能な特性が得られる。同時に、浴からの炭素鋼の鉛直方向の急激な進出によって、浴からの急冷媒体の連去りが最小限に抑えられている。
【0050】
有利な構成では、炭素鋼の表面からの浴の残分の除去が、ガスによる炭素鋼からの急冷媒体の吹払いによって実施されることが可能となる。このような吹払いは非接触式に行われ、これによって、炭素鋼の表面を変化させない。この変化は、たとえば接触するシール部材による炭素鋼の掻取りまたは引進みのような接触式の方法によって生ぜしめられ得る。もう1つに、吹払いは媒体流の相応の調整時に極めて確実であると共に有効であり、また、その他の点では、たとえば接触式の除去法で必要となる装置が、非接触式の作用形式に基づき使用されない。この場合、急冷媒体の吹払いが保護ガス雰囲気下で行われることが可能となる。保護ガス雰囲気下での急冷媒体の吹払いは、急冷媒体を備えた浴と等温の温度調整ステーションとの間の移行の領域で空気が炭素鋼の表面に到達し得ず、これによって、たとえば空気流入に相俟った酸化またはその他の過程による炭素鋼の表面の変化が損なわれないようになっている。
【0051】
この場合、急冷媒体の吹払いが、温度調整されたガス、特に温度調整された不活性ガスによって行われると一層有利である。急冷媒体を炭素鋼から吹き払うガスもしくは不活性ガスの温度調整によって、炭素鋼の温度の極めて正確な温度制御を達成することができる。これによって、ベイナイト組織の形成が連続的な吹払いにもかかわらず損なわれないかまたはベイナイト組織が変化させられない。したがって、炭素鋼からの急冷媒体の吹払いに用いられるガスの温度調整を調整することができ、これによって、ベイナイト組織の連続的な形成時の炭素鋼の温度の変化が回避されるようになっている。これによって、たとえば急冷媒体を備えた浴と等温の温度調整ステーションとの間の移行の領域で生ぜしめられる、炭素鋼の内部の温度変化を補償することができる。さもないと、等温の温度調整ステーションのガス状の周辺への移行に基づく組織の連続的な変態による浴からの進出後の炭素鋼の温度の上昇が、炭素鋼の、ベイナイトの組織の品質にマイナスの影響を与える過熱に繋がる恐れがある。このために、別の構成では、炭素鋼からの急冷媒体の吹払いに用いられるガスの温度調整を調整することができ、これによって、急冷媒体を備えた浴からの進出時に生ぜしめられる、炭素鋼における変態温度が、温度調整された不活性ガスによって導出され、炭素鋼の温度が、ほぼコンスタントにベイナイトに対する変態温度に保持されるようになっている。
【0052】
さらに、ベイナイトの組織の品質に対して、急冷媒体の吹払いの領域で変向ローラによる炭素鋼の変向が行われないことが極めて重要となる。ベイナイト組織の形成の間のこの領域での炭素鋼の変向は、強制的に、形成されたベイナイト組織を機械的な効果と温度特性の変化とによって変化させ、これによって、相応の変向の回避によってしか、ベイナイト組織の品質を保証することができない。これは、たとえば急冷媒体を備えた浴から等温の温度調整ステーションへの炭素鋼の移行が、浴表面に対してほぼ垂直に行われることによって達成することができる。浴表面に対して垂直に炭素鋼は急冷媒体の吹払いの領域に進入し、そこから引き続き鉛直方向に上向きに進み、これによって、炭素鋼の変向がまだ完全に浴の内部で行われ、これによって、極めて均一な条件下で浴の内部で行われる。この場合、浴の内部での変向は、ベイナイト組織の形成にほとんどないし全く影響を与えない。なぜならば、浴が、ここでは、炭素鋼の温度ガイドに対する相応の緩衝作用を実行しているからである。
【0053】
さらに、等温の温度調整ステーション内での等温の温度ガイドの長さが、炭素鋼の通走速度に関連して調整され、これによって、等温の温度調整ステーションの内部で炭素鋼に完全なベイナイト組織を形成することができることが重要となる。この場合、急冷媒体を備えた浴内での方法ガイドに基づき、まだ所望のベイナイトの状態を達成していない炭素鋼の、まだベイナイトでない組織の残りの変態は、極めて不変の条件下で等温の温度調整ステーションの内部で行われる。この温度調整ステーションは、ほぼ同一の状況を炭素鋼の軌道のより長い区分にわたって保証し、この場合、機械的なまたは熱的な種類のマイナスの影響を炭素鋼に与えない。その後、等温の温度調整ステーションを通る炭素鋼の軌道の終端の領域で始めて、完全なベイナイトの組織が炭素鋼に付与されている。この場合、等温の温度調整ステーションの長さは、相応の代(しろ)を備えて設計することができる。にもかかわらず、等温の温度調整ステーションを通る炭素鋼のそれぞれ異なる通走速度で常にベイナイトの組織への完全な変態が確保されている。
【0054】
さらに、炭素鋼が、ベイナイト組織の完全な調整後、表面変化、特に表面の酸化または変色を阻止する温度に炭素鋼を冷却する冷却装置を通走すると有利である。炭素鋼の、形成されたベイナイト組織の可能な限り短い適切な冷却によって、もはや追補的な組織変化により、形成されたベイナイト組織が許容できないほど変態し得ないようになっているかまたは完全な製品である炭素鋼が有するべきではない形式で、炭素鋼の表面が、たとえば酸化または炭素鋼の周辺によって生ぜしめられる別の変化により変化させられるようになっている。この冷却プロセスが短く保たれれば保たれるほど、別の影響量が、ベイナイトの炭素鋼の許容でない変化を生ぜしめるためのますます少ない時間を有している。この場合、別の構成では、冷却装置が、表面変化、特に表面の酸化または変色を阻止するために、保護ガス雰囲気下で運転されてもよい。しかし、別の構成では、炭素鋼のブルーイングの形の表面変化を形成するために、冷却装置が適切に空気下で運転されることも可能である。炭素鋼のこのような表面は、このような炭素鋼の数多くの使用目的に対して要求されているかもしくは有利である。炭素鋼の表面の許容できない変化の確実な回避は、炭素鋼が冷却装置からほぼ100℃またはそれ未満の進出温度で進出する場合に回避することができる。この温度では、炭素鋼の表面の熱的な活性化がもはや僅かでしかなく、一般的にもはや表面の許容できない変化に繋がらない。
【0055】
急冷媒体として金属浴が使用されると特に有利である。このような金属浴は、基本的に、炭素鋼の調質に基づき知られている。この場合、ここに付与された方法に対して、金属浴として塩浴/鉛浴/ビスマス浴が使用されると有利である。金属浴のこの組合せによって、ベイナイトの組織を形成するための相応の温度特性ならびに湿潤特性および緩衝作用が確実に保証されていることが達成される。
【0056】
オーステナイト化ステーション内への進入前の炭素鋼の加熱状況の改善は、オーステナイト化ステーション内に進入するまだ比較的低温の炭素鋼が、オーステナイト化ステーション内への進入前に前温度調整のために加熱浴、有利には急冷媒体を備えた浴の領域を通走する場合に達成することができる。このような加熱浴、特に急冷媒体を備えた浴によって、炭素鋼の極めて均一な加熱が可能となる。この場合、急冷媒体を備えた浴内への浸漬によって、同時に、後続のベイナイト組織の形成の段階での炭素鋼の急冷時にいずれにせよ生ぜしめられる変態熱の使用も可能になる。これによって、急冷媒体を備えた浴を炭素鋼のベイナイト形成のための変態温度に保持することができる。なぜならば、炭素鋼がすでにオーステナイト化ステーション内への進入前にこの浴を通走し、オーステナイト後の炭素鋼の冷却時に放出された急冷熱を、まだ比較的低温でオーステナイト化ステーション内に進入した炭素鋼に放出し、その後、この炭素鋼がオーステナイト化ステーション内に進入するからである。
【0057】
オーステナイト化のための炭素鋼の加熱時の状況の更なる改善は、オーステナイト化ステーション内に進入したまだ比較的低温の炭素鋼が、オーステナイト化温度にもたらされた、オーステナイト化ステーションの進出側における炭素鋼の熱放射線によって一緒に加熱されるように、炭素鋼のオーステナイト化の領域で炭素鋼が案内される場合に達成することができる。炭素鋼の、すでにオーステナイト化温度に位置する区分から周辺に放出される熱放射線によって、炭素鋼の、まだ進入領域に位置する区分を自動的に一緒に加熱することができ、これによって、オーステナイト相での炭素鋼のより良好な均質化ひいては炭素鋼の内部での炭素の改善された溶解可能性を達成することができる。これによって、炭素鋼の加熱のために付加的なコストが生ぜしめられることなしに、ベイナイト組織の形成も促進される。これによって、すでにより高く温度調整された、オーステナイト化ステーションの進出側における炭素鋼の、進入したまだ比較的低温の炭素鋼に放出された熱放射線が、炭素鋼を極めて均一に加熱し、オーステナイト化時の定常の温度調整状況と、炭素鋼のオーステナイト組織の均質化とを生ぜしめることが達成される。さらに、オーステナイト化ステーション内の炭素鋼の滞留時間が、すでにより高く温度調整された炭素鋼から放出される放射熱の影響下で、均質なオーステナイト組織が炭素鋼に生ぜしめられるように長く選択されることによって、炭素鋼の加熱の品質を改善することができる。
【0058】
オーステナイト化ステーション内での炭素鋼に対する可能な加熱法は、炭素鋼の誘導加熱であってよい。当然ながら、調質技術において通常使用される別の加熱法も可能である。
【0059】
さらに、本発明は、炭素鋼、特に帯鋼にベイナイト組織またはソルバイト組織を形成するための装置、特に請求項1記載の方法を実施するための装置であって、当該装置が、オーステナイト化ステーションを有しており、このオーステナイト化ステーションによって、炭素鋼が、オーステナイト化温度を上回る温度にもたらされるようになっており、当該装置が、さらに、オーステナイト化された炭素鋼をオーステナイト化温度よりも僅かな温度に冷却するための急冷媒体を備えた浴と、炭素鋼を所定の期間にわたって変態温度で保持するための等温の温度調整ステーションと、最後に、炭素鋼を引き続き冷却するための冷却ステーションとを有している形式のものを説明する。このような形式の装置は、等温の温度調整ステーションが、ほぼ鉛直方向に塔状に形成されており、等温の温度調整ステーションを通る炭素鋼の自由な通走の長さが、ベイナイトへの残りの組織の変態を炭素鋼の変向なしに許容していることによって改良される。このことは、少なくともベイナイトへの残りの組織の変態を炭素鋼の変向または炭素鋼へのその他の機械的な影響なしに行うことができるように、等温の温度調整ステーションの内部の炭素鋼の自由な通走の長さが形成されていることが望ましいので重要である。等温の温度調整ステーション内でのベイナイトの形成の間の炭素鋼の変向または炭素鋼へのその他の機械的な影響によって、ベイナイトの形成に対するマイナスの影響が生ぜしめられ得る。この影響は、このように製造された炭素鋼の品質特性の悪化を生ぜしめ得る。したがって、等温の温度調整ステーション内でのベイナイトの残りの形成が、たとえば変向またはこれに類するものによる別の機械的な影響なしに行われ、完全なベイナイト組織の形成の終了後に初めて、炭素鋼に再び機械的に影響が与えられることが望ましい。
【0060】
さらに、炭素鋼の全組織に対する規定可能な割合を備えたベイナイト組織の形成によって、浴内の急冷媒体の体積が最小化可能である。この場合、急冷媒体を備えた浴内では、ベイナイト組織への変態を生ぜしめるために重要となる第1の変態ステップを行うことができる。この場合、その後、後置された等温の温度調整ステーション内で残りの変態が行われる。ベイナイト組織の形成の勾配は、ベイナイトの変態温度の作用の期間にわたって線形に延びていないので、急冷媒体の比較的僅かな量と、これに比べて時間的に長い、等温の温度調整ステーション内での温度の作用とによって、急冷媒体の所要の量を減少させることができ、これによって、急冷媒体を備えた浴を全体的に、仮にベイナイト組織への変態が完全にこのような浴の内部で行われなければならない場合よりも著しく僅かに寸法設定することができる。また、急冷媒体を備えた浴の内部でのベイナイト組織への極めて集中的な変態によって、等温の温度調整ステーションを通る通走時間の長さが最小化可能となる。これによって、このような等温の温度調整ステーションの内部での炭素鋼の従来慣用の変向を完全に回避することができるかまたは少なくとも極めて著しく減少させることができる。これによって、ベイナイト組織の品質の改善と同時に、形成法の経済性が高められるものの、このような方法の、設備に関する組換えに対するコストも、これによって著しく減少させることができる。
【0061】
さらに、急冷媒体を備えた浴の内部に変向ローラが配置されており、これによって、浴からのかつ等温の温度調整ステーション内への炭素鋼の引上げおよび/またはオーステナイト化ステーションから浴内への炭素鋼の浸漬がほぼ鉛直方向に行われることが重要となる。これによって、浴への、特に浴から等温の温度調整ステーションへの炭素鋼の、極めて規定された均一な移行が獲得可能となる。この移行は、ベイナイト組織の形成時の温度経過の維持に対して極めて重要となる。急冷媒体の内部への変向ローラの配置と、これに相俟って、変向ローラの、急冷媒体と同一の温度とによって、組織形成に対する変向もしくは変向ローラのマイナスの影響が十分に回避される。
【0062】
さらに、急冷媒体を備えた浴と等温の温度調整ステーションとの間に、炭素鋼の表面から急冷媒体の残分を除去するための装置、特に炭素鋼から急冷媒体を吹き払うための吹払い装置が配置されていることが可能となる。炭素鋼の表面から浴の残分を除去するためのこのような装置は、1つには、浴の急冷媒体を可能な限り一緒に保ち、これによって、急冷媒体の連去りに基づく損失を最小限に抑えるために働き、もう1つに、炭素鋼の表面における急冷媒体のこのような残分は、後続の処理ステップに対して場合により不利に作用し、したがって、回避されなければならない。
【0063】
別の構成では、等温の温度調整ステーションおよび/または冷却ステーションでの保護ガス雰囲気の温度調整のために、調整される保護ガス加熱手段または水熱交換器が配置されていることが可能である。このような熱交換器によって、等温の温度調整ステーション内での保護ガス雰囲気の温度に関する極めて精緻の調整を達成することができる。
【0064】
さらに、加熱装置によって、等温の温度調整ステーション内の保護ガス雰囲気を温度調整することができる。当然ながら、等温の温度調整ステーションの内部の保護ガス雰囲気に対する別の加熱技術も可能である。
【0065】
装置の、設備に関する組換えに対して、等温の温度調整ステーションおよび/または冷却装置が、鉛直方向に配置された、場合により共通の塔状のハウジング内に収容されていると有利である。このような塔状のハウジングによって、等温の温度調整ステーションと冷却装置とを通る炭素鋼の、この領域で鉛直方向の案内に対する所要の構成スペースが最小限に抑えられる。この場合、別の構成では、等温に保持したい炭素鋼が、急冷媒体を備えた浴から第1のチャンバ内で鉛直方向に下方から上方に通走しかつ冷却したい、いまや完全にベイナイトに変態された炭素鋼が、第1のチャンバに隣り合って配置された第2のチャンバ内で鉛直方向に上方から下方に通走するように、塔状のハウジングを分割することができる。これによって、少なくとも部分的にベイナイトに調整された組織の後続処理時の直接的に連続する処理ステップが、スペースに関しても極めてコンパクトに連続的に実施される。
【0066】
別の構成では、塔状のハウジングの一番上側の点に変向ユニットが配置されていてよい。この変向ユニットによって、完全にベイナイトに変態された炭素鋼がそこで等温の温度調整ステーションから冷却ステーション内に変向させられる。塔状のハウジングの一番上側の点での変向は、塔状のハウジング内に配置された両処理チャンバのコンパクトな構造に貢献する。
【0067】
別の有利な構成では、急冷媒体を備えた浴が、ソルバイトへの炭素鋼の変態のために必要になる温度に保持されるようになっており、ソルバイト組織が、完全にまたはほぼ完全に形成されるまで、炭素鋼が、急冷媒体に接触させられるようになっており、次いで、後置された等温の温度調整ステーション内で、主として、もはや形成されたソルバイト組織を備えた炭素鋼の冷却しか実施可能でないことによって、当該装置を、ソルバイト組織を形成するためにも使用可能にすることができる。これによって、種々異なる形成過程の間での設備のより大きな組換えが必要になることなしに、同じ設備でベイナイト組織の形成だけでなく、ソルバイト組織の形成も実施することができることが達成される。金属浴内の温度もしくは等温の温度調整ステーション内の温度および炭素鋼の通走速度がソルバイト組織の形成に適合されるようになっていさえすればよい。むしろ、この場合、ソルバイト組織の形成時の等温の温度調整ステーションは、本来、浴を通る通走においてすでにほぼ完全に形成されたソルバイト組織を冷却するために作用する。これによって、相応の設備の使用の経済性がさらに一層向上させられる。
【0068】
当該方法を実施するための本発明による装置の特に有利な構成は図面に示してある。
【0069】
図1には、本発明による方法を実施するための装置の構造が極めて概略的に示してある。この場合、ここから、基本的な方法経過も明らかになる。
【0070】
当該装置には、本発明による方法を実施するためのこのような設備の主要な区分しか示していない。この区分は、ベイナイトの組織の形成時の温度調整に直接関係している。炭素鋼1は、図1で見て右側に示した入口側で種々異なるローラ9を介して巻上げユニット(図示せず)によって、急冷媒体21を備えた浴2の予熱ゾーン10の領域に進入する。この領域では、炭素鋼1が、そこに配置されたローラ11を介して、そこですでに加熱された急冷媒体21を通して案内される。この急冷媒体21は、さらに詳しく説明すると、浴2の左側の部分において、そこでオーステナイト化ステーション3の通走後に浴2内に進入した炭素鋼1の急冷によって加熱される。これによって、炭素鋼1が予熱ゾーン10で予熱され、その後、鉛直方向上向きでオーステナイト化ステーション3内に進入する。このオーステナイト化ステーション3では、たとえば誘導加熱手段4を介して加熱ゾーン6で炭素鋼1がオーステナイト化温度の範囲内に加熱される。オーステナイト化ステーション3の上側の領域には、変向ユニット5が示してある。この変向ユニット5の通過後、炭素鋼1は再び鉛直方向下向きで浴2に向かって搬送される。その後、補償ゾーン7で炭素鋼1が最終的なオーステナイト化温度に加熱される。この場合、炭素鋼1は補償過程によって極めて均質なオーステナイト組織をとり、この場合、加熱ゾーン6に向かって熱放射線8も放出する。この熱放射線8は、そこで真っ直ぐに通走する炭素鋼1に衝突し、この炭素鋼1を同じく一緒に加熱する。オーステナイト化ステーション3の内部への機能エレメントのこの配置によって、炭素鋼1が極めて均一に加熱され、炭素が炭素鋼1の内部で均一に溶解するようになっている。
【0071】
炭素鋼1がオーステナイト化ステーション3から浴2に向かって下側で進出した後、炭素鋼1が、やはり浴2内に配置された変向ローラ11を介して変向させられ、この場合、急冷媒体21で冷却される。この場合、この急冷媒体21は、ベイナイト組織を形成するために、所定の温度に調整されている。この温度は約400℃であり、典型的に炭素鋼1に対してベイナイト組織を形成するために使用される。炭素鋼1が浴2を通って、左側に配置された変向ローラ11に向かって塔状のハウジング14の下方に通走すると、炭素鋼1がベイナイト化温度に冷却される。この場合、炭素鋼1の組織の一部がベイナイト組織に変態される。浴2を通る通走の長さに応じて、炭素鋼1のオーステナイト組織のそれぞれ異なる割合がベイナイト組織に変態される。典型的には、この割合は、たとえばオーステナイト組織の約半分がベイナイト組織に変態されるように選択される。
【0072】
浴2の通走後、左側に配置された変向ローラ11において炭素鋼1が鉛直方向上向きで、等温の温度調整ステーション13と、この温度調整ステーション13に配置された熱交換器20とを備えた塔状のハウジング14内に案内される。温度調整ステーション13では、ベイナイト組織の残りの形成が、さらに詳しく説明する形式で実施される。前もって炭素鋼1はまだ吹払い手段12の領域に進入する。この吹払い手段12では、残りの急冷媒体21が噴流式吹払いによって炭素鋼1の表面から吹き払われる。この場合、この自体公知の噴流式吹払いは、たとえば不活性のガスによって、炭素鋼1が可能な限り温度ピークを噴流式吹払い手段12の通過時に有しておらず、この領域でのベイナイトの形成を可能な限り妨害されずに継続し、等温の温度調整ステーション13の領域に最終的に案内することができるような温度で実施されることが特に重要となる。これには、炭素鋼1が鉛直方向で浴2内にオーステナイト化ステーション3から導入されるだけでなく、鉛直方向で浴2から再び吹払い手段12の領域に上向きに進出し、炭素鋼1の変向が専ら浴2の内部で行われることも寄与する。
【0073】
等温の温度調整ステーション13は、いま、熱交換器20による相応の温度調整を介して、たとえば不活性ガスを有している。この不活性ガスは、ベイナイト化温度が等温の温度調整ステーション13の内部に可能な限り均一に付与されるような温度に保持されている。炭素鋼1が等温の温度調整ステーション13内で機械的に負荷されないことによって、炭素鋼1の、浴2内でまだ形成されなかった残りの組織を完全にベイナイト組織に変態することができ、これによって、等温の温度調整ステーション13の終端でかつ変向ユニット15の直前で炭素鋼1が完全にベイナイトの組織を有している。
【0074】
その後、等温の温度調整ステーション13の通過後、炭素鋼1が変向ユニット15を介して、塔状のハウジング14の、等温の温度調整ステーション13に隣り合った領域に案内される。この領域では、炭素鋼1が冷却ユニット17,18に進入する。この冷却ユニット17,18では、たとえば再び不活性ガスを介して炭素鋼1の冷却が行われる。この場合、冷却器18は、冷却ユニット17からの出口領域での炭素鋼1の冷却が100℃またはそれ未満の温度であるように、冷却ユニット17の内部の不活性ガスの温度を低下させる。そこから、炭素鋼1がローラ9を介して巻上げユニット(図示せず)に供給される。
【0075】
浴2はストロークテーブル19を介して高さ調節することができ、これによって、たとえば浴2における保守作業またはオーステナイト化ステーション3の下側もしくは塔状のハウジング14の下側での保守作業を実施することができる。
【0076】
当該装置において経過する冶金学的なかつプロセス技術的な詳細については、本発明による方法に対する前述した説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による装置の原理的な構造を主要な装置構成要素に制限して断面図で極めて概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 炭素鋼、 2 浴、 3 オーステナイト化ステーション、 4 誘導加熱手段、 5 変向ユニット、 6 加熱ゾーン、 7 補償ゾーン、 8 熱放射線、 9 ローラ、 10 予熱ゾーン、 11 ローラ、 12 吹払い手段、 13 温度調整ステーション、 14 ハウジング、 15 変向ユニット、 17 冷却ユニット、 18 冷却器、 19 ストロークテーブル、 20 熱交換器、 21 急冷媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素鋼(1)をオーステナイト化温度を上回る温度でオーステナイト化し、
オーステナイト化された炭素鋼(1)を、該炭素鋼(1)をオーステナイト化温度よりも僅かな温度に冷却するための急冷媒体(21)を備えた浴(2)内に供給し、
炭素鋼(1)をベイナイトに対する変態温度に調整し、
炭素鋼(1)を所定の期間にわたって変態温度で保持し、次いで、炭素鋼を冷却するステップを有する、炭素鋼、特に帯鋼にベイナイト組織を連続的に形成するための方法において、
炭素鋼(1)が、オーステナイト化後、体積に関して僅かな量の急冷媒体(21)を備えた浴(2)を通走し、この場合、炭素鋼(1)の全組織に対する規定可能な割合のベイナイト組織が、急冷媒体(21)を備えた浴(2)内で形成されるまで、炭素鋼(1)を急冷媒体(21)に接触させ、
浴(2)からの炭素鋼(1)の進出時に、該炭素鋼(1)の表面の急冷媒体(21)の残分をガスの作用によって炭素鋼(1)から除去し、
引き続き、ベイナイトへの炭素鋼(1)の残りの組織成分の変態を、後置された等温の温度調整ステーション(13)においてベイナイトに対する変態温度で、等温の温度調整ステーション(13)を通る通走時の炭素鋼(1)の各変向なしに、ベイナイト組織が完全に炭素鋼(1)の内部に形成されるまで行うことを特徴とする、炭素鋼にベイナイト組織を連続的に形成するための方法。
【請求項2】
炭素鋼(1)の組織に対する、急冷媒体(21)を備えた浴(2)の作用時間を、炭素鋼(1)のベイナイト組織のほぼ半分が、急冷媒体(21)を備えた浴(2)内で形成されるまで選択する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
急冷媒体(21)を備えた浴(2)の作用時間と、等温の温度調整ステーション(13)内での炭素鋼(1)の滞留時間とが、ベイナイト形成の典型的な全期間に相当している、請求項2記載の方法。
【請求項4】
急冷媒体(21)を備えた浴(2)から等温の温度調整ステーション(13)への移行を、ほぼ炭素鋼(1)の温度変化なしにベイナイト組織の形成を継続して行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
炭素鋼(1)の表面からの急冷媒体(21)の残分の除去を炭素鋼(1)からの急冷媒体(21)の吹払いによって実施する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
急冷媒体(21)の吹払いを保護ガス雰囲気下で、有利には温度調整された不活性ガスによって行う、請求項5記載の方法。
【請求項7】
炭素鋼(1)からの急冷媒体(21)の吹払いに用いられるガス、有利には不活性ガスの温度調整を調整し、これによって、炭素鋼(1)の温度の変化をベイナイト組織の連続的な形成時に回避する、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
炭素鋼(1)からの急冷媒体(21)の吹払いに用いられるガス、有利には不活性ガスの温度調整を調整し、これによって、急冷媒体(21)を備えた浴(2)からの進出時に生ぜしめられる、炭素鋼(1)における変態熱を、温度調整された不活性ガスによって導出し、炭素鋼(1)の温度をほぼコンスタントにベイナイトに対する変態温度に保持する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
急冷媒体(21)の吹払いの領域で、たとえば変向ローラ(11)による炭素鋼(1)の変向を行わない、請求項5から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
等温の温度調整ステーション(13)内での等温の温度ガイドの長さを炭素鋼(1)の通走速度に関連して調整し、これによって、等温の温度調整ステーション(13)の内部で炭素鋼(1)に完全なベイナイト組織を形成する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
炭素鋼(1)が、ベイナイト形成の完全な終了後、冷却装置(17,18)を通走する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
炭素鋼(1)を冷却装置(17,18)内で、表面変化、特に表面の酸化または変色を阻止する温度に冷却する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
冷却装置(17,18)を保護ガス雰囲気下で運転し、これによって、表面変化、特に表面の酸化または変色を阻止する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
冷却装置(17,18)を空気下で運転し、これによって、炭素鋼のブルーイングの形の表面変化を発生させる、請求項11記載の方法。
【請求項15】
炭素鋼を冷却装置(17,18)からほぼ100℃またはそれ未満の進出温度で進出させる、請求項11から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
急冷媒体(21)として金属浴を使用する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
急冷媒体(21)として塩浴/鉛浴/ビスマス浴を使用する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
オーステナイト化ステーション(3)内に進入するまだ比較的低温の炭素鋼(1)が、オーステナイト化ステーション(3)内への進入前に前温度調整のために加熱浴(10)、有利には急冷媒体(21)を備えた浴(2)の領域を通走する、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
炭素鋼(1)が、すでにオーステナイト化ステーション(3)内への進入前に浴(2)を通走し、オーステナイト化後の炭素鋼(1)の冷却時に放出された急冷熱を、まだ比較的低温でオーステナイト化ステーション(3)内に進入する炭素鋼(1)に放出し、その後、該炭素鋼(1)がオーステナイト化ステーション(3)内に進入することによっても、急冷媒体(21)を備えた浴(2)を炭素鋼(1)のベイナイト形成に対する変態温度に保持する、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
炭素鋼(1)のオーステナイト化の領域で該炭素鋼(1)を、オーステナイト化ステーション(3)内に進入したまだ比較的低温の炭素鋼(1)が、オーステナイト化温度にもたらされた、オーステナイト化ステーション(3)の進出側における炭素鋼(1)の熱放射線(8)によって一緒に加熱されるように案内する、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
オーステナイト化ステーション(3)の進出側における、すでにより高く温度調整された炭素鋼(1)の、進入したまだ比較的低温の炭素鋼(1)に放出される熱放射線(8)が、炭素鋼(1)を極めて均一に加熱し、オーステナイト化時の定常の温度調整状況と、炭素鋼(1)のオーステナイト組織の均質化とを生ぜしめる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
オーステナイト化ステーション(3)内の炭素鋼(1)の滞留時間を、すでにより高く温度調整された炭素鋼(1)から放出される熱放射線(8)の影響下で、均質のオーステナイト組織が炭素鋼(1)に生ぜしめられるように長く選択する、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
炭素鋼(1)をオーステナイト化ステーション(13)内で誘導加熱する、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
炭素鋼(1)、特に帯鋼にベイナイト組織またはソルバイト組織を形成するための装置、特に請求項1記載の方法を実施するための装置であって、オーステナイト化ステーション(3)が設けられており、該オーステナイト化ステーション(3)によって、炭素鋼(1)が、オーステナイト化温度を上回る温度にもたらされるようになっており、オーステナイト化された炭素鋼(1)をオーステナイト化温度よりも僅かな温度に冷却するための急冷媒体(21)を備えた浴(2)が設けられており、炭素鋼(1)を所定の期間にわたって変態温度で保持するための等温の温度調整ステーション(13)が設けられており、炭素鋼(1)を引き続き冷却するための冷却ステーション(17,18)が設けられている形式のものにおいて、
等温の温度調整ステーション(13)が、ほぼ鉛直方向に塔状に形成されており、等温の温度調整ステーション(13)を通る炭素鋼(1)の自由な通走の長さが、ベイナイトへの残りの組織の変態を炭素鋼(1)の変向なしに許容していることを特徴とする、炭素鋼にベイナイト組織またはソルバイト組織を形成するための装置。
【請求項25】
炭素鋼(1)の全組織に対する規定可能な割合を備えたベイナイト組織の形成によって、浴(2)内の急冷媒体(21)の体積が最小化可能である、請求項24記載の装置。
【請求項26】
急冷媒体(21)を備えた浴(2)の内部に変向ローラ(11)が配置されており、これによって、浴(2)からのかつ等温の温度調整ステーション(13)内への炭素鋼(1)の引上げおよび/またはオーステナイト化ステーション(13)から浴(2)内への炭素鋼(1)の浸漬が、ほぼ鉛直方向に行われるようになっている、請求項24または25記載の装置。
【請求項27】
急冷媒体(21)を備えた浴(2)と等温の温度調整ステーション(13)との間に、急冷媒体(21)の残分を炭素鋼(1)の表面から除去するための装置(12)、特に急冷媒体(21)を炭素鋼(1)から吹き払うための吹払い装置(12)が配置されている、請求項24から26までのいずれか1項記載の装置。
【請求項28】
等温の温度調整ステーション(13)内のかつ/または冷却ステーション(17,18)内の保護ガス雰囲気の温度調整のために、調整される保護ガス加熱手段または水熱交換器(18)が配置されている、請求項24から27までのいずれか1項記載の装置。
【請求項29】
加熱装置が、等温の温度調整ステーション(13)内の保護ガス雰囲気を温度調整するようになっている、請求項24から28までのいずれか1項記載の装置。
【請求項30】
炭素鋼(1)が、オーステナイト化の領域を通走するようになっており、これによって、オーステナイト化ステーション(3)内に進入したまだ比較的低温の炭素鋼(1)が、オーステナイト化温度にもたらされた、オーステナイト化ステーション(3)の進出側における炭素鋼(1)の熱放射線(8)によって一緒に加熱されるようになっている、請求項24から29までのいずれか1項記載の装置。
【請求項31】
ほぼ塔状に形成された温度調整ステーション(13)が、ハウジング(14)を有しており、等温に保持したい炭素鋼(1)が、急冷媒体(21)を備えた浴(2)から第1のチャンバ(13)内で鉛直方向に下方から上方に通走しかつ冷却したい炭素鋼(1)が、隣り合って配置された第2のチャンバ(17)内で鉛直方向に上方から下方に通走するように、ハウジング(14)が分割されている、請求項24から30までのいずれか1項記載の装置。
【請求項32】
塔状のハウジング(14)の一番上側の点に変向ユニット(15)が配置されており、該変向ユニット(15)によって、そこで完全にベイナイトに変態された炭素鋼(1)が、等温の温度調整ステーション(13)から冷却ステーション(17,18)内に変向させられるようになっている、請求項31記載の装置。
【請求項33】
急冷媒体(21)を備えた浴(2)内に塩混合物/鉛混合物/ビスマス混合物が注入されている、請求項24から32までのいずれか1項記載の装置。
【請求項34】
急冷媒体(21)を備えた浴(2)が、ソルバイトへの炭素鋼(1)の変態のために必要になる温度に保持されるようになっており、ソルバイト組織が、完全にまたはほぼ完全に形成されるまで、炭素鋼(1)が、急冷媒体(21)に接触させられるようになっており、次いで、後置された等温の温度調整ステーション(13)内で、主として、もはや形成されたソルバイト組織を備えた炭素鋼(1)の冷却しか実施可能でないことによって、当該装置が、ソルバイト組織を形成するために使用可能である、請求項24から33までのいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2009−515045(P2009−515045A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539235(P2008−539235)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001925
【国際公開番号】WO2007/054063
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(308031544)
【出願人】(593219388)エープナー インドゥストリーオーフェンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】Ebner Industrieofenbau Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Ruflinger Strasse 111, Leonding,Austria
【Fターム(参考)】