説明

無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法

【課題】観測航路を自動的に生成しその観測航路下の水中または水底の様子を自動的に観測できるようにする。
【解決手段】観測航路を生成するために基準観測線を入力し(S1)、前記基準観測線を一定の距離平行移動させることによって複数の観測航路を生成し(S2)、生成された複数の観測航路の距離を確定させると同時に確定させた観測航路の航行順序を指示し(S3)、指示された航行順序にしたがって無人ボートを航行させ(S4)、航行中に少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測し(S5)、観測されている少なくとも水中または水底の様子を表示するとともに記憶させる(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法に係り、特に、無人ボートを航行させることによって、水中または水底の様子を自動的に観測することができる無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海、湖、池、川などの水中または水底の様子の観測には、遠隔操縦可能な模型の無人ボートが用いられる。無人ボートは、ソナーを搭載しており、水底に向かって超音波を発信し、水底等に反射された超音波を受信して、水中または水底の様子を観測できる。操縦者は、たとえば、特許文献1に記載されているように、離れた場所から無人ボートを操縦し、所望の場所の水底を観測する。これにより、大きな有人ボートでは行けないような、浅瀬や、狭い岸壁などでも、容易に観測できる。
【特許文献1】特開2005−343391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の無人ボートにあっては、大きな有人ボートでは行けないような、浅瀬や、狭い岸壁などでも、容易に観測できるものの、水中または水底の様子を自動的に生成された航路を辿って観測することまではできなかった。
【0004】
本発明は、以上のような従来の技術の問題点を解消するために成されたものであり、観測航路を自動的に生成して、その観測航路下の水中または水底の様子を自動的に観測することができる無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明は、無人ボートの現在位置を測定するために当該無人ボートに搭載したGPSと、前記無人ボートの基準観測線を入力する基準観測線入力部と、前記基準観測線から前記無人ボートの観測航路を設定する観測航路設定部と、前記GPSで測定された現在位置と当該観測航路設定部によって設定された観測航路とを参照して前記無人ボートの航行を制御する航行制御部と、少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する観測器と、当該観測器によって観測された少なくとも水中または水底の様子のいずれかを記憶する記憶部と、を有することを特徴とする無人ボート自動観測システムである。
【0006】
また、上記目的を達成するための本発明は、無人ボートの現在位置を測定するために当該無人ボートに搭載したGPSと、当該GPSの情報に基づいて実際に航行したループ状の航路を記憶する航路記憶部と、記憶したループ状の航路の内側に指定した方向および指定した間隔で一定の観測航路を設定する観測航路設定部と、前記GPSで測定された現在位置と当該観測航路設定部によって設定された観測航路とを参照して前記無人ボートの航行を制御する航行制御部と、少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する観測器と、当該観測器によって観測された少なくとも水中または水底の様子を記憶する記憶部と、を有することを特徴とする無人ボート自動観測システムである。
【0007】
さらに、上記目的を達成するための本発明は、観測航路を設定するために基準観測線を入力する段階と、前記基準観測線を一定の距離平行移動させることによって複数の観測航路を設定する段階と、設定された複数の観測航路の距離を確定させると同時に確定させた観測航路の航行順序を指示する段階と、指示された航行順序にしたがって無人ボートを航行させる段階と、航行中に少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する段階と、観測されている少なくとも水中または水底の様子を表示するとともに記憶させる段階と、を含むことを特徴とする無人ボート自動観測方法である。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明は、観測航路を設定するために基準観測線を入力する段階と、前記基準観測線を形成する測線に対して垂直方向に一定の間隔で延びる直線を設定することによって複数の観測航路を設定する段階と、設定された複数の観測航路の距離を確定させると同時に確定させた観測航路の航行順序を指示する段階と、指示された航行順序にしたがって無人ボートを航行させる段階と、航行中に少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する段階と、観測されている少なくとも水中または水底の様子を表示するとともに記憶させる段階と、を含むことを特徴とする無人ボート自動観測方法である。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明は、実際に無人ボートをループ状に航行させて航路を記憶させる段階と、記憶させた航路の内側に指定した方向および指定した間隔で一定の観測航路を設定する段階と、設定された観測航路上に無人ボートを航行させる段階と、航行中に少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する段階と、観測されている少なくとも水中または水底の様子を表示するとともに記憶させる段階と、を含むことを特徴とする無人ボート自動観測方法である。
【0010】
さらに、上記目的を達成するための本発明は、多点を入力することで形成されるループ状の航路を記憶させる段階と、記憶させた航路の内側に指定した方向および指定した間隔で一定の観測航路を設定する段階と、設定された観測航路上に無人ボートを航行させる段階と、航行中に少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する段階と、観測されている少なくとも水中または水底の様子を表示するとともに記憶させる段階と、を含むことを特徴とする無人ボート自動観測方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、観測したい場所で最適な観測航路を自動的に生成することができるので、その観測航路下の水中または水底の様子を自動的に観測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法について4つの実施形態を説明する。本発明は、水中および水底の観測を設定された間隔で自動的に行なえるようにしたものである。その観測の手法には4つの異なる手法があるので、それぞれの手法を第1実施形態から第4実施形態に分けて説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態として説明する無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法は、入力した基準観測線を基準として一定の間隔で複数の観測航路を生成し、その複数の観測航路を自動観測用の無人ボートが自動的に航行することによって、水中および水底の観測を自動的に行なえるようにするものである。観測航路の間隔は自由に設定することができるので、たとえば、詳細な水底図面を描こうとする場合には、観測航路の間隔を狭く設定することによって、無人ボートを狭い間隔で往復航行させることができ、詳細に水底の様子が観測できる。
【0013】
まず、第1実施形態における無人ボート自動観測システムの構成について説明する。
【0014】
図1は本発明に係る無人ボート自動観測システムの構成図である。
【0015】
図に示すように、無人ボート自動観測システム100は、自動観測用無人ボート10(以下、無人ボートという。)、遠隔操縦無線コントローラ20(以下、無線コントローラシステム20という。)および、遠隔操縦無線コントローラ用コンピュータ30(以下、コンピュータ30という。)によって構成される。なお、無線コントローラシステム20とコンピュータ30は、単なる無線機とコンピュータであっても良い。
【0016】
無人ボート10は、特定の周波数の電波を用いて無線コントローラシステム20と相互に通信することができるようになっている。無人ボート10の基本的な機能として、無線コントローラシステム20からの走行指示に基づいて、水上を操縦者の意思に従って自在に走行(前進、後退、旋回)する機能と、無線コントローラシステム20からの観測指示に基づいて、自動的に生成した観測航路をトレースするように航行して水中および水底の様子を観測する機能とを有している。第1実施形態から第4実施形態に係る無人ボート自動観測システムは、無線コントローラシステム20からの観測指示に基づいて観測を行なう機能を中心に説明する。
【0017】
無人ボート10は、航行時の現在位置を測定するGPSが搭載されるとともに駆動装置および操舵装置を搭載している。また、水中および水底の様子(たとえば、水温、透明度、塩分濃度、位置および水底までの深さ)を観測することができる観測器も搭載している。
【0018】
無線コントローラシステム20は、専用のコネクタケーブル35を介してコンピュータ30に接続できるようになっており、コンピュータ30と相互に通信することができるようになっている。なお、無線コントローラシステム20とコンピュータ30は無線通信できるようにしても良い。基本的な機能として、無線コントローラシステム20に記憶されている観測データをコンピュータ30に送信する機能と、逆に、コンピュータ30に記憶されている観測結果を無線コントローラシステム20に送信する機能とを有している。
【0019】
無線コントローラシステム20は、液晶または有機ELを用いたディスプレイが備えられ、無人ボート10が観測器から送ってくる観測データを画像化し、水中および水底の様子をリアルタイムで表示することができるようになっている。また、コンピュータ30に記憶されている観測結果を入手して、その観測結果を表示することができるようになっている。
【0020】
また、無線コントローラシステム20は、水中および水底の様子を観測するために必用な基準観測線を入力する機能と、入力された基準観測線から観測航路を生成する機能を有している。
【0021】
コンピュータ30は、無線コントローラシステム20から送信した観測データを受信して記憶する機能と、その観測データを解析して観測結果を記憶する機能と、観測結果を無線コントローラシステム20に送信する機能とを有している。
【0022】
なお、本実施形態では、無線コントローラシステム20が観測データを記憶する機能を有していない場合について述べているが、無線コントローラシステム20がコンピュータ30と同一の機能を持つようにしても良い。
【0023】
コンピュータ30は、一般的に用いられているPCであり、主に、観測データを解析して、水中および水底の様子(たとえば、水温、透明度、塩分濃度、位置および水底までの深さ)を解析し観測結果を得るために用いる。なお、無線コントローラシステム20とコンピュータ30は、単なる無線機とコンピュータであっても良い。
【0024】
図2は、無人ボート10の側断面図、図3は、無人ボート10の平面図である。
【0025】
無人ボート10は、駆動装置11と、電源12と、操舵装置13と、送受信アンテナ14と、制御装置15と、GPSアンテナ16と、現在位置演算装置17と、観測器18と、取手19とを有する。
【0026】
ここで、GPSアンテナ16および現在位置演算装置17によって、無人ボート10の現在位置を測定するGPSを構成する。駆動装置11、電源12、操舵装置13、送受信アンテナ14および制御装置15によって、無人ボート10の航行を制御する航行制御部を構成する。
【0027】
駆動装置11は、スクリュー111とスクリュー111に回転力を与えるモータ113と、スクリューカバー115とを有している。
【0028】
スクリュー111の回転軸の一端には推進力を得るためのプロペラが取り付けられ、その回転軸の他端には歯車117が取り付けられている。モータ113の回転軸には歯車118が取り付けられ、歯車117と歯車118は設定されたギア比で噛み合っている。モータ113の回転力は歯車117と歯車118とによって効率的にスクリュー111に伝達されるようになっている。スクリュー111が回転することによって、無人ボート10に前方のまたは後方の推進力が与えられる。
【0029】
モータ113は、リチウムイオン電池などの二次電池によって構成される電源12に接続され、無線コントローラシステム20から送信される走行指示や観測指示に基づいて適宜電力が供給される。通常時は、電源12からの電流はモータ113の一方向に供給され、無人ボート10を前進させる。また、必要に応じて、この電流をモータ113の逆方向に供給し、無人ボート10を後退させることもできる。
【0030】
スクリュー111には、プロペラの周囲を覆うようにスクリューカバー115が設けられる。スクリューカバー115は、水上に浮遊している藻やごみがスクリュー111に絡みつくのを防止している。
【0031】
電源12は、上記モータ113以外にも、無人ボート10が搭載している操舵装置13、送受信アンテナ14、制御装置15、GPSアンテナ16、現在位置演算装置17、観測器18に電力を供給している。電源12からこれら各装置への電力の供給は、制御装置15によって制御される。なお、電源12の残量は制御装置15によって監視されている。
【0032】
駆動装置11の後方には操舵装置13が設けられている。操舵装置13は、舵131とモータ133とを有する。舵131の一端はモータ133の回転軸に接続されており、モータ133の回動に応じて舵131の方向が変化する。舵131は左右にスイングするように動く。舵131はスクリュー111からの水流の向きを変えるので、無人ボート10の進行方向を変えることができる。舵131はスクリュー111の回転軸に対して左右に60度程度スイングさせることができる。
【0033】
モータ133は、電源12に接続されており、無人ボート10の進行方向を変える際に電力が供給される。電力の供給は、無線コントローラシステム20からの走行指示や観測指示に基づいて制御装置15によって制御される。
【0034】
送受信アンテナ14は、無人ボート10の上部に垂直に取り付けられている。送受信アンテナ14は、波が多少高くても無線コントローラシステム20からの電波を受信でき、かつ、無人ボート10のバランスに悪影響を与えない程度の高さとしている。送受信アンテナ14は、制御装置15に接続されており、受信した走行指示や測定指示を制御装置15に出力する。また、送受信アンテナ14は、制御装置15から出力される観測データを含む各種の信号を無線コントローラシステム20に送信する。
【0035】
制御装置15は、無人ボート10が搭載している各種の装置を総合的に制御する。特に、測定指示が送信されてきた場合には、無線コントローラシステム20から送信されて来る観測航路を無人ボート10が正確にトレースできるように駆動装置11と操舵装置13の動作を制御する。制御装置15には、GPSアンテナ16、現在位置演算装置17、観測器18も接続されている。
【0036】
GPSアンテナ16は、複数の人工衛星から発信されている電波を受信するアンテナである。GPSアンテナ16が受信した複数の人工衛星からの電波は、現在位置演算装置17に送信される。現在位置演算装置17は受信した複数の人工衛星からの電波に基づいて無人ボート10の現在位置を演算する。無人ボート10の現在位置は、従来から一般的に行なわれている演算手法に基づいて演算しているので、その演算についての説明は省略する。
【0037】
観測器18は、水中および水底の様子を観測する装置である。観測器18は、超音波振動子を備え、特定の周波数の超音波、または異なる周波数の超音波を水中に向けて発信し、水底などから反射してきた反射波を受信する。発信した超音波が戻ってくるまでの時間を計測することによって魚群など水中にある物体や水底の地形を測定することができる。このような装置としてはソナーを挙げることができる。しかし、観測器18はソナーのように超音波を利用するものに限定されない。また、観測器18は、温度センサ、透明度センサ、塩分濃度センサなどの特殊なセンサを備えている。これらのセンサによって水温、透明度、塩分濃度を観測することができる。なお、温度センサ、透明度センサ、塩分濃度センサは現在一般的に用いられている入手が容易なセンサを用いる。観測器18による観測データは送受信アンテナ14を介して無線コントローラシステム20に送信される。
【0038】
図4は、無線コントローラシステム20の外観図である。無線コントローラシステム20は無人ボート10に走行指示や観測指示を与えたり、無人ボート10から送信されてくる観測データを記憶したりする機能を持つものである。また、無線コントローラシステム20は基準観測線を入力する機能と、入力された基準観測線から複数の観測航路を生成する機能を備えている。さらに、生成された観測航路の距離を変化させて設定する機能や生成された観測航路の航行順序を指示する機能も備えている。
【0039】
無線コントローラシステム20は、図に示すように、送受信アンテナ21、ディスプレイ23および操作スイッチ24(24A〜24C)が設けられている。
【0040】
送受信アンテナ21は、無人ボート10に走行指示や観測指示を送信したり、無人ボート10から送信されてくる観測データを受信したりするために用いられる。
【0041】
ディスプレイ23は、無線コントローラシステム20の正面に設けられ、観測場所の地形図、操作スイッチ24を用いて入力した基準観測線、基準観測線から生成された複数の観測航路を観測場所の地形図とともにそれぞれ表示させることができる。
【0042】
操作スイッチ24Aは、その操作によって基準観測線の始点と終点を、緯度または経度を用いて入力したり、または、特定の位置を原点とする二次元座標のX軸、Y軸の座標値を用いて入力したりするために用いられ、基準観測線入力部として機能する。操作スイッチ24Bは、生成された観測航路を自立航行すること、すなわち観測指示を出力すること、および、生成された観測航路の航行順序を指示する指示器として用いられる。操作スイッチ24Cは、生成された観測航路の距離を変化させるために操作される観測航行距離変化指示器として用いられる。
【0043】
図5は、第1実施形態における無人ボート10と無線コントローラシステム20の制御系のブロック図である。
【0044】
無人ボート10は、GPSアンテナ16および現在位置演算装置17から構成されるGPSと、電源12、駆動装置11、操舵装置13および制御装置15から構成される航行制御部と、観測器18とが搭載されている。制御装置15と観測器18は送受信アンテナ14に接続され、無線コントローラシステム20との通信を可能にしている。なお、無人ボート10を構成する各部の機能は図2、3の説明の部分に記載したので、これらの部分の機能の詳細な説明は省略する。
【0045】
無線コントローラシステム20は、基準観測線入力部として機能する操作スイッチ24A、指示器として機能する操作スイッチ24B、変換システムとして機能する操作スイッチ24C、基準観測線作成部25、観測航路生成部26、記憶部27、表示制御部28、再現制御部29、ディスプレイ23を備えている。
【0046】
操作スイッチ24Aは、基準観測線作成部25に接続され、基準観測線作成部25に緯度および経度、または、特定の位置を原点とする二次元座標のX軸、Y軸の座標値を入力することができ、基準観測線と称される測線または弧の始点と終点を指示するための操作スイッチである。
【0047】
基準観測線作成部25は、図6に示すように、操作スイッチ24Aによって入力された二つの座標を始点および終点とする1本の測線または弧を作成するものである。始点および終点を結ぶ測線を直線とするか、どの程度の曲率を有する曲線とするかは、あらかじめ基準観測線作成部25に設定しておいても良いし、例えば、操作スイッチ24Aの操作によって任意に設定できるようにしておいても良い。図6に基準観測線の一例を示すが、この例の場合、基準観測線は直線である。
【0048】
観測航路生成部26は、基準観測線作成部25で作成された基準観測線の始点と終点を基準に、この基準観測線を一定の距離隔てて複数回平行移動させることによって複数の観測航路を生成するものである。どの程度の間隔で基準観測線を移動させるか、および、何本の観測航路を作成するのかは、観測航路生成部26に設定しておいても良いし、例えば、操作スイッチ24Bの操作によって任意に設定できるようにしておいても良い。図7に図6の基準観測線を4回平行移動させることによって生成された5本の観測航路を示す。
【0049】
操作スイッチ24Bは、図7のように生成された観測航路上を無人ボート10が自立航行するように観測指示を出力し、また、図7のように生成された観測航路上をどのような航行順序で航行するのかを指示する。図7の場合には、上から1、2、3、4、5番目の航行順序に設定されているので、無人ボート10が観測指令を受けた場合には、この指定された航行順序で観測航路をトレースし、水中および水底の観測を行なうことになる。具体的には、1番目の観測航路の始点から終点までを航行させ、次に1番目の観測航路の終点から2番目の観測航路の終点の位置まで航行して2番目の観測航路をその始点まで航行させ、次に、2番目の観測航路の始点から3番目の観測航路の始点の位置まで航行して3番目の観測航路をその始点まで航行させるという具合にして、5番目の観測航路の終点まで航行させる。つまり、生成された複数の観測航路を一筆書きのようにしてトレースして観測を行なうことになる。
【0050】
操作スイッチ24Cは、観測場所の地図に重ねて、観測航路生成部26で生成された観測航路の距離を変更するためのものである。観測航路は操作スイッチ24Cによって選択できるようになっており、選択した観測航路の距離を長くしたり短くしたりすることができる。たとえば、観測場所の地形が複雑で、生成した観測航路の距離のままでは観測航路が観測場所をはみ出してしまうような場合や、逆に生成した観測航路の距離のままでは観測航路が観測場所に対して短すぎるような場合に、観測航路ごとに観測航路の距離を変えて最適な観測ができるようになっている。
【0051】
記憶部27は、無人ボート10から送信されてくる水中および水底の様子に関する観測データを記憶する。
【0052】
表示制御部28は、無人ボート10から送信されてくる水中および水底の様子をディスプレイ23に表示するために、受信した水中および水底の様子に関する観測データを加工する。
【0053】
再現制御部29は、記憶部27に記憶されている水中および水底の様子に関する観測データに基づいて、ディスプレイ23に水中および水底の様子を再現する。
【0054】
次に、以上のように構成されている無人ボート自動観測システムの動作について、図8のフローチャートを参照しながら説明する。なお、このフローチャートは、図5に示した制御系の動作フローチャートであり、第1実施形態に係る無人ボート自動観測方法の手順を示すフローチャートでもある。
【0055】
ステップS1
まず、ディスプレイ23に観測場所の地図が表示される。観測者は、無線コントローラシステム20の操作スイッチ24Aを操作して、基準観測線作成部25に基準観測線を作成させるため、基準観測線作成部25に基準観測線の始点と終点の経度と緯度を入力する。なお、基準観測線の始点と終点は二次元座標のX軸、およびY軸の座標を入力することによって特定するようにしても良い。基準観測線の始点と終点の経度と緯度が入力されると、基準観測線作成部25が図6に示したような始点と終点を結ぶ測線を作成する。この測線が基準観測線となって地図上に重ねて表示される。
【0056】
ステップS2
観測航路生成部26は、基準観測線作成部25によって作成された基準観測線を一定の距離平行移動させることによって複数の観測航路を生成する。生成された観測航路は地図上に重ねて表示される。したがって、観測場所をどのように観測するのかが一目でわかる。
【0057】
ステップS3
生成された複数の観測航路には無人ボート10がトレースする航行順序が指定できるようになっている。この航行順序は操作スイッチ24Bの操作によって指定する。また、複数の観測航路はその距離を変更することができるようにもなっている。観測航路の距離は操作スイッチ24Cの操作によって観測航路ごとに変更することができる。観測航路の距離の変更は、重ねて表示されている地図を見ながら行なうことができる。以上のように、操作スイッチ24Bと操作スイッチ24Cの操作によって手動で観測航路の距離を確定し、航行順序を指示する。
【0058】
なお、第1実施形態では、観測航路の距離の確定と航行順序の確定を手動で行なう場合を例示しているが、観測航路生成部に標準的な確定方法をプログラムしておき、観測場所の地図との相互関係を勘案しながら、観測航路の距離の確定と航行順序の確定を自動的に行なわせることも可能である。
【0059】
ステップS4
無線コントローラシステム20の操作スイッチ24Bを操作して観測指示を出力すると、この観測指示は無人ボート10に送信され、同時に無線コントローラシステム20から確定された順番で観測航路が送信される。送信された観測航路は制御装置15によって受信され、制御装置15はGPSで現在位置を確認しながら観測航路を正確にトレースできるように、現在位置と観測航路とを参照しながら駆動装置11および操舵装置13を制御する。無人ボート10の走行速度にも依るが、制御装置15は現在の姿勢で数秒先に通過すると考えられる位置と観測航路との誤差を考慮して無人ボート10の進行方向を補正する。
【0060】
ステップS5
無線コントローラシステム20から観測指示が送信されると、無人ボート10の観測器18がその観測指示の受信と同時に観測を開始し、観測データを無線コントローラシステム20の記憶部27および表示制御部28に送信する。
【0061】
ステップS6
記憶部27は時々刻々と送られてくる観測データを記憶する。表示制御部28は、その観測データを加工してディスプレイ23に表示する。その画像はたとえば図9に示すような画像である。この画像によれば、斜線で表されているG部分が水底の様子であり、水底と水面の間に現れているF部分に魚が群れていることがわかる。
【0062】
以上のように、第1実施形態の無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法によれば、生成された複数の観測航路を定められた航行順序で自動的に無人ボート10が航行することになるので、観測したい場所の観測データを容易に得ることができ、正確な観測結果を得ることができるようになる。
【0063】
なお、無線コントローラシステム20の記憶部27が記憶した観測データは、コンピュータ30に送られて解析され、最終的には、図10に示すような、等高線で示された水底の形状を得ることができる。また、等高線で示すことのできなかった斜線で示されているR部分は、急激に深さを増している部分であることがわかる。もちろん観測器18は特殊なセンサを備えているので、特定の場所の水温、透明度、塩分濃度なども観測データとして記憶される。なお、図10に示した観測結果を示す画像は、無線コントローラシステム20をコンピュータ30に接続することによって、無線コントローラシステム20のディスプレイ23で確認することができる。
【0064】
第1実施形態では、観測航路生成部26および記憶部27の両方が無線コントローラシステム20に設けられている場合を例示したが、観測航路生成部26または記憶部27のいずれか一方が無線コントローラシステム20に設けられ、他方が無人ボート10に設けられているような形態であっても良い。さらに、観測航路生成部26および記憶部27の両方が無人ボート10に設けられているような形態であっても良い。なお、無線コントローラシステム20とコンピュータ30は単なる無線機とコンピュータであってもよい。
[第2実施形態]
第2実施形態として説明する無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法は、入力した基準観測線を形成する測線に対して垂直方向に一定の間隔で延びる直線を生成することによって複数の観測航路を生成し、その複数の観測航路を無人ボート10が自動的に航行することによって、水中および水底の観測を自動的に行なえるようにするものである。観測航路の間隔は自由に設定することができるので、たとえば、詳細な水底図面を描こうとする場合には、観測航路の間隔を狭く設定することによって、無人ボート10を狭い間隔で往復航行させることができ、詳細な水底の様子が観測できる。
【0065】
第1実施形態と第2実施形態とで異なるのは、無線コントローラシステム20が備える観測航路生成部26によって作成される観測航路の作成手法のみである。したがって、観測航路生成部26を除くその他の部分の構成は第1実施形態で説明した無人ボート自動観測システムと全く同一であるので、それらの構成や動作の説明は省略する。
【0066】
図11は基準観測線作成部25によって作成される基準観測線の一例を示す図であり、図12は観測航路生成部26で生成された観測航路の一例を示す図である。
【0067】
図5の無線コントローラシステム20が備える基準観測線作成部25は、図11に示すように、操作スイッチ24Aによって入力された二つの座標を始点および終点とする1本の測線または弧を作成するものである。始点および終点を結ぶ測線を直線とするか、どの程度の曲率を有する曲線とするかは、あらかじめ基準観測線作成部25に設定しておいても良いし、例えば、操作スイッチ24Aの操作によって任意に設定できるようにしておいても良い。図11に基準観測線の一例を示すが、この例の場合、基準観測線は直線である。
【0068】
観測航路生成部26は、基準観測線作成部25で作成された基準観測線を形成する測線に対して、垂直方向に一定の間隔で延びる互いに平行な直線を複数生成することによって複数の観測航路を生成するものである。どの程度の間隔で観測航路を作成するのか、および、何本の観測航路を作成するのかは、観測航路生成部26に設定しておいても良いし、例えば、操作スイッチ24Bの操作によって任意に設定できるようにしておいても良い。図12に図11の基準観測線に対して一定の間隔で直交するように生成された5本の観測航路を示す。
【0069】
図12のように生成された観測航路上を無人ボート10が自立航行するように観測指示を出力し、また、図12のように生成された観測航路上をどのような航行順序で航行するのかを指示するものは、第1実施形態と同様に操作スイッチ24Bである。図12の場合には、下から1、2、3、4、5番目の航行順序に設定されているので、無人ボート10が観測指令を受けた場合には、この指定された航行順序で観測航路をトレースし、水中および水底の観測を行なうことになる。具体的には、1番目の観測航路の一端から他端までを航行させ、次に1番目の観測航路の他端に最も近い2番目の観測航路の一端の位置まで航行して2番目の観測航路をその他端まで航行させ、次に、2番目の観測航路の他端から3番目の観測航路の一端の位置まで航行して3番目の観測航路をその他端まで航行させるという具合にして、5番目の観測航路の終点まで航行させる。つまり、生成された複数の観測航路を一筆書きのようにしてトレースして観測を行なうことになる。
【0070】
第1実施形態の場合と同様に、観測場所の地図に重ねて、観測航路生成部26で生成された観測航路の距離を変更できるようになっている。観測航路の距離の変更は操作スイッチ24Cによって行なうことができる。また、観測航路は操作スイッチ24Cによって選択できるようになっており、選択した観測航路の距離を長くしたり短くしたりすることができる。たとえば、観測場所の地形が複雑で、生成した観測航路の距離のままでは観測航路が観測場所をはみ出してしまうような場合や、逆に生成した観測航路の距離のままでは観測航路が観測場所に対して短すぎるような場合に、観測航路ごとに観測航路の距離を変えて最適な観測ができるようになっている。
【0071】
なお、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、観測航路生成部26および記憶部27の両方が無線コントローラシステム20に設けられている場合を例示したが、観測航路生成部26または記憶部27のいずれか一方が無線コントローラシステム20に設けられ、他方が無人ボート10に設けられているような形態であっても良い。なお、無線コントローラシステム20とコンピュータ30は単なる無線機とコンピュータであっても良い。さらに、観測航路生成部26および記憶部27の両方が無人ボート10に設けられているような形態であっても良い。
【0072】
前述のように、第1実施形態と第2実施形態とで異なるのは、無線コントローラシステム20が備える観測航路生成部26によって作成される観測航路の作成手法のみである。しかしながら、第2実施形態に係る無人ボート自動観測システムの動作を明確にするために、第2実施形態に係る無人ボート自動観測システムの動作について、第1実施形態で説明した図8のフローチャートを参照しながら説明する。なお、このフローチャートは、図5に示した制御系の動作フローチャートであり、第2実施形態に係る無人ボート自動観測方法の手順を示すフローチャートでもある。
【0073】
ステップS1
まず、ディスプレイ23に観測場所の地図が表示される。観測者は、無線コントローラシステム20の操作スイッチ24Aを操作して、基準観測線作成部25に基準観測線を作成させるため、基準観測線作成部25に基準観測線の始点と終点の経度と緯度を入力する。なお、基準観測線の始点と終点は二次元座標のX軸、およびY軸の座標を入力することによって特定するようにしても良い。基準観測線の始点と終点の経度と緯度が入力されると、基準観測線作成部25が図11に示したような始点と終点を結ぶ測線を作成する。この測線が基準観測線となって地図上に重ねて表示される。
【0074】
ステップS2
観測航路生成部26は、基準観測線作成部25で作成された基準観測線を形成する測線に対して、垂直方向に一定の間隔で延びる互いに平行な直線を複数生成することによって複数の観測航路を生成する。生成された観測航路は地図上に重ねて表示される。したがって、観測場所をどのように観測するのかが一目でわかる。
【0075】
ステップS3
生成された複数の観測航路には無人ボート10がトレースする航行順序が指定できるようになっている。この航行順序は操作スイッチ24Bの操作によって指定する。また、複数の観測航路はその距離を変更することができるようにもなっている。観測航路の距離は操作スイッチ24Cの操作によって観測航路ごとに変更することができる。観測航路の距離の変更は、重ねて表示されている地図を見ながら行なうことができる。以上のように、操作スイッチ24Bと操作スイッチ24Cの操作によって手動で観測航路の距離を確定し、航行順序を指示する。
【0076】
なお、第1実施形態と同様に、第2実施形態でも観測航路の距離の確定と航行順序の確定を手動で行なう場合を例示しているが、観測航路生成部26に標準的な確定方法をプログラムしておき、観測場所の地図との相互関係を勘案しながら、観測航路の距離の確定と航行順序の確定を自動的に行なわせることも可能である。
【0077】
ステップS4
無線コントローラシステム20の操作スイッチ24Bを操作して観測指示を出力すると、この観測指示は無人ボート10に送信され、同時に無線コントローラシステム20から確定された順番で観測航路が送信される。送信された観測航路は制御装置15によって受信され、制御装置15はGPSで現在位置を確認しながら観測航路を正確にトレースできるように、現在位置と観測航路とを参照しながら駆動装置11および操舵装置13を制御する。無人ボート10の走行速度にも依るが、制御装置15は現在の姿勢で数秒先に通過すると考えられる位置と観測航路との誤差を考慮して無人ボート10の進行方向を補正する。
【0078】
ステップS5
無線コントローラシステム20から観測指示が送信されると、無人ボート10の観測器18がその観測指示の受信と同時に観測を開始し、観測データを無線コントローラシステム20の記憶部27および表示制御部28に送信する。
【0079】
ステップS6
記憶部27は時々刻々と送られてくる観測データを記憶する。表示制御部28は、その観測データを加工してディスプレイ23に表示する。その画像はたとえば図9に示すような画像である。この画像によれば、斜線で表されているG部分が水底の様子であり、水底と水面の間に現れているF部分に魚が群れていることがわかる。
【0080】
以上のように、第2実施形態の無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法によれば、生成された複数の観測航路を定められた航行順序で自動的に無人ボート10が航行することになるので、観測したい場所の観測データを容易に得ることができ、正確な観測結果を得ることができるようになる。
【0081】
なお、無線コントローラシステム20の記憶部27が記憶した観測データは、コンピュータ30に送られて解析され、最終的には、図10に示すような、等高線で示された水底の形状を得ることができる。また、等高線で示すことのできなかった斜線で示されているR部分は、急激に深さを増している部分であることがわかる。もちろん観測器18は特殊なセンサを備えているので、特定の場所の水温、透明度、塩分濃度なども観測データとして記憶される。なお、図10に示した観測結果を示す画像は、無線コントローラシステム20をコンピュータ30に接続することによって、無線コントローラシステム20のディスプレイ23で確認することができる。
[第3実施形態]
第3実施形態として説明する無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法は、あらかじめ観測したい場所を取り囲むように無人ボート10をループ状に航行させ、航行したときに取得したGPSの位置データからループ状の航路を記憶しておき、そのループ状の航路の内側に指定した方向および指定した間隔で複数の観測航路を生成し、その複数の観測航路を無人ボート10が自動的に航行することによって、水中および水底の観測を自動的に行なえるようにするものである。観測航路の間隔は自由に設定することができるので、たとえば、詳細な水底図面を描こうとする場合には、観測航路の間隔を狭く設定することによって、無人ボート10を狭い間隔で往復航行させることができ、詳細な水底の様子が観測できる。
【0082】
第3実施形態が第1実施形態および第2実施形態と異なるのは、無人ボート10を実際に航行させて観測領域を設定できるようになっていることと、その観測領域内に自動的に観測航路を生成できるようにしてあることである。したがって、無線コントローラシステム20の構成が第1実施形態および第2実施形態と若干異なり、また、無人ボート自動観測方法の手順も異なるので、無線コントローラシステム20の構成と無人ボート自動観測方法の手順を、以下に図面に基づいて説明する。なお、第1実施形態で説明した無人ボート自動観測システムと同一の構成部分およびその構成部分の動作の説明は省略する。
【0083】
図13は第3実施形態で用いられる無線コントローラシステム20の制御系のブロック図である。
【0084】
第3実施形態で用いられる無線コントローラシステム20の外観は図4示したものと同一である。第3実施形態で用いられる無線コントローラシステム20は、無人ボート10に走行指示および観測指示を与え、無人ボート10を観測者の意思に基づいて自由に走行させるための操作スイッチ24A、24Bと、無人ボート10のGPSから送信される位置データから無人ボート10の航路を記憶する航路記憶部31と、を備えている。
【0085】
たとえば操作スイッチ24Aを操作すると、無人ボート10の駆動装置11が動作して、無人ボート10を前進させる。また、操作スイッチ24Bを操作すると、無人ボート10の操舵装置13が動作して、無人ボート10の進行方向が変化する。観測者は観測を行なおうとする領域を設定するために、操作スイッチ24A、24Bを操作して、無人ボート10をループ状に航行させる。なお、無人ボート10で自動観測を行なわせる場合には、操作スイッチ24Aから観測指示が出力できるようになっている。
【0086】
航路記憶部31は、観測者が無人ボート10を航行させた航路を無人ボート10のGPSから送信される位置データに基づいて記憶する。
【0087】
観測航路生成部26は、航路記憶部31に記憶されているループ状の航路の内側に観測航路を自動的に生成するものである。観測航路をどの方向にどのような間隔で生成するのかは、方向・間隔指示システムを機能させる操作スイッチ24Cによって設定することができる。
【0088】
無線コントローラシステム20には、記憶部27、表示制御部28、再現制御部29、ディスプレイ23が設けられているが、これらの部分の動作や機能は、第1実施形態で説明したものと同一であるので、これらの部分の説明は省略する。
【0089】
図14は航路記憶部31が記憶しているループ状の航路の一例を示す図であり、図15は観測航路生成部26で生成された観測航路の一例を示す図である。
【0090】
図13に示すように、ディスプレイ23に、航路記憶部31に記憶されているループ状の航路が表示される。観測航路生成部26は、この航路内に操作スイッチ24によって設定された方向および指定した間隔で観測航路を生成する。たとえば、方向が南北方向で間隔が10メートルであった場合には、図15に示すように、航路内に南北方向に伸延する10メートル間隔の観測航路が自動的に作成される。
【0091】
観測航路が自動的に生成された後に操作スイッチ24Aが操作され、観測指示が出力されると、無人ボート10が右側に位置する観測航路から左側に位置する観測航路まで自動的にトレースし、水中および水底の観測を行なうことになる。具体的には、最も右側に位置する観測航路の一端から他端までを航行させ、次の左側に位置する観測航路の最も近い観測航路の一端の位置まで航行してその観測航路をその他端まで航行させ、次に、この観測航路の左側に位置する観測航路の一端の位置まで航行してその観測航路をその他端まで航行させるという具合にして、最も左側に位置する観測航路の終点まで航行させる。つまり、生成された複数の観測航路を一筆書きのようにしてトレースして観測を行なうことになる。
【0092】
図15のように、自動的に生成された観測航路の距離やトレースする順序を設定することができるようにしても良い。また、観測航路は、間隔のみを指定するようにして、図16に示すように、航路と相似形の観測航路とすることも可能である。
【0093】
なお、第3実施形態では、航路記憶部31、観測航路生成部26および記憶部27を無線コントローラシステム20に搭載した場合を例示したが、航路記憶部31、観測航路生成部26、記憶部27のいずれかを無人ボート10に搭載しても良い。なお、無線コントローラシステム20とコンピュータ30は、単なる無線機とコンピュータであっても良い。
【0094】
次に、以上のように構成されている無人ボート自動観測システムの動作について、図17のフローチャートを参照しながら説明する。なお、このフローチャートは、図5の無人ボート10および図13の無線コントローラシステム20に示した制御系の動作フローチャートであり、第3実施形態に係る無人ボート自動観測方法の手順を示すフローチャートでもある。
【0095】
ステップS11
まず、ディスプレイ23に観測場所の地図が表示される。観測者は、無線コントローラシステム20の操作スイッチ24Aおよび24Bを操作して、無人ボート10に走行指示を与え、観測する領域を特定させるため、実際に無人ボート10をループ状に航行させる。無人ボート10が走行指示によって航行した位置は航路(決められた間隔のポイントの集合によって構成される)として航路記憶部31に記憶される。
【0096】
ステップS12
観測航路生成部26は、航路記憶部31に記憶されているループ状の航路の内側に、操作スイッチ24Cで指定された方向と間隔とに基づいて、図15に示すような観測航路を生成する。生成された観測航路は地図上に重ねて表示される。したがって、観測場所をどのように観測するのかが一目でわかる。
【0097】
ステップS13
無線コントローラシステム20の操作スイッチ24Aを操作して観測指示を出力すると、この観測指示は無人ボート10に送信され、同時に無線コントローラシステム20から右側に位置する観測航路から左側に位置する観測航路まで順番に観測航路が送信される。送信された観測航路は制御装置15によって受信され、制御装置15はGPSで現在位置を確認しながら観測航路を正確にトレースできるように、現在位置と観測航路とを参照しながら駆動装置11および操舵装置13を制御する。無人ボート10の走行速度にも依るが、制御装置15は現在の姿勢で数秒先に通過すると考えられる位置と観測航路との誤差を考慮して無人ボート10の進行方向を補正する。
【0098】
ステップS14
無線コントローラシステム20から観測指示が送信されると、無人ボート10の観測器18がその観測指示の受信と同時に観測を開始し、観測データを無線コントローラシステム20の記憶部27および表示制御部28に送信する。
【0099】
ステップS15
記憶部27は時々刻々と送られてくる観測データを記憶する。表示制御部28は、その観測データを加工してディスプレイ23に表示する。その画像はたとえば図9に示すような画像である。この画像によれば、斜線で表されているG部分が水底の様子であり、水底と水面の間に現れているF部分に魚が群れていることがわかる。
【0100】
以上のように、第3実施形態の無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法によれば、あらかじめ観測したい場所を、実際に無人ボート10を航行させることによって確定することができ、生成された複数の観測航路を自動的に無人ボート10が航行することになるので、観測したい場所の観測データを容易に得ることができ、正確な観測結果を得ることができるようになる。
【0101】
なお、無線コントローラシステム20の記憶部27が記憶した観測データは、コンピュータ30に送られて解析され、最終的には、図10に示すような、等高線で示された水底の形状を得ることができる。また、等高線で示すことのできなかった斜線で示されているR部分は、急激に深さを増している部分であることがわかる。もちろん観測器18は特殊なセンサを備えているので、特定の場所の水温、透明度、塩分濃度なども観測データとして記憶される。なお、図10に示した観測結果を示す画像は、無線コントローラシステム20をコンピュータ30に接続することによって、無線コントローラシステム20のディスプレイ23で確認することができる。
[第4実施形態]
第4実施形態として説明する無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法は、あらかじめ観測したい場所を取り囲む、多点を入力することによって形成されるループ状の航路を記憶しておき、そのループ状の航路の内側に指定した方向および指定した間隔で複数の観測航路を生成し、その複数の観測航路を無人ボート10が自動的に航行することによって、水中および水底の観測を自動的に行なえるようにするものである。観測航路の間隔は自由に設定することができるので、たとえば、詳細な水底図面を描こうとする場合には、観測航路の間隔を狭く設定することによって、無人ボート10を狭い間隔で往復航行させることができ、詳細な水底の様子が観測できる。
【0102】
第4実施形態が第3実施形態と異なるのは、第3実施形態のように、無人ボート10を実際に航行させて観測領域を設定するのではなく、多点でできたループ状の航路をあらかじめ記憶させておき、その記憶させておいた航路から観測領域を設定できるようにし、その観測領域内に自動的に観測航路を生成できるようにしてあることである。
【0103】
なお、観測航路をあらかじめ記憶させておく以外に第3実施形態と異なる点はないので、観測航路を生成する以降の説明は省略する。
【0104】
以上、本発明に係る無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法は、観測航路をGPSで検出される現在位置に基づいて自動観測を行なうが、その自動観測は無人ボートが観測航路を正確にトレースできるように、一般的に用いられている自立航法(ポイント−ツー−ポイントやベクトル制御)によって船首の向きや通過点を緻密に制御している。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の無人ボート自動観測システムおよび無人ボート自動観測方法は、たとえば湖や湾などの水質調査や水底地図の作成に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係る無人ボート自動観測システムの構成図である。
【図2】無人ボートの側断面図である。
【図3】無人ボートの平面図である。
【図4】無線コントローラシステムの外観図である。
【図5】第1実施形態における無人ボートと無線コントローラシステムの制御系のブロック図である。
【図6】第1実施形態における基準観測線の一例を示す図である。
【図7】第1実施形態における観測航路の一例を示す図である。
【図8】図5に示した制御系の動作フローチャートである。
【図9】観測データに基づいて作成された画像の一例を示す図である。
【図10】観測結果を示す画像の一例を示す図である。
【図11】第2実施形態における基準観測線の一例を示す図である。
【図12】第2実施形態における観測航路の一例を示す図である。
【図13】第3実施形態における無線コントローラシステムの制御系のブロック図である。
【図14】第3実施形態におけるループ状の航路の一例を示す図である。
【図15】第3実施形態における観測航路の一例を示す図である。
【図16】第3実施形態における観測航路の一例を示す図である。
【図17】図5および図13に示した制御系の動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0107】
10 無人ボート、
11 駆動装置、
12 電源、
13 操舵装置、
14、21 送受信アンテナ、
15 制御装置、
16 GPSアンテナ、
17 現在位置演算装置、
18 観測器、
19 取手、
20 無線コントローラシステム、
23 ディスプレイ、
24A〜24C 操作スイッチ、
25 基準観測線作成部、
26 観測航路生成部、
27 記憶部、
28 表示制御部、
29 再現制御部、
30 コンピュータ、
31 航路記憶部、
35 コネクタケーブル、
100 無人ボート自動観測システム、
111 スクリュー、
113 モータ、
115 スクリューカバー、
117、118 歯車、
131 舵。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人ボートの現在位置を測定するために当該無人ボートに搭載したGPSと、
前記無人ボートの基準観測線を入力する基準観測線入力部と、
前記基準観測線から前記無人ボートの観測航路を設定する観測航路設定部と、
前記GPSで測定された現在位置と当該観測航路設定部によって設定された観測航路とを参照して前記無人ボートの航行を制御する航行制御部と、
少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する観測器と、
当該観測器によって観測された少なくとも水中または水底の様子のいずれかを記憶する記憶部と、
を有することを特徴とする無人ボート自動観測システム。
【請求項2】
前記GPS、前記航行制御部および前記観測器は、前記無人ボートに搭載され、
前記基準観測線入力部は、前記無人ボートとの間で相互に通信することができる無線コントローラシステムに搭載され、
前記観測航路設定部または前記記憶部のいずれか一方は前記無人ボートに搭載され他方は前記無線コントローラシステムに搭載され、または、前記観測航路設定部および前記記憶部の両方が前記無人ボートまたは前記無線コントローラシステムに搭載されることを特徴とする請求項1に記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項3】
前記基準観測線入力部は、
前記基準観測線の始点と終点を、緯度および経度を用いて、または、特定の位置を原点とする二次元座標のX軸、Y軸の座標値を用いて入力し、
前記観測航路設定部は、
入力された基準観測線の始点と終点とから観測航路を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項4】
前記観測航路設定部は、
前記基準観測線を基準に前記基準観測線を一定の距離平行移動させることによって複数の観測航路を設定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項5】
前記観測航路設定部は、
前記基準観測線を形成する測線に対して垂直方向に一定の間隔で延びる直線を設定することによって複数の観測航路を設定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項6】
さらに、設定された観測航路を自立航行すること、および、設定された観測航路の航行順序を指示する指示システムを設け、
前記航行制御部は、前記指示システムで指示された航行順序にしたがって前記現在位置と設定された観測航路とを参照して前記無人ボートの航行を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項7】
さらに、設定された観測航路の距離を変化させる変換システムを設けたことを特徴とする請求項1、4、5のいずれかに記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項8】
前記指示システムおよび前記変換システムは前記無線コントローラシステムに設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項9】
無人ボートの現在位置を測定するために当該無人ボートに搭載したGPSと、
当該GPSの情報に基づいて実際に航行したループ状の航路を記憶する航路記憶部と、
記憶したループ状の航路の内側に指定した方向および指定した間隔で一定の観測航路を設定する観測航路設定部と、
前記GPSで測定された現在位置と当該観測航路設定部によって設定された観測航路とを参照して前記無人ボートの航行を制御する航行制御部と、
少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する観測器と、
当該観測器によって観測された少なくとも水中または水底の様子を記憶する記憶部と、
を有することを特徴とする無人ボート自動観測システム。
【請求項10】
無人ボートの現在位置を測定するために当該無人ボートに搭載したGPSと、
多点を入力することで形成されるループ状の航路を記憶する航路記憶部と、
前記ループ状の航路の内側に指定した方向および指定した間隔で一定の観測航路を設定する観測航路設定部と、
前記GPSで測定された現在位置と当該観測航路演算部によって設定された観測航路とを参照して前記無人ボートの航行を制御する航行制御部と、
少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する観測器と、
当該観測器によって観測された少なくとも水中または水底の様子を記憶する記憶部と、
を有することを特徴とする無人ボート自動観測システム。
【請求項11】
前記GPS、前記航行制御部および前記観測器は、前記無人ボートに搭載され、
前記航路記憶部、前記観測航路設定部、前記記憶部のいずれかは前記無人ボートに搭載され残りは無線コントローラシステムに搭載され、または、前記観測航路記憶部、前記観測航路設定部および前記記憶部のすべてが前記無人ボートまたは前記無線コントローラシステムに搭載されることを特徴とする請求項9に記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項12】
前記指定した方向および指定した間隔は前記無線コントローラシステムに設けた、方向・間隔指示システムによって指示することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項13】
さらに、前記観測器によって観測される少なくとも水中または水底の様子のいずれかを、前記無線コントローラシステムのディスプレイに表示する表示制御部と、前記記憶部に記憶されている少なくとも水中または水底の様子のいずれかを、前記無線コントローラシステムのディスプレイに再現する再現制御部とを備えていることを特徴とする請求項1、9または10に記載の無人ボート自動観測システム。
【請求項14】
観測航路を設定するために基準観測線を入力する段階と、
前記基準観測線を一定の距離平行移動させることによって複数の観測航路を設定する段階と、
設定された複数の観測航路の距離を確定させると同時に確定させた観測航路の航行順序を指示する段階と、
指示された航行順序にしたがって無人ボートを航行させる段階と、
航行中に少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する段階と、
観測されている少なくとも水中または水底の様子を表示するとともに記憶させる段階と、
を含むことを特徴とする無人ボート自動観測方法。
【請求項15】
観測航路を設定するために基準観測線を入力する段階と、
前記基準観測線を形成する測線に対して垂直方向に一定の間隔で延びる直線を設定することによって複数の観測航路を設定する段階と、
設定された複数の観測航路の距離を確定させると同時に確定させた観測航路の航行順序を指示する段階と、
指示された航行順序にしたがって無人ボートを航行させる段階と、
航行中に少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する段階と、
観測されている少なくとも水中または水底の様子を表示するとともに記憶させる段階と、
を含むことを特徴とする無人ボート自動観測方法。
【請求項16】
実際に無人ボートをループ状に航行させて航路を記憶させる段階と、
記憶させた航路の内側に指定した方向および指定した間隔で一定の観測航路を設定する段階と、
設定された観測航路上に無人ボートを航行させる段階と、
航行中に少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する段階と、
観測されている少なくとも水中または水底の様子を表示するとともに記憶させる段階と、
を含むことを特徴とする無人ボート自動観測方法。
【請求項17】
多点を入力することで形成されるループ状の航路を記憶させる段階と、
記憶させた航路の内側に指定した方向および指定した間隔で一定の観測航路を設定する段階と、
設定された観測航路上に無人ボートを航行させる段階と、
航行中に少なくとも水中または水底の様子のいずれかを観測する段階と、
観測されている少なくとも水中または水底の様子を表示するとともに記憶させる段階と、
を含むことを特徴とする無人ボート自動観測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−126001(P2010−126001A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303105(P2008−303105)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【特許番号】特許第4404943号(P4404943)
【特許公報発行日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(390011811)コデン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】