説明

無停電電源システム

【課題】負荷電流が少ないときにインバータだけでなくコンバータも停止させると同時に、蓄電池の充電を必要時期に行うことが可能な無停電電源システムを提供する。
【解決手段】各々コンバータ11a、12a、13aと、インバータ11b、12b、12cとから成り、その出力を互いに並列接続して負荷2に給電するようにした無停電電源装置11、12、13と、各々のコンバータ11a、12a、13aの出力側に夫々接続された蓄電池と、負荷2の入力電流を検出する負荷電流検出器21と、無停電電源装置11、12、13に運転/停止指令を与える演算制御手段と31とで構成する。演算制御手段31は、負荷電流が所定値以下のとき、無停電電源装置11、12、13の少なくとも1台を運転停止し、当該停止した無停電電源装置に接続された蓄電池が所定量以上放電しないように、運転停止する無停電電源装置を順次切替えるようにした過放電防止手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、商用電源が異常になっても安定した電力を負荷に給電を継続できる無停電電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無停電電源装置においては、常に定格負荷への給電を前提として設計されているため、例えば60%以下の軽負荷において効率が低下する傾向にある。このため、無停電電源装置(以下、UPSと呼称する。)を複数台並列接続して負荷に給電する並列接続方式の無停電電源システムにおいて、負荷の予測パターンと基準値を設定し、この大小関係の継続性を予測して当面の必要運転台数を判断し、この結果、必要な運転台数だけを運転し、不要なUPSは停止する無停電電源システムの提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭51−12458号公報(全体)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されている無停電電源システムにおいては、負荷電流が少ないときに、UPSのインバータ部の発生損失は抑えることできるが、コンバータ部については蓄電池の充電を行う必要があるのでインバータ部の運転を停止しても継続的に運転する必要があった。また、更なる運転効率向上にためにコンバータを停止すると、蓄電池に充電できなくなり、これが長時間に及ぶと蓄電池が微小電流による過放電となって劣化し、充電しても回復しなくなってしまうという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、負荷電流が少ないときにインバータだけでなくコンバータも停止させると同時に、蓄電池の充電を必要時期に行うことが可能な無停電電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の無停電電源システムは、商用電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、このコンバータの出力を再び交流電圧に変換して出力するインバータとから成り、その出力を互いに並列接続して負荷に給電するようにした複数台の無停電電源装置と、前記各々のコンバータの出力側に夫々接続された蓄電池と、前記負荷の入力電流を検出する負荷電流検出器と、前記複数台の無停電電源装置に運転/停止指令を与える演算制御手段とを具備し、前記演算制御手段は、前記負荷電流が所定値以下のとき、前記無停電電源装置の少なくとも1台のコンバータ及びインバータを運転停止し、当該停止した無停電電源装置に接続された蓄電池が所定量以上放電しないように、運転停止する無停電電源装置を順次切替えるようにした過放電防止手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、負荷電流が少ないときにインバータだけでなくコンバータも停止させると同時に、蓄電池の充電を必要時期に行うことが可能な無停電電源システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係る無停電電源システムのブロック構成図。
【図2】本発明の実施例1に係る無停電電源システムの動作フローチャート。
【図3】本発明の実施例2に係る無停電電源システムのブロック構成図。
【図4】本発明の実施例2に係る無停電電源システムの動作フローチャート。
【図5】本発明の実施例3に係る無停電電源システムのブロック構成図。
【図6】本発明の実施例3に係る無停電電源システムの動作フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明の実施例1に係る無停電電源システムを図1及び図2を参照して説明する。
【0011】
図1はUPS11(No1UPS)、UPS12(No2UPS)及びUPS13(No3UPS)の3台のUPSを備えた例である。
【0012】
UPS11、12、13の各々は、商用電源1から交流電圧が入力され、夫々交流入力開閉器を介してコンバータ11a、12a、13aで夫々直流電圧に変換し、さらにインバータ11b、12b、13bで再び交流電圧に逆変換し、その出力同士が互いに接続されて共通の負荷2に対して安定した交流電圧を給電するように構成されている。また、コンバータ11a、12a、13aは夫々直流開閉器を介して各々のUPSに対応して設けられた蓄電池に直流エネルギーを蓄え、例えば、商用電源1に停電が生ずると、各々の蓄電池の直流エネルギーをインバータ11b、12b、13bに夫々供給することにより交流電圧を継続して出力する。
【0013】
尚、コンバータ11a、12a、13aまたはインバータ11b、12b、13bに万一故障が発生した場合にも交流を継続して出力するために、商用電源1と同一または別のバイパス電源から交流を継続給電するためのバイパス回路が設けられる場合もあるが、ここでは図示を省略している。
【0014】
負荷2に流入する電流は電流検出器21で検出され、ADコンバータ22を介してデジタル演算回路31に与えられる。デジタル演算回路31は無停電電源システム全体の運転管理を行う演算手段であり、UPS11、12、13に対して運転/停止指令を出力すると共にUPS11、12、13から運転状態信号を得る構成となっている。
【0015】
次に動作について説明する。図2は本発明の実施例1に係る無停電電源システムの動作フローチャートであり、デジタル演算回路31が行う動作フローを示している。
【0016】
まず、3台のUPS(UPS11、12、13)のうち少なくとも2台が並列運転している状態からスタートする。そして、負荷電流が50%以下となったかどうかを判定し(ステップST1)、YESの場合はNo1UPS(UPS11)の停止時間が規定時間を超えたかどうか判定する(ステップST2)。規定時間を超えていれば、No1UPS(UPS11)を運転し、No2UPS(UPS12)を停止する(ステップST3)。ここで、UPSの停止とは、インバータに加え、コンバータの運転も停止することを意味する。従ってUPSが停止すると蓄電池への充電がストップすることになる。ステップST2で規定時間を超えていなければ、No2UPS(UPS12)の停止時間が規定時間を超えたかどうか判定する(ステップST4)。ここで規定時間を超えていれば、No2UPS(UPS12)を運転し、No3UPS(UPS13)を停止する(ステップST5)。ステップST4で規定時間を超えていなければ、No3UPS(UPS13)の停止時間が規定時間を超えたかどうか判定する(ステップST6)。ここで規定時間を超えていれば、No3UPS(UPS13)を運転し、No1UPS(UPS11)を停止する(ステップST7)。
【0017】
ステップST6で規定時間を超えていなければ、停止しているUPSがあるかどうか確認し(ステップST8)、停止しているUPSがあればそのままの状態を維持し、停止しているUPSがなければNo1UPS(UPS11)を停止する(ステップST9)。このステップST8、9は3台並列運転の状態から初めて負荷電流が50%以下となった初期動作を示している。
【0018】
ステップST1で負荷電流が50%未満の場合は、停止しているUPSがあるかどうか確認し(ステップST10)、停止しているUPSがなければそのままの状態を維持し、停止しているUPSがあれば、停止しているUPSを判定し(ステップST11)、そのUPSに運転指令を与える(ST12)。
【0019】
以上のステップST1乃至ST12を、所定のサンプリング周期で繰り返すことによって、UPSの停止期間が所定期間(UPSが3台構成の場合は、蓄電池の充電インバータバルの約1/2とするのが好ましい。)を超えたUPSを優先的に運転させ、代わりに次の号機のUPSを停止させる。UPSの停止期間が所定期間以上になると順次、該当のUPSを起動させ、次の号機のUPSを停止させる。この結果、各々のUPSの蓄電池を自動的に順次充電しつつ、UPSの停止期間におけるコンバータの損失を略ゼロとすることが可能となり、システムの運転効率の向上を図ることが可能となる。ここでの所定期間は、通常はUPSが過放電することを防ぐ期間より短い期間を設定するが、ここではこの順次停止UPSを切り替えていく機能を過放電防止手段と呼称する。
【実施例2】
【0020】
以下、本発明の実施例2に係る無停電電源システムを図3及び図4を参照して説明する。
【0021】
図3は本発明の実施例3に係る無停電電源システムのブロック構成図である。この実施例2の各部について、図1の本発明の実施例1に係る無停電電源システムの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は、各々のUPSに接続されている蓄電池の電圧を検出し、この蓄電池電圧を、ADコンバータ23を介してデジタル演算回路31Aに与えるようにした点である。
【0022】
図4は本発明の実施例2に係る無停電電源システムの動作フローチャートであり、デジタル演算回路31Aが行う動作フローを示している。このフローチャートの各部について、図2の本発明の実施例1に係る無停電電源システムの動作フローチャートの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は、ステップST2の「No1UPS(UPS11)の停止時間が規定時間を超えたかどうかの判定」をステップST2Aの「No1UPS(UPS11)の蓄電池電圧が規定値未満となったかどうかの判定」に置き換えた点、ステップST4、ステップST6についても同様に夫々ステップST4A、ステップST6Aに示す「No2UPS(UPS12)の蓄電池電圧が規定値未満となったかどうかの判定」、「No3UPS(UPS13)の蓄電池電圧が規定値未満となったかどうかの判定」に置き換えた点である。
【0023】
実施例1では、停止時間によって蓄電池の放電を予想していたが、この実施例2は蓄電池の電圧を実測して、充電すべき時期に来たかどうかを判定するようにした。このことにより、周囲温度の変化や微少放電電流の変化等によって蓄電池の放電特性が変化した場合であっても最適な充電インバータバルで充電することが可能となる。尚、上記蓄電池の電圧検出にあたっては、多少のインピーダンスを持った検出、すなわち、多少の放電電流を流した状態で検出することが好ましい。
【実施例3】
【0024】
以下、本発明の実施例3に係る無停電電源システムを図5及び図6を参照して説明する。
【0025】
図5は本発明の実施例3に係る無停電電源システムのブロック構成図である。この実施例3の各部について、図3の本発明の実施例2に係る無停電電源システムの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例3が実施例2と異なる点は、商用電源1の電圧を検出する電圧検出器24を設け、この検出電圧を、ADコンバータ25を介してデジタル演算回路31Bに与える構成とした点である。
【0026】
実施例1または実施例2において長時間の停電が発生した場合を考えると、全ての蓄電池が放電した状態となる。このような場合には復電したときの負荷電流が50%以下であっても、UPSを停止せず、蓄電池の充電を優先させるべきである。
【0027】
図6は本発明の実施例2に係る無停電電源システムの動作フローチャートであり、上記の考え方に基づいたデジタル演算回路31Bの動作フローを示している。このフローチャートの各部について、図4の本発明の実施例2に係る無停電電源システムの動作フローチャートの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例3が実施例2と異なる点は、ステップST1で負荷電流が50%以下のとき、ただちにステップST2Aに移行しないで、停電によって放電した蓄電池がない場合にはステップST2Aに移行し、放電した蓄電池があればこれを充電するフローに移行するという一連のステップST13乃至ST18を追加した点である。以下、ステップST13乃至ST18の内容を説明する。
【0028】
ステップST1で負荷電流が50%未満のとき、所定の期間内で入力停電が発生したかどうか判定する(ステップST13)。停電の発生がなければ、ステップST2Aに行き、実施例2と同様のフローに移行する。ステップST13でYESであれば、デジタル演算回路が記憶していた停電期間とその期間における負荷電流の推移から蓄電池の放電量を求める(ステップST14)。次にこの放電量が規定値以上であるか判定する(ステップST15)。ステップST15で放電量が規定値未満であれば、ステップST2Aに行き、実施例2と同様のフローに移行する。ステップST15で放電量が規定値以上あったときは、停止UPSがあるかどうかを判定する(ステップST16)。尚、通常停電があったときの蓄電池による運転は負荷状態に依らず全てのUPSを運転するので、ここでの停止UPSがあるかどうかとは、停電発生前の所定期間内に停止していたUPSがあったかどうかということを意味する。停止していたUPSがあった場合、そのUPSを判定し(ステップST17)、当該の停止UPSを所定期間(例えば24時間)強制的に運転し(ステップST18)、蓄電池を充電する。ステップST16で停止していたUPSがなければ、そのままの状態とする。
【0029】
また、ステップST1で負荷電流が50%以上であれば、実施例2と同様ステップ10以降のフローに移行する。
【0030】
以上説明したように、この実施例3によれば、長時間停電が発生した場合であっても、蓄電池の放電状況を確認し、充電が優先的に必要と考えられるUPSには強制的に連続充電するようにしたので、再度停電が発生しても規定の停電補償時間を確保できる。
【0031】
以上本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0032】
例えば、実施例においてUPSは3台構成で説明したが、2台以上であれば何台であっても良い。また、複数台のUPSの並列システムは並列冗長系を構成するものであってもそうでなくても良い。すなわち、並列システムで負荷電流が所定の値以下となったとき、運転効率を良くするために運転台数を減らすようにしたシステムであれば本発明は適用可能である。また、実施例3は実施例2と組み合わせる例で説明したが、図6のステップST2A、ST4A及びST6Aを夫々ST2、ST4及びST6に置き換えて実施例1と組み合わせるようにしても良い。更に、実施例2では蓄電池の電圧検出によって過放電に至らない保護を行ったが、放電電流や充電電流などを使用するその他の方法も採用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 商用電源
2 負荷
11 No.1UPS
12 No.2UPS
13 No.3UPS
11a、12a、13a コンバータ
11b、12b、13b インバータ
21 負荷電流検出器
22、23、25 ADコンバータ
24 電圧検出器
31、31A、31B デジタル演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、このコンバータの出力を再び交流電圧に変換して出力するインバータとから成り、その出力を互いに並列接続して負荷に給電するようにした複数台の無停電電源装置と、
前記各々のコンバータの出力側に夫々接続された蓄電池と、
前記負荷の入力電流を検出する負荷電流検出器と、
前記複数台の無停電電源装置に運転/停止指令を与える演算制御手段と
を具備し、
前記演算制御手段は、
前記負荷電流が所定値以下のとき、前記無停電電源装置の少なくとも1台のコンバータ及びインバータを運転停止し、
当該停止した無停電電源装置に接続された蓄電池が所定量以上放電しないように、運転停止する無停電電源装置を順次切替えるようにした過放電防止手段を有することを特徴とする無停電電源システム。
【請求項2】
前記過放電防止手段は、
前記無停電電源装置が第1の所定期間継続して停止したとき、停止する無停電電源装置を順次切替えるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項3】
前記過放電防止手段は、
前記無停電電源装置に接続された蓄電池の電圧が所定値以下となったとき、停止する無停電電源装置を順次切替えるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項4】
前記商用電源の電圧を検出する電圧検出手段を有し、
前記演算制御手段は、
前記商用電源が第2の所定期間停電したあと復電したとき、
停電期間中の前記負荷電流の推移から、蓄電池の放電量を推定し、
この放電量が所定値以上で且つ停電前の第3の所定期間内に停止していた無停電電源装置があったとき、
当該無停電電源装置を第4の所定期間だけ強制的に運転継続するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の無停電電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38957(P2013−38957A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173958(P2011−173958)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】