説明

無停電電源装置

【課題】蓄電池の劣化状況を的確に捉えて、信頼性に優れるとともに、対象機器の通常稼動時における電力供給装置としても使用することが可能であり、商用電力量の低減に貢献し得る無停電電源装置を提供する。
【解決手段】蓄電池ユニット4は複数個の電池ブロックBを並列接続して構成する。各電池ブロックは、一定周期毎にバックアップブロック群と電力供給ブロック群のいずれかに割り振られる。整流器3と負荷装置2とを接続する商用電力供給回路101を遮断するスイッチSTAが、商用電力供給回路101を遮断した状態で、電力供給ブロック群を構成する電池ブロックBに対して放電動作を実行して負荷装置2に対して電力を供給する。放電動作、および/又は放電動作後の充電動作時に、充放電特性を検知することで、各電池ブロックB単位でその劣化状況を捉える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電池を備え、商用電源の停電が発生した場合に、蓄電された電力を負荷装置へ供給する無停電電源装置に関する。本発明の無停電電源装置は、無線あるいは有線通信の基地局内に設置される通信装置に好適に使用できる。本発明の無停電電源装置は、停電時のバックアップ機能だけでなく、通常稼動時における負荷装置への電力供給機能も具備しており、単なるバックアップ電源を越えた多機能性を備えている。
【背景技術】
【0002】
この種の無停電電源装置の解決すべき問題の一つに、待機状態が長時間となることに起因する蓄電池の劣化問題がある。すなわち、充放電の繰り返しや経年変化により、蓄電池の蓄電容量或いは出力電圧が低下すると、停電時に所定の出力電圧を得ること、或いは当該出力電圧を所定時間得ることができず、結果として、バックアップ電源としての用をなさなくなる。
【0003】
以上のような問題を解決するため、従来の無停電電源装置においては、蓄電池の劣化状況を種々の方法で検出できるようにしている。例えば、特許文献1に記載の直流電源システムでは、鉛電池またはニッケル水素電池である蓄電池に対して定期的に放電試験を実行し、当該試験結果より蓄電池の電池容量を確認できるようにしている。このように、定期的に放電試験を行なうようにしていると、蓄電池の劣化状況を捉えて、蓄電池の交換時期を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−330045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の直流電源システムの問題は、蓄電池として鉛電池またはニッケル水素電池が採用されているため、頻繁に放電試験を実行することができないことにある。すなわち、鉛電池またはニッケル水素電池ではサイクル寿命特性が悪く、放電試験に伴なって充放電を繰り返すと寿命により電池容量が急激に低下することが避けられず、放電試験を頻繁に行なうことができない。このため、蓄電池の劣化状況を正確に検出し、その交換時期を的確に把握することが困難である。
【0006】
加えて、特許文献1に係る直流電源システムでは、対象となる機器装置(例えば、基地局内に設置される通信装置)の通常稼動時における電力供給装置として適用することができず、商用電力量の低減を図ることができない。すなわち、特許文献1に係るシステムでは、放電試験時の電力は負荷へ供給されているため、無駄に消費されているとは言えないものの、上記のように、頻繁に放電試験を行なうことができないために、商用電源と併用して通常稼動時における商用電力量の低減に貢献することは不可能であると言わざるを得ない。
【0007】
本発明の目的は、蓄電池の劣化状況を的確に捉えて、信頼性に優れるとともに、対象機器の通常稼動時における電力供給装置としても使用することが可能であり、したがって商用電力使用量の低減に貢献し得る無停電電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、商用電源1からの交流電力を直流電力に変換して負荷装置2に供給する整流器3と、複数個の電池ブロックBから構成される蓄電池ユニット4とを有し、商用電源1が停電状態となったときに、各電池ブロックBに蓄電されている電力を負荷装置2に供給する無停電電源装置を対象とする。複数個の電池ブロックBを並列接続して蓄電池ユニット4が構成されている。蓄電池ユニット4を構成する全ての電池ブロックBは、一定周期毎に、商用電源1の停電が発生したときに負荷装置2にバックアップ電力を供給するバックアップブロック群と、通常状態において負荷装置2に稼動電力を供給する電力供給ブロック群のいずれか一方の群にブロック分けされる。かかるブロック分けにより、各電池ブロックは、バックアップブロック群と電力供給ブロック群のいずれかに割り振られる。整流器3と負荷装置2とを接続する商用電力供給回路101中に、この回路を遮断するスイッチSTAが設けられており、スイッチSTAが、商用電力供給回路101を遮断した状態で、電力供給ブロック群を構成する電池ブロックBに対して放電動作を実行して負荷装置2に対して電力を供給する。そして、前記放電動作、および/又は放電動作後の充電動作時に、電力供給ブロック群を構成する各電池ブロックBの充放電特性を検知することで、各電池ブロックB単位でその劣化状況を捉えることができるようになっていることを特徴とする。
【0009】
蓄電池ユニット4と負荷装置2とを接続するユニット電力供給回路102に、この回路を遮断するスイッチSTBを設ける。蓄電池ユニット4とスイッチSTBとの間に、試験回路5接続する。試験回路5は、電池ブロックBからの出力電圧値が、負荷装置2の稼動電圧値よりも低圧の所定電圧値に至るまで、電池ブロックBに対する放電動作を実行するようになっている。そして、前記放電動作後に充電動作を実行して充電特性を検知することで、電池ブロックBの劣化状況を捉えることができるようになっている。
【0010】
各日毎に、各電池ブロックBを、バックアップブロック群と電力供給ブロック群とに割り振る。電力供給ブロック群に対する充電動作を、夜間電力時間帯に行なうように設定する。
【0011】
充放電特性に基づく各電池ブロックBの劣化状況の診断結果が、インターネット9を介して管理手段10に送られているようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無停電電源装置においては、蓄電池ユニット4を構成する全ての電池ブロックBを、一定周期毎に停電発生時のバックアップ電源となるバックアップブロック群と、通常状態において負荷装置2に電力を供給する電力供給ブロック群のいずれか一方の群にブロック分けするようにした。そして、商用電力供給回路101を遮断した状態で、電力供給ブロック群から負荷装置2に対して電力を供給するようにした。このように、電力供給ブロック群を構成する電池ブロックBから、通常状態において負荷装置2に電力を供給するようにしていると、電池ブロックBからの電力供給時においては商用電力を用いることなく負荷装置2を稼動することができるので、商用電力の消費量の削減を図って負荷装置2のランニングコストの低減化に貢献できる。
【0013】
加えて、放電動作、および/又は放電動作後の充電動作時に、電力供給ブロック群を構成する各電池ブロックBの充放電特性を検知することで、各電池ブロックB単位でその劣化状況を捉えることができるようにしたので(以下、当該検知動作を第1検知動作という。)、電力供給ブロック群を構成する各電池ブロックBの劣化の進行具合を簡単確実に、しかも適確に把握することが可能となる。
【0014】
蓄電池ユニット4と負荷装置2とを接続するユニット電力供給回路102に試験回路5を接続して、電池ブロックBからの出力電圧値が、負荷装置2の稼動電圧値よりも低圧の所定電圧値に至るまで、電池ブロックBに対する放電動作を実行したのち、充電動作を実行して充電特性を検知することで、電池ブロックBの劣化状況をより正確に捉えることができる。すなわち、上記の第1検知動作により電池ブロックBの劣化状況を捉える方法では、実質的に負荷装置2の稼動電圧値に至るまで放電動作を行ない、その後に充電を行なうため、限られた電圧値の変動範囲を捉えることしかできず、正確に電池ブロックBの劣化状況を捉えることが困難である。これに対して、試験回路5を使って負荷装置2の稼動電圧値よりも低い所定の電圧値まで放電動作を行ない、その後の充電動作時の電池ブロックBの充電特性を検知するようにしていると(以下、当該検知動作を第2検知動作という。)、より広い電圧値の変動範囲で電池ブロックBの充電特性を検知することができるので、より正確に電池ブロックBの劣化状況を捉えることができる。
また、第1検知動作において劣化が見つかった電池ブロックBに対して、第2検知動作を行なうようにしてもよく、これにより、より適確に、しかも第2検知動作を行なうことに伴なう無駄な充電動作を行なうことなく、電池ブロックBの劣化状況を捉えることが可能となる。
【0015】
各日毎に、電力供給ブロック群に対する充電動作が、夜間電力時間帯に行なわれるようにしてあると、安価に設定された夜間電力時間帯の電力で電池ブロックBの充電を行なうことができる。したがって、対象機器となる負荷装置2を通常時に比べて安価な電力で稼動させることができるので、ランニングコストの削減に確実に貢献できる。
【0016】
蓄電池ユニット4に搭載された各電池ブロックBの劣化状況の診断結果が、インターネット9を介して管理手段10に送られているようにしていると、複数の無停電電源装置を構成する電池ブロックBに対する管理手段10による一括管理が可能となる。管理手段10を使った遠隔地からの管理も可能となる。このことは、各無停電電源装置に対する定期的なメンテナンス作業の回数を最小限化できることを意味し、設備の保守管理コストの低減化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る無停電電源装置の実施例を示す各スイッチの動作タイミングを表すタイムチャートである。
【図2】無停電電源装置の実施例を示すブロック構成図である。
【図3】電池ブロックの切り換え状態を表す図である。
【図4】蓄電池ユニットの管理方法を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
(装置の構成)
図1から図4は本発明に係る無停電電源装置の実施例を示す。図2に示すように、無停電電源装置は、商用電源1と負荷装置2との間に設置され、商用電源1から供給される交流電力を、直流電力に変換して負荷装置2に供給する整流器3と、電力を蓄電するための複数個の電池ブロックBを備えた蓄電池ユニット4と、電池ブロックBの試験動作を行なうための試験回路5とを備えている。本実施例では、負荷装置2の稼動電圧が58V〜45Vであり、整流器3の出力電圧は58Vに設定した。
【0019】
(回路の構成)
整流器3と蓄電池ユニット4とは、負荷装置2に並列に接続されている。整流器3と負荷装置2を接続する回路中には、この回路の接続と遮断とを制御するスイッチSTAが設けられる。蓄電池ユニット4は整流器3と接続されており、充電用の電力が供給されるようになっている。蓄電池ユニット4と負荷装置2とを接続する回路中には、試験回路5と、この回路の接続と遮断とを制御するスイッチSTBとが記載順に設けられている。常態では、スイッチSTAとスイッチSTBとは、各回路を接続している。
【0020】
(電池ユニットの構成)
蓄電池ユニット4は、複数個の電池ブロックBを並列に接続して構成している。電池ブロックBは、鉛電池やニッケル水素電池などの使用も可能であるが、本実施例では、リチウムイオン二次電池を使用した。電池ブロックBは、シート状のリチウムイオン二次電池(セル)を並列に複数枚接続してモジュールを形成し、さらにこのモジュールを直列に複数組接続して構成してある。各電池ブロックBは、整流器3からの電力で充電されるので最大で58Vまで充電できる。電池ブロックBの搭載数は、負荷装置2の電源のバックアップを規定時間行なうのに必要な電池ブロックの台数よりも1台以上多く搭載するようにする。例えば、負荷装置2の電源を3時間バックアップするのに必要な電池ブロックBの台数が3台であるとすると、蓄電池ユニット4には、4台以上の電池ブロックBを搭載するようにする。本実施例では、蓄電池ユニット4に4台の電池ブロックBを搭載し、それぞれ電池ブロックB1・B2・B3・B4とした。
【0021】
(リチウムイオン二次電池の作用効果)
リチウムイオン二次電池からなる電池ブロックBを、電源要素として採用したことで得られる作用効果として、リチウムイオン二次電池はメモリー効果による電池容量の低下が無く、しかもサイクル特性に優れるため、電力供給とその後の充電とを繰り返した場合にも、電池容量が不用意に低下するおそれがなく、したがって、本願発明に係る無停電電源装置の電源要素として好適に使用することができる。また、リチウムイオン二次電池は、単位電圧あたりの重量および体積が、他の種類の二次電池に比べて軽く小さいため、装置の設置スペースを最小限に抑えることができる点でも優れる。
【0022】
(装置の制御)
整流器3から負荷装置2への電力の供給や、各電池ブロックB1・B2・B3・B4の充放電動作は、コントローラ6によって制御されている。コントローラ6は、一定周期毎に蓄電池ユニット4に搭載された複数個の電池ブロックB1・B2・B3・B4をバックアップブロック群と電力供給ブロック群とに割り振るように制御している。本実施例では、割り振りの変更を行なう周期を1日毎に設定してあり、図3に示すように、電池ブロックB1を電源供給ブロック群とした場合には、残りの電池ブロックB2・B3・B4をバックアップブロック群として使用するように制御する。翌日には、電池ブロックB2を電源供給ブロック群として使用し、残りの電池ブロックB1・B3・B4をバックアップブロック群とする。
【0023】
(電池ブロックの充放電動作の制御)
各電池ブロックB1・B2・B3・B4に、それぞれに設けられた充電用スイッチST11・ST12・ST13・ST14で充電動作が制御され、放電用スイッチST21・ST22・ST23・ST24で放電動作が制御される。各充電用スイッチST11〜ST14と、放電用スイッチST21〜ST24との制御は、コントローラ6で行なっており、常態では、各充電用スイッチST11〜ST14と、放電用スイッチST21〜ST24とは、各回路を遮断している。
【0024】
(電池ブロックから負荷装置への放電動作)
図1に示すように、コントローラ6は、夜間電力時間帯外(通常の電力料金が適用される時間帯)のあらかじめ設定された時間になると、電力供給ブロック群の電池ブロックBの放電動作を実行して、負荷装置2に対して電源供給を行なう。放電動作は、電力供給ブロック群として使用される電池ブロックBに対応する放電用スイッチを接続したのち、整流器3から負荷装置2への回路をスイッチSTAで遮断して、商用電源1の供給を停止した状態で行なうようになっている。放電動作を実行して、電池ブロックBの出力電圧が、あらかじめ設定したしきい値になると放電動作を停止するようにする。コントローラ6は、スイッチSTAを接続しながら放電用スイッチを遮断して、整流器3から負荷装置2へと電力を供給する。
【0025】
(電池ブロックの充電動作)
電力供給ブロック群の電池ブロックBは、放電動作終了後の充電動作を夜間電力時間帯(安価な電力料金が適用される時間帯)に実行する。充電動作は、電力供給ブロック群の電池ブロックBに対応する充電用スイッチを接続することで、整流器3からの電力の供給を受けて行なう。充電対象の電池ブロックBの電圧が58V(満充電)になったことをコントローラ6が検知すると、充電用スイッチを遮断して充電を終了する。この充電動作を夜間電力時間帯に実行することで、安価な電力で電池ブロックBを充電することができる。
【0026】
(停電時の動作)
商用電源1の停電やトラブルにより整流器3の出力電圧が、あらかじめ設定されたしきい値以下になったことをコントローラ6が検知すると、バックアップ用の電力を負荷装置2に供給する。コントローラ6は、バックアップブロック群の全ての電池ブロックBに放電動作を実行させて、負荷装置2に対して電力を供給し、電源のバックアップを行なう。このとき、電力供給用の電池ブロックB群が放電動作を実行または終了していた場合であっても、バックアップに必要な電力量は、バックアップブロック群の電池ブロックBに蓄えられているので、規定時間内は確実に電力を供給することができ、無停電電源装置の機能を損なうことはない。商用電源1の停電やトラブルにより、電池ブロックBが放電動作を実行した場合においては、無停電電源装置の機能を維持する必要があるため、コントローラ6は夜間電力時間帯外であっても、商用電源1が有効になった時点で、速やかにバックアップブロック群の電池ブロックBの充電動作を開始する。
【0027】
(試験回路)
試験回路5はダミー負荷8と、ダミー負荷8への回路の接続と遮断とを制御するスイッチSTCとからなり、コントローラ6で制御されている。常態では、スイッチSTCは回路を遮断している。試験回路5は、電力供給ブロック群の電池ブロックBが放電動作を開始して一定時間経過したときに、スイッチSTCを短時間だけ接続して、ダミー負荷8に対して電流を流し、電池ブロックBの電圧にドロップを発生させる。また、試験回路5は後述する第2検知動作時にも使用する。
【0028】
(電池ブロックの充放電特性の検知)
各電池ブロックBの充電動作、および放電動作時の充放電特性は、監視手段7によって記録されている。この監視手段7は、各電池ブロックBの充放電時に電圧と電流と温度との時間的変化を記録している。また、試験回路5による放電動作時の電圧のドロップの値も記録している。
【0029】
(電池ブロックの劣化状況の判断)
第1検知動作として、各電池ブロックBの劣化状況は、充放電時に記録された充放電特性と電圧ドロップの値とを基に判断される。監視手段7は、記録された各種データをあらかじめ記録されている正常時のデータと比較して、電池ブロックBの劣化状況がどの程度進行しているかどうかを判断する。しかし、この第1検知動作に使用されるデータは、電力供給ブロック群を構成する各電池ブロックBが電力供給の際に行なう放電動作、および充電動作時のデータであるため、負荷装置2の稼動電圧の範囲である58V〜45Vの間のデータしか比較することができない。前記電圧範囲のデータでは、各電池ブロックBの劣化の兆候は確認することができるが、実際の電池容量の低下がどの程度発生しているのかを判断することができない。したがって、監視手段7によって劣化が進行しているおそれがあると判断された電池ブロックBに対しては、第2検知動作が実行される。
【0030】
(電池ブロックの実容量試験)
第2検知動作として、対象となる電池ブロックBに対して電池容量を判断する試験を行なう。電池ブロックBの実際の容量を判断するには、対象となる電池ブロックBを完全に放電させたのち、完全に充電を行なう必要がある。第2検知動作は、スイッチSTBを遮断した状態で、試験回路5のスイッチSTCと試験対象の電池ブロックBに対応する放電用スイッチとを接続して、電池ブロックBからダミー負荷8に対して放電する。このときにスイッチSTBを遮断する理由は、スイッチSTBを接続した状態で試験対象の電池ブロックBから放電を行なうと、負荷装置2に対して整流器3と試験対象の電池ブロックBとが並列に接続された状態となるため、電圧の低い方の電源に負荷が掛かり、破損するおそれがあるためである。電池ブロックBを完全放電したのち、各スイッチを常態に戻し、試験対象の電池ブロックBに対応する充電用スイッチを接続して、電池ブロックBを満充電にする。このときの充電特性から、試験対象の電池ブロックBの容量を確認し、劣化状況を判断する。
【0031】
(無停電電源装置の管理)
図4に示すように、監視手段7は、インターネット9を介して管理センター(管理手段)10と接続されている。管理センター10は、複数の設備に設置された無停電電源装置を管理している。監視手段7で診断された各電池ブロックBの劣化状況のデータは、インターネット10を通じて管理センター11に送られる。電池ブロックBが寿命などでメンテナンスが必要と診断された場合には、該当する電池ブロックBの交換作業などが実行されて、無停電電源装置の保守管理がなされる。電池ブロックBを交換する場合には、交換対象の電池ブロックBを装置の回路から取り外す必要があるが、電池ブロックBは、回路中に並列に接続されているので、設備の運用を継続したまま電池ブロックBの交換作業が行なえる。
【0032】
ここで、本実施例における動作の説明をする。各電池ブロックB1・B2・B3・B4は、1日毎に電力供給用とバックアップ用とに割り振られる(図3参照)。ここでは、電池ブロックB1が電力供給ブロック群に割り振られ、他の電池ブロックB2・B3・B4はバックアップ用に割り振られた場合について説明する。夜間電力時間帯外に設定された放電時刻になると、コントローラ6は、電池ブロックB1に放電動作を実行させる。具体的には、図1に示すように、スイッチSTAを遮断してスイッチST21を接続する。スイッチSTAによって整流器3からの電力は停止し、電池ブロックB1の電力だけで、負荷装置2を稼動させる。
【0033】
放電によって電池ブロックB1の電圧が低下し、電池ブロックB1の出力電圧が設定したしきい値になると、コントローラ6は、スイッチSTAを接続しながら放電用スイッチST21を遮断し、電池ブロックB1からの電力供給を停止して、整流器3から負荷装置2へと電力を供給する。電力供給ブロック群に割り振られた電池ブロックB1から放電している間は、無停電電源装置を通常稼動時の電力供給装置として利用しているので、整流器3を介した商用電力は使用されることなく負荷装置2を稼動させることができ、商用電力の電力消費量を確実に減らすことができるので、負荷装置2のランニングコストの低減化に貢献できる。
【0034】
電池ブロックB1が放電動作を完了した状態のときに、商用電源の停電が発生した場合でも、バックアップブロック群に割り振られた電池ブロックB2・B3・B4に負荷装置2の電源をバックアップするための電力が確保されているので、無停電電源装置の機能を損なうことはない。
【0035】
図1に示すように、放電動作が終了したのち、夜間電力時間帯に設定された充電時刻になると、コントローラ6は、電池ブロックB1に対する充電動作を実行し、安価に設定された電力で充電を行なう。具体的には、スイッチST11を接続して、整流器3からの電力で電池ブロックB1を充電する。電池ブロックB1が完全に充電されると、スイッチST11を遮断して、充電を終了する。
【0036】
充電動作終了後に監視装置7は、電池ブロックB1の充放電動作時の充放電動作、および放電動作時に試験回路5の動作によって発生した電圧ドロップのデータを記録し、正常時のデータと比較して、電池ブロックB1の劣化状況を判断する(第1検知動作)。第1検知動作の結果、劣化状況が進行している可能性があると判断された場合には、次回に電池ブロックB1が電力供給ブロック群に割り振られたときに、第2検知動作を実行するようにする。
【0037】
次の放電時刻には、電池ブロックB1・B2・B3・B4の電力供給ブロック群とバックアップブロック群との割り振りが変更されて、電池ブロックB2を電力供給ブロック群として、充放電動作を実行する。コントローラ6は、これらの動作を各日毎に繰り返して行なうように制御して、電力供給ブロック群に割り振られる電池ブロックBのローテーションを実施する。これにより、特定の電池ブロックBだけが放充電動作を繰り返して、劣化が進行するのを防止することができる。
【0038】
第2検知動作が必要と判断された電池ブロックBに対しては、試験対象の電池ブロックBが電力供給ブロック群に割り振られたときの放電動作終了後に、その動作を行なうようにする。第2検知動作は、スイッチSTBを遮断した状態で、試験回路5のスイッチSTCと試験対象の電池ブロックBに対応する放電用スイッチとを接続して、電池ブロックBからダミー負荷8に対して放電して、対象となる電池ブロックBを完全に放電させる。その後の夜間電力時間帯に設定された充電時刻に充電動作を実行して満充電とする。このときの充電特性を捉えて、データを基に電池容量を判断し、メンテナンスが必要かどうかを決定する。メンテナンスが必要と判断された場合には、交換作業などを実行して、無停電電源装置の保守管理がなされ、無停電電源装置の機能を維持する。
【0039】
以上のように、蓄電池ユニット4を構成する全ての電池ブロックBを、一定周期毎に停電発生時のバックアップ電源となるバックアップブロック群と、通常状態において負荷装置2に電力を供給する電力供給ブロック群のいずれか一方の群にブロック分けするようにした。そして、商用電力供給回路101を遮断した状態で、電力供給ブロック群から負荷装置2に対して電力を供給するようにした。このように、電力供給ブロック群を構成する電池ブロックBから、通常状態において負荷装置2に電力を供給するようにしていると、電池ブロックBからの電力供給時においては商用電力を用いることなく負荷装置2を稼動することができるので、商用電力の消費量の削減を図って負荷装置2のランニングコストの低減化に貢献できる。
【0040】
加えて、放電動作、および/又は放電動作後の充電動作時に、電力供給ブロック群を構成する各電池ブロックBの充放電特性を検知することで、各電池ブロックB単位でその劣化状況を捉えることができるようにしたので、電力供給ブロック群を構成する各電池ブロックBの劣化の進行具合を簡単確実に、しかも適確に把握することが可能となる。
【0041】
リチウムイオン二次電池はメモリー効果による電池容量の低下が無く、しかもサイクル特性に優れるため、電力供給とその後の充電とを繰り返した場合にも、電池容量が不用意に低下するおそれがなく、したがって、本願発明に係る無停電電源装置の電源要素として好適に使用することができる。また、リチウムイオン二次電池は、単位電圧あたりの重量および体積が、他の種類の二次電池に比べて軽く小さいため、装置の設置スペースを最小限に抑えることができる点でも優れている。
【0042】
蓄電池ユニット4と負荷装置2とを接続するユニット電力供給回路102に試験回路5を接続して、電池ブロックBからの出力電圧値が、負荷装置2の稼動電圧値よりも低圧の所定電圧値に至るまで、電池ブロックBに対する放電動作を実行したのち、充電動作を実行して、充電特性を検知することにより、電池ブロックBの劣化状況を捉えるようにすることで、電池ブロックBの劣化状況をより正確に捉えることができる。すなわち、上記の第1検知動作により電池ブロックBの劣化状況を捉える方法では、実質的に負荷装置2の稼動電圧値に至るまで放電動作を行ない、その後に充電を行なうため、限られた電圧値の変動範囲を捉えることしかできず、正確に電池ブロックBの劣化状況を捉えることが困難である。これに対して、試験回路5を使って負荷装置2の稼動電圧値よりも低い所定の電圧値まで放電動作を行ない、その後の充電動作時の電池ブロックBの充電特性を検知するようにしていると、より広い電圧値の変動範囲で電池ブロックBの充電特性を検知することができるので、より正確に電池ブロックBの劣化状況を捉えることができる。
また、第1検知動作において劣化が見つかった電池ブロックBに対して、第2検知動作を行なうようにしてもよく、これにより、より適確に、しかも第2検知動作を行なうことに伴なう無駄な充電動作を行なうことなく、電池ブロックBの劣化状況を捉えることが可能となる。
【0043】
各日毎に、電力供給ブロック群に対する充電動作が、夜間電力時間帯に行なわれるようにしてあると、安価に設定された夜間電力時間帯の電力で電池ブロックBの充電を行なうことができる。したがって、対象機器となる負荷装置2を通常時に比べて安価な電力で稼動させることができるので、ランニングコストの削減に確実に貢献できる。
【0044】
蓄電池ユニット4に搭載された各電池ブロックBの劣化状況の診断結果が、インターネット9を介して管理手段10に送られているようにしていると、複数の無停電電源装置を構成する電池ブロックBに対する管理手段10による一括管理が可能となる。管理手段10を使った遠隔地からの管理も可能となる。このことは、各無停電電源装置に対する定期的なメンテナンス作業の回数を最小限化できることを意味し、設備の保守管理コストの低減化に貢献できる。
【符号の説明】
【0045】
1 商用電源
2 負荷装置
3 整流器
4 蓄電池ユニット
5 試験回路
7 監視手段
9 インターネット
10 管理手段(管理センター)
101 商用電源供給回路
102 ユニット電源供給回路
B 電池ブロック
STA スイッチ
STB スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源(1)からの交流電力を直流電力に変換して負荷装置(2)に供給する整流器(3)と、複数個の電池ブロック(B)から構成される蓄電池ユニット(4)とを有し、商用電源(1)が停電状態となったときに、各電池ブロック(B)に蓄電されている電力を負荷装置(2)に供給する無停電電源装置であって、
複数個の電池ブロック(B)を並列接続することで、蓄電池ユニット(4)が構成されており、
蓄電池ユニット(4)を構成する全ての電池ブロック(B)は、一定周期毎に、商用電源(1)の停電が発生したときに負荷装置(2)にバックアップ電力を供給するバックアップブロック群と、通常状態において負荷装置(2)に稼動電力を供給する電力供給ブロック群のいずれか一方の群にブロック分けされ、かかるブロック分けにより、各電池ブロック(B)は、バックアップブロック群と電力供給ブロック群のいずれかに割り振られるようになっており、
整流器(3)と負荷装置(2)とを接続する商用電力供給回路(101)中に、この回路を遮断するスイッチ(STA)が設けられており、スイッチ(STA)が、商用電力供給回路(101)を遮断した状態で、電力供給ブロック群を構成する電池ブロック(B)に対して放電動作を実行して負荷装置(2)に対して電力を供給し、
前記放電動作、および/又は放電動作後の充電動作時に、電力供給ブロック群を構成する各電池ブロック(B)の充放電特性を検知することで、各電池ブロック(B)単位でその劣化状況を捉えることができるようになっていることを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
蓄電池ユニット(4)と負荷装置(2)とを接続するユニット電力供給回路(102)に、この回路を遮断するスイッチ(STB)が設けられており、
蓄電池ユニット(4)とスイッチ(STB)との間に、試験回路(5)が接続されており、
試験回路(5)は、電池ブロック(B)からの出力電圧値が、負荷装置(2)の稼動電圧値よりも低圧の所定電圧値に至るまで、電池ブロック(B)に対する放電動作を実行するようになっており、
前記放電動作後に充電動作を実行して充電特性を検知することにより、電池ブロック(B)の劣化状況を捉えることができるようになっている請求項1記載の無停電電源装置。
【請求項3】
各日毎に、各電池ブロック(B)が、バックアップブロック群と電力供給ブロック群とに割り振られるようになっており、
電力供給ブロック群に対する充電動作が、夜間電力時間帯に行なわれるように設定されている請求項1または2記載の無停電電源装置。
【請求項4】
充放電特性に基づく各電池ブロック(B)の劣化状況の診断結果が、インターネット(9)を介して管理手段(10)に送られているようになっている請求項1、2または3記載の無停電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−200023(P2011−200023A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64185(P2010−64185)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000163394)株式会社コミューチュア (12)
【出願人】(397009152)エナックス株式会社 (23)
【出願人】(510078160)電動車両技術開発株式会社 (15)
【Fターム(参考)】