説明

無停電電源装置

【課題】交流出力の切換えを確実に実行することが可能な無停電電源装置を提供する。
【解決手段】無停電電源装置は、交流入力電源2または蓄電池30からの電力を負荷4に供給するためのインバータ12と、インバータ12と負荷4との間の通電経路に介挿接続されたコンタクタ15と、バイパス入力電源3と負荷4との間の通電経路に介挿接続されたバイパス回路と、インバータ12の動作を停止するときに、コンタクタ15を開放する一方で、バイパス回路を閉成するように構成された出力切換回路250と、出力切換回路250とは独立して設けられ、負荷4に供給される電力の電圧低下を検出したときにバイパス回路を閉成するように構成された出力切換回路40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無停電電源装置に関し、より特定的には、負荷に供給される交流出力を、インバータの出力からバイパス電源からの交流電力に切換えるための出力切換回路を備えた無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置は、負荷に電力を継続的に供給するように構成される。一方、無停電電源装置に故障が発生した場合あるいは無停電電源装置に対して保守作業を行なう場合には、無停電電源装置を停止することがある。このような場合に備えるため、無停電電源装置の停止時に、負荷に電力を供給するためのバイパス電源が設けられている。
【0003】
無停電電源装置は、一般に、直流電力を所定電圧・所定周波数の交流電力に変換して出力するためのインバータを備える。このインバータが故障した場合には、負荷に供給される交流出力を、インバータの出力からバイパス電源からの交流電力に切換える必要がある。無停電電源装置は、この交流出力の切換えを制御するための出力切換回路を備えている(たとえば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−33236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の無停電電源装置においては、出力切換回路に故障が発生した場合には、交流出力の切換えを正常に行なうことが困難となるため、負荷に電力を継続的に供給することができないという問題点があった。
【0006】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、交流出力の切換えを確実に実行することが可能な無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面によれば、無停電電源装置は、交流電源または蓄電池からの電力を負荷に供給するための電力変換部と、電力変換部と負荷との間の通電経路に介挿接続された第1の開閉器と、バイパス電源と負荷との間の通電経路に介挿接続された第2の開閉器と、電力変換部の動作を停止するときに、第1の開閉器を開放する一方で、第2の開閉器を閉成するように構成された第1の出力切換回路と、第1の出力切換回路とは独立して設けられ、負荷に供給される電力の電圧低下を検出したときに第2の開閉器を閉成するように構成された第2の出力切換回路とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、互いに独立して設けられた2個の出力切換回路の各々に、交流出力の切換えを行なわせるという二重系を構築したことにより、交流出力の切換えを確実に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による無停電電源装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2による無停電電源装置の全体構成図である。
【図3】本発明の実施の形態3による無停電電源装置の全体構成図である。
【図4】本実施の形態3による無停電電源装置の動作を説明するための波形図である。
【図5】本発明の実施の形態4による無停電電源装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1による無停電電源装置の全体構成図である。
【0012】
図1を参照して、無停電電源装置は、交流入力電源2、バイパス入力電源3および負荷4に接続される。
【0013】
交流入力電源2およびバイパス入力電源3は、無停電電源装置に交流電力を供給する交流電源である。これらの入力電源の各々は、たとえば商用交流電源もしくは自家用発電機等によって構成される。図1および以後説明する図では、入力交流電源の一例として三相三線(3φ3W)式を示す。ただし、入力交流電源の種類は三相三線式に限定されず、たとえば三相四線式の電源でもよいし、単相三線式の電源でもよい。
無停電電源装置は、筐体1と、筐体1の内部に収容される本体部と、本体部に電気的に接続される蓄電池30と、筐体1に設けられたバイパス入力端子T1、交流入力端子T2、蓄電池端子T3、および出力端子T4とを備える。
【0014】
バイパス入力端子T1は、バイパス入力電源3からの交流電力を受ける。交流入力端子T2は、交流入力電源2からの交流電力を受ける。
【0015】
蓄電池端子T3は、蓄電池30の正極30aに接続されている。蓄電池30は、筐体1とは別の筐体31に収容されている。出力端子T4には、負荷4が接続される。
【0016】
無停電電源装置は、本体部として、電磁接触器(コンタクタ)5,10,15,17と、ヒューズ6,9と、リアクトル7と、コンバータ8と、電解コンデンサ11と、インバータ12と、トランス13と、コンデンサ14と、変流器16と、サイリスタスイッチ18と、制御装置20とを備える。このうち、コンタクタ5、ヒューズ6、リアクトル7、コンバータ8、インバータ12、トランス13およびコンタクタ15は、交流入力端子T2と出力端子T4との間に直列に接続される。
【0017】
コンタクタ5は、交流入力端子T2とコンバータ8との間の通電経路に介挿接続される。コンタクタ5は、制御装置20からの指令に応答して開放(オン)および閉成(オフ)する。ヒューズ6は、過電流が交流入力電源2から流入するのを防ぐために交流入力端子T2とコンバータ8との間の通電経路に挿入される。リアクトル7は、コンバータ8に入力される交流電力の波形を成形するためのフィルタである。
【0018】
コンバータ8は、交流入力電源2から供給される交流電力を直流電力に変換する。電解コンデンサ11は、コンバータ8の出力電圧を平滑化する。インバータ12は、電解コンデンサ11によって平滑化された直流電力を所定電圧および所定周波数の交流電力に変換する。なお、コンバータ8およびインバータ12の各々は、制御装置20内部のUPS制御回路200によって制御される。
【0019】
トランス13は、インバータ12から出力された交流電力を昇圧するためのステップアップ変圧器である、コンデンサ14は、トランス13の出力ノード13aと基準電圧のラインとの間に接続される。コンデンサ14は、インバータ12から出力される高周波成分を除去するためのフィルタである。
【0020】
コンタクタ15は、出力端子T4から負荷4に出力される交流出力を、インバータ12の出力と、サイリスタスイッチ19およびコンタクタ17からなるバイパス回路の出力との間で切換えるためのものである。サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17は、バイパス入力端子T1と出力端子T4との間に並列に接続される。サイリスタスイッチ18は、出力端子T4から負荷4に出力される交流出力を、インバータ12の出力からバイパス入力電源3からの交流電力に高速に切換えるためのスイッチである。コンタクタ17は、バイパス入力端子T1から出力端子T4までの通電経路に介挿接続される。コンタクタ17は、バイパス入力電源3からの交流電力を無停電電源装置から出力される交流出力として維持するためのものである。コンタクタ15、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17は、制御装置20内部の出力切換回路250からの指令に応答して閉成(オン)および開放(オフ)する。
【0021】
変流器16は、出力端子T4から出力される交流出力の電流値を検出する。変流器16によって検出された電流値は、制御装置20内部の電流検出回路220に送られる。
【0022】
蓄電池30は、交流入力電源2が交流電力を供給できないとき(たとえば停電時)において、インバータ12に直流電力を供給するための蓄電装置である。ヒューズ9およびコンタクタ10は、コンバータ8の出力ノード8aと蓄電池端子T3との間に直列に接続される。コンタクタ10は、制御装置20からの指令に応答して閉成(オン)および開放(オフ)する。ヒューズ9は、蓄電池30から過電流が流入するのを防止する。
【0023】
交流入力電源2から交流電力を供給されている通常時には、コンバータ8によって生成された直流電力が蓄電池30に蓄えられるとともに、インバータ12によって交流電力に変換されて負荷4に供給される。一方、交流入力電源2からの交流電力の供給が停止した停電時には、コンバータ8の運転が停止され、蓄電池30に蓄えられた直流電力がインバータ12によって交流電力に変換されて負荷4に供給される。したがって、無停電電源装置によれば、停電時でも蓄電池30に蓄えられた電力を用いて負荷4の運転を継続することができる。
【0024】
制御装置20は、通常時および停電時において、負荷4に供給する交流電力を発生させるために、コンバータ8およびインバータ12を制御するための制御装置であり、一例として、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶部とを含むマイクロコンピュータを主体として構成される。そして、制御装置20は、予めROMなどに格納されたプログラムをCPUがRAMに読出して実行することによって、コンバータ8およびインバータ12を制御する。さらに、制御装置20は、このコンバータ8およびインバータ12の制御に加えて、コンタクタ5,10,15およびバイパス回路を制御する。なお、制御装置20の少なくとも一部は、電子回路等のハードウェアにより所定の数値・論理演算処理を実行するように構成されてもよい。
【0025】
具体的には、制御装置20は、UPS制御回路200と、電圧検出回路210と、電流検出回路220と、故障検出回路230と、ゲート停止検出回路240と、出力切換回路250とを含む。
【0026】
UPS制御回路200は、コンバータ8およびインバータ12における電力変換動作を制御する。UPS制御回路200は、コンバータ8を駆動するためのゲート信号を生成してコンバータ8へ出力する。このゲート信号に従ったコンバータ8の電力変換によって、インバータ12および蓄電池30に供給される直流電力が制御される。また、UPS制御回路200は、インバータ12を駆動するためのゲート信号を生成してインバータ12へ出力する。このゲート信号に従ったインバータ12の電力変換によって、出力端子T4から出力される交流出力が制御される。
【0027】
電圧検出回路210は、トランス13の出力ノード13aに接続され、出力端子T4から出力される交流出力の電圧値を検出する。電圧検出回路210によって検出された電圧値は、UPS制御回路200に送られる。電流検出回路220は、変流器16によって検出された交流出力の電流値をUPS制御回路200へ出力する。
【0028】
UPS制御回路200は、電圧検出回路210により検出された交流出力の電圧値と、バイパス入力電源3の電圧、周波数および位相とを比較して、無停電電源装置とバイパス入力電源3とが同期運転状態であるか否かを判定する。無停電電源装置とバイパス入力電源3とが同期運転状態であると判定されたときには、UPS制御回路200は、同期運転検出信号を生成して出力切換回路250へ出力する。
【0029】
故障検出回路230は、無停電電源装置内部で発生した故障を検出する。一例として、故障検出回路230は、インバータ12を構成する電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」と称する)などが過電流状態である場合には、インバータ12に故障が発生していると判定する。この場合、故障検出回路230は、インバータ12が故障である旨の診断結果を出力切換回路250へ出力する。UPS制御回路200は、故障検出回路230によってインバータ12の故障が検出されたときには、コンバータ8およびインバータ12に対するゲート信号の出力を停止する。すなわち、UPS制御回路200は、コンバータ8およびインバータ12の全スイッチング素子をオフ状態にする処理を実行することにより、コンバータ8およびインバータ12を停止させる。
【0030】
なお、インバータ12の故障を検出する方法としては、たとえばインバータ12の過電流を検出するための過電流検出回路が設けられてもよい。この場合、過電流検出回路からの信号が故障検出回路230に送信されることによって、故障検出回路230は、インバータ12の故障を検出できる。また、過電流のみによってインバータ12の故障を検出するものと限定されず、たとえば、インバータ12の温度に基づいてインバータ12の故障が検出されてもよい。
【0031】
ゲート停止検出回路240は、UPS制御回路200からインバータ12に出力されるゲート信号を常時監視しており、ゲート信号から、ゲート信号の出力停止(インバータ12の全スイッチング素子をオフ状態にする処理)を検出する。ゲート停止検出回路240は、インバータ12のゲート信号の出力停止を検出すると、ゲート停止検出信号を生成して出力切換回路250へ出力する。
【0032】
出力切換回路250は、故障検出回路230から故障診断結果を示す信号を受け、ゲート停止検出回路240からゲート停止検出信号を受け、UPS制御回路200から同期運転検出信号を受ける。そして、出力切換回路250は、これらの入力信号に基づいて、コンタクタ15、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17のオンオフを制御する。
【0033】
具体的には、出力切換回路250は、故障検出回路230から無停電電源装置に故障が発生している旨の診断結果が入力された場合には、出力端子T4から出力される交流出力を、インバータ12の出力からバイパス回路(サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17)の出力に切換えるための指令をコンタクタ15およびバイパス回路に出力する。詳細には、出力切換回路250は、コンタクタ15をオフ状態(開放状態)にするためのオフ指令(開放指令)を発するとともに、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17をオン状態(閉成状態)にするためのオン指令(閉成指令)を発する。これにより、バイパス入力電源3からの交流電力が出力端子T4を介して負荷4に供給される。
【0034】
また、出力切換回路250は、同期運転検出信号が入力されていることを条件として、ゲート停止検出信号が入力された場合においても、出力端子T4から出力される交流出力を、インバータ12の出力からバイパス回路(サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17)の出力に切換えるための指令をコンタクタ15およびバイパス回路に出力する。
【0035】
通常、インバータ12の起動および停止は、筐体1の外壁に設けられたインバータ運転/停止指令部(図示せず)を無停電電源装置の使用者が操作することによって切換え可能に構成される。たとえば、インバータ12を運転させる場合には、インバータ運転/停止指令部のスイッチがオンされると、UPS制御回路200はインバータ12にゲート信号を出力する。一方、インバータ12の運転を停止させる場合には、インバータ運転/停止指令部のスイッチがオフされると、UPS制御回路200はゲート信号の出力を停止する。したがって、ゲート信号の出力停止自体は故障ではないため、出力切換回路250は交流出力を切換えるための指令を発することがない。そのため、インバータ運転/停止指令部へのノイズ混入等に起因して、UPS制御回路200が誤ってゲート信号の出力を停止した場合には、故障と判断されず、無瞬断で交流出力をインバータ12の出力からバイパス回路の出力に切換えることができない。
【0036】
このような不具合を回避するため、無停電電源装置がバイパス入力電源3と同期運転中においてインバータ12のゲート信号の出力が停止された場合には、出力切換回路250は、無停電電源装置に故障がなく、誤ってゲート信号の出力停止が行なわれたものと判断し、出力端子T4から出力される交流出力を、インバータ12の出力からバイパス回路の出力に切換えるための指令を発する。これにより、誤ってインバータ12の出力が停止された場合でも、無瞬断で交流出力をバイパス回路の出力に切換えることができる。
【0037】
上述したように、無停電電源装置に故障が生じた場合あるいは誤ってインバータ12のゲート信号の出力停止が行なわれた場合には、出力切換回路250によって交流出力がインバータ12の出力からバイパス回路の出力に切換えられる。
【0038】
しかしながら、出力切換回路250に故障が生じた場合には、このような交流出力の切換えを正常に行なうことが困難となる。その結果、無停電電源装置に故障が発生した場合に継続して交流電力を負荷4に供給することができなくなる虞がある。
【0039】
したがって、本実施の形態1による無停電電源装置では、出力切換回路250とは独立に、出力切換回路40を設ける。すなわち、本実施の形態1による無停電電源装置においては、出力切換回路250および出力切換回路40の各々に、交流出力の切換えを行なわせるという二重系を構築する。これにより、万一出力切換回路250に故障が生じた場合であっても、出力切換回路40によって交流出力を切換えるための指令がコンタクタ15およびバイパス回路に発せられていることから、負荷4に出力される交流出力をインバータ12の出力からバイパス入力電源3からの交流電力に切換えることができる。
【0040】
出力切換回路40は、電圧検出回路400と、切換制御回路410と、検出レベル設定回路420とを含む。
【0041】
電圧検出回路400は、出力端子T4から出力される交流出力の電圧値を検出する。電圧検出回路400によって検出された電圧値は、切換制御回路410に送られる。
【0042】
切換制御回路410は、電圧検出回路400によって検出された交流出力の電圧値と、検出レベル設定回路420によって設定された基準値とを比較する。切換制御回路410は、この比較結果に基づいて、インバータ12から出力される交流電力の電圧値が低下する電圧低下が生じているか否かを判定する。
【0043】
検出レベル設定回路420は、インバータ12の出力に電圧低下が生じていることを検出するための検出レベルとしての基準値を設定する。この基準値は、たとえば定格電圧値の70%に設定される。なお、基準値は、予め設定された値に固定されてもよいし、無停電電源装置の使用者によって負荷4の種類等に応じて可変に設定されてもよい。
【0044】
切換制御回路410は、交流出力の電圧値が基準値を下回る場合には、インバータ12の出力に電圧低下が生じていると判定する。この場合、切換制御回路410は、インバータ12に故障が生じていると判断し、出力端子T4から出力される交流出力を、インバータ12の出力からバイパス回路の出力に切換えるための指令をバイパス回路に出力する。具体的には、切換制御回路410は、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17をオン状態(閉成状態)にするためのオン指令(閉成指令)を発する。これにより、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17がオン状態に設定され、バイパス入力電源3からの交流電力が出力端子T4を介して負荷4に供給される。
【0045】
なお、切換制御回路410は、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17のオン指令を発する一方で、コンタクタ15をオフ状態にするためのオフ指令を発しない。これは、コンタクタ15のオフ指令は出力切換回路250によって発せられる構成としたことによる。
【0046】
詳細には、コンタクタ17は、バイパス入力端子T1から出力端子T4までの通電経路に介挿接続されるメイン接点と、メイン接点と連動する補助接点とを有している。本実施の形態1では、コンタクタ17がオン状態に設定されたときには、メイン接点が閉状態となるとともに、補助接点が閉状態となる。補助接点は、コンタクタ17の状態(オンまたはオフ状態)を示す信号を出力するために使用される。故障検出回路230は、この補助接点から出力される信号に基づいて、コンタクタ17がオン状態に設定されているかオフ状態に設定されているかを検出する。故障検出回路230は、出力切換回路250からコンタクタ17のオフ指令が発せられていないにも拘らず、コンタクタ17がオン状態に設定されている場合には、無停電電源装置に故障が生じていると判断する。この場合、故障検出回路230は、無停電電源装置に故障が発生している旨の診断結果を出力切換回路250に出力する。出力切換回路250は、この診断結果に基づいて、コンタクタ15のオフ指令を発するとともに、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17のオン指令を発する。その結果、コンタクタ15は、このオフ指令に応答してオフ状態に設定される。
【0047】
このように出力切換回路40から発せられるオフ指令に応答してコンタクタ17がオン状態に設定されたことに基づいて、出力切換回路250がコンタクタ15のオフ指令を発するように構成したことにより、コンタクタ17がオン状態に設定されていないにも拘らず、コンタクタ15がオフ状態に設定されてしまうという不具合を防止することができる。すなわち、出力切換回路40がコンタクタ17のオン指令を発するとともに、コンタクタ15のオフ指令を発する構成とした場合、コンタクタ15および17の一方に指令通りに駆動できないような故障が生じると、交流出力の切換えができない状態となってしまう虞がある。また、出力切換回路40およびバイパス回路のいずれかが不要動作する虞がある。これに対して、本実施の形態1では、コンタクタ17がオン状態に設定されたことに基づいてコンタクタ15をオフ状態に設定するため、交流出力の切換えを確実に行なうことができる。その結果、無停電電源装置の信頼性を向上できる。
【0048】
このように、実施の形態1による無停電電源装置によれば、交流出力の切換えを実行するための出力切換回路を二重系化したことにより、無停電電源装置の停止時において、負荷に供給される交流出力を、インバータの出力からバイパス入力電源からの交流電力に確実に切換えることができる。これにより、無停電電源装置の信頼性を向上できる。
【0049】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2による無停電電源装置の全体構成図である。
【0050】
図2を参照して、実施の形態2による無停電電源装置は、図1に示した実施の形態1による無停電電源装置と比較して、出力切換回路40に代えて、出力切換回路42を備える点で異なる。実施の形態2による無停電電源装置において負荷の電力を供給する構成については、図1と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
【0051】
出力切換回路42において、切換制御回路410は、出力端子T4から出力される交流出力を、インバータ12の出力からバイパス回路の出力に切換えるための指令(サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17のオン指令)をバイパス回路に出力するとともに、UPS制御回路200に出力する。UPS制御回路200は、出力切換回路42からバイパス回路のオン指令が入力された旨を出力切換回路250に通知する。
【0052】
出力切換回路250は、実施の形態1で説明したように、無停電電源装置に故障が生じた場合あるいは誤ってインバータ12のゲート信号の出力停止が行なわれた場合に、出力端子T4に出力される交流出力を、インバータ12の出力からバイパス回路の出力に切換えるための指令(コンタクタ15のオフ指令、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17のオン指令)を発する。また、出力切換回路250は、故障検出回路230によりコンタクタ17がオン状態に設定されていることが検出された場合においても、交流出力を切換えるための指令を発する。
【0053】
さらに、本実施の形態2では、出力切換回路250は、UPS制御回路200に出力切換回路42からバイパス回路のオン指令が与えられた場合においても、交流出力を切換えるための指令を発する。
【0054】
実施の形態1では、コンタクタ17の補助接点から出力される信号に基づいて、コンタクタ17の状態を検出するように構成されるため、コンタクタ17において、メイン接点に補助接点が連動しないという異常が生じた場合には、出力切換回路40によってコンタクタ17がオン状態に設定されたことを検出することができない可能性がある。そして、このような異常が生じると、出力切換回路250がコンタクタ15のオフ指令を発しないため、コンタクタ15をオフ状態に設定することができない。
【0055】
本実施の形態2では、このような場合においても、出力切換回路40から送信されるコンタクタ17のオン指令に基づいてコンタクタ17がオン状態に設定されたと判断し、コンタクタ15にオフ指令を発することができる。したがって、実施の形態2によれば、実施の形態1による効果に加え、無停電電源装置の信頼性をさらに向上できるという効果を得ることができる。
【0056】
[実施の形態3]
図3は、本発明の実施の形態3による無停電電源装置の全体構成図である。
【0057】
図3を参照して、実施の形態3による無停電電源装置は、図1に示した実施の形態1による無停電電源装置と比較して、出力切換回路40に代えて、出力切換回路44を備える。出力切換回路44は、出力切換回路40と比較して、時間設定回路430をさらに含む。
【0058】
本実施の形態3では、切換制御回路410は、交流出力の電圧値と基準値との比較により、インバータ12の出力に電圧低下が生じていることを検出すると、この電圧低下の検出後所定時間が経過したときに、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17のオン指令をバイパス回路に出力する。
【0059】
なお、所定時間は、時間設定回路430により設定されて切換制御回路410に与えられる。時間設定回路430は、所定時間を、たとえば交流の1サイクル(たとえば1/50秒あるいは1/60秒)に設定する。
【0060】
図4は、本実施の形態3による無停電電源装置の動作を説明するための波形図である。
図4を参照して、時刻t1においてインバータ12の出力に電圧低下が生じる。切換制御回路410は、この時刻t1から所定時間である交流の1サイクルが経過した時刻t2において、バイパス回路(サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17)をオン状態にするためのオン指令を発する。
【0061】
このような構成とすることにより、切換制御回路410が電圧低下を検出したときの交流出力の電圧の位相と、バイパス入力電源3からの交流電力の電圧の位相とが一致したときに、バイパス回路(サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17)がオン状態に設定される。
【0062】
このように、実施の形態3による無停電電源装置によれば、出力端子T4から出力される交流出力がインバータ12の出力からバイパス入力電源3からの交流電力に切換わる前後において、交流出力の電圧の位相が連続的に変化する。インバータ12の出力電圧とバイパス入力電源3の電圧とが同期していない場合、交流出力を切換えたときに大きな励磁突入電流が負荷4および負荷トランス(図示せず)に流れる可能性がある。本実施の形態3によれば、交流出力を切換えたときに交流出力の電圧の位相を保つことができる。その結果、負荷4および負荷トランスに流れる励磁突入電流を抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態3では、所定時間を交流の1サイクルに設定することにより、負荷3への電力の供給が停止される期間を短くすることができる。なお、この所定時間は、負荷4への電力供給が一時的に停止されても、負荷4の動作が停止しないことが保証される時間を超えないように、時間設定回路430において、負荷4に応じて可変に設定することが可能である。これによれば、負荷4の動作を停止させることなく、負荷4への励磁突入電流を抑制することができる。
【0064】
[実施の形態4]
図5は、本発明の実施の形態4による無停電電源装置の全体構成図である。
【0065】
図5を参照して、実施の形態4による無停電電源装置は、図1に示した実施の形態1による無停電電源装置と比較して、バイパス回路がサイリスタスイッチ19をさらに有する点において異なる。
【0066】
バイパス回路は、バイパス入力端子T1と出力端子T4との間に並列接続された、サイリスタスイッチ18,19およびコンタクタ17から構成される。サイリスタスイッチ19は、サイリスタスイッチ18と同様に、出力端子T4から負荷4に出力される交流出力を、インバータ12の出力からバイパス入力電源3からの交流電力に高速に切換えるためのスイッチである。サイリスタスイッチ19は、出力切換回路250および40からの指令に応答して閉成(オン)および開放(オフ)する。
【0067】
本実施の形態4では、サイリスタスイッチ19は、サイリスタスイッチ18とは独立して設けられ、出力切換回路250または出力切換回路40の切換制御回路410から発せられるオン指令に応答して、オン状態に設定される。すなわち、本実施の形態4による無停電電源装置においては、サイリスタスイッチ18および19の各々に、交流出力の切換えを行なわせるという二重系を構築する。これにより、万一サイリスタスイッチ18および19の一方に故障が生じた場合であっても、他方のサイリスタスイッチがオン状態に設定されることによって、負荷4に出力される交流出力をインバータ12の出力からバイパス入力電源3からの交流電力に切換えることができる。したがって、実施の形態4によれば、実施の形態1による効果に加え、無停電電源装置の信頼性をさらに向上できるという効果を得ることができる。
【0068】
本実施の形態1〜4に例示した構成において、コンタクタ15が本発明での「第1の開閉器」に対応し、サイリスタスイッチ18およびコンタクタ17からなるバイパス回路が本発明での「第2の開閉器」に対応する。また、出力切換回路250は本発明での「第1の出力切換回路」に対応し、出力切換回路40が本発明での「第2の出力切換回路」に対応する。
【0069】
なお、本実施の形態1〜4では、無停電電源装置に故障が生じたときに、出力切換回路40および250が交流出力をインバータ12の出力からバイパス入力電源3からの交流電力に切換える構成について説明したが、本発明はインバータ12の動作を停止するときにバイパス入力電源3が負荷4に電力を供給する構成に適用することができる。したがって、インバータ12の動作が停止される理由は、無停電電源装置の故障に限定されず、たとえば無停電電源装置の保守を含み得る。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の適用は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 筐体、2 交流入力電源、3 バイパス入力電源、4 負荷、5,10,15,17 コンタクタ、6,9 ヒューズ、7 リアクトル、8 コンバータ、11 電解コンデンサ、12 インバータ、13 トランス、14 コンデンサ、16 変流器、18,19 サイリスタスイッチ、20 制御装置、30 蓄電池、31 筐体、40,42,44,250 出力切換回路、200 UPS制御回路、210,400 電圧検出回路、220 電流検出回路、230 故障検出回路、240 ゲート停止検出回路、410 切換制御回路、420 検出レベル設定回路、430 時間設定回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源または蓄電池からの電力を負荷に供給するための電力変換部と、
前記電力変換部と前記負荷との間の通電経路に介挿接続された第1の開閉器と、
バイパス電源と前記負荷との間の通電経路に介挿接続された第2の開閉器と、
前記電力変換部の動作を停止するときに、前記第1の開閉器を開放する一方で、前記第2の開閉器を閉成するように構成された第1の出力切換回路と、
前記第1の出力切換回路とは独立して設けられ、前記負荷に供給される電力の電圧低下を検出したときに前記第2の開閉器を閉成するように構成された第2の出力切換回路とを備える、無停電電源装置。
【請求項2】
前記第2の出力切換回路は、
前記負荷に供給される電力の電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路の検出値と基準値とを比較し、前記検出値が前記基準値よりも低下したときに前記第2の開閉器の閉成指令を出力するための切換制御回路とを含む、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項3】
前記無停電電源装置の故障を検出する故障検出回路をさらに備え、
前記第1の出力切換回路は、前記故障検出回路により前記無停電電源装置の故障が検出されたときに、前記第1の開閉器の開放指令および前記第2の開閉器の閉成指令を出力するように構成され、
前記故障検出回路は、前記第1の出力切換回路の前記第2の開閉器の開放指令の出力中に前記第2の出力切換回路により第2の開閉器が閉成された場合を、前記無停電電源装置の故障と判断する、請求項2に記載の無停電電源装置。
【請求項4】
前記第2の出力切換回路は、前記第2の開閉器の閉成指令を前記第2の開閉器に出力するとともに、前記第1の出力切換回路に送信可能に構成され、
前記第1の出力切換回路は、前記故障検出回路により前記無停電電源装置の故障が検出されたとき、あるいは前記第2の開閉器の閉成指令を受けたときに、前記第1の開閉器の開放指令を出力する、請求項3に記載の無停電電源装置。
【請求項5】
前記切換制御回路は、前記バイパス電源の電圧の位相が、前記電圧低下を検出したときの前記負荷に供給される電力の電圧の位相と等しくなったときに、前記第2の開閉器の閉成指令を出力する、請求項2に記載の無停電電源装置。
【請求項6】
前記切換制御回路は、前記電圧低下を検出した後所定時間が経過したときに、前記第2の開閉器の閉成指令を出力するように構成され、
前記第2の出力切換回路は、前記所定時間を設定するための時間設定回路をさらに含む、請求項5に記載の無停電電源装置。
【請求項7】
前記第2の開閉器は、前記バイパス電源および前記負荷の間に並列に接続された半導体スイッチおよび電磁接触器を含み、
前記半導体スイッチは、各々が閉成指令を受ける複数のサイリスタを並列に接続して構成される、請求項1に記載の無停電電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−110887(P2013−110887A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255116(P2011−255116)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】