説明

無線キーシステム

【課題】 低コストで、かつ高精度に、自動車外におけるキー位置を認識する。
【解決手段】無線通信部6からの無線信号の強度がしきい値以上になると、主制御部10は、前方右側検出センサ部11から後方左側検出センサ部18までを順番にミリ波信号が出力するように制御を行う。センサ受信部7が任意の検出センサ部のミリ波信号を受信すると、受信した該検出センサ部からのミリ波信号を受信したことを示す応答信号を出力する。主制御部10は、応答信号からキー側無線通信部2が受信したミリ波信号を出力した検出センサ部を特定し、その側検出センサ部から、再びミリ波信号を出力し、その反射波から、周辺物体の位置や大きさ(キー携帯者)などを計算し、キー(キー携帯者)の詳細な位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信によるキーシステムの位置認識技術に関し、特に、自動車に用いられるキーシステムにおける自動車外のキー位置を高精度に認識する有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のキーレスエントリーシステムにおいては、たとえば、カード状のキーを携帯するだけでドアの施錠や解錠、およびエンジンの始動や停止などを行うものが広く知られている。
【0003】
このキーレスエントリーシステムは、一般に、自動車側から発信された信号によりID(IDentity)を認識し、キーがそれに反応して応答信号を返送すると解錠されるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のようなキーレスエントリーシステムによるキーの認識技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0005】
近年、最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両とを情報でネットワークするITS(Intelligent Transport System)の研究が盛んに行われており、このITSや解錠、施錠などの高度なセキュリティ制御技術などのキーの携帯者の高精度な位置認識技術などが必要不可欠となる可能性がある。
【0006】
しかし、前述したキーレスエントリーシステムでは、自動車側から発信された信号に応答するか否かによりキーの認識を行っているので、キーの携帯者が自動車に近づいてきたことを認識するのみであり、キーが自動車のどの位置にあるかを高精度に認識することができないという問題がある。
【0007】
また、本発明者の検討によれば、キーが自動車のどの位置にあるかを高精度に認識させる技術として、たとえば、自動車に複数の無線アンテナを備え、これら複数の無線アンテナが受信したキーからの信号の時間差を演算するものが考えられるが、このシステムでは、大がかりな専用の無線通信システムが必要となってしまい、コストが非常に大きくなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、低コストで、かつ高精度に、自動車外におけるキー位置を認識することのできる技術を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
本発明による無線キーシステムは、キーに設けられ、該キーを認識させる無線信号を出力するキー側無線通信部と、自動車に設けられた自動車側無線通信部とを備え、該自動車側無線通信部は、キー側無線通信部の無線信号を受信し、キーが、自動車に任意の距離まで近づいたことを検出するキー検出部と、自動車の任意の位置に設けられ、位置検出用信号を送受信する複数の位置検出用センサ部と、キー検出部がキーを検出した際に、位置検出用センサ部の位置検出用信号を用いて、キーの詳細な位置を算出するキー位置演算部とを有したものである。
【0012】
また、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0013】
本発明の無線キーシステムは、前記位置検出用センサ部が、キー検出部がキーを検出した際に、各々の位置検出用センサ部に個別に付与された識別用信号を送信し、キー側無線通信部は、位置検出用センサ部の識別用信号を受信した際に、受信した識別用信号に基づいて、どの位置検出用センサ部からの識別用信号を受信したことを示す応答信号を出力し、キー位置演算部は、キー側無線通信部の応答信号から、キーが自動車のどの領域に位置しているかを認識するものである。
【0014】
また、本発明の無線キーシステムは、前記キー位置演算部が、キーが自動車のどの領域に位置しているかを認識した際に、複数の位置検出用センサ部のうち、認識した位置に該当する位置検出用センサ部から位置検出用信号を送信し、該位置検出用センサ部が受信したその反射波から、自動車周辺物体の位置や大きさを計算し、キーの詳細な位置を検出するものである。
【0015】
さらに、本発明の無線キーシステムは、前記位置検出用センサ部が出力する位置検出用信号が、ミリ波信号よりなるものである。
【0016】
また、本発明の無線キーシステムは、前記位置検出用センサ部が出力する識別用信号が、ミリ波信号よりなるものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
(1)キー(キー携帯者)の位置検出を高精度に行うことができる。
【0019】
(2)また、上記(1)により、自動車の高度なセキュリティ制御技術を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態による無線キーシステムの一例を示すブロック図、図2は、図1の無線キーシステムによってカバーされる無線通信領域、およびミリ波信号領域の一例を示した説明図、図3は、図1の無線キーシステムにおける動作例を示すフローチャートである。
【0022】
本実施の形態において、無線キーシステム1は、自動車外におけるキー(の携帯者)の位置を高精度に認識するとともに、ドアの施錠や解錠、およびエンジンの始動や停止などの高度なセキュリティ制御を行うシステムである。
【0023】
無線キーシステム1は、図1に示すように、キー側無線通信部2と自動車側無線通信部3とから構成されている。キー側無線通信部2は、自動車のキーに設けられたシステムであり、このキー側無線通信部2は、アンテナ4,5、無線通信部6、センサ受信部7、およびキー側制御部8から構成されている。
【0024】
また、自動車側無線通信部3は、自動車側に設けられたシステムであり、無線通信部(キー検出部)9、主制御部(キー検出部、キー位置演算部)10、前方右側検出センサ部(位置検出用センサ)11、前方左側検出センサ部(位置検出用センサ)12、右方前方検出センサ部(位置検出用センサ)13、右方後方検出センサ部(位置検出用センサ)14、左方前方検出センサ部(位置検出用センサ)15、左方後方検出センサ部(位置検出用センサ)16、後方右側検出センサ部(位置検出用センサ)17、ならびに後方左側検出センサ部(位置検出用センサ)18から構成されている。
【0025】
これらセンサ部11〜18は、自動車の衝突防止や衝突被害の低減をアシストする安全支援システムなどに用いられるミリ波レーダのセンサが設けられている場合には、該安全支援システムのセンサと併用する構成とする。
【0026】
アンテナ4は、自動車側無線通信部3からの無線信号を送受信する。アンテナ5は、自動車側無線通信部3から出力される、たとえば、たとえば、ミリ波信号を受信する。無線通信部6は、キー側無線通信部2との無線通信を行う。
【0027】
センサ受信部7は、アンテナ5を介して受信したミリ波信号を検出する。キー側制御部8は、キー側無線通信部2におけるすべての制御を司る。
【0028】
無線通信部9にアンテナ9aが設けられており、該アンテナ9aを介して入力されたキー側無線通信部2からの無線信号を送受信する。主制御部10は、自動車側無線通信部3におけるすべての制御を司る。
【0029】
これら前方右側検出センサ部11、前方左側検出センサ部12、右方前側検出センサ部13、右方後側検出センサ部14、左方前側検出センサ部15、左方後側検出センサ部16、後方右側検出センサ部17、および後方左側検出センサ部18は、アンテナ11a〜18a、センサ11b〜18b、およびセンサ制御部11c〜18cからそれぞれ構成されている。
【0030】
前方右側検出センサ部11は、自動車のフロント部の右側に設けられており、前方左側検出センサ部12は、自動車のフロント部の左側に設けられている。右方前側検出センサ部13は、自動車の右サイドの前方部に設けられており、右方後側検出センサ部14は、自動車の右サイドの後方部に設けられている。
【0031】
左方前側検出センサ部15は、自動車の左サイドの前方部に設けられており、左方後側検出センサ部16は、自動車の左サイドの後方部に設けられている。後方右側検出センサ部17は、自動車のリア部の右側に設けられており、後方左側検出センサ部18は、自動車のリア部の左側に設けられている。
【0032】
センサ11b〜18bは、たとえば、ミリ波レーダなどからなる。これらセンサ11b〜18bは、個々のセンサ制御部11c〜18cの制御に従って、アンテナ11a〜18aを介して、位置検出用信号となるミリ波信号を送信するとともに、その反射波をアンテナ11a〜18aを介して受信する。センサ制御部11c〜18cは、主制御部10の制御に基づいて、各々のセンサ11b〜18bによるミリ波信号の送受信をそれぞれ制御する。
【0033】
図2は、キー側無線通信部2の無線通信部6と自動車側無線通信部3の無線通信部9とにより、カバーされる無線通信領域MRと、前方右側検出センサ部11、前方左側検出センサ部12、右方前側検出センサ部13、右方後側検出センサ部14、左方前側検出センサ部15、左方後側検出センサ部16、後方右側検出センサ部17、および後方左側検出センサ部18によりカバーされるミリ波信号領域RR1〜RR8とをそれぞれ示した説明図である。
【0034】
図2では、無線通信部6,9の無線通信によりカバーされる無線通信領域MRを○印で示しており、各々の検出センサ部11〜18によりカバーされるミリ波信号領域RR1〜RR8を、それぞれ網掛けにより示している。
【0035】
無線通信領域MR内にキーが入ると、キー側無線通信部2と自動車側無線通信部3との無線通信により、搭乗者が自動車に近づいたと判断する。
【0036】
続いて、そのキーが、各ミリ波信号領域RR1〜RR8のどの領域に位置しているかを検出センサ部11〜18を用いて確定した後、正確なキーの位置検出が行われる。
【0037】
次に、本実施の形態における無線キーシステム1の動作について、図3のフローチャートを用いて説明する。ここでは、キー(キー携帯者)の所在位置が、ミリ波信号領域RR1内である場合の動作例について説明する。
【0038】
まず、図3の右側に示すキー側無線通信部2において、無線通信部6は、一定時間毎に無線信号の出力(ステップS101)、および自動車側無線通信部3からの無線信号の受信(ステップS102)の動作を行う。
【0039】
また、図3の左側に示す自動車側無線通信部3においては、無線通信部9により無線信号の受信動作(ステップS103)、および主制御部10によるキーの検出動作(ステップS104)が行われている。
【0040】
この場合、無線通信部9は、一定時間毎に、無線通信部6から出力される無線信号の受信動作を行い、その受信信号の強度が任意のしきい値以上であるか否かで受信信号の強度を判断する。主制御部10は、受信信号の強度がしきい値以上になると、キーが図2の無線通信領域MR内に入ったと判断する。
【0041】
ステップS104の処理において、受信信号の強度がしきい値以上になると、無線通信部9は、新たな応答信号を無線通信部6に送信する(ステップS105)。続いて、主制御部10は、センサ部11〜18に対して、ミリ波信号を出力する制御を行う(ステップS106)。
【0042】
また、キー側制御部8は、ステップS105の処理後、無線通信部6が無線通信部9からの応答信号を受け取ったか否かを判断する(ステップS107)。応答信号を受け取った際、キー側制御部8は、センサ受信部7により、ミリ波信号を受信したか否かを判断する(ステップS108)。
【0043】
ここで、ステップS106の処理におけるミリ波信号の送信制御について説明する。
【0044】
この場合、主制御部10は、たとえば、前方右側検出センサ部11から、前方左側検出センサ部12、右方前方検出センサ部13、右方後方検出センサ部14、左方前方検出センサ部15、左方後方検出センサ部16、後方右側検出センサ部17、後方左側検出センサ部18までを順番にミリ波信号が出力されるように制御を行う。このとき、センサ部11〜18は、識別用信号として個々に割り付けられた特有のコード(たとえば、ID番号など)を出力する。
【0045】
前述したように、キー(キー携帯者)は、ミリ波信号領域RR1内に位置しているので、センサ受信部7は、前方右側検出センサ部11から出力されたミリ波信号を受信する。そして、キー側制御部8は、受信した前方右側検出センサ部11に付与された特有のコードに基づいて、該前方右側検出センサ部11からのミリ波信号を受信したことを示す応答信号を出力する(ステップS109)。
【0046】
続いて、無線通信部9が、無線通信部6からの応答信号を受信すると(ステップS110)、主制御部10は、応答信号に基づいて、キー側無線通信部2が受信したミリ波信号を出力したセンサ部(前方右側検出センサ部11)を特定する。
【0047】
また、ステップS110の処理において、キーが移動してミリ波信号領域RR1外に出て行ってしまった場合には、ステップS106の処理を応答信号が検出されるまで実行する(ステップS111)。
【0048】
続いて、主制御部10は、その前方右側検出センサ部11から、再びミリ波信号を出力する制御を行う。前方右側検出センサ部11は、ミリ波信号を出力し、その反射波を検出する。
【0049】
主制御部10は、前方右側検出センサ部11が受信した反射波から、周辺物体の位置や大きさ(キー携帯者)などを計算し、キー(キー携帯者)の詳細な位置を検出する(ステップS112)。
【0050】
それにより、本実施の形態によれば、高精度にキー(キー携帯者)の位置検出を行うことができる。
【0051】
また、自動車に安全支援システムが備えられている際に、該安全支援システムに使用するミリ波レーダをセンサ部11〜18として用いることにより、無線キーシステム1を低コストで構成することができる。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、自動車におけるキー(キー携帯者)の位置を高精度に検出する技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態による無線キーシステムの一例を示すブロック図である。
【図2】図1の無線キーシステムによってカバーされる無線通信領域、およびミリ波信号領域の一例を示した説明図である。
【図3】図1の無線キーシステムにおける動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 無線キーシステム
2 キー側無線通信部
3 自動車側無線通信部
4,5 アンテナ
6 無線通信部
7 センサ受信部
8 キー側制御部
9 無線通信部(キー検出部)
9a アンテナ
10 主制御部(キー検出部、キー位置演算部)
11 前方右側検出センサ部(位置検出用センサ)
11a アンテナ
11b センサ
11c センサ制御部
12 前方左側検出センサ部(位置検出用センサ)
12a アンテナ
12b センサ
12c センサ制御部
13 右方前側検出センサ部(位置検出用センサ)
13a アンテナ
13b センサ
13c センサ制御部
14 右方後側検出センサ部(位置検出用センサ)
14a アンテナ
14b センサ
14c センサ制御部
15 左方前側検出センサ部(位置検出用センサ)
15a アンテナ
15b センサ
15c センサ制御部
16 左方後側検出センサ部(位置検出用センサ)
16a アンテナ
16b センサ
16c センサ制御部
17 後方右側検出センサ部(位置検出用センサ)
17a アンテナ
17b センサ
17c センサ制御部
18 後方左側検出センサ部(位置検出用センサ)
18a アンテナ
18b センサ
18c センサ制御部
MR 無線通信領域
RR1〜RR8 ミリ波信号領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーに設けられ、前記キーを認識させる無線信号を出力するキー側無線通信部と、
自動車に設けられた自動車側無線通信部とを備え、
前記自動車側無線通信部は、
前記キー側無線通信部の無線信号を受信し、前記キーが、前記自動車に任意の距離まで近づいたことを検出するキー検出部と、
自動車の任意の位置に設けられ、位置検出用信号を送受信する複数の位置検出用センサ部と、
前記キー検出部が前記キーを検出した際に、前記位置検出用センサ部の位置検出用信号を用いて、前記キーの詳細な位置を算出するキー位置演算部とを有したことを特徴とする無線キーシステム。
【請求項2】
請求項1記載の無線キーシステムにおいて、
前記位置検出用センサ部は、
前記キー検出部が前記キーを検出した際に、各々の前記位置検出用センサ部に個別に付与された識別用信号を送信し、
前記キー側無線通信部は、
前記位置検出用センサ部の識別用信号を受信した際に、受信した識別用信号に基づいて、どの位置検出用センサ部からの識別用信号を受信したことを示す応答信号を出力し、
前記キー位置演算部は、
前記キー側無線通信部の応答信号から、前記キーが自動車のどの領域に位置しているかを認識することを特徴とする無線キーシステム。
【請求項3】
請求項2記載の無線キーシステムにおいて、
前記キー位置演算部は、
前記キーが自動車のどの領域に位置しているかを認識した際に、前記複数の位置検出用センサ部のうち、認識した位置に該当する位置検出用センサ部から位置検出用信号を送信し、前記位置検出用センサ部が受信したその反射波から、前記自動車周辺物体の位置や大きさを計算し、前記キーの詳細な位置を検出することを特徴とする無線キーシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線キーシステムにおいて、
前記位置検出用センサ部が出力する位置検出用信号は、ミリ波信号であることを特徴とする無線キーシステム。
【請求項5】
請求項3記載の無線キーシステムにおいて、
前記位置検出用センサ部が出力する識別用信号は、ミリ波信号であることを特徴とする無線キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−332705(P2007−332705A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167362(P2006−167362)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】