説明

無線システム

【課題】無線送受信部の運用状態を保ちながら異常監視が可能で、かつ現用が故障したときに信頼性の高い予備用に切り替え可能にする。
【解決手段】無線送受信部2に、現用または予備用として切り替え使用可能な複数の送受信部4a〜4nと、これらの送受信部4a〜4nを選択的に切り替え接続する送受信部切替手段5とを設け、各送受信部4a〜4nの異常監視を行うためのテスト信号生成部7からのテスト信号を各送受信部4a〜4nに選択的に与えるよう切り替え可能な信号切替手段8と、テスト信号生成部7からのテスト信号を与えるときにテスト伝送路を形成するように現用の送受信部4aを制御する送受信部制御部9と、テスト信号を用いて各送受信部4a〜4nの異常監視をそれぞれ行う異常監視部10と、異常監視の結果に基づいて送受信部切替手段5を切り替えて健全なものを現用とするように制御するメンテナンス制御部11とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置や移動端末内の送受信部における異常監視を行う無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線システムにおける基地局装置や移動端末内の無線送受信部では、この無線送受信部の受信レベルを検出し、この受信レベルを制御前レベルと比較して異常を監視する異常監視部を設けたものが知られている。また、この種の無線システムにおいて、現用基地局が故障した際、全ての予備系基地局に接続を切替えることなく、故障した現用基地局のみを予備系基地局に切替えるようにするために、現用基地局が故障したとき切替回路のエラー検出部に自基地局が故障したことを示す信号を送信し、エラー検出部では、現用基地局に対応する切替スイッチをOFFにし、予備系基地局への切替スイッチをONにすることで、予備系基地局との接続を行い、さらにエラー検出部では、切替回路の切替スイッチを現用基地局側から予備系基地局側にし、中継増幅器と予備系基地局の接続切替を行うように構成して、故障時の信頼性低下を防止した構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−102969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の無線システムでは、送受信部の故障発生を検出したときに装置全体を一時的停止する必要があったり、予備系を備えて現用基地局が故障した際に予備系を切替接続しても、この予備系に故障が発生していた場合、やはり装置全体を一時的に停止する必要があり、信頼性の向上には限界があった。
【0005】
本発明の目的は、無線送受信部の運用状態を保ちながら異常監視が可能で、かつ現用が故障したときに信頼性の高い予備用に切り替えることができるようにした無線システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、アンテナに接続した無線送受信部を備えた無線システムにおいて、前記無線送受信部に、現用または予備用として切り替え使用可能な複数の送受信部と、該送受信部を選択的に切り替え接続する送受信部切替手段とを設け、予備用の前記各送受信部の異常監視を行うためのテスト信号を生成するテスト信号生成部と、該テスト信号生成部からのテスト信号を予備用の前記各送受信部に選択的に与えるよう切り替え可能な信号切替手段と、テスト信号を用いて予備用の前記各送受信部の異常監視をそれぞれ行う異常監視部と、この異常監視部による異常監視タイミングを制御すると共に、異常監視の結果に基づいて前記送受信部切替手段を切り替えて前記各送受信部の現用および予備用を制御するメンテナンス制御部とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の無線システムによれば、予備用として設けた送受信部は、定常の使用状態における所定のタイミングで異常監視を予め行うことができるようになり、現用の送受信部の故障発生時には予め健全であると判定した予備用の送受信部に切り替えることができるので、高い信頼性を維持しながら本装置を継続的に使用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態による無線システムにおける基地局装置または移動端末装置の要部を示すブロック構成図である。
【図2】図1に示した無線システムにおける異常監視処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態による無線システムにおける基地局装置または移動端末装置の要部を示すブロック構成図である。
本装置は、アンテナ1と、このアンテナ1に接続された無線送受信部2と、無線送受信部2にベースバンド信号を与えるベースバンド処理部3とを有した通常の主たる構成の他に、新たな構成を付加している。つまり、無線送受信部2内には、現用または予備用として切り替え使用可能な複数の送受信部4a〜4nと、切り替え信号を受けてアンテナ1と送受信部4a〜4nを選択的に切り替え接続する送受信部切替手段5とを設け、またベースバンド処理部3には、ベースバンド信号を生成して現用の送受信部に与えるデータ処理部6の他に、異常監視を行うためのテスト用PN(Pseudo Noise)信号等のテスト信号を生成するテスト信号生成部7と、このテストデータ生成部7からのテスト信号を任意の送受信部4a〜4nに与えるように切り替え接続可能な信号切替手段8とを設けている。テスト信号生成部7はベースバンド処理部3内に構成したが、この構成に限定するものではない。
【0011】
さらに、ベースバンド処理部3から無線送受信部2内の特定の送受信部4a〜4nに対して異常監視のためのテスト信号を与えるときにテスト伝送路を形成するようにその送受信部4a〜4nを制御する送受信部制御部9と、テスト信号を用いてBER(Bit Error Rate)測定等を行って無線送受信部2内の各送受信部4a〜4nの異常監視を行う異常監視部10と、この異常監視部10による異常監視を実施するタイミングや頻度などを制御すると共に、異常監視の結果に基づいて送受信部4a〜4nの現用および予備用を切り替えるメンテナンス制御部11とを設けている。
【0012】
通常の運用では、送受信部切替手段5はアンテナ1と現用の送受信部4aとを接続し、信号切替手段8は現用の送受信部4aとデータ処理部6とを接続し、ベースバンド処理部3のデータ処理部6から生成されたベースバンド信号を無線送受信部2における現用の送受信部4aに与え、送信無線周波数信号に変換した後、アンテナ1を介して無線送信しているものとして説明する。
【0013】
この通常の運用と並行して、異常監視部10およびメンテナンス制御部11は予備用の送受信部4b〜4nの異常監視を行う。この異常監視処理を図2に示したフローチャートを用いて説明する。
【0014】
異常監視を実施するタイミングはメンテナンス制御部11によって管理され、ステップS1で予め設定した所定のタイミングになったことを検出すると、メンテナンス制御部11は、ステップS3で異常監視対象が予備用か現用かを判定し、この場合は予備用であるからステップS4に進み、信号切替手段8に監視開始信号となる切り替え信号を与える。この切り替え信号を受けた信号切替手段8は、無線送受信部2の予備用の送受信部4b〜4nの一つ、例えば送受信部4bとテスト信号生成部7を接続する。その後、ステップS5でテスト信号生成部7で生成したテスト信号をその送受信部4bに送信する。
【0015】
このテスト信号の送信時に、異常監視部10はステップS6でその送受信部4bの内部で折り返される信号のBER測定を行う。異常監視部10は、このBER測定後のステップS7で異常判定を行う。例えば、異常監視部10は予め設定した閾値と測定したBER値を比較し、その結果、閾値を下回ったり、あるいは、テスト信号に対するError頻度が高い場合、異常監視を行った送受信部4bの異常と断定し、その他の場合は正常と判定して、この判定結果をメンテナンス制御部11に通知する。
【0016】
メンテナンス制御部11では、送受信部4bが故障であった場合、ステップS8で異常監視した送受信部4bが現用として接続されないように切替監視対象から外し、一方、送受信部4bが正常であった場合、送受信部4bが現用に変更して接続可能なものとして管理する。
【0017】
その後、メンテナンス制御部11は、ステップS2で全ての予備用の送受信部4b〜4nに対して異常監視を実施したかどうかを判定し、まだ完了していない場合は、次の予備用の送受信部に対してステップS3から同様の処理を繰り返す。各送受信部4b〜4nの異常監視結果はメンテナンス制御部11に送信され、万一、現用の送受信部4aの故障発生時に、送受信部4aに代えて健全な予備用の送受信部4b〜4nのうちの一つを使用するものとして管理される。ステップSで全ての予備用の送受信部4b〜4nに対して異常監視を実施したと判定されたときは監視処理を終了する。
【0018】
この説明から分かるように本無線システムは、無線送受信部2に、現用または予備用として切り替え使用可能な複数の送受信部4a〜4nと、これらの送受信部4a〜4nを選択的に切り替え接続する送受信部切替手段5とを設け、少なくとも予備用の複数の送受信部4b〜4nの異常監視を行うためのテスト信号を生成するテスト信号生成部7と、このテスト信号生成部7からのテスト信号を予備用の各送受信部4b〜4nに選択的に与えるよう切り替え可能な信号切替手段8と、テスト信号を用いて予備用の各送受信部4b〜4nの異常監視をそれぞれ行う異常監視部10と、この異常監視部10による異常監視タイミングを制御すると共に、異常監視の結果に基づいて送受信部切替手段5を切り替えて予備用の各送受信部4b〜4nのうち健全なものを現用に切り替え制御するメンテナンス制御部11とを設けたため、予備用として設けた複数の送受信部4b〜4nは、定常の使用状態における所定のタイミングで異常監視を予め行うことができるようになる。従って、現用の送受信部4aの故障発生時には予め健全であると判定した送受信部4b〜4nに切り替えることができるので、高い信頼性を維持しながら本装置を継続的に使用することができるようになる。
【0019】
ここでは、予備用として設けた複数の送受信部4b〜4nを備えた場合について説明したが、予備用として設けた一つの送受信部4bを有する場合でも、同様に適用することができ、予備用として設けた送受信部4bは、定常の使用状態における所定のタイミングで異常監視を予め行うことができるようになり、現用の送受信部4aの故障発生時には予め健全であると判定した送受信部4bに切り替えることができるので、高い信頼性を維持しながら本装置を継続的に使用することができるようになる。
【0020】
ところで、現用の送受信部4aの異常監視は予備用の送受信部4b〜4nとは異なる他の種々の方法で行うこともできるが、ここでは、上述した予備用の送受信部4b〜4nにおける異常監視を利用して現用の送受信部4aに対しても実施することができる。この場合、現用の送受信部4aに対しては他の健全な予備の送受信部4b〜4nの一つを現用に切り替えた後に、上述した予備の送受信部4b〜4nと同じように実施しても良いし、また後述するように予備の送受信部4b〜4nと同じタイミングまたは異なる独自のタイミングで実施しても良い。
【0021】
ステップS1で現用の送受信部4aに対して異常監視を行うタイミングになると、メンテナンス制御部11は、ステップS3で現用の異常監視であることを判定し、処理データが検出されない状態であることを検出した後、信号切替手段8に監視開始信号を与えると共に、送受信部制御部9に制御信号を与える。監視開始信号を受けた信号切替手段8は、ステップS9で送受信部4aとテスト信号生成部7とを接続し、制御信号を受けた送受信部制御部9は、ステップS10で送受信部4a内にテスト伝送路を形成する。例えば、テスト信号生成部7を信号発生器とし、送受信部制御部9からの制御信号を受けて現用の送受信部4a内の送信系から受信系へ、受信系から送信系に信号を折り返すことができるテスト伝送路を形成する。また、テスト信号生成部7が生成するテスト信号を受信感度レベルに設定し、その後、ステップS11でテスト信号生成部7からのテスト信号を送受信部4aに対して送信する。このときに異常監視部10は、ステップS12で上述した予備の送受信部4b〜4nの場合と同様にBER測定を実施する。
【0022】
異常監視部10では、上述したBER測定後のステップS13で異常判定を行い、予め設定した閾値と測定したBER値を比較し、その結果、閾値を下回っていたり、あるいは、テスト信号に対するError頻度が高い場合、異常監視を行った送受信部4aの故障と判定する。この判定結果を受けたメンテナンス制御部11は、ステップS14で送受信部切替手段5を制御し、送受信部4aをスタンバイ状態とすると共に、アクティブ状態にある健全な他の予備用の送受信部4b〜4nが現用となるように切り替え接続する。
【0023】
このようにして望ましい実施の形態による無線システムは、無線送受信部2に、現用または予備用として切り替え使用可能な複数の送受信部4a〜4nと、これらの送受信部4a〜4nを選択的に切り替え接続する送受信部切替手段5とを設け、各送受信部4a〜4nの異常監視を行うためのテスト信号を生成するテスト信号生成部7と、このテスト信号生成部7からのテスト信号を各送受信部4a〜4nに選択的に与えるよう切り替え可能な信号切替手段8と、テスト信号生成部7からのテスト信号を与えるときにテスト伝送路を形成するように現用の送受信部4aを制御する送受信部制御部9と、テスト信号を用いて各送受信部4a〜4nの異常監視をそれぞれ行う異常監視部10と、この異常監視部10による異常監視タイミングを制御すると共に、異常監視の結果に基づいて送受信部切替手段5を切り替えて健全なものを現用とするように制御するメンテナンス制御部11とを設けて構成している。
【0024】
このような無線システムによれば、予備用として設けた複数の送受信部4b〜4nは、定常の使用状態における所定のタイミングで、異常監視を予め行うことができるようになることは勿論、現用の送受信部4aに対しても同様の異常監視部10等を使用して異常監視を行うことができ、現用の送受信部4aにおける異常発生を検出したときには、予め異常監視を行っている予備用の無線送受信部4b〜4nのうちの健全なものを使用して切り替えることができる。従って、通常の運用を止めることなく異常監視を行うことができ、しかも、故障が発生したとしても無線システムの運用に悪影響を与えず予備の送受信部4b〜4nで運用を継続させることができる。
【0025】
詳細な図示を省略しているが、異常検出部10によって送受信部4a〜4nのいずれかの異常が検出された場合、メンテナンス制御部11などによって管理者にこれを通知するようにすると良い。この通知を受けた管理者は、故障した送受信部の交換作業を行うが、故障検出が行われた時点で、送受信部切替手段5が切り替えられて故障した送受信部を予備扱いにしているため、送受信部を修理または交換して装置内に再接続すると、装置は即座に通常の動作を再開することになる。また交換後の送受信部に対しても、同様の異常監視を行った後に現用として使用すれることになるから、信頼性の高い無線システムとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による無線送受信機は、図1に示した構成のものに限らず、その他の構成のものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 アンテナ
2 無線送受信部
3 ベースバンド処理部
4a〜4n 送受信部
5 送受信部切替手段
6 データ処理部
7 テスト信号生成部
8 信号切替手段
9 送受信部制御部
10 異常監視部
11 メンテナンス制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナに接続した無線送受信部を備えた無線システムにおいて、前記無線送受信部に、現用または予備用として切り替え使用可能な複数の送受信部と、該送受信部を選択的に切り替え接続する送受信部切替手段とを設け、予備用の前記各送受信部の異常監視を行うためのテスト信号を生成するテスト信号生成部と、該テスト信号生成部からのテスト信号を予備用の前記各送受信部に選択的に与えるよう切り替え可能な信号切替手段と、テスト信号を用いて予備用の前記各送受信部の異常監視をそれぞれ行う異常監視部と、この異常監視部による異常監視タイミングを制御すると共に、異常監視の結果に基づいて前記送受信部切替手段を切り替えて前記各送受信部の現用および予備用を制御するメンテナンス制御部とを設けたことを特徴とする無線システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−114552(P2012−114552A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259927(P2010−259927)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】