説明

無線タグシステム

【課題】無線タグから無線タグリーダに対してなされる通信確認処理をより適切な間隔で行うことができ、無線タグの省電力化をより効果的に図り得る無線タグシステムを提供する。
【解決手段】無線タグシステム1は、内蔵電池を備えた無線タグ50と、第1通信エリアAR1内で無線タグ50を読み取る無線タグリーダ10と、無線タグリーダ10によって構成される第1通信エリアAR1よりも広く且つ第1通信エリアAR1の周囲を含んだ第2通信エリアAR2内で無線タグ50と無線LAN通信を行うリーダ側基地局80aと備えている。そして、無線タグ50に設けられた無線タグ通信手段は、無線LAN通信手段とリーダ側基地局80aとの間の無線LAN通信の状態に応じて、無線タグリーダ10に対する通信確認処理の間隔を変更している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内蔵電池を搭載したアクティブタグが提供されている。この種のアクティブタグは、タグ内に搭載された電池から電力が供給され、自発的に電波を発することができるため、一般的にはパッシブタグと比較して通信エリアを広く確保できるというメリットがあり、このようなメリットを生かして様々な用途で広く用いられている。なお、アクティブタグを用いた無線タグシステムの一例としては、例えば特許文献1のようなものが提供されている。
【0003】
特許文献1の技術では、携帯端末が、現在位置を検出すると共に、その検出された現在位置の過去の受信電力レベルを履歴情報にて参照しており、得られた過去の受信電力レベルに応じて検波動作を制御している。このようにすることで、受信検波動作をより適切に行うことができ、携帯端末の省電力化を図りやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−231868公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような無線タグシステムでは、無線タグリーダの省電力化のみならず、無線タグの省電力化も求められる。特に、内蔵電池を搭載した無線タグでは、電池寿命や商品性の面から消費電力をより一層抑制することが要求されており、特にアクティブタグを常時監視するようなシステムを構築する場合、このような電力消費の抑制の要求が大きい。
【0006】
例えば、所定の場所に無線タグリーダを配置してアクティブタグを監視するようなシステムとしては、アクティブタグが無線タグリーダに定期的に所定コマンドを送信し、無線タグリーダがこれに対して応答を返すことで通信リンクの確立を行うようなものが考えられる。このようなシステムでは、アクティブタグで行われる送信の頻度(例えば上記コマンド送信の頻度)が大きすぎると消費電力が増大して内蔵電池の寿命を縮めてしまうという問題があり、逆に、小さすぎると、無線タグリーダがアクティブタグを検出しにくくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、無線タグから無線タグリーダに対してなされる通信確認処理をより適切な間隔で行うことができ、無線タグの省電力化をより効果的に図り得る無線タグシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、内蔵電池を備えた無線タグと、所定の第1通信エリア内で前記無線タグを読み取る無線タグリーダと、前記無線タグリーダによって構成される前記第1通信エリアよりも広く且つ前記第1通信エリアの周囲を含んだ第2通信エリア内で前記無線タグと無線LAN通信を行うリーダ側基地局と、を備え、前記無線タグが、前記無線タグリーダに対して定期的に通信確認処理を行う無線タグ通信手段と、前記リーダ側基地局と無線LAN通信を行う無線LAN通信手段と、を有し、前記無線タグ通信手段が、前記無線LAN通信手段と前記リーダ側基地局との間の無線LAN通信の状態に応じて、前記無線タグリーダに対する前記通信確認処理の間隔を変更することを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の無線タグシステムであって、前記無線タグ通信手段は、前記無線タグリーダからの応答が受信不能であって且つ前記無線LAN通信手段が前記リーダ側基地局と通信可能なときの前記通信確認処理の間隔を、前記無線タグリーダから応答が受信可能なときの前記通信確認処理の間隔よりも短く設定している。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の無線タグシステムであって、前記無線タグ通信手段が、前記無線タグリーダからの応答が受信不能であって且つ前記無線LAN通信手段が前記リーダ側基地局と通信不能であるときに、前記通信確認処理を休止している。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線タグシステムであって、前記無線LAN通信手段が、前記無線タグと前記無線タグリーダとが通信可能な状態にあるときに前記リーダ側基地局との間で行われる無線LAN通信を休止している。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグシステムであって、前記無線LAN通信手段が、前記リーダ側基地局からの確認信号が一定期間受信不能となったときに前記リーダ側基地局との間で行われる無線LAN通信を休止し、所定の開始条件の成立時に外部との無線LAN通信処理を開始している。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の無線タグシステムであって、更に、前記第1通信エリアと重ならない所定の第3通信エリア内に配置された前記無線タグとの間で無線LAN通信が可能な外部基地局を備えており、前記無線LAN通信手段が、前記リーダ側基地局との間で行われる無線LAN通信の状態、及び前記外部基地局との間で行われる無線LAN通信の状態の内、少なくともいずれかの通信状態に応じて、無線LAN通信における電波受信処理の間隔を変更している。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載の無線タグシステムであって、前記無線LAN通信手段が、前記リーダ側基地局との間で無線LAN通信が可能なときの電波受信処理の間隔を所定の第1間隔に設定し、前記外部基地局との間で無線LAN通信が可能なときの電波受信処理の間隔を前記第1間隔よりも長い第2間隔に設定している。
【0015】
請求項8の発明は、請求項7に記載の無線タグシステムであって、前記無線LAN通信手段が、前記外部基地局との間で無線LAN通信が可能な状態のときの電波受信処理の間隔を前記第2間隔に設定し、前記外部基地局との間で、無線LAN通信が可能な状態から不能な状態に変化したときには、電波受信間隔を前記第2間隔よりも短い第3間隔に設定している。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、内蔵電池を備えた無線タグと、所定の第1通信エリア内で無線タグを読み取る無線タグリーダと、無線タグリーダによって構成される第1通信エリアよりも広く且つ第1通信エリアの周囲を含んだ第2通信エリア内で無線タグと無線LAN通信を行うリーダ側基地局と備えている。そして、無線タグには、無線タグリーダに対して定期的に通信確認処理を行う無線タグ通信手段と、リーダ側基地局と無線LAN通信を行う無線LAN通信手段とが設けられており、無線タグ通信手段は、無線LAN通信手段とリーダ側基地局との間の無線LAN通信の状態に応じて、無線タグリーダに対する通信確認処理の間隔を変更している。
このようにすると、無線タグが無線タグリーダの通信エリア(第1通信エリア)から外れた場合であっても、リーダ側基地局と無線LAN通信が可能な場合(即ち、無線タグリーダの通信エリアに近い場合)には、無線タグリーダに対する通信確認処理の間隔をその位置に適した間隔に調整しやすくなる。特に、無線タグリーダの通信エリアとの近さに関係なく通信確認処理の間隔を短く設定する構成と比較して省電力化を図り易くなる。
【0017】
請求項2の発明では、無線タグ通信手段は、無線タグリーダからの応答が受信不能であって且つ無線LAN通信手段がリーダ側基地局と通信可能なときの通信確認処理の間隔を、無線タグリーダから応答が受信可能なときの通信確認処理の間隔よりも短く設定している。このようにすると、無線タグが無線タグリーダの通信エリア(第1通信エリア)外において当該第1通信エリアの近くに存在するときに、第1通信エリア内に存在するときよりも頻繁に通信確認処理が行われることとなる。従って、無線タグリーダは、第1通信エリアの近傍から当該第1通信エリア内に入ろうとうする無線タグをより早期に検出することができる。
【0018】
請求項3の発明では、無線タグ通信手段が、無線タグリーダからの応答が受信不能であって且つ無線LAN通信手段がリーダ側基地局と通信不能であるときに、通信確認処理を休止している。この構成によれば、無線タグが無線タグリーダの通信範囲から遠ざかり、通信の可能性が低下したときに、効果的に省電力化を図ることができる。
【0019】
請求項4の発明では、無線LAN通信手段が、無線タグと無線タグリーダとが通信可能な状態にあるときにリーダ側基地局との間で行われる無線LAN通信を休止している。この構成によれば、既に無線タグが無線タグリーダの通信エリア内に存在することが把握できており、無線LAN通信による位置関係の把握が必要ない場合に、無線LANを休止させて適切に省電力化を図ることができる。
【0020】
請求項5の発明では、無線LAN通信手段は、リーダ側基地局からの確認信号が一定期間受信不能となったときにリーダ側基地局との間で行われる無線LAN通信を休止し、所定の開始条件の成立時に外部との無線LAN通信処理を開始している。
この構成によれば、無線タグ側においてリーダ側基地局からの確認信号を一定期間受信不能となり、無線タグがリーダ側基地局の通信エリアから離れた可能性が高い場合(即ち、無線タグが直近の時期にリーダ側基地局と無線LAN通信を行う可能性が低くなった場合)に、無線LAN通信を休止させて適切に省電力化を図ることができる。
【0021】
請求項6の発明では、第1通信エリアと重ならない所定の第3通信エリア内に配置された無線タグとの間で無線LAN通信が可能な外部基地局が設けられている。そして、無線タグの無線LAN通信手段は、リーダ側基地局との間で行われる無線LAN通信の状態、及び外部基地局との間で行われる無線LAN通信の状態の内、少なくともいずれかの通信状態に応じて、無線LAN通信における電波受信処理の間隔を変更している。
このようにすると、無線タグが無線タグリーダに近いリーダ側基地局と通信可能な状態にあるのか、又は、無線タグが無線タグリーダから遠い外部基地局と通信可能な状態にあるのか、若しくはいずれの基地局とも通信可能な状態にないのかを無線タグ側で正確に把握することができ、無線タグで行われる電波受信処理の間隔を、無線タグの位置に応じて適切に変更することができる。
【0022】
請求項7の発明では、無線タグの無線LAN通信手段は、リーダ側基地局との間で無線LAN通信が可能なときの電波受信処理の間隔を所定の第1間隔に設定し、外部基地局との間で無線LAN通信が可能なときの電波受信処理の間隔を第1間隔よりも長い第2間隔に設定している。
このようにすると、無線タグリーダの通信エリア(第1通信エリア)からより離れた通信エリアが設定される外部基地局と通信可能な場合(即ち、無線タグが無線タグリーダの通信エリアから離れており、すぐに無線タグリーダと通信が行われる可能性が低い場合)に、電波受信処理の間隔を相対的に長く設定することができる。従って、無線タグリーダと通信が行われる可能性が低く、無線LAN通信による結果が無線タグリーダの検出に影響を及ぼしにくい状態を適切に把握して効果的に省電力化を図ることができる。
【0023】
請求項8の発明は無線LAN通信手段が、外部基地局との間で無線LAN通信が可能な状態のときの電波受信処理の間隔を第2間隔に設定し、外部基地局との間で、無線LAN通信が可能な状態から不能な状態に変化したときには、電波受信間隔を第2間隔よりも短い第3間隔に設定している。
この構成によれば、無線タグが外部基地局の通信エリア(第3通信エリア)から離れ、無線タグリーダ側に近づく可能性がある場合に、無線LAN通信の電波受信処理の頻度を高めることができる。従って、無線タグがリーダ側基地局の通信エリアに至ったときに迅速に無線LAN通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る無線タグシステムを概略的に説明する説明図である。
【図2】図2は、図1の無線タグシステムで用いられる無線タグリーダの電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【図3】図3は、図1の無線タグシステムで用いられる無線タグの電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【図4】図4(A)は、図1の無線タグシステムで用いられるリーダ側基地局の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図4(B)は、図1の無線タグシステムで用いられる外部基地局の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【図5】図5はタグ通信部(送信部及び受信部)を動作させて行われる無線タグ通信処理(RFID通信処理)の流れを例示するフローチャートである。
【図6】図6は、無線LAN通信部を動作させて行われる無線LAN通信処理の流れを例示するフローチャートである
【図7】図7は、無線タグ通信処理による通信確認処理のタイミング、及び無線LAN通信処理による電波受信タイミングを例示するタイミングチャートである。
【図8】図8(A)は、無線タグから無線タグリーダへ送信する送信データのフレーム構成を概念的に説明する説明図であり、図8(B)は、無線タグリーダから無線タグへ送信するACK(肯定応答)のフレーム構成を概念的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明の無線タグシステムを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、図1〜図4等を参照し、本実施形態に係る無線タグシステム1を構成する各要素のハードウェア構成等について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る無線タグシステムを概略的に説明する説明図である。図2は、図1の無線タグシステムで用いられる無線タグリーダの電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図3は、図1の無線タグシステムで用いられる無線タグの電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図4(A)は、図1の無線タグシステムで用いられるリーダ側基地局の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図4(B)は、図1の無線タグシステムで用いられる外部基地局の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【0026】
(無線タグシステムの概要)
まず、図1等を参照し、無線タグシステム1の概要について説明する。
図1に示す無線タグシステム1は、無線タグリーダ10が設定された設置場所(住宅、会社、病院、学校等)を利用する利用者(住宅の居住者、施設利用者等)に無線タグ50を所持させて当該無線タグ50を監視するシステムとして構成されている。なお、以下の代表例では、個人が所有する住宅2に無線タグリーダ10及びリーダ側基地局80aが設置され、住宅2の居住者が所持する無線タグ50をこれら無線タグリーダ10及びリーダ側基地局80aによって監視するように構成された居住者検出システムについて説明する。
【0027】
(無線タグリーダ)
次に、図2等を参照し、各無線タグリーダ10について説明する。無線タグリーダ10は、例えばRFIDタグを読取可能なRFIDタグリーダライタとして構成されており、無線タグ50との間で電磁波による通信を行い、無線タグ50に記録された情報の読み取りや、無線タグ50に対する情報の書き込みなどを行うように構成されている。この無線タグリーダ10は、図2に示すように、主として、制御部11と、送信部12と、受信部13と、アンテナ14によって構成されている。
【0028】
制御部11は、CPU31、メモリ32、タイマ33などによって構成されており、無線タグリーダ10の全体的制御を司る構成をなしている。
【0029】
送信部12は、符号部21、変調部22、増幅部23などを備えており、図示しないキャリア発振器から所定周波数のキャリア(搬送波)が出力される構成をなしている。また、符号部21は、制御部11に接続されており、当該制御部11より出力される送信データを符号化して変調部22に出力している。変調部22は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)、及び符号化部からの送信データが入力される部分であり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号部21より出力される符号化された送信符号(変調信号)によって例えばASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅部23に出力している。
【0030】
増幅部23は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を所定のゲインで増幅し、その増幅信号を図示しないフィルタ、整合回路等を介してアンテナ14に出力している。このようにしてアンテナ14に送信信号が出力されると、その送信信号が電磁波として当該アンテナ14より外部に放射されるようになっている。
【0031】
受信部13は、復調部25や復号部26などを備えており、アンテナ14によって受信された電波信号が入力される構成をなしている。この受信部13は、図示しない整合回路を介してアンテナ14からの受信信号が入力され、フィルタ(図示略)によってフィルタリングした後、増幅器(図示略)によって増幅し、その増幅信号を復調部25によって復調する。そして、その復調された信号波形を図示しない二値化処理部によって二値化し、復号部26にて復号化した後、その復号化された信号を受信データとして制御部11に出力している。また、受信部13には、電波を発射するチャネルが空いているかを調べるキャリアセンス部27が設けられている。
【0032】
本実施形態では、無線タグリーダ10が住宅2内の所定の場所に配置されており、水平方向において、電波が送受信可能となる範囲(第1通信エリアAR1)が住宅2が設置された領域の全体と重なり、且つ住宅2の設置領域の周囲にも第1通信エリアAR1が構成されるようになっている。
【0033】
(無線タグ)
次に、図3等を参照し、無線タグ50について説明する。
無線タグ50は、ハードウェア的には例えば公知のRFIDタグとして構成され、図3に示すように、制御部51、アンテナ54、受信部53、送信部52、電源部59などを備えている。なお、図3の例では、無線タグ50がいわゆるアクティブタグとして構成され、内蔵電池(例えばリチウムコイン電池など)が設けられており、電源部59がこの内蔵電池からの電力供給を受け、制御部51をはじめとする各構成要素に動作用電力を供給している。
【0034】
制御部51は、CPU55、メモリ56、タイマ57などによって構成されており、CPU55によって無線タグ50内の各種制御や演算処理を行う構成をなしている。また、メモリ56は、ROM、EEPROM、RAM等の各種半導体メモリによって構成されており、無線タグ50を識別するためのタグ識別情報(タグID)や後述する通信処理で扱われる情報などの各種情報が記憶されるようになっている。
【0035】
また、受信部53は、復調部65、復号部66などを備えている。この受信部53では、アンテナ54で受信された信号を復調部65にて復調し、その復調信号を復号部66で復号化することにより、受信信号に重畳されているデータを制御部51に出力している。また、受信部53には、電波を発射するチャネルが空いているかを調べるキャリアセンス部68も設けられている。
【0036】
送信部52は、主として、符号部61、変調部62、増幅部63によって構成されている。この送信部52は、制御部51から出力されたデータを送信データとして符号部61にて符号化した後、変調部62によって変調している。そして、その変調信号を増幅部63にて増幅してアンテナ54に出力している。このようにアンテナ54に出力された送信データは、アンテナ54から電波信号として放射されるようになっている。
【0037】
無線LAN通信部70は、例えば、公知の無線LAN規格(IEEE 802.11等)に基づいて無線LAN通信を行う無線LANインタフェースとして構成されており、予め定められたプロトコルに従ってアンテナ71を介して電波を送受信し、リーダ側基地局80a、外部基地局80b(図1)などの基地局と無線LAN通信を行うように構成されている。本実施形態では、無線タグ50が、これらリーダ側基地局80a及び外部基地局80bと、例えば、WEP(Wired Equivalent Privacy)などによって暗号化された通信パケットを用いて互いに無線通信を行うように構成されている。
【0038】
(リーダ側基地局)
次に、リーダ側基地局80aについて説明する。
リーダ側基地局80aは、ハードウェア的には公知の無線LANアクセスポイントとして構成されており、図4(A)に示すように、主として、アンテナ81aと、無線送受信部82aと、入力部84aと、メモリ85aと、通信インタフェース86aと、制御回路88aとを有している。無線送受信部82aは、例えば公知の無線LAN規格(例えば、IEEE 802.11等)に基づいて無線LAN通信を行うインタフェースとして構成されており、アンテナ81を介して電波を用いた無線信号を送受信するように構成されている。
【0039】
入力部84aは、各種情報を入力し得る部分であり、操作ボタンなどによって構成されている。また、メモリ85aは、ROM、RAM、不揮発性メモリなどによって構成されており、各種情報を記憶し得るように構成されている。例えば、無線タグ50を無線LANクライアント装置として識別するためのMAC(Media Access Control)アドレスや、無線タグ50との間で送受信されるデータの暗号化に用いる暗号キーなども登録されている。また、通信インタフェース86aは、外部機器と有線通信を行うためのインタフェースとして構成されている。
【0040】
本実施形態では、リーダ側基地局80aが住宅2内の所定の場所に配置されており、上述の無線タグリーダ10によって電波が送受信可能となる範囲(第1通信エリアAR1)よりも広く且つ第1通信エリアAR1の周囲を含んだ第2通信エリアAR2内で無線タグ50と無線LAN通信を行うように構成されている。つまり、リーダ側基地局80aによって電波が送受信可能となる範囲(第2通信エリアAR2)は、第1通信エリアARの全体と重なり、第1通信エリアAR1の周囲にも第2通信エリアAR2が構成されるようになっている。
【0041】
(外部基地局)
次に、外部基地局80bについて説明する。
外部基地局80bは、ハードウェア的には公知の無線LANアクセスポイントとして構成されており、図4(B)に示すように、主として、アンテナ81bと、無線送受信部82bと、入力部84bと、メモリ85bと、通信インタフェース86bと、制御回路88bとを有している。無線送受信部82bは、例えば公知の無線LAN規格(例えば、IEEE 802.11等)に基づいて無線LAN通信を行うインタフェースとして構成されており、アンテナ81を介して電波を用いた無線信号を送受信するように構成されている。
【0042】
入力部84bは、各種情報を入力し得る部分であり、操作ボタンなどによって構成されている。また、メモリ85bは、ROM、RAM、不揮発性メモリなどによって構成されており、各種情報を記憶し得るように構成されている。例えば、無線タグ50を無線LANクライアント装置として識別するためのMAC(Media Access Control)アドレスや、無線タグ50との間で送受信されるデータの暗号化に用いる暗号キーなども登録されている。また、通信インタフェース86bは、外部機器と有線通信を行うためのインタフェースとして構成されている。
【0043】
本実施形態では、外部基地局80bが住宅2から離れた施設(図1の例ではオフィス3)内の所定の場所に配置されており、無線タグリーダ10によって構成される上述の第1通信エリアAR1、及びリーダ側基地局80aによって構成される上述の第2通信エリアAR2のいずれとも重ならない範囲(第3通信エリアAR3)内で電波の送受信を行う構成をなしており、この第3通信エリアAR3内に配置された無線タグ50との間で無線LAN通信を行う構成をなしている。
【0044】
(無線タグでの通信動作)
次に、無線タグ50で行われる通信動作について説明する。
図5はタグ通信部(送信部52及び受信部53)を動作させて行われる無線タグ通信処理(RFID通信処理)の流れを例示するフローチャートである。図6は、無線LAN通信部70を動作させて行われる無線LAN通信処理の流れを例示するフローチャートである。図7は、無線タグ通信処理による通信確認処理のタイミング、及び無線LAN通信処理による電波受信タイミングを例示するタイミングチャートである。図8(A)は、無線タグから無線タグリーダへ送信する送信データのフレーム構成を概念的に説明する説明図であり、図8(B)は、無線タグリーダから無線タグへ送信するACK(肯定応答)のフレーム構成を概念的に説明する説明図である。
【0045】
本実施形態では、図5による無線タグ通信処理と図6による無線LAN通信処理とが並列処理で行われるようになっている。なお、図5、図6のいずれの処理も、電源投入や無線タグ50に対する所定の外部操作をトリガとして開始する。
【0046】
図5の無線タグ通信処理では、処理開始に伴い、予め定められたΔt1時間(例えば10秒)待機する(S1)。そして、S1で待機処理を行った後、図8(A)に示すようなデータ送信フレームを送信する(S2)。
【0047】
このS2或いは後述するS5で送信するデータ送信フレームは、図8のように、ヘッダ、長さ、シーケンス番号、リーダID、タグID,データ送信要求コマンド、チェックサムなどを含んでいる。なお、本実施形態では、通信確認処理のための所定の第1要求コマンドが予め決められており、S2、S5で送信するデータ送信フレームには、データ送信要求コマンドとしてこの第1の要求コマンドが含まれるようになっている。また、リーダIDは、無線タグ50の通信対象として予め定められた無線タグリーダ10のIDであり、タグIDは、無線タグ50の固有IDである。なお、リーダID、タグIDはいずれも予めメモリ56に記憶されている。
【0048】
S2の処理の後には、データ送信フレームに対して無線タグリーダ10からACKフレーム(肯定応答)が返されたか否かを判断する(S3)。本実施形態で用いられる無線タグリーダ10は、無線タグ50から第1の要求コマンドを含んだデータ送信フレームを受信できたときに、ACKフレーム(肯定応答)を返すようになっている。なお、無線タグリーダ10から返されるACKフレームは、例えば図8(B)のようなフレーム構成をなしている。S3では、このようなACKフレームの受信を確認し、ACKフレーム(肯定応答)の受信が確認された場合にはS3にてYesに進み、S1以降の処理を繰り返す。
【0049】
このように、本実施形態では、無線タグ50と無線タグリーダ10とが通信可能状態にある場合(即ち、無線タグ50が無線タグリーダ10の通信エリア(第1通信エリアAR1)に存在する場合)に、時間Δt1おきにデータ送信フレームが送信されるようになっている(図7の「自宅内」参照)。
【0050】
ここで図6の無線LAN通信処理についても説明する。図6の無線LAN通信処理では、処理開始直後に無線LAN通信部70の機能を停止させている(S21)。そして、その停止状態を維持しながら、無線タグ50が無線タグリーダ10と通信可能となったか否かを判断している(S22)。S22の処理は、具体的には、無線タグ50が無線タグリーダ10からACKフレームを取得したか否か(即ち、図5のS3でYesと判断される場合であるか否か)を判断しており、ACKフレームが確認されない場合にはS22てNoに進み、ACKフレームが確認される限りは限りはS22にてYesに進むことになる。
【0051】
本実施形態では、制御部51及び無線LAN通信部70が「無線LAN通信手段」の一例に相当し、リーダ側基地局80aと無線LAN通信を行うように機能し、更に、無線タグ50と無線タグリーダ10とが通信可能な状態にあるときにリーダ側基地局80aとの間で行われる無線LAN通信を休止している(図7の「自宅内」参照)。
【0052】
ここで、図5に戻って無線タグ通信処理の説明を続ける。
S2で送信されたデータ送信フレームに対してACKフレーム(肯定応答)が返されない場合、S3にてNoに進み、予め定められたΔt2時間(例えば3秒)待機する(S4)、そして、S4で待機処理を行った後、S2の場合と同様のデータ送信フレーム(図8(A))を送信し(S5)、このデータ送信フレームに対して無線タグリーダ10からACKフレーム(肯定応答)が返されたか否かを判断する(S6)。なお、S6においてACKフレームが確認されたと判断される場合(即ち、無線タグ50が再び第1通信エリアAR1内に入った場合)にはS6にてYesに進み、S1以降の処理を繰り返す。
【0053】
一方、S6においてACKフレームが確認されないと判断される場合(即ち、無線タグ50が第1通信エリアAR1から外れた位置で維持される場合)にはS6にてNoに進み、リーダ側基地局80aから送信される固有ID(SSID(Service Set IDentifier))が受信可能か否かを判断する。なお、本実施形態では、リーダ側基地局80aから送信される固有IDを「SSIDj」としており、S7では、このSSIDjを受信したか否かを判断する。そして、SSIDjが受信可能である場合(即ち、無線タグ50がリーダ側基地局80aの通信エリア(第2通信エリアAR2)内に存在する場合)にはS7にてYesに進み、S4以降の処理を繰り返す。一方、SSIDjが受信不能である場合(即ち、無線タグ50がリーダ側基地局80aの通信エリア(第2通信エリアAR2)から外れた場合)にはS7にてNoに進み、タグ通信部(送信部52及び受信部53)の機能を停止する。S8での機能停止中は、送信部52からのキャリアの出力が停止され、受信部53の駆動も停止される。
【0054】
なお、本実施形態では、制御部51、送信部52、受信部53が「無線タグ通信手段」の一例に相当し、無線タグリーダ10に対して定期的に通信確認処理を行うように機能し、具体的には、無線LAN通信手段とリーダ側基地局80aとの間の無線LAN通信の状態に応じて、無線タグリーダ10に対する通信確認処理の間隔を変更している。例えば、無線タグリーダ10からの応答が受信不能であって且つ無線LAN通信手段がリーダ側基地局80aと通信可能なときの通信確認処理の間隔Δt2を、無線タグリーダ10から応答が受信可能なときの通信確認処理の間隔Δt1よりも短く設定している。また、この「無線タグ通信手段」は、無線タグリーダ10からの応答が受信不能であって且つ無線LAN通信手段がリーダ側基地局80aと通信不能であるとき(即ち、S7でNoとなるとき)に、通信確認処理を休止している。
【0055】
ここで、図6の無線LAN通信処理におけるS22以降の処理について説明する。図6の無線LAN通信処理では、S2で送信されたデータ送信フレームに対してACKフレーム(肯定応答)が返されない場合(即ち、無線タグ50が無線タグリーダ10と通信不能な場合)には、S22にてNoに進み、予め定められたΔt3時間(例えば20秒)待機する(S23)、そして、S23で待機処理を行った後には、外部からの無線LAN通信電波を受け付け、SSIDの受信待機を行う(S24)。
【0056】
S24の後には、再び、無線タグ50が無線タグリーダ10と通信可能となったか否かを判断する(S25)。S25でも、無線タグ50が無線タグリーダ10からACKフレームを取得したか否かを判断し、取得した場合(即ち、無線タグ50が無線タグリーダ10の通信エリア内に戻った場合)には、S25にてYesに進みS21以降の処理を繰り返す。一方、依然としてACKフレームを取得しない場合(即ち、無線タグ50が無線タグリーダ10の通信エリア外で維持される場合)には、S25にてNoに進む。
【0057】
S25でNoに進む場合には、リーダ側基地局80aから送信される固有ID(SSIDj)が受信可能か否かを判断する(S26)。そして、SSIDjが受信可能である場合(即ち、無線タグ50がリーダ側基地局80aの通信エリア(第2通信エリアAR2)内に存在する場合)にはS26にてYesに進み、S23以降の処理を繰り返す。このように処理が行われるため、無線タグ50が無線タグリーダ10の通信エリア(第1通信エリアAR1)外においてリーダ側基地局80aの通信エリア(第2通信エリアAR2)内に存在する場合には、Δt3おきにSSIDjの受信を受け付ける処理が行われることとなる(図7の「自宅周辺」における「SSIDj検知」を参照)。
【0058】
一方、S26において、SSIDjが受信されないと判断される場合には、S26にてNoに進み、予め定められたΔt4時間(例えば10分)待機する(S27)、そして、S27で待機処理を行った後には、外部からの無線LAN通信電波を受け付け、SSIDの受信待機を行う(S28)。
【0059】
S28の後には、再び、無線タグ50がリーダ側基地局80aからSSIDjを受信したか否かを判断する(S29)。そして、無線タグ50がリーダ側基地局80aからSSIDjを受信した場合(即ち、無線タグ50がリーダ側基地局80aの通信エリア(第2通信エリアAR2)内に戻った場合)には、S29にてYesNoに進み、S23以降の処理を繰り返す。一方、依然として、無線タグ50がリーダ側基地局80aからSSIDjを受信しない場合(即ち、無線タグ50がリーダ側基地局80aの通信エリア外で維持される場合)には、S29にてNoに進む。
【0060】
S29でNoに進む場合には、外部基地局80bから送信される固有ID(SSIDk)が受信可能か否かを判断する(S30)。そして、SSIDkが受信不能である場合(即ち、無線タグ50が外部基地局80bの通信エリア(第3通信エリアAR3)内に存在しない場合)にはS30にてNoに進み、S27以降の処理を繰り返す。このように処理が行われるため、無線タグ50がリーダ側基地局80a及び外部基地局80bの通信エリア外に存在する場合には、Δt4おきにSSIDjの受信を受け付ける処理が行われることとなる(図7の「出勤」「退勤」におけるSSID未検知を参照)。
【0061】
一方、S30において、SSIDkが受信可能と判断される場合、S30にてYesに進み、予め定められたΔt5時間(例えば30分)待機する(S31)、そして、S31で待機処理を行った後には、外部からの無線LAN通信電波を受け付け、SSIDの受信待機を行う(S32)。そして、S32の後には、再び、無線タグ50がSSIDkを受信したか否かを判断し(S33)、受信した場合には、S33にてYesに進み、S31以降の処理を繰り返す。一方、SSIDkが受信できなくなった場合(即ち、外部基地局80bの通信エリア(第3通信エリア)から外れた場合)、S33にてNoに進み、S27以降の処理を繰り返す。このように構成されているため、無線タグ50が外部基地局80bの通信エリア(第3通信エリアAR3)内に存在するときには、Δt5おきにSSIDkの受信を受け付ける処理が行われることとなる(図7の「オフィス内」におけるSSID未検知を参照)。
【0062】
上記のように、本実施形態では、「無線LAN通信手段」(制御部51、送信部52、受信部53)が、無線タグ50とリーダ側基地局80aとの間で行われる無線LAN通信の状態、及び無線タグ50と外部基地局80bとの間で行われる無線LAN通信の状態の内、少なくともいずれかの通信状態に応じて、無線LAN通信における電波受信処理の間隔を変更している。具体的には、無線タグ50がリーダ側基地局80aとの間で無線LAN通信が可能なときには電波受信処理の間隔を所定の第1間隔Δt3に設定し、外部基地局80bとの間で無線LAN通信が可能なときには電波受信処理の間隔を第1間隔Δt3よりも長い第2間隔Δt5に設定している。更には、外部基地局80bとの間で、無線LAN通信が可能な状態から不能な状態に変化したときには、電波受信間隔を第2間隔Δt5よりも短い第3間隔Δt4に設定している。
【0063】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態に係る無線タグシステム1は、内蔵電池を備えた無線タグ50と、所定の第1通信エリアAR1内で無線タグ50を読み取る無線タグリーダ10と、無線タグリーダ10によって構成される第1通信エリアAR1よりも広く且つ第1通信エリアAR1の周囲を含んだ第2通信エリアAR2内で無線タグ50と無線LAN通信を行うリーダ側基地局80aと備えている。そして、無線タグ50には、無線タグリーダ10に対して定期的に通信確認処理を行う無線タグ通信手段と、リーダ側基地局80aと無線LAN通信を行う無線LAN通信手段とが設けられており、無線タグ通信手段は、無線LAN通信手段とリーダ側基地局80aとの間の無線LAN通信の状態に応じて、無線タグリーダ10に対する通信確認処理の間隔を変更している。
このようにすると、無線タグ50が無線タグリーダ10の通信エリア(第1通信エリアAR1)から外れた場合であっても、リーダ側基地局80aと無線LAN通信が可能な場合(即ち、無線タグリーダ10の通信エリアに近い場合)には、無線タグリーダ10に対する通信確認処理の間隔をその位置に適した間隔に調整しやすくなる。特に、無線タグリーダ10の通信エリアとの近さに関係なく通信確認処理の間隔を短く設定する構成と比較して省電力化を図り易くなる。
【0064】
また、無線タグ50に設けられた無線タグ通信手段は、無線タグリーダ10からの応答が受信不能であって且つ無線LAN通信手段がリーダ側基地局80aと通信可能なときの通信確認処理の間隔Δt2を、無線タグリーダ10から応答が受信可能なときの通信確認処理の間隔Δt1よりも短く設定している。このようにすると、無線タグ50が無線タグリーダ10の通信エリア(第1通信エリアAR1)外において当該第1通信エリアAR1の近くに存在するときに、第1通信エリアAR1内に存在するときよりも頻繁に通信確認処理が行われることとなる。従って、無線タグリーダ10は、第1通信エリアAR1の近傍から当該第1通信エリアAR1内に入ろうとうする無線タグ50をより早期に検出することができる。
【0065】
また、無線タグ50に設けられた無線タグ通信手段は、無線タグリーダ10からの応答が受信不能であって且つ無線LAN通信手段がリーダ側基地局80aと通信不能であるときに、通信確認処理を休止している。この構成によれば、無線タグ50が無線タグリーダ10の通信範囲から遠ざかり、通信の可能性が低下したときに、効果的に省電力化を図ることができる。
【0066】
また、無線タグ50の無線LAN通信手段は、無線タグ50と無線タグリーダ10とが通信可能な状態にあるときにリーダ側基地局80aとの間で行われる無線LAN通信を休止している。この構成によれば、既に無線タグ50が無線タグリーダ10の通信エリア内に存在することが把握できており、無線LAN通信による位置関係の把握が必要ない場合に、無線LANを休止させて適切に省電力化を図ることができる。
【0067】
また、無線タグ50の無線LAN通信手段は、リーダ側基地局80aからの確認信号(SSIDj)が一定期間受信不能となったときにリーダ側基地局80aとの間で行われる無線LAN通信を休止し、所定の開始条件の成立時に外部との無線LAN通信処理を開始している。具体的には、S26でNoとなる場合に、Δt4(10分)の間無線LAN通信を休止し、10分経過後に外部との無線LAN通信処理を開始している。
この構成によれば、無線タグ50側においてリーダ側基地局80aからの確認信号を一定期間受信不能となり、無線タグ50がリーダ側基地局80aの通信エリアから離れた可能性が高い場合(即ち、無線タグ50が直近の時期にリーダ側基地局80aと無線LAN通信を行う可能性が低くなった場合)に、無線LAN通信を休止させて適切に省電力化を図ることができる。
なお、本実施形態では、リーダ側基地局80aからの確認信号が一定期間受信不能となったときの休止期間を10分としているが、これより長い又は短い時間間隔であってもよい。或いは、リーダ側基地局80aからの確認信号が一定期間受信不能となったときに、無線タグ50に対して所定操作が行われるまで無線LAN通信を休止させるようにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、第1通信エリアAR1と重ならない所定の第3通信エリアAR3内に配置された無線タグ50との間で無線LAN通信が可能な外部基地局80bが設けられている。そして、無線タグ50の無線LAN通信手段は、リーダ側基地局80aとの間で行われる無線LAN通信の状態、及び外部基地局80bとの間で行われる無線LAN通信の状態の内、少なくともいずれかの通信状態に応じて、無線LAN通信における電波受信処理の間隔を変更している。
このようにすると、無線タグ50が無線タグリーダ10に近いリーダ側基地局80aと通信可能な状態にあるのか、又は、無線タグ50が無線タグリーダ10から遠い外部基地局80bと通信可能な状態にあるのか、若しくはいずれの基地局とも通信可能な状態にないのかを無線タグ50側で正確に把握することができ、無線タグ50で行われる電波受信処理の間隔を、無線タグ50の位置に応じて適切に変更することができる。
【0069】
また、無線タグ50の無線LAN通信手段は、リーダ側基地局80aとの間で無線LAN通信が可能なときの電波受信処理の間隔を所定の第1間隔Δt3に設定し、外部基地局80bとの間で無線LAN通信が可能なときの電波受信処理の間隔を第1間隔Δt3よりも長い第2間隔Δt5に設定している。
このようにすると、無線タグリーダ10の通信エリア(第1通信エリアAR1)からより離れた通信エリアが設定される外部基地局80bと通信可能な場合(即ち、無線タグ50が無線タグリーダ10の通信エリアから離れており、すぐに無線タグリーダ10と通信が行われる可能性が低い場合)に、電波受信処理の間隔を相対的に長く設定することができる。従って、無線タグリーダ10と通信が行われる可能性が低く、無線LAN通信による結果が無線タグリーダ10の検出に影響を及ぼしにくい状態を適切に把握して効果的に省電力化を図ることができる。
【0070】
また、無線タグ50の無線LAN通信手段は、外部基地局80bとの間で無線LAN通信が可能な状態のときの電波受信処理の間隔を第2間隔Δt5に設定し、外部基地局80bとの間で、無線LAN通信が可能な状態から不能な状態に変化したときには、電波受信間隔を第2間隔Δt5よりも短い第3間隔Δt4に設定している。
この構成によれば、無線タグ50が外部基地局80bの通信エリア(第3通信エリアAR3)から離れ、無線タグリーダ10側に近づく可能性がある場合に、無線LAN通信の電波受信処理の頻度を高めることができる。従って、無線タグ50がリーダ側基地局80aの通信エリアに至ったときに迅速に無線LAN通信を行うことができる。
【0071】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
上記実施形態では、タグ送信部(送信部52、受信部53)に用いられるアンテナ54と、無線LAN通信部70に用いられるアンテナ71とが別々のアンテナによって構成されていたが、タグ送信部(送信部52、受信部53)及び無線LAN通信部70がいずれも共用アンテナを介して電波を送受信する構成であってもよい。
【0073】
上記実施形態に加え、更に、無線タグ50内に、現在時刻情報を取得可能な時計(時計手段)を設けておき、更に、予め出勤時刻をメモリ56(出勤時刻登録手段)に登録しておくようにしてもよい。そして、「無線LAN通信手段」に相当する制御部51及び無線LAN通信部70は、メモリ56(出勤時刻登録手段)に登録される出勤時刻と、無線タグ50内の時計(時計手段)によって取得される現在時刻情報とに基づいて、リーダ側基地局80aからの確認信号が一定期間受信不能となったときの無線LAN通信の休止時間を設定するようにしてもよい。
このようにすると、無線タグ50がリーダ側基地局80aの通信エリアから離れた可能性が高い場合(即ち、無線タグ50が直近の時期にリーダ側基地局80aと無線LAN通信を行う可能性が低くなった場合)に、無線LAN通信を休止させて適切に省電力化を図ることができ、他方、そのときの無線LAN通信の休止時間Δt4を、登録された出勤時刻と計測される現在時刻に基づいて適切に設定することができる。
例えば、図5、図7の例では、リーダ側基地局80aからの確認信号(SSIDj)が一定期間受信不能となったときにS26にてNoに進み、S27でΔt4(例えば10分)待機する待機処理を行った後、休止状態を解除してSSIDの待ち受けを行っているが、S27で用いるΔt4の時間を登録された出勤時刻と現在時刻との関係で変化させてもよい。例えば、S27のときに現在時刻を取得し、現在時刻が登録された出勤時刻(例えば7:30)から所定時間(例えば1時間)以上前又は所定時間(例えば1時間)以上後である場合には、休止時間Δt4を短く設定(例えば、3分に設定)、そうでない場合には休止時間Δt4をそれよりも長く設定(例えば、10分に設定)してもよい。
このようにすると、S27の処理が行われる現在時刻が登録された出勤時刻から遠い時間帯のときには、出勤による外出でない可能性が高いため、休止時間を短く設定して急な帰宅に対応できるようにし、S27の処理が行われる現在時刻が登録された出勤時刻に近い時間帯のときには、出勤による外出の可能性が高いため、休止時間を比較的長く設定して省電力化を図ることができる。
【0074】
上記実施形態に加え、現在の日付又は曜日を取得可能なカレンダ(カレンダ手段)を設け、更に、無線タグ50内のメモリ56(出勤日登録手段)に出勤日を登録しておいてもよい。そして、「無線LAN通信手段」に相当する制御部51及び無線LAN通信部70は、メモリ56(出勤日登録手段)に登録される出勤日と、カレンダ(カレンダ手段)によって取得される現在の日付又は曜日とに基づいて、リーダ側基地局80aからの確認信号(SSIDj)が一定期間受信不能となったときの無線LAN通信の休止時間を設定するように構成されていてもよい。
このようにすると、無線タグ50がリーダ側基地局80aの通信エリアから離れた可能性が高い場合(即ち、無線タグ50が直近の時期にリーダ側基地局80aと無線LAN通信を行う可能性が低くなった場合)に、無線LAN通信を休止させて適切に省電力化を図ることができ、他方、そのときの無線LAN通信の休止時間を、登録された出勤日と現在の日付又は曜日に基づいて適切に設定することができる。
例えば、図5、図7の例では、リーダ側基地局80aからの確認信号(SSIDj)が一定期間受信不能となったときにS26にてNoに進み、S27でΔt4(例えば10分)待機する待機処理を行った後、休止状態を解除してSSIDの待ち受けを行っているが、S27で用いるΔt4の時間を登録された出勤日とカレンダによって得られる現在の曜日又は日付との関係で変化させてもよい。例えば、S27のときに現在の曜日を取得し、現在の曜日が登録された出勤日(例えば月〜金)でない場合には、休止時間Δt4を短く設定(例えば、3分に設定)、現在の曜日が登録された出勤日(例えば月〜金)である場合には休止時間Δt4をそれよりも長く設定(例えば、10分に設定)してもよい。
このようにすると、S27の処理が行われる現在曜日が登録された出勤日以外(例えば土日)のときには、出勤による外出でない可能性が高いため、休止時間を短く設定して急な帰宅に対応できるようにし、S27の処理が行われる現在曜日が登録された出勤日(例えば月〜金)のときには、出勤による外出の可能性が高いため、休止時間を比較的長く設定して省電力化を図ることができる。
【符号の説明】
【0075】
1…無線タグシステム
10…無線タグリーダ
50…無線タグ
51…制御部(無線LAN通信手段、無線タグ通信手段)
52…送信部(無線タグ通信手段)
53…受信部(無線タグ通信手段)
70…無線LAN通信部(無線LAN通信手段)
80a…リーダ側基地局
80b…外部基地局
AR1…第1通信エリア
AR2…第2通信エリア
AR3…第3通信エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵電池を備えた無線タグと、
所定の第1通信エリア内で前記無線タグを読み取る無線タグリーダと、
前記無線タグリーダによって構成される前記第1通信エリアよりも広く且つ前記第1通信エリアの周囲を含んだ第2通信エリア内で前記無線タグと無線LAN通信を行うリーダ側基地局と、
を備え、
前記無線タグは、
前記無線タグリーダに対して定期的に通信確認処理を行う無線タグ通信手段と、
前記リーダ側基地局と無線LAN通信を行う無線LAN通信手段と、
を有し、
前記無線タグ通信手段は、前記無線LAN通信手段と前記リーダ側基地局との間の無線LAN通信の状態に応じて、前記無線タグリーダに対する前記通信確認処理の間隔を変更することを特徴とする無線タグシステム。
【請求項2】
前記無線タグ通信手段は、前記無線タグリーダからの応答が受信不能であって且つ前記無線LAN通信手段が前記リーダ側基地局と通信可能なときの前記通信確認処理の間隔を、前記無線タグリーダから応答が受信可能なときの前記通信確認処理の間隔よりも短く設定することを特徴とする請求項1に記載の無線タグシステム。
【請求項3】
前記無線タグ通信手段は、前記無線タグリーダからの応答が受信不能であって且つ前記無線LAN通信手段が前記リーダ側基地局と通信不能であるときに、前記通信確認処理を休止することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の無線タグシステム。
【請求項4】
前記無線LAN通信手段は、前記無線タグと前記無線タグリーダとが通信可能な状態にあるときに前記リーダ側基地局との間で行われる無線LAN通信を休止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線タグシステム。
【請求項5】
前記無線LAN通信手段は、前記リーダ側基地局からの確認信号が一定期間受信不能となったときに前記リーダ側基地局との間で行われる無線LAN通信を休止し、所定の開始条件の成立時に外部との無線LAN通信処理を開始することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線タグシステム。
【請求項6】
前記第1通信エリアと重ならない所定の第3通信エリア内に配置された前記無線タグとの間で無線LAN通信が可能な外部基地局を備え、
前記無線LAN通信手段は、前記リーダ側基地局との間で行われる無線LAN通信の状態、及び前記外部基地局との間で行われる無線LAN通信の状態の内、少なくともいずれかの通信状態に応じて、無線LAN通信における電波受信処理の間隔を変更することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の無線タグシステム。
【請求項7】
前記無線LAN通信手段は、前記リーダ側基地局との間で無線LAN通信が可能なときの電波受信処理の間隔を所定の第1間隔に設定し、前記外部基地局との間で無線LAN通信が可能なときの電波受信処理の間隔を前記第1間隔よりも長い第2間隔に設定することを特徴とする請求項6に記載の無線タグシステム。
【請求項8】
前記無線LAN通信手段は、
前記外部基地局との間で無線LAN通信が可能な状態のときの電波受信処理の間隔を前記第2間隔に設定し、
前記外部基地局との間で、無線LAN通信が可能な状態から不能な状態に変化したときには、電波受信間隔を前記第2間隔よりも短い第3間隔に設定することを特徴とする請求項7に記載の無線タグシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−65232(P2012−65232A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209139(P2010−209139)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】