説明

無線タグ位置検出システム

【課題】複数の基地局を用いて無線タグの位置を検出する無線タグ位置検出システムにおいて、混信の発生を抑制することができ且つ位置検出をよりリアルタイムに行い得る構成を提供する。
【解決手段】無線タグ位置検出システム1は、無線タグ50と、この無線タグ50と無線通信可能な複数の基地局60とを備えている。そして、無線タグ50には、基地局60からの電波を受信するタグ側受信手段と、その基地局60からの電波の電波強度を検出する電波強度検出手段と、複数の基地局60から電波をそれぞれ受信したときに、電波強度検出手段によって検出される各電波の電波強度に基づいて応答電波を送信する基地局60を選定する基地局選定手段と、基地局選定手段によって選定された基地局60に対して応答電波を送信するタグ側送信手段とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ位置検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線タグを用いて無線通信を行う無線タグシステムが広く提供されており、無線タグの位置を検出する技術も考案されている。その一例としては、例えば、通信対象エリアに無線タグと無線通信し得る複数の基地局を設けておき、無線タグと通信する基地局を特定することで無線タグがどのエリアに位置しているかを検出するといった技術が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−340048公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような無線タグ位置検出システムでは、検出対象となる無線タグの位置を、よりリアルタイムに且つより精度高く検出することが求められるが、複数の無線タグが同時期に基地局と無線通信を行ったときには、混信が生じやすくなり、その結果、無線タグの検出精度が低下してしまうという問題がある。
【0005】
一方、このような混信を抑えようとする技術として、特許文献1のようなものも提供されている。この技術では、セキュリティレベルの高いエリアとセキュリティレベルの低いエリアとで無線タグの応答周期を異ならせており、セキュリティレベルの低いエリアで応答周期を長くすることで信号の衝突確率を低減している。しかしながら、この技術では、混信が十分に抑制されない懸念があり、更に、応答周期を長く設定されるエリアでは位置検出のリアルタイム性が失われてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、複数の基地局を用いて無線タグの位置を検出する無線タグ位置検出システムにおいて、混信の発生を抑制することができ且つ位置検出をよりリアルタイムに行い得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、電波を送受信可能な1又は複数の無線タグと、前記無線タグに対して電波を送信する基地局側送信手段と、前記無線タグから電波を受信する基地局側受信手段とを備え、電波を媒介として前記無線タグと無線通信を行う複数の基地局と、を備えた無線タグ位置検出システムであって、前記無線タグが、前記基地局側送信手段からの電波を受信するタグ側受信手段と、前記タグ側受信手段によって受信された前記基地局からの電波の電波強度を検出する電波強度検出手段と、前記タグ側受信手段が複数の前記基地局からの電波をそれぞれ受信したときに、前記電波強度検出手段によって検出される各電波の前記電波強度に基づいて応答電波を送信する基地局を選定する基地局選定手段と、前記基地局選定手段によって選定された前記基地局に対して前記応答電波を送信するタグ側送信手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の無線タグ位置検出システムにおいて、前記基地局が、自己の基地局IDを前記基地局側送信手段によって電波を媒介として前記無線タグに対して送信し、前記タグ側受信手段が、前記基地局側送信手段からの前記基地局IDを含んだ電波を受信し、前記タグ側送信手段が、前記基地局選定手段によって選定された前記基地局の前記基地局IDを、前記応答電波を媒介として当該基地局に送信することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の無線タグ位置検出システムにおいて、前記基地局選定手段が、前記電波強度検出手段による前記電波強度の検出の結果を定期的に取得して前記基地局を定期的に選定しており、前記基地局選定手段によって選定された前記基地局が、当該基地局選定手段によって前回選定された前記基地局と同一である場合に、前記タグ側送信手段が当該基地局に対する前記応答電波の送信を行わないことを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線タグ位置検出システムにおいて、更に、複数の前記基地局と通信可能な管理装置が設けられ、前記管理装置が、前記無線タグからの前記応答電波を受信する前記基地局を定期的に特定する基地局特定手段と、前記基地局特定手段によって特定される、前記無線タグの前記応答電波を受信した前記基地局と、当該無線タグについて前記基地局特定手段によって前回特定された前記基地局との関係が所定の異常関係にあるときに報知を行う報知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の無線タグ位置検出システムにおいて、前記報知手段が、前記無線タグに対して所定の報知情報を送信可能とされており、前記無線タグは、前記管理装置の前記報知手段から前記所定の報知情報を受け取った場合に、当該無線タグの所持者に対して報知するタグ側報知手段を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、電波を送受信可能な1又は複数の無線タグと、この無線タグと無線通信を行う複数の基地局とを備えた無線タグ位置検出システムにおいて、無線タグが、基地局側送信手段からの電波を受信するタグ側受信手段と、タグ側受信手段によって受信された基地局からの電波の電波強度を検出する電波強度検出手段と、タグ側受信手段が複数の基地局からの電波をそれぞれ受信したときに、電波強度検出手段によって検出される各電波の電波強度に基づいて応答電波を送信する基地局を選定する基地局選定手段と、基地局選定手段によって選定された基地局に対して応答電波を送信するタグ側送信手段と、を備えている。
このようにすると、無線タグからの応答電波を複数の基地局が受信し得る状況であったとしても、いずれかの基地局に選択的に応答がなされることとなる。従って、混信の発生を効果的に抑制することができる。また、混信の発生を抑制するために通信回数や手順が大きく制限されることがなく、位置検出をよりリアルタイムに行うことができる。
【0013】
請求項2の発明では、基地局が、自己の基地局IDを基地局側送信手段によって電波を媒介として無線タグに対して送信し、タグ側受信手段が、基地局側送信手段からの基地局IDを含んだ電波を受信し、タグ側送信手段が、基地局選定手段によって選定された基地局の基地局IDを、応答電波を媒介として当該基地局に送信している。このようにすると、複雑な送信タイミングの制御を行わずとも選択された基地局に対して応答電波を選択的に送信することができる。また、基地局への応答時にタイミングを大きくずらす制御が必要ないため、応答電波をより一層リアルタイムに送信することができる。
【0014】
請求項3の発明では、基地局選定手段が、電波強度検出手段による電波強度の検出の結果を定期的に取得して基地局を定期的に選定しており、基地局選定手段によって選定された基地局が、当該基地局選定手段によって前回選定された基地局と同一である場合に、タグ側送信手段が当該基地局に対する応答電波の送信を行わないようにしている。このようにすると、無線タグの位置を定期的に確認できるようになり、更に、基地局選定手段によって選定された基地局が前回選定された基地局と同一である場合に、応答電波の送信を省略できるため、混信を更に一層効果的に抑制でき、基地局や無線タグでの処理負荷も効果的に低減できる。また、この場合、無線タグの位置検出については前回の検出結果を利用できるため、位置検出のリアルタイム性が失われることもない。
【0015】
請求項4の発明では、複数の基地局と通信可能な管理装置が設けられ、管理装置が、無線タグからの応答電波を受信する基地局を定期的に特定する基地局特定手段と、基地局特定手段によって特定される、無線タグの応答電波を受信した基地局と、当該無線タグについて基地局特定手段によって前回特定された基地局との関係が所定の異常関係にあるときに報知を行う報知手段とを備えている。このようにすると、無線タグが複数の基地局との関係において所定の異常関係となることを管理装置側で監視することができ、異常関係となったときに報知を行って適切な対応を促すことができる。
【0016】
請求項5の発明では、報知手段が、無線タグに対して所定の報知情報を送信可能とされており、無線タグには、管理装置の報知手段から所定の報知情報を受け取った場合に、当該無線タグの所持者に対して報知するタグ側報知手段が設けられている。このようにすると、無線タグ所持者が所定の異常関係にあることを把握できるようになり、無線タグ所有者が適切な対応をとりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第1実施形態に係る無線タグ位置検出システムの構成を概略的に説明する説明図である。
【図2】図2(A)は、図1の無線タグ位置検出システムにおける基地局の電気的構成を例示するブロック図である。図2(B)は、図1の無線タグ位置検出システムにおける管理装置の電気的構成を例示するブロック図である。
【図3】図3は、図1の無線タグ位置検出システムで用いられる無線タグの電気的構成を例示するブロック図である。
【図4】図4は、各基地局からの電波送信時期及び各無線タグからの応答電波送信時期を概略的に示すタイミングチャートである。
【図5】図5は、無線タグで行われる応答処理の流れを例示するフローチャートである。
【図6】図6(A)は、基地局から無線タグに送信されるデータのフレーム構成を示す説明図であり、図6(B)は、無線タグから基地局に送信されるデータのフレーム構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の無線タグ位置検出システムを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(無線タグ位置検出システムの全体構成)
まず、図1〜図3を参照し、第1実施形態に係る無線タグ位置検出システムについて概説する。図1は、第1実施形態に係る無線タグ位置検出システムの構成を概略的に説明する説明図である。図2(A)は、図1の無線タグ位置検出システムにおける基地局の電気的構成を例示するブロック図である。図2(B)は、図1の無線タグ位置検出システムにおける管理装置の電気的構成を例示するブロック図である。図3は、図1の無線タグ位置検出システムで用いられる無線タグの電気的構成を例示するブロック図である。
【0019】
図1に示す無線タグ位置検出システム(以下、位置検出システムともいう)1は、無線タグ50の位置を検出可能なシステムとして構成されており、主として、管理装置80と、電波を送受信可能な1又は複数の無線タグ50と、電波を媒介として無線タグ50と無線通信を行う複数の基地局60とを備えており、無線タグ50がどの基地局と通信を行っているかを特定することにより無線タグ50の位置を検出するように構成されている。まず、これら各要素のハードウェア構成について説明する。
【0020】
基地局60は、管理装置80に接続されると共に、通信エリア内の無線タグ50と無線通信を行う構成をなしている。この基地局60は、図2(A)に示すように、全体的制御を司る制御回路61を備えており、この制御回路61に、無線通信部65、メモリ67、入力部68、通信インタフェース69などが接続されている。
【0021】
制御回路61は、例えばマイコンを主体として構成され、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、メモリ67とともに情報処理装置として機能している。また、メモリ67は、ROM、RAMなどの半導体メモリとして構成されており、各種情報を記憶する構成をなしている。入力部68は、操作ボタンなどによって構成されており、外部操作に応じた信号を制御回路61に与える構成をなしている。通信インタフェース69は、外部装置(例えば管理装置80等)との間での通信を行うためのインタフェース(例えばLANインタフェース)として構成されており、制御回路61と協働して通信処理を行う構成をなしている。
【0022】
無線通信部65は、公知の無線タグリーダとして機能するものであり、制御回路61と協働して無線タグ50との間で電磁波による通信を行い、無線タグ50に記憶されるデータの読み取り、或いは無線タグ50へのデータの書き込みを行うように機能している。この無線通信部65は、公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、図2(A)に示すように、送信回路62、受信回路63などを有している。
【0023】
送信回路62は、キャリア発振器、符号化部、増幅器、送信部フィルタ、変調部などによって構成されており、キャリア発振器から所定周波数のキャリア(搬送波)が出力される構成をなしている。また、符号化部は、制御回路61に接続されており、当該制御回路61より出力される送信データを符号化して変調部に出力している。変調部は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)、及び符号化部からの送信データが入力される部分であり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってPSK(Phase Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅器に出力している。増幅器は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を所定のゲインで増幅し、その増幅信号を送信部フィルタに出力しており、送信部フィルタは、増幅器からの増幅信号をフィルタリングした送信信号をアンテナ64に出力している。このようにしてアンテナ64に送信信号が出力されると、その送信信号が電磁波として当該アンテナ64より外部に放射されるようになっている。
【0024】
一方、アンテナ64によって受信された電波信号は、受信回路63に入力されるようになっている。この受信回路63は、受信部フィルタ、増幅器、復調部、二値化処理部、複号化部などによって構成されており、アンテナ64を介して受信された信号を受信部フィルタによってフィルタリングした後、増幅器によって増幅し、その増幅信号を復調部によって復調する。そして、その復調された信号波形を二値化処理部によって二値化し、復号化部にて復号化した後、その復号化された信号を受信データとして制御回路61に出力している。
【0025】
本実施形態では、上記のように構成される基地局60が複数設けられ(第1基地局60a、第2基地局60b、第3基地局60c)、各基地局の通信エリア(無線タグとの更新エリア)が部分的に重なるように構成されている。
【0026】
管理装置80は、例えばコンピュータとして構成されており、図2(B)に示すように、CPU81、記憶部82、入力部83、通信インタフェース84、表示部85などを備えている。CPU81は、管理装置80の全体的制御を司るものであり、記憶部82に記憶された各種プログラムに基づいて各種情報処理を行うように構成されている。
【0027】
入力部83は、マウスやキーボードなどの入力デバイスによって構成され、外部操作に応じた信号をCPU81に入力する構成をなしている。通信インタフェース84は、外部装置(例えば基地局60等)と通信を行うためのインタフェース(例えばLANインタフェース)として構成されており、CPU81と協働して通信処理を行う構成をなしている。表示部85は、例えば液晶表示器などによって構成されており、CPU81の制御により各種情報を表示する構成をなしている。
【0028】
本実施形態では、上記管理装置80に対して複数の基地局60が接続されており、管理装置80から各基地局60に対して情報送信(例えば制御信号の送信)を行ったり、或いは、各基地局60からの情報(無線タグ50の読取結果のデータ等)を管理装置80にて受信したりすることができるようになっている。
【0029】
次に、無線タグ50について説明する。無線タグ50は、例えば公知のアクティブタグとして構成され、図示しない電池を内蔵しており、この電池からの電力を受けて各種動作を行う構成をなしている。この無線タグ50は、図3に示すように、CPU51、送信回路52、受信回路53、電力測定回路54、アンテナ55、メモリ56などを備えている。
【0030】
CPU51は、無線タグ50全体の制御を司るものであり、送信回路52に対するデータの出力や受信回路53からのデータの取得などの各種情報処理を行っている。送信回路52は、例えば、キャリア信号をCPU51からの送信データで負荷変調し、これを電波信号としてアンテナ55から送信するように構成されている。受信回路53は復調回路などを備え、送信信号(キャリア信号)に重畳されているデータを復調して制御回路に出力している。
【0031】
メモリ56は、ROM,EEPROM等の各種半導体メモリによって構成されており、制御プログラム、無線タグ50を識別するためのタグ識別情報(タグID)、無線タグ50の用途に応じてユーザが設定したデータなどが記憶されている。また、電力測定回路54は、アンテナ55から受信した電波(基地局60からの電波)の電力を検出する回路として構成され、検出された電力値をCPU51に入力するように構成されている。
【0032】
(無線タグ位置検出処理)
次に、無線タグ50の位置を検出する無線タグ位置検出処理について説明する。
図4は、各基地局からの電波送信時期及び各無線タグからの応答電波送信時期を概略的に示すタイミングチャートである。図5は、無線タグで行われる応答処理の流れを例示するフローチャートである。図6(A)は、基地局から無線タグに送信されるデータのフレーム構成を示す説明図であり、図6(B)は、無線タグから基地局に送信されるデータのフレーム構成を示す説明図である。
【0033】
1.基地局からの送信処理
まず、基地局からの送信処理について説明する。
本実施形態では、図4の時期1、時期3に示すように、各基地局から定期的に無線タグ50に対し応答を要求する要求データ(要求信号)が送信されるようになっている。この要求データは、例えば、図6(A)のようなフレーム構造をなしており、少なくとも所定コマンド(無線タグに対して応答を要求するコマンド)のコマンドコードと、要求データを発信しようとする基地局のIDとが含まれている。これにより、当該要求データを取得する無線タグ50側で、どの基地局からの要求データであるかを特定できるようになっている。
【0034】
また、図4の時期1に示すように、各基地局は、他の基地局と要求データの送信時期が重ならないように時間差で要求データ(要求信号)を送信しており、図4の例では、第1基地局の要求データの送信終了後に第2基地局からの要求データが送信され、第2基地局からの要求データの送信終了後に第3基地局からの要求データが送信されるようになっている。
【0035】
なお、基地局同士の送信タイミングの制御は、例えば管理装置80によって行うことができ、この場合、管理装置80から各基地局60に対して時間差で送信指令を与えればよい。また、各基地局60が他の基地局60からの送信終了のデータを取得するようにしてもよく、例えば、第1基地局60aから送信終了データが第2基地局60bに送られたときに第2基地局60bからの要求データが送信され、第2基地局60bから送信終了データが第3基地局60cに送られたときに第3基地局60cからの要求データが送信されるようにしてもよい。
【0036】
本実施形態では、時期1にて上記のように複数の基地局60によって時間差された後、一定時間経過した時期3において、時期1の場合と同様の時間差送信が各基地局60行われるようになっている。そして、このような時間差送信が、一定時間毎に繰り返されるようになっている。
なお、本実施形態では、基地局60の制御回路61、送信回路62、アンテナ64が、「基地局側送信手段」の一例に相当し、自己の基地局IDを含んだ要求データを電波を媒介として無線タグ50に対して送信するように機能する。
【0037】
2.無線タグでの応答処理
次に、無線タグ50で行われる応答処理について説明する。
この処理は、所定の開始条件が成立したとき(例えば基地局からのキャリア検出時など)に開始され、まず、動作を停止状態とする(S1)。このとき、送信回路や受信回路などの各回路には電力が供給されない状態となる。その後、動作停止状態が一定時間(例えば5s)経過したか否かを判断する(S2)。そして、一定期間経過した場合には、S2にてYesに進み、動作停止状態を解除して受信待機状態とし、基地局60からの送信を受け付ける(S3)。
【0038】
S3の後には、いずれかの基地局60から上述の要求データ(要求信号:図6(A))を取得したか否かを判断する(S4)。要求データがいずれの基地局60からも送信されていない場合にはS4にてNoに進み、S3の送信受付処理を繰り返す。一方、いずれかの基地局60から要求データが送信され、図5の処理を実施している当該無線タグ50がこれを受信した場合には、S4にてYesに進み、その要求データを送信した基地局60から送られてくる電波の電波強度を検出し、そして、これをメモリ56に記憶する(S5)。S5での電波強度の検出は、電力測定回路54の検出値を取得することで行われる。
【0039】
なお、本実施形態では、無線タグ50の受信回路53及びCPU51が「タグ側受信手段」の一例に相当し、基地局側送信手段から基地局IDを含んだ電波を受信するように機能する。また、電力測定回路54は、「電波強度検出手段」の一例に相当し、タグ側受信手段によって受信された基地局60からの電波の電波強度を検出するように機能する。
【0040】
S5の後には、S2でYesに進んでから予め定められた受信時間(例えば500ms)経過したか否か(即ち、動作停止が解除されてから一定時間が経過したか否か)を判断し(S6)、経過していない場合には、S6にてNoに進み、S3〜S6の処理を繰り返す。一方、受信時間が経過している場合には、S6にてYesに進む。
【0041】
S6にてNoに進む場合、再びS3にて受信状態となる。そして、前回受信した基地局60以外の他の基地局60から要求データが送信された場合にはこれを受信し(S4:Yes)、その受信電波の電波強度を検出してメモリ56に記憶する(S5)。なお、S5の処理は上述の通りである。
【0042】
このように、S6で受信時間が経過したと判断されるまではS3〜S6の処理が繰り返されるため、図4のように時間差で送信される各基地局60からの電波(要求データを含んだ電波)が複数受信されることもあり得る。このように複数の基地局60からの電波をそれぞれ時間差で受信する場合には、各受信時にS5で検出される電波強度(各基地局からの電波の強度)をそれぞれメモリ56に記憶することとなる。
【0043】
一方、S6にて受信時間が経過したと判断される場合には、S6にてYesに進み、一連のS3〜S6のループにおいて、S5の処理でメモリ56に記憶されている1又は複数の電波強度の中から最大の電波強度を求め、その最大の電波強度の電波を送信してきた基地局を送信対象として選定する(S7)。
【0044】
なお、S7の処理を実行するCPU51は「基地局選定手段」の一例に相当し、タグ側受信手段が複数の基地局60からの電波をそれぞれ受信したときに、電波強度検出手段によって検出される各電波の電波強度に基づいて応答電波を送信する基地局60を選定するように機能し、より詳しくは、電波強度検出手段による電波強度の検出の結果を定期的(図5では、S2で一定時間経過したと判断される毎)に取得して基地局60を定期的に選定するように機能している。
【0045】
S7で送信対象となる基地局60を選定した後には、その選定された基地局60が前回の選定結果(即ち、直近に行われたS7の処理の前回に行われたS7の処理での基地局60の選定結果)と同一か否かを判断する。S7で選定された基地局60が前回の選定結果と同一でない場合には、S8にてNoに進み、S9にて応答データの送信処理を行う。一方、S7で選定された基地局60が前回の選定結果と同一である場合には、S8にてYesに進み、この場合にはS9の処理が省略される。
【0046】
S9の処理で送信される応答データは、例えば、図6(B)のようなフレーム構造をなしており、少なくとも所定コマンド(基地局に対して応答を送信する旨のコマンド)のコマンドコードと、応答データを発信しようとする無線タグ50の固有ID(タグID)とが含まれている。これにより、当該応答データを取得する基地局60側で、どの無線タグ50からの応答データであるかを特定できるようになっている。
【0047】
また、例えばヘッダ部分には、S7で選定された基地局のIDが含まれており、当該応答データを取得する基地局60を指定できるようになっている。従って、基地局側では、各無線タグ50から応答データを受信したときに、このヘッダ部分を確認することで、自己宛の応答データであるか否かを判断することができ、自己宛でない場合には例えばデータ破棄等の対応をとることができる。
【0048】
なお、S9の処理の後、又はS8でYesに進む場合には、S9で応答データを送信した基地局60から処理終了命令があるか否かを判断し(S10)、処理終了命令がある場合にはS10にてYesに進み、図6に示す当該応答処理を終了する。一方、処理終了命令がない場合にはS10にてNoに進み、S1以降の処理を繰り返す。
【0049】
本実施形態では、CPU51及び送信回路52が「タグ側送信手段」の一例に相当し、基地局選定手段によって選定された基地局60に対して応答電波を送信するように機能し、より詳しくは、基地局選定手段によって選定された基地局60の基地局IDを、応答電波を媒介として当該基地局60に送信するように機能している。更には、基地局選定手段によって選定された基地局60が、当該基地局選定手段によって前回選定された基地局60と同一である場合に、当該基地局60に対する応答電波の送信を行わないように機能している。
【0050】
以上のように応答処理が行われるため、各無線タグ50は通信可能範囲にある1又は複数の基地局60から要求データを受信したときに、電波強度の最も強いいずれかの基地局にのみ選択的に応答を返すことができるようになる。
【0051】
そして、このように各無線タグ50にて応答処理がなされるため、基地局60及び無線タグ50が複数存在するエリアでは、例えば図4のような流れで処理が行われることになる。図4では、各基地局60が上述のように要求データについて時間差送信を行い、これら基地局60のいずれか又は複数と通信可能にある複数(図4では3つ)の無線タグ50(タグA、タグB、タグC)が図5のような応答処理を行う場合を具体的に例示している。図4の例では、時期1において各基地局60(第1基地局60a、第2基地局60b、第3基地局60c)から要求データが時間差送信されたときに、各無線タグ50がそれぞれ通信可能範囲にある基地局60からの要求データを受信している。
【0052】
そして、上記のように時期1において要求データを受信した各無線タグ50は、それぞれで図5の応答処理を行い、時期2においてそれぞれで選定した基地局60に対して選択的に応答データを送信している。この応答データの送信は、各基地局60から次の時間差送信が行われるまでの間(即ち、時期1と時期2の間)に行われ、上述したように、各基地局60は自己の基地局IDをヘッダ内に含む応答データを選択して取得する。
なお、本実施形態では、アンテナ64、受信回路63、制御回路61が「基地局側受信手段」の一例に相当し、無線タグから電波を受信するように機能する。
【0053】
上記のように時期2において各無線タグ50から応答データがそれぞれ送信され、これらが各基地局60で受信された後には、時期3(時期1から一定時間経過した時期)において各基地局60から再び時間差送信がなされ、これら時間差送信で送信される各要求データが各無線タグ50で受信されることとなる。各無線タグ50は、時期1の場合と同様に時期3に送られてきた要求データを受信して基地局60を選定し、その選定された基地局60に対して応答データを返すことになるが、前回の選定(時期2で応答データを送った際の選定)と同一の場合には応答データの送信を省略している。
【0054】
例えば、タグAでは、時期3で各基地局60から要求データを受信したときに応答データを送信すべき基地局60が第1基地局60aと選定された場合を例示しており、時期4では応答データの送信を省略している。一方、例えば、タグBでは、時期3で各基地局60から要求データを受信したときに応答データを送信すべき基地局60が第1基地局60aと選定された場合を例示しており、前回選定された第2基地局60bから変化しているため、時期4ではその変化した第1基地局60aに応答データを送信している。
【0055】
本実施形態では、上述の時間差送信が行われる毎に、各基地局60と通信可能な無線タグ50(各基地局60を選択して応答データを返した無線タグ50)のタグIDを検出できるようになり、どの基地局60のエリアにどの無線タグ50が存在するか(より詳しくは、各無線タグ50がどの基地局60により近いか)をより正確に検出できるようになる。また、管理装置80では、時間差送信毎に各基地局60で読み取られる無線タグ50の読取結果を各基地局60から受信しており、時間差送信毎に定期的に各無線タグ50の位置(各無線タグ50がどの基地局60により近いか)を検出できるようになっている。
なお、管理装置80のCPU81は「基地局特定手段」の一例に相当し、無線タグ50からの応答電波を受信する基地局60を定期的に特定するように機能している。
【0056】
(第1実施形態の主な効果)
第1実施形態に係る無線タグ位置検出システム1では、無線タグ50が、基地局側送信手段からの電波を受信するタグ側受信手段と、タグ側受信手段によって受信された基地局60からの電波の電波強度を検出する電波強度検出手段と、タグ側受信手段が複数の基地局60からの電波をそれぞれ受信したときに、電波強度検出手段によって検出される各電波の電波強度に基づいて応答電波を送信する基地局60を選定する基地局選定手段と、基地局選定手段によって選定された基地局60に対して応答電波を送信するタグ側送信手段とを備えている。
このようにすると、無線タグ50からの応答電波を複数の基地局60が受信し得る状況であったとしても、いずれかの基地局60に選択的に応答がなされることとなる。従って、混信の発生を効果的に抑制することができる。また、混信の発生を抑制するために通信回数や手順が大きく制限されることがなく、位置検出をよりリアルタイムに行うことができる。
【0057】
また、本実施形態では、基地局60が、自己の基地局IDを基地局側送信手段によって電波を媒介として無線タグ50に対して送信している。そして、この基地局側送信手段からの基地局IDを含んだ電波をタグ側受信手段が受信し、タグ側送信手段は、基地局選定手段によって選定された基地局60の基地局IDを、応答電波を媒介として当該基地局60に送信している。このようにすると、複雑な送信タイミングの制御を行わずとも選択された基地局60に対して応答電波を選択的に送信することができる。また、基地局60への応答時にタイミングを大きくずらす制御が必要ないため、応答電波をより一層リアルタイムに送信することができる。
【0058】
また、本実施形態では、基地局選定手段が、電波強度検出手段による電波強度の検出の結果を定期的に取得して基地局60を定期的に選定しており、基地局選定手段によって選定された基地局60が、当該基地局選定手段によって前回選定された基地局60と同一である場合に、タグ側送信手段が当該基地局60に対する応答電波の送信を行わないようにしている。
このようにすると、無線タグ50の位置を定期的に確認できるようになり、更に、基地局選定手段によって選定された基地局60が前回選定された基地局60と同一である場合に、応答電波の送信を省略できるため、混信を更に一層効果的に抑制でき、基地局60や無線タグ50での処理負荷も効果的に低減できる。また、この場合、無線タグ50の位置検出については前回の検出結果を利用できるため、位置検出のリアルタイム性が失われることもない。
【0059】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0060】
上記実施形態では、管理装置80において各無線タグからの応答電波を受信する基地局60(各無線タグに最も近いと推定される基地局)を定期的に特定する基地局特定手段が設けられた例を示したが、このように各無線タグに近い基地局60を管理装置80にて定期的に特定するようにした上で、更に、いずれかの無線タグ50の応答電波を受信した基地局60と、当該無線タグ50について基地局特定手段によって前回特定された基地局60との関係が所定の異常関係にあるときにこれを判断して表示部85などによって報知(例えば異常である旨の説明情報の表示など)を行うようにしてもよい。この場合、CPU81及び表示部85が「報知手段」の一例に相当する。なお、報知の例はこれに限られず、ブザーなどによる音声報知であってもよく、当該管理装置80と通信可能な装置に対して報知情報を送信するといった方法であってもよい。
なお、「所定の異常関係」としては、例えば「前回特定された基地局と今回特定された基地局とが所定の遠距離にある場合(例えば、今回特定された基地局が、前回特定された基地局に隣接する基地局以外の基地局である場合等)」「前回特定された基地局が存在せず今回新たに基地局が特定された場合」など様々な関係を条件とすることができる。
このようにすると、無線タグ50が複数の基地局60との関係において所定の異常関係となることを管理装置80側で監視することができ、異常関係となったときに報知を行って適切な対応を促すことができる。
また、上記管理装置80の「報知手段」(CPU81)は、報知対象となる上記無線タグ50(上記のように所定の異常関係にあると判断された無線タグ50)に対して、基地局60を介して所定の報知情報(例えば所定の報知コマンド)を送信する構成であってもよい。この場合、管理装置50は、当該無線タグ50(上記のように所定の異常関係にあると判断された無線タグ50)と通信中の基地局60に対して当該無線タグ50のタグIDと共に当該無線タグ50に所定の報知情報を送信する旨の命令を与え、この基地局60から当該無線タグ50に対し、当該無線タグ50を指定するタグIDと上記所定の報知情報とを送信するようにすればよい。そして、無線タグ50は、管理装置60の上記「報知手段」から所定の報知情報(例えば所定の報知コマンド)を受け取った場合に、ブザーの鳴動やランプの表示などを行い、当該無線タグ50の所持者に対して報知するようにすればよい。なお、この場合、無線タグ50内に図示しないブザーやランプを設ければよく、CPU51とこれらブザーやランプが「タグ側報知手段」の一例に相当することとなる。このようにすると、無線タグ所持者が所定の異常関係にあることを把握できるようになり、無線タグ所有者が適切な対応をとりやすくなる。
【符号の説明】
【0061】
1…無線タグ位置検出システム
50…無線タグ
51…CPU(タグ側送信手段、タグ側受信手段、基地局選定手段)
52…送信回路(タグ側送信手段)
53…受信回路(タグ側受信手段)
54…電力測定回路(電波強度検出手段)
60…基地局
61…制御回路(基地局側送信手段、基地局側受信手段)
62…送信回路(基地局側送信手段)
63…受信回路(基地局側受信手段)
64…アンテナ(基地局側送信手段、基地局側受信手段)
80…管理装置
81…CPU(基地局特定手段、報知手段)
85…表示部(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信可能な1又は複数の無線タグと、
前記無線タグに対して電波を送信する基地局側送信手段と、前記無線タグから電波を受信する基地局側受信手段とを備え、電波を媒介として前記無線タグと無線通信を行う複数の基地局と、
を備えた無線タグ位置検出システムであって、
前記無線タグは、
前記基地局側送信手段からの電波を受信するタグ側受信手段と、
前記タグ側受信手段によって受信された前記基地局からの電波の電波強度を検出する電波強度検出手段と、
前記タグ側受信手段が複数の前記基地局からの電波をそれぞれ受信したときに、前記電波強度検出手段によって検出される各電波の前記電波強度に基づいて応答電波を送信する基地局を選定する基地局選定手段と、
前記基地局選定手段によって選定された前記基地局に対して前記応答電波を送信するタグ側送信手段と、
を備えたことを特徴とする無線タグ位置検出システム。
【請求項2】
前記基地局は、自己の基地局IDを前記基地局側送信手段によって電波を媒介として前記無線タグに対して送信し、
前記タグ側受信手段は、前記基地局側送信手段からの前記基地局IDを含んだ電波を受信し、
前記タグ側送信手段は、前記基地局選定手段によって選定された前記基地局の前記基地局IDを、前記応答電波を媒介として当該基地局に送信することを特徴とする請求項1に記載の無線タグ位置検出システム。
【請求項3】
前記基地局選定手段は、前記電波強度検出手段による前記電波強度の検出の結果を定期的に取得して前記基地局を定期的に選定しており、
前記タグ側送信手段は、前記基地局選定手段によって選定された前記基地局が、当該基地局選定手段によって前回選定された前記基地局と同一である場合には、当該基地局に対する前記応答電波の送信を行わないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線タグ位置検出システム。
【請求項4】
複数の前記基地局と通信可能な管理装置を備え、
前記管理装置は、
前記無線タグからの前記応答電波を受信する前記基地局を定期的に特定する基地局特定手段と、
前記基地局特定手段によって特定される、前記無線タグの前記応答電波を受信した前記基地局と、当該無線タグについて前記基地局特定手段によって前回特定された前記基地局との関係が所定の異常関係にあるときに報知を行う報知手段と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線タグ位置検出システム。
【請求項5】
前記報知手段は、前記無線タグに対して所定の報知情報を送信可能とされており、
前記無線タグは、前記管理装置の前記報知手段から前記所定の報知情報を受け取った場合に、当該無線タグの所持者に対して報知するタグ側報知手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の無線タグ位置検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−205287(P2011−205287A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69341(P2010−69341)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】