説明

無線タグ内蔵シート及びその製造方法

【課題】薄型の無線タグ内蔵シートの背面に金属部材が存在する状態で、外部リーダ/ライタにより、無線タグ内蔵シートの無線タグにおけるアンテナ部に電磁界が誘導されると、アンテナ部の磁界が、背面の金属部材で発生する渦電流による磁界によって弱められることがある。このため、無線タグが正常に動作せず、通信距離が大幅に低下することがあり、安定した通信ができる無線タグ内蔵シート及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】互いに対向する一対の紙層1,2と、一対の紙層1,2間に挟まれ、アンテナ部6を有する無線タグ3とを有し、一対の紙層の少なくとも一方2が磁性粉末9を含有する磁性粉末含有層である無線タグ内蔵シート100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ内蔵シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグ(RFIDタグ)は、主としてアンテナ部とICチップ部とを有し、外部リーダ/ライタと無線で情報の通信を行うものである。
【0003】
近年、無線タグの薄型化が進み、薄型の無線タグを紙などに内蔵した無線タグ内蔵シートが知られている。このような無線タグ内蔵シートとしては、例えば、2層の紙の間に無線タグを挟み込むことによって得られるものが知られている(特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開2005−350823号公報
【特許文献2】特開2004−102353号公報
【特許文献3】特開2006−161175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような無線タグ内蔵シートは、場所を問わず設置できることが求められる。
【0005】
しかし、設置場所がコンテナなどの金属部材の近傍となる場合には、以下のような問題が生じることがあった。
【0006】
即ち、上記のような薄型の無線タグ内蔵シートの背面に金属部材が存在する状態で、外部リーダ/ライタにより、無線タグ内蔵シートの無線タグにおけるアンテナ部に電磁界が誘導されると、アンテナ部の磁界が、背面の金属部材で発生する渦電流による磁界によって弱められることがある。このため、無線タグが正常に動作せず、通信距離が大幅に低下することがあり、上記従来の無線タグ内蔵シートは、通信の安定性の点で未だ改良の余地を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、安定した通信ができる無線タグ内蔵シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、無線タグを挟み込む一対の紙層のうち少なくとも片方に磁性粉末を含有させた無線タグ内蔵シートを用いれば、無線タグ内蔵シートの背面に金属部材が存在していても、安定した通信が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、互いに対向する一対の紙層と、前記一対の紙層間に挟まれ、アンテナ部を有する無線タグとを有し、前記一対の紙層の少なくとも一方が磁性体の粉末を含有する粉末含有層である、無線タグ内蔵シートである。以下、必要に応じ、「磁性体の粉末」を「磁性粉末」と呼び、磁性粉末を含有する粉末含有層を「磁性粉末含有層」と呼ぶこととする。
【0010】
本発明に係る無線タグ内蔵シートによれば、粉末含有層に対してアンテナ部と反対側に金属部材が存在し、粉末含有層に対してアンテナ部の側から電磁界が誘導される場合でも、安定した通信ができる。即ち、無線タグのアンテナ部の背面に金属部材が近接している場合、金属部材の渦電流により、アンテナ部の磁界を弱めうる磁界が発生し、通信距離が短縮することがあるが、アンテナ部と金属部材との間に磁性粉末含有層を設けると金属部材の影響を緩和できる。従って、通信距離の短縮が抑制され、安定した通信が確保される。
【0011】
なお、磁性粉末を紙層中に含有させる代わりに、紙層に磁性材を積層することも考えられるが、磁性材では、無線タグ内蔵シートの厚さが増大して大型化してしまう。加えて、磁性材は堅いため紙層が破れやすくなり、耐久性の点で問題がある。
【0012】
上記無線タグ内蔵シートにおいて、磁性粉末含有層が顔料をさらに含有することが好ましい。磁性粉末は通常、黒色等の暗い色を呈しているため、無線タグ内蔵シートの表裏を識別できるメリットがあるものの、紙層の中に磁性粉末が含有されていると、一対の紙層の間に挟まれている無線タグを外側から判別することが困難である。磁性粉末含有層中に顔料を含有させることで、磁性粉末含有層を顔料の色に染色することが可能となるため、一対の紙層の中における無線タグの位置を外側から容易に判別することが可能となる。このため、無線タグに外力を加えることを回避することが容易となり、無線タグ内蔵シートの取付作業を容易とすることが可能となる。無線タグ内蔵シートの表裏の区別が難しい場合には、マーキングにより区別することも可能である。
【0013】
上記無線タグ内蔵シートにおいて、前記磁性粉末の少なくとも一部が前記顔料でコーティングされていることが好ましい。この場合、磁性粉末の色よりも顔料の色を支配的とすることができ、無線タグの位置の判別性をより高めることができる。
【0014】
上記無線タグ内蔵シートは、前記磁性粉末含有層に対して前記無線タグと反対側に保護層をさらに有することが好ましい。
【0015】
磁性粉末含有層に対して無線タグと反対側に保護層を設けることで、磁性粉末の摩擦等による脱落を防止することができ、特性劣化を防止することができる。このため、長期にわたって安定した通信を維持することができる。また、保護層を設けることで、無線タグ内蔵シートの強度を増大させることもできる。
【0016】
上記磁性粉末含有層において、前記磁性粉末が、前記アンテナ部に対向する領域に偏在していることが好ましい。この場合、磁性粉末含有層が顔料を含まなくても、無線タグのアンテナ部の位置の識別性を高めることができる。また、アンテナ部に対向する領域以外の部分に磁性粉末を存在させないことで、磁性粉末の使用量が抑えられ、コストダウンに繋がる。
【0017】
本発明は、一対の無線タグ挟持紙を準備する準備工程と、前記一対の無線タグ挟持紙の間に、アンテナ部を有する無線タグを配置する無線タグ配置工程と、前記無線タグ挟持紙を重ね合わせて乾燥させ、一対の紙層の間に無線タグを有する無線タグ内蔵シートを得る乾燥工程とを含み、前記準備工程において、前記一対の無線タグ挟持紙のうちの少なくとも一方の無線タグ挟持紙が、磁性粉末を含む製紙スラリーを漉き取ることによって形成される、無線タグ内蔵シートの製造方法である。
【0018】
上記製造方法によれば、一対の無線タグ挟持紙のうち少なくとも一方の無線タグ挟持紙中に磁性粉末を容易に分散させることができる。このため、磁性材を別途接着する必要がないというメリットがある。また、一対の無線タグ挟持紙のそれぞれに含まれる繊維同士が互いに絡み合うため、一対の無線タグ挟持紙を、接着剤を使用せずに容易に接着して一体化することができる。このため、接着剤を塗布するなどの工程を省くことができ、製造コストを下げることができる。また、得られる一対の紙層中の少なくとも一方の紙層中に磁性粉末が分散されているため、安定した通信が可能な無線タグ内蔵シートが得られる。
【0019】
また本発明は、互いに対向する一対の紙層と、前記一対の紙層間に挟まれ、アンテナ部を有する無線タグとを有し、前記一対の紙層のうち少なくとも一方が、非磁性金属の粉末を含有する粉末含有層である、無線タグ内蔵シートである。以下、必要に応じ、「非磁性金属の粉末」を「非磁性金属粉末」と呼び、非磁性金属粉末を含有する粉末含有層を「非磁性金属粉末含有層」と呼ぶこととする。
【0020】
非磁性金属粉末含有層を有しない無線タグ内蔵シートでは、周囲の影響を考慮せずに、例えば金属部材が近くに存在しないことを想定して無線タグにおける共振周波数が設計される。ところが、金属部材が近くに存在すると、この金属部材に渦電流が発生しアンテナのインダクタンスが低下することにより、共振周波数がずれてしまい、通信距離が著しく低下することがある。その点、本発明に係る無線タグ内蔵シートによれば、当該無線タグ内蔵シートが非磁性金属粉末含有層を有しており、この状態で共振周波数が設定されるため、非磁性金属粉末含有層に対してアンテナ部と反対側に金属部材が存在しても、非磁性金属粉末含有層に対してアンテナ部の側から磁界が誘導される場合に安定した通信ができる。
【0021】
なお、非磁性金属粉末を紙層中に含有させる代わりに、紙層に金属材を積層することも考えられるが、金属材では、無線タグ内蔵シートの厚さが増大して大型化してしまう。加えて、金属材は堅いため紙層が破れやすくなり、耐久性の点で問題がある。
【0022】
上記無線タグ内蔵シートにおいて、前記非磁性金属粉末含有層が顔料をさらに含有することが好ましい。非磁性金属粉末は通常、黒色等の暗い色を呈しているため、紙層の中に磁性粉末が含有されていると、無線タグ内蔵シートの表裏を識別できるメリットがあるものの、一対の紙層の間に挟まれている無線タグを外側から判別することが困難である。磁性粉末含有層中に顔料を含有させることで、磁性粉末含有層を顔料の色に染色することが可能となるため、一対の紙層の中における無線タグの位置を外側から容易に判別することが可能となる。このため、無線タグに外力を加えることを回避することが容易となり、無線タグ内蔵シートの取付作業を容易とすることが可能となる。
【0023】
上記無線タグ内蔵シートにおいて、前記非磁性金属粉末の少なくとも一部が前記顔料でコーティングされていることが好ましい。この場合、非磁性金属粉末の色よりも顔料の色を支配的とすることができ、無線タグの位置の判別性をより高めることができる。
【0024】
上記無線タグ内蔵シートは、前記非磁性金属粉末含有層に対して前記無線タグと反対側に保護層をさらに有することが好ましい。
【0025】
非磁性金属粉末含有層に対して無線タグと反対側に保護層を設けることで、非磁性金属粉末の摩擦等による脱落を防止することができ、特性劣化を防止することができる。このため、長期にわたって安定した通信を維持することができる。また、保護層を設けることで、無線タグ内蔵シートの強度を増大させることもできる。
【0026】
上記非磁性金属粉末含有層において、前記非磁性金属粉末が、前記アンテナ部に対向する領域に偏在していることが好ましい。この場合、非磁性金属粉末含有層が顔料を含まなくても、無線タグのアンテナ部の位置の識別性を高めることができる。また、非磁性金属粉末の分布をアンテナ部に対向する領域に狭めることで、外部からの電磁波の受信を容易にすることができる。さらに、アンテナ部に対向する領域以外の部分に非磁性金属粉末を存在させないことで、非磁性金属粉末の使用量が抑えられ、コストダウンに繋がる。
【0027】
本発明は、一対の無線タグ挟持紙を準備する準備工程と、前記一対の無線タグ挟持紙の間に、アンテナ部を有する無線タグを配置する無線タグ配置工程と、前記無線タグ挟持紙を重ね合わせて乾燥させ、一対の紙層の間に無線タグを有する無線タグ内蔵シートを得る乾燥工程とを含み、前記準備工程において、前記一対の無線タグ挟持紙のうちの少なくとも一方の無線タグ挟持紙が、非磁性金属粉末を含む製紙スラリーを漉き取ることによって形成される、無線タグ内蔵シートの製造方法である。
【0028】
上記製造方法によれば、一対の無線タグ挟持紙のうち少なくとも一方の無線タグ挟持紙中に非磁性金属粉末を容易に分散させることができる。このため、磁性材を別途接着する必要がないというメリットがある。また、一対の無線タグ挟持紙のそれぞれに含まれる繊維同士が互いに絡み合うため、一対の無線タグ挟持紙を、接着剤を使用せずに容易に接着して一体化することができる。このため、接着剤を塗布するなどの工程を省くことができ、製造コストを下げることができる。また、得られる一対の紙層中の少なくとも一方の紙層中に非磁性金属粉末が分散されているため、安定した通信が可能な無線タグ内蔵シートが得られる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、安定した通信ができる無線タグ内蔵シート及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図面中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0031】
〔第1実施形態〕
(無線タグ内蔵シート)
図1は、本発明に係る無線タグ内蔵シートの一実施形態を示す平面図であり、図2は図1のII−II線に沿った断面図である。
【0032】
図1及び図2に示すように、本実施形態の無線タグ内蔵シート100は、紙層1と、紙層1に対向する紙層2と、紙層1及び紙層2間に挟まれる無線タグ3と、紙層2に対して無線タグ3と反対側に設けられる保護層4とを備える。
【0033】
無線タグ3は、基板5と、基板5上に渦巻状に形成されるアンテナ部6と、基板5上に形成されてアンテナ部6に電気的に接続されるICチップ部7とを備えている。
【0034】
紙層2は、パルプ繊維8及び磁性粉末9を含有し、紙層1はパルプ繊維8を含み、磁性粉末9を含んでいない。以下、紙層2を必要に応じ、「磁性粉末含有層2」と呼ぶこととする。
【0035】
無線タグ内蔵シート100によれば、磁性粉末含有層2に対してアンテナ部6と反対側に金属部材Mが存在し、磁性粉末含有層2に対してアンテナ部6の側から電磁界が誘導される場合でも、安定した通信ができる。即ち、無線タグ3のアンテナ部6の背面に金属部材Mが近接している場合、金属部材Mの渦電流により、アンテナ部6の磁界を弱めうる磁界が発生し、通信距離が短縮することがあるが、アンテナ部6と金属部材Mとの間に磁性粉末含有層2を設けると金属部材Mの影響を緩和できる。従って、無線タグ内蔵シート100によれば、通信距離の短縮が抑制され、安定した通信が確保される。
【0036】
また無線タグ内蔵シート100では、磁性粉末含有層2に対して無線タグ3と反対側に保護層4を有する。このため、磁性粉末9の摩擦等による脱落を防止することができ、無線タグ内蔵シート100の特性劣化を防止することができる。このため、長期にわたって安定した通信を維持することができる。また、保護層4を設けることで、無線タグ内蔵シート100の強度を増大させることもできる。ここで、保護層4が磁性粉末含有層2と反対側に粘着剤を有した粘着シールであると、物品にタグを固定するのが容易となるので好ましい。
【0037】
紙層1は、上述したように、主としてパルプ繊維8を含有する。パルプ繊維8は、特に限定されないが、針葉樹又は広葉樹由来の木材パルプ、古紙再生パルプやバガスパルプなどの非木材パルプのいずれがよく用いられる。
【0038】
紙層22は、上述したように、主としてパルプ繊維8及び磁性粉末9を含有する。本実施形態では、磁性粉末9は、紙層2の全体に分散されている。ここで、磁性粉末9としては、Fe系合金粉末、Co系合金粉末、フェライト、パーマロイなどが用いられるが、これらのうち、特に、フェライトが、渦電流による金属の影響を効果的に緩和できることから好ましく用いられる。
【0039】
磁性粉末9のサイズは、特に限定されるものではないが、平均粒径が紙層1,2の厚さより小さければよい。通常は、磁性粉末9の平均粒径は、紙層1,2の厚さの0.1〜50%の大きさである。特に、磁性粉末9の平均粒径が100nm以下であると、好ましい。これは、磁性粉末9の平均粒径が大きいと凹凸により、紙層1,2の表面が粗くなったり、アンテナ部6を痛めるおそれがあるためである。なお、平均粒径とは、磁性粉末をSEMで観察したときに最も長い長軸長を言うものとする。
【0040】
磁性粉末含有層2中の磁性粉末9の含有率は、好ましくは40〜95質量%である。磁性粉末含有層2中の磁性粉末9の含有率が40質量%未満では、磁性粉末9が含まれない場合に比べると十分に安定した通信が可能となるものの、上記範囲内にある場合に比べて金属の影響緩和の効果が相対的に得にくい傾向があり、磁性粉末含有層2中の磁性粉末9の含有率が95質量%を超えると、上記範囲内にある場合に比べて、相対的にパルプ繊維8の含有率が減少し、紙層1,2同士が分離しやすくなる傾向がある。
【0041】
なお、磁性粉末含有層2は、顔料をさらに有していてもよい。磁性粉末9は通常、黒色等の暗い色を呈しているため、紙層2の中に磁性粉末9が含有されていると、一対の紙層1,2の間に挟まれている無線タグ3を外側から判別することが困難である。磁性粉末含有層2中に顔料を含有させることで、磁性粉末含有層2を顔料の色に染色することが可能となるため、一対の紙層1,2の中における無線タグ3の位置を外側から容易に判別することが可能となる。このため、無線タグ3に外力を加えることを回避することが容易となり、無線タグ内蔵シート100の取付作業を容易とすることが可能となる。
【0042】
このような顔料としては、例えば酸化亜鉛、二酸化チタン(以上白色)、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、ストロンチウムクロメート(以上黄色)、ヴィリジアン、オキサイド・オブ・クロミウム(以上緑色)、コバルトブルー、合成ウルトラマリン(以上青色)などの合成無機顔料、キノフタロン、イソインドリン、イソインドリノン(以上黄色)、ジケトピロロピロール、キナクリドン、ペリノン、アンタンスロン(以上オレンジ色)、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール(以上赤色)、ジオキサジン(紫色)、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー(以上青色)、フタロシアニングリーン(緑色)などの有機顔料が用いられる。これらは2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0043】
なお、磁性粉末9は、上述した顔料によってコーティングされていると好ましい。この場合、磁性粉末9の色よりも顔料の色を支配的とすることができ、無線タグ3の位置の判別性をより高めることができる。言い換えると、磁性粉末9の色が顔料によって効果的に打ち消されるため、無線タグ3の位置の判別性をより高めることができるということになる。なお、磁性粉末9の全部が顔料によってコーティングされていてもよいが、一部のみがコーティングされていてもよい。
【0044】
紙層1、2の厚さは、40〜200μmの範囲内であると好ましい。紙層1、2の厚さが40μm未満では、強度が不足し、紙層1、2が破れやすくなる傾向があり、紙層1、2の厚さが200μmを超えると、無線タグ3の外側から判別することが困難となり、取付作業時において無線タグ3を破損してしまうおそれがある。
【0045】
保護層4は、磁性粉末9の摩擦等による脱落を防止することが可能なものであれば特に限定されない。例えば、紙層1,2と同様の紙層であってもよいし、プラスチックフィルム、樹脂等であってもよい。保護層4の厚さは磁性粉末9の摩擦等による脱落を防止することが可能な範囲であれば特に制限されないが、好ましくは10〜50μmである。
【0046】
(無線タグ挟持紙の製造方法)
次に、上記無線タグ内蔵シート100の製造方法について説明する。
【0047】
まず、紙層1、紙層2及び無線タグ3を準備する(準備工程)。
【0048】
ここで、紙層1、紙層2を形成するための無線タグ挟持紙の製造方法について説明する。
【0049】
(無線タグ挟持紙の製造装置)
まず、無線タグ挟持紙の製造装置について、図3を参照しながら説明する。図3は本発明に係る無線タグ挟持紙の製造装置の一例を示す断面図であり、(a)は、製紙スラリー投入前の状態を示し、(b)は、製紙スラリー投入後の状態を示す。
【0050】
図3に示すように、無線タグ挟持紙の製造装置(以下、単に「製造装置」と呼ぶ)50は、液体及びパルプ繊維を含む製紙スラリーを漉き取る漉取り部51を備えている。漉取り部51は、メッシュ部材51aとその外周に設けられてメッシュ部材51aを支持する外枠部51bとで構成されている。メッシュ部材51aは、例えばプラスチック又は金属で構成される。漉取り部51は、支持トレイ52によって支持され、支持トレイ52は、漉取り部51に対向する位置に開口52aを有する。また、製造装置50は、両端が開放された筒状の貯留部材53を有する。貯留部材53は、連結アーム56を介して支持トレイ52に連結され、連結アーム56により貯留部材53を漉取り部51上に配置させることが可能となっている。貯留部材53は、漉取り部51を底部として、製紙スラリーを貯留可能となっている。
【0051】
なお、支持トレイ52の開口52aには排水管59が接続され、排水管59には排水バルブ60が設置されている。また、排水管60には給水管61が接続され、給水管61には給水バルブ62が設置されている。このため、給水バルブ62を開とし、排水バルブ60を閉として給水を行うと、水は、給水管61から排水管59を経て、漉取り部51のメッシュ部材51aを通して貯留部材53の内側に供給されるようになっている。また、給水バルブ62を閉とし、排水バルブ60を開とすれば、水は、排水管59から排出されるようになっている。これにより、製紙スラリーS中のパルプ繊維濃度を任意に調整することが可能である。
【0052】
また、支持トレイ52には、貯留部材53を漉取り部51に固定する固定具63が設けられている。具体的には、この固定具63は、貯留部材53の外周面53aから延びる棒状の突起部64を固定するものである。固定具63は、例えばフック状部材となっており、突起部64が固定具64に引っ掛けられる場合に、突起部64の上昇が規制され、これにより、貯留部材53が漉取り部51に押し付けられるようになっている。
【0053】
次に、上述した無線タグ挟持紙の製造装置50を用いた無線タグ挟持紙の製造方法について説明する。
【0054】
まず、図3に示すように、貯留部材53は、漉取り部51上に配置されていない状態にあり、この状態から、連結アーム56によって、貯留部材53が漉き取り部51上に配置される。具体的には、貯留部材53は、漉取り部51の外枠部51b上に配置される。このとき、連結アーム56により、漉取り部51に対する貯留部材53の位置合せを容易に行うことが可能となっている。
【0055】
貯留部材53が漉取り部51上に配置された後は、貯留部材53の突起部64を固定具63によって固定する。これにより、貯留部材53が漉取り部51の外枠部51bに押し付けられるため、貯留部材53内に製紙スラリーSを貯留したときの製紙スラリーSの漏れを十分に防止することができる。
【0056】
この状態で、貯留部材53の開放端から、製紙スラリーSを投入する。製紙スラリーSは、離解したパルプ繊維8と、磁性粉末9と、液体(例えば水)とを混合し、十分に攪拌することによって得ることができる。このとき、磁性粉末9として、平均粒径が100nm以下のものを用いると、製紙スラリーS中の水に極めて効果的に溶解されるため、製紙スラリーS中に磁性粉末9をより均一に分散させることができる。なお、必要に応じて、製紙スラリーSを得る際、上述した顔料、その他の成分を混合してもよい。顔料でコーティングされた磁性粉末9は、予め磁性粉末9と顔料、有機溶媒、表面処理剤とを混合して十分に分散したスラリーを作製し、このスラリーを攪拌しながら、噴霧乾燥することにより得ることができる。
【0057】
製紙スラリーSを貯留部材53内に投入した後は、排水バルブ60を開とし、給水バルブ62を閉とする。これにより、メッシュ部材51aによって、製紙スラリーS中の水が排水管59を経て排出される。こうしてメッシュ部材51a上に無線タグ挟持紙が得られる。上記のようにしてメッシュ部材51aの上に無線タグ挟持紙が得られた後は、連結アーム56によって貯留部材53をメッシュ部材51aから分離させ、無線タグ挟持紙を取り出す。
【0058】
そして、磁性粉末9を含有する製紙スラリーを用いないこと以外は上記と同様にして、別の無線タグ挟持紙が準備される(準備工程)。
【0059】
こうして2枚の無線タグ挟持紙を準備し、これら2枚の無線タグ挟持紙間に無線タグ3を配置する(無線タグ配置工程)。続いて、磁性粉末9を含有している無線タグ挟持紙上に保護層4を積層する。そして、2枚の無線タグ挟持紙、無線タグ3及び保護層からなる積層体を、無線タグ挟持紙の両側から加圧し、その後、乾燥させる(乾燥工程)。このとき、加圧と同時に加熱することによって、加圧と乾燥とを同時に行ってもよい。こうして無線タグ内蔵シート100の製造が完了する。なお、保護層4は、2枚の無線タグ挟持紙及び無線タグ3からなる積層体を、無線タグ挟持紙の両側から加圧及び乾燥させた後に貼り付けてもよい。
【0060】
上記製造方法によれば、一対の無線タグ挟持紙のうち一方の無線タグ挟持紙中に磁性粉末9を容易に分散させることができる。このため、磁性材を別途接着する必要がないというメリットがある。また、一対の無線タグ挟持紙のそれぞれに含まれる繊維同士が互いに絡み合うため、一対の無線タグ挟持紙を、接着剤を使用せずに容易に接着して一体化することができる。このため、接着剤を塗布するなどの工程を省くことができ、製造コストを下げることができる。また、得られる無線タグ内臓シート100は、紙層2中に磁性粉末が分散されているため、安定した通信が可能なものとなる。
【0061】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る無線タグ内蔵シートの第2実施形態について図4を参照して説明する。
【0062】
図4は、本発明に係る無線タグ内蔵シートの第2実施形態を示す断面図である。図4に示すように、本実施形態の無線タグ内蔵シート200は、主として、磁性粉末9に代えて非磁性金属粉末19を用いる点で実施形態の無線タグ内蔵シート100と相違する。
【0063】
非磁性金属粉末含有層を有しない無線タグ内蔵シートでは、周囲の影響を考慮せずに、例えば金属部材が近くに存在しないことを想定して無線タグにおける共振周波数が設計される。ところが、金属部材が近くに存在すると、この金属部材の存在に起因して発振共振周波数がずれてしまい、通信距離が著しく低下することがある。
【0064】
その点、本実施形態に係る無線タグ内蔵シート200によれば、当該無線タグ内蔵シート200が非磁性金属粉末含有層12を有しており、この状態で共振周波数が設定されるため、非磁性金属粉末含有層12に対してアンテナ部6と反対側に金属部材Mが存在しても、非磁性金属粉末含有層12に対してアンテナ部6側から電磁波が到来する場合に安定した通信ができる。
【0065】
即ち、外部リーダ/ライタから送信される電磁波によって、無線タグ3のアンテナ部6で磁界が発生する。このとき、金属部材Mでは渦電流が生じるため、その渦電流によりアンテナ部6のインダクタンスが低下して共振周波数がずれてしまい、通信距離が著しく低下することがある。しかし、上述したように、無線タグ内蔵シート200では非磁性金属粉末含有層12を有した状態で共振周波数が設定されるため、共振周波数のずれを小さく抑えることができる。従って、本実施形態に係る無線タグ内蔵シート200によれば、紙層1,12のいずれも非磁性金属粉末19を含有しない無線タグ内蔵シートに比べると、非磁性金属粉末含有層に対してアンテナ部6と反対側に金属部材Mが存在しても、非磁性金属粉末含有層に対してアンテナ部6の側から磁界が誘導される場合に安定した通信ができる。
【0066】
非磁性金属粉末19としては、Al、Cu、ステンレスなどの非磁性金属単体、これらの合金が用いられる。
【0067】
非磁性金属粉末19のサイズは、特に限定されるものではないが、平均粒径が紙層1,2の厚さより小さければよい。通常は、非磁性金属粉末19の平均粒径は、紙層1,2の厚さの0.1〜50%の大きさである。特に、非磁性金属粉末19の平均粒径が100nm以下であると、好ましい。これは、非磁性金属粉末19の平均粒径が大きいと凹凸により、紙層1,2の表面が粗くなったり、アンテナ部6を痛めるおそれがあるためである。なお、平均粒径とは、非磁性金属粉末をSEMで観察したときに最も長い長軸長を言うものとする。
【0068】
非磁性金属粉末含有層12中の非磁性金属粉末19の含有率は、好ましくは40〜95質量%である。非磁性金属粉末含有層12中の非磁性金属粉末19の含有率が40質量%未満では、非磁性金属粉末19が含まれない場合に比べると十分に安定した通信が可能となるものの、上記範囲内にある場合に比べて、背面に金属が配置された場合に共振周波数のずれが大きくなり非磁性金属粉末を含有させた効果が得にくい傾向があり、非磁性金属粉末含有層12中の非磁性金属粉末19の含有率が95質量%を超えると、上記範囲内にある場合に比べて相対的にパルプ繊維8の含有率が減少し、紙層1,2同士が分離しやすくなる傾向がある。
【0069】
なお、非磁性金属粉末含有層12は、第1実施形態と同様の理由から、顔料をさらに有していてもよい。顔料としては、第1実施形態と同様のものが用いられる。
【0070】
なお、非磁性金属粉末19は、上記第1実施形態と同様の理由から、上述した顔料によってコーティングされていると好ましい。ここで、非磁性金属粉末19の全部が顔料によってコーティングされていてもよいが、一部のみがコーティングされていてもよい。
【0071】
無線タグ内蔵シート200も、磁性粉末末9に代えて非磁性金属粉末19を用いたこと以外は第1実施形態と同様にして製造される。
【0072】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1及び第2実施形態の無線タグ内蔵シート100,200は保護層4を有しているが、必ずしも保護層4を有していなくてもよい。
【0073】
また、無線タグ内蔵シート100では、紙層2において、磁性粉末末9が紙層2の全体に分散されているが、図5に示すように、磁性粉末末9は、アンテナ部6に対向する領域20に偏在していてもよい。即ち、紙層2において、アンテナ部6に対向する領域20に磁性粉末末9が含有され、それ以外の領域には磁性粉末末9は含有されていない形態であってもよい。この場合、紙層2が顔料を含まなくても、無線タグ3のアンテナ部6の位置の識別性を高めることができる。また、アンテナ部6に対向する領域以外の部分に磁性粉末末9を存在させないことで、磁性粉末末9の使用量が抑えられ、コストダウンに繋がる。なお、上記のことは、磁性粉末9に代えて、非磁性金属粉末19を用いた場合も同様である。
【0074】
ここで、磁性粉末9又は非磁性金属粉末19が上記のように分布した紙層2を製造する場合、紙層2を形成するための無線タグ挟持紙は、例えば図6に示す製造装置を用いて製造することができる。即ち図6に示すように、貯留部材53の内側に、仕切り部材55を配置して、貯留部材53の内側の空間を、アンテナ部6に対向する領域20を形成するための第1製紙スラリーを収容する第1収容室57と、アンテナ部6に対向しない領域を形成するための第2製紙スラリーを収容する第2収容室58とに仕切るようにするのである。ここで、仕切部材55は固定部材54によって貯留部材53に固定することができる。ここで、第1製紙スラリーS1には磁性粉末9を含有させ、第2製紙スラリーS2には磁性粉末9を含有させないようにする。このようにすることで、磁性粉末9又は非磁性金属粉末19が上記のように分布した紙層2を形成するための無線タグ挟持紙を製造することができる。
【0075】
また、無線タグ内蔵シート100,200では、紙層1に、磁性粉末9、非磁性金属粉末19が含有されていないが、これらが含有されていてもよい。特に、無線タグシート100においては、磁性粉末9が紙層1,2の両方に含まれていてもよい。この場合、表裏区別なく使用できる。但し、通信距離を考慮すると、無線タグ内蔵シート100,200のいずれにおいても一方のみに磁性粉末9、非磁性金属粉末19が含まれていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る無線タグ内蔵シートの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のII−IIに沿った断面図である。
【図3】図1の紙層を形成するための無線タグ挟持紙の製造装置の一例を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明に係る無線タグ内蔵シートの他の実施形態を示す平面図である。
【図5】図1の紙層の変形例を示す断面図である。
【図6】図5の紙層を形成するための線タグ挟持紙の製造装置の一例を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1、2、12…紙層、3…無線タグ、4…保護層、6…アンテナ部、7…ICチップ部、9…磁性粉末、19…非磁性金属粉末、20…アンテナ部に対向する領域、100,200…無線タグ内蔵シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の紙層と、
前記一対の紙層間に挟まれ、アンテナ部を有する無線タグとを有し、
前記一対の紙層の少なくとも一方が磁性体または非磁性金属の粉末を含有する粉末含有層である、無線タグ内蔵シート。
【請求項2】
前記粉末含有層が顔料をさらに含有する、請求項1記載の無線タグ内蔵シート。
【請求項3】
前記粉末の少なくとも一部が前記顔料でコーティングされている、請求項2記載の無線タグ内蔵シート。
【請求項4】
前記粉末含有層に対して前記無線タグと反対側に保護層をさらに有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の無線タグ内蔵シート。
【請求項5】
前記粉末含有層において、前記粉末が、前記アンテナ部に対向する領域に偏在している、請求項1〜4のいずれか一項記載の無線タグ内蔵シート。
【請求項6】
一対の無線タグ挟持紙を準備する準備工程と、
前記一対の無線タグ挟持紙の間に、アンテナ部を有する無線タグを配置する無線タグ配置工程と、
前記無線タグ挟持紙を重ね合わせて乾燥させ、一対の紙層の間に無線タグを有する無線タグ内蔵シートを得る乾燥工程とを含み、
前記準備工程において、
前記一対の無線タグ挟持紙が、
磁性体又は非磁性金属の粉末を含む製紙スラリーを漉き取ることによって形成される、無線タグ内蔵シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−246976(P2008−246976A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93888(P2007−93888)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】