説明

無線中継装置、無線中継装置の制御方法及び無線通信システム

【課題】無線中継装置が適応的に接続先の基地局を変更できるようにする。
【解決手段】複数の基地局のうちの一の基地局と端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置1において、前記一の基地局からの下り無線信号を受信する第1アンテナ部2と、前記第1アンテナ部2で受信した前記下り無線信号の受信レベルを検出する下り受信レベル検出部12と、前記下り受信レベル検出部12で検出した前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記第1アンテナ部2の指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替えるアンテナ制御部13とをそなえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継装置、無線中継装置の制御方法及び無線通信システムに関する。前記無線中継装置は、例えば、基地局と端末との間の無線信号を中継することができる。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの1つとして、無線中継装置を有する無線通信システムが知られている。
無線中継装置は、例えば、基地局と端末との間の無線信号を中継することにより、無線伝送距離を延長したり、通信サービスエリアを拡大したりする。
例えば、基地局の通信サービスエリアの端部に無線中継装置が設置されることで、基地局からの電波を再放射でき、無線伝送距離の延長や通信サービスエリアの拡大を図ることが可能となる。
【0003】
また、電波の直進性が強く、建物の内部に電波が届きにくい場合、例えば、建物の窓際などに無線中継装置が設置されることで、建物内部に向けて電波を再放射でき、基地局の通信サービスエリアを建物内に展開することが可能となる。
なお、無線中継装置に関する既存の技術として、下記の特許文献1〜4の技術が知られている。
【0004】
例えば、無線ネットワークにおける接続パラメータを調整する中継局や、親局または中継局の代行を行なう可搬型無線装置が提案されている。
また、アダプティブアレイアンテナについての送信ウェイトを、自局への回り込み波となる放射方向の出力を低く抑えるように制御する無線中継装置も提案されている。
さらに、受信波をInter-Frequency(IF)信号に変換して微小周波数偏移を与え、高周波に変換して増幅し、位相,振幅,遅延時間を制御して廻り込みを抑えるIF相殺系とRadio-Frequency(RF)相殺系とを有する無線中継増幅装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−48415号公報
【特許文献2】特開2009−200786号公報
【特許文献3】特開2006−20211号公報
【特許文献4】特開平11−112402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線中継装置は、複数の基地局のうちの一の基地局からの無線信号を受信して中継する。無線中継装置が複数の基地局からの無線信号を受信できる場合、無線中継装置に接続される移動局などの端末や、無線中継装置の周辺の各基地局に対して干渉を与えてしまい、回線品質を劣化させ得るからである。
そのため、無線中継装置は、指向性の鋭いアンテナを用いて一の基地局と接続される。
【0007】
しかしながら、無線中継装置と接続中の基地局が故障したり、無線中継装置と接続中の基地局におけるトラフィック負荷が増大したりすると、当該無線中継装置を介して無線通信を行なう端末は、通信を継続できなくなることがある。
また、例えば、昼間などのある時間帯では多くの加入者が収容される一方、夜間などの他の時間帯では加入者が少ない基地局では、各時間帯におけるトラフィック量にむらがあり、基地局の運用効率が悪い。
【0008】
かかる基地局と無線中継装置とが接続されている場合、加入者の少ない時間帯に当該無線中継装置の接続先を他の基地局に切り替えることができれば、加入者の少ない基地局を休止させることが可能となり、電力消費量を低減することができる。
しかしながら、無線中継装置は、上述のように、指向性の鋭いアンテナを用いて一の基地局と接続されており、接続先の基地局を切り替える手段を有さないので、かかる場合であっても電力消費量を節減することができない。
【0009】
なお、上記特許文献1〜4のいずれにも、無線中継装置がその接続先を切り替えるようにすることについては言及されていない。
そこで、本発明は、無線中継装置が適応的に接続先の基地局を変更できるようにすることを目的の1つとする。
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)第1の案として、複数の基地局のうちの一の基地局と端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置であって、前記一の基地局からの下り無線信号を受信する第1アンテナ部と、前記第1アンテナ部で受信した前記下り無線信号の受信レベルを検出する下り受信レベル検出部と、前記下り受信レベル検出部で検出した前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記第1アンテナ部の指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替えるアンテナ制御部とをそなえる、無線中継装置を用いることができる。
【0011】
(2)また、第2の案として、複数の基地局のうちの一の基地局と端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置の制御方法であって、前記一の基地局からの下り無線信号を受信アンテナにより受信し、前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記受信アンテナの指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替える、無線中継装置の制御方法を用いることができる。
【0012】
(3)さらに、第3の案として、複数の基地局と、端末と、前記複数の基地局のうちの一の基地局と前記端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置とをそなえた無線通信システムであって、前記無線中継装置が、前記一の基地局からの下り無線信号を受信する第1アンテナ部と、前記第1アンテナ部で受信した前記下り無線信号の受信レベルを検出する下り受信レベル検出部と、前記下り受信レベル検出部で検出した前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記第1アンテナ部の指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替えるアンテナ制御部とをそなえる、無線通信システムを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
無線中継装置が適応的に接続先の基地局を変更できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係る無線通信システムの構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示す無線中継装置の構成の一例を示す図である。
【図3】電波の回り込みを説明する模式図である。
【図4】周波数変換部の構成の一例を示す図である。
【図5】(A)は位相の時間変化の一例を示す図であり、(B)は位相平面上の信号軌跡の一例を示す図である。
【図6】レプリカ生成部の構成の一例を示す図である。
【図7】相関検出部及び帰還制御部の構成の一例を示す図である。
【図8】入力レベル検出部の構成の一例を示す図である。
【図9】利得検出部の構成の一例を示す図である。
【図10】(A)及び(B)はそれぞれ一実施形態に係る制御方法の一例を説明する図である。
【図11】一実施形態に係る制御方法の一例を説明する図である。
【図12】一実施形態に係る制御方法の一例を説明する図である。
【図13】一実施形態に係る制御方法の一例を説明する図である。
【図14】一実施形態に係る制御方法の一例を説明する図である。
【図15】一実施形態に係る制御方法の一例を説明する図である。
【図16】第1変形例に係る無線中継装置の構成の一例を示す図である。
【図17】ウェイト制御部の構成の一例を示す図である。
【図18】アンテナビームパターンの一例を示す図である。
【図19】アンテナビームパターンの一例を示す図である。
【図20】アンテナビームパターンの一例を示す図である。
【図21】アンテナビームパターンの一例を示す図である。
【図22】受信ビームパターンの一例を示す図である。
【図23】無線中継装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図24】複数の基地局及び無線中継装置の配置の一例を示す図である。
【図25】第2変形例に係る無線中継装置の構成の一例を示す図である。
【図26】第2変形例に係る無線中継装置の構成の一例を示す図である。
【図27】アンテナビームパターンの制御の一例を示す図である。
【図28】アンテナビームパターンの制御の一例を示す図である。
【図29】第3変形例に係る無線中継装置の構成の一例を示す図である。
【図30】第4変形例に係る無線通信システムの構成の一例を示す図である。
【図31】第4変形例に係る無線中継装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下に示す各実施形態及び変形例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、各実施形態及び変形例を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることはいうまでもない。
〔1〕一実施形態の説明
(1.1)無線通信システムの構成例
図1は一実施形態に係る無線通信システムの構成の一例を示す図である。この図1に示す無線通信システムは、例示的に、複数の基地局100−1,100−2と、少なくとも1つの無線中継装置1−1,1−2と、少なくとも1つの端末200−1〜200−3とをそなえる。
【0016】
なお、以下では、無線中継装置1−1,1−2を区別しない場合、単に無線中継装置1と表記する。また、基地局100−1,100−2を区別しない場合、単に基地局100と表記し、端末200−1〜200−3を区別しない場合、単に端末200と表記する。さらに、基地局100−1,100−2,無線中継装置1−1,1−2,端末200−1〜200−3の数は、図1に例示する数にそれぞれ限定されない。
【0017】
ここで、基地局100−1,100−2は、セルやセクタなどで構成される通信サービスエリア300−1,300−2を提供する。
例えば、基地局100−1は、自局100−1が提供する通信サービスエリア300−1内に位置する端末200−1と直接的に無線通信することができる。また、基地局100−1は、自局100−1が提供する通信サービスエリア300−1内に位置する無線中継装置1−1,1−2とも直接的に無線通信することができる。
【0018】
一方、基地局100−2は、自局100−2が提供する通信サービスエリア300−2内に位置する無線中継装置1−1とは直接的に無線通信することができるが、端末200−1及び無線中継装置1−2とは直接的に無線通信することができない。端末200−1及び無線中継装置1−2は、基地局100−2が提供する通信サービスエリア300−2内に位置していないからである。
【0019】
また、無線中継装置1は、基地局100と端末200との間で送受信される無線信号を中継する。
例えば、無線中継装置1−1は、基地局100−1,100−2から受信した無線信号を、自局1−1が提供する通信サービスエリア400−1内に位置する端末200−2へ中継送信することができる。さらに、無線中継装置1−1は、自局1−1が提供する通信サービスエリア400−1内に位置する端末200−2から受信した無線信号を、基地局100−1,100−2からの無線信号へ中継送信することができる。
【0020】
また、無線中継装置1−2は、基地局100−1から受信した無線信号を、自局1−2が提供する通信サービスエリア400−2内に位置する端末200−3へ中継送信することができる。さらに、無線中継装置1−2は、自局1−2が提供する通信サービスエリア400−2内に位置する端末200−3から受信した無線信号を、基地局100−1からの無線信号へ中継送信することができる。
【0021】
そして、端末200は、自局200が属する通信サービスエリア300−1,300−2,400−1,400−2を提供する基地局100−1,100−2,無線中継装置1−1,1−2と直接的に無線通信することができる。また、端末200は、自局200が属する通信サービスエリア400−1,400−2を提供する無線中継装置1−1,1−2を介して、間接的に、基地局100−1,100−2と無線通信することができる。
【0022】
本例では、上記無線通信システムにおいて、無線中継装置1が、自局1と接続中である基地局(以下、親の基地局ともいう)100を、状況に応じて他の基地局100に切り替えられるようにする。
これにより、例えば、親の基地局100が故障した場合や、親の基地局100のトラフィック負荷が大きい場合などでも、自局1の接続先を他の基地局100に切り替えれば、自局1の配下の端末200が無線通信を継続させることができる。結果、無線通信の安定性を向上させることが可能となる。
【0023】
また、親の基地局100への加入者数が少ない場合に、自局1の接続先を他の基地局100に切り替えれば、自局1の配下の端末200に無線通信を継続させつつ、加入者数の少ない基地局100を休止することができるので、消費電力を大幅に削減できる。
以下では、無線中継装置1の構成例及び制御方法の一例について説明する。
(1.2)無線中継装置1の構成例
図2は無線中継装置1の構成の一例を示す図である。この図2に示す無線中継装置1は、例示的に、第1アンテナ部2と、アンテナ共用器3と、帯域フィルタ4と、合成部5と、可変増幅器6と、周波数変換部7と、アンテナ共用器8と、第2アンテナ部9とをそなえる。また、無線中継装置1は、例示的に、帯域フィルタ10と、可変増幅器11と、入力レベル検出部12と、アンテナ制御部13と、レプリカ生成部14と、利得制御部15と、利得検出部16とをそなえる。
【0024】
第1アンテナ部2は、複数の基地局100のうちの一の基地局100からの下り無線信号を受信する受信アンテナとしての機能を有する。また、第1アンテナ部2は、前記一の基地局100へ上り無線信号を送信する送信アンテナとしての機能を有していてもよい。なお、基地局100から端末200への通信方向を下りと称し、その逆の通信方向を上りと称する。即ち、下り無線信号は、基地局100から端末200へ伝送する無線信号であり、上り無線信号は、端末200から基地局100へ伝送する無線信号である。
【0025】
さらに、第1アンテナ部2は、アンテナ指向性を動的に変更することが可能な構成を有する。例えば、アンテナ制御部13によって、アンテナの向きが機械的に変更されることで、アンテナ指向性が動的に変更されてもよい。
アンテナ共用器3は、第1アンテナ部2を受信アンテナあるいは送信アンテナとして機能させる。例えば、基地局100からの下り無線信号を受信する場合、アンテナ共用器3は、第1アンテナ部2を受信アンテナとして機能させる。一方、基地局100へ上り無線信号を送信する場合、アンテナ共用器3は、第1アンテナ部2を送信アンテナとして機能させるべく、第1アンテナ部2の送受信機能を切り替えることができる。なお、下り無線信号の周波数と上り無線信号の周波数とが異なるような場合、アンテナ共用器3は、第1アンテナ部2が下り無線信号と上り無線信号とを同時に送受信できるように制御してもよい。アンテナ共用器3によって、基地局100からの下り無線信号は帯域フィルタ4へ出力される一方、基地局100への上り無線信号は第1アンテナ部2へ出力される。
【0026】
帯域フィルタ4は、第1アンテナ部2で受信した下り無線信号について、所定の帯域を通過させるように構成されたバンドパスフィルタである。帯域フィルタ4により、下り無線信号に含まれる不要波を除去することができる。この不要波(下り不要波)は、例えば、基地局100と無線中継装置1との間の無線伝搬路や、基地局100または無線中継装置1の内部などで生じることがある。帯域フィルタ4でフィルタリングされた下り無線信号は、合成部5及び入力レベル検出部12へ出力される。
【0027】
一方、第2アンテナ部9は、無線中継装置1の提供する通信サービスエリア内に位置する端末200からの上り無線信号を受信する受信アンテナとしての機能を有する。また、第2アンテナ部9は、前記端末200へ下り無線信号を送信する送信アンテナとしての機能を有していてもよい。
アンテナ共用器8は、第2アンテナ部9を受信アンテナあるいは送信アンテナとして機能させる。例えば、端末200からの上り無線信号を受信する場合、アンテナ共用器8は、第2アンテナ部9を受信アンテナとして機能させる。一方、端末200へ下り無線信号を送信する場合、アンテナ共用器8は、第2アンテナ部9を送信アンテナとして機能させるべく、第2アンテナ部9の機能を切り替えることができる。なお、下り無線信号の周波数と上り無線信号の周波数とが異なるような場合、アンテナ共用器8は、第2アンテナ部9が下り無線信号と上り無線信号とを同時に送受信できるように制御してもよい。アンテナ共用器8によって、端末200からの上り無線信号は帯域フィルタ10へ出力される一方、端末200への下り無線信号は第2アンテナ部9へ出力される。
【0028】
帯域フィルタ10は、第2アンテナ部9で受信した上り無線信号について、所定の帯域を通過させるように構成されたバンドパスフィルタである。帯域フィルタ10により、上り無線信号に含まれる不要波が除去される。この不要波(上り不要波)は、例えば、端末200と無線中継装置1との間の無線伝搬路や、端末200または無線中継装置1の内部などで生じることがある。帯域フィルタ10でフィルタリングされた上り無線信号は、可変増幅器11及び入力レベル検出部12へ出力される。
【0029】
入力レベル検出部12は、下り無線信号の受信レベル(下り入力レベル)を検出する。即ち、入力レベル検出部12は、第1アンテナ部2で受信した下り無線信号の受信レベルを検出する下り受信レベル検出部の一例として機能する。
また、入力レベル検出部12は、上り無線信号の受信レベル(上り入力レベル)を検出してもよい。即ち、入力レベル検出部12は、第2アンテナ部9で受信した上り無線信号の受信レベルを検出する上り受信レベル検出部の一例として機能することができる。入力レベル検出部12での検出結果は、アンテナ制御部13へ通知される。
【0030】
アンテナ制御部13は、入力レベル検出部12で検出した下り無線信号の受信レベルに基づき、第1アンテナ部2の指向性を制御する。これにより、アンテナ制御部13は、接続中の基地局(親の基地局)100から他の基地局100へ無線中継装置1の接続先を切り替えることができる。
また、アンテナ制御部13は、入力レベル検出部12で検出した上り無線信号の受信レベルに基づき、第1アンテナ部2の指向性を制御するタイミングを決定してもよい。これにより、上記切り替えに伴う、自局1の配下の端末200に対する影響を低減することができる。
【0031】
さらに、アンテナ制御部13は、入力レベル検出部12で検出した上り無線信号の受信レベルに基づき、第1アンテナ部2の指向性を制御してもよい。これにより、例えば、自局1の配下の端末200の数が所定の基準を下回る場合などは、無線中継装置1の接続先を他の基地局100に切り替える。そして、前記切り替え前に接続していた基地局100を休止すれば、無線通信システムの電力消費量を大幅に節減することが可能となる。なお、前記基地局100の休止は、例えば、無線通信システムの管理者によって行なわれてもよいし、無線中継装置1から休止制御のための制御信号を送信し、基地局100が当該制御信号を受信して、自局100の電源をオフにすることにより行なわれてもよい。
【0032】
また、可変増幅器6は、基地局100から受信した下り無線信号を増幅する。可変増幅器6の増幅利得は、例えば、増幅後の下り無線信号のレベルが所定の条件を満たすように、利得制御部15により決定される。
一方、可変増幅器11は、端末200から受信した上り無線信号を増幅する。可変増幅器11の増幅利得は、例えば、増幅後の上り無線信号のレベルが所定の条件を満たすように、制御され得る。
【0033】
周波数変換部7は、基地局100からの下り無線信号の周波数fに所定の偏移量Δfを与えて、周波数(f+Δf)の第1下り無線信号を生成する。周波数変換部7により生成された第1下り無線信号は、レプリカ生成部14及びアンテナ共用器8へ出力される。
レプリカ生成部14(回り込み信号抑圧部)は、周波数変換部7により生成された第1下り無線信号を可変増幅器6に負帰還させる。第1下り無線信号は、レプリカ生成部14により、その振幅が後述する回り込み信号の振幅と同じで、且つ、その位相が回り込み信号の逆相に制御され、合成部5へ出力される。これにより、無線中継装置1において発生する回り込み信号を抑圧することができる。また、レプリカ生成部14は、可変増幅器6で増幅された下り無線信号の振幅についての情報を利得制御部15へ通知してもよい。
【0034】
合成部5は、帯域フィルタ4を通過後の下り無線信号と、レプリカ生成部14により生成された第1下り無線信号とを合成する。これにより、例えば、帯域フィルタ4により除去することができない周波数(f+Δf)の回り込み信号を抑圧する(打ち消す)ことができる。
また、利得制御部15は、可変増幅器6で増幅後の下り無線信号のレベルが所定値以上となるように、可変増幅器6の増幅利得を決定する。例えば、利得制御部15は、可変増幅器6で増幅された下り無線信号の振幅についての上記情報に基づき、可変増幅器6の増幅利得を決定することができる。
【0035】
利得検出部16は、利得制御部15により決定された可変増幅器6の増幅利得を検出する。利得検出部16での検出結果は、アンテナ制御部13に通知される。
(1.3)回り込み信号の抑圧方法の一例
無線中継装置1において発生する回り込み信号について説明する。
無線中継装置1の送信アンテナ(第1アンテナ部2または第2アンテナ部9)から放射された電波が、例えば、周辺の建物や山岳などで反射され、あるいは、直接的に、受信アンテナ(第2アンテナ部9または第1アンテナ部2)に回り込むことがある。
【0036】
そして、上記回り込みによる信号(回り込み信号)が一定量を越えると、可変増幅器6において、発振が生じたり、動作が不安定になったりすることがある。
例えば、基地局100から受信アンテナに入力される無線信号(下り無線信号)の周波数及び送信アンテナから出力される無線信号の周波数がともにfである場合、回り込み信号には無線伝播中において位相ずれθが生じるため、周波数(f+θ)の回り込み信号が受信アンテナに入力される。
【0037】
図3は、電波の回り込みを説明するための模式図である。図3では、説明を簡単にするために、第1アンテナ部2が受信アンテナとして機能するとともに、第2アンテナ部9が送信アンテナとして機能している例を用いており、また、無線中継装置1の構成として可変増幅器6のみを図示しているが、その他の構成については説明のため図示を省略したに過ぎず、図3に示す構成に限定する意図はない。
【0038】
このとき、可変増幅器6の増幅利得をG〔dB〕、第1アンテナ部2の受信アンテナ利得をGa1〔dB〕、第2アンテナ部9の送信アンテナ利得をGa2〔dB〕とし、送受アンテナ間の回り込み伝搬損失がL〔dB〕であると仮定すると、次式(1)
【0039】
【数1】

【0040】
が成立する場合、可変増幅器6の一巡ループ利得が1以上(≧0〔dB〕)となるため、発振が起こり、不要波が放射されることがある。
そこで、一般的には、送信アンテナと受信アンテナとの距離を十分離して設置したり、送信アンテナの放射方向と受信アンテナの放射方向とを互いに反対方向に設定したり、各アンテナを異なる高さに設置したりすることで、回り込み信号による影響を低減させる。
【0041】
しかしながら、送受信アンテナ間の回り込みは、無線中継装置1の周囲に存在する電波反射物の状況(周囲状況)に大きく左右される。このため、上記対策のほか、可変増幅器6の増幅利得を制限するなどのさらなる対策が求められる。
一般的には、発振に対するマージンを20〔dB〕程度とることが求められ、例えば、L=80〔dB〕、Ga1=Ga2=10〔dB〕の場合、可変増幅器6の最大増幅利得は、G=40〔dB〕程度に制限される。
【0042】
ただ、増幅利得Gは、親の基地局100と無線中継装置1との間の伝搬損失を補うように設定するのが一般的である。例えば、増幅利得は、無線中継装置1の設置環境や提供する通信サービスエリアに応じて適宜制限される。そのため、回り込み信号の抑圧のために利得制限を行なうことは本来望ましくない。
そこで、図2に例示する無線中継装置1では、レプリカ生成部14によって回り込み信号と等振幅且つ逆位相(あるいは、同位相且つ逆極性)のレプリカ信号を生成し、当該レプリカ信号を可変増幅器6に負帰還させる。これにより、極めて容易に回り込み信号を抑圧することができ、無線中継装置1の増幅利得の上限拡大や、回り込み耐量の増大による無線中継装置1の設置の自由度の向上を図ることが可能となる。
【0043】
具体的には、例えば、無線中継装置1の受信アンテナ2で受信される基地局100からの下り無線信号と回り込み信号とを分離すべく、周波数変換部7により位相変化Δfを与え、受信アンテナ2の受信信号に回り込み信号が混在している場合は、レプリカ生成部14において位相変化成分(回り込み成分)を抽出し、その回り込み成分の大きさ(振幅情報)と位相差(θ)とを検出し、この振幅情報が最小になるようにレプリカ信号の位相と振幅とを制御する。
【0044】
このため、周波数変換部7は、図4に例示するように、位相関数発生器17と、無限移相器18とをそなえる。
ここで、位相関数発生器17は、時間の経過に対し一定の速度で位相変化を与える関数を発生させる。前記関数は、例えば、SIN関数及びCOS関数のうち少なくとも1つを用いて発生されてもよい。
【0045】
このため、位相関数発生器17は、SIN関数を発生させるSIN関数発生器17−1と、COS関数を発生させるCOS関数発生器17−2とをそなえる。
また、無限移相器18は、例えば、下り無線信号と位相関数発生器17の出力とを直行合成する。このため、無限移相器18は、例示的に、リングモジュレータ19及び20と、π/2移相器21と、合成部22とをそなえる。なお、リングモジュレータ19及び20は、互いに直交した位相比較器である。
【0046】
無限移相器18をこのような構成とするのは、下り無線信号の周波数fをΔfだけ大きくして(f+Δf)の信号を得たいが、単純な周波数変換では(f±Δf)の周波数が発生してしまう。また、(f−Δf)の信号が不要であっても、Δfは小さいため、フィルタでは(f−Δf)の信号を除去することができない。そこで、直交合成を行なうこととした。
【0047】
ここで、時間と共に変化するSIN関数及びCOS関数を無限移相器18に与えると、周波数変換部7の入出力間で位相の一次変化が起こる。
図5(A)に、時間の経過と共に位相が一次関数で単調増加する場合の時間−位相変化のグラフを示す。また、図5(B)に、位相平面上の信号軌跡を示す。
図5(A)及び図5(B)に示すように、位相が時間の経過と共に一次関数で変化する場合、次式(2)
【0048】
【数2】

【0049】
で示されるように、受信アンテナ2から入力された下り無線信号が、Δωだけ周波数偏移を受けたものとなる。
このような位相の一次変化がある信号を送信アンテナ9から送信し、送受アンテナ2,9間で発生する回り込み信号を受信アンテナ2で受信すると、位相変化の無い受信信号(下り無線信号)と、回り込みによる位相変化θのある信号(回り込み信号)とが受信される。
【0050】
従って、周波数変換部7の入出力間で相関をとれば、受信信号中の位相変化のある信号が分離され、回り込み信号の位相θや振幅を識別・抽出することができるようになる。
次に、レプリカ生成部14の構成の一例を図6に示す。この図6に示すレプリカ生成部14は、例示的に、相関検出部23と、帰還制御部24と、可変移相器25と、可変減衰器26とをそなえる。
【0051】
相関検出部23は、周波数変換部7の入出力の相関を検出する。相関検出結果は、帰還制御部24へ通信される。
帰還制御部24は、相関検出部23での検出結果に基づき、回り込み信号のレベル(振幅情報)を検出して帰還量を演算する。そして、帰還制御部24は、前記演算した回り込み信号のレベルに基づいて、可変減衰器26を制御する。
【0052】
また、帰還制御部24は、相関検出部23での検出結果に基づき、回り込み信号の位相ずれθを検出する。そして、帰還制御部24は、前記検出した位相情報に基づいて、可変移相器25及び可変減衰器26を制御する。
可変移相器25及び可変減衰器26は、帰還制御部24の制御に従って、周波数変換部7の出力信号を可変的に移相,減衰して、レプリカ信号を生成する。
【0053】
次に、相関検出部23及び帰還制御部24の構成の一例を図7に示す。この図7に示す相関検出部23は、例示的に、位相比較器27及び28と、π/2移相器29とをそなえる。また、図7に示す帰還制御部24は、例示的に、低域通過フィルタ30及び31と、演算器32と、除算器33とをそなえる。
位相比較器27は、周波数変換部7の入出力について、COS関数との位相関係を比較し、また、位相比較器28は、周波数変換部7の入出力について、SIN関数との位相関係を比較する。
【0054】
π/2移相器29は、周波数変換部7の出力について、π/2の位相差を与え、低域通過フィルタ30及び低域通過フィルタ31は、相関検出部23の出力に含まれる、下り無線信号の周波数fの2倍の周波数2fの不要信号を除去する。
これにより、低域通過フィルタ30からは(X/2)COSθが得られるとともに、低域通過フィルタ31からは(X/2)SINθが得られる。なお、X(>0)は回り込み信号の振幅を表す。
【0055】
演算器32は、低域通過フィルタ30から出力される(X/2)COSθの信号と、低域通過フィルタ31から出力される(X/2)SINθの信号とを用いて、
【0056】
【数3】

【0057】
で示される演算処理を行なうことにより、回り込み信号の振幅情報Xを算出する。
また、除算器33は、演算器32により算出された振幅情報Xと、低域通過フィルタ31から出力される(X/2)SINθの信号とを用いて、θを算出することにより、下り無線信号と回り込み信号との位相差についての情報を算出する。
これらの比較出力に基づき、送信アンテナ9から放射される回り込み信号と同振幅X及び同位相のレプリカ信号を負帰還させることにより、回り込み信号を抑圧することが可能となる。
【0058】
なお、上述した方法によっても回り込み信号を抑圧しきれなかった場合は、例えば、無線中継装置1の可変増幅器6の増幅利得を小さくする方向へ制御してもよい。
このとき、増幅利得を小さくし過ぎると、無線中継装置1が提供する通信サービスエリアを不当に狭くしてしまう。そこで、例えば、レプリカ生成部14において得られる回り込み信号の振幅情報をモニタし、利得制御部15によって、摂動法を適用することにより、少しずつ増幅利得を調整してもよい。
【0059】
具体的には例えば、利得制御部15によって可変増幅器6の増幅利得を少しずつ小さくしていきながら、レプリカ生成部14において得られる振幅情報をモニタし、当該モニタ結果が所定の閾値以下になったら、回り込み信号は抑圧されたと判断し、増幅利得をその値で一定に保つことができる。
なお、上記のように決定した可変増幅器6の増幅利得は無線中継装置1内のメモリに保持しておいてもよい。このようにすれば、無線中継装置1の電源などが瞬断し、その後、復旧する場合であっても、メモリに保持された増幅利得を用いて可変増幅器6を制御することができ、サービス開始を迅速に行なうことができる。
【0060】
(1.4)無線中継装置1の制御方法の一例
ここで、無線中継装置1が接続先を他の基地局100へ切り替える方法の一例について説明する。
本例では、無線中継装置1が受信した下り無線信号の入力レベルが第2の閾値以下である場合に、アンテナ制御部13が、親の基地局100が故障中であると判断し、第1アンテナ部2の指向性を制御することにより、無線中継装置1の接続先を切り替える。
【0061】
また、無線中継装置1が受信した下り無線信号の入力レベルが第1の閾値よりも大きい場合に、アンテナ制御部13が、親の基地局100におけるトラフィック負荷が大きいと判断し、第1アンテナ部2の指向性を制御して、無線中継装置1の接続先を切り替えてもよい。
さらに、無線中継装置1が受信した上り無線信号の入力レベルが第3の閾値以下である場合に、アンテナ制御部13が、加入者の数が小さいと判断し、第1アンテナ部2の指向性を制御することにより、無線中継装置1の接続先を切り替えてもよい。
【0062】
以下では、上記制御方法を実現するための入力レベル検出部12,利得検出部15及びアンテナ制御部13の構成及び動作の一例について説明する。
図8は、入力レベル検出部12の構成の一例を示す図である。この図8に示す入力レベル検出部12は、例示的に、検波器36と、積分器37と、比較器38及び39とをそなえる。
【0063】
検波器36は、親の基地局100からの下り入力レベルを検出する。また、検波器36は、端末200からの上り入力レベルを検出してもよい。検波器36で検出された各入力レベルのうち少なくとも1つは、積分器37へ出力される。
積分器37は、検波器36で検出した入力レベルが急激に変化するのを防止する。例えば、積分器37は、入力される信号の電流を蓄積可能なキャパシタなどを有していてもよい。
【0064】
比較器38は、検波器36で検出した下り入力レベルと所定の閾値A1,C1(ただし、A1>C1)とを比較する。また、比較器38は、検波器36で検出した上り入力レベルと所定の閾値B1とを比較してもよい。比較器38での比較結果は、アンテナ制御部13へ出力される。なお、前記所定の閾値A1〜C1は、比較器38内部のメモリに保持されていてもよいし、比較器38外部に設けられたメモリに保持されていてもよい。
【0065】
また、比較器39は、検波器36で検出した下り入力レベルと所定の閾値A2,B2,C2(ただし、A2>B2>C2)とを比較する。比較器39での比較結果は、アンテナ制御部13へ出力される。なお、前記所定の閾値A2〜C2は、比較器39内部のメモリに保持されていてもよいし、比較器39外部に設けられたメモリに保持されていてもよい。
【0066】
ここで、上記比較器38に着目すると、例えば、下り入力レベルが図10(A)に示す閾値A1(第1の閾値)よりも大きい場合、アンテナ制御部13は、接続中の基地局100におけるトラフィック負荷が大きいと判断することができる。
そして、この場合、アンテナ制御部13は、無線中継装置1の接続先を、親の基地局100から他の基地局100へ切り替えるように、第1アンテナ部2の指向性を制御する。なお、他の基地局100としては、例えば、親の基地局100の次に無線中継装置1との距離が小さい基地局(隣接基地局)を選択してもよい。
【0067】
また、それまで接続していた親の基地局100と新たな接続先である他の基地局100とでは、無線中継装置1との距離が変わるため、利得制御部15は、可変増幅器6の増幅利得を変更してもよい。これにより、無線中継装置1が提供する通信サービスエリアに影響を与えることなく、通信サービスを継続することができる。
ところで、上記のように基地局100の切り替え制御が行なわれる場合、無線中継装置1を利用中の端末200の無線通信が瞬断する可能性がある。そこで、アンテナ制御部13は、端末200の数が少ないタイミングで上記切り替え制御を行なうべく、比較器38での上り入力レベルと所定の閾値B1(第3の閾値)との比較結果に基づいて、上記切り替え制御のタイミングを決定してもよい。
【0068】
具体的には例えば、アンテナ制御部13は、上り入力レベルが図10(B)に示す閾値B1よりも大きいタイミングでは、下り入力レベルが図10(A)に示す閾値A1よりも大きい場合であっても上記切り替え制御を実施しない。一方、上り入力レベルが閾値B1以下であるタイミングでアンテナ制御部13は、上記切り替え制御を行なってもよい。上り入力レベルが所定の閾値B1以下である状況では、無線中継装置1を利用している端末200の数(加入者数)は少ないと判断でき、上記切り替え制御に伴う端末200への影響を最小にできるからである。
【0069】
また、下り入力レベルが図10(A)に示す閾値C1(第2の閾値)以下である場合、アンテナ制御部13は、接続中の基地局100におけるトラフィック負荷が小さいので、故障中であると判断することができる。
そして、この場合、アンテナ制御部13は、無線中継装置1の接続先を、親の基地局100から他の基地局100へ切り替えるように、第1アンテナ部2の指向性を制御する。
【0070】
上述のように、下り入力レベルが閾値A1よりも大きい場合は上り入力レベルの値に基づいて上記切り替え制御のタイミングを決定してもよいが、下り入力レベルが閾値C1以下である場合は上記切り替え制御を即実行してもよい。
一方、下り入力レベルが図10(A)に示す閾値C1よりも大きく、且つ、図10(A)に示す閾値A1以下である場合、アンテナ制御部13は、無線中継装置1と、接続中の基地局100とが通常どおり運用されている(通常運用モードである)と判断することができる。従って、この場合は、アンテナ制御部13は、上記切り替え制御を行なわなくてもよい。
【0071】
ここで、図11に、上記切り替え制御の動作一覧表を示す。なお、上記閾値A1〜C1は、例えば、無線中継装置1の管理者などが自由に設定できるようにしてもよい。これにより、上記切り替え制御をより柔軟に実施することが可能となる。
また、アンテナ制御部13は、下り入力レベルの値に応じて、切り替え先の他の基地局100を選択してもよい。
【0072】
上記比較器39に着目すると、例えば、アンテナ制御部13は、下り入力レベルと図12に示す閾値A2〜C2との比較結果に基づいて、親の基地局100におけるトラフィック負荷の大小を判断することができる。
これにより、アンテナ制御部13は、例えば、上記切り替え先の他の基地局100を、複数の基地局100のうち、最もトラフィック負荷の小さい基地局100に決定することができる。なお、上記閾値A2〜C2は、例えば、無線中継装置1の管理者などが自由に設定できるようにしてもよい。これにより、上記切り替え制御をより柔軟に実施することが可能となる。また、無線中継装置1は、第1アンテナ部2の指向性を掃引制御することにより、複数の基地局100からの下り入力レベルを収集することができる。さらに、無線中継装置1と各基地局100との間の距離については、例えば、無線中継装置1の管理者などにより予め設定されてもよいし、各下り入力レベルや、各下り無線信号の伝搬遅延などに基づいて、測定するようにしてもよい。
【0073】
また、アンテナ制御部13は、無線中継装置1と親の基地局100との間の距離に基づいて、切り替え先の他の基地局100を選択してもよい。さらに、アンテナ制御部13は、無線中継装置1と親の基地局100との間の距離及び無線中継装置1と他の基地局100との間の距離に基づいて、切り替え先の他の基地局100を選択してもよい。
図13に、切り替え先の選択方法の一例を示す。この図13に示す例では、親の基地局100−1と接続中の無線中継装置1が、複数の基地局100−2〜100−5のうちから切り替え先の他の基地局100を選択する。図13に示す例では、無線中継装置1と基地局100−1との距離が最も小さく、基地局100−2,100−3,100−4,100−5の順で無線中継装置1との距離が大きくなっている。また、各基地局100からの受信レベルは、基地局100−1からの下り入力レベルが最も大きく、基地局100−3,100−5の順で下り入力レベルが小さくなっており、基地局100−2及び100−4からの下り入力レベルが最も小さい。
【0074】
上記のような状況において、アンテナ制御部13は、各基地局100−1〜100−5からの下り入力レベルが小さい順で、上記切り替え先についての優先順位を決定することにより、トラフィック負荷が比較的小さい基地局100に切り替えることができる。
従って、図13に示す例では、アンテナ制御部13は、基地局100−4,100−2,100−5,100−3,100−1の順で、基地局100−1〜100−5に優先順位を付して、当該優先順位が高い基地局100−4を上記切り替え先として選択することができる。
【0075】
これにより、基地局100のトラフィック負荷を分散することが可能となる。なお、複数の基地局100からの下り入力レベルが同じ場合、アンテナ制御部13は、無線中継装置1との距離が大きい(あるいは小さい)基地局100を選択するようにしてもよい。
また、アンテナ制御部13は、可変増幅器6に設定される増幅利得に基づいて、上記切り替え先の基地局100を選択してもよい。
【0076】
また、可変増幅器6の増幅利得が小さい場合には、親の基地局100からの下り無線信号の到来方向と回り込み信号の到来方向とが一致していると判断し、無線中継装置1の接続先を他の基地局100に切り替えるようにしてもよい。
ここで、利得検出部16の構成の一例を図9に示す。この図9に示す利得検出部16は、例示的に、検波器40と、積分器41と、比較器42とをそなえる。
【0077】
検波器40は、利得制御部15において決定される可変増幅器6の増幅利得を検出する。検出された増幅利得は積分器41へ出力される。
積分器41は、検波器40で検出した入力レベルが急激に変化するのを防止する。例えば、積分器41は、入力される信号の電流を蓄積可能なキャパシタなどを有していてもよい。
【0078】
比較器42は、検波器40で検出した増幅利得と所定の閾値A3,B3(ただし、A3>B3、図14参照)とを比較する。比較器42での比較結果は、アンテナ制御部13へ出力される。なお、前記所定の閾値A3及びB3は、比較器42内部のメモリに保持されていてもよいし、比較器42外部に設けられたメモリに保持されていてもよい。
ここで、比較器42に着目すると、例えば、アンテナ制御部13は、利得検出部16で検出した増幅利得に基づいて、無線中継装置1と各基地局100との間の距離の大小を判断することができる。
【0079】
これにより、アンテナ制御部13は、例えば、上記切り替え先の他の基地局100を、複数の基地局100のうち、無線中継装置1から最も遠い基地局100に決定することができる。
例えば、増幅利得が図14に示す閾値A3よりも大きい場合、アンテナ制御部13は、無線中継装置1と親の基地局100との間の距離が大きいと判断することができる。
【0080】
この場合、アンテナ制御部13は、無線中継装置1の接続先を、無線中継装置1との距離が小さい他の基地局100へ切り替えるように、第1アンテナ部2の指向性を制御する。なお、他の基地局100としては、例えば、親の基地局100の次に無線中継装置1との距離が小さい基地局(隣接基地局)を選択してもよい。
また、それまで接続していた親の基地局100と新たな接続先である他の基地局100とでは、無線中継装置1との距離が変わるため、利得制御部15は、可変増幅器6の増幅利得を設定しなおしてもよい。これにより、無線中継装置1が提供する通信サービスエリアに影響を与えることなく、通信サービスを継続することができる。
【0081】
さらに、増幅利得が図14に示す閾値A3以下であり、且つ、増幅利得が図14に示す閾値B3よりも大きい場合、アンテナ制御部13は、無線中継装置1と親の基地局100との間の距離が小さいと判断することができる。
この場合、アンテナ制御部13は、無線中継装置1の接続先を、無線中継装置1との距離が大きい他の基地局100へ切り替えるように、第1アンテナ部2の指向性を制御する。なお、他の基地局100としては、例えば、親の基地局100の次に無線中継装置1との距離が大きい基地局(隣接基地局)を選択してもよい。
【0082】
即ち、アンテナ制御部13は、増幅利得が大きいほど無線中継装置1との距離が小さい基地局100を切り替え先の他の基地局100として選択する。一方、増幅利得が小さいほど無線中継装置1との距離が大きい基地局100を切り替え先の他の基地局100として選択することができる。
さらに、増幅利得が図14に示す閾値B3以下である場合、アンテナ制御部13は、親の基地局100からの下り無線信号の電波到来方向と、無線中継装置1における回り込み信号の電波到来方向とが一致していると判断することができる。
【0083】
この場合、アンテナ制御部13は、無線中継装置1の接続先を、特に指定しない他の基地局100へ切り替えるように、第1アンテナ部2の指向性を制御する。
これにより、親の基地局100に複数の無線中継装置1が接続している場合であっても、全ての無線中継装置1が同一の基地局100に接続先を切り替えるのではなく、親の基地局100と近い位置にいる無線中継装置1は、遠い位置の他の基地局100に接続先を切り替える一方、親の基地局100と遠い位置にいる無線中継装置1は、近くの他の基地局100に接続先を切り替えることができる。その結果、トラフィック負荷を分散することができる。
【0084】
ここで、図15に、上記切り替え制御の動作一覧表を示す。なお、上記閾値A3及びB3は、無線中継装置1の管理者などが自由に設定できるようにしてもよい。これにより、例えば、閾値A3及びB3を、同一基地局100の通信サービスエリア内に存在する複数の無線中継装置1の分布状態に応じて設定すれば、上記切り替え制御をより柔軟に実施することが可能となる。
【0085】
以上のように、本例の無線中継装置1は、接続先の基地局100を変更することができる。
〔2〕第1変形例
また、第1アンテナ部2が複数のアンテナを有する場合、アンテナ制御部13が、各アンテナの位相を制御することにより、第1アンテナ部2のアンテナ指向性を制御してもよい。例えば、第1アンテナ部2が複数のアンテナを有するアダプティブアレイアンテナとして構成される場合、アンテナ制御部13は、各アンテナについてのアンテナウェイト(または、重み付け係数とも称する。以下、単にウェイトともいう)をそれぞれ制御することにより、第1アンテナ部2のアンテナ指向性を制御することができる。
【0086】
そこで、本例では、第1アンテナ部2が複数のアンテナを有するアダプティブアレイアンテナとして構成される例について説明する。
図16に本例の無線中継装置1Bの構成の一例を示す。この図16に示す無線中継装置1Bは、例示的に、複数のアンテナ2B−1,2B−2,・・・,2B−n(nは2以上の整数、以下同じ)からなる第1アンテナ部2Bと、アダプティブアレイアンテナ制御部34と、合成部5Bとをそなえる。また、無線中継装置1Bは、例示的に、可変増幅器6Bと、周波数変換部7Bと、第2アンテナ部9Bと、入力レベル検出部12Bと、レプリカ生成部14Bと、利得制御部15Bと、利得検出部16Bと、ウェイト制御部35とをそなえる。
【0087】
なお、合成部5B,可変増幅器6B,周波数変換部7B,第2アンテナ部9B,入力レベル検出部12B,レプリカ生成部14B,利得制御部15B及び利得検出部16Bは、既述の合成部5,可変増幅器6,周波数変換部7,第2アンテナ部9,入力レベル検出部12,レプリカ生成部14,利得制御部15及び利得検出部16とそれぞれ同様の機能を有する。
【0088】
また、説明を簡単にするために、アンテナ共用器3,帯域フィルタ4,アンテナ共用器8,帯域フィルタ10及び可変増幅器11に対応する構成については図示を省略しているが、無線中継装置1Bは、これらと同様の機能を有する各構成を有する。
ここで、第1アンテナ部2Bは、複数のアンテナ2B−1,2B−2,・・・,2B−nを平面状に配列した構成を有するアダプティブアレイアンテナとして構成される。第1アンテナ部2Bは、例えば、各アンテナ2B−1,2B−2,・・・,2B−nについてのウェイトを制御されることにより、アンテナ指向性を変更できるようになっている。
【0089】
アダプティブアレイアンテナ制御部34は、第1アンテナ部2Bの各アンテナ2B−1,2B−2,・・・,2B−nについてのウェイトと、各アンテナ2B−1,2B−2,・・・,2B−nで受信した無線信号とをそれぞれ乗算し、複数の乗算結果を加算することにより、基地局100からの下り無線信号を再生する。
ウェイト制御部35(アンテナ制御部)は、第1アンテナ部2Bの各アンテナ2B−1,2B−2,・・・,2B−nについてのウェイトをそれぞれ制御することにより、アンテナ指向性を制御する。
【0090】
例えば、ウェイト制御部35は、既述の制御方法を用いて、第1アンテナ部2Bの指向性を制御することにより、接続先を親の基地局100から他の基地局100へ切り替えることができる。
また、例えば、ウェイト制御部35は、無線中継装置1において発生する回り込み信号の到来方向に、第1アンテナ部2Bの指向性におけるヌル点を配置すべく、各アンテナ2B−1,2B−2,・・・,2B−nについてのウェイトを制御してもよい。
【0091】
図17にウェイト制御部35の構成の一例を示す。この図17に示すように、ウェイト制御部35は、例示的に、ビームパターン保持部43と、主ビーム方向制御部44と、ヌル点制御部45と、試験モードスイッチ(試験モードSW)46とをそなえる。
ビームパターン保持部43は、第1アンテナ部2Bが有するアンテナ指向性について、最も指向性が大きい方向(主ビーム方向)と、最も指向性が小さい方向(ヌル点)との組み合わせからなる複数のアンテナビームパターンを保持する。具体的には例えば、各アンテナビームパターンに対応する各ウェイトの組み合わせを保持することができ、一例としてメモリを用いることができる。
【0092】
ここで、アンテナビームパターンの一例を、図18〜図21に示す。
例えば、図18に示す例は、主ビーム方向が水平方向0度であり、ヌル点の方向が水平方向−80度から80度まで10度ずつ異なる16種類のアンテナビームパターン番号101〜116のアンテナビームパターンである。なお、図18に示すアンテナビームパターンでは、0度方向が主ビーム方向であるので、0度方向にはヌル点がない。また、主ビーム方向に位置する基地局100と無線中継装置1との間の距離に応じて可変増幅器6に設定すべき増幅利得(図18の例では、34dB)が保持されていてもよい。
【0093】
また、図19に示す例は、主ビーム方向が水平方向−50度であり、ヌル点の方向が水平方向−80度から80度まで10度ずつ異なる16種類のアンテナビームパターン番号201〜216のアンテナビームパターンである。なお、図19に示すアンテナビームパターンでは、−50度方向が主ビーム方向であるので、−50度方向にはヌル点がない。また、主ビーム方向に位置する基地局100と無線中継装置1との間の距離に応じて可変増幅器6に設定すべき増幅利得(図19の例では、40dB)が保持されていてもよい。
【0094】
さらに、図20に示す例は、主ビーム方向が水平方向50度であり、ヌル点の方向が水平方向−80度から80度まで10度ずつ異なる16種類のアンテナビームパターン番号301〜316のアンテナビームパターンである。なお、図20に示すアンテナビームパターンでは、50度方向が主ビーム方向であるので、50度方向にはヌル点がない。また、主ビーム方向に位置する基地局100と無線中継装置1との間の距離に応じて可変増幅器6に設定すべき増幅利得(図20の例では、40dB)が保持されていてもよい。
【0095】
また、図21に示す例は、主ビーム方向が水平方向20度であり、ヌル点の方向が水平方向−80度から80度まで10度ずつ異なる16種類のアンテナビームパターン番号401〜416のアンテナビームパターンである。なお、図21に示すアンテナビームパターンでは、20度方向が主ビーム方向であるので、20度方向にはヌル点がない。また、主ビーム方向に位置する基地局100と無線中継装置1との間の距離に応じて可変増幅器6に設定すべき増幅利得(図21の例では、43dB)が保持されていてもよい。
【0096】
なお、図18〜図21に示す例はアンテナビームパターンの一例に過ぎず、ビームパターン保持部43は、さらなるバリエーションのアンテナビームパターンを有していてもよい。
主ビーム方向制御部44は、入力レベル検出部12Bで検出した下り入力レベル及び上り入力レベル、並びに、利得検出部16Bで検出した増幅利得などに基づき、第1アンテナ部2Bが有する各アンテナについてのウェイトをそれぞれ制御する。これにより、主ビーム方向制御部44は、第1アンテナ部2Bの主ビーム方向を制御することができる。
【0097】
具体的には例えば、主ビーム方向制御部44は、下り入力レベル,上り入力レベル及び増幅利得のうち少なくとも1つが所定の条件を満たすかどうかを判定し、所定の条件を満たすと判定した場合は、無線中継装置1の接続先を親の基地局100から他の基地局100へ切り替えるように、各ウェイトを制御する。即ち、主ビーム方向制御部44は、第1アンテナ部2Bの主ビーム方向を、親の基地局100が位置する方向から他の基地局100が位置する方向へと切り替える。
【0098】
また、主ビーム方向制御部44は、ビームパターン保持部43に保持されるアンテナビームパターンに基づいて、第1アンテナ部2Bの指向性を制御してもよい。
ヌル点制御部45は、レプリカ生成部14Bで検出した回り込み信号の振幅情報Xに基づき、第1アンテナ部2Bが有する各アンテナ2B−1,2B−2,・・・,2B−nについてのウェイトをそれぞれ制御する。これにより、ヌル点制御部45は、第1アンテナ部2Bの指向性におけるヌル点を制御することができる。
【0099】
具体的には例えば、ヌル点制御部45は、第1アンテナ部2Bのヌル点を順次切り替えていきながら、回り込み信号の振幅情報Xをモニタし、当該モニタ結果に基づき、振幅情報Xを最小にするヌル点配置となるように各ウェイトを制御する。
また、ヌル点制御部45は、ビームパターン保持部43に保持されるアンテナビームパターンに基づいて、第1アンテナ部2Bの指向性を制御してもよい。
【0100】
例えば、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値よりも小さければ、回り込み信号が無い状態になっていると判断でき、後は、接続中の親の基地局100の状態が、過負荷状態または故障中かを判断する。そして、親の基地局100の状態が、過負荷状態または故障中でないと判断した場合は、第1アンテナ部2Bの主ビーム方向はそのままとする。一方、親の基地局100の状態が、過負荷状態または故障中であると判断した場合は、他の基地局100が位置する方向に主ビーム方向を変更することにより、接続先を切り替える。
【0101】
次に、例えば、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値以上であれば、回り込み信号があると判断できる。この場合は、アンテナビームパターンのヌル点方向と回り込み信号の到来方向とが一致していないので、アンテナビームパターンのヌル点方向を順次変更しながら、ヌル点方向と回り込み信号の到来方向とを一致させる。また、ヌル点方向を調整後であるにもかかわらず、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値よりも小さくない場合は、振幅情報Xが所定の基準値よりも小さくなるかどうかをモニタしながら、可変増幅器6の利得を小さくしていってもよい。
【0102】
試験モードSW46は、ウェイト制御部35の動作を試験モードへ移行するためのスイッチである。試験モードSW46がオンされることにより、ウェイト制御部35は、主ビーム方向及びヌル点配置を探索する試験モードへ動作を移行する。
試験モードでは、例えば、主ビーム方法及びヌル点配置を、図22に例示するような所定の初期状態へ制御する。この図22に示す例では、主ビーム方向が水平方向0度(deg)の方向であり、ヌル点方向が水平方向40度及び−50度の方向である。また、主ビーム方向におけるアンテナ利得は0dBであり、ヌル点方向におけるアンテナ利得は−20dBとなっている。なお、0度の方向は、例えば、親の基地局100が位置する方向とすることができる。
【0103】
試験モードでは、回り込み信号の到来方向とヌル点方向とが一致しているかを確認すべく、上記初期状態から、主ビーム方向は変更せずに、ヌル点方向を変更しながら、その都度、回り込み信号の振幅をモニタする。
例えば、図18〜図21に示すアンテナビームパターンに対応するウェイトを予めビームパターン保持部43に保持しておき、図18〜図21のいずれかに示すアンテナビームパターンを所定の時間間隔で順次変更しながら、各アンテナビームパターンにおける回り込み信号の振幅をモニタする。
【0104】
そして、ウェイト制御部35が、上記モニタ結果に基づき、回り込み信号の振幅が最小となるアンテナビームパターンに対応するウェイトを第1アンテナ部2Bに設定することにより、回り込み信号を抑圧することができる。なお、回り込み信号の振幅については、例えば、レプリカ生成部14Bによって検出することができる。
ここで、図23を用いて上記制御方法の一例を説明する。
【0105】
まず、図23に示すように、アンテナ制御部35が、第1アンテナ部2Bの主ビーム方向を親の基地局100の方向へ向ける(ステップS1)。主ビーム方向の制御は、例えば、各アンテナについてのウェイトを制御することで実現できる。
次に、試験モードSW46によって、ウェイト制御部35の動作が試験モードへ移行されると、ヌル点制御部45によって、第1アンテナ部2Bのヌル点方向を所定の初期状態に制御する(ステップS2)。ここで、所定の初期状態としては、例えば、図22に示すアンテナビームパターンなどを選択することができる。
【0106】
そして、ウェイト制御部35が、レプリカ生成部14Bによって検出される回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値よりも大きいかどうかを判定する(ステップS3)。
ここで、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値よりも小さいと判定された場合は(ステップS3のYesルート)、ウェイト制御部35は、回り込み信号を十分抑圧できていると判断することができる。
【0107】
次に、ウェイト制御部35は、入力レベル検出部12Bで検出した下り入力レベルが所定の閾値C1よりも大きく、且つ、所定の閾値A1以下かどうかを判定することにより、親の基地局100が故障中あるいは過負荷かどうかを判断する(ステップS4)。
ここで、入力レベル検出部12Bで検出した下り入力レベルが所定の閾値C1よりも大きく、且つ、所定の閾値A1以下であると判定された場合は(ステップS4のYesルート)、処理を終了する(ステップS5)。無線中継装置1と親の基地局100との間の無線通信は正常であり、接続先の切り替え制御を行なわなくてもよいからである。
【0108】
また、入力レベル検出部12Bで検出した下り入力レベルが所定の閾値C1以下であるか、所定の閾値A1よりも大きいと判定された場合は(ステップS4のNoルート)、ウェイト制御部35は、第1アンテナ部2Bの主ビーム方向を変更する(ステップS6)。主ビーム方向が変更されることにより、無線中継装置1の接続先が、親の基地局100から他の基地局100へ切り替わる。
【0109】
このとき、無線中継装置1と親の基地局100との間の距離と、無線中継装置1と他の基地局100との間の距離とが異なる場合は、利得制御部15Bが、可変増幅器6Bの増幅利得を変更する制御を行なってもよい(ステップS7)。無線中継装置1と基地局100との間の距離が変われば、下り入力レベルも変わることが多いからである。即ち、可変増幅器6の増幅利得は、例えば、増幅後の下り入力レベルが所定のレベル以上となるように設定され得る。
【0110】
そして、ウェイト制御部35は、他の基地局100からの下り入力レベルが所定の閾値C1よりも大きく、且つ、所定の閾値A1以下かどうかを判定することにより、他の基地局100が故障中あるいは過負荷かどうかを判断する(ステップS8)。
ここで、他の基地局100からの下り入力レベルが所定の閾値C1よりも大きく、且つ、所定の閾値A1以下であると判定された場合は(ステップS8のYesルート)、処理をステップS3へ移行する。
【0111】
また、他の基地局100からの下り入力レベルが所定の閾値C1以下であるか、所定の閾値A1よりも大きいと判定された場合は(ステップS8のNoルート)、処理をステップS6へ移行し、さらに別の基地局100へと接続先を切り替えていく。
一方、ステップS3において、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値以上であると判定された場合は(ステップS3のNoルート)、ウェイト制御部35は、回り込み信号を十分抑圧できていないと判断することができる。
【0112】
この場合、ウェイト制御部35は、第1アンテナ部2Bの主ビーム方向は変えずに、ヌル点方向を変更するように、アンテナビームパターンを切り替える(ステップS9)。例えば、図18〜図21のいずれかに示すアンテナビームパターンのセットにおいて、アンテナビームパターンが切り替えられる。
そして、ウェイト制御部35は、ヌル点方向の変更後に、回り込み信号の振幅情報Xをモニタする(ステップS10)。
【0113】
ここで、ウェイト制御部35は、ビームパターン保持部43に保持されている全てのヌル点方向について、回り込み信号の振幅情報Xをモニタしたかどうかを判定する(ステップS11)。
全てのヌル点方向について振幅情報Xをモニタ済みでないと判定した場合(ステップS11のNoルート)、ウェイト制御部35は、処理をステップS9へ移行し、ヌル点方向を再度変更して、回り込み信号の振幅情報の変化をモニタする。
【0114】
一方、全てのヌル点方向について振幅情報Xをモニタ済みであると判定した場合(ステップS11のYesルート)、ウェイト制御部35は、モニタ結果に基づき、回り込み信号の振幅情報Xが最小となるヌル点方向を決定する。そして、ウェイト制御部35は、前記決定したヌル点方向に対応するウェイトを第1アンテナ部2Bに設定する(ステップS12)。
【0115】
そして、ウェイト制御部35は、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値よりも大きいかどうかを判定する(ステップS13)。
ここで、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値よりも小さいと判定された場合は(ステップS13のYesルート)、ウェイト制御部35は、回り込み信号を十分抑圧できていると判断して処理を終了する(ステップS14)。
【0116】
一方、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値以上であると判定された場合は(ステップS13のNoルート)、ウェイト制御部35は、回り込み信号を十分抑圧できていないと判断し、可変増幅器6Bの増幅利得を徐々に小さくするように利得制御部15Bを制御する(ステップS15)。
そして、ウェイト制御部35は、可変増幅器6Bの増幅利得を小さく変更する度に、回り込み信号の振幅情報Xをモニタし(ステップS16)、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値よりも大きいかどうかを判定する(ステップS17)。
【0117】
ここで、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値よりも小さいと判定された場合は(ステップS17のYesルート)、ウェイト制御部35は、回り込み信号を十分抑圧できていると判断して処理を終了する(ステップS18)。
一方、回り込み信号の振幅情報Xが所定の基準値以上であると判定された場合は(ステップS17のNoルート)、ウェイト制御部35は、入力レベル検出部12Bで検出した下り入力レベルが所定の閾値C1よりも大きく、且つ、所定の閾値A1以下かどうかを判定する(ステップS19)。
【0118】
ここで、入力レベル検出部12Bで検出した下り入力レベルが所定の閾値C1よりも大きく、且つ、所定の閾値A1以下であると判定された場合は(ステップS19のYesルート)、処理をステップS15へ移行し、可変増幅器6Bの増幅利得をさらに小さく制御する。
また、入力レベル検出部12Bで検出した下り入力レベルが所定の閾値C1以下であるか、所定の閾値A1よりも大きいと判定された場合は(ステップS19のNoルート)、ウェイト制御部35は、処理をステップS6へ移行し、第1アンテナ部2Bの主ビーム方向を変更する。
【0119】
上記本例の制御方法によれば、無線中継装置1の接続先を柔軟に切り替えることが可能となる。
また、回り込み信号を効果的に抑圧することが可能となる。
なお、上記試験モードは、例えば、無線中継装置1Bを介して無線通信を行なっている端末(加入者)200が少ない場合に行なうことが望ましい。試験モード中では、無線通信を正常に行なうことができない場合があるからである。
【0120】
無線通信中の端末200数については、例えば、上り入力レベルと所定の閾値とを比較することにより判断することができる。あるいは、無線中継装置1Bに時計を設け、夜中とか明け方などの時間は、無線中継装置1配下の加入者が少ないと判断してもよい。さらに、各判断結果を組み合わせて判断してもよい。
また、無線中継装置1の電源などの瞬断後、電源が復旧する場合に、瞬断時のアンテナビームパターンなどの設定値をメモリなどに記憶しておくことにより、復旧時にはその値が自動的にプリセットされ、サービス開始を迅速に行なうことができる。
【0121】
さらに、可変増幅器6Bの増幅利得を変更する方法として、例えば、アダプティブアレイアンテナとして構成された第1アンテナ部2Bにおいて、有効なアンテナ数を変更する方法を用いてもよい。
ここで、図24に、無線中継装置1Bと複数の基地局100−1〜100−5との位置関係の一例を示す。この図24に示す例では、各基地局100を黒丸で表すとともに、無線中継装置1Bを白丸で表している。また、各基地局100のカバレッジ(通信サービスエリア)を六角形形状の複数のセクタ1〜19で示している。
【0122】
図24に示す例では、例えば、各基地局100の通信サービスエリアを、自局100の属するセクタと、その周辺の6つのセクタとを合わせた領域としている。つまり、基地局100−1〜100−5の各通信サービスエリアは、セクタ1〜7、セクタ1〜3及び7〜10、セクタ1〜4及び10〜12、セクタ1,3〜5及び12〜14、並びに、セクタ1,4〜6及び14〜16にそれぞれ対応している。なお、図24に示すセクタ構成はあくまで一例であり、これ以外のセクタ構成を除外する意図はない。
【0123】
この図24に示す例において、例えば、無線中継装置1Bと親の基地局100−1との間の距離をR(>0)とすると、無線中継装置1Bと他の基地局100−2との間の距離及び無線中継装置1Bと他の基地局100−5との間の距離は約2Rとなる。また、無線中継装置1Bと他の基地局100−3との間の距離及び無線中継装置1Bと他の基地局100−4との間の距離は約√7R(≒2.6R)となる。
【0124】
そこで、無線中継装置1Bは、例えば、接続先を親の基地局100−1から他の基地局100−2あるいは他の基地局100−5へ切り替える場合、可変増幅器6Bの増幅利得を6dB(≒20log2)増加させてもよい。
また、無線中継装置1Bは、例えば、接続先を親の基地局100−1から他の基地局100−3あるいは他の基地局100−4へ切り替えた場合、可変増幅器6Bの増幅利得を8.3dB(≒20log(2.6))増加させてもよい。
【0125】
従って、無線中継装置1Bからの距離が比較的大きい他の基地局100−3及び100−4のいずれかと接続する際には、ウェイト制御部35が、第1アンテナ部2Bの複数のアンテナを全て有効にしてもよい。
一方、無線中継装置1Bからの距離が最も比較的小さい他の基地局100−2及び100−5のいずれかと接続する際には、ウェイト制御部35が、第1アンテナ部2Bの複数のアンテナの一部を有効にするとともに、残りを無効にしてもよい。なお、アンテナを有効にするとは、アンテナについてのウェイトを0以外の値にすることをいい、アンテナを無効にするとは、アンテナについてのウェイトを0にすることをいう。
【0126】
このように、ウェイト制御部35は、第1アンテナ部2Bの各アンテナについてのウェイトを有効または無効に制御することにより、無線中継装置1Bの増幅利得を変更することができるので、接続先を切り替える際にも無線通信を安定化させることができる。
〔3〕第2変形例
また、図25に更なる変形例を例示する。この図25は、アダプティブアレイアンテナ制御部34C,入力レベル検出部12C及びウェイト制御部35Cの一例を説明するための図である。なお、図25中、符号(i)〜符号(vi)は、図26の符号(i)〜符号(vi)とそれぞれ接続されている。
【0127】
ここで、アダプティブアレイアンテナ制御部34Cは、例示的に、複数の帯域フィルタ47−1〜47−nと、複数の乗算器48−1〜48〜nと、加算器49とをそなえる。
また、入力レベル検出部12Cは、例示的に、検波器50と、積分器51と、比較器52,53と、OR回路54とをそなえる。
さらに、ウェイト制御部35Cは、例示的に、制御部55と、セレクタ56と、反転回路57と、比較器58と、クロック(CLK)発生部59と、試験モードSW60と、分周回路61と、AND回路62と、OR回路63と、主ビーム方向制御部64と、分周回路65と、カウンタ66とをそなえる。
【0128】
複数の帯域フィルタ47−1〜47−nは、複数のアンテナ2C−1〜2C−nの各入力端において、不要波を除去する。不要波を除去された各入力(下り無線信号)は、複数の乗算器48−1〜48〜nへそれぞれ出力される。
複数の乗算器48−1〜48〜nは、制御部55からのウェイトと各帯域フィルタ47−1〜47−nを通過した下り無線信号とを乗算する。各乗算結果は、加算器49へ出力される。
【0129】
加算器49は、複数の乗算器48−1〜48〜nにおける各乗算結果を加算する。加算器49での加算結果は、下り無線信号として、端末200などへ中継される。
検波器50は、下り入力レベルを検出し、積分器51は、下り入力レベルの急変を防止する。
比較器52は、下り入力レベルと所定の閾値A1とを比較する。比較器52により、下り入力レベルが所定の閾値A1より大きいと判定された場合、接続中の基地局100が、過負荷状態であると推測できる。また、比較器52は、下り入力レベルが所定の閾値A1より大きいと判定した場合に「1」をOR回路54に出力する一方、それ以外の場合は「0」をOR回路54に出力する。
【0130】
比較器53は、下り入力レベルと所定の閾値C1とを比較する。比較器53により、下り入力レベルが所定の閾値C1以下であると判定された場合、接続中の基地局100が、故障していると推測できる。また、比較器53は、下り入力レベルが所定の閾値C1以下であると判定した場合に「1」をOR回路54に出力する一方、それ以外の場合は「0」をOR回路54に出力する。
【0131】
OR回路54は、比較器52からの出力と、比較器53からの出力とをOR演算する。OR回路54での演算結果は、AND回路62へ出力される。
制御部55は、各アンテナ2C−1〜2C−nに対して、ウェイトを設定する。
セレクタ56は、試験モードにおいては、複数のアンテナビームパターンを順次設定していくが、全てのアンテナビームパターンを設定し終えたら、回り込み信号の振幅情報Xが最も小さいアンテナビームパターンを選択する。なお、セレクタ56に入力される符号(i)で示す信号は、回り込み信号の振幅情報Xが最小となるアンテナビームパターンを示す信号である。
【0132】
反転回路57は、回り込み信号の振幅情報Xを反転する。つまり、回り込み信号の位相を逆位相にする。
比較器58は、上り入力レベルと所定の閾値B1とを比較する。比較器58により、上り入力レベルが所定の閾値B1以下であると判定された場合、接続中の基地局100と通信中の端末200の数が比較的少ないと推測できる。また、比較器58は、上り入力レベルが所定の閾値B1以下であると判定した場合に「1」をAND回路62に出力する一方、それ以外の場合は「0」をAND回路62に出力する。
【0133】
CLK発生部59は、アンテナビームパターンの主ビーム方向を制御するクロックを生成する。当該クロック信号は、回り込み信号の到来方向を検出する制御のクロック周期の1/16(あるいは1/256)としてもよい。
試験モードSW60は、ウェイト制御部35Cの動作を試験モードへ移行するためのスイッチである。試験モードSW60がオンされることにより、ウェイト制御部35Cは、主ビーム方向及びヌル点配置を探索する試験モードへ動作を移行する。なお、試験モードは、無線中継装置1Cを設置する場合や、試験を行なうなどの場合にオンされる一方、それ以外の場合はオフされてもよい。また、試験モードSW60は、オンの場合は「1」を出力する一方、オフの場合は「0」を出力する。
【0134】
分周回路61は、CLK発生部59により生成されたクロック信号の周期を16分周(あるいは256分周)する。なお、符号(ii)で示すように、分周回路61から出力されるクロック信号は、主ビーム方向制御のためのクロック信号としてもよい。
AND回路62は、OR回路54からの出力と、反転回路57からの出力と、比較器58からの出力とについて、AND演算を行なう。AND回路62での演算結果は、OR回路63へ出力される。
【0135】
OR回路63は、AND回路62からの出力と、試験モードSW60からの出力とについて、OR演算を行なう。OR回路63での演算結果は、カウンタ66へ出力される。
主ビーム方向制御部64は、無線中継装置1Cの接続先を親の基地局100から他の基地局100へ切り替える。なお、無線中継装置1Cの接続先が、親の基地局100から他の基地局100へ切り替えられており、さらに接続先の切り替えを行なう場合には、一旦、切り替え前の基地局(例えば、上記親の基地局100)に接続先を切り替えてよい。また、符号(iv)で示す信号は、主ビーム方向を変更する制御を行なっている状態であること示す信号である。さらに、符号(vi)で示す信号は、主ビーム方向を示す2ビットのアドレス信号である。
【0136】
ここで、図27に、主ビーム方向を示す2ビットの第1のアドレス信号の一例を示す。この図27に示すように、第1のアドレス信号の値と主ビーム方向とが対応付けられており、例えば、第1のアドレス信号の値が「00」であれば、主ビーム方向は水平方向0度の方向に制御される。また、第1のアドレス信号の値が「01」であれば、主ビーム方向は水平方向−50度の方向に制御され、第1のアドレス信号の値が「10」であれば、主ビーム方向は水平方向50度の方向に制御され、第1のアドレス信号の値が「11」であれば、主ビーム方向は水平方向20度の方向に制御される。
【0137】
また、図27に示すように、例えば、第1のアドレス信号の値が「00」であれば、アンテナパターン番号は「1**」であり、第1のアドレス信号の値が「01」であれば、アンテナパターン番号は「2**」であり、第1のアドレス信号の値が「10」であれば、アンテナパターン番号は「3**」であり、第1のアドレス信号の値が「11」であれば、アンテナパターン番号は「4**」である。なお、「**」には、第2のアドレス信号により指定される任意の数字が入る。
【0138】
分周回路65は、分周回路61での出力をさらにN分周する。分周回路65から出力されるクロック信号は、例えば、可変増幅器6Cの利得制御の際のクロック信号であってもよい。
また、カウンタ66は、複数のアンテナビームパターンを作るためのアドレスを出力する。例えば、アンテナビームパターンの種類が16種類であれば、アドレスは4ビットとなるので、カウンタ66は16ビットカウンタとして構成される。なお、無線中継装置1Cが送受信系を有する場合、アンテナビームパターンは、256種類となるので、カウンタ66は8ビットカウンタとして構成される。また、符号(v)に示すように、カウンタ66には、アンテナビームパターンのパターン番号を示す第2のアドレス信号(4ビットあるいは8ビット)である。
【0139】
ここで、図28に、第2のアドレス信号の一例を示す。この図28に示すように、第2のアドレス信号の値とアンテナビームパターンのパターン番号とが対応付けられており、例えば、第2のアドレス信号の値「0000」〜「1111」には、アンテナパターン番号「*01」〜「*16」がそれぞれ対応付けられている。なお、「*」には、第1のアドレス信号により指定される任意の数字が入る。図28では、第2のアドレス信号が4ビットの例について説明したが、第2のアドレス信号が8ビットの場合であっても、同様に、第2のアドレス信号の値と各アンテナパターン番号とが対応付けられる。
【0140】
ここで、図26に利得制御部15Cの一例を示す。この図26に示す利得制御部15Cは、例示的に、メモリ67,69,72,75と、最小値探索部68と、反転回路70,71と、比較器73と、ダウンカウンタ74と、レベル変換部76とをそなえる。
メモリ67は、例えば、図18〜図21に例示するような複数のアンテナビームパターンを保持する。また、メモリ67は、回り込み信号の振幅情報Xの状態(例えば、振幅情報Xが所定の基準値よりも小さいか、振幅情報X最小値かなど)を記憶する。なお、符号(v)の信号は、上記第2のアドレス信号である。
【0141】
最小値探索部68は、回り込み信号の振幅情報Xが最小値となるアンテナビームパターンを探索する。また、当該アンテナビームパターンに対応する第1及び第2のアドレス信号を探索する。例えば、最小値探索部68は、アンテナビームパターンを順次変更しながら、回り込み信号の振幅情報Xの値をモニタする。そして、新たなモニタ結果が、過去のモニタ結果よりも小さい場合、振幅情報Xの最小値を更新し、対応するアンテナビームパターン及び第1,第2のアドレス信号を記憶する。なお、探索中は、可変増幅器6Cの増幅利得を固定に制御してもよい。
【0142】
メモリ69は、最小値探索部68により選択されたアンテナビームパターンを記憶する。電源が瞬断した場合は、復旧時に記憶値から制御をスタートさせることにより、最小値探索を効率的に行なうことができる。
反転回路70,71は、それぞれ、クロック信号を反転する。
メモリ72は、可変増幅器6Cの増幅利得の初期値を記憶する。符号(vi)で示す第1のアドレス信号が入力されると、第1のアドレス信号に対応する主ビーム方向に位置する基地局100と無線通信を行なうのに要求される増幅利得をダウンカウンタ74にプリセットする。
【0143】
比較器73は、回り込み信号の振幅情報Xと所定の基準値とを比較する。
ダウンカウンタ74は、比較器73での比較結果に基づいて、可変増幅器6Cの増幅利得を制御する。例えば、回り込み信号の振幅情報Xが、所定の基準値以下となるまで、可変増幅器6Cの増幅利得を小さくしていく。なお、ダウンカウンタ74の制御速度は、送信信号の伝送速度に比して十分低速とする。このため、符号(iii)で示す信号をクロック信号とすることができる。
【0144】
また、ダウンカウンタ74のカウンタ段数が大きい場合、積分機能を有することができる。なお、符号(iv)で示す信号は、主ビーム方向を変更する制御を行なっている状態であること示す信号である。ダウンカウンタ74は、アンテナビームパターンの摂動調整中はカウンタをプリセット状態にする。アンテナビームパターンの摂動調整が終わると、ダウンカウンタ74の動作が可能となる。
【0145】
メモリ75は、ダウンカウンタ74の出力を記憶する。電源が瞬断した場合は、復旧時に記憶値から制御をスタートさせることにより、ダウンカウンタ74の制御を効率的に行なうことができる。
レベル変換部76は、ダウンカウンタ74により制御された増幅利得を出力する。レベル変換部76は、例えば、D/Aコンバータとして構成される。
【0146】
〔4〕第3変形例
また、本変形例のように、Frequency Division Duplex(FDD)方式の無線通信システムに無線中継装置1を適用してもよい。FDD方式では、下り無線信号と上り無線信号とにそれぞれ異なる周波数が割り当てられる。
図29に本例の無線中継装置1Dの構成の一例を示す。この図29に示す無線中継装置1Dは、例示的に、第1アンテナ部2Dと、アンテナ共用器3Dと、可変増幅器6Dと、可変増幅器11Dと、下りレプリカ生成部77と、上りレプリカ生成部78と、アンテナ共用器8Dと、第2アンテナ部9Dとをそなえる。
【0147】
なお、アンテナ共用器3D,可変増幅器6D,可変増幅器11D,アンテナ共用器8Dは、既述のアンテナ共用器3,可変増幅器6,可変増幅器11,アンテナ共用器8とそれぞれ同様の機能を有する。
また、説明を簡単にするために、帯域フィルタ4,合成部5,周波数変換部7,帯域フィルタ10,入力レベル検出部12,アンテナ制御部13,利得制御部15及び利得検出部16に対応する構成については図示を省略しているが、無線中継装置1Dは、これらと同様の機能を有する各構成を有していてもよい。即ち、本例においても、無線中継装置1Dは、例えば、下り無線信号の受信レベルなどに基づいて、第1アンテナ部2Dの指向性を制御することにより、自局1の接続先を切り替えてもよい。
【0148】
下りレプリカ生成部77は、基地局100からの下り無線信号の周波数に微小な偏移Δfを加えることにより、周波数(f+Δf)の第1下り無線信号を生成し、当該生成した第1下り無線信号を負帰還させる。なお、本例では、下り無線信号の周波数をfとした。
ここで、第1下り無線信号の振幅及び位相は、例えば、下りレプリカ生成部77によって、第2アンテナ部9Dから第1アンテナ部2Dへの回り込み信号と一致するように制御される。
【0149】
これにより、無線中継装置1Dは、基地局100からの下り無線信号に起因して生じる回り込み信号を抑圧することが可能となる。
一方、上りレプリカ生成部78は、端末200からの上り無線信号の周波数に微小偏移Δfを加えることにより、周波数(f+Δf)の第1上り無線信号を生成し、当該生成した第1上り無線信号を負帰還させる。なお、本例では、上り無線信号の周波数をfとした。
【0150】
ここで、第1上り無線信号の振幅及び位相は、例えば、上りレプリカ生成部78によって、第1アンテナ部2Dから第2アンテナ部9Dへの回り込み信号と一致するように制御される。
これにより、無線中継装置1Dは、端末200からの上り無線信号に起因して生じる回り込み信号を抑圧することが可能となる。
【0151】
以上のように、本例の無線中継装置1Dは、周波数の互いに異なる下り無線信号と上り無線信号とによって、それぞれ生じる各回り込み信号を効果的に抑圧することができる。
なお、第1アンテナ部2D及び第2アンテナ部9Dを、それぞれ、複数のアンテナからなるアダプティブアレイアンテナとして構成し、各回り込み信号の到来方向に、各ヌル点をそれぞれ配置するようにウェイト制御を行なってもよい。
【0152】
下り無線信号の周波数と上り無線信号の周波数が異なる場合、一般的に、各回り込み信号の到来方向も異なることがある。
そこで、上記のような場合には、第1アンテナ部2Dのアンテナ指向性におけるヌル点方向と、第2アンテナ部9Dのアンテナ指向性におけるヌル点方向とを互いに異なる方向(各回り込み信号の到来方向)と一致させるのが望ましい。
【0153】
〔5〕第4変形例
また、本例のように、複数の無線中継装置1が、無線伝搬路を介して縦続して配置(多段配置ともいう)されてもよい。これにより、無線伝送距離の更なる延長や通信サービスエリアの更なる拡大などを実現できる。
ただし、このような場合、ある無線中継装置1において発生した回り込み信号が、当該無線中継装置1だけではなく、その前段に設けられた他の無線中継装置1に回り込むことがある。なお、前記ある無線中継装置1における可変増幅器6の増幅利得は、例えば、当該無線中継装置1とその前段の他の無線中継装置1との間の無線伝搬損失を補償するように設定され得る。
【0154】
図30は本変形例に係る無線通信システムの構成の一例を示す図である。この図30に示す無線通信システムは、例示的に、基地局100−1と、複数の無線中継装置1E−1,1E−2と、端末200とをそなえる。なお、以下では、無線中継装置1E−1,1E−2を区別しない場合、単に無線中継装置1Eと表記する。また、基地局100−1,無線中継装置1E−1,1E−2,端末200の数は、図30に例示する数にそれぞれ限定されない。また、本例では、無線通信システムにおける基地局100−1の数は少なくとも1つであってもよい。
【0155】
図30に示す無線通信システムにおいては、複数の無線中継装置1Eが縦続接続されており、無線中継装置1E−1は、例えば、基地局100−1が提供する通信サービスエリア300−1内に位置し、基地局100−1からの下り無線信号を受信する。
そして、無線中継装置1E−1は、基地局100−1からの下り無線信号を、自局1E−1が提供する通信サービスエリア400−1内に位置する他の無線中継装置1E−2に中継送信する。
【0156】
また、無線中継装置1E−2は、無線中継装置1E−1から中継送信された下り無線信号を受信し、自局1E−2が提供する通信サービスエリア400−2内に位置する端末200へ、前記下り無線信号をさらに中継送信する。
そして、端末200は、無線中継装置1E−2から中継送信された下り無線信号を受信する。また、端末200から送信される上り無線信号は、無線中継装置1E−2,無線中継装置1E−1を介して、基地局100−1へ中継送信される。
【0157】
このとき、無線中継装置1E−1の送信アンテナから発生し、無線中継装置1E−1の受信アンテナに到達する回り込み信号や、無線中継装置1E−2の送信アンテナから発生し、無線中継装置1E−2の受信アンテナに到達する回り込み信号については、例えば、既述の制御方法などにより抑圧することが可能である。
しかしながら、無線中継装置1E−2の送信アンテナから発生し、無線中継装置1E−1の受信アンテナに到達する回り込み信号は、基地局100−1や端末200から送信される無線信号の周波数fから2Δfずれた周波数(f+2Δf)を有する。そのため、当該回り込み信号を抑圧するための構成が要求される。
【0158】
図31に本変形例に係る無線中継装置1Eの構成の一例を示す。この図31に示す無線中継装置1Eは、例示的に、第1アンテナ部2Eと、アンテナ共用器3Eと、帯域フィルタ4Eと、合成部5Eと、可変増幅器6Eと、アンテナ共用器8Eと、第2アンテナ部9Eと、帯域フィルタ10Eと、可変増幅器11Eとをそなえる。また、無線中継装置1Eは、例示的に、入力レベル検出部12Eと、アンテナ制御部13Eと、利得制御部15Eと、利得検出部16Eとをそなえる。
【0159】
さらに、無線中継装置1Eは、例示的に、第1周波数変換部79と、第2周波数変換部80と、第1レプリカ生成部81と、第2レプリカ生成部82とをそなえる。
なお、第1アンテナ部2E,アンテナ共用器3E,帯域フィルタ4E,合成部5E,可変増幅器6E,アンテナ共用器8E,第2アンテナ部9E,帯域フィルタ10E,可変増幅器11E,入力レベル検出部12E,アンテナ制御部13E,利得制御部15E及び利得検出部16Eは、既述の第1アンテナ部2,アンテナ共用器3,帯域フィルタ4,合成部5,可変増幅器6,アンテナ共用器8,第2アンテナ部9,帯域フィルタ10,可変増幅器11,入力レベル検出部12,アンテナ制御部13,利得制御部15及び利得検出部16とそれぞれ同様の機能を有する。
【0160】
また、以下では説明を簡単にするために、基地局100−1からの下り無線信号が、無線中継装置1E−1,1E−2を介して、端末200へ中継送信される例について説明するが、上り方向についても勿論、本例を適宜変形して適用してもよい。
さらに、アンテナ制御部13Eは、例えば、下り無線信号の受信レベルなどに基づいて、第1アンテナ部2Eの指向性を制御することにより、自局1の接続先を他の基地局100へ切り替えるほか、自局1の接続先を他の無線中継装置へ切り替えてもよい。これにより、無線通信システムの設計の自由度がさらに向上する。なお、他の基地局100や他の無線中継装置の位置については、例えば、無線システムの管理者などにより予め通知されてもよいし、無線中継装置1Eがアンテナ指向性を掃引して制御することで探索してもよい。
【0161】
ここで、第1アンテナ部(受信部)2Eは、基地局100−1側からの下り無線信号を受信する。
また、第1周波数変換部79は、第1アンテナ部2Eで受信した下り無線信号の周波数fに第1の偏移量Δfを与えて、周波数(f+Δf)の第1下り無線信号を生成する。
【0162】
第2アンテナ部(送信部)9Eは、第1周波数変換部79で生成した第1下り無線信号を端末200側へ送信する。
また、第1レプリカ生成部(第1回り込み信号抑圧部)81は、第1周波数変換部79で生成した第1下り無線信号を負帰還させることにより、第2アンテナ部9Eから第1アンテナ部2Eへ回り込む周波数(f+Δf)の回り込み信号(第1回り込み信号)を抑圧する。
【0163】
さらに、第2周波数変換部80は、第1アンテナ部2Eで受信した下り無線信号の周波数fに第1の偏移量Δfの2倍の第2の偏移量2Δfを与えて、周波数(f+2Δf)の第2下り無線信号を生成する。
そして、第2レプリカ生成部(第2回り込み信号抑圧部)82は、第2周波数変換部80で生成した第2下り無線信号を負帰還させることにより、上記第1回り込み信号とは異なる周波数(f+2Δf)の回り込み信号(第2回り込み信号)を抑圧する。なお、第2回り込み信号の一例として、例えば、当該無線中継装置1の後段に配置された他の無線中継装置1Eの送信アンテナから、当該無線中継装置1の第1アンテナ部2Eへ回り込む信号が挙げられる。
【0164】
以上のように、本例の無線中継装置1Eによれば、無線中継装置1Eが複数縦続接続された無線通信システムにおいても、あらゆる回り込み信号を抑圧することができ、無線伝送距離の更なる延長や通信サービスエリアの更なる拡大などを実現しつつ、通信の更なる安定化を図ることが可能となる。
なお、回り込み信号の抑圧方法として、上記の例ではレプリカ信号を生成して負帰還させたが、既述のように、受信アンテナを複数のアンテナからなるアダプティブアレイアンテナにより構成し、周波数(f+Δf)の第1回り込み信号及び周波数(f+2Δf)の第2回り込み信号の到来方向に、アンテナ指向性のヌル点を配置するように各アンテナについてのウェイトをそれぞれ制御するようにしてもよい。
【0165】
〔6〕その他
上述した無線通信システム、無線基地局100、無線端末200、無線中継装置1,1B,1C,1D及び1Eの各構成,各手段及び各機能は、必要に応じて取捨選択されてもよいし、適宜組み合わせられてもよい。即ち、上述した本発明の機能を発揮できるように、上記の各構成及び各機能は取捨選択されたり、適宜組み合わせて用いられたりしてもよい。
【0166】
また、例えば、第4変形例では、2個の無線中継装置1Eを縦続接続する例について説明したが、より多数の無線中継装置1Eを縦続接続してもよい。そして、この場合、無線中継装置1Eは、後段に配置された複数の無線中継装置1Eからの回り込み信号を抑圧する手段を有していてもよい。
具体的には例えば、m(mは2以上の整数)個の無線中継装置1Eが縦続接続される場合、最も基地局100に近い無線中継装置1Eは、第1アンテナ部2Eで受信した下り無線信号の周波数fに第1の偏移量Δfの2,・・・,m倍の第2,・・・,第mの偏移量2Δf,・・・,mΔfを与えて、周波数(f+2Δf),・・・,(f+mΔf)の第2〜第m下り無線信号をそれぞれ生成する、第2〜第m周波数変換部を有するとともに、第2〜第m下り無線信号を負帰還させることにより、第1回り込み信号とは異なる周波数(f+2Δf),・・・,(f+mΔf)の回り込み信号を抑圧する、第2〜第mレプリカ生成部(第2〜第m回り込み信号抑圧部)をそなえていてもよい。
【0167】
また、無線中継装置1Eは、後段の(m−1)個のうち一部の無線中継装置1Eから送信される回り込み信号を抑圧する構成を有していてもよい。
以上の実施形態及び各変形例に関し、さらに以下の付記を開示する。
〔7〕付記
(付記1)
複数の基地局のうちの一の基地局と端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置であって、
前記一の基地局からの下り無線信号を受信する第1アンテナ部と、
前記第1アンテナ部で受信した前記下り無線信号の受信レベルを検出する下り受信レベル検出部と、
前記下り受信レベル検出部で検出した前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記第1アンテナ部の指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替えるアンテナ制御部と、をそなえる、
ことを特徴とする、無線中継装置。
【0168】
(付記2)
前記アンテナ制御部は、
前記下り無線信号の受信レベルが、第1の閾値よりも大きい場合及び前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下である場合のうちいずれか一方の場合に前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、付記1記載の無線中継装置。
【0169】
(付記3)
前記端末からの上り無線信号を受信する第2アンテナ部と、
前記第2アンテナ部で受信した前記上り無線信号の受信レベルを検出する上り受信レベル検出部と、をそなえ、
前記アンテナ制御部が、前記下り受信レベル検出部で検出した前記下り無線信号の受信レベルと、前記上り受信レベル検出部で検出した前記上り無線信号の受信レベルとに基づいて、前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、付記2記載の無線中継装置。
【0170】
(付記4)
前記アンテナ制御部が、
前記下り無線信号の受信レベルが前記第1の閾値よりも大きく、且つ、前記上り無線信号の受信レベルが第3の閾値以下である場合に前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、付記3記載の無線中継装置。
【0171】
(付記5)
前記アンテナ制御部が、該無線中継装置と前記一の基地局との間の距離に基づき、前記他の基地局を選択する、
ことを特徴とする、付記1〜4のいずれか1項に記載の無線中継装置。
(付記6)
前記第1アンテナ部で受信した前記下り無線信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部で増幅後の下り無線信号のレベルが所定値以上となるように、前記増幅部の増幅利得を決定する利得制御部と、をそなえ、
前記アンテナ制御部が、前記利得制御部で決定した前記増幅利得に基づき、前記他の基地局を選択する、
ことを特徴とする、付記1〜4のいずれか1項に記載の無線中継装置。
【0172】
(付記7)
前記下り無線信号の周波数に所定の偏移量を与えて第1下り無線信号を生成する周波数変換部と、
前記第1下り無線信号を前記増幅部に負帰還させることにより、該無線中継装置において発生する回り込み信号を抑圧する回り込み信号抑圧部と、をそなえる、
ことを特徴とする、付記6記載の無線中継装置。
【0173】
(付記8)
前記第1アンテナ部が、複数のアンテナを有し、
前記アンテナ制御部が、前記複数のアンテナについての各ウェイトをそれぞれ制御することにより、前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、付記1〜7のいずれか1項に記載の無線中継装置。
【0174】
(付記9)
前記アンテナ制御部が、前記の各ウェイトをそれぞれ制御することにより、該無線中継装置において発生する回り込み信号の到来方向に、前記第1アンテナ部の指向性におけるヌル点を配置する、
ことを特徴とする、付記8記載の無線中継装置。
【0175】
(付記10)
基地局と端末との間で無線信号を中継する無線中継装置が複数縦続接続された通信システムにおける前記無線中継装置であって、
前記基地局側からの下り無線信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記下り無線信号の周波数に第1の偏移量を与えて第1下り無線信号を生成する第1周波数変換部と、
前記第1周波数変換部で生成した前記第1下り無線信号を前記端末側へ送信する送信部と、
前記第1下り無線信号を負帰還させることにより、前記送信部から前記受信部へ廻り込む第1回り込み信号を抑圧する第1回り込み信号抑圧部と、
前記受信部で受信した前記下り無線信号の周波数に前記第1の偏移量の2倍の第2の偏移量を与えて第2下り無線信号を生成する第2周波数変換部と、
前記第2周波数変換部で生成した前記第2下り無線信号を負帰還させることにより、前記第1回り込み信号とは異なる第2回り込み信号を抑圧する第2回り込み信号抑圧部と、をそなえる、
ことを特徴とする、無線中継装置。
【0176】
(付記11)
複数の基地局のうちの一の基地局と端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置の制御方法であって、
前記一の基地局からの下り無線信号を受信アンテナにより受信し、
前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記受信アンテナの指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替える、
ことを特徴とする、無線中継装置の制御方法。
【0177】
(付記12)
前記下り無線信号の受信レベルが、第1の閾値よりも大きい場合及び前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下である場合のうちいずれか一方の場合に前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、付記11記載の無線中継装置の制御方法。
【0178】
(付記13)
前記端末からの上り無線信号を受信し、
前記下り無線信号の受信レベルと、前記上り無線信号の受信レベルとに基づいて、前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、付記12記載の無線中継装置の制御方法。
【0179】
(付記14)
前記下り無線信号の受信レベルが前記第1の閾値よりも大きく、且つ、前記上り無線信号の受信レベルが第3の閾値以下である場合に前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、付記13記載の無線中継装置の制御方法。
(付記15)
該無線中継装置と前記一の基地局との間の距離に基づき、前記他の基地局を選択する、
ことを特徴とする、付記11〜14のいずれか1項に記載の無線中継装置の制御方法。
【0180】
(付記16)
前記下り無線信号を増幅する増幅部の増幅利得に基づき、前記他の基地局を選択する、
ことを特徴とする、付記11〜14のいずれか1項に記載の無線中継装置の制御方法。
(付記17)
前記下り無線信号の周波数に所定の偏移量を与えて第1下り無線信号を生成し、
前記第1下り無線信号を前記増幅部に負帰還させることにより、該無線中継装置において発生する回り込み信号を抑圧する、
ことを特徴とする、付記16記載の無線中継装置の制御方法。
【0181】
(付記18)
前記受信アンテナが、複数のアンテナを有し、
前記複数のアンテナについての各ウェイトをそれぞれ制御することにより、前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、付記11〜17のいずれか1項に記載の無線中継装置の制御方法。
【0182】
(付記19)
前記の各ウェイトをそれぞれ制御することにより、該無線中継装置において発生する回り込み信号の到来方向に、前記受信アンテナの指向性におけるヌル点を配置する、
ことを特徴とする、付記18記載の無線中継装置の制御方法。
(付記20)
基地局と端末との間で無線信号を中継する無線中継装置が複数縦続接続された通信システムにおける前記無線中継装置の制御方法であって、
前記複数の無線中継装置のうちの一の無線中継装置が、
前記基地局側からの下り無線信号を受信部により受信し、
前記受信した下り無線信号の周波数に第1の偏移量を与えて第1下り無線信号を生成し、
前記生成した第1下り無線信号を送信部により前記端末側へ送信し、
前記第1下り無線信号を負帰還させることにより、前記送信部から前記受信部へ廻り込む第1回り込み信号を抑圧し、
前記受信した前記下り無線信号の周波数に前記第1の偏移量の2倍の第2の偏移量を与えて第2下り無線信号を生成し、
前記生成した第2下り無線信号を負帰還させることにより、前記第1回り込み信号とは異なる第2回り込み信号を抑圧する、
ことを特徴とする、無線中継装置の制御方法。
【0183】
(付記21)
複数の基地局と、
端末と、
前記複数の基地局のうちの一の基地局と前記端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置と、
をそなえた無線通信システムであって、
前記無線中継装置が、
前記一の基地局からの下り無線信号を受信する第1アンテナ部と、
前記第1アンテナ部で受信した前記下り無線信号の受信レベルを検出する下り受信レベル検出部と、
前記下り受信レベル検出部で検出した前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記第1アンテナ部の指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替えるアンテナ制御部と、をそなえる、
ことを特徴とする、無線通信システム。
【0184】
(付記22)
複数の基地局と、端末と、前記複数の基地局のうちの一の基地局と前記端末との間で無線信号を中継する無線中継装置とをそなえた無線通信システムであって、
前記無線中継装置が、
前記基地局側からの下り無線信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記下り無線信号の周波数に第1の偏移量を与えて第1下り無線信号を生成する第1周波数変換部と、
前記第1周波数変換部で生成した前記第1下り無線信号を前記端末側へ送信する送信部と、
前記第1下り無線信号を負帰還させることにより、前記送信部から前記受信部へ廻り込む第1回り込み信号を抑圧する第1回り込み信号抑圧部と、
前記受信部で受信した前記下り無線信号の周波数に前記第1の偏移量の2倍の第2の偏移量を与えて第2下り無線信号を生成する第2周波数変換部と、
前記第2周波数変換部で生成した前記第2下り無線信号を負帰還させることにより、前記第1回り込み信号とは異なる第2回り込み信号を抑圧する第2回り込み信号抑圧部と、をそなえる、
ことを特徴とする、無線通信システム。
【符号の説明】
【0185】
1,1−1,1−2,1B,1D,1E−1,1E−2,1E 無線中継装置
100−1,100−2 基地局
200−1,200−2,200−3,200 端末
300−1,300−2 基地局の通信サービスエリア
400−1,400−2 無線中継装置の通信サービスエリア
2,2B,2D,2E 第1アンテナ部
2B−1,2B−2,・・・,2B−n,2C−1,2C−2,・・・,2C−n アンテナ
3,3D,3E アンテナ共用器
4,4E 帯域フィルタ
5,5B,5E 合成部
6,6B,6D,6E 可変増幅器
7,7B 周波数変換部
8,8D,8E アンテナ共用器
9,9B,9D,9E 第2アンテナ部
10,10E 帯域フィルタ
11,11D,11E 可変増幅器
12,12B,12C,12E 入力レベル検出部
13,13E アンテナ制御部
14,14B レプリカ生成部
15,15B,15C,15E 利得制御部
16,16B,16E 利得検出部
17 位相関数発生器
17−1 SIN関数発生器
17−2 COS関数発生器
18 無限移相器
19,20 リングモジュレータ
21,29 π/2移相器
22 合成部
23 相関検出部
24 帰還制御部
25 可変移相器
26 可変減衰器
27,28 位相比較器
30,31 低域通過フィルタ
32 演算器
33 除算器
34,34C アダプティブアレイアンテナ制御部
35,35C ウェイト制御部
36,40 検波器
37,41 積分器
38,39,42 比較器
43 ビームパターン保持部
44 主ビーム方向制御部
45 ヌル点制御部
46,60 試験モードSW
47−1,47−2,・・・,47−n 帯域フィルタ
48−1,48−2,・・・,48−n 乗算器
49 加算器
50 検波器
51 積分器
52,53,58,73 比較器
54,63 OR回路
55 制御部
56 セレクタ
57,70,71 反転回路
59 CLK発生部
61,65 分周回路
62 AND回路
64 主ビーム方向制御部
66 カウンタ
67,69,72,75 メモリ
68 最小値探索部
74 ダウンカウンタ
76 レベル変換部
77 下りレプリカ生成部
78 上りレプリカ生成部
79 第1周波数変換部
80 第2周波数変換部
81 第1レプリカ生成部
82 第2レプリカ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局のうちの一の基地局と端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置であって、
前記一の基地局からの下り無線信号を受信する第1アンテナ部と、
前記第1アンテナ部で受信した前記下り無線信号の受信レベルを検出する下り受信レベル検出部と、
前記下り受信レベル検出部で検出した前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記第1アンテナ部の指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替えるアンテナ制御部と、をそなえる、
ことを特徴とする、無線中継装置。
【請求項2】
前記アンテナ制御部は、
前記下り無線信号の受信レベルが、第1の閾値よりも大きい場合及び前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下である場合のうちいずれか一方の場合に前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、請求項1記載の無線中継装置。
【請求項3】
前記端末からの上り無線信号を受信する第2アンテナ部と、
前記第2アンテナ部で受信した前記上り無線信号の受信レベルを検出する上り受信レベル検出部と、をそなえ、
前記アンテナ制御部が、前記下り受信レベル検出部で検出した前記下り無線信号の受信レベルと、前記上り受信レベル検出部で検出した前記上り無線信号の受信レベルとに基づいて、前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、請求項2記載の無線中継装置。
【請求項4】
前記アンテナ制御部が、
前記下り無線信号の受信レベルが前記第1の閾値よりも大きく、且つ、前記上り無線信号の受信レベルが第3の閾値以下である場合に前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、請求項3記載の無線中継装置。
【請求項5】
前記アンテナ制御部が、該無線中継装置と前記一の基地局との間の距離に基づき、前記他の基地局を選択する、
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線中継装置。
【請求項6】
前記第1アンテナ部で受信した前記下り無線信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部で増幅後の下り無線信号のレベルが所定値以上となるように、前記増幅部の増幅利得を決定する利得制御部と、をそなえ、
前記アンテナ制御部が、前記利得制御部で決定した前記増幅利得に基づき、前記他の基地局を選択する、
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線中継装置。
【請求項7】
前記下り無線信号の周波数に所定の偏移量を与えて第1下り無線信号を生成する周波数変換部と、
前記第1下り無線信号を前記増幅部に負帰還させることにより、該無線中継装置において発生する回り込み信号を抑圧する回り込み信号抑圧部と、をそなえる、
ことを特徴とする、請求項6記載の無線中継装置。
【請求項8】
前記第1アンテナ部が、複数のアンテナを有し、
前記アンテナ制御部が、前記複数のアンテナについての各ウェイトをそれぞれ制御することにより、前記切り替えを行なう、
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の無線中継装置。
【請求項9】
複数の基地局のうちの一の基地局と端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置の制御方法であって、
前記一の基地局からの下り無線信号を受信アンテナにより受信し、
前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記受信アンテナの指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替える、
ことを特徴とする、無線中継装置の制御方法。
【請求項10】
複数の基地局と、
端末と、
前記複数の基地局のうちの一の基地局と前記端末との間で無線信号を中継し、前記一の基地局と接続する無線中継装置と、
をそなえた無線通信システムであって、
前記無線中継装置が、
前記一の基地局からの下り無線信号を受信する第1アンテナ部と、
前記第1アンテナ部で受信した前記下り無線信号の受信レベルを検出する下り受信レベル検出部と、
前記下り受信レベル検出部で検出した前記下り無線信号の受信レベルに基づき、前記第1アンテナ部の指向性を制御し、前記一の基地局との接続から前記複数の基地局のうちの他の基地局との接続に切り替えるアンテナ制御部と、をそなえる、
ことを特徴とする、無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−74824(P2012−74824A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216839(P2010−216839)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】