説明

無線中継装置及び無線通信方法

【課題】無線中継装置と無線移動局との間に通信が困難になるほどの干渉が発生している場合、当該干渉の影響を抑制する無線中継装置及び無線通信方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る無線中継装置111は、TDD方式を採用する無線基地局BSと無線移動局MSとの間で送受信されるデータを中継する無線中継装置111であって、無線基地局BSからデータを第1期間で受信し、無線基地局BSへデータを第2期間で送信する基地局側送受信部117と、無線移動局MSからデータを第1期間で受信し、無線移動局MSへデータを第2期間で送信する移動局側送受信部123と、第1期間に移動局側送受信部123での移動局側受信品質値を取得し、取得した移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように無線移動局MSに指示する制御部121とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継装置及び無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線移動局が無線基地局と通信するためには、無線移動局は無線基地局からの無線電波が届く範囲(サービスエリア)に位置する必要がある。しかし、山岳地帯や高層ビル等が建ち並ぶ市街地では、障害物が多いため無線電波が届きにくい領域が存在する。また、屋外に設置された無線基地局からは、電波が届かない領域(例えば、建物の内部や地下)が多く存在する。特に、IEEE標準規格802.16eを基に規格化されたWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)等の高速無線通信方式では、2.5GHz以上の高周波数帯の電波が使用されるが、このような電波は直進性が強く、障害物を回りこむ性質が弱い。そのため、WiMAX等は障害物の影響を強く受ける。このような電波が届かない領域をカバーするため、無線基地局と無線移動局との間の無線電波を中継する無線中継装置(レピータ)が必要となる。
【0003】
この無線中継装置は、サービスエリアを拡充できるという利点がある反面、無線中継装置が発する電波が他の電波との干渉を引き起こすという欠点がある。無線中継装置に起因する干渉の一つには、無線基地局と通信を行う基地局側ユニット(ドナー部又はMS(Mobile Station)部)と、無線移動局と通信を行う移動局側ユニット(サービス部又はBS(Base Station)部)との間における相互干渉(回り込み干渉又は自己干渉)があげられる。例えば、基地局側ユニットの受信タイミングと移動局側ユニットの送信タイミングが重なった場合、無線基地局からの送信波が、移動局側ユニットの送信波と干渉を起こし、基地局側ユニットは、品質の劣化した無線基地局からの送信波を受信することになる。同様にして、基地局側ユニットの送信タイミングと移動局側ユニットの受信タイミングが重なった場合にも、相互干渉は発生する。
【0004】
そこで、従来、相互干渉を抑制するための無線通信方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該方法は、図4のように、基地局側ユニットの送信(Tx)タイミングと移動局側ユニットの送信タイミングを第1期間に合わせ、基地局側ユニットの受信(Rx)タイミングと移動局側ユニットの受信タイミングを第2期間に合わせる。これにより、上述したような相互干渉について抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−56711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、無線中継装置に起因する干渉は、基地局側ユニットと移動局側ユニットとの間に生じる相互干渉だけではなく、図5のような状況においては別の干渉が発生する。図5では、無線基地局401が無線中継装置403を介して無線移動局405と通信を行っている。具体的には、無線基地局401が無線中継装置403の基地局側ユニット407と周波数Aで通信を行い、無線移動局405が無線中継装置403の移動局側ユニット409と周波数Bで通信を行っている。更に、移動局側ユニット409は、無線基地局411からの周波数Bの電波が届く位置であるとする。このような状況では、上述の第1期間における無線基地局411の送信波は、第1期間における無線中継装置403と無線移動局405との通信(具体的には、無線移動局405からの送信波)間に干渉をもたらす。このような干渉は、無線中継装置に届く電波の送信元である無線基地局が激しく変化する電車等の車両に搭載された無線中継装置において特に問題となる。車両に搭載された無線中継装置は、移動局側ユニットで使用している周波数と同一周波数の無線基地局に接近する可能性が高い。
【0007】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、無線中継装置と無線移動局との間に通信が困難になるほどの干渉が発生している場合、当該干渉の影響を抑制する無線中継装置及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明による無線中継装置は、
TDD方式を採用する無線基地局と無線移動局との間で送受信されるデータを中継する無線中継装置であって、
前記無線基地局からデータを第1期間で受信し、前記無線基地局へデータを第2期間で送信する基地局側送受信部と、
前記無線移動局からデータを前記第1期間で受信し、前記無線移動局へデータを前記第2期間で送信する移動局側送受信部と、
前記第1期間に前記移動局側送受信部での移動局側受信品質値を取得し、取得した前記移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように前記無線移動局に指示する制御部と
を備える無線中継装置である。
【0009】
また、当該無線中継装置は更に、前記移動局側送受信部により受信されたデータに関する電界強度を減衰させる減衰部を備え、前記制御部は更に、前記移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、減衰量を現在の減衰量よりも大きくするように前記減衰部を制御し、その後、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように前記無線移動局に指示することが望ましい。
【0010】
また、前記制御部は更に、
前記第1期間に、前記移動局側受信品質値と共に、前記基地局側送受信部での基地局側受信品質値を取得し、
前記移動局側受信品質値が前記移動局側受信品質閾値未満の場合、当該移動局側受信品質値と共に取得された前記基地局側受信品質値のうち、前記無線移動局から前記無線中継装置への通信での使用周波数と同じ周波数でデータを送信する無線基地局に関する基地局側受信品質値を基に基地局側受信品質閾値を設定し、
前記基地局側受信品質閾値の設定後に、前記無線移動局から前記無線中継装置への通信での使用周波数と同じ周波数でデータを送信する無線基地局に関する基地局側受信品質値が前記基地局側受信品質閾値以上の場合、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように前記無線移動局に指示する
ことが望ましい。
【0011】
また、前記制御部は更に、前記無線移動局から前記無線中継装置への通信での使用周波数と同じ周波数でデータを送信する無線基地局に関する基地局側受信品質値が前記基地局側受信品質閾値未満の場合、前記移動局側受信品質値と前記移動局側受信品質閾値との比較を行うことが望ましい。
【0012】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0013】
例えば、本発明の第1の発明を方法として実現させた無線中継装置の無線通信方法は、無線中継装置が、
前記無線基地局からデータを第1期間に受信するステップと、
前記無線移動局からデータを前記第1期間に受信するステップと、
前記無線基地局へデータを第2期間に送信するステップと、
前記無線移動局へデータを前記第2期間に送信するステップと、
前記第1期間に移動局側受信品質値を取得するステップと、
取得された前記移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように前記無線移動局に指示するステップと
を含む無線通信方法である。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成された本発明に係る無線中継装置及び無線通信方法によれば、無線移動局から受信したデータに関する移動局側受信品質閾値に基づき、無線中継装置と無線移動局との間に通信が困難になるほどの干渉が発生しているか否かが判断され、当該干渉が発生している場合、無線移動局の送信出力は大きくなる。これにより、移動局側受信品質値は改善され、干渉の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る概略的な無線ネットワーク構成図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る無線中継装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る無線中継装置の処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、従来の無線通信方法を示す図である。
【図5】図5は、従来の無線通信方法において発生する干渉の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る概略的な無線ネットワーク構成図である。無線ネットワーク11は、無線基地局BS(Base Station)と、無線移動局MS(Mobile Station)と、無線中継装置111とから構成されている。無線ネットワーク11の通信方式がWiMAXである場合、無線ネットワーク11には、例えば時分割複信(TDD:Time Division Duplex)方式が採用される。無線中継装置111は、WiMAX等の無線通信方式において、無線基地局BSと無線移動局MSとの間で送受信されるデータを中継する。当該無線中継装置111により、無線移動局MSは、無線基地局BSのセル(通信可能エリア)の範囲外に位置していても、無線基地局BSとデータを送受信できる。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る無線中継装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0019】
無線中継装置111は、基地局側ユニット(ドナー部又はMS(Mobile Station)部)113と、移動局側ユニット(サービス部又はBS(Base Station)部)115とを備えている。無線中継装置111は、一体型、分離型又は車両型である。一体型の無線中継装置111は、一つの筐体内に基地局側ユニット113と移動局側ユニット115とを備えるものである。分離型又は車両型の無線中継装置111では、基地局側ユニット113と移動局側ユニット115とをそれぞれ独立して配置することが可能である。分離型又は車両型の基地局側ユニット113と移動局側ユニット115とは、同軸ケーブル等の信号ケーブルにより接続される。車両型の無線中継装置111は、移動車両への搭載を目的とするものであり、車両外に設置される基地局側ユニット113と、車両内に設置される移動局側ユニット115とにおいて異なる無線通信方式が採用されることがある。例えば、基地局側ユニット113には(WiFiよりも)移動に強いWiMAXが、移動局側ユニット115には(WiMAXよりも)通信速度の速いWiFiが採用される。
【0020】
まず、基地局側ユニット113の機能ブロックについて説明する。基地局側ユニット113は、基地局側送受信部117と、基地局側記憶部119と、基地局側制御部121(請求項における制御部)とを備えている。
【0021】
基地局側送受信部117は、アンテナを介して無線基地局BSとデータを送受信する。無線ネットワーク11に時分割複信方式が採用されている場合は、基地局側送受信部117は、例えば、無線基地局BSからデータをある第1期間で受信し、無線基地局BSへデータを第1期間に続く第2期間で送信する。そして、連続する第1期間と第2期間の繰り返しにより、基地局側送受信部117は、受信と送信を繰り返すことになる。
【0022】
基地局側記憶部119は、移動局側ユニット115の移動局側受信品質閾値や基地局側ユニット113の基地局側受信品質閾値などの各種情報を記憶するものであり、ワークメモリなどとしても機能する。移動局側受信品質閾値は、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に通信が困難になるほど干渉が発生しているか否かという点に基づいて設定されるものであり、例えば、CINR(Carrier to Interference and Noise Ratio:搬送波レベル対干渉雑音比)の値である。無線中継装置111と無線移動局MSとが通信できるためには、無線中継装置111及び無線移動局MSに届いたデータが復調可能な品質を有している必要がある。そこで、移動局側受信品質閾値に、無線中継装置111でのデータの復調を保証するCINRの値が設定される。当該値は、通信に採用されている変調方式やコーディングレートなどを勘案して求めることができる。また、基地局側受信品質閾値は、無線基地局BSからの電波が、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に通信が困難になるほどの干渉を発生させる可能性が高いか否かという点に基づいて設定されるものであり、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)の値である。基地局側受信品質閾値は、無線中継装置111と無線移動局MSとの間で通信が困難になるほどの干渉が発生した場合に取得された当該干渉の要因となる無線基地局BSに関する基地局側受信品質値の値に基づいて設定される。無線中継装置111と無線移動局MSとの間に干渉が発生することは、無線移動局MSから無線中継装置111への通信での使用周波数と同じ周波数で電波を発する無線基地局BSが無線中継装置111の周囲に存在することを意味する。そして、干渉が強いほど、干渉の要因となる無線基地局BSの発する電波の電界強度は強いことを意味する。そのため、干渉発生時に取得された当該干渉の要因となる無線基地局BSに関する基地局側受信品質値(RSSI値)は、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に干渉が発生することを意味する値となる。干渉発生時に取得された基地局側受信品質値を基に基地局側受信品質閾値を決定することにより、実際の通信環境を考慮することができる。例えば、基地局側制御部121は、基地局側受信品質閾値を干渉発生毎に基地局側受信品質値で更新することができる。また、基地局側制御部121は、干渉発生毎に基地局側記憶部119に基地局側受信品質値を記憶させ、所定の回数(例えば、過去10回)の基地局側受信品質値の平均を基地局側受信品質閾値に設定することもできる。なお、本実施形態では、基地局側ユニット113のみが、記憶部を有するが、本発明は、この構成に限定されるわけではない。例えば、移動局側ユニット115のみが記憶部を有し、当該記憶部が、基地局側ユニット113及び移動局側ユニット115の各種情報を記憶することもできる。また、基地局側ユニット113及び移動局側ユニット115の双方が記憶部を有し、各々の記憶部が各々の情報を記憶することもできる。
【0023】
基地局側制御部121は、基地局側ユニット113及び移動局側ユニット115の各機能ブロックをはじめとして基地局側ユニット113及び移動局側ユニット115の全体を制御及び管理する。ここで、基地局側制御部121は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。なお、本実施形態では、基地局側ユニット113のみが、制御部を有するが、本発明は、この構成に限定されるわけではない。例えば、移動局側ユニット115のみが制御部を有し、当該制御部が、基地局側ユニット113及び移動局側ユニット115の全体を制御及び管理することができる。また、基地局側ユニット113及び移動局側ユニット115の双方が制御部を有し、各々の制御部が各々のユニットを制御及び管理することもできる。
【0024】
基地局側制御部121についてより詳細に説明する。基地局側制御部121は、基地局側送受信部117及び後述の移動局側送受信部123が受信した電波から、当該電波に関する基地局側受信品質値及び移動局側受信品質値を取得する。基地局側受信品質値及び移動局側受信品質値とは、例えば、RSSIやCINRである。基地局側送受信部117が受信した電波のRSSIとは、基地局側送受信部117が受信する無線基地局BSからのデータ信号の電界強度のことである。RSSIの値が大きいほど受信品質(通信品質)は良い。また、移動局側送受信部123が受信した電波のCINRとは、無線移動局MSからのデータ信号が受ける干渉や雑音の影響の度合いを示すものである。CINRの値が大きいほど受信品質は良い。
【0025】
基地局側制御部121は、取得した移動局側受信品質値を基地局側記憶部119に記憶されている移動局側受信品質閾値と比較し、移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値以上の場合、無線中継装置111と無線移動局MSとの間には通信が困難になるほどの干渉は発生していないと判断する。つまり、無線基地局BSと無線移動局MSとは、無線中継装置111を介して通信することができる。また、移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、無線中継装置111と無線移動局MSとの間には通信が困難になるほどの干渉が発生していると判断する。つまり、無線中継装置111を介したとしても無線基地局BSと無線移動局MSとの間の通信は実現されないことを意味する。そこで、基地局側制御部121は、移動局側の受信信号に関する電界強度の減衰量を現在の減衰量より大きくするように後述の減衰部125を制御する。これにより、基地局側制御部121は、受信感度が悪くなったと判断し、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように無線移動局MSに指示する。その結果、干渉の要因となった無線基地局BSからの電波(干渉波)の大きさは変わらず、無線移動局MSからの電波(希望波)の大きさのみ大きくなるので、移動局側受信品質値は改善され、データの復調が容易となる。よって、無線基地局BSと無線移動局MSとは、無線中継装置111を介して通信できるようになる。
【0026】
また、基地局側制御部121は、取得した基地局側受信品質値を基地局側記憶部119に記憶されている基地局側受信品質閾値と比較し、基地局側受信品質値が基地局側受信品質閾値以上の場合、無線基地局BSからの電波が、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に通信が困難になるほどの干渉を発生させる可能性は高いと判断する。このままでは、無線基地局BSと無線移動局MSとが無線中継装置111を介して通信できない可能性が高いので、基地局側制御部121は、移動局側の受信データに関する電界強度の減衰量を現在の減衰量より大きくするように減衰部125を制御する。そして、基地局側制御部121は、受信感度が悪くなったと判断し、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように無線移動局MSに指示する。これにより、移動局側受信品質値は改善され、データの復調が容易となる。よって、無線基地局BSと無線移動局MSとは、無線中継装置111を介して通信できるようになる。
【0027】
続いて、移動局側ユニット115の機能ブロックについて説明する。移動局側ユニット115は、移動局側送受信部123と、減衰部125とを備えている。
【0028】
移動局側送受信部123は、アンテナを介して無線移動局MSとデータを送受信する。無線ネットワーク11に時分割複信方式が採用されている場合は、移動局側送受信部123は、例えば、無線移動局MSからデータをある第1期間で受信し、無線移動局MSへデータを第1期間に続く第2期間で送信する。そして、連続する第1期間と第2期間の繰り返しにより、移動局側送受信部123は、受信と送信を繰り返すことになる。移動局側送受信部123と基地局側送受信部117との送信タイミング及び受信タイミングが揃うことにより、無線中継装置111における相互干渉は抑制される。
【0029】
減衰部125は、移動局側送受信部123が受信したデータの電界強度を減衰させるものであり、例えば、アッテネータ(減衰器)により構成される。
【0030】
続いて、無線中継装置111の干渉の影響を抑制する方法について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る無線中継装置の処理を示すフローチャートである。
【0031】
基地局側ユニット113は、データを送受信するために、未使用の伝送路を検出するためのキャリアセンスを定期的に行う。基地局側制御部121は、キャリアセンスにおいて基地局側送受信部117が受信した電波から基地局側受信品質値を取得することができる(ステップS101)。なお、図1では、無線基地局BSが1つのみ記されているが、無線基地局BSの数は1つに限定されるものではない点に留意すべきである。基地局側ユニット113が受信可能な電波を送信する無線基地局BSが複数存在する場合、基地局側ユニット113は、全ての無線基地局BSに関する基地局側受信品質値を取得することができる。また、キャリアセンスでは、基地局側制御部121は、基地局側受信品質値と共に無線基地局のID及び無線基地局の使用周波数の情報も受信することにより、基地局側受信品質値がどの無線基地局及びどの周波数に関する値であるかを把握することができる。
【0032】
そして、基地局側制御部121は、取得した基地局側受信品質値を基地局側記憶部119に記憶されている基地局側受信品質閾値と比較することができる(ステップS102)。基地局側受信品質値が基地局側受信品質閾値以上の場合(ステップS102のNo)、基地局側制御部121は、無線基地局BSの電波が、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に通信が困難になるほどの干渉を発生させる可能性が高いと判断できる。
【0033】
よって、基地局側制御部121は、干渉波の影響を抑制するために希望波の大きさが干渉波の大きさよりも相対的に大きくなるようにする。具体的には、基地局側制御部121は移動局側の受信データに関する電界強度の減衰量を増大するように減衰部125を制御する(ステップS103)。受信データに関する電界強度が低下するため、基地局側制御部121は、受信感度が悪くなったと判断し、送信出力を大きくするように無線移動局MSに指示する(ステップS104)。これにより、移動局側送受信部123が受信する電波のうち希望波の占める割合が大きくなり、移動局側受信品質は向上することになる。よって、無線基地局BSと無線移動局MSとは、無線中継装置111を介して通信できるようになる。
【0034】
ステップS102において、基地局側受信品質値が基地局側受信品質閾値未満の場合(ステップS102のYes)、基地局側制御部121は、無線基地局BSの電波が、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に通信が困難になるほどの干渉を発生させる可能性は低いと判断できる。
【0035】
実際の干渉の有無を確認するために、基地局側制御部121は、移動局側受信品質値を取得する(ステップS105)。
【0036】
基地局側制御部121は、取得した移動局側受信品質値を基地局側記憶部119に記憶されている移動局側受信品質閾値と比較する(ステップS106)。移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満である場合(ステップS106のYes)、基地局側制御部121は、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に通信が困難になるほどの干渉が発生していると判断する。
【0037】
基地局側制御部121は、無線中継装置111と無線移動局MSとの通信における使用周波数と同一の周波数で電波を発する無線基地局を特定し、当該無線基地局111に関する基地局側受信品質値を基地局側記憶部119に記憶させる(ステップS107)。基地局側制御部121は、記憶された基地局側受信品質値を基に基地局側受信品質閾値を設定する。例えば、干渉の要因となった無線基地局の基地局側受信品質値が−45[dBm]であったとき、基地局側受信品質閾値に−45[dBm]を設定することができる。設定後に、無線移動局MSから無線中継装置111への通信での使用周波数が変わらず、かつ当該周波数を使用する無線基地局の基地局側受信品質値が−45[dBm]以上、例えば−40[dBm]であると、干渉の要因である無線基地局の電界強度は無線中継装置111と無線移動局MSとの間に干渉を発生させるほどに強いと判断できる。このように基地局側受信品質閾値を設定することにより、基地局側制御部121は、移動局側受信品質値の取得無しに干渉の有無を判断することができる。
【0038】
その後、基地局側制御部121は、減衰量が大きくなるように減衰部125を制御し(ステップS103)、送信出力を大きくするように無線移動局MSに指示する(ステップS104)。これにより、移動局側受信品質は向上し、無線基地局BSと無線移動局MSとは、無線中継装置111を介して通信できるようになる。
【0039】
ステップS106において、移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値以上の場合(ステップS106のNo)、無線中継装置111と無線移動局MSとの間には通信が困難になるほどの干渉は生じていないことを意味するので、基地局側制御部121が減衰部125の減衰量を調整することなく、無線基地局BSと無線移動局MSとは、無線中継装置111を介して通信することができる。
【0040】
このように本実施形態では、無線中継装置111の基地局側制御部121は、移動局側送受信部123での移動局側受信品質値を取得し、取得した移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように無線移動局MSに指示する。移動局側受信品質閾値は、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に通信が困難になるほどの干渉が発生しているか否かという点に基づいて設定されるものであるため、取得した移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合は、無線中継装置111を介して無線基地局BSと無線移動局MSとは通信できない。そこで、基地局側制御部121は、無線移動局MSに送信出力を大きくさせることにより、データ移動局側送受信部123が受信する電波のうち希望波の占める割合が大きくなり、移動局側受信品質は向上することになる。つまり無線中継装置111と無線移動局MSとの間の干渉は抑制され、無線基地局BSと無線移動局MSとは、無線中継装置111を介して通信できるようになる。
【0041】
また、本実施形態では、無線中継装置111は更に、移動局側送受信部123により受信されたデータに関する電界強度を減衰させる減衰部125を備え、基地局側制御部121は更に、移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、減衰量を現在の減衰量よりも大きくするように減衰部125を制御し、その後、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように無線移動局MSに指示する。これにより、基地局側制御部121は、無線移動局MSへの送信出力増大の指示を出すタイミングを、受信感度が悪化した場合に定めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、基地局側制御部121は、移動局側受信品質値と共に、基地局側送受信部117での基地局側受信品質値を取得する。そして、移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、当該移動局側受信品質値と共に取得された基地局側受信品質値のうち、無線移動局MSから無線中継装置111への通信での使用周波数と同じ周波数でデータを送信する無線基地局に関する基地局側受信品質値を基に基地局側受信品質閾値を設定し、基地局側受信品質閾値の設定後に、無線移動局MSから無線中継装置111への通信での使用周波数と同じ周波数でデータを送信する無線基地局に関する基地局側受信品質値が基地局側受信品質閾値以上の場合、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように無線移動局MSに指示する。つまり、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に通信が困難になるほどの干渉を引き起こす無線基地局からの電波の電界強度を基に移動局側受信品質閾値が設定される。これにより、基地局側受信品質閾値以上の基地局側受信品質値である電波は、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に干渉を引き起こすことになる。よって、基地局側受信品質値の取得のみにより、基地局側制御部121は、無線中継装置111と無線移動局MSとの間の干渉の有無を予測することができる。
【0043】
また、本実施形態では、基地局側制御部121は、無線移動局MSから無線中継装置111への通信での使用周波数と同じ周波数でデータを送信する無線基地局に関する基地局側受信品質値が基地局側受信品質閾値未満の場合、移動局側受信品質値と移動局側受信品質閾値との比較を行う。つまり、無線中継装置111と無線移動局MSとの間に通信が困難になるほどの干渉は生じていないと予測された場合に、実際に干渉が生じているか否かが移動局側受信品質値により判断される。これにより、干渉は無いと予測されたが、実際には干渉は生じている場合にも、干渉を抑制するための無線移動局MSの送信出力の調整が行われることになる。
【0044】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0045】
例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0046】
上述の本発明の実施形態の説明において、例えば、(基地局側又は移動局側)受信品質閾値「以上」または受信品質閾値「未満」のような表現の技術的思想が意味する内容は必ずしも厳密な意味ではなく、無線中継装置の仕様に応じて、基準となる値を含む場合又は含まない場合の意味を包含するものとする。例えば、受信品質閾値「以上」とは、受信品質が受信品質閾値に達した場合のみならず、受信品質閾値を超えた場合も含意し得るものとする。また、例えば受信品質閾値「未満」とは、受信品質値が受信品質閾値を下回った場合のみならず、受信品質閾値に達した場合、つまり受信品質閾値以下になった場合も含意し得るものとする。
【符号の説明】
【0047】
11 無線ネットワーク
111 無線中継装置
113 基地局側ユニット
115 移動局側ユニット
117 基地局側送受信部
119 基地局側記憶部
121 基地局側制御部
123 移動局側送受信部
125 移動局側表示部
BS 無線基地局
MS 無線移動局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDD方式を採用する無線基地局と無線移動局との間で送受信されるデータを中継する無線中継装置であって、
前記無線基地局からデータを第1期間で受信し、前記無線基地局へデータを第2期間で送信する基地局側送受信部と、
前記無線移動局からデータを前記第1期間で受信し、前記無線移動局へデータを前記第2期間で送信する移動局側送受信部と、
前記第1期間に前記移動局側送受信部での移動局側受信品質値を取得し、取得した前記移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように前記無線移動局に指示する制御部と
を備える無線中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線中継装置において、
当該無線中継装置は更に、前記移動局側送受信部により受信されたデータに関する電界強度を減衰させる減衰部を備え、
前記制御部は更に、前記移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、減衰量を現在の減衰量よりも大きくするように前記減衰部を制御し、その後、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように前記無線移動局に指示する
ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線中継装置において、前記制御部は更に、
前記第1期間に、前記移動局側受信品質値と共に、前記基地局側送受信部での基地局側受信品質値を取得し、
前記移動局側受信品質値が前記移動局側受信品質閾値未満の場合、当該移動局側受信品質値と共に取得された前記基地局側受信品質値のうち、前記無線移動局から前記無線中継装置への通信での使用周波数と同じ周波数でデータを送信する無線基地局に関する基地局側受信品質値を基に基地局側受信品質閾値を設定し、
前記基地局側受信品質閾値の設定後に、前記無線移動局から前記無線中継装置への通信での使用周波数と同じ周波数でデータを送信する無線基地局に関する基地局側受信品質値が前記基地局側受信品質閾値以上の場合、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように前記無線移動局に指示する
ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線中継装置において、前記制御部は更に、前記無線移動局から前記中継装置への通信での使用周波数と同じ周波数でデータを送信する無線基地局に関する基地局側受信品質値が前記基地局側受信品質閾値未満の場合、前記移動局側受信品質値と前記移動局側受信品質閾値との比較を行うことを特徴とする無線中継装置。
【請求項5】
TDD方式を採用する無線基地局と無線移動局との間で送受信されるデータを中継する無線中継装置の無線通信方法であって、前記無線中継装置が、
前記無線基地局からデータを第1期間に受信するステップと、
前記無線移動局からデータを前記第1期間に受信するステップと、
前記無線基地局へデータを第2期間に送信するステップと、
前記無線移動局へデータを前記第2期間に送信するステップと、
前記第1期間に移動局側受信品質値を取得するステップと、
取得された前記移動局側受信品質値が移動局側受信品質閾値未満の場合、データを送信する際の送信出力を現在の送信出力よりも大きくするように前記無線移動局に指示するステップと
を含む無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−114845(P2012−114845A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264157(P2010−264157)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】