説明

無線信号受信機

【課題】1つのチューナーで複数のチャンネルの信号を同時に復調する技術を提供する。
【解決手段】無線信号受信機は広帯域RFフロントエンド部101とデジタルベースバンド部102を備える。広帯域RFフロントエンド部101は増幅器201、周波数変換器202、ADコンバータ203を備え、デジタルベースバンド部102は、周波数選択部204と復調部205を備える。広帯域RFフロントエンド部101は、複数の周波数帯域の信号を含むアナログ信号を受信し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。デジタルベースバンド部において、周波数選択部204は、ADコンバータ203から出力されたデジタル信号から所定の周波数帯域を選択し、復調部205は、当該選択された周波数帯域の信号を復調する。所定の周波数帯域は、予め定められた複数の周波数帯域のうちのいずれか1つであり、周波数選択部204は、時分割で多重動作することにより、選択する周波数帯域を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号を受信、復調する無線信号受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に、渋滞情報、所定の位置までの所要時間、事故・故障車・工事情報、速度規制・車線規制情報、駐車場の位置情報、駐車場・サービスエリア・パーキングエリアの満車・空車情報などを知らせる道路交通情報通信システム(VICS)が普及している(以後、VICSによって提供される情報をVICS情報という)。
【0003】
VICSは、財団法人道路交通情報通信システムセンター(VICSセンター)が収集、処理、編集した道路交通情報を通信・放送メディアによって送信し、カーナビゲーションなどの車載装置に文字や図形(地図など)として表示させるシステムである。
【0004】
VICS情報は、電波ビーコンや光ビーコン、FM多重放送などを用いた手法により、提供される。これらの手法は、それぞれ用途(役割)が異なる。電波ビーコンは、主に高速道路上に設置されており、ビーコンの設置位置から約70mの範囲にいる車両に対して、その設置位置から約200km前方までの高速道路情報を提供する。光ビーコンは、主に主要幹線道路上に設置されており、ビーコンの設置位置から約3.5mの範囲にいる車両に対して、その設置位置から約10〜30km前方までの一般道路情報を提供する。FM多重放送は、使用する周波数帯が76〜90MHz(地域によって異なる)で、放送局の設置位置からおよそ一都道府県の広さの範囲にいる車両に対して(電波ビーコン及び光ビーコンに比べて発信範囲が非常に広い)、高速道路と一般道路を網羅する情報を提供する。
【0005】
FM多重放送を利用したVICS情報は、NHK−FMの放送波に多重化して提供されており、車両(の運転手)がNHK以外のチャンネルを聞いている場合にVICS情報を受信することができないという問題がある。
【0006】
このような問題は、車両にFMラジオのチューナーが2つ搭載されていれば解消することができる(現に、高級車などにはチューナーが2つ搭載されているものもあり、車両に搭載されているチューナーとは別に、カーナビゲーション装置にチューナーが搭載されているものなどもある)。しかし、チューナーが2つ搭載されている車両というのは極めて稀であり、車両に初めから付属しているカーナビゲーション装置にはチューナーが付属していないことが多い。また、車両にチューナーを2つ備えることは、コストの増大を招くため、好ましくない。そのため、チューナーの数を増やすことなく(1つのチューナーで)、複数のチャンネルの信号を同時に復調する技術が望まれている。
【0007】
このような無線信号の受信・復調に関する従来技術としては、特許文献1〜3がある。
【特許文献1】特開平7−79176号公報
【特許文献2】特開平11−88220号公報
【特許文献3】特開2002−198837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、1つのチューナーで複数のチャンネルの信号を同時に復調する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
【0010】
本発明に係る無線信号受信機は、広帯域RFフロントエンド部とデジタルベースバンド部を備える無線信号受信機であって、前記広帯域RFフロントエンド部は、複数の周波数帯域の信号を含むアナログ信号を受信し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するものであり、前記デジタルベースバンド部は、前記デジタル信号から、所定の周波数帯域を選択する周波数選択手段と、前記選択された周波数帯域の信号を復調する復調手段と、を備え、前記周波数選択手段は、時分割で多重動作することにより、選択する周波数帯域を切り替えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る無線信号受信機では、複数の周波数帯域を切り替え、それぞれの周波数帯域の信号を選択・復調することによって、1つのチューナーで複数の周波数帯域(チャンネル)の信号を復調することができる。更に、当該切り替えを時分割で多重に行うことによって、複数のチャンネルの信号を同時に復調することができる。すなわち、ユーザは、NHK以外のチャンネルを聞いていても、VICS情報を取得することができる。
【0012】
前記広帯域RFフロントエンド部は、前記受信したアナログ信号における所定の周波数帯域の信号のレベルを低下させるフィルタと、前記フィルタによる処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータと、を備えることが好ましい。これにより、受信局と放送局の位置関係によらず、全てのチャンネルの信号を復調することができる。
【0013】
例えば、放送局Xの近傍で遠方の放送局Yの信号も受信したい場合、放送局Xから発信される信号と放送局Yから発信される信号の受信信号強度に大きなレベル差が生じる。このレベル差がADコンバータのダイナミックレンジを超えると、遠方の放送局の信号はAD変換後に検出できなくなり、近傍の放送局の信号しか復調できなくなってしまう(ダイナミックレンジの広いADコンバータを用いることにより、この問題は解消されるが、装置が大掛かりになり、コストの増大を招く)。そこで、ダイナミックレンジ超過の原因となる信号のレベルを低下させ、チャンネル間のレベル差を小さくすることにより、コストの増大を招くことなく、全てのチャンネルの信号を復調することができる。
【0014】
前記広帯域RFフロントエンド部は、前記受信したアナログ信号の周波数を変換する変換器を更に備え、前記変換器は、前記アナログ信号において最も強いレベルを示す信号の周波数帯域が前記フィルタの周波数帯域と一致するように、前記アナログ信号の周波数を変換し、前記フィルタは、前記変換されたアナログ信号に対してフィルタ処理を行い、前記周波数選択手段は、前記変換器による周波数の変換量に応じて、選択する周波数帯域を低周波又は高周波側へシフトすることが好ましい。受信したアナログ信号において、最も強いレベルの信号と最も弱いレベルの信号とのレベル差がダイナミックレンジ内に納まっていれば、ダイナミックレンジの超過という問題は解消される。そこで、最も強いレベルの信号の周波数帯域をフィルタの周波数帯域と一致させる。これにより、ダイナミックレンジ超過の原因となる信号のレベルを低下することができるため、全てのチャンネルの信号を復調することができる。
【0015】
前記広帯域RFフロントエンド部は、それぞれ低下させる周波数帯域が異なる複数のフィルタと、前記複数のフィルタから、フィルタ処理に用いるフィルタを選択するフィルタ選択手段と、を更に備えることが好ましい。これにより、受信局の近傍の放送局が、複数の周波数帯域の信号を発信しているような場合でも(例えば、東京タワーは、76〜90MHzの周波数帯域のうち、6つの周波数帯域の信号を発信している)、それら複数の周波数帯域の信号を低下させることにより、全てのチャンネルの信号を復調することができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る無線信号受信機では、1つのチューナーで複数のチャンネルの信号を同時に復調することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0018】
<装置構成>
図1は、本発明の実施形態に係る無線信号受信機の機能構成を示すブロック図である。この無線信号受信機は、無線信号を受信、復調する装置であり、1つのチューナーで複数の周波数帯域(チャンネル)の信号を同時に復調することができる。本実施形態では、一例として、FMラジオ放送の周波数帯域(日本国内では76〜90MHz)の無線信号を受信する場合について説明する。
【0019】
無線信号受信機は、広帯域RFフロントエンド部101とデジタルベースバンド部102を備える(図1参照)。以下にそれぞれの機能及び構成について説明する。
【0020】
<広帯域RFフロントエンド部>
広帯域RFフロントエンド部101は、複数のチャンネルの信号を含むアナログ信号を受信し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して出力する機能である。本実施形態では、広帯域RFフロントエンド部101は、図1に示す増幅器201、周波数変換器202、及び、ADコンバータ203から構成される。
【0021】
増幅器201は、受信したアナログ信号を増幅する機能である。増幅器201としては、高周波増幅器等、既存の技術を適用すればよい。
【0022】
周波数変換器202は、増幅器201で増幅されたアナログ信号の周波数をより低い周波数に変換する機能である。周波数変換器202は、例えば、局部発振器301とミクサ302を組み合わせることによって構成される。アナログ信号は、局部発振器301のローカル周波数分だけ低周波側にシフトされる。
【0023】
ADコンバータ203は、周波数変換器202で変換されたアナログ信号をデジタル信号に変換する機能である。ADコンバータとしては、既存のADコンバータを適用すればよい。
【0024】
<デジタルベースバンド部>
デジタルベースバンド部102は、広帯域RFフロントエンド部101(具体的にはADコンバータ203)から出力されたデジタル信号から複数のチャンネルの信号を同時に復調する機能である。このデジタルベースバンド部102は、図1に示す周波数選択部204と復調部205から構成される。なお、デジタルベースバンド部102での処理は、デジタル処理であり、例えば、当該処理のほとんどをソフトウエアで実現することができる。
【0025】
周波数選択部204は、広帯域RFフロントエンド部101から出力されたデジタル信号から、所定のチャンネルを選択する機能である。所定のチャンネルは、予め定められた複数のチャンネルのうちのいずれか1つであり、周波数選択部204は、時分割で多重動作することにより、選択するチャンネルを切り替える。なお、予め定められた複数のチャンネルは、例えば、その地域の放送局から発信されている信号のチャンネルなどである。
【0026】
周波数選択部204における周波数選択処理は、アナログ的には、バンドパスフィルタ(BPF)などの既存のフィルタ回路に対応する。図2は、周波数選択部204の切り替え処理をアナログ的に表現した図である。図2に示すように、切り替え処理は、バンドパスフィルタ401〜405のそれぞれに対応して接続されたスイッチ406〜410のON/OFFを時分割で切り替えることによりなされる。バンドパスフィルタ401〜405は、それぞれ異なるチャンネルに対応しており、図2の例では、その地域で発信されている信号のチャンネルCH1〜CH5にそれぞれ対応している。
【0027】
復調部205は、周波数選択部204で選択されたチャンネルの信号を復調する機能である。
【0028】
<無線信号受信・復調機能>
以下に、無線信号受信機の機能及び処理の流れを説明する。本実施形態では、車両に、無線信号受信機として本発明に係る無線信号受信機のみが搭載されており、FMラジオのチャンネルCH1〜CH5およびVICSの信号を含むアナログ信号A1を受信する場合について説明する。但し、VICSの周波数帯域は、チャンネルCH3と等しいものとする。なお、アナログ信号A1に含まれるチャンネルCH1〜CH5の信号は、ぞれぞれ、信号SA1〜SA5である。VICSの信号はチャンネルCH3の信号SA3に含まれている。
【0029】
ユーザが無線信号受信機の電源を入れると、増幅器201が受信したアナログ信号を増幅し、周波数変換器202が増幅されたアナログ信号の周波数を低周波側にシフトする。そして、ADコンバータ203が低周波側にシフトされたアナログ信号をデジタル信号に変換する。上述したように、本実施形態ではアナログ信号A1を受信する。そして、当該アナログ信号A1が増幅、低周波数に変換された後、デジタル信号D1に変換される。なお、デジタル信号D1に含まれるチャンネルCH1〜CH5の信号は、ぞれぞれ、信号SD1〜SD5である。
【0030】
次に、周波数選択部204がADコンバータ203から出力されたデジタル信号から、所定のチャンネルを選択する。本実施形態では、チャンネルCH1〜CH5のいずれか1つが選択される。
【0031】
そして、復調部205が選択されたチャンネルの信号を復調する。
【0032】
無線信号受信機の電源が入っている間、周波数選択部204は、選択するチャンネル(チャンネルCH1〜CH5)を切り替え続ける。当該切り替え処理は、時分割で動作されるため、ユーザは、チャンネルCH1〜CH5の信号が同時に復調されているように感じることができる。
【0033】
上述したように、本実施形態では、周波数選択部204で選択するチャンネルを時分割で切り替えることにより、1つのチューナーで複数のチャンネルの信号を同時に復調することができる。これにより、ユーザがどのチャンネルを聞いていてもVICS情報を受信することができるようになる。
【0034】
<変形例1>
次に、車両が或る放送局の近傍に位置する場合について説明する。
【0035】
車両(受信局)と複数の放送局との距離が大きく異なる場合、受信信号強度(レベル)に大きな差が生じる。図3の例では、車両501と放送局502の間の距離が非常に近く(距離L1)、車両501と放送局503及び放送局504の間の距離(距離L2及び距
離L3)が距離L1に比べて非常に大きい。レベルは距離の二乗に反比例するため、車両と複数の放送局との距離がある程度離れていれば、車両と各放送局との距離に多少の違いがあったとしても、受信した信号のレベルに大きな差は生じないが、放送局の近くでは、車両と各放送局との距離が少し異なるだけで、受信した信号のレベルに大きな差が生じてしまう。
【0036】
その結果、図4(a)に示すように、車両501が受信するアナログ信号A2における、放送局502から発信された信号A502のレベルは非常に強く、放送局503及び放送局504から発信された信号A503及び信号A504のレベルは信号A502に比べて非常に弱いものとなる。最も強いレベルを示す信号A502と2番目に強いレベルを示す信号A504のレベル差D1がADコンバータ203のダイナミックレンジを超えている場合、AD変換後には放送局502からの信号しか検出できなくなってしまう。この問題は、ADコンバータ203として、ダイナミックレンジの広いADコンバータを用いることにより解消することができるが、装置が大掛かりになり、コストの増大を招いてしまう。
【0037】
変形例1では、図5のブロック図に示すように、広帯域RFフロントエンド部101がフィルタ601を更に備える構成を考える。なお、図1のブロック図に示す機能と同じ機能については同じ符号を付け、その説明は省略する。
【0038】
フィルタ601は、受信したアナログ信号における所定のチャンネルの信号のレベルを低下させる機能である。フィルタ601としては、ノッチフィルタなどの既存のフィルタ回路を適用すればよい。具体的には、フィルタ601は、所定の周波数を中心として1チャンネル分の周波数帯域(100kHz程度)の信号のレベルを低下させる。当該所定の周波数(阻止周波数)は、どのように設定してもよい。
【0039】
フィルタ601の周波数帯域が信号A502(図4(a))のチャンネルと一致していれば、当該信号A502のレベルを低下させることができ、アナログ信号A2を図4(b)に示すアナログ信号A3のように変換することができる。これにより、受信した全ての信号をダイナミックレンジ内に納めることができるため、コストの増大を招くことなく全ての信号を復調することができる。
【0040】
以下に、変形例1の無線信号受信機の機能及び処理の流れを説明する。変形例1でも、これまでの説明と同様に、車両がFMラジオのチャンネルCH1〜CH5のアナログ信号A1を受信する場合について説明する。
【0041】
ユーザが無線信号受信機の電源を入れると、増幅器201が受信したアナログ信号を増幅し、周波数変換器202が増幅されたアナログ信号の周波数を低周波側にシフトする。ただし、本実施形態では、初期状態での局部発振器301のローカル周波数を70MHzとする。つまり、76〜90MHzのアナログ信号A1は、周波数変換器202により、6〜20MHz((76−70)〜(90−70)MHz)のアナログ信号に変換される。
【0042】
次に、フィルタ601が、周波数変換されたアナログ信号における所定のチャンネルの信号のレベルを低下させる。本実施形態では、阻止周波数を21MHzとする。そのため、この段階では、レベルの低下は行われない。
【0043】
そして、ADコンバータ203が、フィルタ処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0044】
次に、周波数選択部204がADコンバータ203から出力されたデジタル信号から、所定のチャンネルを選択し、復調部205が当該選択されたチャンネルの信号を復調する。
【0045】
そして、無線信号受信機の電源が入っている間、周波数選択部204は、選択するチャンネル(チャンネルCH1〜CH5)を時分割で切り替え続ける。
【0046】
このとき、信号の無いチャンネルがある場合、それは「信号間のレベル差がADコンバータ203のダイナミックレンジを超えている」ということを意味する。その場合には、全てのチャンネルの中で最も強いレベルを示す信号のチャンネルを、フィルタ601の周波数帯域に一致させる。具体的には、局部発振器301のローカル周波数を変更することにより、最も強いレベルを示す信号の周波数をフィルタ601の阻止周波数に一致させる。ローカル周波数を変更すると同時に周波数選択部204に設定されているチャンネルの周波数も変更される。例えば、初期状態のローカル周波数に+3MHzの変更がなされる場合には、周波数選択部204に設定されているチャンネルにも+3MHzの変更がなされる。
【0047】
図6は、周波数変換されたアナログ信号におけるチャンネルCH1〜CH5の信号と、フィルタの阻止周波数とを、横軸を周波数、縦軸をレベルとするグラフに示した図である(簡単のため、各信号を棒グラフで表している)。図6の例では、チャンネルCH5の信号が18MHzで最も強いレベルを示している。そこで、局部発振器301のローカル周波数を67MHzにする。それにより、18MHzの信号は21MHzの信号に変換され、当該信号のレベルを低下させることができ、ひいてはADコンバータ203のダイナミックレンジを超えることなく、全ての信号をAD変換することができる。
【0048】
上述したように、変形例1では、広帯域RFフロントエンド部101にフィルタ601を更に備えることによって、ダイナミックレンジ超過の原因となる信号のレベルを低下させることができる。これにより、AD変換による信号の消滅を減らすことができる。
【0049】
<変形例2>
次に、車両の近傍の放送局から複数チャンネルの信号が発信されている場合について説明する。例えば、東京タワーは、76〜90MHzの周波数帯域で6つのチャンネルの信号を発信しているため、東京タワーの近くで遠くの放送局から発信されているチャンネルの信号を復調するには、東京タワーから発信されている6つのチャンネルの信号のレベルを下げる必要がある。
【0050】
そこで、変形例2では、図7のブロック図に示すように、広帯域RFフロントエンド部101が複数のフィルタ1001とフィルタ選択部1002を更に備える構成を考える。なお、図1または図7のブロック図に示す機能と同じ機能については同じ符号を付け、その説明は省略する。
【0051】
複数のフィルタ1001は、フィルタ601と同様の機能である。複数のフィルタ1001の周波数帯域は、ぞれぞれ、受信した信号のチャンネルに対応している。
【0052】
フィルタ選択部1002は、複数のフィルタ1001から、フィルタ処理に用いるフィルタを選択する機能である。フィルタ選択部1002としては、既存のスイッチ回路を適用すればよい。
【0053】
図8は、複数のフィルタ1001とフィルタ選択部1002の一例を示す図である。図8の例では、1つのフィルタに対して1つの切替スイッチが接続されている。当該切替ス
イッチは、そのフィルタをフィルタ処理に用いるか否かを選択する役目を担っている。当該スイッチがフィルタ側と接続されているとき、そのフィルタはフィルタ処理に用いられる。このスイッチの切り替えを、各フィルタについて行う。すなわち、ADコンバータのダイナミックレンジの超過を招くチャンネルに対応するフィルタにのみフィルタ処理がなされるようにスイッチを切り替える。これにより、近い放送局が複数あっても全ての信号を復調することができるようになる。
【0054】
以下に、変形例2の無線信号受信機の機能及び処理の流れを説明する。変形例2でも、これまでの説明と同様に、車両がFMラジオのチャンネルCH1〜CH5のアナログ信号A1を受信する場合について説明する。
【0055】
ユーザが無線信号受信機の電源を入れると、増幅器201が受信したアナログ信号を増幅し、周波数変換器202が増幅されたアナログ信号の周波数を低周波側にシフトする。
【0056】
図9(a)は、低周波側にシフトされたアナログ信号を、横軸を周波数、縦軸をレベルとするグラフに示した図である(簡単のため、各信号を棒グラフで表している)。図9の例では、チャンネルCH3及びチャンネルCH5の信号のレベルが、他の信号(チャンネルCH1、CH2、及びチャンネルCH4の信号)のレベルに比べ非常に強く、ダイナミックレンジの超過を招く。本実施形態では、以後の処理でチャンネルCH3及びチャンネルCH5の信号のレベルを低下する。
【0057】
次に、フィルタ選択部1001で選択されたフィルタが、周波数変換されたアナログ信号の所定のチャンネルの信号のレベルを低下させる。本実施形態では、図8に示す全てのスイッチがフィルタを選択していない状態をフィルタ選択部の初期状態とする。そのため、この段階で選択されているフィルタは無く、レベルの低下も行われない。
【0058】
そして、ADコンバータ203が、フィルタ処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0059】
次に、周波数選択部204がADコンバータ203から出力されたデジタル信号から、所定のチャンネルを選択し、復調部205が当該選択されたチャンネルの信号を復調する。
【0060】
そして、無線信号受信機の電源が入っている間、周波数選択部204は、選択するチャンネル(チャンネルCH1〜CH5)を時分割で切り替え続ける。
【0061】
このとき、信号の無いチャンネルがある場合には、全てのチャンネルの中で最も強いレベルを示すチャンネルに対応するフィルタのスイッチを切り替える。最も強いレベルを示すチャンネルが複数ある場合には、対応する複数のスイッチを切り替える。このスイッチの切り替えを繰り返すことにより、ダイナミックレンジ超過を招く信号が複数あっても、それらの信号を低下させることができる。
【0062】
図9(a)の例では、チャンネルCH5の信号のレベルが最も強いため、チャンネルCH5に対応するスイッチを切り替える。これにより、チャンネルCH5の信号のレベルが低下される(図9(b))。しかし、チャンネルCH3の信号のレベルは強いままであるので、信号の無いチャンネルが存在してしまう。そこで、チャンネルCH3に対応するスイッチが切り替えられ、チャンネルCH3の信号のレベルが低下される(図9(c))。これにより、全ての信号をダイナミックレンジ内に納めることができる。
【0063】
上述したように、変形例2では、広帯域RFフロントエンド部101に複数のフィルタ
1001とフィルタ選択部1002を更に備えることによって、ダイナミックレンジ超過の原因となる信号が複数存在していても、それらの信号のレベルを低下させることができる。これにより、全てのチャンネルの信号を復調することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、本発明をFMラジオ放送の受信機に適用した場合について説明したが、FMラジオ放送に限らず、周波数帯域の異なる複数のチャンネルが利用される無線信号受信機であれば、地上デジタルテレビ放送や、FDMA方式の通信など、どのようなものに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、無線信号受信機の機能構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、周波数選択部の切り替え処理をアナログ的に示した図である。
【図3】図3は、受信局と放送局の距離と、受信信号強度の関係を表す図である。
【図4】図4は、変形例1のフィルタ処理の一例を示す図である。
【図5】図5は、変形例1の無線信号受信機の機能構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、局部発振器のローカル周波数の制御方法を示す図である。
【図7】図7は、変形例2の無線信号受信機の機能構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、複数のフィルタとフィルタ選択部の一例を示す図である。
【図9】図9は、フィルタ選択処理及びフィルタ処理の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
101 広帯域RFフロントエンド部
102 デジタルベースバンド部
201 増幅器
202 周波数変換器
203 ADコンバータ
204 周波数選択部
205 復調部
301 局部発振器
302 ミクサ
401〜405 バンドパスフィルタ
406〜410 スイッチ
501 車両
502〜504 発信局
601,1001 フィルタ
1002 フィルタ選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域RFフロントエンド部とデジタルベースバンド部を備える無線信号受信機であって、
前記広帯域RFフロントエンド部は、複数の周波数帯域の信号を含むアナログ信号を受信し、当該アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するものであり、
前記デジタルベースバンド部は、
前記デジタル信号から、所定の周波数帯域を選択する周波数選択手段と、
前記選択された周波数帯域の信号を復調する復調手段と、
を備え、
前記周波数選択手段は、時分割で多重動作することにより、選択する周波数帯域を切り替える
ことを特徴とする無線信号受信機。
【請求項2】
前記広帯域RFフロントエンド部は、
前記受信したアナログ信号における所定の周波数帯域の信号のレベルを低下させるフィルタと、
前記フィルタによる処理後のアナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータと、
を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の無線信号受信機。
【請求項3】
前記広帯域RFフロントエンド部は、前記受信したアナログ信号の周波数を変換する変換器を更に備え、
前記変換器は、前記アナログ信号において最も強いレベルを示す信号の周波数帯域が前記フィルタの周波数帯域と一致するように、前記アナログ信号の周波数を変換し、
前記フィルタは、前記変換されたアナログ信号に対してフィルタ処理を行い、
前記周波数選択手段は、前記変換器による周波数の変換量に応じて、選択する周波数帯域を低周波又は高周波側へシフトする
ことを特徴とする請求項2に記載の無線信号受信機。
【請求項4】
前記広帯域RFフロントエンド部は、
それぞれ低下させる周波数帯域が異なる複数のフィルタと、
前記複数のフィルタから、フィルタ処理に用いるフィルタを選択するフィルタ選択手段と、
を更に備える
ことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の無線信号受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−55551(P2009−55551A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222761(P2007−222761)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】