説明

無線検針システム

【課題】無線子機の機能や機器に応じて応答電文の送信時間が変化し、あるいは複数チャネルを使用したとしても、送信タイミングの重なりによる混信の問題を回避するとともに送信間隔を最適化して複数のメータから効率良くデータ収集できる無線検針システムを提供する。
【解決手段】複数のメータ3−1〜3−nの各々に対応して接続される複数の無線子機5−1〜5−nと、複数の無線子機5−1〜5−nの各々との間で無線通信を行う無線親機4と、複数のメータ3−1〜3−nの各々から情報を取得するハンディターミナル1とを備え、ハンディターミナル1は、予め入力された複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成するとともに、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に対して生成した送信タイミング情報を送信し、複数の無線子機5−1〜5−nの各々は、送信タイミング情報に基づいて、無線親機4に対する応答電文の送信タイミングを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量計やガスメータ・水道メータ等の計量値を無線通信により収集して検針を行う無線検針システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各家庭に設けられた電気、ガス、水道等の使用量を計量するメータの検針は、検針員が直接目視することにより行われていた。この場合において、検針員は、目視して得た検針値を検針員の持つハンディターミナルに手動で入力する。しかしながら、オートロックマンション等の増加により、検針員がメータ設置箇所に立ち入ること自体が困難になっているため、遠隔からの検針が可能な検針システムが求められている。
【0003】
そこで、メータに無線端末を取り付け、検針員の持つハンディターミナルあるいはセンタ装置と無線通信を行うことで、遠隔地のメータの検針値を取得できる無線検針システムが提案されている。通常このような無線検針システムは、ハンディターミナルあるいはセンタ装置等の上位装置と、当該上位装置に接続される無線親機と、各メータに接続された無線子機とを備え、無線通信により遠隔からの検針を可能としている。
【0004】
このような無線検針システムにおいて、無線子機は、通常、電池を動力源としているため、消費電力を抑えて電池の消耗を低減するために、間欠的にキャリアセンス動作を行い、無線親機からの無線通信の有無を判別している。そのため、無線親機は、最初の要求において無線子機が確実に受信できるように、無線子機によるキャリアセンス動作間隔よりも長い時間送信を継続する必要がある。
【0005】
ここで、マンション等のように1台の無線親機に対して多くの無線子機が存在する場所において無線子機の各々に接続されたメータから計量値の情報を収集する場合を考える。上述した事情により、無線親機から無線子機に対する最初の呼び出し要求にはある程度の時間を要するため、仮に無線親機が全ての無線子機に対して順番に通信を行うとすると、無線親機は、全ての無線子機から情報を収集するのに非常に長い時間を要することになる。
【0006】
したがって、上位装置の要求により複数のメータから計量値等のデータを収集する場合には、無線親機は、複数の無線子機の各々に対して同報パケットを一括して送信し、それぞれの無線子機に接続されたメータからデータを収集する。この場合に、メータからデータを取得した無線子機の各々が無線親機に対して同時に応答電文を送信すると混信等の問題が生ずるため、無線子機の各々は、互いに送信タイミングをずらして無線親機に対して応答電文を送信する必要がある。
【0007】
図7は、従来の無線検針システムにおける無線親機による同報パケットによる要求と複数の無線子機による応答のタイミングを示す図である。無線親機が起動電文を含む同報パケットにより複数の無線子機に対してデータの要求を行うと、無線子機の各々は、互いに送信タイミングをずらして無線親機に対して応答電文を送信する。各無線子機は、例えば図7に示すように、自己の送信順序及び各子機が送信を行うのに必要な応答電文の送信時間を記憶しており、当該記憶に基づいて自己の応答電文の送信開始時刻を決定する。
【0008】
特許文献1には、同報パケットの無線送信時にキャリアセンス多元接続(CSMA)方式による動作が安定して正常機能し、常時中継局相互間で無線通信が可能なパケット通信システムが記載されている。このパケット通信システムにおける複数の中継局の各々は、自己が同報パケットを送信する順番及び保留時間を記憶している。したがって、このパケット通信システムによれば、少なくとも1つの基地局から複数の中継局を経由して少なくとも1つの端末局に同報パケットをCSMA方式無線回線の利用により無線送信する際に、所定数の中継局において予め定められた送信順序に従って所定の保留時間を順次挿入回数を増加させて挿入することによって互いに同報パケットの送信タイミングをずらすようにしているので、CSMA動作が安定して正常に機能し、これによって送信競合により通信支障を来すことが回避されてパケット損失が無くなるという効果を有する。
【0009】
詳述すると、特許文献1に記載のパケット通信システムにおいて、各中継局が有する保留時間は、送信する同報パケット長の最小値よりも短く設定されている。したがって、各中継局は、送信順序が自己の中継局の1つ前の中継局により送信が行われている最中に送信待ち状態となり、当該1つ前の中継局による送信終了後に直ちに送信を開始することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−355293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図7で説明した従来の無線検針システムにおける各無線子機は、他の無線子機による応答時間が一定あるいは既知のものであることを前提としているため、応答電文の内容や無線子機によって応答時間が変化する場合には対応が困難である。同様に、特許文献1に記載のパケット通信システムにおける各中継局は、各中継局により送られる無線パケット長を一定あるいは既知の値であることを前提として保留時間を挿入している。したがって、このパケット通信システムは、パケット長が変化する場合には保留時間の挿入タイミングの決定が困難となるという短所を有する。
【0012】
仮にパケット長の最小値を「各中継局が送信を行うのに必要な時間」として記憶していたとしても、変化するパケット長の最小値と最大値との差が2倍以上ある場合には、複数の中継局が送信待ちになる場合が考えられる。このような場合に、送信待ちが解除されると、複数の中継局が同時に送信を行ってしまい、混信等の問題が生ずる。この問題は、特許文献1に記載の中継局による送信タイミングの決定方法を無線検針システムの無線子機に適用したとしても、同様に生ずる。
【0013】
また、図7で説明したように、従来の無線検針システムにおける複数の無線子機の各々は、送信順序及び送信間隔を固定で記憶しているため、無線子機が新たに追加された場合や新たな機器に交換された場合、あるいはパケット長の最小値が変わってしまった場合の対応が困難であり、送信間隔が最適化されないという短所も有する。
【0014】
さらに、近年の無線検針システムにおける無線子機は、複数のチャネルにより無線通信可能に構成されているものが多い。したがって、他の無線子機が送信中であることを検知した場合でも、各無線子機は、別のチャネルを使用して応答電文を送信してしまうことが考えられ、やはり混信等の問題が生じてしまう。
【0015】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、無線子機の機能や機器に応じて応答電文の送信時間が変化し、あるいは複数チャネルを使用したとしても、送信タイミングの重なりによる混信の問題を回避するとともに送信間隔を最適化して複数のメータから効率良くデータ収集できる無線検針システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る無線検針システムは、上記課題を解決するために、第1の発明は、複数のメータの各々に対応して接続される複数の無線子機と、前記複数の無線子機の各々との間で無線通信を行う無線親機と、前記無線親機に接続され、前記無線親機及び前記複数の無線子機を介して前記複数のメータの各々から情報を取得する上位装置とを備え、前記上位装置は、予め入力された前記複数の無線子機の各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成するとともに、前記複数のメータの各々に対して情報を要求する際に、前記複数の無線子機の各々に対して生成した送信タイミング情報を前記無線親機を介して送信し、前記複数の無線子機の各々は、前記上位装置により生成された送信タイミング情報に基づいて、前記無線親機に対する応答電文の送信タイミングを決定し、前記上位装置は、前記送信タイミング情報として、所定の送信間隔と送信順序とのうち少なくとも一つを生成することを特徴とする。
【0017】
第2の発明は、複数のメータの各々に対応して接続される複数の無線子機と、前記複数の無線子機の各々との間で無線通信を行う無線親機と、前記無線親機に接続され、前記無線親機及び前記複数の無線子機を介して前記複数のメータの各々から情報を取得する上位装置とを備え、前記無線親機は、予め入力された前記複数の無線子機の各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成するとともに、前記上位装置の要求に応じて前記複数の無線子機の各々に対して情報要求電文を送信する際に、前記複数の無線子機の各々に対して生成した送信タイミング情報を送信し、前記複数の無線子機の各々は、前記無線親機により生成された送信タイミング情報に基づいて、前記無線親機に対する応答電文の送信タイミングを決定し、前記無線親機は、前記送信タイミング情報として、所定の送信間隔と送信順序とのうち少なくとも一つを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無線子機の機能や機器に応じて応答電文の送信時間が変化し、あるいは複数チャネルを使用したとしても、送信タイミングの重なりによる混信の問題を回避するとともに送信間隔を最適化して複数のメータから効率良くデータ収集をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1の形態の無線検針システムの運用時の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の形態の無線検針システムにおける無線親機及び無線子機の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1の形態の無線検針システムにおけるハンディターミナルの詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1の形態の無線検針システムにおける無線親機からの同報パケットによる要求と複数の無線子機による応答のタイミングを示す図である。
【図5】本発明の実施例1の形態の無線検針システムにおける無線親機からの要求電文の1例を示す図である。
【図6】本発明の実施例2の形態の無線検針システムの構成を示すブロック図である。
【図7】従来の無線検針システムにおける無線親機からの同報パケットによる要求と複数の無線子機による応答のタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の無線検針システムの実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1の無線検針システムの運用時の構成を示すブロック図である。図1を参照して、無線検針システムの構成を説明する。本実施例の無線検針システムは、図1に示すように、ハンディターミナル1及び無線検針装置2aからなり、無線検針装置2aにおいて複数のメータ3−1〜3−nの検針データを収集するシステムである。また、無線検針装置2aは、無線親機4と複数(n台)の無線子機5−1〜5−nとを備えている。メータ3−1〜3−nの検針を行う運用時において、無線親機4は、複数の無線子機5−1〜5−nの各々との間で無線通信を行う。複数(n台)の無線子機5−1〜5−nの各々は、複数(n個)のメータ3−1〜3−nの各々に対応して1対1で接続されている。
【0022】
ハンディターミナル1は、本発明の上位装置に対応し、無線親機4に接続され、無線親機4及び複数(本実施例ではn台)の無線子機5−1〜5−nを介して下位装置であるメータ3−1〜3−nに計量値を要求し、あるいはメータ3−1〜3−nに設定された時刻や需給パターン等の設定値を要求することにより、複数のメータ3−1〜3−nの各々から情報を取得する。
【0023】
また、ハンディターミナル1は、検針員等の外部入力により予め入力された複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成するとともに、複数のメータ3−1〜3−nの各々に対して情報を要求する際に、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に対して生成した送信タイミング情報を無線親機4を介して送信する。なお、ハンディターミナル1の詳細な構成については後述する。
【0024】
また、本発明を実施するに際し、無線子機は、複数あれば良く、メータ等の下位装置に接続されている。複数の無線子機5−1〜5−nの各々は、上位装置であるハンディターミナル1により生成された送信タイミング情報に基づいて、無線親機4に対する応答電文の送信タイミングを決定する。
【0025】
図2は、本実施例の無線検針システムにおける無線親機4及び無線子機5の詳細な構成を示すブロック図である。なお、図2における無線検針システムは、簡単のために無線子機5を1台のみ備えているように記載されているが、実際には図1に示すように複数台の無線子機5−1〜5−nを備えており、各無線子機内部の構成は同じであるとする。
【0026】
まず、無線子機5について説明する。無線子機5は、アンテナ13、無線送受信部14、制御部15、記憶部16、I/F部17、表示部18、及び通信端子19を備えている。I/F部17は、運用時において通信端子19を介してメータ3に接続され、メータ3との間で有線通信を行う。無線送受信部14は、運用時においてアンテナ13を介して無線親機4との間で無線通信を行う。
【0027】
制御部15は、無線子機5の全体を制御する。特に、本実施例における制御部15は、上述したように、ハンディターミナル1により生成された送信タイミング情報に基づいて、無線親機4に対する応答電文の送信タイミングを決定する。
【0028】
記憶部16は、無線通信に必要な情報を記憶する。例えば、記憶部16は、ハンディターミナル1により生成された送信タイミング情報を一時的に記憶する。表示部18は、無線子機5の状態を表示する。
【0029】
次に、無線親機4について説明する。無線親機4は、アンテナ6、無線送受信部7、制御部8、記憶部9、I/F部10、表示部11、及び短距離無線送受信部12を備えている。I/F部10は、運用時において短距離無線送受信部12を介してハンディターミナル1に接続され、ハンディターミナル1との間で無線通信を行う。無線送受信部7は、運用時においてアンテナ6を介して無線子機5との間で無線通信を行う。制御部8は、無線親機4の全体を制御する。記憶部9は、自己のID等の無線通信に必要な情報を記憶する。表示部11は、無線親機4の状態を表示する。
【0030】
なお、本実施例において、無線親機4は、短距離無線通信を利用してハンディターミナル1との間で通信を行っているが、必ずしもこれに限るものではなく、有線接続による通信を利用してもよいし、ブルートゥースや赤外線通信を利用するものでもよい。
【0031】
図3は、本実施例の無線検針システムにおけるハンディターミナル1の詳細な構成を示すブロック図である。図3に示すように、ハンディターミナル1は、入力部25、制御部26、表示部27、短距離無線送受信部28、及び記憶部29により構成される。
【0032】
入力部25は、タッチパネルやハンディターミナル1の表面に設けられたキー等であり、検針員等は入力部25を操作することにより、情報をハンディターミナル1に入力する。
【0033】
制御部26は、ハンディターミナル1における動作全体を制御する。特に、本実施例における制御部26は、上述したように、検針員等の外部入力により予め入力された複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成するとともに、複数のメータ3−1〜3−nの各々に対して情報を要求する際に、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に対して生成した送信タイミング情報を無線親機4を介して送信する。
【0034】
短距離無線送受信部28は、無線親機4内の短距離無線送受信部12との間で短距離無線通信により接続を行う。なお、上述したように、ハンディターミナル1は、有線通信により無線親機4と接続することも可能であり、その場合には短距離無線送受信部28は不要である。
【0035】
記憶部29は、入力部25を介して入力された複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間の情報や、複数のメータ3−1〜3−nの各々から無線親機4及び無線子機5を介して得た検針結果等の情報を記憶する。表示部27は、制御部26の制御に基づいて必要な情報を表示する。
【0036】
なお、複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間の情報とは、様々な種類の要求コマンドに対応する無線子機毎の応答所要時間がテーブルとして記憶部29に記憶されたものである。ただし、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に接続されたメータ3−1〜3−nがいずれも同じ種類のメータである場合には、応答所要時間はいずれの無線子機も同じであると考えられるため、記憶部29は、必ずしも無線子機毎に応答所要時間のテーブルを記憶する必要は無く、様々な種類の要求コマンドに対応する当該種類のメータに接続された無線子機の応答所要時間及び無線子機の台数を記憶するのみでよい。
【0037】
一方、複数の無線子機5−1〜5−nが様々な種類のメータ(電力量計、ガスメータ、水道メータ等)に接続されている場合には、同じ要求コマンドでも無線子機毎に応答所要時間が異なると考えられるため、記憶部29は、無線子機毎に応答所要時間のテーブルを記憶する必要がある。
【0038】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。まず、検針員等は、ハンディターミナル1の入力部25から複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間を入力する。ハンディターミナル1内の制御部26は、入力された複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間に関する情報を記憶部29に記憶させるとともに、必要な情報を表示部27に表示させる。
【0039】
なお、記憶部29は、予め様々な種類のメータに対応した無線子機の応答所要時間のデータを記憶していてもよい。その場合には、検針員等は、無線子機に接続されたメータの種類及び台数をハンディターミナル1に入力するのみでよく、入力作業に必要な労力を軽減することができる。
【0040】
次に、ハンディターミナル1による検針動作(計量値取得動作)について説明する。まず、検針員等が入力部25を介して複数のメータ3−1〜3−nの各々における計量値等の情報を要求する旨の入力を行うと、ハンディターミナル1(制御部26)は、予め入力され記憶部29に記憶された複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成する。
【0041】
ここで、送信タイミング情報について具体的に説明する。上述したように、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に接続されたメータ3−1〜3−nがいずれも同じ種類のメータである場合には、応答所要時間はいずれの無線子機も同じであると考えられる。この場合には、ハンディターミナル1(制御部26)は、送信タイミング情報として、所定の送信間隔と送信順序とのうち少なくとも一つを生成することができる。例えば、計量値要求に対する応答所要時間がいずれの無線子機も3秒であったとすると、ハンディターミナル1(制御部26)は、「所定の送信間隔」を3秒あるいはわずかに3秒よりも短い時間に設定するとともに、各無線子機の送信順序を決定することにより、無線子機毎の送信タイミングを決定することができる。
【0042】
また、複数の無線子機5−1〜5−nが様々な種類のメータ(電力量計、ガスメータ、水道メータ等)に接続されている場合には、無線子機毎に応答所要時間が異なると考えられるため、ハンディターミナル1(制御部26)は、送信タイミング情報として、無線子機毎の詳細な送信タイミング時刻を生成する必要がある。
【0043】
図4は、本実施例の無線検針システムにおける無線親機4からの同報パケットによる要求と複数の無線子機による応答のタイミングを示す図である。なお、無線子機の台数は3台であるものとする(n=3)。例えば、3台の無線子機5−1〜5−3の各々に接続されたメータ3−1〜3−3がいずれも同じ種類のメータであるとすると、応答所要時間はいずれの無線子機も同じであると考えられる。この場合には、ハンディターミナル1(制御部26)は、送信タイミング情報として、所定の送信間隔(例えば3秒)及び送信順序を生成する。
【0044】
次に、ハンディターミナル1(制御部26)は、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に対して生成した送信タイミング情報を無線親機4を介して送信する。具体的には、ハンディターミナル1は、まず無線親機4に対して生成した送信タイミング情報とともに検針要求の電文を送信する。無線親機4は、送信タイミング情報を含む検針要求の電文を受信すると、無線通信により検針要求の電文を無線子機5に送信する。すなわち、無線親機4により各無線子機に対して送信される電文は、図4に示すように同報パケットによる検針要求の電文に送信タイミング情報(保留時間)を付加したものである。
【0045】
一方、無線親機4からアンテナ13を介して検針要求電文を受信した無線子機5−1〜5−nの各々が備える制御部15は、受信した電文が検針要求の電文であることを認識する。その後、無線子機5−1〜5−nの各々が備える制御部15は、I/F部17及び通信端子19を介して有線通信により検針要求の電文を自己の無線子機が接続されたメータ3−1〜3−nのいずれかに送信する。
【0046】
検針要求の電文を受信したメータ3−1〜3−nの各々は、計量値の情報を含む検針応答の電文を生成し、有線通信により自己のメータに接続された無線子機5−1〜5−nのいずれかに送信する。無線子機5−1〜5−nの各々が備える制御部15は、無線送受信部14及びアンテナ13を介して無線親機4に検針応答の電文を無線通信で送信する。
【0047】
各無線子機は、送信タイミング情報に基づいたタイミングで、自己に接続されたメータから取得した検針応答の電文を無線親機4に送信する。ここで、3台の無線子機5−1〜5−3の各々に接続されたメータ3−1〜3−3は、いずれも同じ種類のメータであるものとする。1例として、図4に示すように、送信順序が1番目の無線子機5−1は、時刻tにおいて応答電文の送信を開始する。この無線子機5−1による送信は、3秒後の時刻tに終了する。次に、送信順序が2番目の無線子機5−2は、時刻tから3秒後の時刻tにおいて応答電文の送信を開始する。この無線子機5−2による送信も、3秒後の時刻tに終了する。最後に、送信順序が3番目の無線子機5−3は、時刻tから6秒後の時刻tにおいて応答電文の送信を開始する。
【0048】
一方、複数の無線子機5−1〜5−nが様々な種類のメータ(電力量計、ガスメータ、水道メータ等)に接続されているとすると、無線子機毎に応答所要時間が異なると考えられる。この場合には、ハンディターミナル1(制御部26)は、送信タイミング情報として、各無線子機の送信開始時刻の情報を生成する。例えば、図5は、本実施例の無線検針システムにおける無線親機4からの要求電文の1例を示す図である。メータの種類が異なる場合には無線子機毎に応答所要時間が異なるため、ハンディターミナル1は、図5に示すように無線子機毎に送信間隔を指定した送信タイミング情報を生成する必要がある。
【0049】
例えば、検針要求に対して無線子機5−1の応答所要時間は5秒であり、無線子機5−2の応答所要時間は3秒であり、無線子機5−3の応答所要時間は4秒であるとする。その場合に、ハンディターミナル1は、図5に示す要求電文において無線子機5−1の送信間隔を0秒、無線子機5−2の送信間隔を5秒、無線子機5−3の送信間隔を8秒に指定する。この場合に、図4において、送信順序が1番目の無線子機5−1は、時刻t(時刻tから0秒)において応答電文の送信を開始する。この無線子機5−1による送信は、5秒後の時刻tに終了する。次に、送信順序が2番目の無線子機5−2は、時刻tから5秒後の時刻tにおいて応答電文の送信を開始する。この無線子機5−2による送信は、3秒後の時刻tに終了する。最後に、送信順序が3番目の無線子機5−3は、時刻tから8秒後の時刻tにおいて応答電文の送信を開始する。
【0050】
以上のようにして応答電文を受信した無線親機4は、受信した検針応答の電文をハンディターミナル1に送信する。ハンディターミナル1は、受信した検針応答の電文に基づいて、メータ3−1〜3−nの各々から取得した計量値を記憶部29に記憶させ、あるいは表示部27に表示させる。
【0051】
以上説明したように、図1に示す無線検針システムは、検針対象の複数のメータ3−1〜3−nを一括検針することができる。
【0052】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る無線検針システムによれば、無線子機の機能や機器に応じて応答電文の送信時間が変化し、あるいは複数チャネルを使用したとしても、送信タイミングの重なりによる混信の問題を回避するとともに送信間隔を最適化して複数のメータから同報により効率良くデータ収集することができる。
【0053】
すなわち、本発明の無線検針システムは、従来の無線検針システムのように送信間隔や送信順序等の送信タイミング情報を無線子機に設定するのではなく、ハンディターミナル1が各無線子機の応答時間に関する情報を記憶した上で、最適化された形で各無線子機の送信タイミングを決定するので、無線子機の機能や機器に応じた応答電文の送信時間の変化、あるいは複数チャネルの使用といった事情にかかわらず、複数の無線子機が送信待ちとなる状態や送信タイミングが重なるといった事態を回避することができる。また、本発明の無線検針システムは、新たな機能を有するメータ等の機器が登場したとしても、当該メータ等の機器を接続した場合の無線子機の応答時間をハンディターミナル1に設定するのみでよく、システムの拡張性に優れている。
【0054】
さらに、本発明の無線検針システムは、機能の異なる機器(例えば電力量計、ガスメータ等)がそれぞれ無線子機5−1〜5−nのいずれかに接続されているために、同じ要求コマンドに対する応答時間が無線子機毎に異なったとしても、最適化された形で各無線子機の送信タイミングを決定し、同報により効率良くデータ収集を行うことができる。
【0055】
なお、実施例1の変形例として、ハンディターミナル1の代わりに無線親機4が送信タイミングを決定する無線検針システムが挙げられる。この場合における無線検針システムは、図1乃至図3に示す無線検針システムと同一の構成を有する。ただし、ハンディターミナル1は、送信タイミング情報を生成する機能を有しない。一方、無線親機4は、予め入力された複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成するとともに、ハンディターミナル1の要求に応じて複数の無線子機5−1〜5−nの各々に対して情報要求電文を送信する際に、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に対して生成した送信タイミング情報を送信する。
【0056】
なお、無線親機4は、複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間の情報を取得する際に、必ずしも検針員等や施工者の手入力により取得する必要は無く、無線親機4が自ら複数の無線子機5−1〜5−nの各々から自動的に情報を取得する構成としてもよい。
【0057】
また、複数の無線子機5−1〜5−nの各々は、無線親機4により生成された送信タイミング情報に基づいて、無線親機4に対する応答電文の送信タイミングを決定する。
【0058】
また、上述したように、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に接続されたメータ3−1〜3−nがいずれも同じ種類のメータである場合には、応答所要時間はいずれの無線子機も同じであると考えられる。この場合には、無線親機4は、送信タイミング情報として、所定の送信間隔と送信順序とのうち少なくとも一つを生成することができる。例えば、計量値要求に対する応答所要時間がいずれの無線子機も3秒であったとすると、無線親機4は、「所定の送信間隔」を3秒あるいはわずかに3秒よりも短い時間に設定するとともに、各無線子機の送信順序を決定することにより、無線子機毎の送信タイミングを決定することができる。
【0059】
この変形例となる無線検針システムによる作用・効果は、送信タイミング情報の生成がハンディターミナル1の代わりに無線親機4で行われることを除けば上述した無線検針システムと同一であるため、重複した説明を省略する。
【実施例2】
【0060】
図6は、本発明の実施例2の無線検針システムの運用時の構成を示すブロック図である。実施例1の無線検針システムと異なる点は、ハンディターミナル1の代わりにセンタ装置30、通信回線31、及び網制御装置32が備えられている点であり、その他の構成は実施例1と同様である。なお、図6には無線子機5とメータ3が1台ずつ記載されているが、実際の無線検針システムは、図1に示すように、複数の無線子機5−1〜5−nを備えており、その各々は複数のメータ3−1〜3−nに接続されているものとする。
【0061】
センタ装置30、通信回線31、及び網制御装置32は、本発明の上位装置に対応し、網制御装置32と無線親機4とが短距離無線により接続され、無線親機4及び複数の無線子機5(5−1〜5−n)を介して複数のメータ3(3−1〜3−n)等の下位装置から情報を取得する。すなわち、本実施例の無線検針システムは、センタ装置30の検針要求に応じて、電話回線等の通信回線31を利用してメータ3の検針を行う。
【0062】
なお、網制御装置と無線親機4とは、短距離無線の代わりに有線により接続されていてもよい。また、センタ装置30は、通信回線31を介して網制御装置32と通信を行う装置であり、通常は各メータ等に対して遠隔地に存在する。
【0063】
センタ装置30は、予め入力された複数の無線子機5−1〜5−nの各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成するとともに、複数のメータ3−1〜3−nの各々に対して情報を要求する際に、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に対して生成した送信タイミング情報を通信回線31、網制御装置32、及び無線親機4を介して送信する。
【0064】
上述したように、複数の無線子機5−1〜5−nの各々に接続されたメータ3−1〜3−nがいずれも同じ種類のメータである場合には、応答所要時間はいずれの無線子機も同じであると考えられる。この場合には、センタ装置30は、送信タイミング情報として、所定の送信間隔と送信順序とのうち少なくとも一つを生成することができる。
【0065】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。センタ装置30からの検針動作(計量値取得動作)について説明する。センタ装置30は、通信回線31及び網制御装置32を介して、無線親機4に対して生成した送信タイミング情報とともに検針要求の電文を送信する。無線親機4は、送信タイミング情報を含む検針要求の電文を受信すると、無線通信により検針要求の電文を無線子機5−1〜5−nの各々に送信する。
【0066】
一方、無線親機4からアンテナ13を介して検針要求電文を受信した無線子機5は、検針要求の電文であることを認識する。その後、無線子機5−1〜5−nの各々内の制御部15は、I/F部17及び通信端子19を介して有線通信により検針要求の電文をメータ3−1〜3−nの各々に送信する。
【0067】
検針要求の電文を受信したメータ3−1〜3−nの各々は、計量値の情報を含む検針応答の電文を生成し、有線通信により無線子機5−1〜5−nの各々に送信する。無線子機5−1〜5−nの各々内の制御部15は、無線送受信部14及びアンテナ13を介して無線親機4に検針応答の電文を無線通信で送信する。その際に、複数の無線子機5−1〜5−nの各々は、センタ装置30により生成された送信タイミング情報に基づいて、無線親機4に対する応答電文の送信タイミングを決定する。また、無線親機4は、受信した検針応答の電文を網制御装置32及び通信回線31を介してセンタ装置30に送信する。
【0068】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る無線検針システムによれば、実施例1の効果に加え、遠隔地のセンタ装置30から検針を行うことが可能であり、各無線子機の送信タイミングをセンタ装置30で決定し、最適な順序・タイミングで各無線子機に応答電文を送信させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る無線検針システムは、電力量計やガスメータ・水道メータ等の計量値を無線通信により収集して検針を行う無線検針システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 ハンディターミナル
2,2a 無線検針装置
3 メータ
4 無線親機
5 無線子機
6 アンテナ
7 無線送受信部
8 制御部
9 記憶部
10 I/F部
11 表示部
12 短距離無線送受信部
13 アンテナ
14 無線送受信部
15 制御部
16 記憶部
17 I/F部
18 表示部
19 通信端子
25 入力部
26 制御部
27 表示部
28 短距離無線送受信部
29 記憶部
30 センタ装置
31 通信回線
32 網制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメータの各々に対応して接続される複数の無線子機と、
前記複数の無線子機の各々との間で無線通信を行う無線親機と、
前記無線親機に接続され、前記無線親機及び前記複数の無線子機を介して前記複数のメータの各々から情報を取得する上位装置とを備え、
前記上位装置は、予め入力された前記複数の無線子機の各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成するとともに、前記複数のメータの各々に対して情報を要求する際に、前記複数の無線子機の各々に対して生成した送信タイミング情報を前記無線親機を介して送信し、
前記複数の無線子機の各々は、前記上位装置により生成された送信タイミング情報に基づいて、前記無線親機に対する応答電文の送信タイミングを決定し、
前記上位装置は、前記送信タイミング情報として、所定の送信間隔と送信順序とのうち少なくとも一つを生成することを特徴とする無線検針システム。
【請求項2】
複数のメータの各々に対応して接続される複数の無線子機と、
前記複数の無線子機の各々との間で無線通信を行う無線親機と、
前記無線親機に接続され、前記無線親機及び前記複数の無線子機を介して前記複数のメータの各々から情報を取得する上位装置とを備え、
前記無線親機は、予め入力された前記複数の無線子機の各々が応答に必要とする時間に基づいて各無線子機による応答電文の送信タイミング情報を生成するとともに、前記上位装置の要求に応じて前記複数の無線子機の各々に対して情報要求電文を送信する際に、前記複数の無線子機の各々に対して生成した送信タイミング情報を送信し、
前記複数の無線子機の各々は、前記無線親機により生成された送信タイミング情報に基づいて、前記無線親機に対する応答電文の送信タイミングを決定し、
前記無線親機は、前記送信タイミング情報として、所定の送信間隔と送信順序とのうち少なくとも一つを生成することを特徴とする無線検針システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−271897(P2010−271897A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122894(P2009−122894)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(309042071)東光東芝メーターシステムズ株式会社 (41)
【出願人】(391025497)ティー・エム・ティー株式会社 (32)
【Fターム(参考)】