説明

無線認証システム

【課題】検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、各センサ間で共通の無線通信帯域を使用して時分割多元接続で前記無線タグと通信を行うにあたって、センサの設置作業を簡略化する。
【解決手段】最初のセンサS1が自機で使用するスロットNo.1を使用スロット通知として送信し、それに続くセンサS2,S3がそのスロットNo.1を除いて空きスロットを検出し、同様にスロットNo.2を使用スロット通知として送信する。その通知の衝突がセンサS1で検出されると、再度スロット選択をやり直させる。こうして、隣接するセンサ間で同一のスロットを使用しないように自動的に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ(子局)を携帯したユーザや前記無線タグが貼付けられた商品などの検知対象を、前記無線タグがセンサ(親局、リーダー)と通信を行うことで検出するようにした無線認証システムに関し、特に前記無線タグの所在や通過した軌跡を検知できるように、前記検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置されて、漏れなく検知するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入退室管理用途などに、ユーザが携帯したり、商品に貼付けられた前記無線タグ(子局)をセンサ(親局、リーダー)で検知して、適切なサービスを行う無線認証システムが使用されている。たとえば、前記ユーザが携帯する無線タグとの間で認証処理を実行して、近傍の自動ドアに開閉制御をかける入退室制御のシステムであったり、携帯型コンピュータ等の資産に取付けた無線タグを出入り口に設置したセンサで検知することで資産の持ち出し管理を行う資産管理システムであったり、荷物パレットなどに取り付けた無線タグを物流の拠点毎に検出して荷物の所在を管理する物流管理システムなどである。
【0003】
ところが、これらのシステムは、移動する無線タグを点で管理するものであり、通常、前記センサは空間的に離れて設置されることになる。しかしながら、この無線タグを利用して、人や物を面で管理する用途、たとえばオフィス内での在室管理や位置検出などを行うことを考える場合、抜け目なく無線タグを検知しようとすると、検知対象の移動空間に沿って複数のセンサを、隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置する必要がある。この場合、センサ間で無線タグとの通信の干渉を防止するために、たとえば特許文献1のようにセンサ毎に使用する周波数CHを変えることが考えられる。前記特許文献1では、子局(無線タグ)が干渉を検知すると、親局(センサ)にチャネルホップさせることで干渉を回避させている。
【特許文献1】特許第3405322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は、無線タグとの通信方式として、UWBのように周波数CHを持たない方式を利用する場合には対応できない。また、広い検知対象エリアに対応するために多くのセンサを設置したり、検知対象エリアを拡げたりするためにセンサを増設する場合には、周波数CHの総数に制限されてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、前記周波数CHを分けずにセンサ間の干渉を防ぐ方法として、一定の期間(周期)を複数のスロットに分割し、各センサが相互に異なるスロットを使用するTDMA−TDD方式によって通信を行うことが考えられる。このTDMA−TDD方式ならば、センサが増えても、その都度スロット数を増やせば対処可能となる。
【0006】
しかしながら、前記TDMA−TDD方式を用いて都合よく運用可能といえども、運用中のセンサ総てにそれぞれ個別のタイムスロットを割当てていては、センサ数の増大に伴って、1周期に要する時間長が長くなり、無線タグとの通信機会が減ってゆく。このため、たとえば早足で歩き去ろうとするユーザに対して、多数のセンサがコンタクトを取ろうとしても、そのユーザが検知対象エリア内に存在した期間に、センサ(検知対象エリア)に割当てのタイムスロットが回って来ず、検知漏れを生じることがある。これを解消すべく、TDMAの1周期に要する時間長を短くして極力タイムスロットが回って来る機会を多くすることも可能ではあるが、そうすると、必然的に、いずれかのセンサがあぶれてタイムスロットを確保できなくなってしまう。また、タイムスロット1つ当りに許される時間長を短くしてしまう選択肢もあるが、そうすると、無線タグとの間で充分な情報交換が行えなくなるおそれもある。
【0007】
そこで、このような問題を解決するためには、干渉が発生しないセンサに対しては、同じタイムスロットを割当てることが考えられる。しかしながら、センサの配置や設置場所の状況によって適切な割当てが異なるので、システム毎に適切なスロット割当てを検討し、各センサに設定する必要がある。これは、システムの導入における大きな障害となる。また、センサを追加する際に、場合によっては追加するセンサ以外のセンサのスロット割当てを変更する必要が生じることもある。
【0008】
本発明の目的は、スロット割当てを効率的かつ容易に行うことができる無線認証システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線認証システムは、検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、前記各センサは、共通の無線通信帯域を使用して、前記無線タグと通信を行うとともに、隣接するセンサ間で通信を行うことができる無線通信部と、前記無線通信帯域において自機で使用すべきスロットを選択し、その使用スロット通知を前記無線通信部から送信させるとともに、前記無線通信部で使用スロット通知が受信されると、自機のスロット選択に使用しないスロット選択部とを含むことを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、無線タグを携帯したユーザや無線タグが貼付けられた商品などの検知対象を、漏れなく、その所在や通過した軌跡を検知できるように、前記検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、前記各センサ間で共通の無線通信帯域を使用して時分割多元接続(TDMA)で前記無線タグと通信を行うにあたって、各センサのスロット選択部は、無線タグと通信を行う無線通信部を使用して隣接するセンサ間でも通信を行えるようにし、単に空きスロットで自機の検知対象エリア内の無線タグと通信を行うのではなく、予めスロット設定モードにおいて、自機が使用するスロットを選択して、無線通信部から使用スロット通知として残余のセンサに送信することで宣言し、少なくとも自機と前記検知対象エリアの重なる他のセンサで使用させないようにする。他のセンサでは、無線通信部でその使用スロット通知を受信すると、スロット選択部は、自機のスロット選択に使用せず、他の空きスロットを探索する。
【0011】
したがって、前記検知対象エリアが、たとえば一直線状や、適宜分岐を含めてツリー状などに連なってゆく無線認証システムにおいて、共通の無線通信帯域を使用して無線タグと通信を行うにあたって、スロット設定が行われると、隣接するセンサ間で同一のスロットを使用しないように使用スロットが自動的に設定される。これによって、センサの新設作業や追加作業を容易に行うことができる。また、前記検知対象エリアが重なっていないセンサ間では同じスロットの使用も可能になるので、干渉が発生することなく、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用スロット数を最小限に抑え(スロット割当てを効率的に行い)、検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。
【0012】
また、本発明の無線認証システムでは、前記スロット選択部は、自機で使用すべきスロットを選択し、使用スロット通知を送信するスロット割当て処理部と、自機から前記使用スロット通知を送信した後、衝突検知通知を受信すると前記スロット割当て処理部に空きスロットの再探索および前記使用スロット通知の再送処理を行わせ、前記使用スロット通知を受信して、その通知内容を再現できなかった場合は前記衝突検知通知を送信する衝突検出処理部とを備えて構成されることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、自機が使用スロット通知を送信した後、次位や次々位での使用スロット通知を受信して、それが重複している場合、すなわち自機が前記移動空間の分岐部分に位置している場合は、その次位や次々位のセンサ同士では前記検知対象エリアが重複せず、互いに使用スロット通知が重複していることが分らないので、前記衝突検出処理部は、衝突検知通知を送信し、スロット割当て処理部に、再度、空きスロットの探索および使用スロット通知の送信動作を行わせる。
【0014】
したがって、近接するセンサ間で、スロットの重複(干渉)を確実に防止することができる。
【0015】
さらにまた、本発明の無線認証システムは、前記スロット選択部には設定釦が接続されており、該設定釦の操作によってスロット設定動作を開始し、スタート釦の操作または他のセンサからの使用スロット通知を受信すると、前記スロット選択を開始することを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、設定釦の操作によって前記スロット設定モードとなり、その状態で、スタート釦が操作されると、または他のセンサからの使用スロット通知を受信すると、前記空きスロットの探索を開始し、探索できると、前述のようにその空きスロットを自機で使用すべきスロットに選択し、その使用スロット通知を他のセンサへ送信する。
【0017】
したがって、総てのセンサをスロット設定モードにした状態で、いずれか1台のセンサのスタート釦が操作されると、それをトリガとして、先ずそのセンサが空きスロットの探索を開始し、探索できて使用スロット通知を送信すると、そのセンサに隣接する次のセンサが前記使用スロット通知の受信によって空きスロットの探索を開始する。こうして、1台のセンサのスタート釦が操作されると、それをトリガとして、波紋のように使用スロットを順次自動的に末端のセンサまで設定することができる。
【0018】
また、本発明の無線認証システムでは、前記スロット割当て処理部は、前記空きスロットの内で、優先順位の高いスロットから使用することを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、優先順位の高い順に、たとえば第1のスロット、第2のスロット・・・とすると、前記検知対象エリアが、たとえば前記一直線状に並んでいると、第1のスロットと第2のスロットとが繰返して使用されてゆき、優先順位の低い第3のスロットは使用されない。
【0020】
したがって、使用スロット数を前記のように最小限に抑え(前記の場合2スロット)、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【0021】
さらにまた、本発明の無線認証システムでは、前記設定釦が操作されてスロット設定動作を開始すると、前記スロット選択部は、前記無線通信部に、無線タグとの通信時よりも、送信パワーと受信感度との少なくとも一方を大きくさせることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、たとえば、無線タグとの通信時の4倍の送信パワーまたは受信感度にすることで、センサ間はおよそ2倍の距離まで通信が可能になる。
【0023】
したがって、無線タグの前記検知対象エリアがぎりぎり重なるようにセンサの間隔を広げて設置しても、スロット設定は充分な通信品質で確実に行うことができる。
【0024】
また、本発明の無線認証システムでは、前記使用スロット通知を送信する側のスロット選択部は、前記無線通信部に、その使用スロット通知に対応したタイミングで送信を行わせ、前記使用スロット通知を受信した側のスロット選択部は、前記使用スロット通知を復調できなかった場合、前記無線通信部での使用スロット通知の受信タイミングから前記使用スロット通知を判定することを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、前記使用スロット通知を送信する側では、任意のタイミングで送信するのではなく、そのスロットに対応したタイミングで送信を行い、受信する側では、受信レベルが低いなどで前記使用スロット通知を復調(デコード)できなかった場合でも、システム内での同期が取れていると、その受信タイミングからも前記使用スロット通知を判定できるので、判定されたスロットを上位側のセンサの使用スロットと判定する。
【0026】
したがって、センサの間隔を広げて設置しても、スロット設定を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の無線認証システムは、以上のように、無線タグを携帯したユーザや無線タグが貼付けられた商品などの検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、前記各センサ間で共通の無線通信帯域を使用して時分割多元接続で前記無線タグと通信を行うにあたって、自機で使用するスロットを使用スロット通知を送信することで残余のセンサに宣言し、少なくとも自機と検知対象エリアの重なる他のセンサで使用させないようにする。
【0028】
それゆえ、検知対象エリアが、たとえば一直線状や、適宜分岐を含めてツリー状などに連なってゆく無線認証システムにおいて、共通の無線通信帯域を使用して無線タグと通信を行うにあたって、スロット設定が行われると、隣接するセンサ間で同一のスロットを使用しないように使用スロットが自動的に設定される。これによって、センサの新設作業や追加作業を容易に行うことができる。また、前記検知対象エリアが重なっていないセンサ間では同じスロットの使用も可能になるので、干渉が発生することなく、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用スロット数を最小限に抑え(スロット割当てを効率的に行い)、検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。
【0029】
また、本発明の無線認証システムは、以上のように、自機が使用スロット通知を送信した後、次位や次々位での使用スロット通知を受信して、それが重複している場合、すなわち自機が前記移動空間の分岐部分に位置している場合は、その次位や次々位のセンサ同士では前記検知対象エリアが重複せず、互いに使用スロット通知が重複していることが分らないので、前記衝突検出処理部は、衝突検知通知を送信し、スロット割当て処理部に、再度、空きスロットの探索および使用スロット通知の送信動作を行わせる。
【0030】
それゆえ、近接するセンサ間で、スロットの重複(干渉)を確実に防止することができる。
【0031】
さらにまた、本発明の無線認証システムは、以上のように、設定釦の操作によってスロット設定モードとなり、その状態で、スタート釦が操作されると、または他のセンサからの使用スロット通知を受信すると、空きスロットの探索を開始し、探索できると、前述のようにその空きスロットを自機で使用すべきスロットに選択し、その使用スロット通知を他のセンサへ送信する。
【0032】
それゆえ、総てのセンサをスロット設定モードにした状態で、いずれか1台のセンサのスタート釦が操作されると、それをトリガとして、先ずそのセンサが空きスロットの探索を開始し、探索できて使用スロット通知を送信すると、そのセンサに隣接する次のセンサが前記使用スロット通知の受信によって空きスロットの探索を開始する。こうして、1台のセンサのスタート釦が操作されると、それをトリガとして、波紋のように使用スロットを順次自動的に末端のセンサまで設定することができる。
【0033】
また、本発明の無線認証システムは、以上のように、空きスロットの内で、優先順位の高いスロットから使用する。
【0034】
それゆえ、使用スロット数を最小限に抑え、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【0035】
さらにまた、本発明の無線認証システムは、以上のように、スロット設定動作を開始すると、無線タグとの通信時よりも、送信パワーと受信感度との少なくとも一方を大きくする。
【0036】
それゆえ、無線タグの前記検知対象エリアがぎりぎり重なるようにセンサの間隔を広げて設置しても、スロット設定は充分な通信品質で確実に行うことができる。
【0037】
また、本発明の無線認証システムは、以上のように、前記使用スロット通知を送信する側では、任意のタイミングで送信するのではなく、そのスロットに対応したタイミングで送信を行い、受信する側では、受信レベルが低いなどで前記使用スロット通知を復調(デコード)できなかった場合でも、システム内での同期が取れていると、その受信タイミングからも前記使用スロット通知を判定できるので、判定されたスロットを上位側のセンサの使用スロットと判定する。
【0038】
それゆえ、センサの間隔を広げて設置しても、スロット設定を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の一形態に係る無線認証システムの構成を示すブロック図である。この無線認証システムは、検知対象であるユーザの移動空間1に沿って複数のセンサS1,S2,S3,S4,・・・(総称するときは、以下参照符号Sで示す)が配置され、前記ユーザに携行される無線タグTGがいずれかのセンサSと通信を行ってゆき、その検知結果が上位装置2でモニタされることで、該上位装置2によってユーザの所在や通過した軌跡を検知するものである。前記各センサSは、天井などに取付けられ、その検知対象エリアA1,A2,A3,A4,・・・(総称するときは、以下参照符号Aで示す)は、そのようなユーザを漏れなく検知できるように、隣接するセンサS間でその一部が相互に重なるように配置されている。無線タグTGは、前記検知対象エリアA内であれば、どこに移動してもその検知対象エリアAを有するセンサSで検知可能となっている。
【0040】
そして、本実施の形態では、各センサSが共通の無線通信帯域を使用してTDMA−TDD方式で前記無線タグTGと通信を行うにあたって、各センサSが通信に使用するタイムスロットが各センサS間の通信によって予め設定され、注目すべきはそのスロット設定を、後述する設定釦の操作や無線(リモコン)での設定指示などに応答して、各センサSが干渉を回避できるように自動的に行うことである。
【0041】
前記各センサSは、通信にUHF帯などを使用して、その検知対象エリアAは、隣接するセンサ間の干渉を防止するために、通常、直径で7m程度であるが、初期設定やセンサの追加などによる設定モードでは、送信パワーと受信感度との少なくとも一方を大きくすることで、たとえば送信パワーまたは受信感度を4倍として、図1において、参照符号A1’,A2’,A3’,A4’,・・・(総称するときは、以下参照符号A’で示す)で示すように到達範囲を2倍とし、前記検知対象エリアAがぎりぎり重なるようにセンサSの間隔を広げて設置しても、スロット設定は充分な通信品質で確実に行えるようになっている。
【0042】
具体的には、前記送信パワーのアップは、送信アンプのゲインを上げることで、簡単に実現することができる。一方、前記受信感度のアップは、ノイズを増やさず、信号レベルのみ増加させるために、たとえばアンテナの指向性を絞ったり、通信速度は遅いが感度は高い方式に切換える等で実現することができる。受信感度のアップは、回路上の制約や通信規格・法規上の制約によって送信パワーが上げられない場合に、センサSの間隔を広げることが可能になり、好適である。
【0043】
図2は、各センサSのスロット設定動作を説明するためのタイミングチャートである。設定にあたって、前述のように設定釦の操作や無線での設定指示などによって、各センサSは設定モードとなっており、作業者が任意のセンサ、好ましくはセンサ配列の端部に位置するセンサ(図1および図2の例ではS1)が選択され、そのセンサS1から、スタート釦の操作または前記無線(リモコン)でのスタート指示に応答して、設定動作が開始される。設定動作では、先ず前記無線通信帯域における空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロット(図2の例ではNo.1)を選択して、自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.1を使用スロット通知として他のセンサへ向けて送信する。
【0044】
これによって、図1および図2の例では、後続のセンサS2,S3が前記スロット通知を受信すると、それをトリガとして、それらのセンサS2,S3も設定動作を開始し、前記スロットNo.1を自機のスロット割当てに使用せず、他のスロットで同様に空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロット(図2の例ではNo.2)を選択して自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.2を使用スロット通知として他のセンサへ向けて送信する。
【0045】
このとき、図1および図2の例では、センサS1が前記移動空間1の分岐部分に位置し、該センサS1に縦続するセンサは上述のようにS2,S3の2つとなり、待受け中のセンサS1には、2つのセンサから同時に使用スロット通知が送信され、衝突によってデータを再現できなくなる。その衝突を検知したセンサS1は、他のセンサS2,S3へ衝突検知通知を送信する。前記衝突検知通知は、他のセンサからの通知と衝突しても検知できるように、受信タイミングのみで判断して行う。具体的には、1送信周期W1内で、前記使用スロット通知の送信が終了してからの所定期間W2のWindowを設定し、そのWindow中で、一定長以上の信号を受信したら、衝突検知通知であると判定する。このWindow中は、使用スロット通知を送信しないようにする。
【0046】
こうして衝突を検知すると、前記センサS2,S3は、前記Windowが終了し、次の送信周期W1となると、通常のCSMA−CAなどの方法でキャリアセンスしながら他のセンサとの衝突を避けつつ、前記使用スロット通知を再度送信する。図2の例では、前記次の送信周期W1となってから、前記CSMA−CA方式でセンサS2,S3は任意の時間待機した後送信を開始しており、待機時間の短いセンサS2からの使用スロット通知が優先となって、該センサS2は、ひとまずそのスロットNo.2を自機のスロットに割当てる。このとき、前記待機時間が長かったセンサS3は、前記CSMA−CA方式のキャリアセンスによってセンサS2からの使用スロット通知の送信を検知すると、使用スロット通知処理を再度実行することになり、このとき受信したスロットNo.2と、先に受信しているスロットNo.1とを共に自機のスロット割当てに使用せず、他のスロットで同様に空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロット(図2の例ではNo.3)を選択して自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.3を使用スロット通知として、次の送信周期W1に他のセンサへ向けて送信する。
【0047】
これによって、衝突なく使用スロット通知の送信が完了すると、センサS2,S3の使用スロットは前記のNo.2およびNo.3でそれぞれ決定し、それらに続くセンサ(図2の例ではS4)が設定動作を開始する。このとき、センサS4では、前記センサS1,S2と設定に関する信号の到達範囲A1’,A2’;A4’が重なっておらず、すなわちセンサS4ではセンサS1,S2が送信した前記使用スロット通知は受信しておらず、隣のセンサS3が使用したスロットNo.3だけを認識している。したがって、他のスロットで優先順位の高いスロットを選択すると、スロットNo.1となる。
【0048】
こうして、隣の隣のセンサS1,S4間では、使用スロットNo.1の重複を許容することで、干渉が発生することなく、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用スロット数を最小限に抑え(スロット割当てを効率的に行い)、検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。
【0049】
一方、前記スロット設定動作は、所定時間、前記使用スロット通知や衝突検知通知を受信しないときにタイムアウト処理によって終了するようにしてもよく、前記設定釦が再度操作されることで終了するようにしてもよく、スタート釦が操作されたセンサ(図1および図2の例ではS1)への終了操作によって、順次設定終了通知を転送してゆくことで終了するようにしてもよい。
【0050】
図3は、上述のような機能を実現するセンサSの一構成例を示すブロック図である。このセンサSは、他のセンサおよび無線タグTGと通信を行い、無線通信部である無線信号送受信部11と、前記無線信号送受信部11を介して他のセンサとの間で上述のようなスロット設定動作を行うスロット選択部12と、前記スロット設定動作などに使用されるユーザインタフェイス13と、前記無線信号送受信部11を介して無線タグTGと通信を行い、それを認証するタグ管理部14と、前記タグ管理部14で得られた認証データを前記上位装置2へ送信するとともに、前記上位装置2からこのセンサSの制御データを受信するネットワークインタフェイス15とを備えて構成される。
【0051】
スロット選択部12は、先ず前述のように自機で使用すべきスロットを選択し、使用スロット通知を送信するスロット割当て処理部21と、自機から前記使用スロット通知を送信した後、衝突検知通知を受信すると前記スロット割当て処理部21に使用スロット通知を再送信させ、前記使用スロット通知を受信して、再現できなかった場合は前記衝突検知通知を送信する衝突検出処理部22と、無線通信の同期を取るスロット同期部23と、スロット設定動作の終了を判定する設定終了検知部24と、該スロット選択部12全体を制御する送受信スロット管理部25とを備えて構成される。
【0052】
前記ユーザインタフェイス13は、たとえば通常の無線タグTGの検知動作中であることを表示し、また前記スロット設定動作中であることや、その設定動作が正常に終了したか不調に終わったかなどをランプ表示などでユーザへ報知する状態表示手段31と、異常の発生や不審な無線タグを検知すると警報を発したり、無線タグTGを正常に認識できてドアの解錠などを行うことを通知するブザーなどの警報/通知音発生装置32と、前記設定釦やスタート釦などの設定スイッチ33とを備えて構成される。
【0053】
前記設定スイッチ33の設定釦やスタート釦の操作によってスロット設定動作を開始すると、スロット割当て処理部21の空きスロット検出処理部211が前述のように空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロットを選択して、自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.を、使用スロット通知送信処理部212から送受信スロット管理部25および無線信号送受信部11を介して他のセンサへ送信させる。一方、無線信号送受信部11から送受信スロット管理部25を介して受信された使用スロット通知は、使用スロット通知受信処理部213に記憶され、前記空きスロット検出処理部211によるスロット選択に使用される。前記使用スロット通知受信処理部213で使用スロット通知が受信されたとき、未だスロット設定動作を開始していないセンサであれば、それをトリガとして、設定動作を開始し、前記空きスロット検出処理部211にスロット選択を開始させる。
【0054】
こうして送信された使用スロット通知は、衝突検出処理部22の衝突検出部221において、前記のようにデータを再現できないものの、何らかのデータの受信か検知される場合、衝突と判定される。その判定結果に応答して、衝突通知送信処理部222は、送受信スロット管理部25から無線信号送受信部11を介して前記衝突検知通知を送信する。一方、無線信号送受信部11から送受信スロット管理部25を介して前記衝突検知通知が衝突通知受信処理部223で受信されると、再送制御部224が、前記スロット割当て処理部21に空きスロットの探索から再送信を行わせる。
【0055】
それらの使用スロット通知や衝突検知通知の送受信にあたって、スロット同期部23のスロット同期信号検出処理部231が、前記送受信スロット管理部25での受信データから前記送信周期W1などの同期を検出しており、同期タイミング調整処理部232が自機のタイミングがシステムのタイミングに一致するように、前記送受信スロット管理部25を制御することで同期が得られている。また、スロット設定動作の終了は設定終了検知部24において前述のようにして行われ、スロット設定が終了すると、通常の無線タグの検知モードとなる。
【0056】
通常の無線タグの検知モードでは、タグ管理部14が無線信号送受信部11に、前記スロット割当て処理部21で選択されたスロットで質問信号を送信させ、無線タグTGから応答信号を受信すると、その無線タグTGのIDが予め登録されているものか否かを判断し、解錠動作などを行う。
【0057】
このように構成することで、干渉が発生しないように使用スロットの重複を許容し、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用スロット数を最小限に抑え(スロット割当てを効率的に行い)、検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。また、そのようなスロット設定を自動的に行うことで、センサSの新設作業や追加作業を容易に行うことができる。なお、追加作業時には、前記新設作業時と同様にシステム全体のスロットNo.をリセットして再度スロット設定をやり直してもよく、或いは追加分のセンサおよびその付近のセンサだけが、周囲のセンサの使用スロットを判定し、スロットを割当てるようにしてもよい。
【0058】
また、設定スイッチ33の前記設定釦の操作によってスロット設定モードとなり、その状態で、スタート釦が操作されると、または他のセンサからの使用スロット通知を受信すると、スロット選択が自動で行われるので、1台のセンサ(図1および図2の例ではS1)のスタート釦が操作されると、それをトリガとして、波紋のように使用スロットを順次自動的に末端まで設定することができる。
【0059】
さらにまた、前記スロット割当て処理部21の空きスロット検出処理部211によるスロット選択には、隣接するセンサと干渉することのない空きスロットの内で、優先順位の高いスロットから使用するので、使用スロット数を最小限に抑え、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【0060】
また、衝突検出処理部22の衝突検出部221が前記使用スロット通知が重複していることを検知すると、衝突通知送信処理部22から衝突通知を送信し、前記衝突通知受信処理部223で衝突通知を受信した場合には、再送制御部224が、空きスロットの再探索および前記使用スロット通知の再送処理を行わせるので、前記図1や図2の場合ではセンサS2とセンサS3とのように、自機(S1)が使用スロット通知を送信した後、次位や次々位での使用スロット通知を受信して、それが重複している場合、すなわち自機が前記移動空間1の分岐部分に位置している場合は、その次位や次々位のセンサ(S2,S3)同士では前記検知対象エリア(A2,A3)が重複せず、互いに使用スロット通知が重複していることが分らなくても、再度、空きスロットの探索および使用スロット通知の送信動作を行わせることができる。これによって、近接するセンサ(S2,S3)間で、スロットの重複(干渉)を確実に防止することができる。
【0061】
[実施の形態2]
図4は、本発明の実施の他の形態に係る無線認証システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。本実施の形態のセンサには、前述の図1で示す構成のセンサを用いることができ、前記使用スロット通知の送信方法が、前記図2とこの図4とで異なるだけである。注目すべきは、本実施の形態では、前記スロット設定モードにおける1送信周期W1内に複数(図4の例では8)のスロットが設定されており、前記スロット割当て処理部21とスロット同期部23とが相互に連携して、スロット割当て処理部21は、選択したスロットNo.を前記使用スロット通知として送信する際に、送受信スロット管理部25からの送信動作をスロット同期部23に制御させ、その使用スロット通知に対応したタイミングで送信を行わせることである。具体的には、各センサSは使用スロット通知を受信することでスロット同期信号検出処理部231で前記送信周期W1の同期を検出しており、同期タイミング調整処理部232が送信すべき使用スロット通知に対応したスロットで、前記使用スロット通知送信処理部212からの使用スロット通知を、送受信スロット管理部25から送信させる。一方、送受信スロット管理部25から使用スロット通知受信処理部213で使用スロット通知が受信されとき、その使用スロット通知を復調(デコード)できた場合はそれを認識し、できなかった場合は前記スロット同期信号検出処理部231に、使用されたスロットNo.を問い合せ、認識する。
【0062】
図4の例は、図1で示すように隣の隣のセンサS1とS4とが、使用スロット通知を微妙に受信できる距離にあり、先ずセンサS1がスロットNo.1で使用スロット通知を送信すると、隣のセンサS3ではそれを受信することができるけれども、隣の隣のセンサS4では、復調できず、前記スロットNo.1を認識できない。しかしながら、キャリアは検出できているので、スロット同期信号検出処理部231では、そのキャリアが検出されなくなったタイミングt0からカウント動作を開始する。その後、隣のセンサS3が、スロットNo.2で使用スロット通知を送信すると、このセンサS4もそれを受信でき、同期を得ることができる。そして、復調(デコード)された使用スロット通知から、先に受信した使用スロット通知はスロットNo.2で送信されていたものと判定することができ、検出されなくなったタイミングt1までのカウント値から、前記タイミングt0まで受信できていたのはスロットNo.1であったことが認識できる。それらの認識結果から、空きスロット検出処理部211は、前記スロットNo.1およびNo.2を除外して、スロットNo.3を自機のスロットに決定して使用スロット通知を送信する。
【0063】
このように前記使用スロット通知を送信するにあたって、任意のタイミングで送信するのではなく、そのスロットに対応したタイミングで送信を行い、受信レベルが低いなどで前記使用スロット通知を復調(デコード)できなかった場合でも、その受信タイミングから前記使用スロット通知を判定することで、センサSの間隔を広げて設置しても、スロット設定を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の一形態に係る無線認証システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る各センサのスロット設定動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施の一形態に係るセンサの一構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の他の形態に係る無線認証システムにおける各センサのスロット設定動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 移動空間
2 上位装置
11 無線信号送受信部
12 スロット選択部
13 ユーザインタフェイス
14 タグ管理部
15 ネットワークインタフェイス
21 スロット割当て処理部
211 空きスロット検出処理部
212 使用スロット通知送信処理部
213 使用スロット通知受信処理部
22 衝突検出処理部
221 衝突検出部
222 衝突通知送信処理部
223 衝突通知受信処理部
224 再送制御部
23 スロット同期部
231 スロット同期信号検出処理部
232 同期タイミング調整処理部
24 設定終了検知部
25 送受信スロット管理部
31 状態表示手段
32 警報/通知音発生装置
33 設定スイッチ
A1,A2,A3,A4,・・・ 検知対象エリア
S1,S2,S3,S4,・・・ センサ
TG 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、
前記各センサは、
共通の無線通信帯域を使用して、前記無線タグと通信を行うとともに、隣接するセンサ間で通信を行うことができる無線通信部と、
前記無線通信帯域において自機で使用すべきスロットを選択し、その使用スロット通知を前記無線通信部から送信させるとともに、前記無線通信部で使用スロット通知が受信されると、自機のスロット選択に使用しないスロット選択部とを含むことを特徴とする無線認証システム。
【請求項2】
前記スロット選択部は、
自機で使用すべきスロットを選択し、使用スロット通知を送信するスロット割当て処理部と、
自機から前記使用スロット通知を送信した後、衝突検知通知を受信すると前記スロット割当て処理部に空きスロットの再探索および前記使用スロット通知の再送処理を行わせ、前記使用スロット通知を受信して、その通知内容を再現できなかった場合は前記衝突検知通知を送信する衝突検出処理部とを備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の無線認証システム。
【請求項3】
前記スロット選択部には設定釦が接続されており、該設定釦の操作によってスロット設定動作を開始し、スタート釦の操作または他のセンサからの使用スロット通知を受信すると、前記スロット選択を開始することを特徴とする請求項1または2記載の無線認証システム。
【請求項4】
前記スロット割当て処理部は、前記空きスロットの内で、優先順位の高いスロットから使用することを特徴とする請求項2記載の無線認証システム。
【請求項5】
前記設定釦が操作されてスロット設定動作を開始すると、前記スロット選択部は、前記無線通信部に、無線タグとの通信時よりも、送信パワーと受信感度との少なくとも一方を大きくさせることを特徴とする請求項2記載の無線認証システム。
【請求項6】
前記使用スロット通知を送信する側のスロット選択部は、前記無線通信部に、その使用スロット通知に対応したタイミングで送信を行わせ、
前記使用スロット通知を受信した側のスロット選択部は、前記使用スロット通知を復調できなかった場合、前記無線通信部での使用スロット通知の受信タイミングから前記使用スロット通知を判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−244827(P2008−244827A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82296(P2007−82296)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】