説明

無線通信システム、無線通信方法、通信装置および端末装置

【課題】マルチサイトSPCを用いた通信において、送信ダイバーシチにより利得を得ている第1の端末装置に対する伝搬路特性が劣化した場合においても、すべての端末装置が第1の端末装置に対する信号を検出し、SPCによる通信を維持できる送信電力の制御を行う無線通信システムを提供する。
【解決手段】第1の端末装置(100)と無線通信装置(300)との伝搬路特性に応じて、無線通信装置(300)が第1の端末装置(100)に送信する第1の変調シンボルの送信電力を割り当て、第2の端末装置(200a、200b)が当該第1の変調シンボルを検出できる送信電力を示す第1の下限値を算出する。無線通信装置(300)は、当該第1の変調シンボルに割り当てる送信電力が、第1の下限値以下のとき、当該第1の変調シンボルに割り当てる送信電力を第1の下限値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線通信方法、通信装置および端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、複数のアンテナを有する無線基地局装置は、複数のアンテナそれぞれから信号を端末装置までの伝搬路特性が既知であるとき、複数のアンテナそれぞれから送信する信号に対する電力分配と位相とを調節することで、当該端末装置が当該無線基地局装置から受信する信号をダイバーシチ効果により利得を高くする技術、送信ダイバーシチによる最大比合成(Maximum Ratio Combining;MRC)がある(特許文献1)。
【0003】
また、次世代の移動体通信方式では、限られた周波数帯域で、無線基地局装置は、できるだけ多くの端末装置と同時に通信を行う必要がある。そのため、1つの無線リソース(周波数など)で2つの端末装置にデータを多重して送信できるSPC(Super Position Coding;重畳符号化)が、有望視されている。SPCは、2つの端末装置への送信する信号に電力差をつけて加算することで、信号を多重する方法である。(非特許文献1)。
ここで、無線リソースとは、1つの変調シンボルを端末装置に送信することのできる最小単位のことであり、マルチキャリア通信、例えばOFDM(Orthogonal Frequency Division Modulation;直交周波数分割多重)方式を用いた通信においては、1つのOFDMシンボルにおける1つのサブキャリアのことを示す。
【0004】
SPCは、一般にチャネル特性が良い端末装置(以下、端末装置Aという。)と、チャネル特性が悪い端末装置(以下、端末装置Bという。)とが同時に同じ無線リソースにより無線基地局装置と通信することができる技術である。無線基地局装置は、端末装置Bへ送信する信号に対して大きな電力を用いて変調シンボルを作成し、端末装置Aへ送信する信号に対して小さな電力を用いて変調シンボルを作成し、作成した両方の変調シンボルを加算して送信する。
図20は、SPCによる多重化を説明する概略図である。図20(a)は、端末装置Bに送信する変調シンボルを示し、図20(b)は、端末装置Aに送信する変調シンボルを示す。端末装置Bに送信する変調シンボルは、図示するように、端末装置Aに送信する変調シンボルよりも大きい電力で生成される。なお、変調シンボルは、一例として、どちらもQPSK(Quadrature Phase Shift Keying;4相位相偏移変調)を用いるとする。図20(c)は、図20(a)と(b)との変調シンボルを加算(多重化)した変調シンボルを示す。また、図20(d)は、加算した変調シンボルが取り得るシンボルを示す図である。
【0005】
ここで、端末装置Aは、端末装置Bに対して送信される変調シンボルの取り得る値を検出することができれば、受信した信号から端末装置Bに対する変調シンボルを推定し、受信した信号から推定した端末装置Bに対する変調シンボルを減算することで、自端末装置に対する変調シンボルを検出することができる。また、端末装置Bは、端末装置Aに対して送信される変調シンボルを雑音とみなして自端末装置に対する変調シンボルを検出する。
すなわち、SPCは、重畳する変調シンボル(信号)の電力差を利用して多重を行う技術である。上述の方法により、1つの無線リソースで2つの端末装置への信号を多重化して送信することができる。
なお、上述の説明において、SPCの動作を簡単化するためにチャネル特性の良い端末装置と、チャネル特性の悪い端末装置とを用いて説明したが、上記の方法で通信できるのであれば、端末装置それぞれのチャネル特性によらず多重化を行うことは可能である。
【0006】
また、上述のSPCを利用して複数の無線基地局装置を用いて、例えば、ブロードキャストチャネルや、複数の端末装置へのユニキャストチャネルなどを同じ無線リソースにおいて多重化するマルチサイトSPCという技術がある(非特許文献1)。
マルチサイトSPCでは、複数の無線基地局装置それぞれが同期をとり、同じ無線リソースにより信号を送信し、当該無線リソースにおいてそれぞれの信号を重ね合わせて合成し、端末装置が重ね合わされた信号(合成された信号)を受信することで、最大比合成(又は、等利得合成)により、サイトダイバーシチによる最大比合成の効果を得て通信品質を向上させることができる。
【0007】
更に、複数の無線基地局装置それぞれは、無線基地局装置とチャネル特性の良い伝搬路にて通信を行う端末装置A、例えば、無線基地局装置の近くに位置する端末装置に対して、SPCにより当該端末装置Aに送信する信号と、他の端末装置Bに送信する信号とを多重化して1つの無線リソースを用いて送信する。このとき、端末装置Aに対する信号に割り当てる電力は、他の端末装置Bに送信する信号に比べて小さい値とする。
これにより、各無線基地局装置は、占有する無線リソースを追加することなく、ブロードキャストチャネルの無線リソースにおいて信号を多重化して端末装置と通信することができる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−239019号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】”Performance of Superposition Coded Broadcast/Unicast Service Overlay System”, IEICE TRANS. COMMUN., VOL. E91-B,NO.9 SEPTEMBER 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のマルチサイトSPCを用いた通信において、複数の無線基地局装置が特定の端末装置宛(以下、第1の端末装置という)の信号を送信し、当該特定の端末装置が、送信ダイバーシチによる最大比合成の効果を得て通信品質を向上させる場合、以下の問題が生じる。
無線基地局装置それぞれは、アンテナそれぞれから送信される信号の第1の端末装置における受信電力に比例した電力により信号を送信するので、あるアンテナと第1の端末装置との間の伝搬路特性が悪化したとき、当該アンテナから受信する信号の電力が低下し、当該アンテナから第1の端末装置に対する送信電力を下げる。送信電力を下げたとこにより、SPCにより第1の端末装置宛の信号に多重化された信号を受信している第1の端末装置以外の第2の端末装置は、第1の端末装置に対する信号と自端末装置に対する信号との電力差を利用して第1の端末装置に対する信号を検出することができなくなり、自端末装置に対する信号を検出ができず、信号の多重化による無線リソースの有効利用ができなくなるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、マルチサイトSPCを用いた通信において、送信ダイバーシチにより利得を得ている第1の端末装置に対する伝搬路特性が劣化した場合においても、第1の端末装置以外のすべての端末装置が第1の端末装置に対する信号を検出し、マルチサイトSPCによる通信を維持できる送信電力の制御を行う無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記問題を解決するために、本発明は、複数のアンテナそれぞれから異なる信号を送信する通信装置と、第1の端末装置と、複数の第2の端末装置とを有する無線通信システムにおいて、前記通信装置は、前記複数の第2の端末装置それぞれから受信した電力情報を受信し、受信した前記電力情報それぞれに基づく送信電力により、前記第1の端末装置に対する第1の変調シンボルを生成すると共に、前記アンテナそれぞれに対応付けられた前記複数の第2の端末装置に対する第2の変調シンボルと、前記送信電力を有する前記第1の変調シンボルとを重畳符号化により多重化する複数の送信処理部を備え、前記複数の第2の端末装置それぞれは、前記複数のアンテナのいずれか1つのアンテナと対応付けられ、該アンテナから送信された信号を受信し、受信した該信号から前記第2の変調シンボルを検出し、当該アンテナと自端末装置との伝搬路特性と、前記第1の変調シンボルの受信電力とから、前記第1の変調シンボルの送信電力を示す電力情報を算出して送信する、ことを特徴とする無線通信システムである。
【0013】
(2)また、本発明は、上記記載の発明において、前記複数の送信処理部は、前記複数のアンテナから送信する前記第1の変調シンボルを前記電力情報が示す電力より大きい送信電力により送信することを特徴とする。
【0014】
(3)また、本発明は、上記記載の発明において、前記複数の第2の端末装置それぞれは、前記通信装置から受信した信号から前記第1の端末装置に対する前記第1の変調シンボルを検出し、検出した前記第1の変調シンボルを前記受信した信号から減算して自端末装置に対する前記第2の変調シンボルを検出することを特徴とする。
【0015】
(4)また、本発明は、上記記載の発明において、前記複数の第2の端末装置それぞれが送信する前記電力情報が示す電力は、前記第2の端末装置と該第2の端末装置に対応する前記アンテナとの間の伝搬路特性と、前記第1の変調シンボルの受信電力とから、前記第1の変調シンボルの送信電力について、前記第1の変調シンボルを自端末装置にて検出できる最小の送信電力である第1の下限値であることを特徴とする。
【0016】
(5)また、本発明は、上記記載の発明において、前記複数の第2の端末装置それぞれは、受信した受信信号から該受信信号の伝搬路特性を推定してチャネル推定値を算出するチャネル推定部と、前記チャネル推定部が算出した前記チャネル推定値から、前記第1の変調シンボルを検出するために必要な当該第1の変調シンボルの送信電力の前記第1の下限値を算出する被重畳電力情報算出部と、前記被重畳電力情報算出部が算出した前記第1の下限値を、前記電力情報として前記通信装置に送信する無線送信部とを備えることを特徴とする。
【0017】
(6)また、本発明は、上記記載の発明において、前記通信装置は、前記第1の端末装置と前記複数のアンテナそれぞれとの間の伝搬路特性に応じて、前記第1の変調シンボルの送信電力の割り当てを行う電力位相算出部、を備えることを特徴とする。
【0018】
(7)また、本発明は、上記記載の発明において、前記複数の第2の端末装置は、前記チャネル推定部が算出した前記チャネル推定値から、自端末装置に対する前記第2の変調シンボルを検出するために必要な当該第2の変調シンボルの送信電力に対する第2の下限値を算出する重畳電力情報算出部を備え、前記無線送信部は、前記重畳電力情報算出部が算出した前記第2の下限値を前記通信装置に送信し、前記電力位相算出部は、受信した前記第2の下限値を送信した前記第2の端末装置に対応する第2の変調シンボルの送信電力を当該第2の下限値に下げた値に応じて、下げた値だけ前記第1の変調シンボルの送信電力を上げることを特徴とする。
【0019】
(8)また、本発明は、上記記載の発明において、前記通信装置は、前記複数のアンテナとして、2つのアンテナを備え、前記2つのアンテナから前記第1の端末装置へ送信する信号の送信電力の総和は、予め定められた値であり、前記電力位相算出部は、前記第1の端末装置と前記2つのアンテナそれぞれとの伝搬路特性に応じた最大比合成を用いた前記2つのアンテナのうちいずれか一方のアンテナから送信する前記第1の変調シンボルに割り当てる送信電力が、前記第1の下限値以下のとき、当該アンテナから送信する信号の送信電力を前記第1の下限値とし、他方のアンテナから送信する前記第1の変調シンボルに残りの送信電力を割り当てることを特徴とする。
【0020】
(9)また、本発明は、上記記載の発明において、前記通信装置は、前記複数のアンテナとして、2つのアンテナを備え、前記2つのアンテナから送信する信号の送信電力の総和は、予め定められた値であり、前記電力位相算出部は、前記第1の端末装置と前記2つのアンテナそれぞれとの伝搬路特性に応じた最大比合成を用いた前記2つのアンテナそれぞれから送信される前記第1の変調シンボルに割り当てる送信電力が共に前記第1の下限値以下のとき、前記第2の変調シンボルの送信電力として前記第2の下限値を割り当て、前記第1の変調シンボルに残りの送信電力を割り当てることを特徴とする。
【0021】
(10)また、本発明は、上記記載の発明において、前記通信装置は、前記複数のアンテナとして、3つのアンテナを備え、前記3つのアンテナから前記第1の端末装置へ送信する信号の送信電力の総和が定められ、前記電力位相算出部は、前記第1の端末装置と前記3つのアンテナそれぞれとの伝搬路特性に応じた最大比合成を用いた前記3つのアンテナそれぞれに対する送信電力の割り当てにより、前記3つのアンテナのうちいずれかのアンテナから送信される前記第1の変調シンボルに割り当てられる送信電力が前記第1の下限値以下のとき、当該アンテナから送信される前記第1の変調シンボルの送信電力を前記第1の下限値とし、残りの送信電力を他のアンテナから送信する前記第1の変調シンボルに割り当てることを特徴とする。
【0022】
(11)また、本発明は、複数のアンテナそれぞれから異なる信号を送信する通信装置と、第1の端末装置と、複数の第2の端末装置とを有する無線通信システムにおける第2の端末装置であって、前記複数のアンテナのうち自端末装置に対応付けられたアンテナと自端末装置との伝搬路特性と、前記第1の端末装置に対する第1の変調シンボルの受信電力とから、前記第1の変調シンボルの送信電力を示す電力情報を算出して送信すると共に、前記対応付けられたアンテナから送信された信号を受信し、受信した該信号から第2の変調シンボルを検出することを特徴とする端末装置である。
【0023】
(12)また、本発明は、複数のアンテナそれぞれから異なる信号を送信する通信装置と、第1の端末装置と、複数の第2の端末装置とを有する無線通信システムにおける通信装置であって、前記複数の第2の端末装置それぞれから受信した電力情報を受信し、前記電力情報それぞれに基づく送信電力により、前記第1の端末装置に対する第1の変調シンボルを生成すると共に、前記複数のアンテナそれぞれに対応付けられた前記複数の第2の端末装置に対する第2の変調シンボルと、前記送信電力を有する第1の変調シンボルとを重畳符号化により多重化する複数の送信処理部を備えることを特徴とする通信装置である。
【0024】
(13)また、本発明は、複数のアンテナそれぞれから異なる信号を送信する通信装置と、第1の端末装置と、複数の第2の端末装置とを有する無線通信システムにおいて、前記通信装置が、前記複数の第2の端末装置それぞれから受信した電力情報を受信し、前記電力情報それぞれに基づく送信電力により、前記第1の端末装置に対する第1の変調シンボルを生成する過程と、前記通信装置が、前記アンテナそれぞれに対応付けられた前記第2の端末装置に対する第2の変調シンボルと、前記送信電力の前記第1の変調シンボルとを重畳符号化により多重化する過程と、前記複数の第2の端末装置それぞれが、前記複数のアンテナのいずれか1つのアンテナと対応付けられ、該アンテナから送信された信号を受信し、受信した該信号から前記第2の変調シンボルを検出し、当該アンテナと自端末装置との伝搬路特性と、前記第1の変調シンボルの受信電力とから、前記第1の変調シンボルの送信電力を示す電力情報を算出して送信する過程とを備えることを特徴とする無線通信方法である。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、無線基地局装置が備える複数のアンテナそれぞれと第1の端末装置との伝搬路特性が悪くなった場合でも、複数の第2の端末装置は、常に第1の端末装置に対する変調シンボルを検出し、受信信号から第1の端末装置に対する変調シンボルを減算することで自端末装置に対する変調シンボルを検出することができる。これにより、無線通信システムは、複数のアンテナから信号を送信するマルチサイト重畳符号化による通信を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態における無線通信システムの概略を示す模式図である。
【図2】同実施形態における無線基地局装置の別形態を示す図である。
【図3】同実施形態における無線基地局装置の別形態を示す図である。
【図4】同実施形態における端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】同実施形態において、被重畳電力情報算出部が備えるテーブル部に記憶されている情報を示す図である。
【図6】同実施形態におけるデータ検出部の構成を示す概略ブロック図である。
【図7】同実施形態における端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図8】同実施形態における無線基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図9】同実施形態における変調シンボル生成部の構成を示す概略ブロック図である。
【図10】同実施形態における送信処理部の構成を示す概略ブロック図である。
【図11】同実施形態における電力位相算出部の構成を示す概略ブロック図である。
【図12】第2実施形態における無線通信システムの概略を示す模式図である。
【図13】同実施形態における端末装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図14】同実施形態における無線基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図15】同実施形態における送信処理部の構成を示す概略ブロック図である。
【図16】同実施形態における電力位相算出部の構成を示す概略ブロック図である。
【図17】第3実施形態の無線通信システムの構成を示す概略を示す模式図である。
【図18】同実施形態における無線基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図19】電力位相算出部の構成を示す概略ブロック図である。
【図20】SPCによる多重化を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態による無線通信システム、無線通信方法、無線基地局装置および端末装置を図面を参照して説明する。なお、無線通信システムは、マルチキャリア通信の一例として、OFDMを用いた通信を行うとして説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における無線通信システム10の概略を示す模式図である。無線通信システム10は、アンテナ311、312を備えた通信装置である無線基地局装置300と、端末装置100(第1の端末装置)と、端末装置200a、200b(第2の端末装置)とを備える。なお、第1の端末装置の個数は少なくとも1個であり、第2の端末装置の個数は少なくとも2個である。無線基地局装置300は、送信信号を地理的に離れた複数のアンテナ311、312から送信する。また、端末装置100は、一例として、送信アンテナ311、312それぞれのセルエリアが重なる領域に位置し、送信アンテナ311、312から信号を受信し、無線基地局装置300にチャネル状態情報(Channel State Information;CSI)を送信する。チャネル状態情報とは、端末装置100とアンテナ311、312との伝搬路の状態を示す情報である。また、複数のアンテナ311、312はリレー局であってもよい。
なお、無線基地局装置300から端末装置100、200a、200bへの通信回線を下りリンクといい、端末装置100、200a、200bから無線基地局装置300への通信回線を上りリンクという。
【0029】
また、端末装置200a、200bは、SPC(Superposition Coding;重畳符号化)により多重化された受信信号から、端末装置100に対する変調シンボル(第1の変調シンボル)を検出できる送信電力の下限値(第1の下限値)を示す被重畳電力情報(電力情報)を無線基地局装置300に送信する。また、端末装置200a、200bは、同じ構成を有しており、以下、いずれか一方、又は、両方を示す場合に端末装置200という。また、一例として、端末装置200aは、アンテナ311のセルエリア内に位置し、端末装置200bは、アンテナ311のセルエリアに隣接するアンテナ312のセルエリア内に位置する。なお、端末装置200aは、アンテナ312から送信される信号を雑音とみなせる程度の小さな電力で受信し、端末装置200bは、アンテナ311から送信される信号を雑音とみなせる程度の小さな電力で受信する。
【0030】
なお、図1において、2つのアンテナ311、312は、独立して記載されているが、図2に示すように、無線基地局装置300と、2つのアンテナ311、312とを有線、例えば、同軸線や光ファイバーなどで接続し、実質的に1つの無線基地局装置300が、異なる2つの場所から信号を送信しても良い。
また、図3に示す無線通信システム11のように、無線基地局装置300は、端末装置100、200a、200bに対して用いる無線リソース(周波数、もしくは時間)が異なる無線リソースを用いて無線リレー局装置401、402に対して送信する信号を送信し、無線リレー局装置401、402から端末装置100、200a、200bに信号を送信しても良い。このような構成により、1つの無線基地局装置300は、離れた2つの場所から無線信号を送信することができる。
【0031】
また、図2では、アンテナ311、312と無線基地局装置300は、離れているが、一方のアンテナが無線基地局装置300と同じ場所に設置され、他方が離れた場所に設置されていてもよい。また、図3では、無線リレー局装置401、402と無線基地局装置300とは、離れているが、一方の無線リレー局装置が無線基地局を用いずに、無線基地局装置300と他方の無線リレー局装置とから端末装置100、200a、200bに信号を送信しても良い。なお、図3に示す構成の場合、無線基地局装置300、無線リレー局装置401、402を備える無線基地局システムを無線基地局装置とみなすことができる。
以下、図2の構成に基づいて説明をする。
【0032】
まず、図4は、同実施形態における端末装置200の構成を示す概略ブロック図である。端末装置200は、図示するように、アンテナ210、無線受信部211、GI除去部212、FFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)部213、チャネル推定部214、データ検出部215、レプリカ生成部216、キャンセル部217、データ検出部218、被重畳電力情報算出部219、及び、無線送信部220を備える。
無線受信部211は、無線基地局装置300が送信した信号をアンテナ210を介して受信し、受信した信号をベースバンド周波数にダウンコンバートし、デジタル信号に変換したダウンコンバート信号をGI除去部212に出力する。GI除去部212は、無線受信部211が出力したダウンコンバート信号からガードインターバルを除去してFFT部213に出力する。
【0033】
FFT部213は、GI除去部212が出力したガードインターバルが除去されたダウンコンバート信号をFFTにより、時間領域の信号から周波数領域の信号へ変換して各サブキャリアの変調シンボルを分離し、分離した各サブキャリアの変調シンボルをチャネル推定部214とデータ検出部215とキャンセル部217とに出力する。
ここで、FFT部213が出力する各サブキャリアの変調シンボルは、端末装置100に対する変調シンボル(第1の変調シンボル)と端末装置200aに対する変調シンボル(第2の変調シンボル)とが多重化されたSPCシンボルとなっているか、又は、端末装置100に対する変調シンボルと端末装置200bに対する変調シンボルとが多重化されたSPCシンボルとなっている。
【0034】
チャネル推定部214は、FFT部213が出力した各変調シンボルに含まれる既知のパイロット信号より各サブキャリアの伝搬路特性を推定して、チャネル推定値h又はチャネル推定値hを算出し、算出したチャネル推定値h(h)をデータ検出部215、レプリカ生成部216、データ検出部218、及び、被重畳電力情報算出部219に出力する。ここで、既知のパイロット信号は、無線基地局装置300がアンテナ311、312それぞれから送信する。また、チャネル推定値hは、端末装置200aのチャネル推定部214が算出するアンテナ311から端末装置200aまでのチャネル推定値である。また、チャネル推定値hは、端末装置200bのチャネル推定部214が算出するアンテナ312から端末装置200bまでのチャネル推定値である。
【0035】
データ検出部215は、チャネル推定部214が算出したチャネル推定値h(h)と、FFT部213から入力された各サブキャリアの変調シンボルから端末装置100に対する情報ビットを検出し、検出した情報ビットをレプリカ生成部216に出力する。
レプリカ生成部216は、データ検出部215から入力された情報ビットを変調し、チャネル推定部214が算出したチャネル推定値h(h)と、変調した情報ビットとを乗算してSPCシンボルに含まれる端末装置100に対する変調シンボルのレプリカを生成してキャンセル部217に出力する。キャンセル部217は、FFT部213が出力したSPCシンボルから、レプリカ生成部216が生成した端末装置100に対する変調シンボルのレプリカを減算して、自端末装置に対する変調シンボルを算出する。
【0036】
データ検出部218は、キャンセル部217が算出した自端末装置に対する変調シンボルと、チャネル推定部214が算出したチャネル推定値h(h)とから自端末装置に対する情報ビットを検出して出力する。
被重畳電力情報算出部219は、自端末装置において端末装置100に対する情報ビットが検出可能な当該情報ビットを変調した変調シンボルに対する無線基地局装置300における送信電力の下限値(min_p11、又は、min_p21)を算出し、算出した下限値を示す被重畳電力情報を無線送信部220に出力する。無線送信部220は、被重畳電力情報算出部219が出力した被重畳電力情報をアンテナ210を介して無線基地局装置300に送信する。
【0037】
次に、被重畳電力情報算出部219による端末装置100に対する情報ビットを検出するために必要な送信電力の下限値(min_p11、又は、min_p21)の算出方法について説明する。
図5は、同実施形態において、被重畳電力情報算出部219が備えるテーブル部219Aに記憶されている情報を示す図である。テーブル部219Aは、変調方式(64QAM、16QAM、QPSKなど)、符号化方法(ターボ符号、畳み込み符号など)及び符号化率(3/4、1/2、1/3など)と、特定の誤り率以下で復号可能なSINR(Signal to Interference and Noise Power Ratio;信号対雑音干渉電力比)の[dB]値とが対応付けられて記憶されている。例えば、変調方式がQPSKであり、符号化方法がターボ符号であり、符号化率が1/2である場合、SINR=a2[dB]以上なら復号可能であることを示す。
【0038】
端末装置100に対する変調シンボルと端末装置200に対する変調シンボルとが、SPCにより多重化されている帯域における端末装置100に対する変調シンボルに対する受信電力をS1[dBm]とし、端末装置200に対する変調シンボルに対する受信電力をS2[dBm]、雑音電力をN[dBm]とする。このとき、端末装置100に対する変調シンボルを検出するとき、SINRは、S1/(S2+N)[dB]と表される。このSINRを用いて、図5に示した値に対応する電力S1を算出する。すなわち、図4に示す被重畳電力情報算出部219は、例えば、変調方式がQPSKであり、符号化方法がターボ符号であり、符号化率が1/2である場合、変調方式、符号化方式および符号化率に対応するSINRの[dB]値をテーブル部219Aから読み出して、S1=(S2+N)*a2を計算する。更に、被重畳電力情報算出部219は、S1(=(S2+N)*a2)を得るために必要な送信電力の下限値min_p11(又は、min_p21)を計算する。
【0039】
送信電力の下限値min_p11(又は、min_p21)の算出方法は、無線基地局装置300が予め既知の電力(p0)を有するパイロット信号を端末装置200に予め送信し、端末装置200のチャネル推定部214が受信したパイロット信号の電力の受信電力S0[dBm]を測定する。被重畳電力情報算出部219は、パイロット信号の受信電力S0[dBm]から、被重畳電力情報としてmin_p11(=S1/S0*p0[dBm])を算出する。
なお、被重畳電力情報算出部219は、チャネル推定誤差、伝搬路の時変動、干渉信号とみなせる端末装置200に対する変調シンボルがガウス分布でないことによる損失を考慮して、上述のSINRに一定のマージンを含ませて送信電力の下限値min_p11(又はmin_p21)を算出してもよい。
【0040】
次に、図6は、データ検出部215の構成を示す概略ブロック図である。データ検出部215は、チャネル補償部251、復調部252、及び、復号部253を備える。チャネル補償部251は、入力された変調シンボルに対して、チャネル推定部214が算出してチャネル推定値によりチャネル補償を行って復調部252に出力する。復調部252は、チャネル補償部251が出力したチャネル補償された変調シンボルを復調し、復調により得られたビットごとの硬判定値もしくは軟判定値を復号部253に出力する。復号部253は、復調部252が出力したビットごとの硬判定値もしくは軟判定値から情報ビットを復号して出力する。なお、データ検出部218は、復調及び復号における変調方式、符号化方式、符号化率などが異なる場合があるが、データ検出部215と同じ構成を有している。
【0041】
次に、図7は、同実施形態における端末装置100の構成を示す概略ブロック図である。端末装置100は、アンテナ110、無線受信部111、GI除去部112、FFT部113、チャネル推定部114、データ検出部115、及び、無線送信部116を備える。無線受信部111は、無線基地局装置300のアンテナ311、312から同じ無線リソースにより送信され、当該無線リソースにおいて合成された信号を受信し、受信した信号をベースバンド周波数にダウンコンバートしたダウンコンバート信号としてGI除去部112に出力する。GI除去部112は、無線受信部111が出力したダウンコンバート信号からガードインターバルを除去してFFT部113に出力する。
【0042】
FFT部113は、GI除去部112が出力するガードインターバルを除去されたダウンコンバート信号からFFTにより時間領域の信号から周波数領域の信号に変換して各サブキャリアの変調シンボルを分離して、チャネル推定部114とデータ検出部115とに出力する。
【0043】
チャネル推定部114は、FFT部113が出力する各サブキャリアの変調シンボルのうちパイロットシンボルから、アンテナ311と自端末装置との間の伝搬路の推定によりチャネル推定値h、及び、アンテナ312と自端末装置との間の伝搬路の推定によりチャネル推定値hを算出し、チャネル推定値h、hをデータ検出部115に出力する。また、チャネル推定部114は、算出したチャネル推定値h、hから電力比(|h/|h)と、位相差(arg(h/h))を算出して、算出した算出したチャネル推定値h、hと、電力比を示す電力比情報と、算出した位相差を示す位相差情報とを含むチャネル状態情報(CSI)を無線送信部116に出力する。ここで、arg()は、複素数の偏角を示す。
データ検出部115は、チャネル推定部114の算出したチャネル推定値h、hにより、FFT部113が出力する各サブキャリアの変調シンボルから、端末装置200に対する変調シンボルを雑音とみなし、自端末装置に対する情報ビットを検出して出力する。なお、データ検出部115は、図6に示したデータ検出部215と同じ構成を有しており、その説明を省略する。
【0044】
無線送信部116は、チャネル推定部114が出力するチャネル状態情報(CSI)をアンテナ110を介して無線基地局装置300に送信する。
ここで、無線受信部111が受信する信号は、無線基地局装置300のアンテナ311、312それぞれから同じ無線リソースにより送信された信号を、無線基地局装置300の電力位相算出部320(図8)により算出された比により重ね合わせた信号(合成された信号)である。そして、端末装置100は、2つの地理的に離れたアンテナ311、312それぞれから送信された信号を合成した信号を受信することで、最大比合成と同じ比率、もしくは、それに近い比率によるダイバーシチ効果を得る。
【0045】
図8は、同実施形態における無線基地局装置300の構成を示す概略ブロック図である。無線基地局装置300は、アンテナ311、312と、電力位相算出部320と、送信処理部330a、330bと、変調シンボル生成部340a、340b、340cとを備える。
なお、送信処理部330a、330bは、同じ構成を有しており、以下、いずれか一方、又は、両方を示す場合には、送信処理部330という。また、変調シンボル生成部340a、340b、340cは、同じ構成を有しており、以下、いずれか1つ、又は、すべてを示す場合には、変調シンボル生成部340という。
【0046】
電力位相算出部320は、アンテナ311、312を介して端末装置200a、200bから送信される被重畳電力情報と、端末装置100から送信される位相差情報と電力比情報とに応じて算出される被重畳電力位相指定情報を送信処理部330a、330bに出力する。また、電力位相算出部320の詳細は、後述する。
ここで、被重畳電力情報とは、端末装置200a、200bにおいて、端末装置100に対する変調シンボルを検出できる無線基地局装置300からの送信電力の下限値を示す情報である。ここで、被重畳電力位相指定情報は、送信処理部330が備える電力位相制御部331(図10)に入力され、端末装置100に対する変調シンボルの送信電力値と、位相回転の回転量とを含む情報である。
【0047】
変調シンボル生成部340aは、端末装置200aに対する情報ビットが入力され、入力された情報ビットを変調した変調シンボルを送信処理部330aに出力する。変調シンボル生成部340bは、端末装置200bに対する情報ビットが入力され、入力された情報ビットを変調した変調シンボル送信処理部330bに出力する。変調シンボル生成部340cは、端末装置100に対する情報ビットが入力され、入力された情報ビットを変調した変調シンボルを送信処理部330a、330bに出力する。なお、変調シンボル生成部340a〜340cは、同じ構成を有しており、以下、変調シンボル生成部340a〜340cのいずれか、あるいは、すべてを示す場合には、変調シンボル生成部340という。
【0048】
送信処理部330aは、変調シンボル生成部340a、340cから入力された変調シンボルから、電力位相算出部320から入力された被重畳電力位相指定情報に基づいて送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ311を介して端末装置100、200aに送信する。送信処理部330bは、変調シンボル生成部340b、340cから入力された変調シンボルそれぞれと、電力位相算出部320から入力された被重畳電力位相指定情報に基づいて送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ312を介して端末装置100、200bに送信する
【0049】
図9は、同実施形態における変調シンボル生成部340の構成を示す概略ブロック図である。変調シンボル生成部340は、符号化部341と変調部342とを備える。符号化部341は、送信する情報ビットが入力され、入力された情報ビットに対してターボ符号、畳み込み符号、LDPC(Low Density Parity check Code;低密度パリティ検査符号)などにより前方誤り訂正(Forward Error Correction;FEC)を行い変調部342に出力する。変調部342は、符号化部341により符号化された情報ビットに対して変調を行い、生成した変調シンボルを出力する。このとき、変調部342が行う変調として、例えば、QPSK(Quadrature Phase shift keying;4相位相偏移変調)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation;16値直交振幅変調)、64QAM(64 Quadrature Amplitude Modulation;64値直交振幅変調)などを用いる。
【0050】
次に、図10は、同実施形態における送信処理部330の構成を示す概略ブロック図である。送信処理部330は、電力位相制御部331、電力制御部332、SPC部333、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform;逆高速フーリエ変換)部334、ガードインターバル挿入部335(以下、GI挿入部335という。)、及び、無線送信部336を備える。
電力位相制御部331は、電力位相算出部320から入力される被重畳電力位相指定情報に基づいて、入力される端末装置100に対する変調シンボルに対して電力(振幅)変更と位相回転を行い、SPC部333に出力する。電力制御部332は、入力される端末装置200に対する変調シンボルに対して、所定の電力(振幅)を有する変調シンボルに変換してSPC部333に出力する。ここで、所定の電力とは、アンテナ311、312と端末装置200との間の伝搬路のチャネル推定値により算出される電力や、通信の規格などで定められた電力などである。
【0051】
SPC部333は、電力位相制御部331と電力制御部332とから入力された2つの変調シンボルを加算してSPCシンボルを生成し、生成したSPCシンボルをIFFT部334に出力する。IFFT部334は、入力されたSPCシンボルそれぞれをサブキャリアに割り当てて逆FFTを行うことにより下りリンク信号を生成し、生成した下りリンク信号をGI挿入部335に出力する。GI挿入部335は、IFFT部334から入力された下りリンク信号に対してガードインターバルを挿入して無線送信部336に出力する。無線送信部336は、ガードインターバルが挿入された下りリンク信号をアップコンバージョンしてアナログの送信信号に変換し、送信信号を接続されたアンテナ311又はアンテナ312を介して端末装置100及び端末装置200に送信する。
【0052】
図11は、同実施形態における電力位相算出部320の構成を示す概略ブロック図である。電力位相算出部320は、位相差情報検出部321、電力比情報検出部322、被重畳電力情報検出部323、被重畳電力情報検出部324、及び情報算出部325を備えている。
位相差情報検出部321は、アンテナ311、312に接続され、受信した信号より端末装置100が送信する位相差情報を検出して情報算出部325に出力する。電力比情報検出部322は、アンテナ311、312に接続され、受信した信号より端末装置100が送信する電力比情報を検出して情報算出部325に出力する。被重畳電力情報検出部323は、アンテナ311に接続され、端末装置200aが送信する被重畳電力情報を検出して情報算出部325に出力する。被重畳電力情報検出部324は、アンテナ312に接続され、端末装置200bが送信する被重畳電力情報を検出して情報算出部325に出力する。情報算出部325は、位相差情報検出部321が出力する位相差情報と、電力比情報検出部322が出力する電力比情報と、被重畳電力情報検出部323、324が出力する被重畳電力情報とから、送信処理部330aに対する被重畳電力位相指定情報、及び、送信処理部330bに対する被重畳電力位相指定情報を算出して、送信処理部330a、330bそれぞれに出力する。
【0053】
ここで、位相差情報とは、アンテナ311と端末装置100との間の伝搬路特性、及び、アンテナ312と端末装置100との間の伝搬路特性から算出される端末装置100におけるアンテナ311からの伝搬路による位相回転量と、アンテナ312からの伝搬路による位相回転量との差を表す情報である。電力比情報とは、アンテナ311と端末装置100との間の伝搬路特性、及び、アンテナ312と端末装置100との間の伝搬路特性から算出されるアンテナ311からの伝搬路による信号電力の減衰率と、アンテナ312からの伝搬路による信号電力の減衰率との比である。被重畳電力情報とは、端末装置200a、200bにおける、端末装置100に対する変調シンボルを検出可能な当該変調シンボルの送信電力値を示す情報である。
【0054】
以下、情報算出部325が行う処理について説明する。ここで、アンテナ311から送信する端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる電力をp11とし、端末装置200aに対する変調シンボルに割り当てる電力をp12とする。また、アンテナ312から送信する端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる電力をp21とし、端末装置200bに対する変調シンボルに割り当てる電力p23とする。また、端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる電力のp1(=p11+p21)は、予め定められた一定の値であり、例えば、無線基地局装置300の定格送信電力などにより定められる。
【0055】
また、端末装置100は、チャネル推定部114において、アンテナ311から自端末装置への伝搬路特性を示すチャネルのチャネル推定値hと、アンテナ312から自端末装置への伝搬路特性を示すチャネル推定値hと、チャネル推定値h、hから電力比(|h/|h)を示す電力比情報、及び、位相差(arg(h/h))を示す位相差情報を算出し、これらの情報を含むチャネル状態情報(CSI)を無線基地局装置300に送信する。
【0056】
また、端末装置200aは、自端末装置が端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力p11の下限値min_p11を示す被重畳電力情報を無線基地局装置300に送信する。端末装置200bは、端末装置200aと同様に、自端末装置が端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力p21の下限値min_p21を無線基地局装置300に送信する。
【0057】
最大比合成(Maximum Ratio Combining;MRC)に基づいた通信を行う場合、無線基地局装置300において、情報算出部325は、次式(1−1)、(1−2)で表される処理を行うための電力と位相とを算出する。
【0058】
【数1】

【0059】
ここで、xは、端末装置100に対する変調シンボルであり、y11は、アンテナ311から送信する端末装置100に対する変調シンボルであり、y21は、アンテナ312から送信する端末装置100に対する変調シンボルである。すなわち、y11は、送信処理部330aの電力位相制御部331が出力する変調シンボルを表し、y21は、送信処理部330bの電力位相制御部331が出力する変調シンボルを表す。
以下、下限値min_p11と、min_p21と、最大比合成に基づいた通信を行う場合のアンテナ311から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅P1と、アンテナ312から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅P2との大小関係で場合分けをし、それぞれの場合における情報算出部325の動作について説明する。ただし、送信振幅P1、P2は、以下の通り。
P1=|h|/√(|h+|h)・√p
P2=|h|/√(|h+|h)・√p
ここで、変調シンボルの送信振幅とは、その変調シンボルの電力の平方根であるとする。
【0060】
<ケース1>
アンテナ311から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きく、かつ、アンテナ312から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きい場合、すなわち、P1>(min_p111/2、かつ、P2>(min_p211/2(条件1−1)が成り立つ場合、情報算出部325は、送信処理部330aに式(2−1)で表される被重畳電力位相指定情報を出力し、送信処理部330bに式(2−1)で表される被重畳電力位相指定情報を出力する。
【0061】
【数2】

【0062】
上述の条件において、無線基地局装置300のアンテナ311、312から送信される信号を受信する端末装置100において、サイトダイバーシチによる最大比合成の効果を得て通信品質を向上させることができる。
【0063】
<ケース2>
アンテナ311から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根以下であり、かつ、アンテナ312から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きく、かつ、端末装置100に対する変調シンボルの総送信電力は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値との和以上である場合、すなわち、P1≦(min_p111/2、かつ、P2>(min_p211/2、かつ、p1≧min_p11+min_p21(条件1−2)が成り立つ場合、情報算出部325は、端末装置100宛に変調シンボルが次式(3−1)、(3−2)で表されるy11、y21とするために、送信処理部330aに式(3−3)で表される被重畳電力位相指定情報を出力し、送信処理部330bに式(3−4)で表される被重畳電力位相指定情報を出力する。
【0064】
【数3】

【0065】
送信処理部330a、330bにおける電力位相制御部331は、情報算出部325から入力された被重畳電力位相情報に応じて、伝搬路の状態が良くないアンテナ311と端末装置100との伝搬路に対して送信電力P1以上の送信電力の下限値min_p11を割り当てる。これにより、端末装置100が、最大比合成ほどの送信ダイバーシチ効果を得ることができないが、等利得合成を超える送信ダイバーシチ効果を得ることができ、端末装置200aが、SPCにより多重化された自端末装置に対する変調シンボルの検出を行うことができる。
【0066】
<ケース3>
アンテナ311から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きく、かつ、アンテナ312から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根以下であり、かつ、端末装置100に対する変調シンボルの総送信電力は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値との和以上である場合、すなわち、P1>(min_p111/2、かつ、P2≦(min_p211/2、かつ、p1≧min_p11+min_p21(条件1−3)が成り立つ場合、情報算出部325は、次式(4−1)、(4−2)で表される信号y11、y21が送信されるように、送信処理部330aに式(4−3)で表される被重畳電力位相指定情報を出力し、送信処理部330bに式(4−4)で表される被重畳電力位相指定情報を出力する。
【0067】
【数4】

【0068】
送信処理部330a、330bにおける電力位相制御部331は、上述のケース2と同様に、情報算出部325から入力された被重畳電力位相情報に応じて、伝搬路の状態が良くないアンテナ312と端末装置100との伝搬路に対して送信振幅P2以上の送信電力min_p21を割り当てる。これにより、端末装置100が、最大比合成ほどの送信ダイバーシチ効果を得ることができないが、等利得合成を超える送信ダイバーシチ効果を得ることができ、端末装置200bが、SPCにより多重化された自端末装置に対する変調シンボルの検出を行うことができる。
【0069】
<ケース4>
端末装置100に対する変調シンボルの総送信電力は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値との和より小さい場合、すなわち、p1<min_p11+min_p21(条件1−4)が成り立つ場合、端末装置100に送信する変調シンボルの伝送レートを下げるか、あるいは、無線基地局装置300が送信する信号全体の送信電力を大きくして、p1≧min_p11+min_p21を満たす処理を行う。これにより、端末装置100が、最大比合成の送信ダイバーシチ効果を得て、端末装置200bが、SPCにより多重化された自端末装置に対する変調シンボルの検出を行うことができる。
【0070】
上述のように、無線通信システム10の下りリンクにおいて、端末装置200が、端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値を無線基地局装置300に送信することで、無線基地局装置300が、最大比合成に基づいて端末装置100に対する変調シンボルに対する電力を算出したときに、端末装置200が送信した電力値より小さいか否かを判断する。端末装置100に対する変調シンボルの電力が、端末装置200が送信した電力値より小さいとき、無線基地局装置300は、端末装置100に対して最大比合成に近いダイバーシチ効果が得られる送信を行うと共に、端末装置200が端末装置100に対する変調シンボルを検出できる電力で信号を送信することができる。このとき、端末装置200は、SPCにより多重化された受信信号から、端末装置100に対する変調シンボルを減算して自端末装置に対する変調シンボルを検出し、当該変調シンボルから情報ビットを復号することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、端末装置100が、電力比(|h/|h)と、位相差(arg(h/h))を算出して無線基地局装置300に送信する構成としたが、電力比と位相差の代わりに無線基地局装置300が、端末装置100からアンテナ311、312への伝搬路を推定してチャネル推定値h、hを算出して、伝搬路の可逆性を利用して電力比と位相差とを算出してもよい。また、複素数のチャネル推定値h、hを示す情報でも良いし、その他電力比情報と位相差情報を含む情報でも良い。
【0072】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態における無線通信システム20の概略を示す模式図である。無線通信システム20は、アンテナ311、312を備えた無線基地局装置301と、端末装置100(第1の端末装置)と、端末装置201a、201b(第2の端末装置)とを備える。また、端末装置100は、送信アンテナ311、312から信号を受信し、無線基地局装置301にチャネル状態情報(Channel State Information;CSI)としてチャネル推定値を送信する。
また、端末装置100は、第1実施形態の端末装置100と同じ構成であり、同じ符号を付してその説明を省略する。また、端末装置201a、201bは、同じ構成を有しており、以下、いずれか一方、又は、両方を示す場合に端末装置201という。
【0073】
また、端末装置201a、201bは、SPCにより多重化された受信信号から、端末装置100に対する変調シンボル(第1の変調シンボル)を検出できる送信電力の下限値(第1の下限値)を示す被重畳電力情報と、端末装置201a、201bに対する変調シンボル(第2の変調シンボル)を検出できる送信電力の下限値(第2の下限値)を示す重畳電力情報とを無線基地局装置300に送信する。
ここで、重畳電力情報算出部221が第2の下限値を算出する方法は、第1実施形態において被重畳電力情報算出部219が算出した送信電力の下限値min_p11(又はmin_p21)の算出方法と同じであり、無線基地局装置301が送信する既知の電力(p0)を有するパイロット信号を受信し、受信したパイロット信号の受信電力S0[dBm]を用いて算出する。
【0074】
次に、図13は、同実施形態における端末装置201の構成を示す概略ブロック図である。端末装置201は、図示するように、アンテナ210、無線受信部211、GI除去部212、FFT部213、チャネル推定部214、データ検出部215、レプリカ生成部216、キャンセル部217、データ検出部218、被重畳電力情報算出部219、重畳電力情報算出部221、及び、無線送信部222を備える。また、端末装置201は、第1実施形態の端末装置200と比べ、重畳電力情報算出部221と無線送信部222とが異なっており、第1実施形態と同じ構成には、同じ符号(210〜219)を付してその説明を省略する。
【0075】
重畳電力情報算出部221は、自端末装置において、自端末装置に対する情報ビットが検出可能な当該変調シンボルの無線基地局装置301における送信電力の下限値(min_p12、min_p23)を算出し、算出した下限値を重畳電力情報として無線送信部220に出力する。無線送信部222は、被重畳電力情報算出部219が出力した被重畳電力情報と、重畳電力情報算出部221が算出した重畳電力情報とを無線基地局装置301に送信する。
ここで、重畳電力情報(min_p12)は、端末装置201aがアンテナ311から受信した受信信号に含まれる端末装置201aに対する変調シンボルを検出することができる送信電力の下限値を示す。また、重畳電力情報(min_p23)は、端末装置201bがアンテナ312から受信した受信信号に含まれる端末装置201bに対する変調シンボルを検出することができる送信電力の下限値を示す。
【0076】
続いて、図14は、同実施形態における無線基地局装置301の構成を示す概略ブロック図である。無線基地局装置301は、アンテナ311、312と、電力位相算出部350と、送信処理部360a、360bと、変調シンボル生成部340a、340b、340cとを備える。なお、送信処理部360a、360bは、同じ構成を有しており、以下、いずれか一方、又は、両方を示す場合には、送信処理部360という。
【0077】
電力位相算出部350は、アンテナ311,312を介して端末装置201a、201bが送信する被重畳電力情報及び重畳電力情報と、端末装置100が送信する位相差情報及び電力比情報とに応じて算出される被重畳電力位相指定情報を送信処理部360a、360bに出力する。
変調シンボル生成部340a〜340cは、図9に示した第1実施形態の変調シンボル生成部340と同じ構成である。
【0078】
図15は、同実施形態における送信処理部360の構成を示す概略ブロック図である。送信処理部360は、電力位相制御部331、電力制御部361、SPC部333、IFFT部334、GI挿入部335、及び、無線送信部336を備え、第1実施形態の送信処理部330に比べ、電力制御部361のみが異なる。そこで、第1実施形態と同じ構成には、同じ符号(331、333〜336)を付してその説明を省略する。
電力制御部361は、入力された端末装置201に対する変調シンボルを、電力位相算出部350が算出した重畳電力指定情報に従って送信電力を変化させる制御を行い、電力制御をした変調シンボルをSPC部333に出力する。ここで、重畳電力指定情報とは、端末装置201に対する変調シンボルの電力を設定する情報である。
【0079】
図16は、同実施形態における電力位相算出部350の構成を示す概略ブロック図である。電力位相算出部350は、位相差情報検出部321、電力比情報検出部322、被重畳電力情報検出部323、324、重畳電力情報検出部351、352を備え、第1実施形態の電力位相算出部320と比べ、重畳電力情報検出部351、352と情報算出部353とが異なり、他の構成に第1実施形態と同じ符号(321〜324)を付してその説明を省略する。
【0080】
重畳電力情報検出部351は、アンテナ311に接続され、端末装置201aが送信する重畳電力情報(min_p12)を検出して情報算出部353に出力する。重畳電力情報検出部352は、アンテナ312に接続され、端末装置201bが送信する重畳電力情報(min_p23)を検出して情報算出部353に出力する。
情報算出部353は、位相差情報検出部321が出力する位相差情報と、電力比情報検出部322が出力する電力比情報と、被重畳電力情報検出部323、324それぞれが出力する被重畳電力情報と、重畳電力情報検出部351、352それぞれが出力する重畳電力情報とから、送信処理部360aに対する被重畳電力位相指定情報及び重畳電力指定情報と、送信処理部360bに対する被重畳電力位相指定情報及び重畳電力指定情報とを算出して、送信処理部360a、360bそれぞれに出力する。
【0081】
以下、情報算出部353が行う演算動作について説明する。ここで、端末装置100、201a、201bに送信する信号に対する電力の合計p(=p11+p21+p12+p23)は、一定であり、例えば、無線基地局装置301の定格送信電力などにより定められる。
通常の最大比合成(MRC)に基づいた通信を行う場合、情報算出部353は、式(1−1)、(1−2)で表される処理を行うための電力と位相とを算出する。ここで、第1実施形態と同様に、場合分けをして説明する。
【0082】
情報算出部353の動作、すなわち、送信処理部360a、360bそれぞれに出力する被重畳電力位相指定情報は、ケース1からケース3において、第1実施形態の情報算出部325同じである。このとき、情報算出部353は、端末装置201aに対する変調シンボルの電力を指定する重畳電力指定情報と、端末装置201bに対する変調シンボルの電力を指定する重畳電力指定情報とに対して所定の電力値を示す情報を出力する。ここで、所定の電力とは、アンテナ311、312と端末装置200との間の伝搬路のチャネル推定値により算出される電力や、通信の規格などで定められた電力などである。
【0083】
ここで、端末装置201aが端末装置100に対する変調シンボルを検出するときのSINRは、|h12・p11/(p12+n2)である。ここで、チャネル推定値h12は、アンテナ311から端末装置201aへの伝搬路のチャネル推定値であり、p12は、送信アンテナ311における端末装置201aに対する変調シンボルの送信電力であり、n2は、雑音電力である。上述のSINRにおいて、p12をmin_p12に置き換えると、端末装置201aに対する変調シンボルに割り当てる送信電力を下げることになり、送信電力の差分を端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる電力として用いることができる。
また、端末装置201bに対する変調シンボルを検出するときのSINRは、同様に、|h23・p21/(p23+n3)である。チャネル推定値h23は、アンテナ312から端末装置201bへの伝搬路のチャネル推定値であり、p23は、送信アンテナ312における端末装置201に対する変調シンボルの送信電力であり、n3は、雑音電力である。上述のSINRにおいて、p23をmin_p23に置き換えると端末装置201bに対する変調シンボルに割り当てる送信電力を下げることになり、送信電力の差分を、更に、端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる電力して用いることができる。このとき、端末装置100に対する変調シンボルの送信電力を割り当て可能上限電力といい、2つの送信アンテナ311、312の合計値p’1で表される。
p’=p+(p12−min_p21)+(p23−min_p23
【0084】
以下、第1実施形態のケース4をケース4−1とケース4−2とに場合分けして情報算出部325の動作を説明する。
<ケース4−1>
割り当て可能上限電力は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値との和以上である、すなわち、p’≧min_p21+min_p11(条件1−4−1)が成立する場合、情報算出部353は、送信処理部360aに次式(5−1)で表される被重畳電力位相指定情報を出力し、送信処理部360bに式(5−2)で表される被重畳電力位相指定情報を出力する。また、情報算出部353は、送信処理部360aにmin_p12を重畳電力指定情報として出力し、送信処理部360bにmin_p23を重畳電力指定情報として出力する。
【0085】
【数5】

【0086】
<ケース4−2>
割り当て可能上限電力は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値との和より小さい、すなわち、p’<min_p21+min_p11(条件1−4−2)が成立する場合、端末装置100に送信する変調シンボルの伝送レートを下げるか、あるいは、無線基地局装置301が送信する信号全体の送信電力を上げて、p≧min_p11+min_p21を満たす処理を行う。
【0087】
上述のように、無線基地局装置301は、端末装置201aから受信する重畳電力情報(min_p12)と、端末装置201bから受信する重畳電力情報(min_p23)を受信する。無線基地局装置301は、端末装置100に対する送信電力が足りず、端末装置201a、201bが、端末装置100に対する変調シンボルを検出できないとき、端末装置201a、201bそれぞれに対する変調シンボルに割り当てられる電力を重畳電力情報に示された電力まで下げ、その差分を端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる。これにより、無線基地局装置301は、下りリンクにおいて、第1実施形態では電力の割り当ての変更により対応できない場合(ケース4)においても、3つの端末装置100、201a、201bに対して同じ無線リソースにより情報ビットを多重化して送信することが可能になる。
【0088】
(第3実施形態)
図17は、第3実施形態の無線通信システム30の構成を示す概略を示す模式図である。また、図示するように、一例として、端末装置200aは、アンテナ311のセルエリア内に位置し、端末装置200bは、アンテナ311のセルエリアに隣接するアンテナ312のセルエリア内に位置し、端末装置200cは、アンテナ311、312のセルエリアに隣接するアンテナ313のセルエリア内に位置し、端末装置100は、上述の3つのセルエリアの端に位置する。無線通信システム30は、アンテナ311〜313を備えた無線基地局装置303と、端末装置100(第1の端末装置)と、端末装置200a〜200c(第2の端末装置)とを備える。また、無線通信システム30は、第1実施形態の無線通信システム10を拡張し、アンテナ313と、端末装置200a、200bと同じ構成の端末装置200cとを加えて、SPCによる多重化が行われる端末装置を3つとする構成である。
無線基地局装置303は、送信信号を地理的に離れた複数のアンテナ311、312、313から送信する。また、端末装置100は、送信アンテナ311〜313から信号を受信し、無線基地局装置303にチャネル状態情報(CSI)を送信する。また、端末装置200a〜200cは、SPCにより多重化された受信信号から、端末装置100に対する変調シンボル(第1の変調シンボル)を検出できる送信電力の下限値(第1の下限値)を示す被重畳電力情報を無線基地局装置303に送信する。
【0089】
端末装置100は、図7に示した第1実施形態の端末装置100と同じ構成を有しているが、アンテナ313が設けられたことにより、チャネル推定部114の処理が異なる。
チャネル推定部114は、アンテナ313と自端末装置との間の伝搬路特性を示すチャネル推定値hを算出し、アンテナ312と自端末装置との間の伝搬路特性を示すチャネル推定値hとチャネル推定値hとの電力比(|h/|h)、及び、位相差(arg(h/h))を含むチャネル状態情報(CSI)を無線基地局装置303に送信する。なお、端末装置100が上述の電力比及び位相差を無線基地局装置303に送信せずに、無線基地局装置303が端末装置100から送信される既知信号を用いて算出しても良い。
端末装置200a〜200cは、図4に示した第1実施形態の端末装置200と同じ構成を有しており、同じ符号(200)を付してその説明を省略する。
【0090】
次に、図18は、同実施形態における無線基地局装置303の構成を示す概略ブロック図である。無線基地局装置303は、アンテナ311〜313と、電力位相算出部370と、送信処理部330a〜330cと、変調シンボル生成部340a〜340dとを有し、第1実施形態の無線基地局装置300と同じ構成には、同じ符号(311、312、330a、330b、340a〜340c)を付してその説明を省略する。なお、変調シンボル生成部340a〜340dは、図9に示した第1実施形態の変調シンボル生成部340と同じ構成であり、以下、変調シンボル生成部340a〜340dのいずれか、あるいは、すべてを示す場合には、変調シンボル生成部340という。また、送信処理部330a〜330cは、図10に示した送信処理部330と同じ構成であり、以下、送信処理部330a〜330cのいずれか1つ、あるいは、すべてを示す場合には、送信処理部330という。
【0091】
変調シンボル340dは、端末装置200cに対する情報ビットが入力され、入力された情報ビットを変調した変調シンボルを送信処理部330cに出力する。送信処理部330cは、変調シンボル生成部340a、340dそれぞれが出力した変調シンボルから、電力位相算出部370が出力する被重畳電力位相指定情報に従って送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ313を介して、端末装置100、200cに送信する。
電力位相算出部370は、アンテナ311〜313と接続され、アンテナ311〜313を介して端末装置200a〜200cが送信する被重畳電力情報と、端末装置100が送信する位相差情報と電力比情報とに応じて算出される被重畳電力移送して情報を送信処理部330a〜330cに出力する。
【0092】
次に、図19は、電力位相算出部370の構成を示す概略ブロック図である。電力位相算出部370は、位相差情報検出部371と、電力比情報検出部372と、被重畳電力情報検出部373〜375と、情報算出部376とを備えている。
位相差情報検出部371は、アンテナ311〜313に接続され、受信した信号より端末装置100が送信する位相差情報を検出して情報算出部376に出力する。電力比情報検出部372は、アンテナ311〜313に接続され、受信した信号より端末装置100が送信する電力比情報を検出して情報算出部376に出力する。
被重畳電力情報検出部373は、アンテナ311に接続され、端末装置200aが送信する被重畳電力情報を検出して情報算出部376に出力する。被重畳電力情報検出部374は、アンテナ312に接続され、端末装置200bが送信する被重畳電力情報を検出して情報算出部376に出力する。被重畳電力情報検出部375は、アンテナ313に接続され、端末装置200cが送信する被重畳電力情報を検出して情報算出部376に出力する。
【0093】
情報算出部376は、位相差情報検出部371が出力する位相差情報と、電力比情報検出部372が出力する電力比情報と、被重畳電力情報検出部373〜375が出力する被重畳電力情報とから、送信処理部330aに対する被重畳電力位相指定情報、送信処理部330bに対する被重畳電力位相指定情報、及び、送信処理部330cに対する被重畳電力位相指定情報を算出して、送信処理部330a〜330cそれぞれに出力する。
【0094】
続いて、情報算出部376が行う処理について説明する。ここで、アンテナ311から送信する端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる電力をp11とし、アンテナ312から送信する端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる電力をp21とし、アンテナ313から送信する端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる電力をp31とする。
アンテナ311から送信する端末装置200aに対する変調シンボルに割り当てる電力をp12とし、アンテナ312から送信する端末装置200bに対する変調シンボルに割り当てる電力をp23とし、アンテナ313から送信する端末装置200cに対する変調シンボルに割り当てる電力をp34とする。また、端末装置100に対する変調シンボルに割り当てる電力の総和p(=p11+p21+p31)は、一定であり、例えば、無線基地局装置300の定格送信電力などにより定められる。
【0095】
最大比合成(MRC)に基づいた通信を行う場合、情報算出部376は、次式(6−1)〜(6−3)で表される処理を行うための電力と位相とを算出する。
【0096】
【数6】

【0097】
ここで、xは、端末装置100に対する変調シンボルであり、y11は、アンテナ311から端末装置100に送信する電力変換と位相回転を行った変調シンボルであり、送信処理部330aの電力位相制御部331が出力する変調シンボルである。y21は、y11と同様に、送信処理部330bの電力位相制御部331が出力する変調シンボルである。y31は、y11と同様に、送信処理部330cの電力位相制御部331が出力する変調シンボルである。
【0098】
以下、下限値min_p11、min_p21、及び、min_p31と、通常の最大比合成に基づいた通信を行う場合のアンテナ311から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅P1と、アンテナ312から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅P2と、アンテナ313から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅P3との大小関係で場合分けをし、それぞれの場合における情報算出部376の動作について説明する。ここで、min_p31は、端末装置200cが端末装置100に対する変調シンボルを検出することのできる当該変調シンボルの無線基地局装置303における送信電力の下限値である。
ただし、送信振幅P1、P2、P3は、以下の通り。
P1=|h|/√(|h+|h+|h)・√p
P2=|h|/√(|h+|h+|h)・√p
P3=|h|/√(|h+|h+|h)・√p
【0099】
<ケース1>
アンテナ311から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信電力は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きく、かつ、アンテナ312から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信電力は、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きく、かつ、アンテナ313から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200cが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きい場合、すなわち、P1>(min_p111/2、かつ、P2>(min_p211/2、かつ、P3>(min_p311/2(条件3−1)が成立する場合、情報算出部376は、式(7−1)で表される被重畳電力位相指定情報を送信処理部330aに出力し、式(7−2)で表される被重畳電力位相指定情報を送信処理部330bに出力し、式(7−3)で表される被重畳電力位相指定情報を送信処理部330cに出力する。
【0100】
【数7】

【0101】
<ケース2>
アンテナ311から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根以下であり、かつ、アンテナ312から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きく、かつ、アンテナ313から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200cが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きく、かつ、端末装置100に対する変調シンボルの総送信電力は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200cが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値との和以上である場合、すなわち、P1≦(min_p111/2、かつ、P2>(min_p211/2、かつ、P3>(min_p311/2、かつ、p1≧min_p11+min_p21+min_p31(条件3−2)が成立する場合、情報算出部376は、端末装置100に対する変調シンボルが次式(8−1)〜(8−3)で表されるy11、y21、y31とするために、送信処理部330aに次式(9−1)で表される被重畳電力位相指定情報を出力し、送信処理部330bに次式(9−2)で表される被重畳電力位相指定情報を出力し、送信処理部330cに次式(9−3)で表される被重畳電力位相指定情報を出力する。
【0102】
【数8】

【0103】
【数9】

【0104】
上述の被重畳電力位相指定情報により、電力位相制御部331は、情報算出部325が算出した被重畳電力位相情報に応じて、伝搬路の状態が良くないアンテナ311と端末装置100との伝搬路に対して送信振幅P1以上の送信電力の下限値min_p11を割り当てる。これにより、端末装置100が、最大比合成ほどの送信ダイバーシチ効果を得ることができないが、等利得合成を超える送信ダイバーシチ効果を得ることができ、端末装置200aが、SPCにより多重化された自端末装置に対する変調シンボルの検出を行うことができる。
また、ケース2では、アンテナ311から端末装置100への送信電力が、下限値min_p11より小さい場合を示したが、情報算出部325は、アンテナ312、311の場合も、アンテナ311の場合と同様に、被重畳電力位相指定情報を算出して、端末装置200a〜200cが自端末装置に対する変調シンボルの検出を行える電力・位相制御を行う。
【0105】
<ケース3>
アンテナ311から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根以下であり、かつ、アンテナ312から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根以下であり、かつ、アンテナ313から送信される端末装置100に対する変調シンボルの送信振幅は、端末装置200cが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値の平方根より大きく、かつ、端末装置100に対する変調シンボルの総送信電力は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200cが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値との和以上である場合、すなわち、P1≦(min_p111/2、かつ、P2≦(min_p211/2、かつ、P3>(min_p311/2、かつ、p1≧min_p11+min_p21+min_p31(条件3−3)が成立する場合、情報算出部376は、端末装置100に対する変調シンボルが次式(10−1)〜(10−3)で表されるy11、y21、y31とするために、送信処理部330aに次式(11−1)で表される被重畳電力位相指定情報を出力し、送信処理部330bに次式(11−2)で表される被重畳電力位相指定情報を出力し、送信処理部330cに次式(11−3)で表される被重畳電力位相指定情報を出力する。
【0106】
【数10】

【0107】
【数11】

【0108】
上述の被重畳電力位相指定情報により、電力位相制御部331は、情報算出部325が算出した被重畳電力位相情報に応じて、伝搬路の状態が良くないアンテナ311と端末装置100との伝搬路に対して送信振幅P1以上の送信電力の下限値min_p11を割り当て、伝搬路の状態が良くないアンテナ312と端末装置100との伝搬路に対して送信振幅P2以上の送信電力の下限値min_p11を割り当てる。これにより、端末装置100が、最大比合成ほどの送信ダイバーシチ効果を得ることができないが、等利得合成を超える送信ダイバーシチ効果を得ることができ、端末装置200aが、SPCにより多重化された自端末装置に対する変調シンボルの検出を行うことができる。
また、ケース3では、アンテナ311から端末装置100への送信電力が、下限値min_p11より小さく、かつ、アンテナ312から端末装置100への送信電力が、下限値min_p21より小さい場合を示したが、情報算出部325は、アンテナ312、313の組み合わせや、アンテナ311、313の組み合わせの場合も、同様に、被重畳電力位相指定情報を算出して、端末装置200a〜200cが自端末装置に対する変調シンボルの検出を行える電力・位相制御を行う。
【0109】
<ケース4>
端末装置100に対する変調シンボルの総送信電力は、端末装置200aが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200bが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値と、端末装置200cが端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値との和より小さい場合、すなわち、p1<min_p11+min_p21+min_p31(条件3−4)が成立する場合、端末装置100に送信する変調シンボルの伝送レートを下げるか、あるいは、無線基地局装置303が送信する信号全体の送信電力を上げて、p1≧min_p11+min_p21+min_p31を満たす処理を行う。
【0110】
上述のように、無線通信システム30の下りリンクにおいて、端末装置200が、端末装置100に対する変調シンボルを検出できる送信電力の下限値を無線基地局装置303に送信することで、無線基地局装置300が、最大比合成に基づいて端末装置100に対する変調シンボルに対する電力を算出したときに、端末装置200が送信した電力値より小さいか否かを判断する。端末装置100に対する変調シンボルの電力が、端末装置200が送信した電力値より小さいとき、無線基地局装置300は、端末装置100に対して最大比合成に近いダイバーシチ効果が得られる送信を行うと共に、端末装置200が端末装置100に対する変調シンボルを検出できる電力で信号を送信することができる。このとき、端末装置200は、SPCにより多重化された受信信号から、端末装置100に対する変調シンボルを減算して自端末装置に対する変調シンボルを検出し、当該変調シンボルから情報ビットを復号することができる。
【0111】
なお、チャネル推定値は、端末装置が算出して無線基地局装置に送信する構成としたが、無線基地局装置がチャネル推定値を算出して、算出したチャネル推定値を端末装置に送信する構成としても良い。
また、第1実施形態から第3実施形態において、固定された無線基地局装置と、移動可能な端末装置との間の通信について説明したが、両者が共に移動可能な構成、あるいは、両者が共に固定された構成に対しても用いることができる。
また、第1実施形態から第3実施形態において、無線通信システムが複数のアンテナを備える無線基地局装置を有する構成を用いて説明したが、複数の無線基地局装置を備え、複数の無線基地局装置それぞれが同期して信号を端末装置に送信するようにしてもよい。
【0112】
上述の無線基地局装置、端末装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。その場合、上述した送信における処理、及び、受信における処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われることになる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0113】
10、11、20、30…無線通信システム
100…端末装置
200、200a、200b、200c、201、201a、201b…端末装置
110…アンテナ、111…無線受信部、112…GI除去部、113…FFT部
114…チャネル推定部、115…データ検出部、116…無線送信部
210…アンテナ、211…無線受信部、212…GI除去部、213…FFT部
214…チャネル推定部、215…データ検出部、216…レプリカ生成部
217…キャンセル部、218…データ検出部、219…被重畳電力情報算出部
219A…テーブル部、220…無線送信部、221…重畳電力情報算出部
222…無線送信部、251…チャネル補償部、252…復調部、253…復号部
300、301、303…無線基地局装置
311、312、313…アンテナ、320、350、370…電力位相算出部
321、371…位相差情報検出部、322、372…電力比情報検出部
323、324、373、374、375…被重畳電力情報検出部
325、353、376…情報算出部
330、330a、330b、330c…送信処理部
340、340a、340b、340c…変調シンボル生成部
341…符号化部、342…変調部、331…電力位相制御部、332…電力制御部
333…SPC部、334…IFFT部、335…GI挿入部、336…無線送信部
351、352…重畳電力情報検出部
360、360a、360b…送信処理部
361…電力制御部
401、402…無線リレー局装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナそれぞれから異なる信号を送信する通信装置と、第1の端末装置と、複数の第2の端末装置とを有する無線通信システムにおいて、
前記通信装置は、
前記複数の第2の端末装置それぞれから受信した電力情報を受信し、受信した前記電力情報それぞれに基づく送信電力により、前記第1の端末装置に対する第1の変調シンボルを生成すると共に、
前記アンテナそれぞれに対応付けられた前記複数の第2の端末装置に対する第2の変調シンボルと、前記送信電力を有する前記第1の変調シンボルとを重畳符号化により多重化する複数の送信処理部を備え、
前記複数の第2の端末装置それぞれは、
前記複数のアンテナのいずれか1つのアンテナと対応付けられ、該アンテナから送信された信号を受信し、受信した該信号から前記第2の変調シンボルを検出し、当該アンテナと自端末装置との伝搬路特性と、前記第1の変調シンボルの受信電力とから、前記第1の変調シンボルの送信電力を示す電力情報を算出して送信する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記複数の送信処理部は、前記複数のアンテナから送信する前記第1の変調シンボルを前記電力情報が示す電力より大きい送信電力により送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記複数の第2の端末装置それぞれは、
前記通信装置から受信した信号から前記第1の端末装置に対する前記第1の変調シンボルを検出し、検出した前記第1の変調シンボルを前記受信した信号から減算して自端末装置に対する前記第2の変調シンボルを検出する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記複数の第2の端末装置それぞれが送信する前記電力情報が示す電力は、
前記第2の端末装置と該第2の端末装置に対応する前記アンテナとの間の伝搬路特性と、前記第1の変調シンボルの受信電力とから、前記第1の変調シンボルの送信電力について、前記第1の変調シンボルを自端末装置にて検出できる最小の送信電力である第1の下限値である
ことを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記複数の第2の端末装置それぞれは、
受信した受信信号から該受信信号の伝搬路特性を推定してチャネル推定値を算出するチャネル推定部と、
前記チャネル推定部が算出した前記チャネル推定値から、前記第1の変調シンボルを検出するために必要な当該第1の変調シンボルの送信電力の前記第1の下限値を算出する被重畳電力情報算出部と、
前記被重畳電力情報算出部が算出した前記第1の下限値を、前記電力情報として前記通信装置に送信する無線送信部と
を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記通信装置は、
前記第1の端末装置と前記複数のアンテナそれぞれとの間の伝搬路特性に応じて、前記第1の変調シンボルの送信電力の割り当てを行う電力位相算出部、を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記複数の第2の端末装置は、
前記チャネル推定部が算出した前記チャネル推定値から、自端末装置に対する前記第2の変調シンボルを検出するために必要な当該第2の変調シンボルの送信電力に対する第2の下限値を算出する重畳電力情報算出部を備え、
前記無線送信部は、前記重畳電力情報算出部が算出した前記第2の下限値を前記通信装置に送信し、
前記電力位相算出部は、
受信した前記第2の下限値を送信した前記第2の端末装置に対応する第2の変調シンボルの送信電力を当該第2の下限値に下げた値に応じて、下げた値だけ前記第1の変調シンボルの送信電力を上げる
ことを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記通信装置は、前記複数のアンテナとして、2つのアンテナを備え、
前記2つのアンテナから前記第1の端末装置へ送信する信号の送信電力の総和は、予め定められた値であり、
前記電力位相算出部は、前記第1の端末装置と前記2つのアンテナそれぞれとの伝搬路特性に応じた最大比合成を用いた前記2つのアンテナのうちいずれか一方のアンテナから送信する前記第1の変調シンボルに割り当てる送信電力が、前記第1の下限値以下のとき、当該アンテナから送信する信号の送信電力を前記第1の下限値とし、他方のアンテナから送信する前記第1の変調シンボルに残りの送信電力を割り当てる
ことを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記通信装置は、前記複数のアンテナとして、2つのアンテナを備え、
前記2つのアンテナから送信する信号の送信電力の総和は、予め定められた値であり、
前記電力位相算出部は、前記第1の端末装置と前記2つのアンテナそれぞれとの伝搬路特性に応じた最大比合成を用いた前記2つのアンテナそれぞれから送信される前記第1の変調シンボルに割り当てる送信電力が共に前記第1の下限値以下のとき、前記第2の変調シンボルの送信電力として前記第2の下限値を割り当て、前記第1の変調シンボルに残りの送信電力を割り当てる
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記通信装置は、前記複数のアンテナとして、3つのアンテナを備え、
前記3つのアンテナから前記第1の端末装置へ送信する信号の送信電力の総和が定められ、
前記電力位相算出部は、前記第1の端末装置と前記3つのアンテナそれぞれとの伝搬路特性に応じた最大比合成を用いた前記3つのアンテナそれぞれに対する送信電力の割り当てにより、前記3つのアンテナのうちいずれかのアンテナから送信される前記第1の変調シンボルに割り当てられる送信電力が前記第1の下限値以下のとき、当該アンテナから送信される前記第1の変調シンボルの送信電力を前記第1の下限値とし、残りの送信電力を他のアンテナから送信する前記第1の変調シンボルに割り当てる
ことを特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項11】
複数のアンテナそれぞれから異なる信号を送信する通信装置と、第1の端末装置と、複数の第2の端末装置とを有する無線通信システムにおける第2の端末装置であって、
前記複数のアンテナのうち自端末装置に対応付けられたアンテナと自端末装置との伝搬路特性と、前記第1の端末装置に対する第1の変調シンボルの受信電力とから、前記第1の変調シンボルの送信電力を示す電力情報を算出して送信すると共に、
前記対応付けられたアンテナから送信された信号を受信し、受信した該信号から第2の変調シンボルを検出する
ことを特徴とする端末装置。
【請求項12】
複数のアンテナそれぞれから異なる信号を送信する通信装置と、第1の端末装置と、複数の第2の端末装置とを有する無線通信システムにおける通信装置であって、
前記複数の第2の端末装置それぞれから受信した電力情報を受信し、前記電力情報それぞれに基づく送信電力により、前記第1の端末装置に対する第1の変調シンボルを生成すると共に、
前記複数のアンテナそれぞれに対応付けられた前記複数の第2の端末装置に対する第2の変調シンボルと、前記送信電力を有する前記第1の変調シンボルとを重畳符号化により多重化する複数の送信処理部を備える
ことを特徴とする通信装置。
【請求項13】
複数のアンテナそれぞれから異なる信号を送信する通信装置と、第1の端末装置と、複数の第2の端末装置とを有する無線通信システムにおいて、
前記通信装置が、前記複数の第2の端末装置それぞれから受信した電力情報を受信し、前記電力情報それぞれに基づく送信電力により、前記第1の端末装置に対する第1の変調シンボルを生成する過程と、
前記通信装置が、前記アンテナそれぞれに対応付けられた前記第2の端末装置に対する第2の変調シンボルと、前記送信電力の前記第1の変調シンボルとを重畳符号化により多重化する過程と、
前記複数の第2の端末装置それぞれが、前記複数のアンテナのいずれか1つのアンテナと対応付けられ、該アンテナから送信された信号を受信し、受信した該信号から前記第2の変調シンボルを検出し、当該アンテナと自端末装置との伝搬路特性と、前記第1の変調シンボルの受信電力とから、前記第1の変調シンボルの送信電力を示す電力情報を算出して送信する過程と
を備えることを特徴とする無線通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2010−206284(P2010−206284A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46874(P2009−46874)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】