説明

無線通信システムにおいてタイマーのデフォルト値を設定する方法及び装置

【課題】無線通信システムにおいてタイマーのデフォルト値を設定する方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明による方法は、リセットタイマーのデフォルト値を第一値に設定し、状態報告禁止タイマー、ポーリング禁止タイマー、及びポーリングタイマーのデフォルト値を第二値に設定するステップからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信システムにおいてタイマーのデフォルト値を設定する方法及び装置に関し、特にリセットプロセスの遅延を軽減させ、通信プロトコルで定められたタイマーのデフォルト値が一致しないことによる問題を解消する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第三世代移動通信技術はWCDMA(広帯域符号分割多元接続)方式で高いスペクトル利用効率、カバー率、通話品質及び高速伝送を実現させるとともに、QoS(サービス品質)の確保、柔軟性のある双方向通信の実現、通話中断率の低減を可能にする。
【0003】
UMTS(ユニバーサル移動通信システム)準拠の第三世代移動通信システムは、ユーザー装置(UE)、地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)、及びコアネットワーク(CN)からなり、所用の通信プロトコルはAS(アクセスストラタム)とNAS(非アクセスストラタム)に分けられる。ASにはRRC(無線資源制御)、RLC(無線リンク制御)、MAC(媒体アクセス制御)、PDCP(パケットデータ収斂プロトコル)、BMC(放送/マルチキャスト制御)など機能の異なる層が含まれる。
【0004】
上記副層に関連して、3GPPは数種の通信プロトコルを制定している(詳しくはhttp://www.3gpp.orgを参照)。これらの通信プロトコルは、システム効率を向上させ、無線接続時の所要送信量を節減するため、種々の変数とパラメータについてデフォルト設定を規定している。しかしその中にも所要送信量を増加させ、システム効率を低下させるパラメータのデフォルト設定がないわけではない。例えば、3GPP TS 25.331 V6.9.0によれば、アップリンク構成に属するリセットタイマーTimer_RSTのデフォルト値は300msとされ、ダウンリンク構成に属する状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibitのデフォルト値は100msとされる。また、3GPP TS 34.108 V6.2.0によると、アップリンク構成に属するリセットタイマーTimer_RSTのデフォルト値は500msとされ、ポーリング禁止タイマーTimer_poll_ProhibitとポーリングタイマーTimer_pollのデフォルト値は200msとされ、アップリンク構成に属する状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibitのデフォルト値は200msとされる。
【0005】
リセットタイマーTimer_RST、状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibit、ポーリング禁止タイマーTimer_poll_Prohibit及びポーリングタイマーTimer_pollはいずれもRLC(無線リンク制御)エンティティーのタイマーであり、応答信号を受ける前に制御信号(リセットPDU、状態PDU、ポーリングPDU)の再送を一時禁止する場合に利用される。その定義と動作については3GPPが制定したRLC通信プロトコルを参照する。上記タイマーのデフォルト値はラウンドトリップ時間(RTT、パケットを送信してから応答信号を受信するまでの時間)より大きいかそれに等しく設定しなければならない。もっとも、ユーザー端の正常動作を確保するため、上記タイマーのデフォルト値はRTTよりやや大きく設定されることが一般である。
【0006】
第三世代移動通信システムでは、リセットPDU、状態PDU及びポーリングPDUの処理にかかる時間がほぼ同じであるため、それに関するタイマーの値もほぼ同一に設定すべきである。しかし、3GPP TS 25.331 V6.9.0と3GPP TS 34.108 V6.2.0によるタイマーのデフォルト値は互いに異なっており、同じ仕様書に掲げられる個別のタイマー間もデフォルト値が異なるため、システムの効率が低下しかねない。
【0007】
例えば3GPP TS 25.331 V6.9.0によると、状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibitは100msとされる(RTT<100ms)が、リセットタイマーTimer_RSTは300msとされる。したがって、リセットPDUに対応する肯定応答PDU(RESET ACK PDU)が届いていなければ、送信端は300msが経ってからリセットPDUを再送するほかない。しかし、RTT<100msである以上、RESET ACK PDUが100ms以内に送信端に届かなければ、次の200msの期間中に届く可能性もない。言い換えれば、リセットPDUの再送には200msの遅延が生じる。
【0008】
同じく、3GPP TS 34.108 V6.2.0によれば、状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibit、ポーリング禁止タイマーTimer_poll_Prohibit及びポーリングタイマーTimer_pollは200msとされる(RTT<200ms)が、リセットタイマーTimer_RSTは500msとされる。そのため、リセットPDUの再送には300ms(500-200=300)の遅延が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前述の問題を改善するため、無線通信システムにおいてタイマーのデフォルト値を設定する方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、無線通信システムにおいて複数のタイマーのデフォルト値を設定する方法を提供する。該方法は、リセットタイマーのデフォルト値を第一値に設定し、状態報告禁止タイマー、ポーリング禁止タイマー、及びポーリングタイマーのデフォルト値を第二値に設定するステップからなる。
【0011】
本発明は更に、無線通信システムにおいてタイマーのデフォルト値を設定する通信装置を提供する。該通信装置は、通信装置の機能を実現させる制御回路と、制御回路の中に設けられ、プログラムコードを実行して制御回路を制御する中央処理装置(CPU)と、制御回路の中でCPUと結合されるように設けられ、プログラムコードを保存するための保存装置とを含む。該プログラムコードは、リセットタイマーのデフォルト値を第一値に設定し、状態報告禁止タイマー、ポーリング禁止タイマー、及びポーリングタイマーのデフォルト値を第二値に設定するステップを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明はRESET ACK PDU再送の待ち時間を短縮させ、更にリセットタイマーTimer_RST、状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibit、ポーリング禁止タイマーTimer_poll_Prohibit、及びポーリングタイマーTimer_pollのデフォルト値を再定義することで、前記通信プロトコル間の不一致による問題を解消する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
かかる方法及び装置の特徴を詳述するために、具体的な実施例を挙げ、図示を参照して以下に説明する。
【0014】
図1を参照する。図1は無線通信システムの無線通信装置100のブロック図である。説明を簡素化するため、図1は無線通信装置100の入力装置102、出力装置104、制御回路106、CPU(中央処理装置)108、保存装置110、プログラムコード112及びトランシーバー114のみ描くとする。無線通信装置100では、制御回路106はCPU108で保存装置110に保存されるプログラムコード112を実行して無線通信装置100の動作を制御し、入力装置102(例えばキーボード)でユーザーが入力した信号を受信し、出力装置104(スクリーン、スピーカーなど)で映像、音声などの信号を出力する。無線信号を受発信するトランシーバー114は受信した信号を制御回路106に送信し、または制御回路106からの信号を無線で出力する。言い換えれば、通信プロトコルに当てはめれば、トランシーバー114は第一層の一部とみなされ、制御回路106は第二層と第三層の機能を実現させる。
【0015】
図2を参照する。図2は図1に示すプログラムコード112を表す説明図である。アプリケーション層200と、第三層インターフェイス202と、第二層インターフェイス206からなるプログラムコード112は、第一層インターフェイス218と接続されている。信号を発するとき、第二層インターフェイス(RLC層)206は第三層インターフェイス202によって出力されたデータに基づいて複数のSDU208を生成してバッファ212に保存する。その後、第二層インターフェイス206はバッファ212に保存されたSDU208に基づいて複数のPDU214を生成し、第一層インターフェイス218を介して送信先に出力する。それに反して、無線信号を受信するときは第一層インターフェイス218で信号を受信し、これをPDU214形式で第二層インターフェイス206に出力する。第二層インターフェイス206はPDU214をSDU208に還元してバッファ212に保存してから、バッファ212に保存されたSDUを第三層インターフェイス202に送信する。
【0016】
無線通信装置100は望ましくは3GPP通信プロトコルに準拠する。本発明はタイマーデフォルト値設定プログラムコード220で、状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibit、ポーリング禁止タイマーTimer_poll_Prohibit、ポーリングタイマーTimer_poll、及びリセットタイマーTimer_RSTのデフォルト値を設定し、リセット時の遅延を改善して送信効率を向上させる。
【0017】
図3を参照する。図3は本発明による方法のフローチャート30である。下記方法は無線通信システムにおいて複数のタイマーのデフォルト値を設定するために用いられ、タイマーデフォルト値設定プログラムコード220としてコンパイルすることができる。

ステップ300:開始。
ステップ302:リセットタイマーTimer_RSTのデフォルト値を第一値に設定する。
ステップ304:状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibit、ポーリング禁止タイマーTimer_poll_Prohibit、及びポーリングタイマーTimer_pollのデフォルト値を第二値に設定する。
ステップ306:終了。

以上のとおり、本発明はリセットタイマーTimer_RSTのデフォルト値を第一値に設定し、状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibit、ポーリング禁止タイマーTimer_poll_Prohibit、及びポーリングタイマーTimer_pollのデフォルト値を第二値に設定する。第一値と第二値はRTTより大きいかそれに等しく設定されることが望ましく、両者の値は同じであるかまたは互いに異なっている。
【0018】
例えば、第一値と第二値がRTTよりやや大きい同一値(例えば200msまたは100ms)であれば、リセットタイマーTimer_RSTの終了前にRESET ACK PDUが届いていなければ、送信端はリセットPDUを再送する。リセットタイマーTimer_RSTはRTTよりやや大きく設定されているため、RESET ACK PDU再送の待ち時間が短くなり、リセットプロセスは適時に実行できる。もっとも、信号妨害による送信遅延を防止するため、第一値を第二値より大きく設定し(例えば第一値を300msとし、第二値を200msとする)、すなわちリセットタイマーTimer_RSTのデフォルト値を、状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibit、ポーリング禁止タイマーTimer_poll_Prohibit及びポーリングタイマーTimer_pollのデフォルト値より大きく設定することが可能である。
【0019】
したがって、本発明はRESET ACK PDU再送の待ち時間を短縮させ、更にリセットタイマーTimer_RST、状態報告禁止タイマーTimer_Status_Prohibit、ポーリング禁止タイマーTimer_poll_Prohibit、及びポーリングタイマーTimer_pollのデフォルト値を再定義することで、前記通信プロトコル間の不一致による問題を解消する。
【0020】
以上は本発明に好ましい実施例であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、本発明の精神の下においてなされ、本発明に対して均等の効果を有するものは、いずれも本発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は従来の動作条件に変更を加えたのみであり、当然実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】無線通信システムの無線通信装置のブロック図である。
【図2】図1に示すプログラムコードを表す説明図である。
【図3】本発明による方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
100 無線通信装置
102 入力装置
104 出力装置
106 制御回路
108 CPU
110 保存装置
112 プログラムコード
114 トランシーバー
200 アプリケーション層
202 第三層インターフェイス
206 第二層インターフェイス
208 SDU
212 バッファ
214 PDU
218 第一層インターフェイス
220 タイマーデフォルト値設定プログラムコード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて複数のタイマーのデフォルト値を設定する方法であって、
リセットタイマーのデフォルト値を第一値に設定し、
状態報告禁止タイマー、ポーリング禁止タイマー、及びポーリングタイマーのデフォルト値を第二値に設定するステップからなることを特徴とするタイマーのデフォルト値設定方法。
【請求項2】
前記第一値と第二値はいずれもラウンドトリップ時間(RTT)より大きいかそれに等しいことを特徴とする請求項1記載のタイマーのデフォルト値設定方法。
【請求項3】
前記第一値と第二値は同じであることを特徴とする請求項1記載のタイマーのデフォルト値設定方法。
【請求項4】
前記第一値と第二値は200msであることを特徴とする請求項3記載のタイマーのデフォルト値設定方法。
【請求項5】
前記第一値と第二値は100msであることを特徴とする請求項3記載のタイマーのデフォルト値設定方法。
【請求項6】
前記第一値と第二値は互いに異なることを特徴とする請求項1記載のタイマーのデフォルト値設定方法。
【請求項7】
前記第一値は300msであり、第二値は200msであることを特徴とする請求項6記載のタイマーのデフォルト値設定方法。
【請求項8】
前記無線通信システムは第三世代移動通信システムであることを特徴とする請求項1記載のタイマーのデフォルト値設定方法。
【請求項9】
無線通信システムにおいてタイマーのデフォルト値を設定する通信装置であって、
通信装置の機能を実現させる制御回路と、
制御回路の中に設けられ、プログラムコードを実行して制御回路を制御する中央処理装置(CPU)と、
制御回路の中でCPUと結合されるように設けられ、プログラムコードを保存するための保存装置とを含み、そのうちプログラムコードは、
リセットタイマーのデフォルト値を第一値に設定し、
状態報告禁止タイマー、ポーリング禁止タイマー、及びポーリングタイマーのデフォルト値を第二値に設定するステップを含むことを特徴とする通信装置。
【請求項10】
前記第一値と第二値はいずれもラウンドトリップ時間(RTT)より大きいかそれに等しいことを特徴とする請求項9記載の通信装置。
【請求項11】
前記第一値と第二値は同じであることを特徴とする請求項9記載の通信装置。
【請求項12】
前記第一値と第二値は200msであることを特徴とする請求項11記載の通信装置。
【請求項13】
前記第一値と第二値は100msであることを特徴とする請求項11記載の通信装置。
【請求項14】
前記第一値と第二値は互いに異なることを特徴とする請求項9記載の通信装置。
【請求項15】
前記第一値は300msであり、第二値は200msであることを特徴とする請求項14記載の通信装置。
【請求項16】
前記無線通信システムは第三世代移動通信システムであることを特徴とする請求項9記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−300647(P2007−300647A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122518(P2007−122518)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(500029110)華碩電腦股▲ふん▼有限公司 (158)
【Fターム(参考)】