無線通信システム及び無線通信方法
【課題】無線受信機の処理の負荷を軽減することができる無線通信システム及び無線通信方法を提供する。
【解決手段】無線送信機及び無線受信機は基準信号を出力する基準クロックを夫々備え、基準信号が出力されるタイミングは無線送信機及び無線受信機の間で同期される(b及びf)。無線送信機からは基準信号が出力されるタイミングに従って時刻t1 に信号が送信される(d)。無線受信機は任意の起動タイミング(g)に従い時刻t2 より受信を開始するが(h)、基準信号が出力されるタイミングに基づいて信号の送信が開始された時刻t1 を特定することができる。
【解決手段】無線送信機及び無線受信機は基準信号を出力する基準クロックを夫々備え、基準信号が出力されるタイミングは無線送信機及び無線受信機の間で同期される(b及びf)。無線送信機からは基準信号が出力されるタイミングに従って時刻t1 に信号が送信される(d)。無線受信機は任意の起動タイミング(g)に従い時刻t2 より受信を開始するが(h)、基準信号が出力されるタイミングに基づいて信号の送信が開始された時刻t1 を特定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムに関し、特に、無線受信機が無線送信機からの信号を受信したか否かを常時確認することなしに無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することができ、処理の負荷を軽減することができる無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線送信機から所定の信号が送信されたか否かの判断を、特定のコードを含む信号が受信できたか否かを無線受信機で判定することによって行なっている。
【0003】
図7は、従来の技術で無線送信機から送信される特定のコードを含む信号の構成を示す説明図である。図7の横軸は時間の経過を示し、縦軸は信号のレベルを示している。図7の説明図に示すように、従来の技術では無線送信機から送信される信号は、特定のコード(プリアンブルコードと呼ばれる)から開始され、休止期間を置いてヘッダを含み、更に休止期間が置いた後に、送信されるべきデータを表わす信号パターンからなるペイロードを含んで構成される。
【0004】
無線受信機は、図7の説明図に示すような信号の内の最初の特定のコードを受信しているか否かを常時判定し、特定のコードを受信していると判定した場合に無線送信機からの信号を受信していると判断し、更にヘッダを認識できたときはヘッダに含まれる情報を取得し、その後受信できるペイロードからデータを取得する。
【0005】
特許文献1には、無線送信機と無線受信機とで共通の識別コードを記憶しておき、無線送信機から送信された識別コードと無線受信機で記憶している識別コードとが一致した場合は、受信した信号から情報を取得する技術が開示されている。なお特許文献1の技術では、共通の識別コードに順序を対応付けておき、無線送信機が順序に従い循環的に識別コードを読み出して送信し、無線受信機でも順序に従い識別コードを読み出し、受信した識別コードと読み出した識別コードとが一致する場合のみ受け付ける構成が示されている。この場合、識別コードが傍受されたとしても、傍受された識別コードが使用された信号を受信したときは受信機で受け付けないことから安全性が高められることが示されている。特許文献1で開示されている技術では、無線送信機から識別コードの順序を示す計数コードが送信されることにより、無線送信機から送信された信号を無線受信機が受信できずに無線送信機と無線受信機とで識別コードの順序にズレが生じた場合であっても、無線受信機は読み出す識別コードをズレの分調整することができる。
【特許文献1】特開平7−184280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、無線受信機で受信した信号が無線送信機から送信されたものであると認識するためには、アンテナから受信できた信号が特定のコードを含む信号であるか否かを常に判定しなければならない。このためには、アンテナを介して受信している信号を解析する機構を常に起動させておかなければならない。無線受信機の消費電力をでき得る限り低減させる必要がある場合、解析する機構を常に起動させておくことはこれに反する。
【0007】
また、図7に示したように特定のコード等の無線送信機から送信される信号を受信しているか否かの判定のための信号が送信される期間分、信号処理に時間を要する。特許文献1に開示されている技術でも識別コードの他に更に計数コードが付加されて送信機から送信される。このため受信機では、送信機からの信号を受信している場合であっても識別コード及び計数コードに対する解析が必要となり、解析に時間を要する。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、無線受信機と無線送信機とで同期したタイミングを共有する構成により、無線受信機が無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することを可能にし、特定のコードを受信することができたか否かを常時判定することなしに、無線送信機から送信された信号を受信して情報を取得することができ、無線受信機の処理の負荷を軽減させることができる無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、無線送信機と無線受信機とで同期させた基準信号の出力タイミングが等間隔でない間隔を置くように構成することにより、無線送信機及び無線受信機の間の通信の傍受を困難にさせ、安全性を向上させることができる無線通信システム及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る無線通信システムは、無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムにおいて、前記無線送信機及び無線受信機は、間隔を置いて繰り返し基準信号を出力する基準信号出力手段と、夫々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させる同期手段とを備え、前記無線送信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って送信を開始するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る無線通信システムは、前記無線受信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って受信を開始するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る無線通信システムは、前記無線送信機及び無線受信機は夫々、時刻情報を受信する手段を備え、前記同期手段は、受信した時刻情報に基づいて夫々の前記基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させるようにしてあることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る無線通信システムは、前記無線送信機は信号を複数回送信するようにしてあり、前記無線受信機は、自身が備える基準信号出力手段から基準信号が出力された時点、基準信号の出力間隔、及び送信される信号の長さに基づいて、次の送信の開始時点を特定する手段を備えることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る無線通信システムは、前記基準信号出力手段による基準信号の出力間隔は等間隔でないことを特徴とする。
【0015】
第6発明に係る無線通信方法は、無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムにおける無線通信方法において、前記無線送信機及び無線受信機は、間隔を置いて繰り返し基準信号を出力する基準信号出力手段を夫々用い、夫々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させ、前記無線送信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って送信を開始することを特徴とする。
【0016】
第1発明及び第6発明では、無線受信機及び無線送信機には間隔を置いて基準信号を繰り返し出力する基準信号出力手段が夫々備えられ、且つ各々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングが相互に同期される。無線送信機からは、基準信号が出力されるタイミングに従って信号が送信される。これにより無線受信機は、自身が備える基準出力手段から基準信号が出力されたことを検知することにより、無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することが可能となる。
【0017】
第2発明では、無線受信機でも基準信号が出力されるタイミングに従って受信が開始されることにより、無線送信機及び無線受信機で送受信が同時に開始される。
【0018】
第3発明では、無線送信機及び無線受信機が備える基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングが外部から受信される共通の時刻情報に基づいて夫々同期される。これにより、各々の基準信号出力手段により同期されたタイミングで基準信号が出力される。
【0019】
第4発明では、無線送信機からは信号が複数回送信され、無線受信機により、自身が備える基準信号出力手段から基準信号が出力された時点と基準信号が出力される所定のタイミングとに基づいて無線送信機から信号の送信が開始された時点が特定され、信号の長さに基づいて次に無線送信機から信号の送信が開始される時点が特定される。
【0020】
第5発明では、無線送信機及び無線受信機が備える基準信号出力手段から基準信号が出力される間隔は等間隔ではなく、無線送信機と無線受信機との間の送受信は、等間隔では行なわれない。
【発明の効果】
【0021】
本発明による場合、無線受信機は無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することが可能となるので、任意のタイミングで受信を開始した場合でも、送信が開始された時点と信号のフォーマットとに基づき、受信した信号から必要な情報を取得することができる。またこの場合、無線受信機は任意のタイミングで受信を開始することにより、通信の傍受を困難にして安全性を高めることもできる。
【0022】
本発明による場合、無線送信機が送信を開始した時点に無線受信機で受信を開始するタイミングを同期させることができる。無線受信機によって受信を開始した時点が無線送信機から送信が開始された時点であるので、無線受信機は、無線送信機から送信が開始された時点を特定するまでもなく情報を送信される信号のフォーマットに従い、無線受信機は必要な情報を取得することができる。
【0023】
本発明による場合、無線送信機から信号が送信された時点で無線受信機が受信を開始していない場合でも、基準信号が出力される時点及び基準信号が出力される所定のタイミングに基づいて無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することができる。更に信号の長さに基づき、無線受信機は次に無線送信機から送信が開始される時点を特定することができる。したがって、信号に特定のコードが含まれているかを判定することなしに、無線受信機は無線送信機によって送信される信号から必要な情報を取得することができる。
【0024】
本発明による場合はこのように、無線受信機は無線送信機から送信されている信号を受信しているか否かを判定する処理を常時行なうことなしに、受信した信号から必要な情報を取得することができる。これにより、無線受信機の処理負荷を軽減させることができ、無線受信機は任意のタイミングで受信を開始できるので無線受信機の消費電力を低減させることも可能になる。無線受信機は、特定のコードの分信号を解析する必要がなくなるので、受信した信号に対する処理の即時性が高まることも期待される。
【0025】
本発明による場合は更に、基準信号が出力されるタイミングの間隔を等間隔としないようにすることにより、無線送信機及び無線受信機で送受信が開始される時点を外部から特定することが困難になる。これにより、信号の傍受を抑制し、無線通信システムの安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態における本発明の無線通信システムの構成を示すブロック図である。図1中の1は無線送信機であり、無線送信機1の各構成部を制御するマイコン10と、アンテナ11と、アンテナ11を介して送信する信号を発生させる送信部12と、送信指示を受け付ける受付部13とを備えている。図1中の2は無線受信機であり、無線受信機2の各構成部を制御するマイコン20と、電源回路21と、アンテナ22と、アンテナ22を介して受信する信号に含まれる情報を取得する受信部23とを備えている。更に、無線送信機1及び無線受信機2はいずれも、基準信号を所定のタイミングで出力する基準クロック14,24と外部から時刻情報を受信する時刻情報受信部15,25とを備えている。
【0028】
無線送信機1のマイコン10は、MPU(Micro Processing Unit)16と、不揮発性であるEEPROM(Electronically Erasable Programmable Read Only Memory)等のメモリ17と、水晶を使用したクロック回路18とを含み、MPU16はクロック回路18から出力されるクロック信号に従って動作する。
【0029】
無線送信機1のMPU16は、メモリ17から制御プログラムを読み出して実行することにより、各構成部を制御する。MPU16は後述する基準クロック14から基準信号が出力されるタイミングに従って、送信するべき情報を表わした信号を送信部12へ出力する。なお、本実施の形態における無線送信機1のMPU16は、信号を所定のフォーマットによって生成し、且つ受信のミスに対するリカバリーのために複数回同一の信号を出力して送信させる。
【0030】
無線送信機1が備える受付部13は、ユーザが押下することが可能なスイッチを含む。ユーザは、スイッチを押下することにより無線送信機1に信号を送信するように指示することができる。無線送信機1のMPU16は、受付部13を介してユーザによるスイッチの押下を検知した場合、図示しない電池、商用電源等の電力供給装置から送信部12へ電力を供給して信号を送信させる。なお、上述のように基準クロック14から基準信号が出力されるまでは送信部12による信号の送信は待機される。受付部13のスイッチが押下されない間も、マイコン10、基準クロック14及び時刻情報受信部15へは最低限の電力が供給されている。
【0031】
無線送信機1が備える送信部12は、発振回路、増幅回路等を含み、所定の周波数を発生する。送信部12は、上述のMPU16から出力された信号に従って所定の周波数の信号を発生させる。なお、送信部12から出力される信号はマンチェスタ符号により構成され、信号の誤解読を防止するようにしてある。
【0032】
無線受信機2のマイコン20は、無線送信機1のマイコン10同様にMPU26と、メモリ27と、クロック回路28とを含み、MPU26はクロック回路28から出力されるクロック信号に従って動作する。
【0033】
無線受信機2のMPU26も同様に、メモリ27から制御プログラムを読み出して実行することにより、各構成部を制御する。無線受信機2のMPU26は、電源回路21を介して電池、商用電源等の電力供給装置から各構成部への電力を供給を制御する。
【0034】
また無線受信機2のMPU26は、基準クロック24から基準信号が出力される都度、そのカウントをメモリ27に記憶しておき、直近の基準信号が出力された時刻(カウント)を読み出すことができるように構成してある。なお、基準信号が出力された直近の時刻のみならず、過去複数回分の時刻を保持しておく構成でもよい。
【0035】
無線受信機2が備える受信部23は、増幅回路、フィルタ回路、復調回路等を含み、無線送信機1から送信される所定の周波数の信号を受信し、復調回路により信号から情報を取得してMPU26へ出力する。
【0036】
無線受信機2のMPU26は所定の起動タイミングに従って受信部23へ電力を供給し、受信部23により信号を受信する。また、この場合受信部23へ一定時間電力を供給し、受信部23により受信され復調された信号が所定の信号レベル以上であるか否か、矩形波を示しているか否か等の条件により、それ以降も受信部23への電力の供給を継続するか否か、即ち受信部23による信号の受信を継続するか否かを判断する。なお、本実施の形態において無線受信機2が受信部23へ電力を供給する起動タイミングは、クロック信号及び基準信号のタイミングとは独立した任意のタイミングである。勿論、無線受信機2では基準クロック24からの基準信号の出力の有無に関わらず、マイコン20、基準クロック24及び時刻情報受信部25へは最低限の電力が供給されている。
【0037】
なお、無線受信機2における上述の起動タイミングは、基準クロック24から基準信号が出力されたタイミングに従ってもよい。この場合、無線受信機2のMPU26は、基準クロック24からの信号レベルが所定値を超えたことを検知したことにより受信部23への電力の供給を開始する。また、基準クロック24からの基準信号が入力される都度、カウントするレジスタを用い、レジスタがカウントする数値が偶数となった場合に受信部23へ電力を供給するように構成し、基準信号が出力されるタイミングの内の2回に1回を起動タイミングとしてもよい。また、レジスタがカウントする数値が所定値となった場合に受信部23へ電力を供給するという条件に対し、所定値を乱数としてもよい。これにより、起動タイミングを基準信号が出力されるタイミングに必ず従うようにしつつ、且つ等間隔とならないようにすることができる。
【0038】
次に、無線送信機1及び無線受信機2が共通して備える基準クロック14,24及び時刻情報受信部15,25について説明する。以下の説明では、説明を簡潔にするため、無線送信機1における基準クロック14及び時刻情報受信部15について説明し、無線受信機2については対応する符号を括弧書きにより示して説明を省略する。
【0039】
無線送信機1(無線受信機2)が備える基準クロック14(24)は原則として、クロック回路18(28)から出力されるクロック信号に従ってカウントし、基準信号を出力する。しかしこのときに基準クロック14(24)が基準信号を出力するタイミングはMPU16(26)からの指示に従ってシフトされる。MPU16(26)は、後述するように時刻情報受信部15(25)を介して受信して解読した時刻情報に基づき、基準クロック14(24)が基準信号を出力するタイミングをシフトさせるシフト幅を決定し、基準クロック14(24)へ入力する。基準クロック14(24)は、MPU16(26)から入力されたシフト幅に従い、入力されるクロック信号のタイミングをシフトし、標準信号として出力する。
【0040】
本実施の形態において基準クロック14(24)はクロック信号が入力される都度、カウント及び基準信号の出力を実行する構成とする。なお基準クロック14(24)は、クロック回路18(28)からクロック信号が入力された場合であっても、例えば2回に1回、3回に1回の割合でカウント及び基準信号の出力を実行する構成でもよい。さらにカウントする割合は時間の経過と共にランダムとしてもよい。これにより、基準クロック14(24)からは等間隔でない間隔で基準信号が出力される。
【0041】
無線送信機1(無線受信機2)が備える時刻情報受信部15(25)は、標準電波(電波時計)を受信する機能を有し、標準電波を受信することにより得られる信号をMPU16(26)へ送信する。MPU16(26)は、時刻情報受信部15(25)から送信された信号に基づいて時刻情報を解読することが可能である。MPU16(26)は、解読した時刻情報に基づいてクロック回路18(28)から出力されるクロック信号に基づく時刻(カウント)のズレを算出し、基準クロック14(24)におけるカウント及び基準信号の出力のタイミングのシフトが可能である。なお、時刻情報受信部15(25)はGPS(Global Positioning System)衛星から時刻情報を受信する機能を有している構成でもよい。
【0042】
このように構成される無線送信機1及び無線受信機2において、まず、無線送信機1及び無線受信機2のMPU16,26が夫々時刻情報受信部15,25を介して取得した時刻情報に基づいて基準クロック14,24を同期させる処理について説明する。なお、無線送信機1及び無線受信機2のMPU16,26は夫々、最初に動作する時点で以下に示す処理を実行し、その後は所定のタイミング、例えば2日に一回等の一定間隔で以下に示す処理を実行する。
【0043】
図2は、本実施の形態における無線送信機1のMPU16が時刻情報に基づいて基準クロック14が基準信号を出力するタイミングを同期させる処理手順を示すフローチャートである。なお、無線受信機2のMPU26が時刻情報に基づいて基準クロック24が基準信号を出力するタイミングを同期させる処理についても同様であるので、無線受信機2については対応する符号を括弧書きにより示して説明を省略する。
【0044】
無線送信機1(無線受信機2)のMPU16(26)は、時刻情報受信部15(25)により時刻情報を受信する(ステップS11)。無線送信機1(無線受信機2)のMPU16(26)は、受信した時刻情報に基づいてクロック回路18(28)からクロック信号が出力されるタイミングから基準信号を出力させるタイミングまでのシフト幅を算出する(ステップS12)。
【0045】
無線送信機1(無線受信機2)のMPU16(26)はステップS12において算出したシフト幅を夫々基準クロック14(24)へ入力することにより、基準信号を出力させるタイミングを無線送信機1及び無線受信機2の間で同期させ(ステップS13)、処理を終了する。
【0046】
次に、各々が備える基準クロック14,24が同期された無線送信機1及び無線受信機2において、無線送信機1から信号が送信される処理、及び無線受信機2により信号が受信される処理を夫々フローチャートを用い以下に説明する。
【0047】
図3は、本実施の形態における無線送信機1のMPU16の制御により信号が送信される処理手順を示すフローチャートである。
【0048】
無線送信機1のMPU16は、受付部13によりスイッチの押下を検知したか否かを判断する(ステップS21)。MPU16は、スイッチの押下を検知していないと判断した場合(S21:NO)、処理をステップS21へ戻してスイッチの押下を検知したと判断するまで待機する。
【0049】
無線送信機1のMPU16は、スイッチの押下を検知したと判断した場合(S21:YES)、送信部12へ電力を供給し(ステップS22)、送信すべき情報に基づいて信号を生成し(ステップS23)、基準クロック14から基準信号が出力されたか否かを判断する(ステップS24)。なお、ステップS23において無線送信機1が生成する信号は複数回分の信号である。
【0050】
無線送信機1のMPU16は、基準クロック14から基準信号が出力されていないと判断した場合(S24:NO)、処理をステップS24へ戻して基準クロック14から基準信号が出力されたと判断するまで待機する。
【0051】
無線送信機1のMPU16は、基準クロック14から基準信号が出力されたと判断した場合(S24:YES)、ステップS23で生成した信号を送信部12へ出力し(ステップS25)、アンテナ11を介して信号の送信を開始させる(ステップS26)。生成した信号の送信部12への出力が終了した場合は信号の送信を終了し(ステップS27)、送信部12への電力の供給を停止し(ステップS28)、処理を終了する。
【0052】
図4は、本実施の形態における無線受信機2のMPU26の制御により信号が受信される処理手順を示すフローチャートである。
【0053】
無線受信機2のMPU26は、起動タイミングが到来したか否かを判断する(ステップS301)。無線受信機2のMPU26は、起動タイミングが到来していないと判断した場合(S301:NO)、処理をステップS301へ戻して起動タイミングが到来したと判断するまで待機する。
【0054】
無線受信機2のMPU26は、起動タイミングが到来したと判断した場合(S301:YES)、電源回路21を介して電源供給装置から受信部23へ電力を供給して起動させ(ステップS302)、受信部23により信号の受信を開始する(ステップS303)。
【0055】
次に無線受信機2のMPU26は、受信部23による信号の受信を継続するか否かを判断する(ステップS304)。無線受信機2のMPU26は、受信部23による受信を継続しないと判断した場合(S304:NO)、信号の受信を終了し(ステップS305)、受信部23への電力の供給を停止し(ステップS306)、処理をステップS301へ戻して次の起動タイミングが到来したと判断するまで待機する。
【0056】
無線受信機2のMPU26は、ステップS304において受信部23による受信を継続すると判断した場合(S304:YES)、基準信号が出力された直近の時刻及び現在の時刻をメモリ27から読み出し(ステップS307)、受信部23により受信している信号の送信が開始された時点を特定する(ステップS308)。無線受信機2のMPU26は、特定した時点から現在の時点までの時間経過を算出し(ステップS309)、複数回送信される信号の内の次の信号の受信を開始できる時点を特定する(ステップS310)。
【0057】
無線受信機2のMPU26は、ステップS310において特定した時点以降に受信部23により受信されて復調された信号から情報を取得し(ステップS311)、信号の受信を終了し(S305)、受信部23への電力の供給を停止し(S306)、処理をステップS301へ戻して次の起動タイミングが到来するまで待機する。
【0058】
無線受信機2のMPU26は、無線受信機2全体への電力の供給がオフになるまで上述のステップS301からステップS311への処理を繰り返す。
【0059】
図2乃至図4のフローチャートに示した処理は、MPU16,26がメモリ17,27から制御プログラムを読み出してソフトウェア的に実行する構成としてもよいが、マイコン10,20(MPU16,26)による処理の負荷の軽減を鑑みれば、無線送信機1及び無線受信機2の各構成部の信号の入出力を回路によって設計することにより、上述のように動作するように構成してもよい。
【0060】
無線送信機1及び無線受信機2のMPU16,26が図2及び図4のフローチャートに示した処理を実行する際に、各構成部から出力される信号及びそのタイミングについて図を用いて以下に説明する。
【0061】
図5は、本実施の形態における無線送信機1及び無線受信機2の各構成部が信号を出力するタイミング及び起動するタイミングの例を示すタイムチャートである。各タイムチャートにおいて横軸は時間の経過を示し、縦軸は信号レベルを示している。
【0062】
図5(a)から図5(d)までは無線送信機1の各構成部から信号が出力及び送信されるタイミングを示すタイムチャートであり、図5(e)から図5(h)までは無線受信機2の各構成部から信号が出力されるタイミング及び受信部23が起動されるタイミングを示すタイムチャートである。
【0063】
図5(a)は、無線送信機1のクロック回路18から出力されるクロック信号のタイミングを示している。図5(b)は、無線送信機1の基準クロック14から出力される基準信号のタイミングを示している。図5(c)は、無線送信機1における受付部13がスイッチの押下を検知したタイミングを示している。図5(d)は、無線送信機1から信号の送信が開始されるタイミングを示している。
【0064】
図5(e)は、無線受信機2のクロック回路28から出力されるクロック信号のタイミングを示している。図5(f)は、無線受信機2の基準クロック24から出力される基準信号のタイミングを示している。図5(g)は、無線受信機2の受信部23が起動される起動タイミングを示している。図5(h)は、無線受信機2の受信部23により復調されてMPU26へ出力される信号の波形を示している。
【0065】
図5(a)及び図5(e)に示すように、無線送信機1及び無線受信機2のクロック回路28からクロック信号が出力されるタイミングは夫々異なる。しかしながら、無線送信機1及び無線受信機2の各々のMPU16,26が時刻情報受信部15,25を介して受信した時刻情報に基づいてそのタイミングを同期させるので、図5(b)及び図5(f)に示すように、各々の基準クロック14,24から基準信号が出力されるタイミングは同期される。
【0066】
無線送信機1のMPU16は、図5(c)に示すようなタイミングで受付部13によりスイッチの押下を検知した場合、次に基準信号が出力されたタイミングに従い、図5(d)に示すように時刻t1 から送信部12により信号の送信を開始する。なお、図5(d)のタイムチャートに示している例では、無線送信機1は信号を4回連続送信することにより無線受信機2で信号を受信する確実性を高めている。なお、黒矩形により各信号の先頭部分を示している。
【0067】
これに対し無線受信機2のMPU26は、図5(g)に示すように、基準信号の出力タイミングとは独立した任意の起動タイミングで受信部23へ電力を供給し、信号の受信を試みる。図5(h)に示すように無線受信機2のMPU26は、受信部23へ電力が供給され起動されている間に受信した信号が矩形波を示している等の条件により受信を継続するか否かを判断し、条件を満たしていない場合は受信を停止し、条件を満たしている場合は受信を継続する。
【0068】
図5(h)に示すように、無線受信機2のMPU26は起動タイミングに従って時刻t2 から受信を開始し、矩形波を示していることから受信を継続し、無線送信機1から送信された信号を受信する。無線受信機2のMPU26は、無線送信機1から送信された信号を途中から受信するが、自身が備える基準クロック24から基準信号が出力された直近の時刻t1 に相当するカウントをメモリ27に記憶しているので、現在受信している信号が無線送信機1から送信が開始された時刻t1 を特定することができ、次に無線送信機1から2回目に送信されるタイミングt3 を特定することができ、信号から正しく情報を取得することができる。
【0069】
なお、図5(g)には、無線送信機1及び無線受信機2の基準クロック14,24から基準信号が出力されるタイミング、並びに無線受信機2の受信部23の起動タイミングは一定間隔で到来するように示した。しかしながら本発明はこれに限らず、基準信号が出力されるタイミング及び起動タイミングは等間隔でなくランダムな間隔を有していてもよい。
【0070】
図6は、本実施の形態における無線送信機1及び無線受信機2の各構成部が信号を出力するタイミング及び起動するタイミングの例を示すタイムチャートである。これは基準クロック14,24から基準信号を出力するタイミングをクロック信号の入力に対して一定としない構成とした場合、及び無線受信機2の受信部23の起動タイミングを基準クロック24から基準信号が出力されるタイミングに従わせた場合の各信号のタイミングを示すタイムチャートである。図6(a)から(h)までの各タイムチャートの内容は夫々、図5(a)から(h)までの各タイムチャートと同様であるので、詳細な説明を省略する。図6(b)、図6(f)、図6(g)及び図6(h)に示すタイムチャートの波形が異なるので、これについて説明する。
【0071】
図6(b)及び図6(f)のタイムチャートに示す例では、無線送信機1及び無線受信機2の基準クロック14,24は、クロック回路18,28から入力されるクロック信号に対して、2、3、4回に1回の割合でカウントし、基準信号を出力するようにしてある。なお破線で示す波形は、図6(a)及び(e)に示したクロック信号をシフトしたのみの波形である。クロック信号に対してカウント及び基準信号を出力する割合はランダムにしてあるが、無線送信機1及び無線受信機2の間では同期するように構成されている。
【0072】
また、図6(g)のタイムチャートに示すように、無線受信機2の受信部23に電力が供給される起動タイミングは基準クロック24から基準信号が出力されるタイミングに一致するようにしてある。
【0073】
図6(b)、図6(f)及び図6(h)のタイムチャートに示すように無線送信機1及び無線受信機2の基準信号の出力タイミング及び起動タイミングが同期されている場合に、無線送信機1のMPU16が図6(c)に示すようなタイミングでスイッチの押下を検知したとき、無線送信機1のMPU16は、次に基準信号が出力される時刻t4 から送信部12により信号の送信を開始する。
【0074】
これに対し、無線受信機2のMPU26は、図6(f)、図6(g)及び図6(h)に示すように、基準信号が出力されるタイミングと同一の起動タイミングに従って時刻t4 から受信を開始する。無線受信機2のMPU26は、受信部23により受信している信号が矩形波を示していることにより受信を継続する。
【0075】
図6(h)に示すように、無線受信機2のMPU26は起動タイミングに従って時刻t4 から受信を開始している。つまり、基準クロック24から基準信号が出力されるタイミング及び起動タイミングが同期されていることにより、無線受信機2のMPU26は、無線送信機1から送信が開始された時刻t4 から同時に受信を開始している。したがって、無線受信機2のMPU26は先頭から信号を受信することができ、情報を取得することができる。
【0076】
このように、無線送信機1及び無線受信機2で同期した基準クロック14,24を共有することにより、無線受信機2は無線送信機1から信号の送信が開始された時点を特定することができ、その後いつから信号から情報を取得すれば正しく信号を受信することができるかを認識することができる。これにより、無線受信機2は常時無線送信機1からの信号を受信しているか否かを判定する処理をする必要がない。何故なら、任意のタイミングで受信を開始しても、基準クロック24から基準信号が出力されるタイミングに基づいて受信している信号の送信開始時点を特定することができるからである。無線受信機2が起動するタイミングを任意のタイミングとすることにより、外部からの通信の傍受を抑制することができる効果も期待することができる。
【0077】
また、無線受信機2が受信するタイミングを基準信号の出力タイミングに従わせることによって、無線送信機1が信号を開始すると共に同時に無線受信機2で信号の受信を開始することができるので、信号から正しく情報を取得することができる。また、この場合、無線受信機2のMPU26は、無線送信機1からの信号を受信しているか否かの判定を行なわず開始から受信している。したがって、無線送信機1からの信号を受信しているか否かを判定するための信号解析に時間を要しない。これにより、無線送信機1からの信号を受信してからの処理の即時性を高めることができる。
【0078】
なお、本実施の形態ではクロック回路18,28から出力されるクロック信号に基づいて基準信号を生成し、MPU16,26が時刻情報受信部15,25から受信した時刻情報に基づいてクロック信号に対するシフト幅を算出し、クロック信号をシフトさせて基準信号として出力させる構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、クロック回路18,28自体を基準信号出力手段とし、MPU16,26を介してクロック回路18,28を同時にリセットさせ、クロック回路18,28におけるカウント及び出力のタイミングを無線送信機1及び無線受信機2の間で同期するように修正することが可能な構成でもよい。この場合、無線送信機1及び無線受信機2で夫々時刻情報受信部15,25を備えず、MPU16,26が所定の信号を相互に送受信したことをトリガにクロック回路18,28をリセットするようにしてもよいし、外部からリセットさせることが可能な構成としてもよい。勿論、無線送信機1及び無線受信機2が夫々時刻情報受信部15,25から解読した時刻情報に基づいてクロック回路18,28をリセットする構成でもよい。
【0079】
なお、本発明の無線通信システムを車輌に搭載されるキーレスエントリーシステム(passive keyless entry system)のキー(無線送信機1)及びドアロック制御機構(無線受信機2)に適用することにより、キーレスエントリーシステムにおける無線受信機2のマイコン20の処理負荷を軽減させることができると共に、安全性を高めることも可能になる。車輌に搭載されるキーレスエントリーシステムでは、バッテリー消費の観点からも無線受信機2が備えられる車載装置で暗電流を抑えることが課題となるので、本発明の無線通信システムを適用することによりこの課題を解決することが可能になる点、優れた効果を奏する。
【0080】
また、車輌に搭載されるキーレスエントリーシステムで、キーにGPS受信機能又は標準電波受信機能が備えられることが標準的になった場合、本実施の形態における時刻情報受信部15,25の用途にGPS受信機能又は標準電波受信機能を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施の形態における本発明の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態における無線送信機及び無線受信機のMPUが時刻情報に基づいて基準クロックが基準信号を出力するタイミングを同期させる処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本実施の形態における無線送信機のMPUの制御により信号が送信される処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態における無線受信機のMPUの制御により信号が受信される処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態における無線送信機及び無線受信機の各構成部が信号を出力するタイミング及び起動するタイミングの例を示すタイムチャートである。
【図6】本実施の形態における無線送信機及び無線受信機の各構成部が信号を出力するタイミング及び起動するタイミングの例を示すタイムチャートである。
【図7】従来の技術で無線送信機から送信される特定のコードを含む信号の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 無線送信機
2 無線受信機
10,20 マイコン
12 送信部
23 受信部
14,24 基準クロック
15,25 時刻情報受信部
16,26 MPU
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムに関し、特に、無線受信機が無線送信機からの信号を受信したか否かを常時確認することなしに無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することができ、処理の負荷を軽減することができる無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線送信機から所定の信号が送信されたか否かの判断を、特定のコードを含む信号が受信できたか否かを無線受信機で判定することによって行なっている。
【0003】
図7は、従来の技術で無線送信機から送信される特定のコードを含む信号の構成を示す説明図である。図7の横軸は時間の経過を示し、縦軸は信号のレベルを示している。図7の説明図に示すように、従来の技術では無線送信機から送信される信号は、特定のコード(プリアンブルコードと呼ばれる)から開始され、休止期間を置いてヘッダを含み、更に休止期間が置いた後に、送信されるべきデータを表わす信号パターンからなるペイロードを含んで構成される。
【0004】
無線受信機は、図7の説明図に示すような信号の内の最初の特定のコードを受信しているか否かを常時判定し、特定のコードを受信していると判定した場合に無線送信機からの信号を受信していると判断し、更にヘッダを認識できたときはヘッダに含まれる情報を取得し、その後受信できるペイロードからデータを取得する。
【0005】
特許文献1には、無線送信機と無線受信機とで共通の識別コードを記憶しておき、無線送信機から送信された識別コードと無線受信機で記憶している識別コードとが一致した場合は、受信した信号から情報を取得する技術が開示されている。なお特許文献1の技術では、共通の識別コードに順序を対応付けておき、無線送信機が順序に従い循環的に識別コードを読み出して送信し、無線受信機でも順序に従い識別コードを読み出し、受信した識別コードと読み出した識別コードとが一致する場合のみ受け付ける構成が示されている。この場合、識別コードが傍受されたとしても、傍受された識別コードが使用された信号を受信したときは受信機で受け付けないことから安全性が高められることが示されている。特許文献1で開示されている技術では、無線送信機から識別コードの順序を示す計数コードが送信されることにより、無線送信機から送信された信号を無線受信機が受信できずに無線送信機と無線受信機とで識別コードの順序にズレが生じた場合であっても、無線受信機は読み出す識別コードをズレの分調整することができる。
【特許文献1】特開平7−184280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、無線受信機で受信した信号が無線送信機から送信されたものであると認識するためには、アンテナから受信できた信号が特定のコードを含む信号であるか否かを常に判定しなければならない。このためには、アンテナを介して受信している信号を解析する機構を常に起動させておかなければならない。無線受信機の消費電力をでき得る限り低減させる必要がある場合、解析する機構を常に起動させておくことはこれに反する。
【0007】
また、図7に示したように特定のコード等の無線送信機から送信される信号を受信しているか否かの判定のための信号が送信される期間分、信号処理に時間を要する。特許文献1に開示されている技術でも識別コードの他に更に計数コードが付加されて送信機から送信される。このため受信機では、送信機からの信号を受信している場合であっても識別コード及び計数コードに対する解析が必要となり、解析に時間を要する。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、無線受信機と無線送信機とで同期したタイミングを共有する構成により、無線受信機が無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することを可能にし、特定のコードを受信することができたか否かを常時判定することなしに、無線送信機から送信された信号を受信して情報を取得することができ、無線受信機の処理の負荷を軽減させることができる無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、無線送信機と無線受信機とで同期させた基準信号の出力タイミングが等間隔でない間隔を置くように構成することにより、無線送信機及び無線受信機の間の通信の傍受を困難にさせ、安全性を向上させることができる無線通信システム及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る無線通信システムは、無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムにおいて、前記無線送信機及び無線受信機は、間隔を置いて繰り返し基準信号を出力する基準信号出力手段と、夫々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させる同期手段とを備え、前記無線送信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って送信を開始するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る無線通信システムは、前記無線受信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って受信を開始するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る無線通信システムは、前記無線送信機及び無線受信機は夫々、時刻情報を受信する手段を備え、前記同期手段は、受信した時刻情報に基づいて夫々の前記基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させるようにしてあることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る無線通信システムは、前記無線送信機は信号を複数回送信するようにしてあり、前記無線受信機は、自身が備える基準信号出力手段から基準信号が出力された時点、基準信号の出力間隔、及び送信される信号の長さに基づいて、次の送信の開始時点を特定する手段を備えることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る無線通信システムは、前記基準信号出力手段による基準信号の出力間隔は等間隔でないことを特徴とする。
【0015】
第6発明に係る無線通信方法は、無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムにおける無線通信方法において、前記無線送信機及び無線受信機は、間隔を置いて繰り返し基準信号を出力する基準信号出力手段を夫々用い、夫々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させ、前記無線送信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って送信を開始することを特徴とする。
【0016】
第1発明及び第6発明では、無線受信機及び無線送信機には間隔を置いて基準信号を繰り返し出力する基準信号出力手段が夫々備えられ、且つ各々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングが相互に同期される。無線送信機からは、基準信号が出力されるタイミングに従って信号が送信される。これにより無線受信機は、自身が備える基準出力手段から基準信号が出力されたことを検知することにより、無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することが可能となる。
【0017】
第2発明では、無線受信機でも基準信号が出力されるタイミングに従って受信が開始されることにより、無線送信機及び無線受信機で送受信が同時に開始される。
【0018】
第3発明では、無線送信機及び無線受信機が備える基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングが外部から受信される共通の時刻情報に基づいて夫々同期される。これにより、各々の基準信号出力手段により同期されたタイミングで基準信号が出力される。
【0019】
第4発明では、無線送信機からは信号が複数回送信され、無線受信機により、自身が備える基準信号出力手段から基準信号が出力された時点と基準信号が出力される所定のタイミングとに基づいて無線送信機から信号の送信が開始された時点が特定され、信号の長さに基づいて次に無線送信機から信号の送信が開始される時点が特定される。
【0020】
第5発明では、無線送信機及び無線受信機が備える基準信号出力手段から基準信号が出力される間隔は等間隔ではなく、無線送信機と無線受信機との間の送受信は、等間隔では行なわれない。
【発明の効果】
【0021】
本発明による場合、無線受信機は無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することが可能となるので、任意のタイミングで受信を開始した場合でも、送信が開始された時点と信号のフォーマットとに基づき、受信した信号から必要な情報を取得することができる。またこの場合、無線受信機は任意のタイミングで受信を開始することにより、通信の傍受を困難にして安全性を高めることもできる。
【0022】
本発明による場合、無線送信機が送信を開始した時点に無線受信機で受信を開始するタイミングを同期させることができる。無線受信機によって受信を開始した時点が無線送信機から送信が開始された時点であるので、無線受信機は、無線送信機から送信が開始された時点を特定するまでもなく情報を送信される信号のフォーマットに従い、無線受信機は必要な情報を取得することができる。
【0023】
本発明による場合、無線送信機から信号が送信された時点で無線受信機が受信を開始していない場合でも、基準信号が出力される時点及び基準信号が出力される所定のタイミングに基づいて無線送信機から信号の送信が開始された時点を特定することができる。更に信号の長さに基づき、無線受信機は次に無線送信機から送信が開始される時点を特定することができる。したがって、信号に特定のコードが含まれているかを判定することなしに、無線受信機は無線送信機によって送信される信号から必要な情報を取得することができる。
【0024】
本発明による場合はこのように、無線受信機は無線送信機から送信されている信号を受信しているか否かを判定する処理を常時行なうことなしに、受信した信号から必要な情報を取得することができる。これにより、無線受信機の処理負荷を軽減させることができ、無線受信機は任意のタイミングで受信を開始できるので無線受信機の消費電力を低減させることも可能になる。無線受信機は、特定のコードの分信号を解析する必要がなくなるので、受信した信号に対する処理の即時性が高まることも期待される。
【0025】
本発明による場合は更に、基準信号が出力されるタイミングの間隔を等間隔としないようにすることにより、無線送信機及び無線受信機で送受信が開始される時点を外部から特定することが困難になる。これにより、信号の傍受を抑制し、無線通信システムの安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態における本発明の無線通信システムの構成を示すブロック図である。図1中の1は無線送信機であり、無線送信機1の各構成部を制御するマイコン10と、アンテナ11と、アンテナ11を介して送信する信号を発生させる送信部12と、送信指示を受け付ける受付部13とを備えている。図1中の2は無線受信機であり、無線受信機2の各構成部を制御するマイコン20と、電源回路21と、アンテナ22と、アンテナ22を介して受信する信号に含まれる情報を取得する受信部23とを備えている。更に、無線送信機1及び無線受信機2はいずれも、基準信号を所定のタイミングで出力する基準クロック14,24と外部から時刻情報を受信する時刻情報受信部15,25とを備えている。
【0028】
無線送信機1のマイコン10は、MPU(Micro Processing Unit)16と、不揮発性であるEEPROM(Electronically Erasable Programmable Read Only Memory)等のメモリ17と、水晶を使用したクロック回路18とを含み、MPU16はクロック回路18から出力されるクロック信号に従って動作する。
【0029】
無線送信機1のMPU16は、メモリ17から制御プログラムを読み出して実行することにより、各構成部を制御する。MPU16は後述する基準クロック14から基準信号が出力されるタイミングに従って、送信するべき情報を表わした信号を送信部12へ出力する。なお、本実施の形態における無線送信機1のMPU16は、信号を所定のフォーマットによって生成し、且つ受信のミスに対するリカバリーのために複数回同一の信号を出力して送信させる。
【0030】
無線送信機1が備える受付部13は、ユーザが押下することが可能なスイッチを含む。ユーザは、スイッチを押下することにより無線送信機1に信号を送信するように指示することができる。無線送信機1のMPU16は、受付部13を介してユーザによるスイッチの押下を検知した場合、図示しない電池、商用電源等の電力供給装置から送信部12へ電力を供給して信号を送信させる。なお、上述のように基準クロック14から基準信号が出力されるまでは送信部12による信号の送信は待機される。受付部13のスイッチが押下されない間も、マイコン10、基準クロック14及び時刻情報受信部15へは最低限の電力が供給されている。
【0031】
無線送信機1が備える送信部12は、発振回路、増幅回路等を含み、所定の周波数を発生する。送信部12は、上述のMPU16から出力された信号に従って所定の周波数の信号を発生させる。なお、送信部12から出力される信号はマンチェスタ符号により構成され、信号の誤解読を防止するようにしてある。
【0032】
無線受信機2のマイコン20は、無線送信機1のマイコン10同様にMPU26と、メモリ27と、クロック回路28とを含み、MPU26はクロック回路28から出力されるクロック信号に従って動作する。
【0033】
無線受信機2のMPU26も同様に、メモリ27から制御プログラムを読み出して実行することにより、各構成部を制御する。無線受信機2のMPU26は、電源回路21を介して電池、商用電源等の電力供給装置から各構成部への電力を供給を制御する。
【0034】
また無線受信機2のMPU26は、基準クロック24から基準信号が出力される都度、そのカウントをメモリ27に記憶しておき、直近の基準信号が出力された時刻(カウント)を読み出すことができるように構成してある。なお、基準信号が出力された直近の時刻のみならず、過去複数回分の時刻を保持しておく構成でもよい。
【0035】
無線受信機2が備える受信部23は、増幅回路、フィルタ回路、復調回路等を含み、無線送信機1から送信される所定の周波数の信号を受信し、復調回路により信号から情報を取得してMPU26へ出力する。
【0036】
無線受信機2のMPU26は所定の起動タイミングに従って受信部23へ電力を供給し、受信部23により信号を受信する。また、この場合受信部23へ一定時間電力を供給し、受信部23により受信され復調された信号が所定の信号レベル以上であるか否か、矩形波を示しているか否か等の条件により、それ以降も受信部23への電力の供給を継続するか否か、即ち受信部23による信号の受信を継続するか否かを判断する。なお、本実施の形態において無線受信機2が受信部23へ電力を供給する起動タイミングは、クロック信号及び基準信号のタイミングとは独立した任意のタイミングである。勿論、無線受信機2では基準クロック24からの基準信号の出力の有無に関わらず、マイコン20、基準クロック24及び時刻情報受信部25へは最低限の電力が供給されている。
【0037】
なお、無線受信機2における上述の起動タイミングは、基準クロック24から基準信号が出力されたタイミングに従ってもよい。この場合、無線受信機2のMPU26は、基準クロック24からの信号レベルが所定値を超えたことを検知したことにより受信部23への電力の供給を開始する。また、基準クロック24からの基準信号が入力される都度、カウントするレジスタを用い、レジスタがカウントする数値が偶数となった場合に受信部23へ電力を供給するように構成し、基準信号が出力されるタイミングの内の2回に1回を起動タイミングとしてもよい。また、レジスタがカウントする数値が所定値となった場合に受信部23へ電力を供給するという条件に対し、所定値を乱数としてもよい。これにより、起動タイミングを基準信号が出力されるタイミングに必ず従うようにしつつ、且つ等間隔とならないようにすることができる。
【0038】
次に、無線送信機1及び無線受信機2が共通して備える基準クロック14,24及び時刻情報受信部15,25について説明する。以下の説明では、説明を簡潔にするため、無線送信機1における基準クロック14及び時刻情報受信部15について説明し、無線受信機2については対応する符号を括弧書きにより示して説明を省略する。
【0039】
無線送信機1(無線受信機2)が備える基準クロック14(24)は原則として、クロック回路18(28)から出力されるクロック信号に従ってカウントし、基準信号を出力する。しかしこのときに基準クロック14(24)が基準信号を出力するタイミングはMPU16(26)からの指示に従ってシフトされる。MPU16(26)は、後述するように時刻情報受信部15(25)を介して受信して解読した時刻情報に基づき、基準クロック14(24)が基準信号を出力するタイミングをシフトさせるシフト幅を決定し、基準クロック14(24)へ入力する。基準クロック14(24)は、MPU16(26)から入力されたシフト幅に従い、入力されるクロック信号のタイミングをシフトし、標準信号として出力する。
【0040】
本実施の形態において基準クロック14(24)はクロック信号が入力される都度、カウント及び基準信号の出力を実行する構成とする。なお基準クロック14(24)は、クロック回路18(28)からクロック信号が入力された場合であっても、例えば2回に1回、3回に1回の割合でカウント及び基準信号の出力を実行する構成でもよい。さらにカウントする割合は時間の経過と共にランダムとしてもよい。これにより、基準クロック14(24)からは等間隔でない間隔で基準信号が出力される。
【0041】
無線送信機1(無線受信機2)が備える時刻情報受信部15(25)は、標準電波(電波時計)を受信する機能を有し、標準電波を受信することにより得られる信号をMPU16(26)へ送信する。MPU16(26)は、時刻情報受信部15(25)から送信された信号に基づいて時刻情報を解読することが可能である。MPU16(26)は、解読した時刻情報に基づいてクロック回路18(28)から出力されるクロック信号に基づく時刻(カウント)のズレを算出し、基準クロック14(24)におけるカウント及び基準信号の出力のタイミングのシフトが可能である。なお、時刻情報受信部15(25)はGPS(Global Positioning System)衛星から時刻情報を受信する機能を有している構成でもよい。
【0042】
このように構成される無線送信機1及び無線受信機2において、まず、無線送信機1及び無線受信機2のMPU16,26が夫々時刻情報受信部15,25を介して取得した時刻情報に基づいて基準クロック14,24を同期させる処理について説明する。なお、無線送信機1及び無線受信機2のMPU16,26は夫々、最初に動作する時点で以下に示す処理を実行し、その後は所定のタイミング、例えば2日に一回等の一定間隔で以下に示す処理を実行する。
【0043】
図2は、本実施の形態における無線送信機1のMPU16が時刻情報に基づいて基準クロック14が基準信号を出力するタイミングを同期させる処理手順を示すフローチャートである。なお、無線受信機2のMPU26が時刻情報に基づいて基準クロック24が基準信号を出力するタイミングを同期させる処理についても同様であるので、無線受信機2については対応する符号を括弧書きにより示して説明を省略する。
【0044】
無線送信機1(無線受信機2)のMPU16(26)は、時刻情報受信部15(25)により時刻情報を受信する(ステップS11)。無線送信機1(無線受信機2)のMPU16(26)は、受信した時刻情報に基づいてクロック回路18(28)からクロック信号が出力されるタイミングから基準信号を出力させるタイミングまでのシフト幅を算出する(ステップS12)。
【0045】
無線送信機1(無線受信機2)のMPU16(26)はステップS12において算出したシフト幅を夫々基準クロック14(24)へ入力することにより、基準信号を出力させるタイミングを無線送信機1及び無線受信機2の間で同期させ(ステップS13)、処理を終了する。
【0046】
次に、各々が備える基準クロック14,24が同期された無線送信機1及び無線受信機2において、無線送信機1から信号が送信される処理、及び無線受信機2により信号が受信される処理を夫々フローチャートを用い以下に説明する。
【0047】
図3は、本実施の形態における無線送信機1のMPU16の制御により信号が送信される処理手順を示すフローチャートである。
【0048】
無線送信機1のMPU16は、受付部13によりスイッチの押下を検知したか否かを判断する(ステップS21)。MPU16は、スイッチの押下を検知していないと判断した場合(S21:NO)、処理をステップS21へ戻してスイッチの押下を検知したと判断するまで待機する。
【0049】
無線送信機1のMPU16は、スイッチの押下を検知したと判断した場合(S21:YES)、送信部12へ電力を供給し(ステップS22)、送信すべき情報に基づいて信号を生成し(ステップS23)、基準クロック14から基準信号が出力されたか否かを判断する(ステップS24)。なお、ステップS23において無線送信機1が生成する信号は複数回分の信号である。
【0050】
無線送信機1のMPU16は、基準クロック14から基準信号が出力されていないと判断した場合(S24:NO)、処理をステップS24へ戻して基準クロック14から基準信号が出力されたと判断するまで待機する。
【0051】
無線送信機1のMPU16は、基準クロック14から基準信号が出力されたと判断した場合(S24:YES)、ステップS23で生成した信号を送信部12へ出力し(ステップS25)、アンテナ11を介して信号の送信を開始させる(ステップS26)。生成した信号の送信部12への出力が終了した場合は信号の送信を終了し(ステップS27)、送信部12への電力の供給を停止し(ステップS28)、処理を終了する。
【0052】
図4は、本実施の形態における無線受信機2のMPU26の制御により信号が受信される処理手順を示すフローチャートである。
【0053】
無線受信機2のMPU26は、起動タイミングが到来したか否かを判断する(ステップS301)。無線受信機2のMPU26は、起動タイミングが到来していないと判断した場合(S301:NO)、処理をステップS301へ戻して起動タイミングが到来したと判断するまで待機する。
【0054】
無線受信機2のMPU26は、起動タイミングが到来したと判断した場合(S301:YES)、電源回路21を介して電源供給装置から受信部23へ電力を供給して起動させ(ステップS302)、受信部23により信号の受信を開始する(ステップS303)。
【0055】
次に無線受信機2のMPU26は、受信部23による信号の受信を継続するか否かを判断する(ステップS304)。無線受信機2のMPU26は、受信部23による受信を継続しないと判断した場合(S304:NO)、信号の受信を終了し(ステップS305)、受信部23への電力の供給を停止し(ステップS306)、処理をステップS301へ戻して次の起動タイミングが到来したと判断するまで待機する。
【0056】
無線受信機2のMPU26は、ステップS304において受信部23による受信を継続すると判断した場合(S304:YES)、基準信号が出力された直近の時刻及び現在の時刻をメモリ27から読み出し(ステップS307)、受信部23により受信している信号の送信が開始された時点を特定する(ステップS308)。無線受信機2のMPU26は、特定した時点から現在の時点までの時間経過を算出し(ステップS309)、複数回送信される信号の内の次の信号の受信を開始できる時点を特定する(ステップS310)。
【0057】
無線受信機2のMPU26は、ステップS310において特定した時点以降に受信部23により受信されて復調された信号から情報を取得し(ステップS311)、信号の受信を終了し(S305)、受信部23への電力の供給を停止し(S306)、処理をステップS301へ戻して次の起動タイミングが到来するまで待機する。
【0058】
無線受信機2のMPU26は、無線受信機2全体への電力の供給がオフになるまで上述のステップS301からステップS311への処理を繰り返す。
【0059】
図2乃至図4のフローチャートに示した処理は、MPU16,26がメモリ17,27から制御プログラムを読み出してソフトウェア的に実行する構成としてもよいが、マイコン10,20(MPU16,26)による処理の負荷の軽減を鑑みれば、無線送信機1及び無線受信機2の各構成部の信号の入出力を回路によって設計することにより、上述のように動作するように構成してもよい。
【0060】
無線送信機1及び無線受信機2のMPU16,26が図2及び図4のフローチャートに示した処理を実行する際に、各構成部から出力される信号及びそのタイミングについて図を用いて以下に説明する。
【0061】
図5は、本実施の形態における無線送信機1及び無線受信機2の各構成部が信号を出力するタイミング及び起動するタイミングの例を示すタイムチャートである。各タイムチャートにおいて横軸は時間の経過を示し、縦軸は信号レベルを示している。
【0062】
図5(a)から図5(d)までは無線送信機1の各構成部から信号が出力及び送信されるタイミングを示すタイムチャートであり、図5(e)から図5(h)までは無線受信機2の各構成部から信号が出力されるタイミング及び受信部23が起動されるタイミングを示すタイムチャートである。
【0063】
図5(a)は、無線送信機1のクロック回路18から出力されるクロック信号のタイミングを示している。図5(b)は、無線送信機1の基準クロック14から出力される基準信号のタイミングを示している。図5(c)は、無線送信機1における受付部13がスイッチの押下を検知したタイミングを示している。図5(d)は、無線送信機1から信号の送信が開始されるタイミングを示している。
【0064】
図5(e)は、無線受信機2のクロック回路28から出力されるクロック信号のタイミングを示している。図5(f)は、無線受信機2の基準クロック24から出力される基準信号のタイミングを示している。図5(g)は、無線受信機2の受信部23が起動される起動タイミングを示している。図5(h)は、無線受信機2の受信部23により復調されてMPU26へ出力される信号の波形を示している。
【0065】
図5(a)及び図5(e)に示すように、無線送信機1及び無線受信機2のクロック回路28からクロック信号が出力されるタイミングは夫々異なる。しかしながら、無線送信機1及び無線受信機2の各々のMPU16,26が時刻情報受信部15,25を介して受信した時刻情報に基づいてそのタイミングを同期させるので、図5(b)及び図5(f)に示すように、各々の基準クロック14,24から基準信号が出力されるタイミングは同期される。
【0066】
無線送信機1のMPU16は、図5(c)に示すようなタイミングで受付部13によりスイッチの押下を検知した場合、次に基準信号が出力されたタイミングに従い、図5(d)に示すように時刻t1 から送信部12により信号の送信を開始する。なお、図5(d)のタイムチャートに示している例では、無線送信機1は信号を4回連続送信することにより無線受信機2で信号を受信する確実性を高めている。なお、黒矩形により各信号の先頭部分を示している。
【0067】
これに対し無線受信機2のMPU26は、図5(g)に示すように、基準信号の出力タイミングとは独立した任意の起動タイミングで受信部23へ電力を供給し、信号の受信を試みる。図5(h)に示すように無線受信機2のMPU26は、受信部23へ電力が供給され起動されている間に受信した信号が矩形波を示している等の条件により受信を継続するか否かを判断し、条件を満たしていない場合は受信を停止し、条件を満たしている場合は受信を継続する。
【0068】
図5(h)に示すように、無線受信機2のMPU26は起動タイミングに従って時刻t2 から受信を開始し、矩形波を示していることから受信を継続し、無線送信機1から送信された信号を受信する。無線受信機2のMPU26は、無線送信機1から送信された信号を途中から受信するが、自身が備える基準クロック24から基準信号が出力された直近の時刻t1 に相当するカウントをメモリ27に記憶しているので、現在受信している信号が無線送信機1から送信が開始された時刻t1 を特定することができ、次に無線送信機1から2回目に送信されるタイミングt3 を特定することができ、信号から正しく情報を取得することができる。
【0069】
なお、図5(g)には、無線送信機1及び無線受信機2の基準クロック14,24から基準信号が出力されるタイミング、並びに無線受信機2の受信部23の起動タイミングは一定間隔で到来するように示した。しかしながら本発明はこれに限らず、基準信号が出力されるタイミング及び起動タイミングは等間隔でなくランダムな間隔を有していてもよい。
【0070】
図6は、本実施の形態における無線送信機1及び無線受信機2の各構成部が信号を出力するタイミング及び起動するタイミングの例を示すタイムチャートである。これは基準クロック14,24から基準信号を出力するタイミングをクロック信号の入力に対して一定としない構成とした場合、及び無線受信機2の受信部23の起動タイミングを基準クロック24から基準信号が出力されるタイミングに従わせた場合の各信号のタイミングを示すタイムチャートである。図6(a)から(h)までの各タイムチャートの内容は夫々、図5(a)から(h)までの各タイムチャートと同様であるので、詳細な説明を省略する。図6(b)、図6(f)、図6(g)及び図6(h)に示すタイムチャートの波形が異なるので、これについて説明する。
【0071】
図6(b)及び図6(f)のタイムチャートに示す例では、無線送信機1及び無線受信機2の基準クロック14,24は、クロック回路18,28から入力されるクロック信号に対して、2、3、4回に1回の割合でカウントし、基準信号を出力するようにしてある。なお破線で示す波形は、図6(a)及び(e)に示したクロック信号をシフトしたのみの波形である。クロック信号に対してカウント及び基準信号を出力する割合はランダムにしてあるが、無線送信機1及び無線受信機2の間では同期するように構成されている。
【0072】
また、図6(g)のタイムチャートに示すように、無線受信機2の受信部23に電力が供給される起動タイミングは基準クロック24から基準信号が出力されるタイミングに一致するようにしてある。
【0073】
図6(b)、図6(f)及び図6(h)のタイムチャートに示すように無線送信機1及び無線受信機2の基準信号の出力タイミング及び起動タイミングが同期されている場合に、無線送信機1のMPU16が図6(c)に示すようなタイミングでスイッチの押下を検知したとき、無線送信機1のMPU16は、次に基準信号が出力される時刻t4 から送信部12により信号の送信を開始する。
【0074】
これに対し、無線受信機2のMPU26は、図6(f)、図6(g)及び図6(h)に示すように、基準信号が出力されるタイミングと同一の起動タイミングに従って時刻t4 から受信を開始する。無線受信機2のMPU26は、受信部23により受信している信号が矩形波を示していることにより受信を継続する。
【0075】
図6(h)に示すように、無線受信機2のMPU26は起動タイミングに従って時刻t4 から受信を開始している。つまり、基準クロック24から基準信号が出力されるタイミング及び起動タイミングが同期されていることにより、無線受信機2のMPU26は、無線送信機1から送信が開始された時刻t4 から同時に受信を開始している。したがって、無線受信機2のMPU26は先頭から信号を受信することができ、情報を取得することができる。
【0076】
このように、無線送信機1及び無線受信機2で同期した基準クロック14,24を共有することにより、無線受信機2は無線送信機1から信号の送信が開始された時点を特定することができ、その後いつから信号から情報を取得すれば正しく信号を受信することができるかを認識することができる。これにより、無線受信機2は常時無線送信機1からの信号を受信しているか否かを判定する処理をする必要がない。何故なら、任意のタイミングで受信を開始しても、基準クロック24から基準信号が出力されるタイミングに基づいて受信している信号の送信開始時点を特定することができるからである。無線受信機2が起動するタイミングを任意のタイミングとすることにより、外部からの通信の傍受を抑制することができる効果も期待することができる。
【0077】
また、無線受信機2が受信するタイミングを基準信号の出力タイミングに従わせることによって、無線送信機1が信号を開始すると共に同時に無線受信機2で信号の受信を開始することができるので、信号から正しく情報を取得することができる。また、この場合、無線受信機2のMPU26は、無線送信機1からの信号を受信しているか否かの判定を行なわず開始から受信している。したがって、無線送信機1からの信号を受信しているか否かを判定するための信号解析に時間を要しない。これにより、無線送信機1からの信号を受信してからの処理の即時性を高めることができる。
【0078】
なお、本実施の形態ではクロック回路18,28から出力されるクロック信号に基づいて基準信号を生成し、MPU16,26が時刻情報受信部15,25から受信した時刻情報に基づいてクロック信号に対するシフト幅を算出し、クロック信号をシフトさせて基準信号として出力させる構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、クロック回路18,28自体を基準信号出力手段とし、MPU16,26を介してクロック回路18,28を同時にリセットさせ、クロック回路18,28におけるカウント及び出力のタイミングを無線送信機1及び無線受信機2の間で同期するように修正することが可能な構成でもよい。この場合、無線送信機1及び無線受信機2で夫々時刻情報受信部15,25を備えず、MPU16,26が所定の信号を相互に送受信したことをトリガにクロック回路18,28をリセットするようにしてもよいし、外部からリセットさせることが可能な構成としてもよい。勿論、無線送信機1及び無線受信機2が夫々時刻情報受信部15,25から解読した時刻情報に基づいてクロック回路18,28をリセットする構成でもよい。
【0079】
なお、本発明の無線通信システムを車輌に搭載されるキーレスエントリーシステム(passive keyless entry system)のキー(無線送信機1)及びドアロック制御機構(無線受信機2)に適用することにより、キーレスエントリーシステムにおける無線受信機2のマイコン20の処理負荷を軽減させることができると共に、安全性を高めることも可能になる。車輌に搭載されるキーレスエントリーシステムでは、バッテリー消費の観点からも無線受信機2が備えられる車載装置で暗電流を抑えることが課題となるので、本発明の無線通信システムを適用することによりこの課題を解決することが可能になる点、優れた効果を奏する。
【0080】
また、車輌に搭載されるキーレスエントリーシステムで、キーにGPS受信機能又は標準電波受信機能が備えられることが標準的になった場合、本実施の形態における時刻情報受信部15,25の用途にGPS受信機能又は標準電波受信機能を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施の形態における本発明の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態における無線送信機及び無線受信機のMPUが時刻情報に基づいて基準クロックが基準信号を出力するタイミングを同期させる処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本実施の形態における無線送信機のMPUの制御により信号が送信される処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態における無線受信機のMPUの制御により信号が受信される処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態における無線送信機及び無線受信機の各構成部が信号を出力するタイミング及び起動するタイミングの例を示すタイムチャートである。
【図6】本実施の形態における無線送信機及び無線受信機の各構成部が信号を出力するタイミング及び起動するタイミングの例を示すタイムチャートである。
【図7】従来の技術で無線送信機から送信される特定のコードを含む信号の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 無線送信機
2 無線受信機
10,20 マイコン
12 送信部
23 受信部
14,24 基準クロック
15,25 時刻情報受信部
16,26 MPU
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムにおいて、
前記無線送信機及び無線受信機は、
間隔を置いて繰り返し基準信号を出力する基準信号出力手段と、
夫々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させる同期手段と
を備え、
前記無線送信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って送信を開始するようにしてあること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線受信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って受信を開始するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線送信機及び無線受信機は夫々、
時刻情報を受信する手段を備え、
前記同期手段は、受信した時刻情報に基づいて夫々の前記基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させるようにしてあること
を特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線送信機は信号を複数回送信するようにしてあり、
前記無線受信機は、自身が備える基準信号出力手段から基準信号が出力された時点、基準信号の出力間隔、及び送信される信号の長さに基づいて、次の送信の開始時点を特定する手段
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基準信号出力手段による基準信号の出力間隔は等間隔でないこと
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムにおける無線通信方法において、
前記無線送信機及び無線受信機は、
間隔を置いて繰り返し基準信号を出力する基準信号出力手段を夫々用い、
夫々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させ、
前記無線送信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って送信を開始する
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項1】
無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムにおいて、
前記無線送信機及び無線受信機は、
間隔を置いて繰り返し基準信号を出力する基準信号出力手段と、
夫々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させる同期手段と
を備え、
前記無線送信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って送信を開始するようにしてあること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線受信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って受信を開始するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線送信機及び無線受信機は夫々、
時刻情報を受信する手段を備え、
前記同期手段は、受信した時刻情報に基づいて夫々の前記基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させるようにしてあること
を特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線送信機は信号を複数回送信するようにしてあり、
前記無線受信機は、自身が備える基準信号出力手段から基準信号が出力された時点、基準信号の出力間隔、及び送信される信号の長さに基づいて、次の送信の開始時点を特定する手段
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基準信号出力手段による基準信号の出力間隔は等間隔でないこと
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
無線送信機及び無線受信機で構成される無線通信システムにおける無線通信方法において、
前記無線送信機及び無線受信機は、
間隔を置いて繰り返し基準信号を出力する基準信号出力手段を夫々用い、
夫々の基準信号出力手段が基準信号を出力するタイミングを相互に同期させ、
前記無線送信機は、前記基準信号が出力されるタイミングに従って送信を開始する
ことを特徴とする無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−306672(P2008−306672A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154330(P2007−154330)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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