説明

無線通信システム

【課題】リギングにかかる負担を軽減しながら、安定した通信を可能にする。
【解決手段】第1無線装置11a、11bは、予め設定された各通信チャンネルを用いて第1の周期でエンジン情報を送信し、第2無線装置23aは、第1の周期より短い第2の周期でエンジン情報の受信の有無を判定し、受信有りの場合受信したエンジン情報の処理を行った後に通信チャンネルの切替を行い、受信無しの場合通信チャンネルの切り替えを即時に行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの動作状態を監視するセンサを備えた船外機毎に設置される第1無線装置と、船体キャビンに設置される1以上の第2無線装置との間でデータ通信を行なう無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとスクリューが一体となった船舶の推進器である船外機が知られている。船外機は、船体の後部に船外機を複数並列に固定する、所謂、多基掛けの場合、タイロッドと呼ばれるリンク機構を介して接続され、操舵が機械的に連動して行われるのが普通である。
【0003】
例えば、図5に示されるように、船体20の後部には複数基、例えば、2基の船外機10が固定され、不図示のリンク機構を介して接続されている。2基の船外機10は、プロペラ42a、42bをそれぞれ備えると共に、上部に2基のエンジンを内蔵する。プロペラ42a、42bは、それぞれのエンジンの動力が伝達されて回転し、船体20の推力を発生する。
【0004】
一方、船体20の操縦席付近には、操作リモコンや表示器からなるキャビンユニット20aが配置されている。操作リモコンは、操縦者によって操作可能なイグニッションキー、及び2本のレバーを備える。各レバーは、初期位置から前後方向に揺動操作自在とされ、操縦者によってシフトチェンジ指示とエンジン回転数の調整指示が入力されるようになっている。操縦席付近には、更に、ステアリングホイール23が配置され、ステアリングホイール23は回転自在とされ、操縦者から旋回指示が入力される。
【0005】
ところで、船外機10は、船体20とは別に単体で販売され、種々の装備と共に船体20にリギング(艤装)されている。上述した多基掛けされた船外機10とキャビンユニット20aとを有線で接続する場合、信号線、電源、GND線からなるハーネス、あるいはCAN(Control Area Network)ケーブル等の引き回しが必要である。
【0006】
又、Wi−Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等の近距離無線通信プロトコルを用いた無線による接続方法も知られている。この場合、2基の船外機10のそれぞれと、キャビンユニット20aに無線装置が搭載され、これら無線装置間でデータ通信を行うことにより、センサ(不図示)等により検知されたエンジン情報、あるいは操作リモコンによる操作情報の送受信が行われる。しかしながら、2基の船外機10とキャビンユニット20aとの間で同一通信チャンネルの周波数を用いて1対1通信を行おうとすれば、2基の船外機10のそれぞれを各無線装置とハーネスで接続する必要がある。
【0007】
これは、同一通信チャンネルを用いて1対1通信を行うために発生する作業であり、無線を使用するにも拘わらずリギングが発生し、ハーネルの引き回しの状態によっては船外機10に不具合が発生することも多々ある。又、ハーネスの接続数を極力少なくするために、多基掛けされた船外機10毎、あるいはキャビンユニット20a(操作リモコン、表示器)毎に無線装置を接続することも考えられるが、この場合、同一通信チャンネルを使用するため、通信衝突(コリジョン)の問題が発生して通信が不安定になり、正常な通信が行えなくなる可能性がある。又、通信遅れの要因にもなる。
【0008】
一方、従来、LAN(Local Area Network)又はCAN通信環境を複数のコントローラに適用した農作業機の制御装置において、構成の設定を容易化するシステムを構築することで、どのコントローラにどの入出力機器を接続すれば良いかを簡単に把握でき、農作業機の製造に際して接続作業の効率化をはかる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
しかしながら特許文献1に開示された技術によれば、LANやCAN等の有線通信環境を用いて実現するため、上述した多基掛けの船外機と船体キャビン間でデータ通信が行われる無線通信システムのように、電波干渉による妨害等とは無縁であり、従って、特許文献1に開示された技術を、多基掛けされた船外機とキャビンユニット間で通信を行う無線通信システムへ適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−90828号公報(段落「0010」〜「0016」、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、リギングにかかる負担を軽減しながら安定した通信が可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、エンジンの動作状態を監視するセンサを備えた船外機毎に設置される第1無線装置と、船体キャビンに設置される1以上の第2無線装置との間でデータ通信を行なう無線通信システムであって、前記第1無線装置は、前記船外機毎に予め割り当てられた通信チャンネルを用い、前記センサにより出力されるエンジン情報を送信し、前記第2無線装置は、前記通信チャンネルを順次切替えて前記エンジン情報を受信し、前記受信したエンジン情報を処理することを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の無線通信システムにおいて、前記第1無線装置は、電源投入後にエンジン始動を検知すると、予め設定された各通信チャンネルを用いて第1の周期で前記エンジン情報を送信し、前記第2無線装置は、前記エンジン始動検知前に、前記第1の周期より短い第2の周期で前記エンジン情報の受信の有無を判定し、受信有りの場合、受信した前記エンジン情報の処理を行った後に前記通信チャンネルの切替を行い、受信無しの場合、前記通信チャンネルの切替えを即時に行い前記エンジン情報の受信待ち状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、第1無線装置は、船外機毎に予め割り当てられた通信チャンネルを用いてセンサにより出力されるエンジン情報を送信し、第2無線装置は、その通信チャンネルを順次切替えてエンジン情報を受信し、受信したエンジン情報を処理する。このため、エンジン情報を送受信する際に使用される通信チャンネルが重複することなく、無線装置間での衝突が回避されるため、安定した通信が可能になる。又、無理に1対1通信にする必要が無くなることから無駄なリギングのための作業が不要になる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、第1無線装置は、予め設定された各通信チャンネルを用いて第1の周期でエンジン情報を送信し、第2無線装置は、第1の周期より短い第2の周期でエンジン情報の受信の有無を判定し、受信有りの場合受信したエンジン情報の処理を行った後に前記通信チャンネルの切替を行い、受信無しの場合通信チャンネルの切り替えを即時に行なう。このため、周期差を用い、一方で割り当てられた通信チャンネルを用いてデータの送信を行い、他方でその通信チャンネルを切り替えて受信することにより、衝突発生の無い安定した1:n通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す船外機の内部機構図である。
【図3】本実施例の無線通信システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施例の無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図5】多基掛けの船外機が固定される船体の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
(実施例の構成)
図1に示すように、本実施例に係る無線通信システム1は、多基掛けされた船外機10毎に設置される第1無線装置11a、11bと、船体キャビンのキャビンユニット20aに設置される第2無線装置23aとを含み構成される。無線装置11a、11bは、船体20の後尾に固定された多基掛けされた船外機10の各エンジンユニット内部に搭載され、無線装置23aは、船体20のキャビンユニット20aの内部に設置される。
【0019】
ここでは2基の船外機10に内蔵される各エンジンユニット10a、10bは、それぞれが、無線装置11a、11bと、エンジン120a、120bとを含む。
【0020】
無線装置11aは、制御部110とRF(Radio Frequency)部111とにより構成される。制御部110は、例えば、マイコンにより構成され、船外機10毎に予め割り当てられた通信チャンネルの周波数を用い、後述するセンサにより出力されるエンジン情報を、例えばZigbeeプロトコルに従いRF部111により送信する。RF部111は、Zigbeeプロトコルに対応してデータの送受信を行う高周波回路である。
【0021】
尚、無線装置11bも、上述した無線装置11aと同じ構成を有するため、重複を回避する意味で説明を省略する。
【0022】
エンジン120aは、エンジン本体121と、電子制御ユニット(ECU122)と、センサ123とにより構成される。エンジン本体121は、ECU122による燃料噴射(FI)制御の下でプロペラ42a、42b(図5参照)に動力を伝達さて回転させることにより船体20の推力を発生する。エンジン本体121は、4サイクルガソリンエンジンである。ECU122は、主にFI制御を行ない、他に、エンジン本体121各部に実装されたセンサ123により検知されたエンジン情報を取得し、無線装置11a経由でキャビンユニット20aへ送信する。
【0023】
尚、ECU122は、無線装置11aの制御部110とは、UART(Universal Asynchoronouse Receiver Transmitter)等、有線のシリアルデータ通信インタフェース経由でプロセッサ間通信により接続される。
【0024】
一方、船体20の操縦席付近にはキャビンユニット20aが設置されており、このキャビンユニット20aには、操縦者によって操作される操作リモコン21と、各種メータ類が表示される表示器22が実装されている。操作リモコン21は、例えば、レバーにより初期位置から前後方向(操縦者の手前方向と奥方向)に揺動操作自在とされ、操縦者から船外機10に対するシフトチェンジの指示やエンジン回転数の調整指示等が入力される。表示器22は、船外機10毎に設置された第1無線装置11a、11bから送信されるエンジン情報を、第2無線装置23aを介して受信してその内容を表示する。
【0025】
キャビンユニット20aに設置される無線装置23aは、制御部230とRF部231とにより構成される。制御部230は、例えば、マイコンにより構成され、通信チャンネルを順次切替え、例えば、Zigbeeプロトコルに基づきエンジン情報を受信し、受信したエンジン情報を処理して表示器22に送信する。RF部231は、例えば、Zigbeeプロトコルに対応してデータの送受信を行う高周波回路である。
【0026】
図2に船外機10の内部構造が示されている。ここでは、多基掛けされた船外機を1基のみ示してある。図2によれば、エンジンカバー40aで被覆されたエンジン120aの近傍には、電子制御ユニット(ECU122)と無線装置11aが双方向信号線を介して接続され実装されている。プロペラ42aは、エンジン120aの動力が伝達されて回転することにより、船体20を前進又は後進させる。又、船体20の後尾に固定されたスターンブラケット41aの近傍には、不図示のスイベルシャフトを回動させて船外機10を転舵させるアクチュエータ(操舵用電動モータ48a)と、船外機10のチルト角度及びトリム角度を調整するパワーチルトトリムユニット50aとが配置されており、共に信号線を介してECU122に接続される。
【0027】
エンジン120aの吸気管にはスロットバルブを開閉するアクチュエータ(スロットル用電動モータ44a)が配置され、ECU122に接続される。更に、船外機10の下部には、不図示のシフトロッドを回動させるアクチュエータ(シフトチェンジ用電動モータ46a)が配置され、信号線を介してECU122に接続される。
【0028】
又、不図示のスイベルシャフトとシフトロッドの近傍には、それぞれスイベルシャフト用の回動角センサ51aとシフトロッド用の回動角センサ52aが配置され、これらセンサ51a、52aは、スイベルシャフトの回動角に応じた信号とシフトロッドの回動角に応じた信号を出力する。又、不図示のスロットルバルブの近傍には、スロットル開度センサが54aが配置され、スロットル開度センサ54aは、スロットル開度に応じた信号を出力する。更に、エンジン120aのクランクシャフト付近にはクランク角センサ56aが配置され、エンジン120aの回転数に応じた信号を出力する。
【0029】
上述した各センサ51a、52a、54a、56a出力は、それぞれ信号線経由でECU122に出力される。ECU122は、上述した各センサ51a、52a、54a、56aと、キャビンユニット20aの操作リモコン21の出力に基づき、操舵用電動モータ48aを駆動して船外機10を操舵すると共に、パワーチルトトリムユニット50aを動作させて船外機10のチルト角度及びトリム角度を調整する。又、スロットル用電動モータ44aを駆動してエンジン120aの回転数を調整すると共に、シフトチェンジ用電動モータ46aを駆動してシフトチェンジを行う。
【0030】
(実施例の動作)
以下、図3のフローチャート、及び図4のタイミングチャートを参照しながら、図1、図2に示す本実施例の無線通信システム1の動作について詳細に説明する。
【0031】
図3において、まず、操縦者がキャビンユニット20aに設置された操作リモコン21のイグニッションキー(IG)をONすると(ステップS101”YES”)、これをエンジンユニット10a、10bの各ECU122が検知し、プロセッサ間通信により無線装置11a、11bの各制御部110へ通知する。各ECU122は、更に、エンジン120a、120bの回転数を監視し、所定の回転数を超えたタイミングでエンジン始動の完了(完爆)を検知する。そして、無線装置11a、11b経由でキャビンユニット20aに対してエンジン始動を通知する。
【0032】
エンジン始動が検知されると(ステップS102”YES”)、無線装置11aが起動され制御部110が動作を開始して初期設定が実行される。ここで、初期設定とは、予め割り当てられた通信チャンネルの設定と、通信相手となるキャビンユニット20aの識別情報の設定、及び内蔵する16ms割込みタイマをスタートさせる処理のことをいう。
【0033】
無線装置11aの初期設定が終了してエンジンユニット10a、10bが起動すると(ステップS103”YES”)、制御部110は、プロセッサ間通信により、ECU122からセンサ123経由で取得されるエンジン回転数等のエンジン情報を取り込む(ステップS104)。なお、ここで取り込まれるエンジン情報は、他に、操作リモコン21により指示される要求回転数、バッテリ電圧等に関する情報も含まれる。
【0034】
次に、制御部110は、16ms割込みタイマを監視してタイムアウトを検知する毎に(ステップS105”YES”)、取り込んだエンジン情報をRF部111を介してキャビンユニット20aへ送信する(ステップS106)。取り込まれたエンジン情報は、16msのタイムアウトが検知される毎にキャビンユニット20aへ送信される。
【0035】
一方、ステップS102のエンジン始動判定処理で、エンジン回転数が所定の回転数に満たない場合(ステップS102”NO”)、キャビンユニット20aでは、無線装置23aが起動され、制御部230による初期設定が実行される。ここで、初期設定とは、予め割り当てられた通信チャンネルの設定と、通信相手となる船外機10毎に割り当てられた識別情報の設定と、内蔵する8ms割込みタイマをスタートさせる処理をいう。
【0036】
無線装置23aの初期設定が終了してキャビンユニット20aが起動すると(ステップS107”YES”)、制御部230は、8ms割込みタイマの監視を行う。制御部230は、8ms割込みタイマのタイムアウトを検知する毎に(ステップS108”YES”)、その8ms間に、エンジンユニット10a、10bからエンジン情報を受信したか否かの判定を行う(ステップS109)。尚、エンジン情報の受信は、割り込みの有無を判定することにより行われる。
【0037】
ここで、8msの間に受信したエンジン情報は、表示用にデータが再構築され、CANバス30経由で表示器22へ転送される(ステップS110)。続いて制御部230は、通信チャンネルを切り替え(ステップS111)、ステップS108の8ms割込みタイマのタイムアウト判定処理に戻り、エンジン情報の受信判定処理(ステップS109)、受信したエンジン情報の送信処理(ステップS110)、通信チャンネルの切り替え処理(ステップS111)を繰り返し実行する。
【0038】
一方、8msの間にエンジン情報を受信しなかった場合(ステップS109”NO”)、制御部230は、即時に通信チャンネルを切り替えると共に(ステップS111)、ステップS108の8ms割込みタイマのタイムアウト監視処理に戻り、エンジン情報の受信判定処理(ステップS109)、受信したエンジン情報の送信処理(ステップS110)、通信チャンネルの切り替え処理(ステップS111)を繰り返し実行する。
【0039】
以下、図4のタイミングチャートを使用して、ステップST111の通信チャンネルの切り替え処理について具体的に説明する。図4では、船外機10を2基掛けした場合のエンジンユニット10a、10bと、キャビンユニット20a間の時間軸上における信号の流れを時間軸上に示してある。
【0040】
まず、起動時の初期設定処理において、エンジンユニット10aには、16の通信チャンネル中、4chが、エンジンユニット10bには、9chがそれぞれ割り当てられ、設定されたものとする。このため、エンジンユニット10aは、設定された4chの周波数を使用してセンサ123で検知されたエンジン情報A、B、C、Dを16ms間隔でキャビンユニット20aに送信する。又、エンジンユニット10bは、設定された9chの周波数を使用して同じくセンサ123で検知されたエンジン情報E、F、G、Hを16ms間隔でエンジンユニット10aとは非同期でキャビンユニット20aに送信する。
【0041】
一方、キャビンユニット20aは、起動時の初期設定処理で、通信相手として4ch使用のエンジンユニット10aと、通信相手として9chを使用するエンジンユニット10bとが割り当てられ設定されているものとする。このため、キャビンユニット20aでは、起動時のチャンネル切り替え信号aに基づき8msタイマをスタートさせ、エンジンユニット10aからの4chを使用したエンジン情報の受信待ちを行う。ここで、キャビンユニット20aは、8ms以内にエンジン情報Aを受信した場合、そのエンジン情報Aを取り込んだ後、チャンネル切り替え信号bを生成して通信チャンネルをch4からch9に切り替える。そして、エンジンユニット10bからのエンジン情報Fの受信待ちを行い、8ms以内にエンジン情報Fが受信できなかった場合は、即時にチャンネル切り替え信号cにより、割り当てる通信チャンネルをch9からch4に切り替え、エンジンユニット10aからのエンジン情報の受信を待つ。以下、同様の動作を繰り返す。
【0042】
このように、船外機10を2基掛けした場合、そのエンジンユニット10a、10b毎に通信チャンネルを割り当て、その通信チャンネルを使用してキャビンユニット20aにエンジン情報を送信し、キャビンユニット20aがその通信チャンネルを順次切り替え、エンジンユニット10a、10bから送信されるエンジン情報を受信することにより、送受信されるエンジン情報の衝突が無く、このため、安定した通信を行える。
【0043】
尚、本実施例によれば、多基掛けされた船外機10からキャビンユニット20aに向かってエンジン情報を送信する単方向の動作についてのみ説明したが、キャビンユニット20aから船外機10に向かって操作リモコン21による操作情報を送信する双方向の送信についても同様に、操作情報の衝突が無い安定した通信を可能とするものである。又、本実施例では、多基掛けされる船外機10を2基として説明したが、3基、4基、あるいはそれ以上であっても良い。更に、キャビンユニット20aに設置される無線装置は2つとして説明したが、例えば、操作リモコンと表示器用に別に設置する等、複数の無線装置を設置してもよく、その組み合わせは任意である。
【0044】
(実施例の効果)
本実施例によれば、エンジンユニット10a、10b(第1無線装置11a、11b)は、船外機10毎に予め割り当てられた通信チャンネルを用いてセンサ123により出力されるエンジン情報を送信し、キャビンユニット20a(第2無線装置23a)は、その通信チャンネルを順次切替えてエンジン情報を受信し、受信したエンジン情報を処理する。このため、エンジン情報を送受信する際に使用される通信チャンネルが重複することなく、無線装置11a、11b、23a間でエンジン情報の衝突が回避されるため、安定した通信が可能になり、又、無理に1対1通信にする必要が無くなることから無駄なリギングのための作業が不要になる。
【0045】
又、本実施例によれば、エンジンユニット10a、10b(無線装置11a、11b)は、予め設定された各通信チャンネルを用いて第1の周期である16ms周期でエンジン情報を送信し、キャビンユニット20a(無線装置23a)は、第1の周期より短い第2の周期である8ms周期でエンジン情報の受信の有無を判定し、受信有りの場合、受信したエンジン情報の処理を行った後に通信チャンネルの切替を行い、受信無しの場合、通信チャンネルの切り替えを即時に行なう。このため、周期差を用い、一方で割り当てられた通信チャンネルを用いてデータの送信を行い、他方でその通信チャンネルを切り替えて受信することで衝突発生の無い安定した1:n通信が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の無線通信システムは、主に船舶に適用されるものであり、船体の後尾に固定された船外機と、船体内部のキャビンのそれぞれに、無線LANよりも更に狭い範囲で通信が可能な無線装置を設置することにより実現される。本発明の無線通信システムは、上述した船舶に限らず、車室内における車載情報機器のリモコンによる操作情報等、狭いエリアでの通信が要求される全ての分野への応用が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…無線通信システム、10…船外機、10a、10b…エンジンユニット、11a、11b…無線装置(第1無線装置)、20a…キャビンユニット、21…操作リモコン、22…表示器、23a…無線装置(第2無線装置)、30…CANバス、110、230…制御部、111、231…RF部、121…エンジン本体、122…ECU、123…センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動作状態を監視するセンサを備えた船外機毎に設置される第1無線装置と、船体キャビンに設置される1以上の第2無線装置との間でデータ通信を行なう無線通信システムであって、
前記第1無線装置は、
前記船外機毎に予め割り当てられた通信チャンネルを用い、前記センサにより出力されるエンジン情報を送信し、
前記第2無線装置は、
前記通信チャンネルを順次切替えて前記エンジン情報を受信し、前記受信したエンジン情報を処理することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第1無線装置は、
電源投入後にエンジン始動を検知すると、予め設定された各通信チャンネルを用いて第1の周期で前記エンジン情報を送信し、
前記第2無線装置は、
前記エンジン始動検知前に、前記第1の周期より短い第2の周期で前記エンジン情報の受信の有無を判定し、受信有りの場合、受信した前記エンジン情報の処理を行った後に前記通信チャンネルの切替を行い、受信無しの場合、前記通信チャンネルの切り替えを即時に行ない前記エンジン情報の受信待ち状態とすることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−156903(P2011−156903A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18245(P2010−18245)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】