説明

無線通信装置、無線通信制御方法、及び無線通信制御プログラム

【課題】予期せぬ不具合により妨げられた通信を速やかに復旧させることが可能な無線通信装置、無線通信制御方法、及び無線通信制御プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、予期せぬ不具合により通信が妨げられた場合、無線通信装置に搭載された各種アプリケーションに擬似的に圏外通知を行ってアプリケーションを圏外状態へ移行させ、その間に、基地局との無線通信を行う無線通信デバイスと基地局との接続を一端切断し、接続を行うことにより、速やかに不具合を解消して妨げられた通信を復旧させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、該無線通信装置における無線通信制御方法、及び無線通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、基地局との間で電波を利用して無線通信を行う無線通信装置が広く普及している。この無線通信装置では、基地局との間で良好な通信を行える状態を通信圏内とし、無線通信装置が通信圏内にある場合には、無線通信装置に搭載された各種アプリケーションは通常の処理を行う。また無線通信装置は、基地局との間で良好な通信が行えない状態を通信圏外とし、無線通信装置が通信圏外となった場合には、無線通信装置に搭載された各種アプリケーションは、再び通信圏内となるまで現状を維持する圏外状態へ移行する。そして再び通信圏内になると、通常の処理を再開する。
【0003】
ところで、近年の無線通信装置では、その普及に伴い様々な機能が搭載されつつある。このため、無線通信装置には各種機能を実現する様々なアプリケーションが搭載されるようになり、アプリケーションが処理を実行する際の負荷も増大しつつある。
【0004】
処理を実行する際に過剰な負荷がかかった場合、無線通信装置では、例えば無線通信を行えない等の予期せぬ不具合により通信を妨げられる虞がある。
【0005】
無線通信装置における不具合の発生を防止する技術の一例として、例えば特許文献1には通信状態に応じて複数の無線部を切り替えて使用することが記載されている。
【特許文献1】特開2005−347819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明では、無線通信装置に対する過剰な負荷により発生する不具合に関しては考慮されていない。
【0007】
また従来の無線通信装置では、過剰な負荷により不具合が発生した場合には、強制的な無線通信装置の再起動等により不具合を解消しており、不具合により妨げられた通信を速やかに復旧させることができない。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、予期せぬ不具合により妨げられた通信を速やかに復旧させることが可能な無線通信装置、無線通信制御方法、及び無線通信制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、基地局との間で無線通信を行う無線通信手段(16)と、前記無線通信手段(16)を制御する無線通信制御手段(140)と、前記無線通信を行うためのアプリケーション群を制御するアプリケーション制御手段(125)と、を有し、
前記無線通信制御手段(140)は、
前記無線通信手段(16)の異常を検知する異常検知手段(141)と、
前記異常検知手段(141)により異常が検知されたとき、前記アプリケーション制御手段(125)に前記基地局との通信が通信圏外であることを示す擬似的な圏外通知を通知する圏外通知手段(142)と、
前記異常検知手段(141)による異常が検知されたとき、前記無線通信手段(16)にリセットをさせるためのリセット処理要求を行うリセット要求手段(143)と、
前記無線通信手段(16)のリセット処理が完了したとき、
前記無線通信手段(16)に初期化・接続要求を行う初期化・接続要求手段(144)とを有する。
【0010】
また、本発明によれば、無線通信装置(100)において、
前記無線通信手段(16)は、
前記リセット要求手段(143)により前記リセット処理要求がされたとき、前記無線通信をリセットするリセット処理手段(161)と、
前記初期化・接続要求手段(144)による前記初期化・接続要求に含まれる初期化要求を受けて前記無線通信を行なうための設定を初期化する初期化手段(162)と、
前記初期化・接続要求に含まれる接続要求を受けて前記基地局との間で接続処理を行う接続処理手段(163)と、
前記接続処理手段(163)により前記基地局と接続されたとき、
前記無線通信制御手段(140)に前記基地局と接続したことを通知する接続通知手段(164)とを有する。
【0011】
また、本発明によれば、無線通信装置(100)において、
前記無線通信制御手段(140)は、
前記接続通知手段(164)により接続通知がされたとき、
前記アプリケーション制御手段(125)に前記基地局との通信が通信圏内であることを通知する圏内通知手段(145)とを有する。
【0012】
また、本発明によれば、無線通信装置(100)において、
前記圏外通知手段(142)は、
当該無線通信装置が前記基地局との通信圏内に存在する場合に、前記異常検知手段(141)により異常が検知されたとき、
前記アプリケーション制御手段(125)に擬似的な圏外通知を行う。
【0013】
また、本発明は、基地局との間で無線通信を行う無線通信手段(16)と、前記無線通信を行うためのアプリケーション群を制御するアプリケーション制御手段(125)を有する無線通信装置(100)による無線通信制御方法において、
前記無線通信手段の異常を検知する異常検知手順(S41)と、
前記異常検知手順(S41)により異常が検知されたとき、前記アプリケーション制御手段(125)に前記基地局との通信が通信圏外であることを示す擬似的な圏外通知を通知する圏外通知手順(S44)と、
前記異常検知手順(S41)による異常が検知されたとき、前記無線通信手段(16)をリセットさせるためのリセット処理要求を行うリセット要求手順(S43)と、
前記無線通信手段(16)のリセット処理が完了したとき、
前記無線通信手段(16)に初期化・接続要求を行う初期化・接続要求手順(S45)とを有する。
【0014】
また、本発明は、基地局との間で無線通信を行う無線通信手段(16)と、前記無線通信を行うためのアプリケーション群を制御するアプリケーション制御手段(125)を有する無線通信装置(100)において実行される無線通信制御プログラムであって、
前記無線通信装置(100)に、
前記無線通信手段(16)の異常を検知する異常検知ステップ(S41)と、
前記異常検知ステップ(S41)により異常が検知されたとき、前記アプリケーション制御手段(125)に前記基地局との通信が通信圏外であることを示す擬似的な圏外通知を通知する圏外通知ステップ(S44)と、
前記異常検知ステップによる異常が検知されたとき、前記無線通信手段(16)をリセットさせるためのリセット処理要求を行うリセット要求ステップ(S43)と、
前記無線通信手段(16)のリセット処理が完了したとき、
前記無線通信手段(16)に初期化・接続要求を行う初期化・接続要求ステップ(S45)とを実行させる。
【0015】
尚、上記参照符号は、あくまでも参考であり、これによって、本願発明が図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、予期せぬ不具合により妨げられた通信を速やかに復旧させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、予期せぬ不具合により通信が妨げられた場合、無線通信装置に搭載された各種アプリケーションに擬似的に圏外通知を行ってアプリケーションを圏外状態へ移行させ、その間に、基地局との無線通信を行う無線通信デバイスと基地局との接続を一端切断し、接続を行うことにより、速やかに不具合を解消して妨げられた通信を復旧させる。
【0018】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0019】
<無線通信装置のハードウェア構成>
ここで、本実施形態の無線通信装置100のハードウェア構成の一例について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の無線通信装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0020】
図1における無線通信装置100には、入力装置11と、出力装置12と、ROM(Read Only Memory)13と、RAM(Random Access Memory)14と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)15と、無線LANモジュール16とを有するよう構成されており、これらはシステムバスBで相互に接続されている。
【0021】
入力装置11は、例えばファンクションキー等のユーザが操作する操作キー等を有しており、ユーザからのプログラムの実行指示等、各種操作信号が入力される。
【0022】
出力装置12は、本発明における処理を行うためのコンピュータ本体を操作するのに必要な各種データ等を表示する表示手段(ディスプレイ等)を有し、CPU15が有する制御プログラムによりプログラムの実行経過や結果等を表示することができる。
【0023】
ROM13は、無線通信を行うために必要となるIPアドレスや電話帳、接続通知等の各種情報、及び本実施形態の無線通信装置100を動作させる無線通信制御プログラム等が格納される。
【0024】
RAM14は、CPU15より、ROM13に格納された本実施形態における無線通信制御プログラム等を呼び出して展開する。またRAM14は、呼び出した無線通信制御プログラムや、各種情報を一時的に記憶する。
【0025】
CPU15は、ROM13により格納されている無線通信制御プログラムに基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御して各処理を実現することができる。また、プログラムの実行中に必要な各種情報は、RAM14から取得することができ、また格納することもできる。
【0026】
無線LANデバイス16は、無線通信により通信LANネットワーク等と接続し、基地局17を介して通信対象の外部装置と無線通信を行う。無線LANデバイス16は、無線通信により各種プログラムやデータ等を送受信することができる。尚本実施形態の無線LANデバイス16は、図示しないマイクロプロセッサを有し、無線LANデバイス16自身の制御を行うことができる。無線LANデバイス16自身の制御の詳細は後述する。
<無線通信装置の機能構成>
まず、本実施の形態に係る無線通信装置100の機能構成の概略について説明する。図2は、本実施形態に係る無線通信装置100の機能構成の概略を説明する図である。
【0027】
本実施形態の無線通信装置100は、無線通信装置100の機能を実現するソフトウェア110を有する。ソフトウェア110は、例えばROM13に格納されている。無線通信装置100は、CPU15がROM13に格納されたソフトウェア110を読み出して実行することにより、以下の機能を実現する。
【0028】
ソフトウェア110は、アプリケーションソフトウェア120、TCP/IPプロトコルソフトウェア130、無線LANネットワークデバイスドライバ(以下、デバイスドライバ)140を有する。
【0029】
無線通信装置100は、無線LANデバイス16により基地局から受信したデータを、デバイスドライバ140を介してTCP/IPプロトコルソフトウェア130へ送信する。TCP/IPプロトコルソフトウェア130は、このデータをTCP/IPプロトコルにしたがってアプリケーションソフトウェア120へ送信する。アプリケーションソフトウェア120は、送信されたデータを用いて各種処理を実行する。
【0030】
また無線通信装置100は、アプリケーションソフトウェア120による処理結果をTCP/IPプロトコルソフトウェア130へ送信する。TCP/IPプロトコルソフトウェア130は、TCP/IPプロトコルにしたがったデータを、無線LANデバイス16から基地局へ送信可能なデータへ変換し、デバイスドライバ140へ送信する。デバイスドライバ140は、このデータを無線LANデバイス16により基地局へ送信させる。
【0031】
尚無線通信装置100で扱われるデータは、例えばVOIP(Voice over Internet Protocol)等を用いて送受信される音声データである。また本実施形態の無線通信装置100のアプリケーションソフトウェア120は、例えばWPA(Wi-Fi Protected Access)サプリカントを含み、暗号化されたデータの送受信を行うことができる。
【0032】
アプリケーションソフトウェア120は、無線通信装置100の機能を実現するアプリケーション群と、アプリケーション群を制御するアプリケーション制御部とを含む。アプリケーション群及びアプリケーション制御部の詳細は後述する。
【0033】
TCP/IPプロトコルソフトウェア130は、アプリケーションソフトウェア120とデバイスドライバ140との間で、TCP/IPプロトコルにしたがった通信を実行させるためのソフトウェアである。
【0034】
デバイスドライバ140は、無線LANデバイス16と、アプリケーションソフトウェア120及びTCP/IPプロトコルソフトウェア130との間の通信を制御する。デバイスドライバ140の詳細は後述する。
【0035】
図3は、本実施形態の無線通信装置100の機能構成の詳細を説明する図である。
【0036】
本実施形態のソフトウェア110の有するアプリケーションソフトウェア120は、例えば機能Aを実現するアプリケーション121、機能Bを実現するアプリケーション122、機能Cを実現するアプリケーション123からなるアプリケーション群124を有する。またアプリケーションソフトウェア120は、上記各アプリケーション(アプリケーション121、122、123)からなるアプリケーション群124を制御するアプリケーション制御部125を有する。
【0037】
機能Aは、例えば無線通信装置100の有する出力装置(ディスプレイ)12の表示制御機能である。よってアプリケーション121は、表示制御用アプリケーションである。機能Bは、例えば無線通信装置100により電子メールの作成及び送受信を行う機能である。よってアプリケーション122は、電子メール用アプリケーションである。機能Cは、例えば音声データの送受信を行う機能である。よってアプリケーション123は通話用アプリケーションである。
【0038】
アプリケーション制御部125は、アプリケーション群124の処理の実行等を制御する。具体的にはアプリケーション制御部125は、後述するデバイスドライバ140からの圏外通知に基づき、アプリケーション群124を、圏内処理を行う状態(以下、圏内状態)から圏外状態へ移行させる制御を行う。またアプリケーション制御部125は、後述するデバイスドライバ140からの圏内通知に基づき、アプリケーション群124を圏外状態から圏内状態へ移行させる制御を行う。
【0039】
尚図3の例では、アプリケーション群124に含まれるアプリケーションを3つとしたが、これに限定されない。本実施形態のアプリケーション群124は、上記各アプリケーション以外にも、様々な機能を実現するアプリケーションが含まれていても良い。
【0040】
本実施形態のソフトウェア110の有するデバイスドライバ140は、無線LANデバイス16の制御を行う。またデバイスドライバ140は、異常検知部141と、圏外通知部142と、リセット要求部143、初期化・接続要求部144と、圏内通知部145とを有する。
【0041】
異常検知部141は、無線LANデバイス16において異常が発生した場合にこの異常を検知する。尚無線LANデバイス16における異常とは、例えばユーザ操作による通信開始指示に応答がない等の不具合の発生等を示す。
【0042】
圏外通知部142は、異常検知部141により異常が検知されたときに、アプリケーションソフトウェア120に対して、無線LANデバイス16と基地局との通信が擬似的に電波圏外(通信圏外)であることを通知する圏外通知をする。より具体的には、圏外通知部142は、アプリケーション制御部125に圏外通知を行う。
【0043】
リセット要求部143は、異常検知部141により異常が検知されたときに、無線LANデバイス16に対してリセット処理要求を行う。
【0044】
初期化・接続要求部144は、リセット処理要求による無線LANデバイス16のリセット処理が完了したときに、無線LANデバイス16に対して初期化・接続処理要求を行う。
【0045】
圏内通知部145は、無線LANデバイス16より基地局との通信が接続されたことを示す接続通知がされたときに、アプリケーションソフトウェア120に対して、基地局との通信が電波(通信圏内)であることを通知する圏内通知をする。より具体的には圏内通知部145は、アプリケーション制御部125へ圏内通知を行う。
【0046】
次に本実施形態の無線LANデバイス16の詳細を説明する。本実施形態の無線LANデバイス16は、図示しないマイクロプロセッサ及びIEEE802.11MAC(Media Access Control)/BBP(Base Band Processor)/RF(Radio Frequency)等を有しており、無線LAN関連規格であるIEEE802.11規格に基づく無線制御を行う。
【0047】
また本実施形態の無線LANデバイス16は、図示しないマイクロプロセッサがプログラムを実行することにより、以下の各部の機能を実現する。
【0048】
無線LANデバイス16は、リセット処理部161と、初期化部162と、接続部163と、接続通知部164とを有する。また、無線LANデバイス16は、基地局等の無線ネットワーク上で接続可能な外部装置との間で無線通信を行う。
【0049】
リセット処理部161は、デバイスドライバ140のリセット要求部143によりリセット処理要求がされたときに、その要求を受信し無線LANデバイス16のリセット処理を行う。尚、リセット処理部161は、リセット処理完了後、リセット完了の旨をデバイスドライバ140に対して通知するようにしてもよい。尚本実施形態のリセット処理とは、無線LANデバイス16を初期状態に戻させる処理を示す。リセット処理後に無線LANデバイス16と基地局との通信は切断状態となる。
【0050】
初期化部162は、デバイスドライバ140の初期化・接続要求部144により初期化・接続要求がされたときに、その要求を受信し、基地局等と無線通信を行うための設定の初期化を行う。また接続部163は、初期化が終了した後に基地局との間で接続を行う。
【0051】
接続通知部164は、接続部163により基地局との間で接続が行われたとき、デバイスドライバ140に対して基地局と接続したことを通知する接続通知を行う。
【0052】
以上の構成により、無線LANデバイス16におけるリセット処理中に、アプリケーションソフトウェア120においてアプリケーション群124を圏外状態へ移行させ、リセット処理終了後にアプリケーション群124を圏内状態へ移行させることができる。よって本実施形態によれば、無線通信装置100で発生した不具合により通信が妨げられた場合にも、正常時の処理である圏内状態から圏外状態への移行、圏外状態から圏内状態への移行と同様の処理により通信を速やかに復旧させることができる。
【0053】
尚本実施形態の説明では、無線LANデバイス16におけるリセット処理、初期化処理、接続処理をそれぞれ分けて説明したが、リセット処理中に、初期化処理、接続処理が含まれるようにしても良い。すなわちリセット処理部161内に、初期化部162及び接続部163が含まれる構成であっても良い。
【0054】
<デバイスドライバ140における動作処理手順>
次に、本実施形態に係るデバイスドライバ140における動作処理手順の一例について説明する。図4は、本実施形態に係るデバイスドライバ140の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、デバイスドライバ140が、不具合の発生により無線LANデバイス16による通信が妨げられた場合に、アプリケーション制御部125に対して擬似的に圏外通知を行い、基地局と接続を行うために無線LANデバイス16に対してリセット要求、初期化・接続要求をする動作を行う例を示す。
【0055】
図4に示すように、デバイスドライバ140の異常検知部141が、無線LANデバイス16からの、例えば応答が示さなくなった等の異常を検出する(S41)。尚ここでいう異常とは、例えば操作ボタン等から入力されたリセット要求をアプリケーション制御部125が受けた際に、アプリケーション制御部125からデバイスドライバ140へ通知されるリセット要求を含む。
【0056】
次に、デバイスドライバ140は、圏外(切断処理)処理を実行する(S42)。尚圏外処理とは、無線通信装置100が通信圏外となった際にデバイスドライバ140が行う一連の処理を示す。
【0057】
次に、デバイスドライバ140のリセット要求部143は、無線LANデバイス16に対してリセット処理を実行する(S43)。なお、ここでは、S42とS43の処理順序を逆にして実行することもできる。
【0058】
次に、デバイスドライバ140の圏外通知部142は、アプリケーション制御部125に対して圏外通知(切断通知)を通知する(S44)。アプリケーション制御部125は、この圏外通知を受けて、アプリケーション群124の圏外状態への移行を指示する。アプリケーション群124の各アプリケーションは、移行指示に従って圏外状態へ移行する。各アプリケーションは、デバイスドライバ140から圏内通知があるまで圏外状態となる。
【0059】
具体的には例えば、アプリケーション121は、出力装置(ディスプレイ)22に、圏外通知による圏外状態へ移行したことを示すメッセージ等、例えば、接続中であることを示すアイコン表示を消灯する、又は圏外中であることを示すアイコンを表示させる。アプリケーション122は、例えば圏内通知を受けるまで電子メールの送受信を一時的に停止する。アプリケーション123は、例えば通信圏外であることを示す電子音等を鳴らし、通話中のユーザへ通話の一時中断を促す。
【0060】
次に、デバイスドライバ140の初期化・接続要求部144は、無線LANデバイス16のリセット処理が完了した後、無線LANデバイス16に対して初期化・接続要求を行う(S45)。
【0061】
デバイスドライバ140は、無線LANデバイス16が基地局との接続を完了した後に通知される接続通知を受領し(S46)、接続が確認されたときに復旧したとして判断する。
【0062】
デバイスドライバ140の圏内通知部145は、アプリケーション制御部125に対して接続通知を行う(S47)。これにより、アプリケーション制御部125は、アプリケーション群124に対して圏外状態から圏内状態へ移行する指示を行う。アプリケーション群124の各アプリケーションは、この指示を受けて圏外状態から圏内状態へ移行する。
【0063】
以上のように、デバイスドライバ140は、不具合の発生により無線LANデバイス16による通信が妨げられた場合に、アプリケーション制御部125に対して圏外通知を行い、基地局と接続を行うために無線LANデバイス16に対してリセット要求、初期化・接続要求をする動作を行う。
【0064】
<無線LANデバイス16における動作処理手順>
次に、本実施形態に係る無線LANデバイス16における動作処理手順の一例について説明する。図5は、本実施形態に係る無線LANデバイス16における動作処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、無線LANデバイス16は、デバイスドライバ140からのリセット要求によりリセット処理を行い、初期化・接続要求により初期化処理、接続処理の動作を行う。
【0065】
図5に示すように、無線LANデバイス16のリセット処理部161は、デバイスドライバ140のリセット要求部143からリセット要求を受け、リセット処理を行う(S51)。リセット処理は、リセット要求部143が無線LANデバイス16のリセット端子電圧をHighからLow、又はLowからHighに変化させることによって行われる。
【0066】
次に、デバイスドライバ140の初期化・接続要求部144により初期化・接続要求を受け、無線LANデバイス16の初期化部162は、無線通信を行うために設定の初期化処理を行う(S52)。無線LANデバイス16は、初期化処理の際に通信を復旧させるための各種パラメータ、例えばSSID(Service Set Identifier),暗号キー、暗号モードなどの暗号化関連、送信レートセット、認証モード等のパラメータの再設定を行う。尚本実施形態のデバイスドライバ140では、無線LANデバイス16が基地局との間で無線通信を行うにあたって必要とされる、例えばSSID,暗号キー、暗号モードなどの暗号化関連、送信レートセット、認証モード等のパラメータを保存しているため、外部から新たに情報を再取得する必要はない。
【0067】
次に無線LANデバイス16の接続部163は、基地局との間で接続処理を行う(S53)。また、無線LANデバイス16の接続部163は、基地局と接続したかどうか確認する(S54)。
【0068】
基地局との接続を確認した場合(S54において、YES)、無線LANデバイス16の接続通知部164は、デバイスドライバ140に対して接続通知を行う(S55)。尚、基地局との接続を確認していない場合(S54において、NO)、S53の処理に戻る。
【0069】
以上のように、無線LANデバイス16は、デバイスドライバ140のリセット要求に従いリセット処理を行い、初期化・接続要求に従い初期化・接続処理の動作を行うことができる。
【0070】
上述したように、本発明によれば、無線通信装置100において、不具合により通信が妨げられた場合に、無線LANデバイス16のリセット処理を行い、その間に無線通信装置100を機能させるアプリケーション群124を通信圏外となった場合と同様の圏外状態へ移行させる。そして無線LANデバイス16のリセット処理完了後、通信が復旧した際に、アプリケーション群124を圏外状態から圏内状態へ移行させる。
【0071】
このため、本発明によれば、例えば無線通信装置100において処理の実行中の過剰な負荷により通信が妨げられた場合にも、ユーザに不具合の発生を意識させずに、速やかに通信を復旧させることができる。
【0072】
したがって、本発明によれば、予期せぬ不具合により妨げられた通信を速やかに復旧させることができる。
【0073】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施形態の無線通信装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る無線通信装置の機能構成の概略説明する図である。
【図3】本実施形態の無線通信装置の機能構成の詳細を説明する図である。
【図4】本実施形態に係るデバイスドライバの動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る無線LANデバイスにおける動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
16 無線LANデバイス
100 無線通信装置
110 ソフトウェア
120 アプリケーションソフトウェア
121、122、123 アプリケーション
124 アプリケーション制御部
130 TCP/IPプロトコルソフトウェア
140 無線LANネットワークデバイスドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局との間で無線通信を行う無線通信手段と、前記無線通信手段を制御する無線通信制御手段と、前記無線通信を行うためのアプリケーション群を制御するアプリケーション制御手段と、を有し、
前記無線通信制御手段は、
前記無線通信手段の異常を検知する異常検知手段と、
前記異常検知手段により異常が検知されたとき、前記アプリケーション制御手段に前記基地局との通信が通信圏外であることを示す擬似的な圏外通知を通知する圏外通知手段と、
前記異常検知手段による異常が検知されたとき、前記無線通信手段にリセットをさせるためのリセット処理要求を行うリセット要求手段と、
前記無線通信手段のリセット処理が完了したとき、
前記無線通信手段に初期化・接続要求を行う初期化・接続要求手段とを有する無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信手段は、
前記リセット要求手段により前記リセット処理要求がされたとき、前記無線通信をリセットするリセット処理手段と、
前記初期化・接続要求手段による前記初期化・接続要求に含まれる初期化要求を受けて前記無線通信を行なうための設定を初期化する初期化手段と、
前記初期化・接続要求に含まれる接続要求を受けて前記基地局との間で接続処理を行う接続処理手段と、
前記接続処理手段により前記基地局と接続されたとき、
前記無線通信制御手段に前記基地局と接続したことを通知する接続通知手段とを有する請求項1に記載の無線通知装置。
【請求項3】
前記無線通信制御手段は、
前記接続通知手段により接続通知がされたとき、
前記アプリケーション制御手段に前記基地局との通信が通信圏内であることを通知する圏内通知手段とを有する請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記圏外通知手段は、
当該無線通信装置が前記基地局との通信圏内に存在する場合に、前記異常検知手段により異常が検知されたとき、
前記アプリケーション制御手段に擬似的な圏外通知を行う請求項1乃至3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
基地局との間で無線通信を行う無線通信手段と、前記無線通信を行うためのアプリケーション群を制御するアプリケーション制御手段を有する無線通信装置による無線通信制御方法において、
前記無線通信手段の異常を検知する異常検知手順と、
前記異常検知手順により異常が検知されたとき、前記アプリケーション制御手段に前記基地局との通信が通信圏外であることを示す擬似的な圏外通知を通知する圏外通知手順と、
前記異常検知手順による異常が検知されたとき、前記無線通信手段をリセットさせるためのリセット処理要求を行うリセット要求手順と、
前記無線通信手段のリセット処理が完了したとき、
前記無線通信手段に初期化・接続要求を行う初期化・接続要求手順とを有する無線通信制御方法。
【請求項6】
基地局との間で無線通信を行う無線通信手段と、前記無線通信を行うためのアプリケーション群を制御するアプリケーション制御手段を有する無線通信装置において実行される無線通信制御プログラムであって、
前記無線通信装置に、
前記無線通信手段の異常を検知する異常検知ステップと、
前記異常検知ステップにより異常が検知されたとき、前記アプリケーション制御手段に前記基地局との通信が通信圏外であることを示す擬似的な圏外通知を通知する圏外通知ステップと、
前記異常検知ステップによる異常が検知されたとき、前記無線通信手段をリセットさせるためのリセット処理要求を行うリセット要求ステップと、
前記無線通信手段のリセット処理が完了したとき、
前記無線通信手段に初期化・接続要求を行う初期化・接続要求ステップとを実行させる無線通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−35080(P2010−35080A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197288(P2008−197288)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】