説明

無線通信装置および無線通信装置における距離測定方法

【課題】通信への制約及び通信からの制約を抑えかつ精度の高い測距が行える無線通信装置および無線通信装置における距離測定方法を提供する。
【解決手段】電波の伝播遅延時間により通信相手の無線通信装置との距離を検出する方法であって、搬送波から無線通信フレームの終了を検出し、自身が送信する第1無線通信フレームの送信終了タイミングから通信相手の無線通信装置からの第2無線通信フレームの受信終了タイミングまでの第1フレーム終了間時間と、送られてくる通信相手の無線通信装置での前記第1無線通信フレームの受信終了タイミングから前記第2無線通信フレームの送信終了タイミングまでの第2フレーム終了間時間を計測する工程と、前記第1フレーム終了間時間と第2フレーム終了間時間の時間差から通信相手の無線通信装置との距離を演算する工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信装置および無線通信装置における距離測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置の設置位置を特定する方法として、無線端末装置間の距離を電波伝搬遅延時間や電波受信強度から推定し、三つ以上の距離測定(測距)結果から三点測位の要領で自身の位置を特定する方式および装置が知られている。
【0003】
電波伝播遅延時間を用いた距離測定方式(ToA方式)は、各々の装置に基準タイマを持ち、各装置間の基準タイマの時刻同期処理を実施した上で、送信−受信間の電波伝搬時間の測定を行っていた。基準タイマは、水晶発振素子にて生成されるが、同部品は生成周期の精度に個体差がある。各装置に搭載された発振部品の個体差により時間経過とともに各装置間の基準タイマにずれが生じる。そのため、測定精度を維持するために定期的に装置間のタイマのタイミングを合わせる同期処理が必要となる問題点があった。
【0004】
この問題を解決する方法として、無線端末装置間の往復通信を行い、同一装置内のタイマにて往復の送信−受信間の時間を計測することによって、装置間のタイマ同期ずれによる誤差を回避する方法が示されている(例えば下記特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−258009号公報
【特許文献2】特表2003−506930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ToAによる通信の到達時間にて測距を行う場合、従来の無線通信装置においては復調されたベースバンド信号や通信フレームを基に時間計測を行う方法が一般的であった。この場合、測距の精度はベースバンドのチップレートに依存し、帯域幅を広くしチップレートを高める必要がある。そのため、帯域幅の小さい無線方式(例えば、小電力無線方式の1つであるIEEE802.15.4)では、高精度の距離測定が難しいという問題があった。
【0007】
また、高精度測距を実現する小電力無線方式として超広帯域(UWB)無線方式が注目されている。インパルス状の無線信号を捕捉し測距を行うことで、高精度測距を可能となる。同方式は通信到達範囲が10m以下と狭いこと、屋外での使用が電波法上できないことから、適用可能な領域が制限される問題点がある。
【0008】
従来の測距方式(例えば上記特許文献1)は、前記のUWB方式を前提としたものである。また、相手無線装置からの返信が定時間後であることを前提としている。無線装置に搭載されているタイマは構成部品のバラツキによる周波数偏差を含んでおり、その個体差によって返信時間にバラツキが発生する。その個体差により、距離測定精度誤差が発生する。また、返信処理にソフトウェア処理が介在する場合、タスク切り替え時間などの処理時間を通信毎に一定に保つことは困難であり、前提としている定時間後の返信が難しくなる。
【0009】
また、上記特許文献2に示される方式は、通信の往復時間を相互の無線装置で計測し、その差分から電波の伝播遅延時間を求め距離を推定する方式がある。通信フレームを検出し、送信−受信の時間差または受信−送信の時間差を各々の無線端末装置が計測することにより任意の返信時間において電波伝搬時間をするもので、特許文献1と異なり返信時間は任意の時間で良い。但し、送信、受信の検出は復調後に実施しており、前述の帯域幅の小さい無線方式において高精度測距が難しい問題を解決するものではない。通信フレームが長くなった場合、通信時間が長くなり前述のタイマ構成部品の周波数偏差の個体差の影響が大きくなるため、測距精度を向上するためには長さのできるだけ短いフレームを使用する必要があるが、特許文献2では、フレーム長の短い測距専用メッセージを使用することで回避することができる。但し、通常のデータ通信の合間に測距通信を行うため、本来の目的であるデータ通信性能が低下する問題点がある。
【0010】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、通信への制約及び通信からの制約を抑えかつ精度の高い距離測定が行える無線通信装置および無線通信装置における距離測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、電波の伝播遅延時間により通信相手の無線通信装置との距離を検出する無線通信装置であって、搬送波から無線通信フレームの終了を検出し、自身が送信する第1無線通信フレームの送信終了タイミングから通信相手の無線通信装置からの第2無線通信フレームの受信終了タイミングまでの第1フレーム終了間時間と、送られてくる通信相手の無線通信装置での前記第1無線通信フレームの受信終了タイミングから前記第2無線通信フレームの送信終了タイミングまでの第2フレーム終了間時間を計測する時間計測部と、前記第1フレーム終了間時間と第2フレーム終了間時間の時間差から通信相手の無線通信装置との距離を演算する距離演算部と、を備えたことを特徴とする無線通信装置にある。
【0012】
また、電波の伝播遅延時間により通信相手の無線通信装置との距離を検出する無線通信装置における距離測定方法であって、搬送波から無線通信フレームの終了を検出し、自身が送信する第1無線通信フレームの送信終了タイミングから通信相手の無線通信装置からの第2無線通信フレームの受信終了タイミングまでの第1フレーム終了間時間と、送られてくる通信相手の無線通信装置での前記第1無線通信フレームの受信終了タイミングから前記第2無線通信フレームの送信終了タイミングまでの第2フレーム終了間時間を計測する工程と、前記第1フレーム終了間時間と第2フレーム終了間時間の時間差から通信相手の無線通信装置との距離を演算する工程と、を備えたことを特徴とする無線通信装置における距離測定方法にある。
【発明の効果】
【0013】
この発明では、通信への制約及び通信からの制約を抑えかつ精度の高い距離測定が行える無線通信装置および無線通信装置における距離測定方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明は、帯域幅の小さい小電力無線方式(例えばIEEE802.15.4)において高精度測距を実現する手段として、無線通信の搬送波を抽出、デジタル化し、その信号変化から通信フレームの終了を検出し、送信から受信の時間差又は受信から送信の時間差を各々の無線通信装置にて計測して距離を求める無線通信装置および無線通信装置における距離測定方法を得る。
【0015】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態における無線通信装置の機能構成を示すブロック図である。無線通信装置は例えば無線センサーノード等からなり、アンテナ1、無線通信を行う無線通信ブロック10、通信フレームを監視し時間計測から距離を求める測距ブロック20、及びソフトウェアや通信プロトコルスタックが搭載され装置全体を制御する制御ブロック30からなる。
【0016】
無線通信ブロック10は、アンテナ1で送受信される無線送信信号および受信信号を測距ブロック20に分配する分配部11、無線信号の送受信を行うRF部12、信号の変調、復調を行う変復調部13、無線通信制御を行う無線制御部14を含む。
【0017】
測距ブロック20は、無線送信信号および受信信号の搬送波の抽出を行う搬送波抽出部21、抽出された搬送波のデジタル化を行うパルス変換部23、デジタル化された信号から時間計測を行う時間計測部24、時間計測結果から通信相手の無線通信装置との距離を求める距離演算部25を含む。なお、抽出された搬送波の周波数変換を行う周波数変換部22をさらに設けてもよい。
【0018】
そして制御ブロック30は、装置全体を制御する装置制御部31を含む。
【0019】
通常の無線通信装置は、無線通信ブロック10と制御ブロック30からなる。ToA(遅延時間)による通信の到達時間にて測距を行う場合、従来の無線通信装置においては変復調部13、無線制御部14、装置制御部31などで復調されたベースバンド信号や通信フレームを基に時間計測を行う方法が一般的であった。この場合、測距の精度はベースバンドのチップレートに依存するため、通信帯域の小さい無線方式では、高精度の測位が難しいという問題があった。例えば、IEEE802.15.4の場合は、搬送波周波数2.4GHz、通信帯域(ベースバンドのチップレート)は2MHzである。よって、ベースバンドもしくは復調されたフレームにて時間計測を行った場合、チップレート(クロック周期)から500ナノ秒(2MHzの1周期時間)分のずれが生じる可能性がある。これは距離にして150mのずれに相当し、通信帯域が低い場合は高精度の測距は困難であった。
【0020】
この発明における無線通信装置では、測距ブロック10にて搬送波を抽出しその到達時間を計測することにより高精度測距を実現するものである。搬送波抽出部21で無線送信信号および受信信号の搬送波成分(IEEE802.15.4の場合は2.4GHz)の増幅、フィルタリングを行う。また、送受信信号のレベルを同一に保つためのゲインコントロールを行う。これを、パルス変換部23にてデジタル化搬送波(High、Lowの2値信号)に変換し、時間計測部24にてデジタル化搬送波の信号変化を捉えて無線通信の到達を検出する。この方式では、測距精度は無線方式の通信帯域に依存せず、時間計測部24の計測分解能に依存する。よって、通信帯域の小さいIEEE802.15.4の様な通信方式においても高精度の測距が可能となる。
【0021】
尚、搬送波抽出部21とパルス変換部23の間に周波数変換部22を設け、搬送波をより低い周波数に変換して時間計測する方法もある。2.4GHzに搬送波をそのままデジタル化した場合は、パルス変換部23および時間計測部24を高速スイッチング部品にて構成する必要がある。周波数を落とすことでスイッチング速度の遅い低コスト部品にて装置を構成することが可能となる。
【0022】
測距ブロック20は、変復調部13および無線制御部14を持たないため、通信方式の識別(例えば、同一搬送波周波数2.4GHzを使用するIEEE802.15.4とIEEE802.11b)や自身宛の通信フレームの識別、送信フレームと受信フレーム識別ができないため、時間計測の対象となる無線送受信を正しくとらえる手段が必要となる。その手段として、無線制御部14より無線通信の判別情報を時間計測部24に入力(通知)し、適切なタイミングで時間計測を行う制御が可能となる。時間計測部24に渡す判別情報は、通信方式が自身の通信方式と合致するかを示す”フレーム検知信号”、通信フレームが自ノード宛ての受信であることを示す”自ノード受信信号”、2.4GHzの搬送波の検知を示す”キャリア検知信号”の3つである。
【0023】
図2は、この発明による無線通信装置における距離計測手順を示したタイミングチャートである。距離計測を行う無線通信装置をセンサーノードA、通信を行う相手方の無線通信装置をセンサーノードBとする。これらは共に図1の構成を有する。またセンサーノードA、Bにおいて、SG1a,SG1bは無線通信(状態)、SG2a,SG2bはフレーム検知信号、SG3a,SG3bは自ノード受信信号、SG4a,SG4bはデジタル化された搬送波をそれぞれ示す。また。各フレーム中、Sはフレーム開始フラグ、Lはフレーム長を示す。
【0024】
まず通信手順について説明する。センサーノードAは、データフレームをセンサーノードBに送信する。データフレームを受信したセンサーノードBは、ACKフレームをセンサーノードAに返信する。データフレーム、ACKフレームは無線通信フレームである。
【0025】
センサーノードAにおける時間計測を説明する。データフレームの送出にて、無線通信ブロック10の無線制御部14は測距ブロック20の時間計測部24に対し、”フレーム検知信号”(SG2a)にてフレームの検出を通知する。この検出をトリガに、時間計測部24は搬送波停止を検出するためにデジタル化搬送波(SG4a)のチェックを開始する(搬送波停止検出1a)。次に、ACKフレームの受信にて無線制御部14は、時間計測部24に”フレーム検知信号”(SG2a)にてフレーム検出を、”自ノード受信信号”(SG3a)にて自身宛のフレームを受信したことを通知する。時間計測部24は、両信号を受けたことをトリガにして、搬送波停止を検出するためにデジタル化搬送波(SG4a)のチェックを開始する(搬送波停止検出2a)。そして両搬送波停止の検出の間の経過時間を計測し、センサーノードAにおけるデータフレーム送出終了からACKフレーム受信終了までの時間(フレーム終了間時間A)を求める。
【0026】
センサーノードBにおける時間計測を説明する。データフレームの受信にて、無線通信ブロック10の無線制御部14は測距ブロック20の時間計測部24に対して、”フレーム検知信号”(SG2b)にてフレーム検出を、”自ノード受信信号”(SG3b)にて自身宛のフレームを受信したことを通知する。この検出をトリガに、時間計測部24は搬送波停止を検出するためにデジタル化搬送波(SG4b)のチェックを開始する(搬送波停止検出1b)。次に、ACKフレームの送信にて無線制御部14は、時間計測部24に”フレーム検知信号”(SG2b)にてフレームの検出を通知する。時間計測部24はこの受信をトリガにして、搬送波停止を検出するためにデジタル化搬送波(SG4b)のチェックを開始する(搬送波停止検出2b)。両搬送波停止の検出の間の経過時間を計測し、センサーノードBにおけるデータフレーム受信終了からACKフレーム送出完了までの時間(フレーム終了間時間B)を求める。
【0027】
そして例えばセンサーノードBは求めたフレーム終了間時間BをセンサーノードAへ送る(測距する側にフレーム終了間時間を送る)。この際、センサーノードBの時間計測部24は、求めたフレーム終了間時間Bを無線制御部14に送り、無線制御部14が無線通信ブロック10の機能により求めたフレーム終了間時間BをセンサーノードAへ送る。
【0028】
センサーノードAでは距離演算部25が、時間計測部24からフレーム終了間時間A、無線制御部14からセンサーノードBから受けたフレーム終了間時間Bを受け、これらの差分からセンサーノードA〜B間の距離を求める。
【0029】
センサーノードA、Bの計測結果の差分(フレーム終了間時間A−フレーム終了間時間B)は、センサーノードAとセンサーノードB間の往復の電波伝搬時間を示す。この結果と単位時間当たりの電波伝搬時間(30万km/1秒)から、例えば、
距離=(30万km/1秒)×(フレーム終了間時間A−フレーム終了間時間B)/2
により、センサーノードAとセンサーノードBの間の距離を求めることができる。
【0030】
時間計測部24において、フレーム終了間時間AはセンサーノードA内のタイマ(クロック)にて、フレーム終了間時間BはセンサーノードB内のタイマ(クロック)にて計測される。計測が各センサーノードで閉じているため(独立している)、ToA方式にて一般的に問題となるセンサーノード間の高精度時刻同期(タイマ同期)は不要となる。
【0031】
この点は従来装置においても同一の効果が得られる。但し、センサーノードAとセンサーノードBに搭載されているタイマ(クロック)の周波数には水晶振動部品の個体差よる偏差が存在する。汎用の水晶発振器では部品の定格周波数に対し100〜30ppm程度、GPS用の高精度品では数ppm程度の範囲で部品間ずれが存在する。そのため、フレーム終了間時間が長くなるほど、センサーノードA、B間の前記偏差による誤差蓄積が大きくなり、時間計測誤差(距離計測誤差)となって現れる。そのため、測距に使用する通信フレーム長は、前記偏差の影響を抑えるためにできるだけ短いことが必要となる。
【0032】
従来装置においては、明示されていないがフレーム長の短い測距専用メッセージを設け、これをデータ通信の合間に送受信することでこの問題を解消することができる。但し、専用メッセージをデータ通信の間に送受信するため、データ通信の性能が低下するデメリットがある。
【0033】
一方、この発明の方式では、IEEE802.15.4にて通信フレームが最も短くかつ固定長であるACKフレームを測距に使用することで、前記偏差による誤差を抑える。また、本方式によれば、データフレーム長は測距精度に影響しないため、データフレーム長を任意に設定することができ通信性能へ影響は与えない。
【0034】
また、センサーノードBにおいてデータフレーム受信からACKフレーム送信までの時間は任意の値で良く、S/W処理などのバラツキがあっても方式上問題とならない利点がある。
【0035】
なおこの発明を、無線通信方式としてIEEE802.15.4を例に挙げて説明しているが、他の無線通信方式においても同様の方法を用いることにより、高精度測距が実現可能となる。
【0036】
図3は、この発明による無線通信装置(無線センサーノード)における搬送波の変換方式を説明するための図であり、(a)は測距ブロックの構成(周波数変換部がない場合)、(b)は各部の入出力信号波形を示す。図3の(b)において、SG1は搬送波抽出部21の入力、SG41は搬送波抽出部21の出力、SG4はパルス変換部23の出力を示す。
【0037】
測距ブロック20に入力された無線信号SG1から、搬送波抽出部21にて搬送波成分(IEEE802.15.4の場合は2.4GHz)の増幅、フィルタリングを行い、搬送波を抽出する。また、送信信号と受信信号は、信号の振幅レベルが異なるため、ゲインコントロールを行いパルス変換部23に入力する信号レベルを一定に調整した搬送波SG41にする。これをパルス変換部23にてデジタル化搬送波(High、Lowの2値信号)SG4に変換する。
【0038】
図4は、この発明による無線通信装置(無線センサーノード)の時間計測部24における搬送波停止検出方法を説明するためのタイミングチャートである。デジタル化搬送波SG4を単位遅延dで順次遅らせた信号(遅延波N−6〜N−1)を生成する。これをレンジビンクロック(SG5)で定周期(D=d×N)サンプリングする。サンプリング結果から”0”または”1”が連続した場合を搬送波停止とみなす。図4は”0”が連続した場合を搬送波停止とみなす例である。”0”連続の先頭の遅延波番号(N−6〜N−1)から、レンジビンクロックの立ち上りと搬送波停止ポイントの時間差を求めることができ、搬送波停止のタイミングを単位遅延dの時間分解能で把握することができる。
【0039】
遅延波の生成方法は、例えば、数10ピコ秒〜数ナノ秒の遅延特性を有するディレイライン素子を用い、単位遅延dを生成する方法がある。また、上記ディレイラインの代わりに、プリント基板のパターン配線の長さを調整することで、単位時間dの遅延を生成することができる。
【0040】
図5は、この発明による無線通信装置(無線センサーノード)の時間計測部24におけるフレーム終了間時間の計測方法を説明するためのタイミングチャートである。上述の図4に示す方法で、データフレーム終了を検出しレンジビンクロックSG5に対する無線通信(SG1)のフレーム終了の時間を計測する(搬送波停止計測1)。データフレーム終了検出にてレンジビンカウンタのカウントを開始する。レンジビンカウンタのカウント値(SG6)はレンジビンクロックの立ち上りエッジ毎に1カウントアップされる。
【0041】
次に、上述の図4に示す方法で、ACKフレーム終了を検出しレンジビンクロックに対するフレーム終了の時間を計測する(搬送波停止計測2)。データフレーム終了検出にてレンジビンカウンタのカウントを終了する。
【0042】
搬送波停止計測1、搬送波停止計測2、およびレンジビンカウンタのカウント値から下記の式
【0043】
フレーム終了間時間=レンジビンクロック周期D×レンジビンカウント値M
+搬送波停止計測1の計測値−搬送波停止計測2の計測値
【0044】
によりフレーム終了間時間を計測することができる。
【0045】
実施の形態2.
図6〜8は、この発明の別の実施の形態による無線通信装置(無線センサノード)における測距ブロックの制御フローを示したタイミングチャートである。各図において、距離計測を行う無線通信装置をセンサーノードA、通信を行う相手方の無線通信装置をセンサーノードBとする。またセンサーノードA、Bにおいて、SG1a,SG1bは無線通信、SG2a,SG2bはフレーム検知信号、SG3a,SG3bは自ノード受信信号、SG7a,SG7bはキャリア検知信号、SG8a,SG8bはフレームカウンタ値をそれぞれ示す。無線通信装置の機能構成は図1に示したものと基本的に同じであるが、測距中の無線送受信数をカウントするフレームカウンタ(図示省略)が例えば時間計測部24に設けられる。
【0046】
測距ブロック20は、変復調部および無線制御部を持たないため、通信方式の識別(例えば、同一搬送波周波数2.4GHzを使用するIEEE802.15.4とIEEE802.11b)や自身宛の通信フレームの識別、送信フレームと受信フレームの識別ができず、時間計測の対象となる無線送受信を正しくとらえる手段が必要となる。その手段として、無線制御部14より無線通信の判別情報を時間計測部24に通知し、適切なタイミングで時間計測を行う制御が可能となる。時間計測部24に渡す判別情報は、通信方式が自身の通信方式と合致するかを示す”フレーム検知信号”、通信フレームが自ノード宛ての受信であることを示す”自ノード受信信号”、2.4GHzの搬送波の検知を示す”キャリア検知信号”の3つである。
【0047】
図6は通常の測距処理フローを示した図である。測距中の無線送受信数をカウントするフレームカウンタを設け、測距中の送受信数が適切であったかチェックする。センサーノードAは、自身のデータフレーム送信におけるフレーム検知信号(SG2a)にてフレームカウンタを+1する。また、ACKフレームの受信におけるフレーム検知信号(SG2a)にてフレームカウンタを+1する。測距処理が終了した後、フレームカウンタを確認する。センサーノードBは、データフレーム受信におけるフレーム検知信号(SG2b)にてフレームカウンタを+1する。また、ACKフレーム送信におけるフレーム検知信号(SG2b)にてフレームカウンタを+1する。測距処理が終了した後、フレームカウンタを確認する。本例では、測距通信に阻害要因が無いため、センサーノードA、Bともフレームカウンタの値(SG8a、SG8b)は、適切(=2)となっている。
【0048】
図7は測距の阻害要因として、他のセンサーノードの通信をセンサーノードが受信したためACKフレームの送信が遅れるケースである。センサーノードは、他のセンサーノードが電波送信を行っている間は自身が電波送信を行うことができない。この様な場合、ACKフレームの送信が遅れ、フレーム終了間時間A’、B’が図6の場合に比べて増加することとなり、前述のクロック部品の個体偏差による測距誤差が大きくなる。
【0049】
図7において、センサーノードAは自身のデータフレーム送信におけるフレーム検知信号(SG2a)にてフレームカウンタを+1する。また、ACKフレームの受信におけるフレーム検知信号(SG2a)にてフレームカウンタを+1する。センサーノードBは、データフレーム受信におけるフレーム検知信号(SG2b)にてフレームカウンタを+1する。
【0050】
また、他センサーノードが発したフレーム(他フレーム1、他フレーム2)受信におけるフレーム検知信号(SG2b)にてフレームカウンタをインクリメントする。また、ACKフレーム送信におけるフレーム検知信号(SG2b)にてフレームカウンタを+1する。ここで、他フレーム1および2はセンサーノードB宛てフレームの他に、センサーノードB以外へ宛てたフレームの場合もあり得る。
【0051】
本例では、他フレーム1、2が阻害要因となり、フレーム終了間時間A’、B’が長くなり、測距誤差が増加するケースである。センサーノードBのフレームカウンタのカウント値(SG8b)が4であることから阻害要因の発生を検出することができる。この様な場合は、測距処理のリトライを行うなどのリカバリによって、より精度の良い測距結果を得ることが可能である。
【0052】
図8は測距の阻害要因として、同一周波数帯の他無線方式の通信をセンサーノードが受信した場合、もしくは他チャネルを使用したセンサーノードの通信を受信したためACKフレームの送信が遅れるケースである。
【0053】
図8において、センサーノードAは自身のデータフレーム送信におけるフレーム検知信号(SG2a)にてフレームカウンタを+1する。次に、無線受信を示すキャリア検出信号(SG7a)が検出されたがフレーム検知信号(SG2a)が発行されない場合は他の無線方式もしくは他チャネルの受信があったとみなし、フレームカウンタを+1する。また、ACKフレームの受信におけるフレーム検知信号(SG2a)にてフレームカウンタを+1する。
【0054】
センサーノードBは、データフレーム受信におけるフレーム検知信号(SG2b)にてフレームカウンタを+1する。また、センサーノードAと同様に、無線受信を示すキャリア検出信号(SG7b)が検出されたがフレーム検知信号(SG2b)が発行されない場合は他の無線方式もしくは他チャネルの受信があったとみなし、フレームカウンタを+1する。また、ACKフレーム送信におけるフレーム検知信号(SG2b)にてフレームカウンタを+1する。
【0055】
本例では、同一周波数帯の他無線方式の通信、又は他チャネルを使用したセンサーノードの通信が阻害要因となり、フレーム終了間時間A’、B’が長くなり、測距誤差が増加するケースである。センサーノードA、Bのフレームカウンタのカウント値が3であることから阻害要因の発生を検出することができる。この様な場合は、図7のケースと同様に測距処理のリトライを行うなどのリカバリによって、より精度の良い測距結果を得ることが可能である。
【0056】
この実施の形態において、判別情報は、通信方式が自身の通信方式と合致するかを示す”フレーム検知信号”、通信フレームが自ノード宛ての受信であることを示す”自ノード受信信号”、2.4GHzの搬送波の検知を示す”キャリア検知信号”の3つとしたが、使用する無線通信方式や無線制御部14の内部構成に応じて、上記以外の信号を用いて同様の効果を得る制御を行っても良い。
【0057】
なお、この発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な構成の変更が可能である。例えば図1において、無線制御部14、時間計測部24、距離演算部25、装置制御部31はそれぞれコンピュータを含むものであり、距離演算部25の機能は時間計測部24とまとめて時間計測・距離演算部としてもよく、あるいは無線制御部14又は装置制御部31に含めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の一実施の形態における無線通信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明による無線通信装置における距離計測手順を示したタイミングチャートである。
【図3】この発明による無線通信装置における搬送波の変換方式を説明するための図である。
【図4】この発明による無線通信装置の時間計測部における搬送波停止検出方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】この発明による無線通信装置の時間計測部におけるフレーム終了間時間の計測方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】この発明の別の実施の形態による無線通信装置における測距ブロックの制御フローを示したタイミングチャートである。
【図7】この発明の別の実施の形態による無線通信装置における測距ブロックの制御フローを示したタイミングチャートである。
【図8】この発明の別の実施の形態による無線通信装置における測距ブロックの制御フローを示したタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 アンテナ、10 無線通信ブロック、11 分配部、12 RF部、13 変復調部、14 無線制御部、20 測距ブロック、21 搬送波抽出部、22 周波数変換部、23 パルス変換部、24 時間計測部、25 距離演算部、30 制御ブロック、31 装置制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の伝播遅延時間により通信相手の無線通信装置との距離を検出する無線通信装置であって、
搬送波から無線通信フレームの終了を検出し、自身が送信する第1無線通信フレームの送信終了タイミングから通信相手の無線通信装置からの第2無線通信フレームの受信終了タイミングまでの第1フレーム終了間時間と、送られてくる通信相手の無線通信装置での前記第1無線通信フレームの受信終了タイミングから前記第2無線通信フレームの送信終了タイミングまでの第2フレーム終了間時間を計測する時間計測部と、
前記第1フレーム終了間時間と第2フレーム終了間時間の時間差から通信相手の無線通信装置との距離を演算する距離演算部と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
第1無線通信フレームに対する第2無線通信フレームの返信時間は任意のタイミングであることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
第1無線通信フレームの通信フレーム長が任意の長さを有し、第2無線通信フレームのフレーム長が最短のACKフレームであることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
送受信される搬送波を抽出する搬送波抽出部と、抽出した搬送波をデジタル化するパルス変換部と、を備え、時間計測部がデジタル化された搬送波から無線通信フレームの終了を検出することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
時間計測部が、デジタル化した搬送波から遅延時間の異なる複数の遅延波を生成し、これらの遅延波のサンプリング結果から搬送波の停止ポイントを計測して無線通信フレームの終了を検出することを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
時間計測部が、搬送波の停止ポイントの計測値とフレーム間のクロックカウント数からフレーム終了間時間を計測することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
時間計測部が、無線通信フレーム数をカウントするフレームカウンタを有し、カウンタ値から測距誤差要因の存在を判定することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
電波の伝播遅延時間により通信相手の無線通信装置との距離を検出する無線通信装置における距離測定方法であって、
搬送波から無線通信フレームの終了を検出し、自身が送信する第1無線通信フレームの送信終了タイミングから通信相手の無線通信装置からの第2無線通信フレームの受信終了タイミングまでの第1フレーム終了間時間と、送られてくる通信相手の無線通信装置での前記第1無線通信フレームの受信終了タイミングから前記第2無線通信フレームの送信終了タイミングまでの第2フレーム終了間時間を計測する工程と、
前記第1フレーム終了間時間と第2フレーム終了間時間の時間差から通信相手の無線通信装置との距離を演算する工程と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置における距離測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−232828(P2008−232828A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72865(P2007−72865)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】