説明

無線電話システム、無線中継器および無線端末

【課題】無線電話システムにおいて、無線端末が良好な通話を行えるようにする。
【解決手段】
無線LAN-AP2は、ビーコン信号を自装置の無線通信エリアに送信する。また、無線LANにより無線IP電話機4と通信を行なって、無線IP電話機4およびIP-PBX1間を中継する。短距離無線-AP3は、ビーコン信号を自装置の無線通信エリアに送信する。また、無線LANよりも消費電力の少ない短距離無線通信により無線IP電話機4と通信を行なって、無線IP電話機4およびIP-PBX1間を中継する。そして、無線IP電話機4は、無線LAN-AP2および短距離無線-AP3の両方からビーコン信号を受信している場合、短距離無線通信を用いて短距離無線-AP3と通信を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電話技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、携帯電話を充電器に装着することで、電力線搬送通信を行う技術が開示されている。この技術によれば、携帯電話の充電中に、携帯電話に記憶されているデータを例えばコンピュータに送信することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2000-91957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に無線LANは、Bluetooth(登録商標)などの短距離無線通信に比べて消費電力が大きく、このため、無線LAN端末のバッテリ寿命が短い。また、遮蔽物等によって無線LANの無線AP(Access Point)からの無線信号を良好に受信できない場合がある。したがって、無線LANのみを用いて無線電話システムを構築すると、状況によっては良好な通話を行えない場合がある。
【0005】
なお、上記の特許文献1は、電力線搬送通信を携帯電話に記憶されているデータ等の通信に利用することを想定している。上記の特許文献1において、電力線搬送通信を通話に利用する場合、携帯電話を充電器にセットし、いわゆるハンズフリーモードに設定して通話しなければならない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、無線電話システムにおいて、無線端末が良好な通話を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、無線端末を、有線ネットワークおよび第1の無線通信方式を用いて主装置に接続できるようにすると共に、電力線搬送通信および第2の無線通信方式を用いても主装置に接続できるようにする。そして、第2の無線通信方式に、第1の無線通信方式よりも消費電力の少ないものを用いる。
【0008】
例えば、本発明の無線電話システムは、
無線端末と、
有線ネットワークに接続された第1の無線中継器と、
電力線に接続された第2の無線中継器と、
前記有線ネットワークを介して前記第1の無線中継器に接続されると共に、前記電力線を用いた電力線搬送通信により前記第2の無線中継器に接続された主装置と、を有し、
前記第1の無線中継器は、
無線端末の確認信号を自装置の無線通信エリアに送信する第1の送信手段と、
第1の無線通信方式により前記無線端末と通信を行なって、前記無線端末および前記主装置間を中継する第1の中継手段と、を有し、
前記第2の無線中継器は、
無線端末の確認信号を自装置の無線通信エリアに送信する第2の送信手段と、
前記第1の無線通信方式よりも消費電力の少ない第2の無線通信方式により、前記無線端末と通信を行なって、前記無線端末および前記主装置間を中継する第2の中継手段と、を有し、
前記無線端末は、
前記確認信号を受信する受信手段と、
前記第1の無線通信方式および前記第2の無線通信方式のうち、前記受信手段が受信した確認信号の送信元が採用する無線方式を選択し、選択した無線通信方式を用いて当該送信元と通信を行なう無線通信手段と、を有する。
【0009】
ここで、前記無線通信手段は、前記第1の無線中継器および前記第2の無線中継器の両方から確認信号を受信している場合、前記第2の無線通信方式を用いて前記第2の無線中継器と通信を行なってもよい。
【0010】
また、前記無線端末に、バッテリ残量を検知するバッテリ残量検知手段をさらに設けてもよい。そして、前記無線通信手段は、前記第1の無線中継器および前記第2の無線中継器の両方から確認信号を受信している場合、前記バッテリ残量検知手段が検知するバッテリ残量が所定値未満ならば前記第2の無線通信方式を用いて前記第2の無線中継器と通信を行ない、該所定値未満でないならば前記第1の無線通信方式を用いて前記第1の無線中継器と通信を行なうようにしてもよい。
【0011】
また、前記無線端末に、前記第1の無線中継器の確認信号の受信レベルを検知する受信レベル検知手段をさらに設けてもよい。そして、前記無線通信手段は、前記第1の無線中継器および前記第2の無線中継器の両方から確認信号を受信している場合、前記受信レベル検知手段が検知する受信レベルが所定値未満ならば前記第2の無線通信方式を用いて前記第2の無線中継器と通信を行ない、該所定値未満でないならば前記第1の無線通信方式を用いて前記第1の無線中継器と通信を行なうようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線端末が第1の無線通信方式および第2の無線通信方式の両方を利用できる状態において、無線端末のバッテリ残量が少ない場合や、第1の無線通信方式の受信信号レベルが低い場合など、第1の無線通信方式では良好な通話を期待できない場合に、第2の無線通信方式を利用して通信を行うことができる。したがって、無線端末は、第1の無線通信方式のみを利用する場合に比べて、より長い時間、あるいはより多くの地点において良好な通話を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態が適用された無線IP電話システムの概略図である。
【0015】
図示するように、本実施形態の無線IP電話システムは、少なくとも1つの無線IP電話機4と、有線LAN5に接続された少なくとも1つの無線LAN-AP2と、電力線6に接続された少なくとも1つの短距離無線-AP3と、有線LAN5を介して無線LAN-AP2に接続されると共に、電力線6を用いた電力線搬送通信により短距離無線-AP3に接続されたIP-PBX(Private Branch Exchange)1と、を有する。
【0016】
図2はIP-PBX1の概略図である。図示するように、IP-PBX1は、有線LAN-IF(インターフェース)部11と、電力線搬送IF部12と、IPスイッチ部13と、主制御部14と、IP-PBX1の各部に電力を供給する電源部15と、を有する。
【0017】
有線LAN-IF部11は、有線LAN5を介して無線LAN-AP2と通信を行なうためのインターフェースである。有線LAN5を介して無線LAN-AP2から送られてきたIPパケットをIP-スイッチ部13へ送信する。また、IP-スイッチ部13から送られてきたIPパケットを有線LAN5を介して無線LAN-AP2へ送信する。
【0018】
電力線搬送IF部12は、電力線6を用いた電力線搬送通信を介して短距離無線-AP3と通信を行なうためのインターフェースである。電力線6を用いた電力線搬送通信を介して短距離無線-AP3から送られてきたIPパケットをIP-スイッチ部13へ送信する。また、IP-スイッチ部13から送られてきたIPパケットを電力線6を用いた電力線搬送通信を介して短距離無線-AP3へ送信する。電力線搬送IF部12は、電力線6に接続するための結合回路122と、結合回路122を介して電力線6と電力線搬送用に変調された信号を送受する電力線搬送モデム121と、を有する。結合回路122は、電力線搬送で用いられる帯域の信号のみを通過し、電力は通過しない。電力線搬送モデム121での変調には、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、FH-MMFSK(Frequency Hopping - M-ary Multilevel FSK)、DS-SS(Direct Sequence Spectrum Spread)等が用いられる。
【0019】
IPスイッチ部13は、主制御部14の指示に従い、有線LAN-IF部11および電力線搬送IF部12から送られてきたIPパケットを、有線LAN-IF部11および電力線搬送IF部12のいずれかに出力する。
【0020】
主制御部14はIP-PBX1の各部を制御する。具体的には、呼制御処理を実行して、無線IP電話機4間にIP電話の通話路を確立する。そして、確立した通話路を介して前記無線IP電話機4間でIPパケットが送受されるように、IPスイッチ部13を制御する(スイッチング)。
【0021】
図3は無線LAN-AP2の概略図である。図示するように、無線LAN-AP2は、無線LAN-IF部21と、有線LAN-IF部22と、ビーコン出力部23と、アンテナ24と、を有する。
【0022】
無線LAN-IF部21は、無線LAN(例えばIEEE802.11a)を介して無線IP電話機4と通信を行なうためのインターフェースである。無線LANを介して無線IP電話機4から送られてきたIPパケットを有線LAN-IF部22へ送信する。また、有線LAN-IF部22から送られてきたIPパケットを無線LANを介して無線IP電話機4へ送信する。
【0023】
有線LAN-IF部22は、有線LAN5を介してIP-PBX1と通信を行なうためのインターフェースである。有線LAN5を介してIP-PBX1から送られてきたIPパケットを無線LAN-IF部21へ送信する。また、無線LAN-IF部21から送られてきたIPパケットを有線LAN5を介してIP-PBX1へ送信する。
【0024】
ビーコン出力部23は、自装置の無線LAN通信エリアに届くのに必要な送信レベルを持つビーコン信号を出力する。アンテナ24は、無線LAN-IF部21が無線LAN信号を送受するために用いられる。また、ビーコン出力部23がビーコン信号を送出するために利用される。
【0025】
図4は短距離無線-AP3の概略図である。図示するように、短距離無線-AP3は、短距離無線IF部31と、電力線搬送IF部32と、ビーコン出力部33と、アンテナ34と、充電部35と、無線IP電話機4が装着可能に構成された装着部36と、を有する。
【0026】
短距離無線IF部31は、無線LANよりも消費電力の低い短距離無線通信(例えばBluetooth(登録商標))を介して無線IP電話機4と通信を行なうためのインターフェースである。短距離無線通信により無線IP電話機4から送られてきたIPパケットを電力線搬送IF部32へ送信する。また、電力線搬送IF部32から送られてきたIPパケットを短距離無線通信により無線IP電話機4へ送信する。
【0027】
電力線搬送IF部32は、電力線6を用いた電力線搬送通信を介してIP-PBX1と通信を行なうためのインターフェースである。電力線6を用いた電力線搬送通信を介してIP-PBX1から送られてきたIPパケットを短距離無線IF部31へ送信する。また、短距離無線IF部31から送られてきたIPパケットを電力線6を用いた電力線搬送通信を介してIP-PBX1へ送信する。電力線搬送IF部32は、電力線6に接続するための結合回路322と、結合回路322を介して電力線6と電力線搬送用に変調された信号を送受する電力線搬送モデム321と、を有する。結合回路322は、電力線搬送で用いられる帯域の信号のみを通過し、電力は通過しない。電力線搬送モデム321での変調には、OFDM、FH-MMFSK、DS-SS等が用いられる。
【0028】
ビーコン出力部33は、自装置の短距離無線通信エリアに届くのに必要な送信レベルを持つビーコン信号を出力する。アンテナ34は、短距離無線IF部31が短距離無線通信信号を送受するために用いられる。また、ビーコン出力部33がビーコン信号を送出するために利用される。そして、充電部35は、装着部36に装着された無線IP電話機4を充電する。
【0029】
図5は無線IP電話機4の概略図である。図示するように、無線IP電話機4は、無線LAN-IF部41と、短距離無線IF部42と、選択部43と、バッテリ残量検出部45と、バッテリ46と、充電部47と、通話処理部48と、ビーコン受信部49と、アンテナ411、421と、マイク481と、スピーカ482と、を有する。
【0030】
無線LAN-IF部41は、無線LAN(例えばIEEE802.11a)を介して無線LAN-AP2と通信を行なうためのインターフェースである。無線LANを介して無線LAN-AP2から送られてきたIPパケットを選択部43へ送信する。また、選択部43から送られてきたIPパケットを無線LANを介して無線LAN-AP2へ送信する。
【0031】
短距離無線IF部42は、無線LANよりも消費電力の低い短距離無線通信(例えばBluetooth(登録商標))を介して短距離無線-AP3と通信を行なうためのインターフェースである。短距離無線通信により短距離無線-AP3から送られてきたIPパケットを選択部43へ送信する。また、選択部43から送られてきたIPパケットを短距離無線通信により短距離無線-AP3へ送信する。
【0032】
ビーコン受信部49は、無線LAN-AP2および短距離無線-AP3から送られてくるビーコン信号を受信する。また、無線LAN-AP2から送られてくるビーコン信号の受信レベルを検出する。アンテナ411は、無線LAN-IF部41が無線LAN信号を送受するために用いられる。また、ビーコン受信部49が無線LAN-AP2から送られてくるビーコン信号を受信するために用いられる。アンテナ421は、短距離無線IF部42が短距離無線信号を送受するために用いられる。また、ビーコン受信部49が短距離無線-AP3から送られてくるビーコン信号を受信するために用いられる。
【0033】
充電部47は、無線IP電話機4を短距離無線-AP3の装着部36に装着することにより、短距離無線-AP3の充電部35より電力を受けてバッテリ46を充電する。バッテリ残量検出部45は、バッテリ46の残量を検出する。
【0034】
通話処理部48は、選択部43から送られてきたIPパケットから音声信号を抽出し、スピーカ482から出力する。また、マイク481に入力された音声信号をIPパケットに格納し、選択部43へ出力する。
【0035】
そして、選択部43は、ビーコン受信部49でのビーコン信号の受信状態およびバッテリ残量検出部45で検出したバッテリ残量の状況に基づいて、無線LAN-IF部41および短距離無線IF部42のいずれか一方を選択する。そして、選択したIF部を通話処理部48に接続する。
【0036】
図6は無線IP電話機4の選択部43の動作フローを説明するための図である。
【0037】
選択部43は、ビーコン受信部49から無線LAN-AP2および短距離無線-AP3のビーコン信号の受信状況を入手する(S601)。ビーコン受信部49が無線LAN-AP2および短距離無線-AP3のいずれからもビーコン信号を受信していない場合は(S602、S603で共にNO)、S601に戻って、ビーコン受信部49から無線LAN-AP2および短距離無線-AP3のビーコン信号の受信状況を新たに入手する。
【0038】
ビーコン受信部49が短距離無線-AP3のみからビーコン信号を受信している場合(S602でNO、S603でYES)、選択部49は、短距離無線IF部42を選択する(S608)。
【0039】
ビーコン受信部49が無線LAN-AP2のみからビーコン信号を受信している場合(S602でYES、S604でNO)、選択部49は、無線LAN-IF部41を選択する(S607)。
【0040】
そして、ビーコン受信部49が無線LAN-AP2および短距離無線-AP3の両方からビーコン信号を受信している場合(S602でYES、S604でYES)、選択部43は、選択するIF部41、42を次のようにして決定する。すなわち、選択部43は、バッテリ残量検出部45で検出されたバッテリ残量を入手する。そして、入手したバッテリ残量が所定値未満である場合(S605でNO)、無線IP電話機4は無線LANによる通話に十分なバッテリ残量を備えていない。そこで、この場合、選択部43は、短距離無線IF部42を選択する(S608)。
【0041】
一方、入手したバッテリ残量が所定値以上である場合(S605でYES)、ビーコン受信部46で受信した無線LAN-AP2のビーコン信号の受信レベルを入手する。そして、入手した受信レベルが所定値未満である場合(S606でNO)、無線IP電話機4が無線LANによる通話に十分な無線LAN信号を受信できる状況にない。そこで、この場合、選択部43は、短距離無線IF部42を選択する(S608)。
【0042】
そして、入手したバッテリ残量が所定値以上であり(S605でYES)、且つ、入手した受信レベルが所定値以上である場合(S606でYES)に、選択部43は、無線LAN-IF部41を選択する(S607)。
【0043】
以上の処理により、選択部41は、無線LAN-IF部41および短距離無線IF部42のいずれか一方を選択して、通話処理部48に接続する。なお、通話処理部48による通話中に、選択部41が無線LAN-IF部41および短距離無線IF部42の選択を切り換える場合が考えられる。この場合、既存のローミング技術やハンドオーバ技術を利用して通話を切断することなく、通信相手の無線LAN-AP2および短距離無線-AP3を切り換えることができる。
【0044】
次に、図1に示す無線IP電話システムの動作手順(接続シーケンス)について、図7〜図9を用いて説明する。
【0045】
図7は無線IP電話機4の近くに無線LAN-AP2が存在し、短距離無線-AP3が存在しない場合における無線IP電話機4の接続シーケンスを示している。
【0046】
無線LAN-AP2および短距離無線-AP3のそれぞれが送信するビーコン信号のうち、無線LAN-AP2のビーコン信号のみが無線IP電話機4で受信されている(S701、S702)。この場合、無線IP電話機4の選択部43は、無線LAN-IF部41を選択する(S703)。また、無線IP電話機4の無線LAN-IF部41は、無線LAN-AP2からビーコン信号を受信すると、SSID(Service Set ID)を伴う所属要求をこの無線LAN-AP2に送信する(S706)。
【0047】
無線LAN-AP2は、無線IP電話機4から受信した所属要求に付与されているSSIDが自装置のSSIDと一致する場合、この無線IP電話機4に対して所属成功を送信する。また、この無線IP電話機4との間に、無線LANによる無線通信区間を確立する(S707)。
【0048】
さて、無線IP電話機4において、無線LAN-IF部41は、所属成功したSSIDをIP-PBX1に送信する(S708)。IP-PBX1は、無線IP電話機4の電話番号およびIPアドレスの対応関係を管理するためのアドレス管理テーブル(不図示)を有する。IP-PBX1の主制御部14は、通知されたSSIDを通知元の無線IP電話機4のIPアドレスに対応付けて、アドレス管理テーブルに登録する(S709)。このアドレス管理テーブルは、呼制御の際に接続相手の所在を特定するために利用される。つまり、電話番号から無線IP電話機4のIPアドレスを特定することができ、さらに、特定したIPアドレスから無線IP電話機4が所属するAPを特定する。この処理により、無線IP電話機4は、最寄りの無線LAN-AP2を介して無線IP電話システムを利用することが可能となる。
【0049】
図8は無線IP電話機4の近くに無線LAN-AP2および短距離無線-AP3が存在する場合であって、無線IP電話機4のバッテリ残量が少ない場合における無線IP電話機4の接続シーケンスを示している。
【0050】
無線LAN-AP2および短距離無線-AP3のそれぞれが送信するビーコン信号が無線IP電話機4で受信されている(S801、S802)。この場合、無線IP電話機4の選択部43はバッテリ残量検出部45で検出されたバッテリ残量を調べ、バッテリ残量が所定値未満ならば(S803)、短距離無線IF部42を選択する(S804)。また、無線IP電話機4の短距離無線IF部42は、短距離無線-AP3からビーコン信号を受信すると、SSIDを伴う所属要求をこの短距離無線-AP3に送信する(S806)。
【0051】
短距離無線-AP3は、無線IP電話機4から受信した所属要求に付与されているSSIDが自装置のSSIDと一致する場合、この無線IP電話機4に対して所属成功を送信する。また、この無線IP電話機4との間に、短距離無線通信による無線通信区間を確立する(S807)。
【0052】
さて、無線IP電話機4において、短距離無線IF部42は、所属成功したSSIDをIP-PBX1に送信する(S808)。IP-PBX1の主制御部14は、通知されたSSIDを通知元の無線IP電話機4のIPアドレスに対応付けて、無線IP電話機4の電話番号およびIPアドレスの対応関係を管理するためのアドレス管理テーブル(不図示)に登録する(S809)。このアドレス管理テーブルは、呼制御の際に接続相手の所在を特定するために利用される。つまり、電話番号から無線IP電話機4のIPアドレスを特定することができ、さらに、特定したIPアドレスから無線IP電話機4が所属するAPを特定する。この処理により、無線IP電話機4は、短距離無線-AP3を介して無線IP電話システムを利用することが可能となる。
【0053】
図9は無線IP電話機4の近くに無線LAN-AP2および短距離無線-AP3が存在する場合であって、無線IP電話機4のバッテリ残量が十分あるが、無線LAN-AP2のビーコン信号の受信レベルが低い場合における無線IP電話機4の接続シーケンスを示している。
【0054】
無線LAN-AP2および短距離無線-AP3のそれぞれが送信するビーコン信号が無線IP電話機4で受信されている(S901、S902)。この場合、無線IP電話機4の選択部43は、バッテリ残量検出部45で検出されたバッテリ残量を調べ、バッテリ残量が所定値以上ならば(S903)、さらに、ビーコン受信部49で検出された無線LAN-AP2のビーコン信号の受信レベルを調べる。そして、該受信レベルが所定値未満ならば(S904)、短距離無線IF部42を選択する(S905)。また、無線IP電話機4の短距離無線-IF部42は、短距離無線-AP3からビーコン信号を受信すると、SSIDを伴う所属要求をこの短距離無線-AP3に送信する(S906)。
【0055】
短距離無線-AP3は、無線IP電話機4から受信した所属要求に付与されているSSIDが自装置のSSIDと一致する場合、この無線IP電話機4に対して所属成功を送信する。また、この無線IP電話機4との間に、短距離無線通信による無線通信区間を確立する(S907)。
【0056】
さて、無線IP電話機4において、短距離無線IF部42は、所属成功したSSIDをIP-PBX1に送信する(S908)。IP-PBX1の主制御部14は、通知されたSSIDを通知元の無線IP電話機4のIPアドレスに対応付けて、無線IP電話機4の電話番号およびIPアドレスの対応関係を管理するためのアドレス管理テーブル(不図示)に登録する(S909)。このアドレス管理テーブルは、呼制御の際に接続相手の所在を特定するために利用される。つまり、電話番号から無線IP電話機4のIPアドレスを特定することができ、さらに、特定したIPアドレスから無線IP電話機4が所属するAPを特定する。この処理により、無線IP電話機4は、短距離無線-AP3を介して無線IP電話システムを利用することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0058】
本実施形態によれば、無線IP電話機4が無線LANおよび短距離無線通信の両方が利用できる状態において、無線IP電話機4のバッテリ残量が少ない場合や、無線LANの受信信号レベルが低い場合など、無線LANでは良好な通話を期待できない場合に、短距離無線通信を利用して通信を行うことができる。したがって、無線IP電話機4は、無線LANのみを利用する場合に比べて、より長い時間、あるいはより多くの地点において良好な通話を行うことができる。
【0059】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0060】
例えば、上記の実施形態では、無線IP電話機4が無線LANおよび短距離無線通信の両方を利用できる状態の場合において、無線IP電話機4のバッテリ残量、無線LANの受信信号レベルの順番で調査を行っている。しかし、本発明はこれに限定されない。また、無線IP電話機4のバッテリ残量、無線LANの受信信号レベルの両方を調査する必要はなく、いずれか一方のみを調査してもいよい。あるいは、両方とも調査しないようにしてもよい。両方とも調査しない場合は、無線IP電話機4が無線LANおよび短距離無線通信の両方を利用できる状態の場合に、強制的に短距離無線通信を利用するようにしてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、APの無線通信エリアを無線端末(無線IP電話機4)に通知するための信号(無線端末の確認信号)として、ビーコン信号を用いているが、本発明はこれに限定されない。また、有線LAN5に代えて、その他の有線ネットワークを利用してもよい。さらに、無線LANに代えて、その他の長距離無線通信方式による無線ネットワークを利用してもよい。
【0062】
また、上記の実施形態では、無線LANおよび短距離無線通信を利用する場合を例にとり説明したが、第1の無線通信方式および第1の無線通信方式よりも消費電力の少ない第2の無線通信方式の両方を利用できるものに、本発明は広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は本発明の実施形態が適用された無線IP電話システムの概略図である。
【図2】図2はIP-PBX1の概略図である。
【図3】図3は無線LAN-AP2の概略図である。
【図4】図4は短距離無線-AP3の概略図である。
【図5】図5は無線IP電話機4の概略図である。
【図6】図6は無線IP電話機4の選択部43の動作フローの説明図である。
【図7】図7は無線IP電話機4の近くに無線LAN-AP2が存在し、短距離無線-AP3が存在しない場合における無線IP電話機4の接続シーケンスを示す図である。
【図8】図8は無線IP電話機4の近くに無線LAN-AP2および短距離無線-AP3が存在する場合であって、無線IP電話機4のバッテリ残量が少ない場合における無線IP電話機4の接続シーケンスを示す図である。
【図9】図9は無線IP電話機4の近くに無線LAN-AP2および短距離無線-AP3が存在する場合であって、無線IP電話機4のバッテリ残量が十分あるが、無線LAN-AP2のビーコン信号の受信レベルが低い場合における無線IP電話機4の接続シーケンスを示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1…IP-PBX、2…無線LAN-AP、3…短距離無線-AP、4…無線IP電話機、5…有線LAN、6…電力線、11…有線LAN-IF部、12…電力線搬送IF部、13…IPスイッチ部、14…主制御部、15…電源部、121…電力線搬送モデム、122…結合回路、21…無線LAN-IF部、22…有線LAN-IF部、23…ビーコン出力部、31…短距離無線IF部、32…電力線搬送IF部、321…電力船搬送モデム、322…結合回路、33…ビーコン出力部、35…充電部、36…装着部、41…無線LAN-IF部、42…短距離無線IF部、43…選択部、45…バッテリ残量検出部、46…バッテリ、47…充電部、48…通話処理部、481…マイク、482…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電話システムであって、
無線端末と、
有線ネットワークに接続された第1の無線中継器と、
電力線に接続された第2の無線中継器と、
前記有線ネットワークを介して前記第1の無線中継器に接続されると共に、前記電力線を用いた電力線搬送通信により前記第2の無線中継器に接続された主装置と、を有し、
前記第1の無線中継器は、
無線端末の確認信号を自装置の無線通信エリアに送信する第1の送信手段と、
第1の無線通信方式により前記無線端末と通信を行なって、前記無線端末および前記主装置間を中継する第1の中継手段と、を有し、
前記第2の無線中継器は、
無線端末の確認信号を自装置の無線通信エリアに送信する第2の送信手段と、
前記第1の無線通信方式よりも消費電力の少ない第2の無線通信方式により、前記無線端末と通信を行なって、前記無線端末および前記主装置間を中継する第2の中継手段と、を有し、
前記無線端末は、
前記確認信号を受信する受信手段と、
前記第1の無線通信方式および前記第2の無線通信方式のうち、前記受信手段が受信した確認信号の送信元が採用する無線方式を選択し、選択した無線通信方式を用いて当該送信元と通信を行なう無線通信手段と、を有すること
を特徴とする無線電話システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線電話システムであって、
前記無線通信手段は、
前記第1の無線中継器および前記第2の無線中継器の両方から確認信号を受信している場合、前記第2の無線通信方式を用いて前記第2の無線中継器と通信を行なうこと
を特徴とする無線電話システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線電話システムであって、
前記無線端末は、
バッテリ残量を検知するバッテリ残量検知手段をさらに有し、
前記無縁通信手段は、
前記第1の無線中継器および前記第2の無線中継器の両方から確認信号を受信している場合、前記バッテリ残量検知手段が検知するバッテリ残量が所定値未満ならば前記第2の無線通信方式を用いて前記第2の無線中継器と通信を行ない、該所定値未満でないならば前記第1の無線通信方式を用いて前記第1の無線中継器と通信を行なうこと
を特徴とする無線電話システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線電話システムであって、
前記無線端末は、
前記第1の無線中継器の確認信号の受信レベルを検知する受信レベル検知手段をさらに有し、
前記無縁通信手段は、
前記第1の無線中継器および前記第2の無線中継器の両方から確認信号を受信している場合、前記受信レベル検知手段が検知する受信レベルが所定値未満ならば前記第2の無線通信方式を用いて前記第2の無線中継器と通信を行ない、該所定値未満でないならば前記第1の無線通信方式を用いて前記第1の無線中継器と通信を行なうこと
を特徴とする無線電話システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の無線電話システムであって、
前記第1の無線通信方式は、長距離無線通信方式であり、
前記第2の無線通信方式は、短距離無線通信方式であること
を特徴とする無線電話システム。
【請求項6】
電力線を用いた電力線搬送を行う電力線搬送手段と、
無線端末と無線通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段を介して前記無線端末より受信した信号を前記電力線搬送手段を用いて前記電力線へ送信し、前記電力線搬送手段により前記電力線から受信した信号を前記無線通信手段を介して前記無線通信端末へ送信する中継手段と、
無線端末の確認信号を自装置の無線通信エリアに送信する送信手段と、を有すること
を特徴とする無線中継器。
【請求項7】
請求項6に記載の無線中継器であって、
前記無線端末を装着するための装着部と、
前記装着部に装着された前記無線端末を充電する充電手段と、をさらに有すること
を特徴とする無線中継器。
【請求項8】
第1の無線通信方式により第1の無線中継器と通信を行なう第1の無線通信手段と、
前記第1の無線通信方式よりも消費電力の少ない第2の無線通信方式により、第2の無線中継器と通信を行なう第2の無線通信手段と、
無線端末の確認信号を受信する受信手段と、
前記第1の無線通信手段および前記第2の無線通信手段のうち、前記受信手段が受信した確認信号の送信元と通信を行なう無線通信手段を選択し、選択した無線通信手段を用いて当該送信元と通信を行なう通信制御手段と、を有すること
を特徴とする無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−108862(P2006−108862A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290028(P2004−290028)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】