説明

無線電話装置

【課題】公衆用セルラー電話機能と自営用コードレス電話機能を有する無線電話装置において、公衆モードと自営モードの切り替えと、公衆用電話番号に対する着信の転送設定および転送解除を自動で行うことが可能な制御方法を提供する。
【解決手段】公衆用セルラー方式通信網において通信を行う携帯電話手段と、自営用通信網において通信を行うコードレス電話手段と、建物への入館および退出を管理する非接触ICタグ部110と、非接触ICタグ部との通信を行う非接触ICタグインタフェース部109と、公衆モードと自営モードの切り替えを行う通信方式制御部107とを備え、入館管理部114と非接触ICタグ部110の間で入館処理を行ったとき通信制御部107において公衆モードから自営モードへ切り替えるとともに、公衆用基地局111を経由して公衆用交換局112に、自営モードの電話番号への転送設定を行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電話装置に関し、さらに詳しくは1台で公衆用セルラー電話機能と自営用コードレス電話機能の両機能を有する無線電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線電話装置として、待ち受けエリアを自動で切り替え、さらにその自動切り替えをトリガとして着信転送の設定および解除を行うように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この無線電話装置によれば、パーソナルハンディホンシステム(以下、PHSと略す)電話装置が自営網の通信可能領域に位置した場合、PHS電話装置から自動で自営網交換局には転送解除要求を行い、同時に公衆網交換局には公衆網交換局のネットワークを介して、公衆網の電話番号に対する自営網の電話番号への転送登録要求が行われる。逆にPHS電話装置が公衆網の通信可能領域に位置した場合、PHS電話装置から自動で公衆網交換局には転送解除要求を行い、同時に自営網交換局には公衆網交換局のネットワークを介して、自営網の電話番号に対する公衆網の電話番号への転送登録要求が行われる。以上の着信転送の設定と解除の操作により、PHS電話装置の存在位置を意識することなく、自営モードと公衆モードの2つの電話番号のどちらの電話番号でも着信することが可能となる。
【0003】
また、自営網エリアの出入り口付近に無線タグを設け、無線電話装置に接続または内蔵されている無線タグリーダが前記無線タグから入館および退館を示すデータを受信し、前記無線電話装置に自動的に内線番号を割り付けおよび取り消すように構成されたものがある(例えば、特許文献2参照)。この無線電話装置によれば、公衆網に加入登録されている移動局が、事前に加入者登録されていない自営網のサービスエリア内に入ったことを、上記自営網の構内交換機が知ったとき、上記構内交換機が、上記自営網を構成する無線基地局の少なくとも一つを加入者登録実施可能な状態に移行させるとともに、上記公衆網を介して加入者登録に必要な情報を上記移動局に対して送信し、上記情報を受信した上記移動局が、上記加入者登録実施可能な状態に移行した上記無線基地局を介して、上記自営網へ加入者登録を行う。このため、公衆網と自営網の切り替えが確実にでき、自営網内にいるときだけ、公衆網を介さずに自営網の内線通話が可能となる。
【特許文献1】特開平10−70765号公報(第3ページ)
【特許文献2】特開2001−320755号公報(第5ページ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の特許文献1記載の無線電話装置は、公衆モードと自営モードでPHS方式という同じ通信方式を用いる必要があるという問題があった。また、上記従来の特許文献1記載の無線電話装置は、自営網と公衆網の両方の電波が届く位置では、自動切り替えのタイミング次第で、待ち受けエリアの公衆網から自営網への切り替えが必ずしも行われない。更に、上記従来の無線電話装置は、その位置が自営網エリアか公衆網エリアかを判断する為に、常に、公衆網と自営網の両方の電波を受信しに行かなければならず、電池の消費が早いという問題があった。
【0005】
また、上記従来の特許文献2記載の無線電話装置は、公衆用交換局に対しての着信転送設定および解除する手段がなく、少なくとも、上記無線電話装置が内線番号を割り付けられた状況下において、公衆モードの電話番号を着信する方法が示されていないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を踏まえてなされたものであり、無線電話装置に非接触ICタグ部を設け、非接触ICタグ部からの入館および退出を示す信号により公衆モードと自営モードの切り替えを確実に行うと共に、公衆用交換局に対して自営モードの電話番号への転送設定および転送解除設定を行うことのできる無線電話装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線電話装置は、公衆用セルラー方式通信網において通信を行う携帯電話手段と、自営用通信網において通信を行うコードレス電話手段と、建物への入館および退出を管理する非接触ICタグ部と、非接触ICタグ部との通信を行う非接触ICタグインタフェース部と、公衆モードと自営モードの切り替えを行う通信方式制御部とを備えた構成を有する。
【0008】
この構成により、非接触ICタグ部からの建物への入館および退出を示す信号により公衆モードと自営モードの切り替えをおこなうことができる。
【0009】
また、本発明の無線電話装置は、上記非接触ICタグ部より建物への入館を示す信号を受信することにより、上記通信方式制御部において通信方式を公衆モードから自営モードへ切り替えると共に、公衆用交換局に対して自営モードの電話番号への転送設定を行うという構成を有する。
【0010】
この構成により、公衆モードと自営モードにおいて異なる通信方式をとる場合においても、自営モードを運用する建物への入館処理と同時に、公衆モードから自営モードへの切り替えと、公衆モードでの電話番号に対する着信を自営モードの電話番号に転送する設定を自動的に行うことができる。
【0011】
また、本発明の無線電話装置は、上記非接触ICタグ部より建物からの退出を示す信号を受信することにより、上記通信方式制御部において通信方式を自営モードから公衆モードへ切り替えると共に、公衆用交換局に対して自営モードの電話番号への転送解除設定を行うという構成を有する。
【0012】
この構成により、公衆モードと自営モードにおいて異なる通信方式をとる場合においても、自営モードを運用する建物からの退出処理と同時に、自営モードから公衆モードへの切り替えと、公衆モードでの電話番号に対する着信を自営モードの電話番号に転送する設定の解除を自動的に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無線電話装置は、公衆モードと自営モードで通信方式が異なる場合においても、自営モードを運用する建物からの退出処理と同時に、自営モードから公衆モードへの切り替えと、公衆モードでの電話番号に対する着信を自営モードの電話番号に転送する設定の解除を自動的に行うことができる。更に、本発明の上記無線端末装置は、非接触ICタグからの入館および退出を示す信号を受信するため、自営網エリアに入館および自営網エリアから退出した際に、待ち受けエリアを確実に公衆網から自営網へ、および自営網から公衆網へ切り替えを行うことができる。また、本発明の上記無線電話装置は、確実に待ち受けエリアが自営網と公衆網で切り替えが行われるので、同時に自営網と公衆網の両方の基地局から発せられる電波を受信しにいく必要はなく、常に自営網か公衆網のどちらかの電波を受信しにいけばよい。このため、電池の消費量が少なくてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態における無線電話装置を用いた通信システムの概略ブロック図である。本発明の実施の形態における無線電話装置100は、図1に示すように、マイク101からの信号を制御する音声入力部102と、スピーカ103への信号を制御する音声出力部104と、表示部105と、操作部106と、公衆モードと自営モードの切り替えを行う通信方式制御部107と、無線部108と、非接触ICタグ部110と、非接触ICタグ部110と前記通信方式制御部107とを接続する非接触ICタグインタフェース部109とを備えている。
【0016】
図1において、111は公衆用基地局である。公衆用基地局111は、公衆用交換局112に繋がっていて公衆用セルラー方式に基づく通信方式の無線通信を行う。113は自営用基地局であり、自営用コードレス方式に基づく通信方式の無線通信を行う。無線電話装置100の無線部108は、通信方式制御部107の制御の下、公衆用セルラー方式または自営用コードレス方式に基づく通信方式のいずれかを選択的に切りかえて無線通信を行うよう構成している。
【0017】
図1で、114は入館管理部であり、入館処理の情報または退出処理の情報を非接触ICタグに送信する。無線電話装置100の非接触ICタグ部110は、入館管理部114から入館処理の情報または退出処理の情報を受信する。
【0018】
また、通信方式制御部107は、非接触ICタグ部110と入館管理部114において行われた入館処理および退出処理の情報を前記非接触ICタグインタフェース部109を通じて受けとる。ここで入館処理とは、非接触ICタグ部110が入館管理部114に入館の許可を求め、入館管理部114が入館を許可したことをいう。また、ここで退出処理とは、非接触ICタグ部110が入館管理部114に退出の許可を求め、入管管理部114が退出を許可したことをいう。
【0019】
通信方式制御部107は、入館処理の情報を受けとると公衆モードから自営モードに通信方式を切り替え、退出処理の情報を受けとると自営モードから公衆モードに通信方式を切り替える。
【0020】
次に、本発明の実施の形態における無線電話装置100について、その動作を、図2および図3を用いて詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態における無線電話装置の公衆モードから自営モードへの切り替え動作を示すフローチャートである。
【0021】
図2に示すように、非接触ICタグ部110と入館管理部114において自営モードを運用する建物への入館処理をすると(S201)、非接触ICタグ部110から非接触ICタグインタフェース部109を経由して通信方式制御部107へ入館通知が行われ(S202)、通信方式制御部107は現在の動作モードが公衆モードか自営モードかを判断する(S203)。現在の動作モードが公衆モードの場合(S203のYES)、通信方式制御部107から公衆用基地局111を経由して前記公衆用交換局112に公衆用電話番号への着信を自営用電話番号へ転送する転送設定を送信し(S204)、動作モードを自営モードに切り替え(S205)、自営用基地局113へ位置登録する(S206)。現在の動作モードが公衆モードでない場合(S203のNO)、処理を終了する。
【0022】
このように、本発明の実施の形態における無線電話装置によれば、自営モードを運用する建物への入館処理が行われると、公衆モードでの電話番号に対する着信を自営モードの電話番号に転送する設定と、公衆モードから自営モードへの切り替えを自動的に行うことができる。
【0023】
なお、本発明の実施の形態では、現在の動作モードが公衆モードでない、つまり自営モードである場合(S203のNO)は処理を終了しているが、動作モードを公衆モードに切り替え、公衆用基地局111へ位置登録を行った後に、前記現在の動作モードが公衆モードの場合(S203のYES)と同様の処理を行うようにしても良く、このようにすれば、動作モードが自営モードにあって、公衆用交換局112に対して転送設定が行われていない場合に入館処理を行った場合においても、公衆モードでの電話番号に対する着信を自営モードの電話番号に転送する設定を自動的に行うことができる。
【0024】
図3は、本実施の形態における無線電話装置の自営モードから公衆モードへの切り替え動作を示すフローチャートである。図3に示すように、非接触ICタグ部110と入館管理部114において自営モードを運用する建物からの退出処理をすると(S301)、非接触ICタグ部110から非接触ICタグインタフェース部109を経由して通信方式制御部107へ退出通知が行われ(S302)、通信方式制御部107は現在の動作モードが公衆モードか自営モードかを判断する(S303)。現在の動作モードが自営モードの場合(S303のYES)、動作モードを公衆モードに切り替え(S304)、公衆基地局111へ位置登録し(S305)、通信方式制御部107から公衆用交換局112に公衆用電話番号への着信を自営用電話番号へ転送することを解除する転送解除設定を送信する(S306)。現在の動作モードが自営モードでない場合(S303のNO)、処理を終了する。
【0025】
このように、本実施の形態における無線電話装置によれば、自営モードを運用する建物からの退出処理が行われると、自営モードから公衆モードへの切り替えと、公衆モードでの電話番号に対する着信を自営モードの電話番号に転送することの解除設定を自動的に行うことができる。
【0026】
なお、本実施の形態では、現在の動作モードが自営モードでない、つまり公衆モードである場合(S303のNO)は処理を終了しているが、前記現在の動作モードが自営モードの場合(S303のYES)と同様に通信方式制御部107から公衆用交換局112に公衆用電話番号への着信を自営用電話番号へ転送することを解除する転送解除設定を送信する処理を行うようにしても良く、このようにすれば、動作モードが公衆モードにあって、公衆用交換局112に対して転送設定が行われている場合に退出処理を行った場合においても、公衆モードでの電話番号に対する着信を自営モードの電話番号に転送する設定の解除を自動的に行うことができる。
【0027】
以上説明したように、本発明は、公衆用セルラー方式通信網において通信を行う携帯電話手段と、自営用通信網において通信を行うコードレス電話手段と、建物への入館および退出を管理する非接触ICタグ部と、非接触ICタグ部との通信を行う非接触ICタグインタフェース部と、公衆モードと自営モードの切り替えを行う通信方式制御部とを備えたものであり、非接触ICタグ部からの信号により公衆モードと自営モードの切り替えをおこなうことができ、公衆モードと自営モードの切り替え忘れの防止、公衆モードの電話番号に対する着信を自営モードの電話番号へ転送する設定および転送解除設定の設定忘れ防止、および設定操作の簡略化などに有用である。更に、電池消費量が少なく、資源の有効利用ができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、公衆用セルラー通信網と自営通信網の両方に無線通信可能で、建物への入退出に応じて通信方式を切り替えて使用する無線電話装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1における無線電話装置を用いた通信システムの概略ブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における無線電話装置の公衆モードから自営モードへの切り替え動作を示すフローチャート
【図3】本発明の実施の形態1における無線電話装置の自営モードから公衆モードへの切り替え動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0030】
100 無線電話装置
101 マイク
102 音声入力部
103 スピーカ
104 音声出力部
105 表示部
106 操作部
107 通信方式制御部
108 無線部
109 非接触ICタグインタフェース部
110 非接触ICタグ部
111 公衆用基地局
112 公衆用交換局
113 自営用基地局
114 入館管理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
公衆用セルラー方式通信網において通信を行う携帯電話手段と、自営用通信網において通信を行うコードレス電話手段と、建物への入館および退出を管理する非接触ICタグ部と、非接触ICタグ部との通信を行う非接触ICタグインタフェース部と、公衆モードと自営モードの切り替えを行う通信方式制御部とを備えた無線電話装置。
【請求項2】
前記非接触ICタグ部より建物への入館を示す信号を受信することにより、前記通信方式制御部において通信方式を公衆モードから自営モードへ切り替えると共に、公衆用交換局に対して自営モードの電話番号への転送設定を行うことを特徴とする請求項1記載の無線電話装置。
【請求項3】
前記非接触ICタグ部より建物からの退出を示す信号を受信することにより、前記通信方式制御部において通信方式を自営モードから公衆モードへ切り替えると共に、公衆用交換局に対して自営モードの電話番号への転送解除設定を行うことを特徴とする請求項1記載の無線電話装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−129135(P2006−129135A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315470(P2004−315470)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】