説明

無電解ニッケル−パラジウム−金めっき方法、めっき処理物、プリント配線板、インターポーザ、および半導体装置

【課題】プリント配線板の端子部分、他の電子部品の端子部分、或いは、その他の金属微細パターン付き樹脂基材などのめっき処理対象面に、無電解ニッケル−パラジウム−金めっきを行う際に、下地である樹脂表面の金属異常析出が抑えられ、めっき処理面の品質に優れる方法を提供する。さらに本発明は、めっき処理面の品質に優れためっき処理物、特に、インターポーザ、マザーボード、及び、それらを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】プリント配線板の端子部分などの被処理部分に金属微細パターン付き基材の無電解ニッケル−パラジウム−金めっきを行う方法であって、パラジウム触媒付与工程の後、無電解パラジウムめっき処理を行う前の任意の段階において、pH10〜14の溶液による処理およびプラズマ処理よりなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解ニッケル−パラジウム−金めっき方法、当該方法を用いて製造しためっき処理物、特にマザーボードやインターポーザ等のプリント配線板、および当該プリント配線板を用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のプリント配線板としては、マザーボード及びインターポーザが知られている。インターポーザは、マザーボードと同様のプリント配線板であるが、半導体素子(ベアチップ)又は半導体パッケージとマザーボードの間に介在し、マザーボード上に搭載される。
インターポーザは、マザーボードと同様に、半導体パッケージを実装する基板として用いても良いが、マザーボードと異なる特有の使用方法としては、パッケージ基板又はモジュール基板として用いられる。
【0003】
パッケージ基板とは、半導体パッケージの基板としてインターポーザが用いられるという意味である。半導体パッケージには、半導体素子をリードフレーム上に搭載し、両者をワイアボンディングで接続し、樹脂で封止するタイプと、インターポーザをパッケージ基板として用い、半導体素子を当該インターポーザ上に搭載し、両者をワイアボンディング等の方法で接続し、樹脂で封止するタイプとがある。
【0004】
インターポーザをパッケージ基板として用いる場合、半導体パッケージのマザーボード接続側平面(インターポーザの下面側)に、マザーボードに対する接続端子を配置することができる。また、インターポーザの半導体素子接続側からマザーボード接続側へ配線寸法を段階的に拡大し、半導体素子とマザーボードの間の配線寸法ギャップを埋めることができる。
現在、半導体素子内部回路のラインアンドスペースはサブミクロンレベルに到達しており、これに接続するインターポーザの半導体素子接続側最外層回路の接続端子は、ラインアンドスペース(L/S)が数十μm/数十μm程度とされる。一方、インターポーザのマザーボード接続側最外層回路の接続端子のラインアンドスペース(L/S)は、数百μm/数百μm程度とされ、これに対するマザーボードのインターポーザ接続側最外層回路の接続端子のラインアンドスペース(L/S)も、数百μm/数百μm程度とされる。
【0005】
一方、モジュール基板とは、複数の半導体パッケージ又はパッケージ化する前の半導体素子を単一モジュール内に搭載する基板として用いられるという意味である。
このような技術動向に伴い、高密度配線化及び回路複雑化の更なる進展に対応するために、多層プリント配線板のインターポーザも用いられる。
【0006】
インターポーザ、マザーボード等のプリント配線板上の最外層回路の端子部分は、半田接合、ワイヤボンディング等の接続信頼性を確保する目的で金めっきが行われる。金めっきの代表的な方法の一つとして、無電解ニッケル−パラジウム−金めっき法(Electroless Nickel Electroless Palladium Electroless Gold)がある。この方法では、端子部分に、クリーナー等の適宜の方法により前処理を行った後、パラジウム触媒を付与し、その後さらに、無電解ニッケルめっき処理、無電解パラジウムめっき処理、及び、無電解金めっき処理を順次行う。
ENEPIG法(Electroless Nickel Electroless Palladium Immersion Gold)は、無電解ニッケル−パラジウム−金めっき法の無電解金めっき処理段階において、置換金めっき処理(Immersion Gold)を行う(特許文献1)。
下地めっきとしての無電解ニッケルめっき皮膜と、無電解金めっき皮膜の間に無電解パラジウムめっき皮膜を設けることによって、端子部分における導体材料の拡散防止性、耐食性が向上する。下地ニッケルめっき皮膜の拡散防止を図ることができるのでAu−Au接合の信頼性が向上し、また金によるニッケル酸化を防止することができるので熱負荷の大きい鉛フリー半田接合の信頼性も向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−144188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、プリント配線板の最外層回路の端子部分に無電解ニッケル−パラジウム−金めっきを行うと、無電解パラジウムめっき処理段階において、導体回路を支持している絶縁膜または基板の樹脂表面の端子部分周囲にパラジウム金属が異常析出し、めっき処理面の品質を落とし、甚だしい場合には、隣接する端子間でショートを起こす原因となることを発見した。
特に、パッケージ基板用インタポーザの半導体素子接続側最外層回路の接続端子は、ラインアンドスペース(L/S)が数十μm/数十μm程度と狭いため、ショートを起こす可能性が高い。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、プリント配線板の端子部分、或いはプリント配線板以外の電子部品の導体回路表面、その他にも樹脂基材上に支持された金属微細パターンの表面をめっき処理の対象とし、そのようなめっき処理対象面に無電解ニッケル−パラジウム−金めっきを行う際に、下地である樹脂表面における金属の異常析出が抑えられ、めっき処理面の品質に優れる無電解ニッケル−パラジウム−金めっき方法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、微細金属パターンの表面に無電解ニッケル−パラジウム−金めっき皮膜を有し、めっき処理面の品質に優れためっき処理物、特に、インターポーザ、マザーボード、及び、これらインターポーザ又はマザーボードを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のめっき方法は、樹脂からなる支持表面上に金属微細パターンを設けてなる金属微細パターン付き基材の当該金属微細パターンにパラジウム触媒を付与した後、無電解ニッケル−パラジウム−金めっきを行う方法において、
前記金属微細パターン付き基材に対し、パラジウム触媒付与工程の後、無電解パラジウムめっき処理を行う前の任意の段階において、pH10〜14の溶液による処理およびプラズマ処理よりなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理を行うことを特徴とする、ニッケル−パラジウム−金無電解めっき方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のめっき方法を行うことによって、端子周囲の樹脂表面における金属の異常析出を抑え、端子表面にはNi−Pd−Auの良質な皮膜を形成することができる。よって、品質の良いめっき処理面、品質の良いめっき処理物が得られる。
本発明のめっき方法は、マザーボード、インターポーザ等のプリント配線板の最外層回路の端子部分に好適に適用され、特に、インターポーザの端子部分に好適に適用される。本発明のめっき方法により端子部分にめっきを施したプリント配線板に半導体素子又は半導体パッケージを搭載し、接続信頼性の高い半導体装置が得られる。
本発明のめっき方法は、プリント配線板以外の電子部品の導体回路表面に対しても好適に適用され、さらには、本発明のめっき方法は、電子部品以外の様々な分野において、樹脂基材上に支持された金属微細パターンをめっきすることによって、品質の良いめっき面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】半導体装置の実装階層構造の一例を模式的に示す図である。
【図2】インターボーザを用いた半導体パッケージの一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明のめっき方法の手順を示すブロック図である。
【図4】実施例のテストピース上に形成した櫛歯パターン状銅回路。
【図5】比較例1で得ためっき処理物の端子部分の電子顕微鏡写真。
【図6】実施例1で得ためっき処理物の端子部分の電子顕微鏡写真。
【図7】実施例2で得ためっき処理物の端子部分の電子顕微鏡写真。
【図8】実施例3で得ためっき処理物の端子部分の電子顕微鏡写真。
【図9】実施例4で得ためっき処理物の端子部分の電子顕微鏡写真。
【図10】実施例6で得ためっき処理物の端子部分の電子顕微鏡写真。
【0013】
符号の説明
1 半導体装置
2 マザーボード
3 半導体パッケージ
4 インターポーザ
5 半導体素子
6 マザーボードの接続端子
7(7a、7b) マザーボードのソルダーレジスト層
8 インターポーザのコア基板
9(9a、9b、9c) インターポーザの半導体素子搭載側の導体回路層
10(10a、10b、10c) インターポーザのマザーボード接続側の導体回路層
11(11a、11b) インターポーザの接続端子
12(12a、12b) インターポーザのソルダーレジスト層
13 半田ボール
14 半導体素子の電極パッド
15 半田ボール
16 封止材
20 半導体パッケージ
21 インターポーザ
22 半導体素子
23(23a、23b) インターポーザの接続端子
24(24a、24b) インターポーザのソルダーレジスト層
25 半導体素子の電極パッド
26 金線
27 ダイボンド材硬化層
28 半田ボール
29 封止材
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のめっき方法は、樹脂からなる支持表面上に金属微細パターンを設けてなる金属微細パターン付き基材の当該金属微細パターンにパラジウム触媒を付与した後、無電解ニッケル−パラジウム−金めっきを行う方法において、
前記金属微細パターン付き基材に対し、パラジウム触媒付与工程の後、無電解パラジウムめっき処理を行う前の任意の段階において、pH10〜14の溶液による処理、およびプラズマ処理よりなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理を行うことを特徴とするものである。
【0015】
本発明のめっき方法は、プリント配線板の最外層回路の端子部分に好適に適用され、当該めっき方法を行うことによって、端子周囲の樹脂表面における金属の異常析出を抑え、端子表面にはNi−Pd−Auの良質な皮膜を形成することができる。よって、品質の良いめっき処理面が得られる。
特に、パッケージ基板用インターポーザの半導体素子接続側最外層回路の端子部分は、ラインアンドスペースが狭いため、端子間(線間)の樹脂表面に金属が異常析出するとショートを引き起こしやすいという問題がある。本発明のめっき方法は、そのようなラインアンドスペースが狭い端子部分に対して特に有効であり、製品の歩留まりを向上させることができる。
本発明のめっき方法は、プリント配線板以外の電子部品の導体回路表面に対しても好適に行うことができ、さらには、電子部品以外の様々な分野において、樹脂基材上に支持された金属微細パターンをめっきすることによって、品質の良いめっき面が得られる。
【0016】
以下、プリント配線板の最外層に銅回路を形成し、その端子部分にめっきを行う場合を例とし、本発明のめっき方法を説明する。
図1は、インターポーザをパッケージ基板として用いるタイプの半導体パッケージと、これを実装したマザーボードからなる半導体装置の構造を模式的に示す図である。
図1において半導体装置1は、マザーボード2上に半導体パッケージ3を実装してなる。
マザーボード2の両面は、ソルダーレジスト層7a、7bで被覆されているが、半導体パッケージ接続側の最外層回路の接続端子6は、ソルダーレジスト層7aから露出している。
半導体パッケージ3は、接続端子11bがパッケージ下面に配列したエリアアレイ型パッケージであり、パッケージ下面の接続端子11bと、マザーボード2のパッケージ実装側の接続端子6とが、半田ボール13により半田接続している。
【0017】
半導体パッケージ3は、パッケージ基板であるインターポーザ4上に半導体素子5を搭載してなる。
インターポーザ4は多層プリント配線板であり、そのコア基板8の半導体素子搭載側に3層の導体回路層9a、9b、9cが順次積層され、マザーボード接続側にも3層の導体回路層10a、10b、10cが順次積層されている。インターポーザ4の半導体素子搭載側は、3層の導体回路層9a、9b、9cを通過することで段階的に配線寸法が縮小する。インターポーザ4の両面の最外層回路は、ソルダーレジスト層12a、12bで被覆されているが、接続端子11a、11bはソルダーレジスト層12a、12bから露出している。
インターポーザ4の半導体素子搭載側最外層回路の接続端子11aは、ラインアンドスペースが10〜50μm/10〜50μm程度の場合が多い。一方、インターポーザ4のマザーボード接続側最外層回路の端子部分11bは、ラインアンドスペースが300〜500μm/300〜500μm程度の場合が多い。マザーボード2のパッケージ実装側(インターポーザ接続側)最外層回路の接続端子6も、ラインアンドスペースが300〜500μm/300〜500μm程度の場合が多い。
【0018】
半導体素子5は、下面に電極パッド14を有しており、この電極パッド14と、インターポーザ4の半導体素子搭載側の最外層回路の接続端子11aとが、半田ボール15により半田接続している。
インターポーザ4と、その上に搭載された半導体素子の間の空隙は、エポキシ樹脂等の封止材16により封止されている。
【0019】
図2は、インターポーザをパッケージ基板として用いる別のタイプの半導体パッケージ(ワイヤボンディング型)の構造を模式的に示す図である。
図2において半導体パッケージ20は、パッケージ基板であるインターポーザ21上に半導体素子22を搭載してなる。
半導体パッケージ20は、接続端子23bがパッケージ下面に配列したエリアアレイ型パッケージであり、当該パッケージ下面の接続端子23bの上に、半田ボール28が配置されている。
インターポーザ21の詳細な積層構造は省略するが、図1に示したインターポーザと同様の多層プリント配線板であり、両面の最外層回路は、ソルダーレジスト層24a、24bで被覆されているが、接続端子23a、23bはソルダーレジスト層24a、24bから露出している。
半導体素子22は、インターポーザ21の半導体素子搭載側に、エポキシ樹脂等のダイボンド材硬化層27を介して固着される。
半導体素子22は、上面に電極パッド25を有しており、この電極パッド25と、インターポーザ21の半導体素子搭載側の最外層回路の接続端子23aとが、金線26により接続している。
半導体パッケージ21の半導体素子搭載側は、エポキシ樹脂等の封止材29により封止されている。
【0020】
図示したインターポーザのような多層プリント配線板は、ガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板等のコア基板上に、複数の導体回路層をビルドアップすることにより得られる。個々の導体回路層は、セミアディティブ法等の公知の方法により形成することができる。導体回路層としては、コア基板又は絶縁層上に銅又は銅合金の箔又は堆積物からなる導体層を形成し、所定パターン状にエッチングしたものが一般的であるが、無電解ニッケル−パラジウム−金めっきを行うことができるものであれば本発明を適用可能であり、導電ペーストの印刷により形成したものであっても良い。
インターポーザの半導体素子接続側に最外層の導体回路を形成した後、当該導体回路のパターン上にソルダーレジスト層を形成し、回路の大部分を被覆するが、当該回路の端子部分は、接続のために露出させたまま残す。この端子部分に対し、本発明のめっき方法を行うことができる。
また、インターポーザのマザーボード接続側最外層の導体回路、及び、マザーボードのインターポーザ接続側最外層の導体回路も、上記と同様に端子部分のみ露出させて他の部分をソルダーレジスト層で被覆し、当該端子部分に対し、本発明のめっき方法を行うことができる。
【0021】
図3は、本発明のめっき方法の手順を示すブロック図である。
本発明によりプリント配線板の最外層銅回路の端子部分にめっきを行う場合、パラジウム触媒付与工程に先立つ前処理として、当該端子部分に必要に応じ1つ又は2つ以上の方法で表面処理を行うことができる。図2には、前処理としてクリーナー(S1a)、ソフトエッチング(S1b)、酸処理(S1c)、プレディップ(S1d)を示したが、それ以外の処理を行っても良い。
前処理の後、パラジウム触媒の付与と、無電解ニッケル−パラジウム−金めっきを行うことで、ニッケル−パラジウム−金(Ni−Pd−Au)皮膜が形成される。
本発明のめっき方法において、前処理(S1)、パラジウム触媒付与工程(S2)、無電解ニッケルめっき処理(S3)、無電解パラジウムめっき処理(S4)、無電解金めっき処理(S5)は、従来と同様に行えばよい。
【0022】
本発明においては、上記手順中のパラジウム触媒付与工程の後、無電解パラジウムめっき処理を行う前の任意の段階において、pH10〜14の溶液による処理およびプラズマ処理のなかから選ばれる1つ又は2つ以上の処理(異常析出防止処理)を行うことで、無電解パラジウムめっき処理の段階における異常析出を防止することができる。
パラジウム触媒付与工程の後、無電解パラジウムめっき処理を行う前の任意の段階とは、図3の手順において、パラジウム触媒付与工程と無電解ニッケルめっき処理の間(S+1)の段階および無電解ニッケルめっき処理と無電解パラジウムめっき処理の間(S+2)の段階である。
異常析出を防止するために2つ以上の処理を付加する場合には、それらの順序を適宜入れ替えることができる。また、2つ以上の異常析出防止処理を、(S+1)段階と(S+2)段階に分けて行うこともできる。
【0023】
以下、S1〜S5の各処理段階、及び、本発明にとって特徴的な異常析出防止処理の段階(S+1、S+2)について順次説明する。
<前処理(S1)>
(1)クリーナー処理(S1a)
前処理の一つであるクリーナー処理(S1a)は、酸性タイプ又はアルカリタイプのクリーナー液を端子表面に接触させることにより、端子表面からの有機皮膜除去、端子表面の金属活性化、端子表面の濡れ性向上を図るために行われる。
酸性タイプのクリーナーは、主として端子表面の極薄い部分(極浅い部分)をエッチングして表面を活性化するものであり、銅端子に有効なものとしては、オキシカルボン酸、アンモニア、塩化ナトリウム、界面活性剤を含有する液(例えば、村上工業(株)のACL−007)が用いられる。銅端子に有効な別の酸性タイプクリーナーとしては、硫酸、界面活性剤、塩化ナトリウムを含有する液(例えば、村上工業(株)のACL−738)を用いても良く、この液は濡れ性が高い。
アルカリ性タイプのクリーナーは、主として有機皮膜を除去するものであり、銅端子に有効なものとしては、ノニオン界面活性剤、2−エタノールアミン、ジエチレントリアミンを含有する液(例えば、村上工業(株)のACL−009)が用いられる。
クリーナー処理を行うには、端子部分に浸漬、スプレイ等の方法で上記いずれかのクリーナー液を接触させた後、水洗すればよい。
【0024】
(2)ソフトエッチング処理(S1b)
他の前処理であるソフトエッチング処理(S1b)は、端子表面の極薄い部分をエッチングして酸化膜の除去を図るために行われる。銅端子に有効なソフトエッチング液としては、過硫酸ソーダと硫酸を含有する酸性液が用いられる。
ソフトエッチング処理を行うには、端子部分に浸漬、スプレイ等の方法で上記ソフトエッチング液を接触させた後、水洗すればよい。
【0025】
(3)酸洗処理(S1c)
他の前処理である酸洗処理(S1c)は、端子表面又はその近傍の樹脂表面からスマット(銅微粒子)を除去するために行われる。
銅端子に有効な酸洗液としては、硫酸が用いられる。
酸洗処理を行うには、端子部分に浸漬、スプレイ等の方法で上記酸洗液を接触させた後、水洗すればよい。
【0026】
(4)プレディップ処理(S1d)
他の前処理であるプレディップ処理(S1d)は、パラジウム触媒付与工程に先立ち、触媒付与液とほぼ同じ濃度の硫酸に浸ける処理であり、端子表面の親水性を上げて触媒付与液中に含有されるPdイオンに対する付着性を向上したり、先行する工程で用いた水洗水が触媒付与液へ混入することを避けて触媒付与液の繰り返し再使用を可能としたり、酸化膜除去を図るために行われる。プレディップ液としては、硫酸が通常用いられる。
プレディップ処理を行うには、端子部分を上記プレディップ液に浸漬する。なお、プレディップ処理後に水洗は行わない。
【0027】
<パラジウム触媒付与工程(S2)>
Pd2+イオンを含有する酸性液(触媒付与液)を端子表面に接触させて、イオン化傾向(Cu+Pd2+→Cu2++Pd)により端子表面でPd2+イオンを金属Pdへ置換する。端子表面に付着したPdは、無電解めっきの触媒として作用する。Pd2+イオン供給源であるパラジウム塩として、硫酸パラジウム又は塩化パラジウムを用いることができる。
硫酸パラジウムは、吸着力が塩化パラジウムより弱く、Pd除去されやすいため、細線形成に適している。銅端子に有効な硫酸パラジウム系触媒付与液としては、硫酸、パラジウム塩、及び、銅塩を含有する強酸液(例えば、村上工業(株)のKAT−450)や、オキシカルボン酸、硫酸、及び、パラジウム塩を含有する強酸液(例えば、村上工業(株)のMNK−4)が用いられる。
一方、塩化パラジウムは、吸着力、置換性が強く、Pd除去されにくいため、めっき未着が起こり易い条件で無電解めっきを行う場合に、めっき未着を防止する効果が得られる。
パラジウム触媒付与工程を行うには、端子部分に浸漬、スプレイ等の方法で上記触媒付与液を接触させた後、水洗すればよい。
【0028】
<無電解ニッケルめっき処理(S3)>
無電解ニッケルめっき浴としては、例えば、水溶性ニッケル塩、還元剤及び錯化剤を含有するめっき浴を用いることができる。無電解ニッケルめっき浴の詳細は、例えば、特開平8−269726号公報などに記載されている。
水溶性ニッケル塩としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル等を用い、その濃度を0.01〜1モル/リットル程度とする。
還元剤としては、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン等を用い、その濃度を0.01〜1モル/リットル程度とする。
錯化剤としては、りんご酸、こはく酸、乳酸、クエン酸などやそのナトリウム塩などのカルボン酸類、グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、グルタミン酸等のアミノ酸類を用い、その濃度を0.01〜2モル/リットル程度とする。
このめっき浴を、pH4〜7に調整し、浴温度40〜90℃程度で使用する。このめっき浴に還元剤として次亜リン酸を用いる場合、銅端子表面で次の主反応がPd触媒によって進行し、Niめっき皮膜が形成される。
Ni2+ + HPO + HO + 2e → Ni + HPO + H
【0029】
<無電解パラジウムめっき処理(S4)>
無電解パラジウムめっき浴としては、例えば、パラジウム化合物、錯化剤、還元剤、不飽和カルボン酸化合物を含有するめっき浴を用いることができる。
パラジウム化合物としては、例えば、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩酸塩などを用い、その濃度をパラジウム基準として、0.001〜0.5モル/リットル程度とする。
錯化剤としては、例えば、アンモニア、或いはメチルアミン、ジメチルアミン、メチレンジアミン、EDTA等のアミン化合物などを用い、その濃度を0.001〜10モル/リットル程度とする。
還元剤としては、例えば、次亜リン酸、或いは次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウム等の次亜リン酸塩などを用い、その濃度を0.001〜5モル/リットル程度とする。
不飽和カルボン酸化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、それらの無水物、それらのナトリウム塩、アンモニウム塩等の塩、それらのエチルエステル、フェニルエステル等の誘導体などを用い、その濃度を0.001〜10モル/リットル程度とする。
このめっき浴を、pH4〜10に調整し、浴温度40〜90℃程度で使用する。このめっき浴に還元剤として次亜リン酸を用いる場合、銅端子表面で次の主反応が進行し、Pdめっき皮膜が形成される。
Pd2+ + HPO + HO→ Pd + HPO + 2H
【0030】
<無電解金めっき処理(S5)>
無電解金めっき浴としては、例えば、水溶性金化合物、錯化剤、及びアルデヒド化合物を含有するめっき浴を用いることができる。無電解金めっき浴の詳細は、例えば、特開2008−144188号公報などに記載されている。
水溶性金化合物としては、例えば、シアン化金、シアン化金カリウム、シアン化金ナトリウム、シアン化金アンモニウム等のシアン化金塩を用い、その濃度を金基準で0.0001〜1モル/リットル程度とする。
錯化剤としては、例えば、リン酸、ホウ酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸などを用い、その濃度を0.001〜1モル/リットル程度とする。
アルデヒド化合物(還元剤)としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等の脂肪族飽和アルデヒド、グリオキサール、スクシンジアルデヒド等の脂肪族ジアルデヒド、クロトンアルデヒド等の脂肪族不飽和アルデヒド、ベンズアルデヒド、o−,m−又はp−ニトロベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド、グルコース、ガラクトース等のアルデヒド基(−CHO)を有する糖類などを用い、その濃度を0.0001〜0.5モル/リットル程度とする。
このめっき浴を、pH5〜10に調整し、浴温度40〜90℃程度で使用する。このめっき浴を用いる場合、銅端子表面で次の2つの置換反応が進行し、Auめっき皮膜が形成される。
Pd + Au → Pd2+ + Au + e
(Au自動触媒の作用により、めっき浴中成分を酸化して獲得する)+ Au →Au
【0031】
<異常析出防止処理(S+1、S+2)>
上述した基本手順において、無電解パラジウムめっき処理を行う段階(S4)で、端子周囲の樹脂表面、すなわち導体回路を支持している樹脂表面のなかで端子周囲の領域に、パラジウムの異常析出が生じるという問題が本発明者により発見された。
その原因は解明されていないが、パラジウム触媒付与工程の段階(S2)で、端子表面に選択的に金属Pdを充分量付着させたまま、支持体である樹脂表面からPd2+イオンを完全に除去することが困難であることが原因だと考えられる。樹脂表面に残留したPd2+イオンは、無電解パラジウムめっき浴中で0(ゼロ)価に還元され、この還元されたPdが核となって金属Pd粒が成長すると考えられる。特に端子周囲の樹脂表面に異常析出が限局的に発生する理由は、端子の近傍は、めっき液の反応活性が高くなっており、ニッケル皮膜からニッケルが溶出し、ニッケル溶出地点近傍の樹脂表面でNiからPdへの置換(溶出Ni+樹脂表面Pd2+→Ni2++Pd)が多発するためと推測される。
【0032】
このような異常析出を抑制又は防止するために、本発明のめっき方法においては、パラジウム触媒付与工程の後、無電解パラジウムめっき処理を行う前の任意の段階で、端子部分及びその近傍の樹脂表面に対し、pH10〜14の溶液による処理およびプラズマ処理のなかから選ばれる1つ又は2つ以上の表面処理を行う。
pH10〜14の溶液又はプラズマによる処理は、導体回路を支持している樹脂表面の材料を適度に除去し、当該樹脂表面を粗面化する。回路近傍の樹脂表面に付着していたPd2+イオンは、これらの処理によって樹脂表面の材料と共に除去されるため、異常析出を防止できると推測される。
pH10〜14の溶液による処理としては、例えば、水酸化ナトリウム含有液、過マンガン酸塩含有液、イオウ有機物含有液、シアン化カリウム(KCN)含有液、及びシアン化ナトリウム(NaCN)含有液のうち、いずれか1つ又は2つ以上を行うことができる。これらの溶液は、端子部分に浸漬、スプレイ等の方法で接触させた後、水洗すればよい。
【0033】
なお、上記pH10〜14の溶液又はプラズマによる処理は、コア基板又は絶縁層を構成する一般的な樹脂材料を粗面化するのに有効である。
導体回路を支持するコア基板又は絶縁層を構成する樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂組成物、シアネート樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物、ポリアミド樹脂組成物、アクリレート樹脂組成物等の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。
以下、これら各液による表面処理、及び、プラズマ処理について順次説明する。
【0034】
(1)水酸化ナトリウム含有液による処理
水酸化ナトリウム含有液としては、NaOHの単純な水溶液を、pH10〜14の強アルカリとなる濃度に調整して用いることができる。液のpH値は、電極を備えるpHメーターを浴槽に入れて確認できる。
また、NaOH含有表面湿潤用アルカリ緩衝液のようなNaOHと酸性であるエチレングリコール系溶剤含有液を含む混合溶液であっても、混合溶液としてpH10〜14の強アルカリとなる濃度であれば用いてもよい。NaOHと混合されるエチレングリコール系溶剤含有液としては、例えば、アトテック社製スウェリングディップセキュリガントP建浴液が挙げられる。
【0035】
(2)過マンガン酸塩含有液による処理
過マンガン酸塩含有液は、NaOHの添加量によりpH10〜14の強アルカリ性に調整することができる。
過マンガン酸塩液を用い、次の酸化反応により樹脂表面を粗化することができる。
CH + 12MnO + 14OH → CO2− + 12MnO2− + 9HO + O
2MnO2− + 2HO → 2MnO + 4OH + O
上記反応式において、CHは樹脂分子を意味する。
過マンガン酸塩液としては、例えば、コンセントレートコンパクトCP建浴液(アトテック社製のNaMnO含有酸化剤)を、OH供給源であるNaOHと組み合わせて用いることができる。
【0036】
(3)イオウ有機物含有液による処理
イオウ有機物含有液は、例えば、5%NaOH水溶液および5%HCl水溶液によりpH10〜14の強アルカリ性に調整することができる。
イオウ有機物は、樹脂表面を粗化する作用を有するだけでなく、イオウ有機物を樹脂表面に接触させることによって、当該イオウ有機物が樹脂表面に付着しているPd2+と錯イオンを形成し、Pd2+を不活性化することができるため、異常析出を防止できると推測される。
イオウ有機物としては、化合物中に硫黄原子と炭素原子を含むものであれば、特に制限されないが、チオ硫酸ナトリウム等の硫黄を含んでいても炭素原子を含まないものは含まれない。このような含イオウ有機物としてはチオ尿素誘導体、チオール類、スルフィド、チオシアン酸塩類、スルファミン酸またはその塩類が挙げられる。
チオ尿素誘導体の具体例としては、チオ尿素、ジエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、チオアセトアミドが挙げられる。
チオール類としては2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトチアゾリン、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾキサゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトピリジンが挙げられる。
スルフィドとしては、2−アミノフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオジグリコール酸が挙げられる。
チオシアン酸塩類としては、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウムが挙げられる。
スルファミン酸またはその塩類としては、スルファミン酸、スルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウムが挙げられる。
これらのイオウ有機物のうち、メルカプト基を有するチオール類またはチオシアン基を有するチオシアン酸塩類が好ましい。
硫黄有機物の濃度は、0.1〜100g/リットルが好ましく、特に0.2〜50g/リットルが好ましい。
【0037】
(4)シアン化カリウム(KCN)含有液による処理
シアン化カリウム(以下、KCNと称することがある)含有液は、KCN濃度によりpH10〜14の強アルカリ性に調整することができる。
KCN含有液は、樹脂表面を粗化する作用を有するだけでなく、KCN含有液を樹脂表面に接触させることによって、樹脂表面に付着しているPd2+とCNの錯イオン[Pd(CN)を形成し、Pd2+を不活性化することができるため、異常析出を防止できると推測される。
KCN含有液としては、KCNのみ含有する強アルカリ液を用いることができる。
(5)シアン化ナトリウム(NaCN)含有液による処理
シアン化ナトリウム(以下、NaCNと称することがある)含有液は、NaCN濃度によりpH10〜14の強アルカリ性に調整することができる。
NaCN含有液は、KCN含有液と同様の機構で異常析出を防止できると推測される。
NaCN含有液としては、NaCNのみ含有する強アルカリ液を用いることができる。
【0038】
(6)プラズマ処理
プラズマ処理は、被処理面にプラズマを接触させることによって、銅端子表面からスミアを酸化分解除去すると同時に、回路を支持している樹脂表面の材料を適度に除去し粗面化する処理である。回路近傍の樹脂表面に付着していたPd2+イオンは、プラズマ処理により樹脂表面の材料と共に除去されるため、異常析出を防止できると推測される。
プラズマ処理装置としては、例えば、マーチ・プラズマ・システム社製、PCB2800Eを使用できる。プラズマ処理の具体的な実施方法、実施条件として以下の例が挙げられる。
<プラズマ処理の条件>
・ガス:CF/O(2種混合)、又は、CF/O/Ar(3種混合)
・雰囲気圧力:10〜500mTorr
・出力:1000W〜10000W
・時間:60〜600秒
【0039】
上記手順で本発明のめっき方法を行うことができ、プリント配線板の最外層回路の端子部分に品質の良いNi−Pd−Auめっき皮膜が形成され、且つ、端子周囲の樹脂表面には異常析出が無い品質の良いめっき処理面が確保される。
本発明のめっき方法により端子部分のめっきを行ったプリント配線板上に、半導体パッケージを実装し、半導体装置を製造することができる。また、本発明により得られたインターポーザをパッケージ基板として用い、これに半導体素子を搭載、接続し、封止することで半導体パッケージを製造することができる。インターポーザをパッケージ基板として用いる半導体パッケージの構成としては、例えば、図1及び図2に示したものがある。このようなインターポーザを含む半導体パッケージは、従来公知の方法で製造することができる。
本発明のめっき方法により端子部分にめっきを施したプリント配線板を用いることで、接続信頼性の高い半導体装置が得られる。
【実施例】
【0040】
以下において、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例によって限定されるものではない。
(テストピースの作成)
後述する実施例及び比較例で共通して用いるテストピース(銅回路付き基板)を、次の手順で作成した。
(1)3μm銅箔付きの全厚0.1mm銅張積層板(日立化成製MCL−E−679FG)を5%塩酸により表面処理する。
(2)銅張積層板の銅箔表面に、セミアディティブ用ドライフィルム(旭化成製UFG−255)をロールラミネーターによりラミネートする。
(3)上記ドライフィルムを所定パターン状に露光(平行光露光機:小野測器製EV−0800、露光条件:露光量140mJ、ホールドタイム15分)、現像(現像液:1%炭酸ナトリウム水溶液、現像時間:40秒)する。パターン状の露出部に電解銅めっき処理を行って20μm厚の電解銅めっき皮膜を形成し、ドライフィルムを剥離(剥離液:三菱ガス化学製R−100、剥離時間:240秒)する。
(4)剥離後、フラッシュエッチング処理(荏原電産のSACプロセス)により、3μm銅箔シード層を除去する。
(5)その後、回路粗化処理(粗化処理液:メック(株)製CZ8101、1μm粗化条件)を実施し、ラインアンドスペース(L/S)=50μm/50μmの櫛歯パターン状銅回路を有するテストピースを作成した。図4に、テストピース上に形成した櫛歯パターン状銅回路を示す。
【0041】
(比較例1:ブランク)
次の手順で、後述する実施例と共通するENEPIG工程を行った。
(1)クリーナー処理
クリーナー液として上村工業(株)製ACL−007を用い、上記テストピースを液温50℃のクリーナー液に5分間浸漬した後、3回水洗する。
(2)ソフトエッチング処理
クリーナー処理後、ソフトエッチング液として過硫酸ソーダと硫酸の混液を用い、上記テストピースを液温25℃のソフトエッチング液に1分間浸漬した後、3回水洗する。
(3)酸洗処理
ソフトエッチング処理後、上記テストピースを液温25℃の硫酸に1分間浸漬した後、3回水洗する。
(4)プレディップ処理
酸洗処理後、上記テストピースを液温25℃の硫酸に1分間浸漬する。
(5)パラジウム触媒付与工程
プレディップ処理後、端子部分にパラジウム触媒を付与するために、パラジウム触媒付与液として上村工業(株)製KAT−450を用いた。上記テストピースを、液温25℃の当該パラジウム触媒付与液に2分間浸漬した後、3回水洗する。
(6)無電解Niめっき処理
パラジウム触媒付与工程の後、上記テストピースを液温80℃の無電解Niめっき浴(上村工業(株)製NPR−4)に35分間浸漬した後、3回水洗する。
(7)無電解Pdめっき処理
無電解Niめっき処理後、上記テストピースを液温50℃の無電解Pdめっき浴(上村工業(株)製TPD−30)に5分間浸漬した後、3回水洗する。
(8)無電解Auめっき処理
無電解Pdめっき処理後、上記テストピースを液温80℃の無電解Auめっき浴(上村工業(株)製TWX−40)に30分間浸漬した後、3回水洗する。
【0042】
(実施例1:過マンガン酸ナトリウム含有液による処理)
比較例1のENEPIG工程において、パラジウム触媒付与工程の後、無電解Niめっき処理前の段階で、次の手順により過マンガン酸ナトリウム含有液を用いる表面処理を行った。
(1)樹脂表面粗化処理
テストピースを、液温80℃の過マンガン酸ナトリウム含有粗化処理液(NaOH:40g/L、アトテック社製コンセントレートコンパクトCP建浴液:580mL/L、pH=12.5)に2分間浸漬した後、3回水洗する。
(2)中和処理
粗化処理後、テストピースを液温40℃の中和処理液(アトテック社製リダクションセキュリガントP500建浴液)に3分間浸漬した後、3回水洗する。
【0043】
(実施例2:NaOH含有表面湿潤用アルカリ緩衝液および過マンガン酸ナトリウム含有液による処理)
比較例1のENEPIG工程において、パラジウム触媒付与工程の後、無電解Niめっき処理前の段階で、次の手順によりNaOH含有表面湿潤用アルカリ緩衝液および過マンガン酸ナトリウム含有液を用いる表面処理を行った。
(1)樹脂表面膨潤処理
テストピースを、液温60℃の市販の水酸化ナトリウム(3g/L)とエチレングリコール系溶剤含有液(500mL/L、アトテック社製スウェリングディップセキュリガントP建浴液)の混合液(pH12)に2分間浸漬した後、3回水洗する。
(2)樹脂表面粗化処理
膨潤処理後、テストピースを液温80℃の過マンガン酸ナトリウム含有粗化処理液(NaOH:45g/L、アトテック社製コンセントレートコンパクトCP建浴液:0.58L/L、pH14)に2分間浸漬した後、3回水洗する。
(3)中和処理
粗化処理後、テストピースを液温40℃の中和処理液(アトテック社製リダクションセキュリガントP500建浴液)に3分間浸漬した後、3回水洗する。
【0044】
(実施例3:プラズマ処理)
比較例1のENEPIG工程において、無電解Niめっき処理後、無電解Pdめっき処理前の段階で、次の装置、条件によりプラズマ処理を行った。
処理装置:PCB2800E(マーチ・プラズマ・システム社製)
処理条件:ガス(2種混合):O(95%)/CF(5%)、雰囲気圧力:250mTorr、ワット数:2000W、時間:75秒
【0045】
(実施例4:KCN含有液による処理)
比較例1のENEPIG工程において、パラジウム触媒付与工程の後、無電解Niめっき処理前の段階で、テストピースを濃度20g/リットル、液温25℃のKCN含有液(pH12)に1分間浸漬した後、3回水洗した。
【0046】
(実施例5:イオウ有機物含有液による処理)
比較例1のENEPIG工程において、パラジウム触媒付与工程の後、無電解Niめっき処理前の段階で、次の手順によりイオウ有機物含有液処理を行った。
イオウ有機物薬液は、メルカプトチアゾリン1g/リットルの水溶液(pH12.5)を用いた。
【0047】
(実施例6:銅張積層板LαZ−4785GS−Bを使用)
実施例1において、銅張積層板(日立化成製MCL−E−679FG)に代えて、3μm銅箔付きの全厚0.1mm銅張積層板(住友ベークライト製LαZ−4785GS−B)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0048】
(評価)
各実施例及び比較例で得られたENEPIGめっき処理物の端子部分を、電子顕微鏡(反射電子像)により観察し、線間の品質を評価した。
図5〜図10に、比較例1及び実施例1〜4及び6の電子顕微鏡写真をそれぞれ示す。比較例1(図5)はブランク実験であり、端子周囲(線間)の樹脂表面に著しい異常析出が発生した。写真画面の左右両端に2本の端子(ライン)が上下方向に延在し、そのライン間に樹脂面が露出したスペース(画面の黒い部分)が存在する。比較例1においては、このスペース領域に、異常析出した金属からなる白い点が多数観察された。また端子ラインの境界付近に、特に多量の析出が観察された。
これに対し、実施例1〜4及び6(図6〜図10)は、端子周囲の樹脂表面に異常析出が発生しなかった。実施例5(イオウ有機物含有液による処理)の写真は添付しないが、他の実施例と同様に、端子周囲の樹脂表面に異常析出が発生しないことが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる支持表面上に金属微細パターンを設けてなる金属微細パターン付き基材の当該金属微細パターンにパラジウム触媒を付与した後、無電解ニッケル−パラジウム−金めっきを行う方法において、
前記金属微細パターン付き基材に対し、パラジウム触媒付与工程の後、無電解パラジウムめっき処理を行う前の任意の段階において、pH10〜14の溶液による処理およびプラズマ処理よりなる群から選ばれる少なくとも一つの表面処理を行うことを特徴とする、無電解ニッケル−パラジウム−金めっき方法。
【請求項2】
前記金属微細パターン付き基材がプリント配線板であり、前記金属微細パターンがプリント配線板表面の導体回路である、請求項1に記載の無電解ニッケル−パラジウム−金めっき方法。
【請求項3】
前記プリント配線板がマザーボードであり、そのめっき処理部における導体回路のラインアンドスペース(L/S)が300〜500μm/300〜500μmである、請求項2に記載の無電解ニッケル−パラジウム−金めっき方法。
【請求項4】
前記プリント配線板がインターポーザである、請求項2に記載の無電解ニッケル−パラジウム−金めっき方法。
【請求項5】
前記インターポーザは、半導体素子との接続面側のめっき処理部における導体回路のラインアンドスペース(L/S)が10〜50μm/10〜50μmである、請求項4に記載の無電解ニッケル−パラジウム−金めっき方法。
【請求項6】
前記インターポーザは、マザーボードとの接続面側のめっき処理部における導体回路のラインアンドスペース(L/S)が300〜500μm/300〜500μmである、請求項4に記載の無電解ニッケル−パラジウム−金めっき方法。
【請求項7】
樹脂からなる支持表面上に金属微細パターンを設けてなる金属微細パターン付き基材の当該金属微細パターンの表面に、前記請求項1の方法によりニッケル−パラジウム−金メッキ層を形成しためっき処理物。
【請求項8】
プリント配線板表面の導体回路上に、前記請求項1の方法によりニッケル−パラジウム−金メッキ層を形成したプリント配線板。
【請求項9】
前記導体回路のニッケル−パラジウム−金メッキ層を有する部分のラインアンドスペース(L/S)が300〜500μm/300〜500μmである、請求項8に記載のプリント配線板。
【請求項10】
インターポーザ表面の導体回路上に、前記請求項1の方法によりニッケル−パラジウム−金メッキ層を形成したインターポーザ。
【請求項11】
前記インターポーザは、半導体素子との接続面側のめっき処理部における導体回路のラインアンドスペース(L/S)が10〜50μm/10〜50μmである、請求項10に記載のインターポーザ。
【請求項12】
前記インターポーザは、マザーボードとの接続面側のめっき処理部における導体回路のラインアンドスペース(L/S)が300〜500μm/300〜500μmである、請求項10に記載のインターポーザ。
【請求項13】
前記請求項8又は9に記載のプリント配線板上に半導体装置が搭載された半導体装置。
【請求項14】
前記請求項10乃至12のいずれか一項に記載のインターポーザを含むプリント配線板の当該インターポーザ上に半導体装置が搭載された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−58090(P2011−58090A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151342(P2010−151342)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】