説明

焦点調節装置及び撮像装置

【課題】本発明の目的は、無音連写に適した原理の焦点調節装置及びそれを備えた撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明の焦点調節装置は、撮像素子(50)から繰り返し出力される画像に対して順次にデータ圧縮処理を施す圧縮手段(90A)と、前記データ圧縮処理により順次に生成される圧縮画像のデータ量の時間変化に応じて、前記撮像素子上へ被写体像を形成する光学系(20)のフォーカスポジションを制御する制御手段(90、110)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調節装置及びそれを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子の電子シャッタを利用して高速なフレームレート(例えば60フレーム/秒)で連写を行うディジタルカメラが提案されている(特許文献1などを参照。)。この連写機能を一眼レフレックスカメラへ搭載すれば、無音連写が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010?87708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような無音連写の機能を一眼レフレックスカメラへ搭載した場合、無音連写中のフォーカス調整は基本的には不可能となる。
【0005】
なぜなら、一眼レフレックスカメラで無音連写を行うにはミラーアップ状態を保つ必要があるのに対し、一眼レフレックスカメラに搭載されている位相差検出方式の焦点検出装置は、ミラーアップ状態では作動しないからである。
【0006】
そこで本発明の目的は、無音連写に適した原理の焦点調節装置及びそれを備えた撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の焦点調節装置は、撮像素子から繰り返し出力される画像に対して順次にデータ圧縮処理を施す圧縮手段と、前記データ圧縮処理により順次に生成される圧縮画像のデータ量の時間変化に応じて、前記撮像素子上へ被写体像を形成する光学系のフォーカスポジションを制御する制御手段とを備える。
【0008】
本発明の撮像装置は、光学系が形成する被写体像を繰り返し撮像して順次に画像を出力する撮像素子と、前記撮像素子から繰り返し出力される画像に基づき前記光学系のフォーカスポジションを制御する本発明の焦点調節装置とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無音連写に適した原理の焦点調節装置及びそれを備えた撮像装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ディジタルカメラ10の構成図である
【図2】無音撮影モードにおける画像処理エンジン90の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態としてディジタルカメラを説明する。
【0012】
図1は、ディジタルカメラ10の構成図である。図1に示すとおりディジタルカメラ10には、撮影レンズ20、クイックリターンミラー170、メカニカルシャッタ30、撮像素子50、アナログフロントエンド(AFE)80、タイミングジェネレータ(TG)70、画像処理エンジン90、焦点検出装置171、モータドライバ110、バッファメモリ130、表示部140、操作部150、リムーバブルメモリ160などが備えられる。
【0013】
なお、図示省略したが、ディジタルカメラ10には、クイックリターンミラー170がミラーダウン状態である期間中に被写界(撮影レンズ20の視野)の輝度分布を監視する装置(測光装置)も備えられている。
【0014】
撮影レンズ20は、被写界から射出した被写界光束を結像し、撮像素子50の撮像面の近傍に被写界像を形成する。図1では撮影レンズ20を単レンズであるかのごとく描いたが、実際の撮影レンズ20は、フォーカシングレンズ、絞りなどを有しており、これらはモータドライバ110によって駆動される。モータドライバ110は、画像処理エンジン90からの指示に応じて動作する。
【0015】
クイックリターンミラー170は、撮影レンズ20と撮像素子50との間の被写界光束の光路上に配置されており、画像処理エンジン90からの指示に応じて、その姿勢をミラーダウン状態とミラーアップ状態との間で切り換える。このうちミラーダウン状態は、被写界光束を焦点検出装置171及び不図示の測光装置の側へと導くための姿勢であり、ミラーアップ状態は、被写界光束を撮像素子50の側へと導くための姿勢である。
【0016】
メカニカルシャッタ30は、クイックリターンミラー170と撮像素子50との間の被写界光束の光路上に配置されており、TG70から供給される駆動信号に応じて、その光路を開閉する。
【0017】
撮像素子50は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサなどの撮像素子であり、TG70から供給される駆動信号に応じて、信号の蓄積及び信号の読み出しを行う。
【0018】
TG70は、画像処理エンジン90からの指示に応じて、撮像素子50及びメカニカルシャッタ30に対して駆動信号を供給すると共に、AFE80及び画像処理エンジン90に対して同期信号を供給することにより、撮像を行う。なお、TG70は、撮像素子50へ供給する駆動信号のパターンと、メカニカルシャッタ30へ供給する駆動信号のパターンとの組み合わせにより、1フレーム当たりの撮像の露光時間を制御する。この露光時間は、画像処理エンジン90が指定したTv値(=ユーザが入力したTv値又は自動露出演算で算出されたTv値)に応じた値に設定される。但し、TG30は、ディジタルカメラ10が無音撮影モード(後述)に設定されたときには、メカニカルシャッタ30を開成状態としたまま、撮像素子50の信号の蓄積及び信号の読み出しを行う。この場合、撮像の露光時間は、撮像素子50に供給される駆動信号のみ(つまり電子シャッタのみ)によって制御される。
【0019】
ここで、ディジタルカメラ10が無音撮影モード(後述)に設定されたときには、ディジタルカメラ10の連写速度は、30フレーム/秒、50フレーム/秒、60フレーム/秒などと高速に設定することが可能である。以下、無音撮影モードにおけるディジタルカメラ10の連写速度を60フレーム/秒と仮定する。
【0020】
AFE80は、撮像素子50から出力されるアナログ信号に対してパイプライン処理を施す。AFE80には、CDS回路、ゲイン回路、A/D変換回路などが備えられており、CDS回路は、撮像素子50から出力されるアナログ信号のノイズ成分を相関二重サンプリングによって除去し、ゲイン回路は、ノイズ除去後のアナログ信号を増幅し、A/D変換回路は、増幅後のアナログ信号をディジタル信号へと変換する。
【0021】
なお、AFE80のゲイン(ゲイン回路の信号増幅率)は、画像処理エンジン90が指定したSv値(=ユーザが入力したSv値又は自動露出演算で算出されたSv値)に応じた値に設定される。なお、ユーザが入力したSv値とは、所謂「ISO感度」のことである。
【0022】
焦点検出装置171は、ミラーダウン状態のクイックリターンミラー170から導かれた被写界光束を、瞳分割してから再統合することにより、撮像素子50に対する撮影レンズ20のデフォーカス信号を生成する。つまり、焦点検出装置171は、位相差検出方式の焦点検出装置である。なお、焦点検出装置171が生成するデフォーカス信号は、被写界のエリア毎に生成される。
【0023】
モータドライバ110は、画像処理エンジン90からの指示に応じて、撮影レンズ20のフォーカシングレンズを光軸方向へ駆動する。これによって、撮影レンズ20のフォーカスポジションが調整される(フォーカス調整)。また、モータドライバ110は、画像処理エンジン90が指定したAv値(=ユーザが入力したAv値又は自動露出演算で算出されたAv値)に応じて、撮影レンズ20の絞りの径を調整する。
【0024】
バッファメモリ130は、AFE80から出力されるディジタル信号を、画像処理エンジン90を介して蓄積する。撮像素子50の1フレーム分の信号読み出し期間(フレーム周期)に亘ってこの蓄積が行われると、バッファメモリ130に1フレーム分のディジタル信号が蓄積される。以下、このディジタル信号を「画像」と称す。なお、バッファメモリ130は、必要に応じて、画像処理エンジン90から転送された他の画像を蓄積することもできる。また、バッファメモリ130は、複数フレーム分の画像を同時に蓄積することもできる。
【0025】
表示部140は、画像処理エンジン90からの指示に応じて、各種の画像を表示する。表示部140が表示する画像には、撮像素子50が取得しバッファメモリ130に蓄積された画像、リムーバブルメモリ160に格納されていた画像、画像処理エンジン90が作成したメニュー表示用の画像などがある。なお、表示部140は、画像を表示する際に、その画像の形式を表示に適した形式へと変換する機能を有している。
【0026】
操作部150は、レリーズボタン、メニューボタンなど、ユーザが操作可能な各種のスイッチを有している。ユーザは、この操作部150を介して各種の指示をディジタルカメラ10へ入力することができる。例えば、ユーザは、被写界中の測光エリアやフォーカスエリアをディジタルカメラ10へ指定することができる。また、例えば、ユーザは、ディジタルカメラ10のモードを、撮影モードと再生モードとの間で切り換えることができる。なお、本実施形態のディジタルカメラ10には、撮影モードの1種として無音撮影モード(後述)が搭載されている。
【0027】
リムーバブルメモリ160は、ディジタルカメラ10が取得した画像や、他のディジタルカメラが取得した画像などを長期に亘って記憶することが可能な不揮発性のメモリである。
【0028】
画像処理エンジン90は、操作部150を介してユーザから入力された指示と、画像処理エンジン90が予め記憶している不図示のプログラムとに従い、ディジタルカメラ10の各部を制御して撮像を行ったり、その撮像によってバッファメモリ130上に蓄積された画像に対して所定の画像処理(ホワイトバランス調整、色補間、階調変換、色変換など)を施したりする。
【0029】
ここで、本実施形態の画像処理エンジン90は、必要に応じてデータ圧縮部90Aとして機能する。データ圧縮部90Aは、バッファメモリ130上に蓄積された画像処理後の画像に対してデータ圧縮処理を施したり、リムーバブルメモリ160に保存された圧縮処理後の画像に対してデータ伸張処理を施したりする。
【0030】
なお、データ圧縮部90Aに適用されるデータ圧縮処理及びデータ伸張処理の方式としては、例えばJPEG方式がある。JPEG方式は、不可逆的な圧縮方式の一種であり、画像のデータを周波数分解し、ヒトの眼にとって比較的目立たない周波数成分を切り捨てる方式である。因みに、同じ被写界を写した2つの画像の間では、圧縮処理後のデータサイズ(圧縮ファイルのファイルサイズ)は近くなるが、鮮鋭度の高い画像(ピントの合った画像)のデータサイズの方が、鮮鋭度の低い画像(ピントの合わない画像)のデータサイズよりも大きくなる傾向にある。無音撮影モード(後述)では、フォーカス調整を繰り返すことによりフォーカス制御が行われるが、このフォーカス制御は、画像の鮮鋭度と圧縮処理後のデータサイズとの関係を利用したフィードバック制御である。
【0031】
図2は、無音撮影モードにおける画像処理エンジン90の動作フローチャートである。以下、フローの開始時点ではクイックリターンミラー170はミラーダウン状態にあると仮定し、各ステップを順に説明する。
【0032】
ステップS11:画像処理エンジン90は、操作部150からの信号に基づきレリーズボタンが半押しされたか否かを判別し、半押しされた場合にはステップS12へ移行する。
【0033】
ステップS12:画像処理エンジン90は、焦点検出装置171が出力するデフォーカス信号のうち、ユーザが予め指定したフォーカスエリアのデフォーカス信号を選択し、それをフォーカシングレンズの駆動量へと変換する。なお、その変換では、撮影レンズ20に固有の特性(焦点距離など)が考慮される。そして、画像処理エンジン90は、変換した駆動量をモータドライバ110へ指定することにより、撮影レンズ20のフォーカス調整を行う。また、画像処理エンジン90は、不図示の測光装置から出力される信号に基づき自動露出演算を行うことにより、Tv値、Av値、Sv値の組み合わせを決定する。
【0034】
ステップS13:画像処理エンジン90は、操作部150からの信号に基づきレリーズボタンの半押しが解除されたか否かを判別し、解除された場合にはステップS11へ戻り、解除されていない場合にはステップS14へ移行する。
【0035】
ステップS14:画像処理エンジン90は、操作部150からの信号に基づきレリーズボタンが全押しされたか否かを判別し、全押しされていない場合にはステップS13に戻り、全押しされた場合にはステップS15へ移行する。
【0036】
ステップS15:画像処理エンジン90は、ステップS12において決定したAv値、Tv値、Sv値を、モータドライバ110、TG70、AFE80に対してそれぞれ指定すると共に、クイックリターンミラー170をミラーアップ状態に設定してから、無音撮影モードに適したモードでTG70を駆動する。これによって、無音撮影モードの撮像が開始される。
【0037】
撮像が開始された直後には、撮像素子50から初期フレーム(第1フレーム)の画像が出力されるので、画像処理エンジン90は、第1フレームの画像を、AFE80を介してバッファメモリ130へ蓄積すると、その第1フレームの画像に対して、前述した所定の画像処理(ホワイトバランス調整、色補間、階調変換、色変換など)を施す。なお、本ステップでは、階調変換、ホワイトバランス調整、色変換のうち少なくとも1つは省略されても構わない。
【0038】
ステップS16:画像処理エンジン90の圧縮処理部90Aは、バッファメモリ130上の第1フレームの画像(画像処理後の画像)に対してデータ圧縮処理を施す。その結果、バッファメモリ130上の第1フレームの画像は、データ圧縮後の画像へと置換される。以下、このデータ圧縮後の画像を、「第1フレームの圧縮画像」と称す。なお、本ステップの画像処理エンジン90は、第1フレームの圧縮画像のデータサイズを参照し、そのサイズを基準サイズとして記憶する。
【0039】
ステップS17:画像処理エンジン90は、操作部150からの信号に基づきレリーズボタンの全押しが解除されたか否かを判別し、解除された場合はステップS32へ移行し、解除されていなかった場合はステップS18へ移行する。
【0040】
なお、以上のステップS15〜ステップS17の処理が、フォーカス制御の第1ループである(ここでは、第1フレームの撮像が開始されてから第2フレームの撮像が開始される前までの処理を「第1ループ」と称している。)。この第1ループの所要時間は、フレーム周期(ここでは1/60秒)より短い。
【0041】
ステップS18:画像処理エンジン90は、撮像素子50から出力される第2フレームの画像を、AFE80を介してバッファメモリ130へ蓄積し、その第2フレームの画像に対して、前述した所定の画像処理(ホワイトバランス調整、色補間、階調変換、色変換など)を施す。なお、本ステップでは、階調変換、ホワイトバランス調整、色変換のうち少なくとも1つは省略されても構わない。
【0042】
ステップS19:画像処理エンジン90の圧縮処理部90Aは、バッファメモリ130上の第2フレームの画像(画像処理後の画像)に対してデータ圧縮処理を施す。データ圧縮処理の方式は、ステップS16におけるそれと同じである。その結果、バッファメモリ130上の第2フレームの画像は、データ圧縮後の画像へと置換される。以下、このデータ圧縮後の画像を、「第2フレームの圧縮画像」と称す。
【0043】
ステップS20:画像処理エンジン90は、操作部150からの信号に基づきレリーズボタンの全押しが解除されたか否かを判別し、解除された場合はステップS32へ移行し、解除されていなかった場合はステップS21へ移行する。
【0044】
ステップS21:画像処理エンジン90は、フォーカシングレンズの駆動方向を初期値に設定する。駆動方向の初期値は、至近端方向と無限端方向との何れであっても構わない。
【0045】
ステップS22:画像処理エンジン90は、第2フレームの圧縮画像のデータサイズを参照し、そのデータサイズから基準サイズを差し引くことにより差分データを算出する。以下、第2フレームに関するこの差分データを、「第2フレームの差分データ」と称す。
【0046】
続いて、画像処理エンジン90は、第2フレームの差分データが負であり、しかも、第2フレームの差分データの絶対値が閾値T(T>0)を上回った場合は、データサイズが低下したとみなしてステップS23へ移行し、そうでない場合は、データサイズが低下していないとみなしてステップS25へ移行する。
【0047】
ステップS23:画像処理エンジン90は、第2フレームの差分データを、フォーカシングレンズの駆動量へと変換する。ここで、差分データの絶対値が大きいときほど、フォーカシングレンズの駆動量の絶対値は大きく設定される。また、その変換では、撮影レンズ20に固有の特性(焦点距離など)が考慮される。また、駆動量の符号(フォーカシングレンズの駆動方向)は、設定中の駆動方向のとおりに設定される。
【0048】
ステップS24:画像処理エンジン90は、ステップS23で算出した駆動量をモータドライバ110へ指定することによりフォーカス調整を行う。
【0049】
なお、以上のステップS18〜ステップS24の処理が、フォーカス制御の第2ループである(ここでは、第2フレームの撮像が開始されてから第3フレームの撮像が開始される前までの処理を「第2ループ」と称している。)。この第2ループの処理の所要時間は、フレーム周期(ここでは1/60秒)より短い。
【0050】
ステップS25:画像処理エンジン90は、撮像素子50から出力される第iフレーム(i≧3)の画像を、AFE80を介してバッファメモリ130へ蓄積し、その第iフレームの画像に対して、前述した所定の画像処理(ホワイトバランス調整、色補間、階調変換、色変換など)を施す。なお、本ステップでは、階調変換、ホワイトバランス調整、色変換のうち少なくとも1つは省略されても構わない。
【0051】
ステップS26:画像処理エンジン90の圧縮処理部90Aは、バッファメモリ130上の第iフレームの画像(画像処理後の画像)に対してデータ圧縮処理を施す。データ圧縮処理の方式は、ステップS16におけるそれと同じである。その結果、バッファメモリ130上の第iフレームの画像は、データ圧縮後の画像へと置換される。以下、このデータ圧縮後の画像を「第iフレームの圧縮画像」と称す。
【0052】
ステップS27:画像処理エンジン90は、操作部150からの信号に基づきレリーズボタンの全押しが解除されたか否かを判別し、解除された場合はステップS32へ移行し、解除されていなかった場合は、ステップS28へ移行する。
【0053】
ステップS28:画像処理エンジン90は、前のループでフォーカシングレンズが駆動されたか否かを判別し、駆動された場合には以下の手順(a)〜(d)により設定中の駆動方向の見直しを行い、駆動されなかった場合には手順(a)〜(d)を省略してステップS29へ移行する。
【0054】
(a)画像処理エンジン90は、第iフレームの圧縮画像のデータサイズを参照し、そのデータサイズから基準サイズを差し引くことにより差分データを算出する。以下、第iフレームに関するこの差分データを、「第iフレームの差分データ」と称す。
【0055】
(b)画像処理エンジン90は、第iフレームの差分データを、前フレームの差分データと比較し、第iフレームの差分データの方が小さかった場合(すなわち、フォーカシングレンズの駆動によりデータサイズが低下していた場合)には、手順(c)へ移行し、そうでない場合には手順(d)へ移行する。
【0056】
(c)画像処理エンジン90は、設定中の駆動方向を反転させてからステップS29へ移行する。
【0057】
(d)画像処理エンジン90は、設定中の駆動方向を反転させることなくステップS29へ移行する。
【0058】
ステップS29:画像処理エンジン90は、第iフレームの圧縮画像のデータサイズを参照し、そのデータサイズから基準サイズを差し引くことにより差分データを算出する。以下、第iフレームに関するこの差分データを、「第iフレームの差分データ」と称す。
【0059】
続いて、画像処理エンジン90は、第iフレームの差分データが負であり、しかも、第iフレームの差分データの絶対値が閾値T(T>0)を上回った場合は、データサイズが低下したとみなしてステップS30へ移行し、そうでない場合は、データサイズが低下していないとみなしてステップS25へ戻る。
【0060】
ステップS31:画像処理エンジン90は、第iフレームの差分データを、フォーカシングレンズの駆動量へと変換する。ここで、差分データの絶対値が大きいときほど、フォーカシングレンズの駆動量の絶対値は大きく設定される。また、その変換では、撮影レンズ20に固有の特性(焦点距離など)が考慮される。また、駆動量の符号(フォーカシングレンズの駆動方向)は、設定中の駆動方向のとおりに設定される。
【0061】
なお、以上のステップS25〜ステップS31の処理が、フォーカス制御の第iループである(ここでは、第iフレームの撮像が開始されてから第(i+1)フレームの撮像が開始される前までの処理を「第iループ」と称している。)。この第iループの処理の所要時間は、フレーム周期(ここでは1/60秒)より短い。
【0062】
ステップS32:画像処理エンジン90は、TG70の動作を停止させると共に、クイックリターンミラー170をミラーダウン状態に戻す。さらに、画像処理エンジン90は、バッファメモリ130上に蓄積されている1又は複数フレームの圧縮画像をファイル化してからリムーバブルメモリ160へ書き込む。これによって、無音撮影モードで取得された1又は複数の画像がそれぞれ圧縮画像として保存される(以上、無音撮影モードのフロー。)。
【0063】
以上、本実施形態のフォーカス制御では、撮像素子50から繰り返し出力される画像に対して順次にデータ圧縮処理を施し、順次に生成される圧縮画像のデータ量の時間変化に応じてフォーカス調整を行う。すなわち、本実施形態のフォーカス制御では、位相差検出方式の焦点検出装置171を利用する代わりにデータ圧縮部90Aを利用する。このような原理のフォーカス制御は、ミラーアップ状態で継続が可能である。
【0064】
したがって、本実施形態のディジタルカメラ10は、無音連写中にピント状態を維持することができる。
【0065】
また、本実施形態の無音撮影モードでは、位相差検出方式によるフォーカス調整を行った後に、圧縮画像のデータ量の時間変化に応じたフォーカス制御を開始するので、位相差検出方式による初期のピント状態を維持することができる。
【0066】
また、本実施形態のフォーカス制御では、圧縮画像のデータ量の低下量が閾値を超過したときにはフォーカスボジションを変位させ、その低下量が閾値以下であったときにはフォーカスポジションを変位させないので、フォーカス調整の頻度を最小限に抑えることができる。
【0067】
また、本実施形態のフォーカス制御では、圧縮画像のデータ量の低下量が多いときほどフォーカスポジションの変位量を大きくするので、フィードバックの応答性を高くすることができる。
【0068】
また、本実施形態のフォーカス制御では、フォーカスポジションの変位により圧縮画像のデータ量が低下したときにはフォーカスポジションの変位方向を反転させるので、仮に、フォーカス調整に失敗した場合であっても、良好なピント状態へと即座に復帰させることができる。
【0069】
また、本実施形態のフォーカス制御では、データ圧縮の方式として、多くのディジタルカメラに採用されているJPEG圧縮方式を採用するので、ディジタルカメラの通常機能を有効利用することができる。
【0070】
[実施形態の補足]
なお、本実施形態のステップS32では、一連のレリーズ操作で取得された全ての圧縮画像を保存したが、それら圧縮画像の中でデータサイズの著しく小さいものを保存対象から自動的に除外してもよい(圧縮画像の選択保存機能)。また、このような選択保存機能を発現させるか否かについては、ユーザがディジタルカメラ10へ予め指定できることが望ましい。
【0071】
また、本実施形態の無音撮影モードでは、最初のフォーカス調整を位相差検出方式によるオートフォーカス調整としたが、コントラスト検出方式など他の原理によるオートフォーカス調整としてもよいし、ユーザによる手動フォーカス調整としてもよい。
【0072】
また、本実施形態のフォーカス制御の第2ループ以降では、現フレームの差分データの基準サイズとして、初期フレーム(第1フレーム)のデータサイズを使用したが、前フレームのデータサイズを使用してもよい。
【0073】
また、本実施形態のフォーカス制御では、フォーカス調整の頻度(フィードバックのループ)を、1フレームごとに設定したが、複数フレーム(すなわちNフレーム)ごとに設定してもよい。その場合、各ループの所要時間は、フレーム周期内に収める必要はなく、フレーム周期のN倍以内に収まっていればよい。
【0074】
また、本実施形態では、一眼レフレックスカメラを説明したが、コンパクトカメラ、携帯電話に搭載されたカメラ、コンピュータに搭載されたカメラなど、他のカメラにも本発明は適用が可能である。
【符号の説明】
【0075】
20…撮影レンズ、30…メカニカルシャッタ、50…撮像素子、70…タイミングジェネレータ(TG)、80…アナログフロントエンド(AFE)、90…画像処理エンジン、110…モータドライバ、130…バッファメモリ、140…表示部、150…操作部、160…リムーバブルメモリ、170…クイックリターンミラー、171…焦点検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子から繰り返し出力される画像に対して順次にデータ圧縮処理を施す圧縮手段と、
前記データ圧縮処理により順次に生成される圧縮画像のデータ量の時間変化に応じて、前記撮像素子上へ被写体像を形成する光学系のフォーカスポジションを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする焦点調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点調節装置において、
前記制御手段は、
ユーザからの指示に従って前記フォーカスポジションの初期調整を行った後に、前記制御を開始する
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項3】
請求項1に記載の焦点調節装置において、
前記制御手段は、
位相差検出方式により前記フォーカスポジションの初期調整を行った後に、前記制御を開始する
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の焦点調節装置において、
前記制御手段は、
前記データ量の低下量が閾値を超過したときには前記フォーカスボジションを変位させ、前記データ量の低下量が前記閾値以下であったときには前記フォーカスポジションを変位させない
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の焦点調節装置において、
前記制御手段は、
前記データ量の低下量が多いときほど前記フォーカスポジションの変位量を大きくする
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の焦点調節装置において、
前記制御手段は、
前記フォーカスポジションの変位により前記データ量が低下したときには前記フォーカスポジションの変位方向を反転させる
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の焦点調節装置において、
前記圧縮手段は、
前記データ圧縮処理の方式としてJPEG圧縮方式を採用する
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項8】
光学系が形成する被写体像を繰り返し撮像して順次に画像を出力する撮像素子と、
前記撮像素子から繰り返し出力される画像に基づき前記光学系のフォーカスポジションを制御する請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の焦点調節装置と、
を特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−247666(P2012−247666A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120070(P2011−120070)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】