説明

焼却炉

【課題】 大型の焼却物でもこれを切断することなく投入でき、焼却継続時においても外気と遮断された状態で焼却物を燃焼室に投入できる焼却炉を提供することにある。
【解決手段】 水冷式の一次燃焼室2aに形成した一個の開口部3を上部扉4と下部扉5で開閉可能に設けてなり、前記上部扉は外方へ向け凸とした外套4aと、その内方の開口部を閉塞して中空室Sを形成する回転可能な中仕切板4bとで形成するとゝもに、前記外套に形成した小口投入口4cから前記中空室内に投入した焼却物wを前記中仕切板を回転して前記一次燃焼室に投入し、着火前にあっては前記上部扉と下部扉を同時に開放することで、大きな焼却物を前記一次燃焼室に投入する構成の焼却炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般家庭から出される生ごみや廃タイヤ等を焼却処理する焼却炉に関し、特に
焼却物が大きい場合でもこれを切断せずに投入し焼却処理できる焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却炉は箱型もしくは円筒状の容器で構成されているが、開口部分があると製作の際に
変形を生じ易い。また空冷式の焼却炉の場合、本体外側の扉部分は燃焼により300°C
以上に上昇するために、熱膨張により扉の開閉が出来なくなるなどの問題があった。この
ため、空冷式の焼却炉にあっては、扉を取付ける開口部分はなるべく小さくすることが望
まれていた。
【0003】
しかしながら、このような従来の焼却炉にあっては、投入できる焼却物の大きさは投入
口である開口部の大きさ以下のものに制約を受け、それ以上のものにあっては焼却物を小
さく切断しなければならず、作業能率が悪いといった問題点があった。
【0004】
このような空冷式の焼却炉が持つ問題点を解決するために、水冷式の焼却炉が開発され
ている。水冷式の焼却炉の場合、水の沸騰蒸発により焼却炉体が100°Cに保たれるた
め熱変形が少ないという効果がある。そのため、焼却炉体の停止中と使用中の温度差によ
る本体の膨張と開口部の膨張の不具合が軽減され、焼却物投入口である開口部の大きさを
ある程度大きく形成することが可能となった。
【0005】
【特許文献1】特開平7ー233923号公報
【特許文献2】特開2003ー262321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、水冷式の焼却炉にあっては、焼却物投入口となる開口部の大きさを空冷式
焼却炉の開口部より大きく形成することができ、この開口部に見合った大きさのものであ
れば切断することなく燃焼室内に投入することができることになった。しかし、従来の焼
却炉は、その正面側にあって、上部に焼却物投入口を形成し、その下方部に灰排出口を形
成するといったように、2つの開口部を各別にそれぞれ形成する構成であるから、限られ
た焼却炉の正面側の面積にあっては、焼却物投入口として形成できる開口部の大きさには
限度があった。
【0007】
また、焼却物を焼却している燃焼継続時において、焼却炉内の焼却物の残量が少なくな
って新たな焼却物を焼却物投入口から投入するような場合も多々あるが、このような場合
に、焼却物投入口の扉を開けた際、燃焼室内の未燃焼ガスや黒煙等の有害物質が焼却物投
入口から外に逆流する場合がある。そのため、作業員の安全性が危険に晒されたり或いは
周囲の環境が汚染されるといった諸欠点もあり、焼却物投入口の大きさを大きくするには
解決すべき諸問題点も多く残されている。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、焼却物投入口の開口大きさを
大きく形成して大型の焼却物でもこれを切断することなく投入できるとゝもに、焼却継続
時において新たな焼却物を炉内に投入する場合でも、外気と遮断された状態で焼却物を燃
焼室に投入でき、排ガス等が外に漏れることがない安全性,衛生面,環境保全において良
好な焼却炉を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る焼却炉は、一次燃焼室を形成する焼却炉体
を二重鋼板水ジャケットで構成するとゝもに、その正面側に形成した一個の開口部を密閉
する上部扉と下部扉を上下二段にそれぞれ各別に開閉可能に設けてなり、前記上部扉は外
方へ向け凸とした外套と、その内方の開口部を閉塞して中空室を形成する回転可能な中仕
切板とで形成するとゝもに、前記外套に形成した小口投入口から前記中空室内に投入した
焼却物を前記中仕切板を回転して前記一次燃焼室に投入し、着火前にあっては前記上部扉
と下部扉を同時に開放することで、焼却物を前記開口部から前記一次燃焼室に投入する構
成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記した構成によれば、焼却炉の正面側に形成した一個の開口部全体を焼却物投入口と
して利用することで、大型の焼却物でもこれを切断することなく燃焼室内に投入できると
ゝもに、焼却継続時において新たな焼却物を炉内に投入する場合でも、外気と遮断された
状態で焼却物を燃焼室に投入でき、排ガスが外に漏れることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る焼却炉を図1乃至図8に示す一実施形態に基づいて詳細に説明する
と、図において、1は焼却炉の本体で、一次燃焼室2aと、この一次燃焼室2aを囲繞す
るように設けられ、水が収容されるタンク2bとを備えた二重鋼板水ジャケットで構成さ
れている。一次燃焼室2aは略立方体形状の箱型状のもので、その前面部分、すなわち本
体1の正面部分には上下方向に長い縦長方形状の開口部3が1個形成されている。
【0012】
4は前記縦長方形状の開口部3にあってその上方部に設置した上部扉、5は前記上部扉
4と隣接してその下方部に別個に設置した下部扉で、前記上部扉4と該下部扉5とは夫々
別個に開閉可能となるように取り付けられているとゝもに、上部扉4及び下部扉5により
前記開口部3の全面が密封状態で閉塞されている。
【0013】
前記上部扉4は、外方へ向け凸としたほゞ半円形状の外套4aと、該外套4aの内方の
開口部を閉塞して中空室Sを形成する回転可能な中仕切板4bとで形成されており、前記
外套4aに形成した小口投入口4cには小口扉4dが開閉可能に装着されている。なお、
図中5aは前記下部扉5に形成した空気孔5bの開口量を調節する調節蓋である。
【0014】
6は前記一次燃焼室2aの炉壁に形成した空気供給孔で、一次燃焼室2aに対して左右
両側面から多量の空気が強制的に送り込めるように多数形成されている。この空気供給孔
6は、本体1の外面に沿うように形成された左右一対の空気室6a,6aと、前記タンク
2b内を通過するパイプ6b,6bでそれぞれ接続されており、空気室6a,6aは供給
管6cを介して送風機7に接続されている。
【0015】
8は前記一次燃焼室2a内に設置した火格子で、本体1の底部からの設置高さを高い位
置に設置するとゝもに、該火格子8の下方に着火兼用一次焼却室用バーナ9が設置されて
いる。このように、着火用のバーナが火格子の上方にあって、燃焼室の中央に設置してい
た従来のものと異なり、焼却物が湿っている場合でもこれに着火し易い,バーナの出口が
ゴミで塞がらない,バーナの保護が図られる等の利点がある。10は燃料タンクで、燃料
供給管10aを介して接続される着火兼用一次焼却室用バーナ9に液体燃料を供給するた
めのものである。
【0016】
11は二次燃焼室で、前記一次燃焼室2aとその背面側上方で連通しており、この二次
燃焼室11内には二次燃焼室用バーナ12と空気供給パイプ13がそれぞれ設けられてお
り、二次燃焼室11の下方には灰出口11aが設けられている。14は前記二次燃焼室1
1の上方に設置した排ガス洗浄室で、この排ガス洗浄室14には水を噴霧せしめるための
排ガス洗浄装置15が設置されている。
【0017】
この排ガス洗浄装置15から噴霧された噴霧水15aにより、排ガスに含まれる浮遊物
質(煤塵)の除去,煤煙の飛散を防止するとゝもに、黒鉛の排出を軽減するためのもので
ある。詳述すると、洗浄水タンク16からポンプ16aを介して圧送された水を前記廃ガ
ス洗浄装置15により霧状にして噴出せしめ、二次燃焼室11から排出された排ガスと撹
拌して洗浄せしめるもので、この排ガス洗浄室14の下方には前記洗浄水タンク16に循
環するパイプ16bが接続されている。17は上方に向けて連通する排ガス放出用の煙突
で、該煙突17の中央には送風機18が設置されている。
【0018】
上記した構成の焼却炉によれば、上部扉4および下部扉5を一緒に開けて開口部3を全
開とする。つぎに、大きく開口したこの開口部3から一次燃焼室2a内の火格子8上に焼
却物を投入し、上部扉4および下部扉5で開口部3を閉じた後、着火兼用一次燃焼室用バ
ーナ9により焼却物に着火して焼却する。この場合、一次燃焼室2a内には、送風機7に
よって、その側面壁に多数形成された空気供給孔6から均等に空気が送り込まれるため、
安定した燃焼と完全焼却が可能となる。
【0019】
ここで、一次燃焼室2aはその周囲が水を収容したタンク2bによって囲繞されている
ため、本体1の温度はタンク2b内の水の沸騰蒸発によって100°C前後であり、高熱
によって内面壁が損傷することも無く、耐火煉瓦等内張り部材を取着する必要もない。従
って、簡易な構造で耐久性が良く、メンテナンスも容易になる。そして、焼却によって加
熱されたタンク2b内の水は循環して利用できるので、ランニングコストの低減を図るこ
とが可能になる。なお、図中2gは蒸気放出用煙突である。
【0020】
このようにして、焼却物を一次燃焼室2aで焼却している燃焼進行時において、一次燃
焼室2a内の焼却物の残量が少なくなり、新たな焼却物を一次燃焼室2a内に投入するよ
うな場合には、図8の(イ)に示すように、上部扉4の外套4aに設置した小口扉4dを
開き、小口投入口4cから新たな焼却物wを中空室S内に投入する。このとき、中仕切板
4bは同図(ロ)示す位置にあって、外套4aの内方の開口部が閉塞されているので、焼
却物wは中空室S内にとどめおかれることになる。
【0021】
つぎに、同図(ハ)に示すよう、小口扉4dを閉じた後、ハンドル19を握ってこれを
手前(正面側)に引き、回転シャフト19aを反時計方向に回転させる。回転シャフト1
9aの回転に伴って、この回転シャフト19aに固定されている中仕切板4bも同方向に
回転し、中空室S内の焼却物wは中仕切板4bの内側面及び三角翼片4eによって同方向
に押し出され、中空室S内から一次燃焼室2a内に投入される(同図ニ参照)。
【0022】
そして、中空室S内の焼却物wが全て一次燃焼室2a内に投入され終わったら、ハンド
ル19を握って後方(背面側)に押し、回転シャフト19aを時計方向に回転させること
で、同図(ホ)に示すように、中仕切板4bも同方向に回転し、元の状態に復元する。
【0023】
一次燃焼室2a内で一次燃焼し、燃焼ガス化したこの燃焼ガスは二次燃焼室11内に流
入する。二次燃焼室11は昇温用の二次燃焼室用バーナ12の火炎で高温になっているの
で、二次燃焼室11内に流入する燃焼ガスは引火点以上に熱せられ、二次空気供給パイプ
13から噴出される酸素に触れて二次燃焼する。更に、二次燃焼室11内で二次燃焼し、
燃焼ガス化したこの燃焼ガスは排ガス洗浄室14内に流れる。
【0024】
そして、排ガス洗浄室14内に流れる排ガスは、排ガス洗浄装置15から噴霧された噴
霧水15aにより、排ガスに含まれる浮遊物質(煤塵)が除去されると同時に飛散が防止
され、そして黒鉛の排出が軽減される。すなわち、黒煙,塵煙,残灰等の発生を極力抑え
ることができる。従って、タイヤ,廃プラスチック等産業廃棄物も焼却処理することが可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る焼却炉の正面図
【図2】同焼却炉の一部を切り欠いた背面図
【図3】同焼却炉の右側面図
【図4】同焼却炉の平面図
【図5】図4のAーA線断面図
【図6】同焼却炉を右側から見た斜視図
【図7】同焼却炉を左側から見た斜視図
【図8】同焼却炉の上部扉の作用説明図
【図9】同焼却炉の作用説明概念図
【符号の説明】
【0026】
1 焼却炉の本体
2a 一次燃焼室
2b タンク
3 開口部
4 上部扉
4a 外套
4b 中仕切板
4c 小口投入口
4d 小口扉
5 下部扉
6 空気供給孔
7,18 送風機
8 火格子
9,12 バーナ
11 二次燃焼室
14 排ガス洗浄室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次燃焼室を形成する焼却炉体を二重鋼板水ジャケットで構成するとゝもに、その正面
側に形成した一個の開口部を密閉する上部扉と下部扉を上下二段にそれぞれ各別に開閉可
能に設けてなり、前記上部扉は外方へ向け凸とした外套と、その内方の開口部を閉塞して
中空室を形成する回転可能な中仕切板とで形成するとゝもに、前記外套に形成した小口投
入口から前記中空室内に投入した焼却物を前記中仕切板を回転して前記一次燃焼室に投入
し、着火前にあっては前記上部扉と下部扉を同時に開放することで、焼却物を前記開口部
から前記一次燃焼室に投入する構成としたことを特徴とする焼却炉。
【請求項2】
前記燃焼炉体の背面側に、前記一次燃焼室に連通する二次燃焼室および二次燃焼室に連
通する排ガス洗浄室をそれぞれ設けるとゝもに、該排ガス洗浄室内に水噴霧による排ガス
の洗浄装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の焼却炉。
【請求項3】
前記一次燃焼室の底部に設置した火格子の下方へ着火兼一次燃焼室用バーナを、前記二
次燃焼室内に二次燃焼室用バーナをそれぞれ設置したことを特徴とする請求項1又は2記
載の焼却炉。
【請求項4】
前記一次燃焼室の炉壁に多数の空気吹き出し口を形成し、該空気吹き出し口から送風機
により燃焼用空気を強制通風する構成としたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の
焼却炉。
【請求項5】
前記水ジャケット内の水は、前記焼却炉体の外部に対して循環されるとゝもに、前記焼
却炉体の水ジャケット内の水が一定となる冷却水タンクを設けたことを特徴とする請求項
1,2,3又は4記載の焼却炉。
【請求項6】
前記排ガス洗浄装置の水は、前記焼却炉体の外部に対して循環されるとゝもに、前記排
ガス洗浄室内に水が常に噴霧となるように洗浄水タンクからポンプを介して給水する構成
としたことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の焼却炉。
【請求項7】
前記開口は、前記一次燃焼室内において、前記上部扉が設けられている内面壁以外の側
面壁及び下面壁に設けられていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載
の焼却炉。
【請求項8】
前記一次燃焼室及び二次燃焼室に設けたバーナに、液体系の燃料が連続して供給可能な
ようにオイルタンクを更に備えることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7
記載の焼却炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−76018(P2008−76018A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258935(P2006−258935)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年7月6日 「岩手日報」に発表
【出願人】(591249378)株式会社タカシュウ (6)
【Fターム(参考)】