説明

焼結プロセスに用いられる鉱石微粉凝集物、及び鉱石微粉凝集物の製造方法

焼結工程で使用される鉱石微粉凝集物であって、鉱石微粉粒子と凝集剤の混合物により形成され、該粒子が0.01mm〜8.0mmの直径を有する鉱石微粉凝集物を開示する。鉱石微粉凝集物の製造方法であって、グラニュロメトリーが0.150mm未満である鉱石微粉粒子を使用する工程、該鉱石微粉粒子を、0.5〜5.0質量%の比率にあるケイ酸ナトリウム凝集剤と混合する工程、水を加え、直径が0.01mm〜8.0mmの湿潤粒子を形成する工程、及び該湿潤粒子を温度100℃〜150℃で乾燥させ、機械的に加える力及び元素に対して耐性がある乾燥粒子を形成する工程を含んでなる、方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願は、ここにその全文を参考として含める「鉱石微粉凝集物の製造方法及び工業的焼結プロセスに使用するための低温硬化」と題する米国特許出願第61/262,005号、2009年11月17日提出、の優先権を主張する。
【発明の背景】
【0002】
1.発明の分野
本発明の態様は、焼結プロセスに使用される鉱石微粉凝集物に関し、該凝集物は、0.01mm〜8.0mmの直径を有し、天然鉱石微粉及び主凝集剤としてのケイ酸ナトリウムから低温硬化により製造される。本発明の態様は、焼結プロセスに使用される鉱石微粉凝集物の製造方法にも関する。
【0003】
2.関連技術の説明
幾つかの低温鉱石凝集技術が先行技術から公知である。これらの技術は、凝集剤として基本的にセメント、モルタル、有機凝集剤及び炭酸塩化された残渣を使用する鉱石微粉の凝集に基づいている。これらの一般的に認められている凝集方法では、使用される微粉は、凝集に適したグラニュロメトリー(granulometry)が得られるように摩砕工程にかける必要があるが、この単位操作には適切な装置及びエネルギーが必要である。
【0004】
さらに、凝集物の硬化を促進し、その機械的特性を改良するために、これらの凝集剤に関連する幾つか添加剤が加えられる。幾つかの凝集剤及び添加剤の使用は、配合装置をより複雑にすることに加えて、操作コストの低減及び凝集物の品質管理をも妨げる。
【0005】
先行技術から公知であり、製鋼工場や冶金産業で使用されている残渣凝集に関する他の技術は、添加剤の中でも特にケイ酸ナトリウムを使用し、凝集物の硬化工程を促進しているが、この場合、得られる凝集物は12mmを超える直径を有し、還元反応器用の金属装填物として使用される。
【0006】
さらに、これらの製法のほとんどは、単位変換操作としてブリケッティング(briquetting)を行う、すなわちこれらの製法に使用される微粉は、凝集に適したグラニュロメトリーを示すように、適合段階を経る必要もある。
【0007】
従って一般的に、先行技術から公知のこれらの製法により得られる凝集物は、大量(10%を超える)の凝集剤及び長い製品硬化時間(硬化のために10日を超える)を必要とする。さらに、伝統的に使用されている凝集剤は、高価であり、微粉の凝集物への変換に要する操作コストの70%を超え、製造コストが高くなる。
【0008】
さらに、これらの製法により得られる凝集物は、水接触耐性が低く、輸送及び取り扱いの際に大量の微粉を生じ(機械的耐性が低い)、還元反応器の内側における熱衝撃のために大量の微粉を生じる。ほとんどの場合、凝集した製品は、高い変換コストに加えて、冶金反応器の操作に有害な元素による汚染を示す。水接触耐性が低いとは、これらの凝集物が完全に不溶性ではないことを意味し、熱衝撃に対する脆さは、凝集剤の化学的及び物理的安定性に関連している。
【0009】
焼結プロセスに使用される、0.01mm〜8.0mmの直径を有し、天然鉱石微粉及び主凝集剤としてのケイ酸ナトリウムから低温硬化により製造される凝集物の製造方法は、先行技術において言及されていない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、約0.01mm〜約8.0mmの直径を有し、天然鉱石微粉及びケイ酸ナトリウム系の凝集剤から形成され、摩砕工程または他の種類の粉砕を必要としない鉱石微粉凝集物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、硬化段階に高温を必要としない鉱石微粉凝集物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、NaOによる汚染レベルが低く、機械的耐性が高く、水接触耐性が高い鉱石微粉凝集物を提供することである。
【0013】
摩砕段階または他の種類の粉砕を必要としない、鉱石微粉凝集物の製造方法を提供することも本発明の目的の一つである。
【0014】
混合段階でただ一種の凝集剤だけを使用し、乾燥段階における硬化時間が短く、必要なエネルギー及び製造コストを低減させる鉱石微粉凝集物の製造方法を提供することも本発明の目的の一つである。
【0015】
従って、本発明は、焼結プロセスで用いられる鉱石微粉凝集物であって、凝集剤に関連する天然鉱石微粉の混合からなり、直径が約0.01mm〜約8.0mmである、鉱石微粉凝集物である。
【0016】
本発明は、また、鉱石微粉凝集物の製造方法であって、
(i)グラニュロメトリーが約0.150mm未満である天然鉱石微粉を使用する工程、
(ii) 天然鉱石微粉を、約0.5〜約5.0質量%の比率にある凝集剤と混合する工程、
(iii)混合物に水を調整しながら加えて造粒し、直径が約0.01mm〜約8.0mmである凝集物を形成する工程、及び
(iv)湿潤凝集物を約100℃〜約150℃で乾燥させ、乾燥凝集物を形成する工程
を含んでなる、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下に、図面に示す実施例に基づき、本発明をより詳細に説明する。
【図1】本発明の目的である鉱石微粉凝集物の製造方法のフローチャートである。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本発明の主題は、焼結プロセスで用いられる鉱石微粉凝集物である。この凝集物は、直径が0.01mm〜8.0mmであり、単純に凝集物と呼ばれ、ペレット化または他の同等の方法でよい造粒工程において、凝集剤に関連する、グラニュロメトリーが0.150mm未満である天然鉱石微粉の混合から製造される。
【0019】
前述したように、凝集物の形成に用いられる鉱石微粉は天然鉱石微粉である、すなわち低グラニュロメトリーの粒子であり、望ましい粒度範囲内のグラニュロメトリーを得るための摩砕または他の粉砕工程を必要としない。
【0020】
本発明の鉱石微粉は、好ましくは鉄天然鉱石微粉であるが、他の鉱物、例えばマンガン、ニッケル、その他も使用できる。
【0021】
鉄天然鉱石微粉と混合する凝集剤は、ケイ酸ナトリウムであり、固体状態(粉末)では0.5〜2.5質量%、液体状態では1.5〜5.0質量%の範囲で加えられる。すなわち、このケイ酸ナトリウムは、固体及び液体形態の両方で添加することができる。
【0022】
凝集剤に加えて、混合物には添加剤も加える。これらの添加剤には、0.5〜1.0質量%の範囲内で加えるカッサバデンプン及び0.3〜1.0質量%の範囲内で加えるマイクロシリカがある。
【0023】
ケイ酸ナトリウムに添加される添加剤の機能は、凝集物の品質を改良することである。この意味で、デンプンは、凝集物の摩耗による、例えば微細粒子を発生する取扱い及び輸送の際の摩擦による、微粉発生に対する耐性を増大させ、マイクロシリカは、この凝集物の機械的耐性を失うことなく、ケイ酸ナトリウムの一部を置き換えることができる。
【0024】
1種類の天然鉱石微粉、凝集剤及び添加剤の混合により形成される凝集物の硬化または乾燥は、100℃〜150℃の範囲内の低温で3〜20分間行う。この乾燥は、回転炉、移動グリル炉または乾燥/造粒水平流動床炉中で行うことができる。このようにして、本発明の主題である凝集物は、高温を必要しない硬化または急速乾燥を示し、従って低エネルギーコストであることを意味する。
【0025】
また、鉱石微粉凝集物の製造方法であって、
(i)グラニュロメトリーが0.150mm未満である天然鉱石微粉を使用する工程、
(ii) 天然鉱石微粉を、0.5〜5.0質量%の比率にある凝集剤と混合する工程、
(iii)混合物に水を調整しながら加えて造粒し、直径が0.01mm〜8.0mmである凝集物を形成する工程、及び
(iv)湿潤凝集物を100℃〜150℃で乾燥させる工程
を含んでなる、方法も本発明の目的である。
【0026】
これらの天然微粉は、凝集及び望ましい範囲内の直径を有する凝集物の獲得に適したグラニュロメトリーを有するので、本方法は粉砕工程(摩砕、ブリケッティング、粉砕、等)を含まないことが分かる。
【0027】
混合段階は、ミキサーにより行うか、または乾燥/造粒水平流動床炉中で直接行うことができる。
【0028】
ミキサーを経由する経路では、凝集剤のケイ酸ナトリウムを液体または固体状態で添加し、0.5〜1.0質量%の範囲内のカッサバデンプン及び0.3〜1.0質量%の範囲内のマイクロシリカからなる添加剤も加える。ケイ酸ナトリウムを固体状態(粉末)で添加する場合、その量は0.5〜2.5質量%である。ケイ酸ナトリウムを液体状態で添加する場合、その量は1.5〜5.0質量%である。
【0029】
これらの成分を5〜10分間混合する。
【0030】
微粉とケイ酸ナトリウム及び添加剤の混合が完了した後、混合物を、ディスク型装置またはペレット化ドラムにおけるペレット化もしくは他の同等のプロセスでよい造粒プロセスにかけ、水を調整しながら加え、直径0.01mm〜8.0mmの凝集物を形成する。
【0031】
乾燥/造粒水平流動床炉を経由する経路では、混合を上記と同じ比率で行うが、反応器の内側では、凝集物の造粒及び乾燥が同時に行われる。
【0032】
乾燥段階の後、非凝集物微粉を除去するためのスクリーニング段階を検討することができ、焼結プロセスにおける製品の性能を向上させるために、微粉を造粒段階における処理に戻すことができる。
【0033】
スクリーニングの後、所望のサイズ範囲にある凝集物を選別し、市販することになる。
【0034】
凝集物の乾燥または硬化は、回転炉、移動グリル炉または乾燥/造粒水平流動床炉により、使用する乾燥反応器の型及びサイズに応じて100℃〜150℃の温度で3〜20分間行うことができる。
【0035】
この工程で、凝集物の乾燥または硬化に必要な温度は、先行技術の方法で使用される温度と比較して低いことが分かる。
【0036】
乾燥工程の後、乾燥凝集物スクリーニング工程を行う。このスクリーニングは、最終製品の管理に必要である。
【0037】
本方法により得られる凝集物は、乾燥及び高湿度条件の両方で高い機械的耐性を示す。この高い耐性により、最終使用までの長距離輸送及び取扱いが可能になる。さらに、この凝集物は、雨水と接触しても損なわれない。
【0038】
鉄鉱石の場合、濃縮された微粉を使用することにより、鉄含有量が高く、SiO、Al及びPの含有量が低い凝集物が得られる。
【0039】
パイロット焼結として行った試験により、製品は優れた性能を獲得し、製法及び焼結の品質、例えば生産性の増加、比燃料消費の低下、高い機械的耐性、等が大幅に向上することが確認された。
【0040】
凝集物を下記の5種類の条件で評価した。
1.典型的な焼結混合物で、この混合物の微粉の20%を本発明の凝集物体20%で置き換え、次いで生産性結果、燃料の消費、及び焼結させた最終製品の機械的耐性の測定を行った。得られた改善は、生産性における12%の向上、燃料消費の30%の低減、及び最終製品の機械的耐性の15%の増加であった。
2.典型的な焼結混合物で、粗オーストラリア鉱石の13%を本発明の凝集物13%で置き換え、次いで生産性結果、燃料の消費、及び焼結させた最終製品の機械的耐性の測定を行った。得られた改善は、生産性における9%の向上、燃料消費の5%の低減、及び最終製品の機械的耐性の12%の増加であった。
3.典型的な焼結混合物で、粗オーストラリア鉱石の30%を本発明の凝集物13%で置き換え、次いで生産性結果、燃料の消費、及び焼結させた最終製品の機械的耐性の測定を行った。得られた改善は、生産性における12%の向上、燃料消費の7.5%の低減、及び最終製品の機械的耐性の4%の増加であった。
4.典型的な焼結混合物で、この混合物から、Valeから得た粗鉱石の30%を本発明の凝集物30%で置き換え、次いで生産性結果、燃料の消費、及び焼結させた最終製品の機械的耐性の測定を行った。得られた改善は、生産性における20%の向上、燃料消費の4%の低減、及び最終製品の機械的耐性の維持であった。
【0041】
このように、本発明の主題である凝集物及びそのような凝集物を得る方法により、低温凝集製法で通常見られる幾つかの問題、例えば凝集物の高配合量、長い製品硬化時間、水接触に対する低い耐性、輸送及び取扱いの際に発生する大量の微粉、熱衝撃の結果生じる大量の微粉、及び製品の使用に有害な元素による汚染、が最少に抑えられる。
【0042】
これに加えて、先に観察されたように、本発明の方法により、数種類の凝集剤を配合する必要性、及び、特に鉱石のグラニュロメトリー調整を行うための摩砕の必要性が最少に抑えられる。従って、凝集剤配合装置がより簡素化され、ペレット化段階のための鉱石微粉の収量が増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結プロセスで用いられる鉱石微粉凝集物であって、前記鉱石微粉凝集物が、鉱石微粉粒子と凝集剤の混合物により形成され、前記粒子が0.01mm〜8.0mmの直径を有する、鉱石微粉凝集物。
【請求項2】
前記凝集剤が、約0.5〜約5.0質量%のケイ酸ナトリウムを含んでなる、請求項1に記載の凝集物。
【請求項3】
前記ケイ酸ナトリウムが、固体状態で約0.5〜約2.5質量%の比で加えられる、請求項2に記載の凝集物。
【請求項4】
前記ケイ酸ナトリウムが、液体状態で約1.5〜約5.0質量%の比で加えられる、請求項2に記載の凝集物。
【請求項5】
約0.5〜約1.0質量%のカッサバデンプン及び約0.3〜約1.0質量%のマイクロシリカからなる添加剤を含んでなる、請求項1に記載の凝集物。
【請求項6】
前記凝集物が、約100℃〜約150℃の温度で硬化プロセスを経る、請求項1に記載の凝集物。
【請求項7】
鉱石微粉凝集物の製造方法であって、
グラニュロメトリーが0.150mm未満である鉱石微粉粒子を使用する工程、
前記鉱石微粉粒子を、約0.5〜約5.0質量%のケイ酸ナトリウムである凝集剤と混合する工程、
水を加えて、直径が約0.01mm〜約8.0mmである湿潤粒子を形成する工程、及び
前記湿潤粒子を約100℃〜約150℃の温度で乾燥させ、乾燥粒子を形成する工程
を含んでなる、方法。
【請求項8】
前記凝集剤が、約0.5〜約2.5質量%の量の固体状態のケイ酸ナトリウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記凝集剤が、約1.5〜約5.0質量%の量の液体状態のケイ酸ナトリウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記混合の際、約0.5〜約1.0質量%のカッサバデンプン及び約0.3〜約1.0質量%のマイクロシリカからなる添加剤が加えられる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記湿潤粒子の形成が、ディスク、ペレット化ドラムまたは乾燥/造粒水平流動床炉の内側を使用して行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥凝集物のスクリーニングをさらに含んでなる、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−510954(P2013−510954A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539434(P2012−539434)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003141
【国際公開番号】WO2011/061627
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(510277338)
【氏名又は名称原語表記】VALE S.A.
【Fターム(参考)】