説明

煙検出装置

【課題】異なる特性を有する煙の検出結果を、モニタ上で視覚的に容易に確認できるように、視認性の向上を図った煙検出装置を得る。
【解決手段】監視カメラ(1)により撮像された画像内に設定された複数の領域のそれぞれに対して、煙検出判定要素を2つ以上有することで、特性の異なる複数種類の煙を識別して検出する煙検出手段(20)を備え、複数の領域の中で、煙検出手段で煙が検出された領域を、特性別にマッピングするマッピング手段(31)と、マッピング手段による特性別のマッピング結果に基づいて、それぞれの特性に対応してマッピングされた領域の位置および大きさに応じた楕円を生成し、監視カメラにより撮像された画像を表示するモニタ上に、生成した楕円をそれぞれの特性に対応した異なる色で表示させる煙種別表示処理手段(32)とをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことにより、煙の発生を検出する煙検出装置に関し、特に、検出したエリアをモニタ上に表示することで、管理者による視認性の向上を図る煙検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火災発生時の初期消火、あるいは火災事故における逃げ遅れの防止の観点から、火災あるいは煙の早期発見が非常に重要となっている。そこで、煙検出装置の分野においては、監視カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことで、煙の早期発見を行うことが研究されている。
【0003】
その一例として、トンネル内などにカメラを設置し、カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことで、煙を検出する従来の煙検出装置がある。煙を検出するための画像処理では、一般的に、基準となる画像(基準画像)をあらかじめ記憶しておき、最新の撮像画像と基準画像との差分画像を演算し、変化の生じた領域を抽出することで、煙を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、日照などの影響により基準画像が時間的に変化することに対応するために、基準画像を定期的に更新することが行われている。
【0005】
このように、カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施して煙検出を行うことで、次の2点のメリットが得られる。
1)監視カメラの画像を目視確認することで、遠隔地において煙検出状況の把握が可能となる。
2)すでに設置されている監視カメラを流用することが可能であり、効率的な設備を構築できる。
【0006】
また、検出精度を高める目的で、撮影された範囲内に、所定の検出領域を設定し、その検出領域内において、2つ以上の煙検出判定要素による演算を施すことで、異なる種類の煙の発生を検出するものがある(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2では、煙検出判定要素を2つ以上有することで、例えば、「流動煙」と「緩慢煙」のような、特性(挙動)が異なる煙を検出することができる。
【0007】
ここで、「流動煙」とは、火種となる火災源から生じるような煙の総称であり、非常に短時間でたくさん生成され、動き(流れ)が大きく早いという特性を有しているものである。一方「緩慢煙」とは、火災源から離れた場所において、徐々に煙が拡散して広がるような煙の総称であり、動きが非常に遅く、時間単位における変化が乏しいという特性を有しているものである。
【0008】
さらに、煙は、その発生要因によって、動きの早さばかりでなく、濃さに関する特性も変化する。従って、このような濃さの識別に対しても、煙検出判定要素を2つ以上有することで、例えば、「濃い緩慢煙」と「薄い緩慢煙」を識別して検出することも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3909665号公報
【特許文献2】特開2008−46107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術には次のような課題がある。
特許文献2によれば、複数の煙を検出するためのアルゴリズムを個別に備えることで、異なる特性を有する煙の検出を可能としている。そして、煙を検出した場合には、ブザーなどによる警報を行うことが可能となっている。また、監視カメラにより撮像された監視範囲内の画像は、モニタ上に表示される。しかしながら、どの箇所でどのようなタイプの煙が発生しているかを管理者等にわかりやすく伝達するための、視覚的な表示処理手段までは、備えていない。
【0011】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、異なる特性を有する煙の検出結果を、モニタ上で視覚的に容易に確認できるようにし、視認性の向上を図った煙検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る煙検出装置は、監視カメラにより撮像された画像内に設定された複数の領域のそれぞれに対して、煙検出判定要素を2つ以上有することで、特性の異なる複数種類の煙を識別して検出する煙検出手段を備えた煙検出装置において、複数の領域の中で、煙検出手段で煙が検出された領域を、特性別にマッピングするマッピング手段と、マッピング手段による特性別のマッピング結果に基づいて、それぞれの特性に対応してマッピングされた領域の位置および大きさに応じた楕円を生成し、監視カメラにより撮像された画像を表示するモニタ上に、生成した楕円をそれぞれの特性に対応した異なる色または異なる線種で表示させる煙種別表示処理手段とをさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る煙検出装置によれば、特性別に検出されたそれぞれの領域の位置および大きさに応じた楕円を生成し、特性ごとに異なる表示色または異なる線種で、撮像画像のモニタ画面上に楕円表示させる機能を備えることにより、異なる特性を有する煙の検出結果を、モニタ上で視覚的に容易に確認できるようにし、視認性の向上を図った煙検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における煙検出装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における検出結果表示処理部の具体的な機能の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1における検出結果表示処理部の具体的な機能の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の煙検出装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における煙検出装置の構成図である。本実施の形態1における煙検出装置は、画像メモリ10、煙検出部20、および検出結果表示処理部30を備えている。画像メモリ10は、カメラ1により撮像された画像を、過去一定期間分、時系列データとして記憶できるように、複数フレーム分の画像メモリとして構成されている。また、カメラ1により撮像された画像は、モニタ2に表示される。
【0017】
煙検出手段としての煙検出部20は、特性の異なる複数の煙を検出するためのアルゴリズムを個別に備えており、図1の例では、流動煙検出手段21、濃い緩慢煙検出手段22、および薄い緩慢煙検出手段23を備えて構成されている。そして、これらの各検出手段21〜23は、監視カメラ1により撮像された画像内に設定された複数の領域のそれぞれに対して、特性別に煙の有無を検出する。
【0018】
なお、この煙検出部20による特性別の煙検出機能について、以下に簡単に説明する。流動煙検出手段21のアルゴリズムは、移動量が大きい煙を抽出すればよいことから、画素毎のヒストグラムを一定時間見て、特定の輝度値を有する頻度数が多いかどうかを判定する処理、基準画像との相関値を見て、変化がないかどうかを判断する処理、基準画像のエッジ量の差分処理などを備えている。
【0019】
濃い緩慢煙検出手段22の場合は、透過率を低下することを判断すればよく、また、薄い緩慢煙検出手段23なら、透過率が所定範囲に収まることを判断するか、画像のエッジ量が低下することを判断すればよい。
【0020】
よって、濃い緩慢煙検出手段22および薄い緩慢煙検出手段23のアルゴリズムは、透過率による判定処理、検出領域内の輝度変化を生じた画素数の時系列データについて周波数分析し、そのスペクトル比やスペクトル強度を判定する処理、基準画像との相関値を判断する処理、エッジ量を判定する処理などを備えている。
【0021】
また、本発明の技術的特徴である検出結果表示処理部30は、マッピング手段31および煙種別表示処理手段32を備えている。マッピング手段31は、複数の領域の中で、煙検出部20の各検出手段21〜23により煙が検出された領域を、特性別にマッピングする。
【0022】
そして、煙種別表示処理手段32は、特性別のマッピング結果に基づいて、特性別に検出されたそれぞれの領域の位置および大きさに応じた楕円を生成し、特性ごとに異なる表示色で、撮像画像のモニタ画面上に楕円表示させる。このように、マッピング手段31および煙種別表示処理手段32を備えた検出結果表示処理部30の働きにより、管理者は、異なる特性を有する煙の検出結果を、モニタ上で視覚的に容易に確認できるようになる。
【0023】
次に、図面を用いて、本発明の技術的特徴である検出結果表示処理部30の具体的な表示処理機能について説明する。図2、図3は、本発明の実施の形態1における検出結果表示処理部30の具体的な機能の説明図である。なお、図2、図3においては、カメラ1により撮像された画像に対してあらかじめ設定された複数の領域が、メッシュ状で表されており、1つずつの四角部分が、1つの領域に相当している。そして、この領域は、複数の画素で構成されており、領域ごとに、煙検出部20による特性別の煙検出が行われることとなる。
【0024】
まず始めに、図2を用いて、基本的な機能を説明する。以下の例では、流動煙検出手段21により、流動煙の可能性が高いと判断された領域を特性1とし、濃い緩慢煙検出手段22により、濃い緩慢煙の可能性が高いと判断された領域を特性2として説明する。しかしながら、本発明は、2つの特性に分けて表示するものには限定されず、以下に説明する概念は、3つ以上の特性に対しても同様に適用できるものである。
【0025】
図2(a1)は、マッピング手段31が、流動煙検出手段21により流動煙の可能性が高いと判断された領域を、特性1としてマッピングしたマッピング結果を示している。同様に、図2(a2)は、マッピング手段31が、濃い緩慢煙検出手段22により濃い緩慢煙の可能性が高いと判断された領域を、特性2としてマッピングしたマッピング結果を示している。
【0026】
このようなマッピング結果に対して、煙種別表示処理手段32は、マッピング結果の位置および大きさに応じた楕円を生成する。例えば、煙種別表示処理手段32は、マッピングされた隣接する領域の外接長方形を特定し、特定した外接長方形に内接するように楕円を生成することができる。図2(b1)、図2(b2)は、それぞれ、図2(a1)、図2(a2)のマッピング結果の外接長方形に基づいて、煙種別表示処理手段32により生成された楕円を示している。このように、外接長方形に内接する楕円を生成し表示させると、煙検出部20で煙ありと判定された全ての矩形領域が内接楕円に含まれるので、正確に煙の発生している領域をモニタに示すことができる。
【0027】
そして、煙種別表示処理手段32は、最終的に、図2(b1)、図2(b2)のように生成された楕円を、図2(c)に示すように、モニタ上に表示する。図2(c)では、特性1に対応して生成された2つの楕円を一点鎖線で示し、特性2に対応して生成された1つの楕円を二点鎖線で示している。図2(c)に示すように、煙種別表示処理手段32は、特性別に異なる形態で楕円表示できるとともに、1つの領域で複数の特性の煙が検出された場合にも、異なる特性に対応する楕円同士が、一部でラップするように楕円表示できる。
【0028】
なお、煙種別表示処理手段32は、実際のモニタ上には、線種(線の形状、線の太さ)の違いばかりでなく、特性別に異なる色を用いて、モニタ2上に表示させることで、視認性の向上を図ることができる。
【0029】
次に、図3を用いて、図2とは異なる表示形態について説明する。先の図2(a1)において、煙種別表示処理手段32は、特性1に関する隣接領域のまとまりである2つの領域に対して、それぞれ個別の2つの楕円を作成していた。これに対して、図3(a1)において、煙種別表示処理手段32は、全ての領域が隣接してはいないが、所定距離以下の間隔で存在する同一特性の隣接領域のまとまり同士を統合することで、1つの楕円を生成している。このように、同一特性の複数の楕円表示を1つの楕円表示とすることで、視認性の向上を図ることができる。
【0030】
なお、この所定距離は、特性別に個別の値として設定することもできる。また、同じ特性においても、領域の位置に応じて異なる値として設定することもできる。このように個別設定される値は、先の図1では図示していない記憶部にあらかじめ記憶させておくこととなる。
【0031】
なお、煙検出部で煙有りと判定された領域のまとまりが例えば2つあり、それらのまとまった領域が、所定の距離を離れて存在する場合、所定の距離に基づいて連結させるかどうかを決めることもできるが、両者の位置関係が、一方の領域の垂直方向または水平方向の延長線上に他方の領域があるような場合には、まとまり同士を統合させる方向で処理をするようにする。
【0032】
以上のように、実施の形態1によれば、特性別に検出されたそれぞれの領域のマッピング結果の位置および大きさに応じた楕円を生成し、特性ごとに異なる表示色または異なる線種で、撮像画像のモニタ画面上に楕円表示する検出結果表示処理部を備えている。この結果、異なる特性を有する煙の検出結果を、モニタ上で視覚的に容易に確認できるようになり、視認性の向上が図れる。
【0033】
なお、煙種別表示処理手段32による楕円の生成方法は、外接長方形に基づくものには限定されない。たとえば、煙種別表示処理手段32は、マッピングされた隣接する領域の位置と数から、重心と半径を求めることで楕円を生成することもできる。
【0034】
本実施の形態では、煙検出部で煙有りと判定された領域について、その領域の外接長方形を特定して、その長方形に内接するように楕円を生成して、その楕円を表示するようにした。このような表示方法に対して、煙有りと判定された矩形の小領域だけを着色表示することも可能である。しかし、煙というものは、風などの影響で位置や濃度が変化しやすく、ある時点で煙有りと判定されても、その数秒後には、煙なしと判定される場合もある。
【0035】
前述したように、領域の外接長方形を特定して、その長方形に内接するように楕円を生成することで、全ての煙有りと判定された領域を楕円内に含む(囲む)ことができるようになるが、この表示方法のメリットは、煙なしと判定された領域も含んだ状態で、楕円表示がなされる点にある。このため、モニタしている監視領域に、どのくらいの煙があるのかがイメージしやすいように表示を行うことができる。
【0036】
ところで、検出領域にはマスク機能によりマスク処理を施すようにしても良い。薄い緩慢に拡散する煙を薄い煙検出用のアルゴリズムで検出する場合には、緩慢煙は、下方から上方へと移動して、天井付近に滞留しがちであるので、画面の下側領域にマスク処理を施して、天井付近だけを観測するように検出領域を設定すれば、通行人などの影響を小さくできる。なお、濃い緩慢煙に関しては、薄い緩慢煙と似たような挙動を示すものとして、同じようなマスク設定を行うようにすればよい。
【0037】
また、流動煙については、画面の下側に存在する火源の近傍から発生するので、画面の上側ではなく、むしろ、画面の下側に検出領域を設定し、上側の検出領域にはマスク処理を施すようにすると、対象となる流動煙を検出しやすく、誤報を生じにくくすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 カメラ、2 モニタ、10 画像メモリ、20 煙検出部、21 流動煙検出手段、22 濃い緩慢煙検出手段、23 薄い緩慢煙検出手段、30 検出結果表示処理部、31 マッピング手段、32 煙種別表示処理手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視カメラにより撮像された画像内に設定された複数の領域のそれぞれに対して、煙検出判定要素を2つ以上有することで、特性の異なる複数種類の煙を識別して検出する煙検出手段を備えた煙検出装置において、
前記複数の領域の中で、前記煙検出手段で煙が検出された領域を、特性別にマッピングするマッピング手段と、
前記マッピング手段による特性別のマッピング結果に基づいて、それぞれの特性に対応してマッピングされた領域の位置および大きさに応じた楕円を生成し、前記監視カメラにより撮像された画像を表示するモニタ上に、生成した前記楕円をそれぞれの特性に対応した異なる色または異なる線種で表示させる煙種別表示処理手段と
をさらに備えることを特徴とする煙検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の煙検出装置において、
前記煙種別表示処理手段は、それぞれの特性に対応してマッピングされた隣接する領域の外接長方形を特定し、特定した前記外接長方形に内接するように前記楕円を生成する
ことを特徴とする煙検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の煙検出装置において、
前記煙種別表示処理手段は、それぞれの特性に対応してマッピングされた隣接する領域および所定距離以下の間隔で存在する領域を統合した領域の外接長方形を特定し、特定した前記外接長方形に内接するように前記楕円を生成する
ことを特徴とする煙検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−215741(P2011−215741A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81577(P2010−81577)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】