説明

熱により影響を与えることができる材料から成る構成部材に一次成形形状付与または二次成形形状付与するための成形工具

本発明は、繊維複合材料から成る構成部材を製作するための成形工具であって、当該成形工具が、繊維複合構造体と電気的な抵抗加熱エレメントとを有しており、当該成形工具の繊維複合構造体内に、当該成形工具の形状付与表面の近傍で、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが埋め込まれている形式のものに関する。このような形式の成形工具は、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが、形状付与表面の近傍で、主として、当該成形工具の機械的な強度を規定しており、電気的な抵抗加熱エレメントの少なくとも個々の区分が、互いに電気的な並列回路を形成しているように、電気的な抵抗加熱エレメントが接続されていることによって一層改良される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱により影響を与えることができる材料、有利にはプラスチックおよび特に繊維複合材料から成る構成部材に一次成形形状付与または二次成形形状付与するための成形工具であって、当該成形工具が、繊維複合構造体と電気的な抵抗加熱エレメントとを有しており、当該成形工具の繊維複合構造体内に、当該成形工具の形状付与表面の近傍で、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが埋め込まれている形式のものに関する。
【0002】
繊維強化されたプラスチックは車両技術の多くの分野でますます重要となる。長繊維強化されたプラスチック構造体に対する典型的な例は、乗用車における組付け部材(たとえばスポイラ)、レール車両および商用車における大面状のボディエレメント、小さなカヤックから大きなヨットに至るまでのボート胴体ならびに風車のロータである。以来、航空およびレース(たとえばフォーミュラ1)では、構造体がその際立った重量特有の特性に基づき、大部分、長繊維強化されたプラスチックから成っている。繊維強化されたプラスチックの著しく顕著な利点は、重量に相俟った良好な機械的な特性のほかに、ほぼ制限されない構成自由度ならびに構成部材をほぼ任意のサイズで小規模ないし中規模の個数でも比較的僅かな投資コストによって製作することができる可能性である。
【0003】
したがって、繊維強化されたプラスチックは、従来では、有利には少量生産ないし中量生産でならびにプロトタイプ構造で使用される。有利には熱硬化性のプラスチックによって製作される、特に長繊維強化された繊維複合プラスチック構成部材は、プラスチックの硬化時間に基づき型内での長い滞留時間を要求する。このことは、長いサイクル時間を結果的に招き、このような構成部材の大量生産適性を著しく制限する。
【0004】
ここで、経済性を向上させるためには、まさに大きな構成部材の場合にたいてい同じく繊維強化されたプラスチックから成る相応の型が加熱される。構成部材製作時の意図的な温度ガイドが樹脂粘度の低下によって繊維への含浸を助成し、特に熱硬化性のプラスチックの硬化を著しく加速させる。さらに、温度供給によって、熱硬化性樹脂の架橋度が上昇させられ、これによって、質的に高価値の構成部材に対して、いわゆる「アニール」が不可欠となる。このアニールは、航空で使用される構成部材に対する使用されるプラスチック系に応じて法規すらされている。
【0005】
型をワークピースの製作のために加熱することは、工具構造において慣用であり、金属製の型の場合には一般的に液体加熱または電気的な抵抗加熱として行われる。両事例では、金型の高い熱伝導性が、成形工具の均一な均質の温度分配を保証する。
【0006】
しかし、金属製の型は極めて高価である。極めて大きな構成部材に対して、金型は、特にこの構成部材がほんの僅かな個数で製作される場合には非経済的となる。したがって、相応の繊維複合構成部材は、上述したように、しばしばプラスチック型内で製作される。このプラスチック型は金属製の型よりも極めて相当廉価であり、さらに、十分な回数の離型を保証する。プラスチック型では、型1つあたり少なくとも100回の離型が一般的であり、相応の型構造の場合には、型1つあたり1000回を上回る離型が達成可能となる。これに対して、金属製の型は、型の後加工なしに複数回の離型を可能にするものの、相応に高い投資費用も要求する。
【0007】
相応のプラスチック型の加熱は問題となる。なぜならば、プラスチックが金属よりも著しく僅かな熱伝導性を有していて、さらに、特に型の不均一な熱分配で極めて歪みやすいからである。このことは、形状正確さおよび寸法安定性に課せられる高い精度要求を伴う構成部材に対して問題となる。この理由から、水で加熱されるプラスチック型は幅広い使用事例で普及することができなかった。一般的には、相応の構成部材を製作するプラスチック処理運転に対して、別個のアニール室が必要となる。製作後、構成部材を備えた型が硬化およびアニールのためにアニール室にもたらされる。
【0008】
特に金型の場合には、型を液体を介して加熱することができることが知られている。この場合、型は、種々異なる形式で形成された液体通路システムを装備している。この液体通路システムを通して、相応に温度調整された液体が搬送される。この場合、通路システムは型を、本来加熱したい表面からある程度の間隔を置いて加熱する。しかし、良熱伝導性を備えた型材料では、このことは問題とならない。僅かな熱伝導性を備えた型材料、たとえばプラスチック型の場合には、僅かな熱伝導性が不均質な温度分配に繋がる。したがって、相応に加熱したいプラスチック型は、熱伝導性の充填材、たとえばアルミニウム粉末を部分的に含み、これによって、熱伝導性が改善される。
【0009】
にもかかわらず、比較的好ましくない寸法安定性、型の歪み、不均質な温度分配および比較的高い製作手間が、液体加熱されるプラスチック型の場合には問題となる。このような型の高い質量に基づき、各昇温過程では、比較的高いエネルギ消費が必要となる。
【0010】
択一的な加熱は電気的な抵抗加熱である。この場合、金属製の型では、しばしばカートリッジヒータが使用される。金属製の型材料の高い熱伝導性によって、一般的には、十分に均質な温度分配が達成される。
【0011】
プラスチック型の場合には、比較的劣温度伝導性に基づき、加熱したい面の近傍での面状に作用する加熱が有利である。この加熱は相応の加熱織布によって実現することができる。この加熱織布は型表面の近傍でプラスチック内に埋め込むことができる。この目的のために特別に開発された加熱織布は、部分的に抵抗線材から成っているかまたは伝導性の繊維材料、たとえば炭素繊維からも成っている。この場合、抵抗線材もしくは抵抗繊維はオーム抵抗加熱エレメントとして作用する。実際には、この種の加熱は、線状に作用する加熱である。この加熱では、個々の各抵抗繊維または各抵抗繊維に沿って加熱熱が発生させられ、周辺の型材料に導出される。しかし、抵抗線材もしくは抵抗繊維の極めて微細なかつ密な分配では、この加熱が、肉眼で見て、ほぼ面状に作用する。
【0012】
この抵抗加熱では、線材または繊維として作用する加熱エレメントが、電気的に絶縁性の層によって埋め込まれている。この電気的に絶縁性の層は、たとえばGFK製型の場合、エポキシ樹脂とガラス繊維とから成っていてよい。このガラス繊維は、知られているように、極めて良好な電気的な絶縁性を有しているものの、比較的劣熱伝導性も有している。この場合、絶縁性の層は、一般的に加熱線材または加熱繊維よりも著しく大きな横断面・質量割合を型構造に対して有している。このことは、1つには、加熱線材もしくは加熱繊維の間の境界層における温度上昇に繋がり、加熱線材もしくは加熱繊維のそれぞれ異なる機械的なかつ熱的な特性に基づき、内部応力に繋がる。これには、特に型の歪み危険も結び付けられている。
【0013】
すでに前述したように、導電性の繊維として炭素繊維(C繊維もしくはカーボン繊維と呼ばれる)が使用されてもよい。このC繊維は、たいていの金属に比べて、繊維方向における僅かな導電性を有していて、プラスチックに比べて、繊維方向における良熱伝導性を有している。したがって、C繊維は、特にオーム抵抗繊維として適している。別の特質は、炭素繊維の僅かな熱膨張係数である。この熱膨張係数は、繊維タイプに応じて、約αtherm.≒−0.1・10−6/Kの値で示される。したがって、炭素繊維ラミネート(いわゆるCFK、炭素繊維ラミネートは、しばしばプラスチックから成るマトリックス内に埋め込まれた炭素繊維の層状の構造体である)を、相応の繊維配向時に、ラミネートの熱膨張が広域の温度範囲内で実際に測定され得ないように形成することができる。
【0014】
炭素繊維によって加熱されるプラスチック構成部材またはプラスチック型は、従来では、個々の繊維、繊維帯材または織布または短繊維を含んだ肉薄の炭素繊維フリースがプラスチック型内で、電気的に絶縁性の別の層の間に埋め込まれるように形成される。この構成部材または型には、抵抗加熱体として働く炭素繊維と、別のラミネート層との間の明瞭な機能分離が共通している。別のラミネート層は、主として、型の、支持する構造体を形成していて、さらに、一般的に、電流を案内する炭素繊維の電気的な絶縁も引き受けている。
【0015】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102004042422号明細書に基づき、加熱可能な成形工具が公知である。この公知の成形工具では、プラスチックマトリックス内に埋め込まれた炭素繊維によって電気的な抵抗加熱エレメントが使用される。しかし、この抵抗加熱エレメントでは、製作したい構成部材の表面から比較的十分に遠ざけられた抵抗加熱エレメントの配置と、成形工具の繊維複合層の層厚さとに基づき、構成部材を十分に温度調整するために、高い加熱出力が必要となる。また、個々の炭素繊維エレメントの直列回路に基づき、電気的な運転確実性も、場合による短絡ひいては点状になる加熱に基づき保証されていない。
【0016】
加熱層の形成は、従来では、個別繊維または繊維帯材の場合、一般的に、個々のまたは複数の平行な繊維または繊維帯材がストランドとして、加熱したい表面に載置されるように行われる。その後、個々のストランドが直列に接続される。この場合、相並んで位置するそれぞれ2つのストランドが接続されて、全部で4つの直列なストランドが形成される。相応の寸法設定および接続は、たとえばR&G Fluessigkunststoffe社(Waldenbuch在)の小冊子「Heizsystem fuer Kunstharzformen」に記載されている。同社刊行物には、1つの例につき、個々の各ストランドが、相並んで位置する4つの炭素繊維から成る全部で8つのストランドがどのように直列に接続されるのかが示されている。
【0017】
顕著な欠点は、この手段では、特にストランドが直列に接続される場合に生ぜしめられる。なぜならば、互いに衝突する2つの繊維ストランドの間により大きな電位差が生ぜしめられるからである。このことは、相変わらず型における短絡に繋がる。この短絡は、互いに衝突する繊維ストランドの個々の炭素フィラメントよって生ぜしめられ得る。この問題は、特に加熱エレメントのメアンダ状の配置時に生ぜしめられる。このことは、確かに、衝突する炭素繊維ストランドの間の十分に大きな安全間隔によって回避することができる。しかし、この場合、同時に広幅の「加熱されないゾーン」が生ぜしめられる。このことは、やはり不均質な温度分配を結果的に招く。
【0018】
更なる欠点は、加熱層の電気的な絶縁体を形成し、さらに、主として、型の、支持する構造体を形成する別のラミネート層のそれぞれ異なる機械的なかつ熱的な特性にある。この別のラミネート層は、たいてい、ガラス繊維強化されたプラスチック(GFK)から成っている。このGFKとCFK(炭素繊維強化されたプラスチック)との互いに異なる熱膨張に基づき、相応の温度差の場合に著しい熱応力と歪みとが生ぜしめられる。これは、一般的には、型構造の高い肉厚によってのみ抑制することができるものの、完全に回避することはできない。この場合、プラスチック型をサンドイッチ構造で形成することが、同じく知られている解決手段である。この解決手段によって、確かに、歪みを減少させることはできるが、しかし、前述した前提条件下で完全に回避することはできない。
【0019】
したがって、本発明の課題は、成形工具の加熱時の前述した問題を回避し、成形工具の層の適切な構造によって、成形工具の加熱を確実にかつエネルギ効率的に実施することができるようにすることである。
【0020】
この課題を解決するために本発明の構成では、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが、形状付与表面の近傍で、主として、当該成形工具の機械的な特性、特に強度、剛性および/または熱膨張を規定しており、電気的な抵抗加熱エレメントの少なくとも個々の区分が、互いに電気的な並列回路を形成しているように、電気的な抵抗加熱エレメントが接続されているようにした。
【0021】
本発明の有利な構成によれば、炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリが、部分的にまたは全体的に、個別繊維または個別フィラメントとしてかつ/または層状体、織布、フリースまたは互いに平行なストランドの形の単位体として形成可能である。
【0022】
本発明の有利な構成によれば、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが、当該成形工具の構成部材側の表面に直接隣接して埋め込まれている。
【0023】
本発明の有利な構成によれば、炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、主として、擬似等方性に形成されている。
【0024】
本発明の有利な構成によれば、炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリの個々の単位体の間に、非導電性の領域が形成されている。
【0025】
本発明の有利な構成によれば、非導電性の領域が、1つの平面の内部に組み込まれているかまたは重なり合って配置された平面の間に垂直に組み込まれている。
【0026】
本発明の有利な構成によれば、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、高い剛性を有している。
【0027】
本発明の有利な構成によれば、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、主として、繊維複合構造体全体の機械的な特性と熱膨張とを規定している。
【0028】
本発明の有利な構成によれば、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントから成る、電気的な抵抗加熱エレメントを含む層の熱膨張または炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体の熱膨張が、極めて僅かである。
【0029】
本発明の有利な構成によれば、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、放出された加熱出力を、成形したい構成部材の表面に直接発生させるようになっている。
【0030】
本発明の有利な構成によれば、当該成形工具を加熱するためのエネルギ消費が、電気的な抵抗加熱エレメントを含む層の材料からの僅かな層厚さに基づき同じくほんの僅かである。
【0031】
本発明の有利な構成によれば、互いに並列に接続された炭素繊維または炭素フィラメントの電気的な抵抗または炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体の電気的な抵抗が、全体的に並列回路によって極めて僅かである。
【0032】
本発明の有利な構成によれば、ほんの僅かな電圧、特に低ボルト電圧が、昇温のために電気的な抵抗加熱エレメントに印加されるようになっている。
【0033】
本発明の有利な構成によれば、当該成形工具の構成部材側の表面が、型被覆層によって形成されており、該型被覆層が、電気的な抵抗加熱エレメントを含む層を構成部材側で、有利には薄膜状にカバーしている。
【0034】
本発明の有利な構成によれば、電気的な抵抗加熱エレメントを有する層の、構成部材と反対の側の面に補強層が被着されている。
【0035】
本発明の有利な構成によれば、補強層が、安定した軽量構造層の形の構造を有している。
【0036】
本発明の有利な構成によれば、補強層が、サンドイッチ構造を有している。
【0037】
本発明の有利な構成によれば、補強層が、電気的に絶縁性に形成されている。
【0038】
本発明の有利な構成によれば、電気的な抵抗加熱エレメントを有する繊維複合層、型被覆層および/または補強層の間に付加的な中間層が配置されている。
【0039】
本発明の有利な構成によれば、付加的な中間層が、電気的に絶縁性に形成されている。
【0040】
本発明の有利な構成によれば、付加的な中間層が、繊維複合構造体の、隣接した層に対する結合機能を有している。
【0041】
本発明の有利な構成によれば、付加的な中間層として、有利には肉薄のガラス繊維織布から成る層が、繊維複合構造体内に配置されている。
【0042】
本発明の有利な構成によれば、補強層の、構成部材と反対の側の面に配置される別の型被覆層として、プラスチックマトリックス内に埋め込まれた炭素繊維を含んだ層が設けられるようになっている。
【0043】
本発明の有利な構成によれば、構成部材と反対の側の型被覆層の炭素繊維が、構成部材に面した側の、電気的な抵抗加熱エレメントを含む繊維複合層の炭素繊維に対して電気的に絶縁されている。
【0044】
本発明の有利な構成によれば、炭素繊維または炭素フィラメントの配向または炭素繊維または炭素フィラメントから成る単位体の配向が、同じ繊維複合層の別の炭素繊維または炭素フィラメントまたは単位体に対してずらされており、かつ/またはねじられている。
【0045】
本発明の有利な構成によれば、型被覆層と中間層とが、ほんの僅かな剛性を有していて、繊維複合構造体全体の機械的な特性にほんの僅かしか影響を与えないようになっている。
【0046】
本発明の有利な構成によれば、炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、繊維または単位体の端側で電気的にコンタクティングされていて、並列回路として互いに接続されている。
【0047】
本発明の有利な構成によれば、構成部材に形状付与するための当該成形工具の昇温時に、当該成形工具が、少なくとも部分的に断熱的に被覆されている。
【0048】
本発明の有利な構成によれば、断熱材料の存在、防熱材料の種類および厚さならびに防熱材料の配置が、当該成形工具の内部での構成部材の昇温時の局所的な温度制御のために使用可能である。
【0049】
本発明の有利な構成によれば、繊維複合構造体の、当該成形工具を形成する層が、最大300℃、有利には最大140℃の構成部材の製作時の温度に対して設計されている。
【0050】
本発明の有利な構成によれば、セラミックス性のマトリックス材料が、繊維複合構造体または繊維複合構造体の一部を形成するために使用可能である。
【0051】
本発明の有利な構成によれば、電気的な加熱エレメントが、通電方向で区分されており、個々の区分が、付加的な電子的な構成エレメントによって全体的にまたは部分的に橋渡し可能であり、これによって、相応の区分における通電量と加熱出力とに影響が与えられるようになっている。
【0052】
本発明の有利な構成によれば、電気的な加熱エレメントが、通電方向で区分されており、1つの加熱エレメントの個々の区分が、直列回路を形成している。
【0053】
本発明の有利な構成によれば、区分された電気的な加熱エレメントが、直列回路によって、当該成形工具の大きな寸法時でも全体的に小電圧で運転可能である。
【0054】
本発明の有利な構成によれば、電気的な加熱エレメントの、電流を案内しかつ重なり合って配置された個々の層が、厚さ方向で、肉薄の絶縁性の層によって互いに絶縁されており、個別の区分分割が、多層技術での薄膜状の加熱エレメントの積層によって達成可能である。
【0055】
本発明の有利な構成によれば、付加的な肉薄のかつ局所的に制限されて挿入された電気的な加熱エレメントによって、当該成形工具内の通電量が、局所的に可変であり、これによって、当該成形工具の面の内部での面加熱出力の部分的な変更が可能である。
【0056】
本発明の有利な構成によれば、当該成形工具が、通路によって貫通されており、該通路を通して、冷却空気または別のガス状のまたは液状の冷媒が案内されるようになっている。
【0057】
本発明は、熱により影響を与えることができる材料、有利にはプラスチックおよび特に繊維複合材料から成る構成部材に一次成形形状付与または二次成形形状付与するための成形工具であって、当該成形工具が、繊維複合構造体と電気的な抵抗加熱エレメントとを有しており、当該成形工具の繊維複合構造体内に、当該成形工具の形状付与表面の近傍で、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが埋め込まれている形式のものに関する。このような形式の上位概念による成形工具は、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが、形状付与表面の近傍で、主として、当該成形工具の機械的な特性、特に強度、剛性および/または熱膨張を規定しており、電気的な抵抗加熱エレメントの少なくとも個々の区分が、互いに電気的な並列回路を形成しているように、電気的な抵抗加熱エレメントが接続されていることによって一層改良される。本発明の特質は、加熱層の組込みと型表面の構造とにある。この場合、炭素繊維層が同時に抵抗加熱エレメントとして使用され、型表面の横断面の主要な構成要素を成していることが重要である。この場合、別の層と比較した炭素繊維層の層厚さ割合は重要でなく、炭素繊維層が繊維複合構造体の層構造の機械的な特性、特に強度、剛性および熱膨張も支配するという事実が重要となる。本発明によって、相応の成形工具の材料を著しく減少させることができる。このことは、成形工具の熱容量を全体的に著しく減少させ、ひいては、成形工具の昇温時のエネルギ使用を著しく減少させる。本発明による構造と、調整された材料選択とに基づき、型の熱歪みを広域の温度範囲内で十分に回避することができる。本発明によって、ほぼ任意のサイズにおける成形工具を均質にかつ比較的僅かなエネルギ消費で電気的に加熱することができるようにするための廉価な解決手段が発見された。本発明の核心は、加熱層と、支持する被覆層との統合である。この被覆層では、炭素繊維の導電性が使用され、これによって、型の、支持する被覆層が、抵抗加熱体として直接使用される。炭素繊維の導電性を抵抗加熱体として使用する従来の試験と異なり、型の電気的な接続は並列回路の形で行われ、これによって、互いに衝突する加熱ストランドの電位差に基づく慣用の直列回路の場合のような短絡が排除される。これによって、別の絶縁性の層を、型被覆層を除いて、十分に省略することもできる。電気的な抵抗加熱エレメントの並列回路によって、電気的な抵抗加熱エレメントの抵抗が著しく減少させられ、これによって、すでに、印加したい僅かな電圧での成形工具の加熱が可能となる。
【0058】
従来の炭素繊維ベースの加熱層では、有利には一方向の炭素繊維織布または炭素繊維層状体が使用されたのに対して、ここでは、有利には二方向の炭素繊維織布が使用される。多軸の織布または層状体の使用も可能である。本事例では、横方向に延びる炭素繊維が、加熱層の通電に対する直角方向での電位補償のために働く。こうして、個々の炭素繊維における欠陥部または中断部を橋渡しすることもできる。この場合、電気的に直接コンタクティングされる炭素繊維は、有利には成形工具の長手方向に平行に延びていてよく、これに対して横方向にまたは斜めに延びる付加的な炭素繊維が間接的に層コンタクトを介して伝導機能を一緒に引き受けることができ、こうして、1つには、主通電方向に対して横方向での電位補償を実現することができ、もう1つには、多軸の、有利には擬似等方性のラミネート構造を可能にすることができる。このラミネート構造は、炭素繊維の使用時に、極めて僅かな熱膨張を伴う被覆層の構造を許容する。
【0059】
この場合、別の構成では、炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリが、部分的にまたは全体的に、個別繊維または個別フィラメントとしてかつ/または層状体、織布、フリースまたは互いに平行なストランドの形の単位体として形成可能であることが可能である。この場合、成形工具の構成部材側の表面の個々の区分は、このような形式の単位体によって全面的に形成されてもよいし、部分的にしか形成されなくてもよい。この場合、この単位体は、全体的に再び並列回路の形で互いに接続される。この場合、構成部材の各トポグラフィへの、このような形式の単位体の形状と構成との適合ほかに、構成部材の十分に面状の加熱が達成されることが有利である。この加熱は、通常メアンダ状に延びる直列接続された抵抗加熱エレメントの場合には、極めて手間をかけてしか達成することができない。
【0060】
この場合、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが、成形工具の構成部材側の表面に直接隣接して埋め込まれていると特に有利である。成形工具の、こうして組み込まれた加熱体は、加熱出力を構成部材側の型表面に直接発生させる。この場合、加熱体は、熱が必要となるところに大面状に直接作用する。これは、熱流路を短縮し、炭素繊維のすぐ周辺における過温度を減少させ、電気的な加熱エネルギの極めてエネルギ節約的な変換に繋がる。
【0061】
別の構成では、炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、主として、擬似等方性に形成されていることが可能である。これによって、炭素繊維または炭素フィラメントまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体の機械的な強度値に関しても熱的な作用に関しても成形工具の全ての領域に同じ状況が付与され、これによって、製作したい構成部材の全ての領域にわたって均一な構成部材温度調整が得られることを達成することができる。
【0062】
別の実施態様は、部分的に、付加的な炭素繊維層が被着されるかまたは炭素繊維層の個数および/または厚さが減少させられるように形成されている。この場合、顕著な特徴は、型のオーム特性に基づき、面加熱出力が部分的に変化させられることである。こうして、たとえば長方形と異なる形状の型横断面の場合に強制的に生ぜしめられるそれぞれ異なる面加熱出力を補償することもできる。したがって、たとえば著しく先細りにされた細長い台形では、型表面全体にわたってコンスタントな面加熱出力を達成したい場合に、炭素繊維層の全厚さが先細り端部に向かって連続的に増加していなければならない。
【0063】
炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリの個々の単位体の間に、非導電性の領域が形成されていることも同じく可能である。このような形式の非導電性の領域は、構成部材への意図的な温度形成のために働くことができる。なぜならば、このような形式の非導電性の領域では、構成部材の能動的な温度調整も行われず、これによって、意図的に温度勾配を構成部材の内部にこの構成部材の硬化時に得ることができるからである。この場合、それぞれ隣接して相並んでまたは重なり合って位置する抵抗加熱エレメントを互いに分離するために、非導電性の領域が、1つの平面の内部に組み込まれているかまたは重なり合って配置された平面の間に垂直に組み込まれていることが可能である。
【0064】
成形工具の機械的な特性に関して、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、高い剛性を有していることが特に重要である。これによって、同時に別の層をより少なく剛性的に形成することができるので、成形工具の全剛性が十分に圧倒的に炭素繊維層によって規定される。さらに、したがって、成形工具の、ほぼ同程度に剛性的に設計された層の種々異なる材料の間の熱応力を回避することができ、これによって、昇温時の成形工具の歪みを著しく減少させることができる。これによって、製作したい構成部材の寸法安定性を著しく高めることができる。
【0065】
成形工具の温度調整時に生ぜしめられる応力および変形に関して、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントから成る、電気的な抵抗加熱エレメントを含む層の熱膨張または炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体の熱膨張が、極めて僅かであることが重要である。これによって、成形工具の温度変化がより大きい場合でも、製作したい構成部材の僅かな寸法変化しか生ぜしめられない。これによって、製造が簡単になると共に改善される。成形工具の使用時のサイクル時間は能動的な冷却によって一層減少させることができる。この冷却は、サンドイッチ構造での成形工具の構造において、サンドイッチコアが、通路によって貫通されており、この通路を通して、冷却空気または別のガス状のまたは液状の冷媒が案内されることによって簡単に達成することができる。この場合、付加的には、昇温段階の間の温度勾配を補償するための相応の媒体を、型に貫かれた閉じられた循環路内で案内することが可能となる。たとえばスリット付けされたコア材料を備えた相応に排出可能な型を簡単に形成することができる。
【0066】
本発明により形成された成形工具の使用の経済性の更なる改善を達成することができる。なぜならば、成形工具を加熱するためのエネルギ消費が、電気的な抵抗加熱エレメントを含む層の材料からの僅かな層厚さに基づき同じくほんの僅かであるからである。成形工具の材料の温度調整および冷却は、僅かな層厚さに基づき著しく迅速にかつ僅かなエネルギ使用で行うことができ、これによって、相応の構成部材を製作するためのサイクル時間を減少させることができる。
【0067】
さらに、互いに並列に接続された炭素繊維または炭素フィラメントの電気的な抵抗または炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体の電気的な抵抗が、全体的に並列回路によって極めて僅かであると有利である。これによって、すでに僅かな電圧、特に低ボルト電圧を、昇温のために、電気的な抵抗加熱エレメントに対して使用することができ、これによって、電気的な運転確実性も保証され、エネルギ使用も最小限に抑えられることが達成可能となる。
【0068】
製作したい構成部材の表面の構成に関して、成形工具の構成部材側の表面が、型被覆層によって形成されており、この型被覆層が、電気的な抵抗加熱エレメントを含む層を構成部材側で、有利には薄膜状にカバーしていると有利である。このような形式の肉薄の型被覆層は、構成部材の平滑な表面を生ぜしめ、炭素繊維を含む層の損傷を回避する。その他の点では、この型被覆層の相応に僅かな層厚さと良好な熱伝導特性とによって、抵抗加熱エレメントを備えた層と、構成部材との間の温度案内の万が一の問題が確実に回避される。
【0069】
成形工具の機械的な安定性に関して、電気的な抵抗加熱エレメントを有する層の、構成部材と反対の側の面に補強層が被着されていると有利である。たとえば安定した軽量構造層の形で、たとえばサンドイッチ構造から形成されていてよいこのような形式の補強層は、成形工具の重量が過度に増加させられることなしに、成形工具の構造における更なる機械的な固定のために働く。この場合、サンドイッチ構造では、加熱層を、有利には同時に両被覆層の一方に製作することができる。この両被覆層は、サンドイッチ構造を形成するために必要となる。たとえば、補強層が、電気的に絶縁性に形成されていることも可能である。
【0070】
成形工具の層の構造に関して、電気的な抵抗加熱エレメントを有する繊維複合層、型被覆層および/または補強層の間に付加的な中間層が配置されており、この付加的な中間層が、たとえば電気的に絶縁性に形成されているかまたは繊維複合構造体の、隣接した層に対する結合機能を有していると有利であり得る。たとえば有利には肉薄のガラス繊維織布から繊維複合構造体内に形成することができるこのような形式の中間層は、層構造全体の特性を最適化する。
【0071】
さらに、補強層の、構成部材と反対の側の面に配置される別の型被覆層として、プラスチックマトリックス内に埋め込まれた炭素繊維を含んだ層を設けることができることが可能である。これによって、温度調整時の成形工具の層の歪みが一層予防される。なぜならば、この別の型被覆層を、電気的な抵抗加熱エレメントを含む繊維複合層に類似して機械的に形成することができ、これによって、たとえば相互間に配置された補強層が両側で機械的に等価値の層によって取り囲まれているからである。この場合、構成部材と反対の側の型被覆層の炭素繊維が、構成部材に面した側の、電気的な抵抗加熱エレメントを含む繊維複合層の炭素繊維に対して電気的に絶縁されていることが可能である。
【0072】
電気的な抵抗加熱エレメントを含む繊維複合層の均一な機械的なかつ電気的な特性に関して、炭素繊維または炭素フィラメントの配向または炭素繊維または炭素フィラメントから成る単位体の配向が、同じ繊維複合層の別の炭素繊維または炭素フィラメントまたは単位体に対してずらされており、かつ/またはねじられていると有利である。これによって、機械的な負荷も、温度発生も、電気的な抵抗加熱エレメントを含む繊維複合層の内部で十分均一に行われ、これによって、相応に均一に構成部材にも伝達されるように、繊維または単位体を配向することができる。
【0073】
さらに、型被覆層と中間層とが、ほんの僅かな剛性を有していて、繊維複合構造体全体の機械的な特性にほんの僅かしか影響を与えないと有利である。これによって、著しい応力が成形工具の温度調整時に個々の層の間に生ぜしめられず、これによって、成形工具の歪みが最小限に抑えられる。
【0074】
電気的な抵抗加熱エレメントの電気的なコンタクティングに関して、炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、繊維または単位体の端側で電気的にコンタクティングされていて、並列回路として互いに接続されていると有利である。外位のコンタクティングによって、抵抗加熱エレメントへの良好な接近可能性を達成することができ、並列回路に対する接続作業を簡単に実施することができる。
【0075】
構成部材の温度調整に関して、特に必要となるエネルギ消費のために、構成部材に形状付与するための成形工具の昇温時に、この成形工具が、少なくとも部分的に断熱的に被覆されると特に有利であると判った。断熱的な被覆によって、発生させられた熱を、特に良好に成形工具の内部に保持することができ、防熱材料の存在、防熱材料の種類および厚さならびに防熱材料の配置に応じて、この防熱材料を、成形工具の内部での構成部材の昇温時の局所的な温度制御のために使用することができる。したがって、たとえば成形工具を局所的にのみ断熱し、これによって、局所的により高い温度を発生させることが可能となる。この温度は、全く断熱されていない領域または僅かに断熱されている領域と異なり、構成部材の硬化に影響を与える。このことは、成形工具の内部での構成部材の製作過程に与えられる更なる影響を許容する。
【0076】
自体強度特性を損失することなしに、繊維複合構造の、成形工具を形成する層が、最大300℃、有利には最大140℃の構成部材の製作時の温度に問題なく耐えるような温度に成形工具の材料が規定されていると有利である。温度安定性に関する別の構成では、セラミックス性のマトリックス材料が、繊維複合構造体または繊維複合構造体の一部を形成するために使用されることも可能である。
【0077】
さらに、電気的な加熱エレメントが、通電方向で区分されており、個々の区分を、付加的な電子的な構成エレメントによって全体的にまたは部分的に橋渡しすることができ、これによって、相応の区分における通電量と加熱出力とに影響が与えられることが可能である。これによって、完全に意図的にそこで熱的なエネルギを、この熱的なエネルギが必要となる処理したい構成部材に供給することができるのに対して、別の領域では、電気的な加熱エレメントに熱的なエネルギが全く発生させられないかまたは僅かな熱的なエネルギが発生させられる。この場合、電気的な加熱エレメントが、通電方向で区分されており、1つの加熱エレメントの個々の区分が、直列回路を形成していると有利であり得る。これによって、特に区分された電気的な加熱エレメントが、直列回路に基づき、成形工具の大きな寸法時でも全体的に小電圧で運転可能であり、これによって、電気的にも安全技術的にも成形工具の簡単な加熱を達成することができることを達成することができる。
【0078】
さらに、電気的な加熱エレメントの、電流を案内しかつ重なり合って配置された個々の層が、厚さ方向で、肉薄の絶縁性の層によって互いに絶縁されており、個別の区分分割が、多層技術での薄膜状の加熱エレメントの積層によって達成可能であることが可能である。ここでは、熱的なエネルギの、加熱エレメントの区分された構成によって達成可能なそれぞれ異なる供給が、加熱エレメントの、成形工具表面に対してほぼ垂直に配置されたスタックによって達成される。加熱エレメントは、それぞれ肉薄の絶縁性の層によって電気的に互いに分離されて重なり合って積層されている。
【0079】
別の構成では、付加的な肉薄のかつ局所的に制限されて挿入された電気的な加熱エレメントによって、成形工具内の通電量が、局所的に変化させられてよく、これによって、成形工具の面の内部での面加熱出力の部分的な変更が可能である。前述した全ての手段によって、成形工具の表面への熱的なエネルギの供給の、局所的に有効な変更が達成されることを生ぜしめることができる。この変更は、たとえばこの局所的な箇所での構成部材の一次成形または二次成形に対して有利である。
【0080】
請求項1記載の本発明による成形工具の特に有利な実施形態が図面に示してある。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】長方形の形をした本発明による単純な加熱可能な成形工具を部分的な横断面の例で示す図である。
【図2】図1による成形工具の加熱電圧が設定されている場合の型の電流、加熱出力および面加熱出力を示す図である。
【図3】200W/mの面加熱出力の場合の種々異なる断熱体を備えた図1による成形工具の昇温時の温度経過を示す図である。
【0082】
例として、図1には、長方形の形をした単純な加熱可能な成形工具の構造が示してある。この構造では、成形工具を以下の層構造:すなわち、
第1の層:型被覆層(層厚さS≒0.4mm)
第2の層:ガラス繊維織布105g/m(層厚さS≒0.1mm)
第3の層:二軸の炭素繊維織布193g/m(層厚さS≒0.27mm)、繊維 配向0゜/90゜
第4の層:二軸の炭素繊維織布193g/m(層厚さS≒0.27mm)、繊維 配向±45
第5の層:ガラス繊維織布105g/m(層厚さS≒0.1mm)
第6の層:ポリアミドハニカムコアECA3.2−48(層厚さS≒12.7mm )
第7の層:二軸の炭素繊維織布193g/m(層厚さS≒0.27mm)、繊維 配向±45
第8の層:二軸の炭素繊維織布193g/m(層厚さS≒0.27mm)、繊維 配向0゜/90゜
で製作することができる。
【0083】
図示の層構造は、多くの可能な層構造のただ1つの例を示すものであり、本発明の枠内で種々様々に変更することができることは自明である。
【0084】
図1に示した成形工具の全横断面をサンドイッチ構造と見なす場合には、層1〜5が第1のサンドイッチ層を成している。第6の層はサンドイッチコアであり、層7,8は第2のサンドイッチ層を成している。
【0085】
織布強化された層は、常温硬化性の積層樹脂で含浸させられている。この積層樹脂は、相応の温度調整後、最大140℃の熱成形耐性を有している。
【0086】
層厚さSの型被覆層は、140℃の熱成形耐性を備えた慣用の型被覆層樹脂から成っている。繊維強化された層に比べて、型被覆層は比較的肉厚である。しかし、炭素繊維織布の層に対する僅かな剛性に基づき、型被覆層は型構造全体の機械的な特性に僅かしか影響を与えない。型被覆層は研磨可能であり、気孔なしの表面に基づき、高い回数の離型と同時に僅かな型摩耗を保証している。
【0087】
層厚さS,Sのガラス繊維織布層は製造技術的な理由から必要であってよく、型被覆層Sと炭素繊維織布の層S,Sとの間の良好な固着を確保するようになっている。これらの層も炭素繊維織布の後続の層に対する僅かな剛性を有していて、型構造全体の機械的な特性に僅かしか影響を与えない。
【0088】
炭素繊維織布の層S,Sは、電気的な抵抗加熱層だけでなく、第1のサンドイッチ層の構造上の主要な構成要素も成している。炭素繊維織布の層S,Sは、別の層と比較した高い剛性に基づき、第1のサンドイッチ層の機械的な特性と熱膨張とを十分に規定している。
【0089】
ガラス繊維織布層Sはガラス繊維織布層Sと同様に製造技術的な理由から必要であってよく、炭素繊維織布の層とサンドイッチコアSとの間の良好な固着を保証している。
【0090】
炭素繊維織布の層S,Sは擬似等方性のラミネート構造として第2のサンドイッチ層を形成している。
【0091】
両サンドイッチ層の熱膨張は、主として、炭素繊維によって規定されるので、それぞれ異なる温度の場合の熱膨張ひいては生じ得る熱歪みは極めて僅かである。
【0092】
成形工具の前記構造では、主として、以下の考えおよび特性が使用される。
【0093】
・型の主要な構成要素は、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維織布から成 る層である。この層は、型基礎構造体の、支持する機能を引き受けるだけでなく、 直接、炭素繊維への通電による電気的な抵抗加熱体の形の加熱層としても働く。こ の場合、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維織布は、可能な限り擬似等 方性に形成されていることが望ましい。型加熱体と、支持する型基礎構造体との統 合によって、成形工具に対する材料消費を著しく減少させることができる。同時に 、型を加熱するために必要となる熱量が減少させられる。さらに、こうして、種々 異なる材料の間の熱応力を回避することができる。
【0094】
・プラスチックマトリックスに含まれた可能な限り均質の炭素繊維織布は、ただ1つ の加熱ストランドを形成している。この加熱ストランドは、有利には型の長手方向 で並列に接続される。これによって、加熱エレメントが肉薄のラミネート層から成 っている。横断面は、型の長手方向での接続時には、型の幅「B」と炭素繊維織布 の厚さ「S」との積にほぼ相当している。加熱エレメントの長さ「L」は、図示の 事例では、成形工具の全長にほぼ相当している。
【0095】
・この場合、型の気孔なしの表面と構成部材製作時の良好な分離作用とを保証する樹 脂十分な型被覆層は一般的に必要となる。この型被覆層は、必要である限り、可能 な限り肉薄であることが望ましく、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維 織布の層の機械的なかつ熱的な特性に僅かしか影響を与えないことが望ましい。
【0096】
・プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維織布の加熱される層は、場合により 、上述した型被覆層と相俟って、本来の型面を形成している。この型面は全体的に 肉薄であり、したがって、比較的曲げ弛緩的である。補強のためには、成形工具を サンドイッチ構造に形成することができる。この場合、補強層のコア材料は、第2 の被覆層への電流流れを阻止したい場合には、電気的に絶縁性であってよい。第2 の被覆層への電流流れを所望したい場合には、補強層の導電性のコア材料が使用さ れてもよい。
【0097】
・第2の型被覆層は、有利には同じくプラスチックマトリックスに含まれた擬似等方 性の炭素繊維織布から成っている。これによって、成形工具の熱膨張が、主として 、擬似等方性の2つの被覆ラミネートによって規定される。このラミネート構造は 、公知の形式で広域の温度範囲内で極めて僅かな熱膨張しか有していないので、被 覆層におけるそれぞれ異なる温度にもかかわらず、型の熱膨張だけでなく熱歪みも 極めて僅かとなる。両被覆層が僅かな熱膨張しか有していない場合には、温度影響 による型の曲げ変形も極めて僅かなままとなる。さらに、温度に起因した僅かな曲 げ変形は、型の著しい重量増加なしのコア厚さの増加によって減少させることがで きる。
【0098】
・たとえば個々の層の電気的な絶縁が所望されるかまたは処理技術的な理由から個々 の層相互の十分な固着がこのことを有利であると思わせる場合には、別の層が任意 の箇所に間挿されてよい。この場合、付加的な層が加熱層の機械的な特性、特に熱 膨張に全く影響を与えないかまたは僅かしか影響を与えないように形成されること に注意しなければならない。この場合、特にアルミニウムハニカムコアまたは炭素 繊維ハニカムコアの使用も可能である。
【0099】
図1による成形工具の加熱出力の規定に関して、以下のことが重要となる。
【0100】
図示の加熱可能な型は、例として、加熱される長さL=1370mmとB=557mmの幅とを備えて長方形である。図示の事例では、層Sしか直接的に電気的にコンタクティングされていない。このためには、それぞれ炭素繊維から成る4つの経糸が心線エンドスリーブ内で圧潰されていて、埋め込まれたアースストラップにろう接されている。経糸は型の長手方向に延びていて、これによって、個々の抵抗糸の並列回路を形成している。この織布層の、同じく炭素繊維から成る、経糸に対して横方向に延びる緯糸は、この配置事例では、原理的に電流を案内しないものの、たとえば個々の経糸が仮に損傷させられている事例では、電位補償のために働くことができる。
【0101】
したがって、層Sの電気的な抵抗には、図示の事例において:
=Rspez,Faden・L/n
が当てはまる。
【0102】
この場合:
:第3の層の電気的な抵抗
spez,Faden:個々の経糸の固有の抵抗
L:加熱ゾーンの長さ
n:並列に接続された経糸の数
である。
【0103】
電気的にコンタクティングされた繊維層に直接被着される別の炭素繊維層が、直接的にコンタクティングされた層と同じ伝導性をほぼ有していることが試験から判った。斜めに延びる繊維の場合には、幅あたりの相応に変化させられた繊維数と、生ぜしめられる長さとが考慮されなければならない。図示の事例では、対角線方向に敷設された第4の層が全体的に第3の織布層と同じ伝導性を有している。
【0104】
付加的なコンタクト抵抗に基づき、理論的な演算によって生ぜしめられる値よりも僅かに高い値が型において測定される。測定された抵抗は、ここでは、前述した値を約12%上回っている。
【0105】
図2には、電流と、加熱出力と、型の面加熱出力とが示してある。これらは、設定された加熱電圧において生ぜしめられる。型加熱体のオーム抵抗は100℃までの温度範囲内で僅かしか変化させられないので、電流が線形に加熱電圧と共に増加するのに対して、加熱出力は電圧の二乗と共に増加する。
【0106】
さらに、この場合、オーム抵抗が相応の構造の場合に極めて僅かであることが重要であり、これによって、自体より大きな加熱型を小電圧で加熱することができる。
【0107】
種々異なる試験構造では、加熱層の種々異なる構造に対する理論的に演算されたオーム抵抗が、測定された値に良好に合致することを示すことができた。
【0108】
相応の型加熱時に型表面に達成される温度は、主として、以下のパラメータ:すなわち、
・面加熱出力[W/m
・周辺温度
・型における熱流量
・周辺への熱伝達に影響を与える、型に隣接した媒体
に関連している。
【0109】
この場合、達成可能な温度は、絶縁体ほど十分に面加熱出力によって規定されないことが明確に判った。
【0110】
成形工具の運転に対して、この成形工具の熱的な絶縁、つまり、断熱が行われると特に有利であると判った。
【0111】
前述した簡単な加熱プレートでは、室温(約25℃)で82℃の表面温度が達成されることが望ましい。図3には、200W/mの面加熱出力の場合の種々異なる断熱体を備えた加熱プレートの温度経過が示してある。周辺温度に対する温度差が図示される。
【0112】
図3では、断熱体の影響が極めて明確になる。断熱体なしでは、12.9Kの温度上昇しか型表面で測定されなかったのに対して、同じ面加熱出力のまま、載着された二重フリースでは、33.6Kの温度上昇が測定される。表面に載置した付加的な防熱板の場合には、温度上昇が同じ面加熱出力で57.3Kであった。
【0113】
この温度上昇は、型が完全に防熱される場合に一層著しくなる。別の試験では、加熱出力が100W/mに二分された。加熱型が下面および上面で40mmの厚さの防熱板によって断熱された。この場合、型表面では、周辺温度を70K上回った温度が測定された。
【0114】
この測定は、簡単な断熱によって、加熱出力要求を著しく減少させることができることを示している。昇温率は、全ての事例において、必要となる昇温率を著しく上回っていた。この昇温率は、繊維強化されたエポキシ樹脂から成る構成部材の場合には、一般的に10K/hを恐らく上回らない。
【0115】
この研究は、防熱に特別な注意が払われることが望ましいことを示している。特に加熱出力が設定されている場合には、温度経過に断熱材料の付加もしくは除去によって意図的に、場合により部分的にも影響を与えることができることが可能であるように思える。このことは、たとえば複雑な型ジオメトリの場合に有利となるであろう。この型ジオメトリでは、型ジオメトリ全体にわたるコンスタントな面加熱を、場合により困難にしか実現することができない。
【0116】
本発明による成形工具の使用可能性に関して、以下のことを述べることができる。
【0117】
前述した加熱可能なプラスチック型の使用可能性は、有利には、単純なジオメトリを備えた大面状のシェル構成部材を小規模ないし中規模の個数で製作しかつ形状付与の間または形状付与後に型内で加熱したい分野に位置している。この場合、型は、これまで研究された繊維プラスチック系によって約100℃までの温度を保証することができる。この場合、耐熱性は、使用される人造樹脂系によって制限される。耐熱性の別の樹脂系によって、型の製作時の著しいプロセス変化が恐らく行われる必要なしに、200℃を著しく上回る熱成形耐性が可能となる。しかし、セラミックス性のマトリックス材料によって、場合により、著しく高い熱成形耐性を備えた型を類似の形式で恐らく形成しかつ加熱することもできる。
【0118】
相応の型でこれまでよりも著しく経済的に恐らく製作することができる可能な構成部材は、特に大面状の繊維複合構成部材、たとえば航空機構造における主翼エレメント、胴体エレメントまたは尾翼エレメント、種々異なる搬送システムまたは医療技術に用いられるパネル、ボート胴体または風車翼である。しかし、繊維強化なしのプラスチック構成部材も、原理的には、加熱可能な相応のプラスチック型で製作することができる。
【0119】
したがって、大きな深絞り型が、たとえば回転焼結型と同じく、前述した形式で形成されていてもよい。
【0120】
別の使用分野が可能である。したがって、この構造の使用事例が、単に型に限定される必要はない。例として、たとえば航空機除氷のための加熱可能な構成部材または小電圧で運転される電気的に加熱可能な容器、浴槽またはこれに類するものも類似の形式で実現可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱により影響を与えることができる材料、有利にはプラスチックおよび特に繊維複合材料から成る構成部材に一次成形形状付与または二次成形形状付与するための成形工具であって、当該成形工具が、繊維複合構造体と電気的な抵抗加熱エレメントとを有しており、当該成形工具の繊維複合構造体内に、当該成形工具の形状付与表面の近傍で、プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが埋め込まれている形式のものにおいて、
プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが、形状付与表面の近傍で、主として、当該成形工具の機械的な特性、特に強度、剛性および/または熱膨張を規定しており、電気的な抵抗加熱エレメントの少なくとも個々の区分が、互いに電気的な並列回路を形成しているように、電気的な抵抗加熱エレメントが接続されていることを特徴とする、熱により影響を与えることができる材料から成る構成部材に一次成形形状付与または二次成形形状付与するための成形工具。
【請求項2】
炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリが、部分的にまたは全体的に、個別繊維または個別フィラメントとしてかつ/または層状体、織布、フリースまたは互いに平行なストランドの形の単位体として形成可能である、請求項1記載の成形工具。
【請求項3】
プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントが、当該成形工具の構成部材側の表面に直接隣接して埋め込まれている、請求項1または2記載の成形工具。
【請求項4】
炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、主として、擬似等方性に形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項5】
炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリの個々の単位体の間に、非導電性の領域が形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項6】
非導電性の領域が、1つの平面の内部に組み込まれているかまたは重なり合って配置された平面の間に垂直に組み込まれている、請求項5記載の成形工具。
【請求項7】
プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、高い剛性を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項8】
プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、主として、繊維複合構造体全体の機械的な特性と熱膨張とを規定している、請求項1から7までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項9】
プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントから成る、電気的な抵抗加熱エレメントを含む層の熱膨張または炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体の熱膨張が、極めて僅かである、請求項8記載の成形工具。
【請求項10】
プラスチックマトリックスに含まれた炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、放出された加熱出力を、成形したい構成部材の表面に直接発生させるようになっている、請求項1から9までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項11】
当該成形工具を加熱するためのエネルギ消費が、電気的な抵抗加熱エレメントを含む層の材料からの僅かな層厚さに基づき同じくほんの僅かである、請求項1から10までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項12】
互いに並列に接続された炭素繊維または炭素フィラメントの電気的な抵抗または炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体の電気的な抵抗が、全体的に並列回路によって極めて僅かである、請求項1から11までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項13】
ほんの僅かな電圧、特に低ボルト電圧が、昇温のために電気的な抵抗加熱エレメントに印加されるようになっている、請求項12記載の成形工具。
【請求項14】
当該成形工具の構成部材側の表面が、型被覆層によって形成されており、該型被覆層が、電気的な抵抗加熱エレメントを含む層を構成部材側で、有利には薄膜状にカバーしている、請求項1から13までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項15】
電気的な抵抗加熱エレメントを有する層の、構成部材と反対の側の面に補強層が被着されている、請求項1から14までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項16】
補強層が、安定した軽量構造層の形の構造を有している、請求項15記載の成形工具。
【請求項17】
補強層が、サンドイッチ構造を有している、請求項16記載の成形工具。
【請求項18】
補強層が、電気的に絶縁性に形成されている、請求項15から17までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項19】
電気的な抵抗加熱エレメントを有する繊維複合層、型被覆層および/または補強層の間に付加的な中間層が配置されている、請求項1から18までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項20】
付加的な中間層が、電気的に絶縁性に形成されている、請求項19記載の成形工具。
【請求項21】
付加的な中間層が、繊維複合構造体の、隣接した層に対する結合機能を有している、請求項19または20記載の成形工具。
【請求項22】
付加的な中間層として、有利には肉薄のガラス繊維織布から成る層が、繊維複合構造体内に配置されている、請求項19から21までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項23】
補強層の、構成部材と反対の側の面に配置される別の型被覆層として、プラスチックマトリックス内に埋め込まれた炭素繊維を含んだ層が設けられるようになっている、請求項1から22までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項24】
構成部材と反対の側の型被覆層の炭素繊維が、構成部材に面した側の、電気的な抵抗加熱エレメントを含む繊維複合層の炭素繊維に対して電気的に絶縁されている、請求項23記載の成形工具。
【請求項25】
炭素繊維または炭素フィラメントの配向または炭素繊維または炭素フィラメントから成る単位体の配向が、同じ繊維複合層の別の炭素繊維または炭素フィラメントまたは単位体に対してずらされており、かつ/またはねじられている、請求項1から24までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項26】
型被覆層と中間層とが、ほんの僅かな剛性を有していて、繊維複合構造体全体の機械的な特性にほんの僅かしか影響を与えないようになっている、請求項1から25までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項27】
炭素繊維または炭素フィラメントの、電気的な抵抗加熱エレメントを形成するアッセンブリまたは炭素繊維または炭素フィラメントから形成された単位体が、繊維または単位体の端側で電気的にコンタクティングされていて、並列回路として互いに接続されている、請求項1から26までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項28】
構成部材に形状付与するための当該成形工具の昇温時に、当該成形工具が、少なくとも部分的に断熱的に被覆されている、請求項1から27までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項29】
断熱材料の存在、防熱材料の種類および厚さならびに防熱材料の配置が、当該成形工具の内部での構成部材の昇温時の局所的な温度制御のために使用可能である、請求項28記載の成形工具。
【請求項30】
繊維複合構造体の、当該成形工具を形成する層が、最大300℃、有利には最大140℃の構成部材の製作時の温度に対して設計されている、請求項1から29までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項31】
セラミックス性のマトリックス材料が、繊維複合構造体または繊維複合構造体の一部を形成するために使用可能である、請求項30記載の成形工具。
【請求項32】
電気的な加熱エレメントが、通電方向で区分されており、個々の区分が、付加的な電子的な構成エレメントによって全体的にまたは部分的に橋渡し可能であり、これによって、相応の区分における通電量と加熱出力とに影響が与えられるようになっている、請求項1から31までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項33】
電気的な加熱エレメントが、通電方向で区分されており、1つの加熱エレメントの個々の区分が、直列回路を形成している、請求項1から32までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項34】
区分された電気的な加熱エレメントが、直列回路によって、当該成形工具の大きな寸法時でも全体的に小電圧で運転可能である、請求項33記載の成形工具。
【請求項35】
電気的な加熱エレメントの、電流を案内しかつ重なり合って配置された個々の層が、厚さ方向で、肉薄の絶縁性の層によって互いに絶縁されており、個別の区分分割が、多層技術での薄膜状の加熱エレメントの積層によって達成可能である、請求項1から34までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項36】
付加的な肉薄のかつ局所的に制限されて挿入された電気的な加熱エレメントによって、当該成形工具内の通電量が、局所的に可変であり、これによって、当該成形工具の面の内部での面加熱出力の部分的な変更が可能である、請求項1から35までのいずれか1項記載の成形工具。
【請求項37】
当該成形工具が、通路によって貫通されており、該通路を通して、冷却空気または別のガス状のまたは液状の冷媒が案内されるようになっている、請求項1から36までのいずれか1項記載の成形工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−511534(P2010−511534A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539605(P2009−539605)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/DE2007/002219
【国際公開番号】WO2008/067809
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509161130)
【氏名又は名称原語表記】Fachhochschule Dortmund
【住所又は居所原語表記】Sonnenstrasse 96, D−44139 Dortmund, Germany
【Fターム(参考)】