説明

熱交換器およびその製造方法

【課題】製造する際に熱交換管にエロージョンが発生することを防止、さらに製造コストの低減および軽量化を図りうる熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器であるコンデンサのヘッダタンク2,3は、少なくとも外面にろう材層を有する筒状体からなり、かつ複数の管挿通穴12を有するヘッダタンク本体10と、ヘッダタンク本体10の両端両端開口を閉鎖する閉鎖部材11とからなる。コンデンサの熱交換管4のコルゲートフィン5がろう付される面に、長さ方向にのびる凹溝が存在している。ヘッダタンク本体10の外面に、2つの溶接ビード13を、管挿通穴12の通風方向の両側においてヘッダタンク本体10の全長にわたって形成する。溶接ビード13は、ヘッダタンク本体10外面のろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばカーエアコンのコンデンサやエバポレータ、オイルクーラ、ラジエータ、ヒータコアなどの自動車に搭載される熱交換器およびその製造方法に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」という用語には、「純アルミニウム」と表現する場合を除いて、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
自動車用熱交換器として、外面にろう材層を有する材料により形成され、かつ互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がヘッダタンクに形成された管挿通穴内に挿入された状態でヘッダタンクにろう付された複数の扁平状熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間に配置されて熱交換管にろう付されたコルゲートフィンとを備えており、ヘッダタンクが、少なくとも外面にろう材層を有する筒状体からなり、かつ複数の管挿通穴を有するヘッダタンク本体と、ヘッダタンク本体の両端にろう付されてその両端開口を閉鎖する閉鎖部材とからなるものが広く用いられている。
【0004】
ところで、近年、自動車用熱交換器には、さらなる高性能化、軽量化などが求められているため、熱交換管の管壁の薄肉化を図ったり、ヘッダタンクを形成する材料に使用するろう材の量を減らしたりする傾向にある。
【0005】
自動車用熱交換器に用いられる熱交換管としては、アルミニウム押出形材製のものの他に、アルミニウムブレージングシート製素板を折り曲げて扁平中空状に成形したものが知られている(特許文献1参照)。特許文献1記載の熱交換管は、互いに対向する1対の平坦壁と、両平坦壁の両側縁どうしに跨る2つの側壁と、両平坦壁の幅方向の中間部どうしに跨る補強壁とを備えており、一方の平坦壁を形成する1つの第1平坦壁形成部、第1平坦壁形成部の両側縁に設けられかつ側壁を形成する2つの側壁形成部、両側壁形成部における第1平坦壁形成部とは反対側の側縁に設けられかつ他方の平坦壁を形成する2つの第2平坦壁形成部、および両第2平坦壁形成部における側壁形成部とは反対側の側縁に設けられかつ補強壁を形成する2つの補強壁形成部を有する1枚のアルミニウムブレージングシート製素板の両補強壁形成部が第2平坦壁形成部に対して同方向に曲げられて補強壁用凸条が形成された後、両第2平坦壁形成部が第1平坦壁形成部に対して平行となるように、素板が両側壁形成部において曲げられることにより、両補強壁用凸条の先端が第1平坦壁形成部の内面に当接させられるとともに、両補強壁用凸条どうしろう付されたものである。
【0006】
特許文献1記載の熱交換管は、熱交換器の製造時に、他の部品のろう付と同時に補強壁形成部どうしがろう付されることにより製造される。しかしながら、素板を折り曲げてなる折り曲げ体の両第2平坦壁形成部と補強壁形成部との連接部外面が丸みを帯びることは避けられないので、両第2平坦壁形成部間にその長さ方向にのびる凹溝が形成されることになる。したがって、熱交換器を製造する際に、ヘッダタンクを形成する材料から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により、上記凹溝に沿って流れるとともに、折り曲げ体とコルゲートフィンとの接触部に沿って折り曲げ体の幅方向に流れる。その結果、製造された熱交換管にエロージョンが発生したり、エロージョンの発生に起因して貫通穴があくという問題がある。また、ヘッダタンクを形成する材料の外面を覆うろう材量を多くしておかなければならず、材料コストが高くなり、ひいては熱交換器の製造コストが高くなるとともに、熱交換器の重量が増加するという問題がある。
【0007】
また、アルミニウム押出形材製熱交換管の場合にも、押出加工時にダイスマークと呼ばれる凹溝が形成されることがあり、この場合も、上述した特許文献1記載の熱交換管の場合と同様な問題がある。
【特許文献1】特開2004−17861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、製造する際に熱交換管にエロージョンが発生することを防止することができ、さらに製造コストの低減および軽量化を図ることができる熱交換器およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)外面にろう材層を有する材料により形成され、かつ互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がヘッダタンクに形成された管挿通穴内に挿入された状態でヘッダタンクにろう付された複数の扁平状熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間に配置されて熱交換管にろう付されたコルゲートフィンとを備えており、ヘッダタンクが、少なくとも外面にろう材層を有する筒状体からなり、かつ複数の管挿通穴を有するヘッダタンク本体と、ヘッダタンク本体の両端両端開口を閉鎖する閉鎖部材とからなり、熱交換管のコルゲートフィンがろう付される面に、長さ方向にのびる凹溝が存在している熱交換器であって、
ヘッダタンク本体の外面における管挿通穴の近傍部分に、ヘッダタンク本体のろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードが形成されている熱交換器。
【0011】
2)2つの溶接ビードが、管挿通穴の通風方向の両側においてヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成されている上記1)記載の熱交換器。
【0012】
3)1つの溶接ビードが、すべての管挿通穴を取り囲むように形成されている上記1)記載の熱交換器。
【0013】
4)管挿通穴と同数の溶接ビードが、各管挿通穴を取り囲むように複数形成されている上記1)記載の熱交換器。
【0014】
5)ヘッダタンクが、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを筒状に成形して両側縁部どうしの突き合わせ部をろう付することにより形成されたヘッダタンク本体と、ヘッダタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とよりなり、管挿通穴が、ヘッダタンク本体のろう付部とは反対側に形成され、ヘッダタンク本体の内面におけるアルミニウムブレージングシートの両側縁部どうしのろう付部の両側において、アルミニウムブレージングシートのろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードが、ヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成されている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【0015】
6)ヘッダタンクが、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる複数の構成部材を相互にろう付して筒状とすることにより形成されたヘッダタンク本体と、ヘッダタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とよりなり、管挿通穴がいずれか1つの構成部材に形成され、ヘッダタンク本体の内面における管挿通穴の通風方向の両側において、アルミニウムブレージングシートのろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードが、ヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成されている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【0016】
7)ヘッダタンク本体および熱交換管がアルミニウムからなり、溶接ビードが、Si含有量が5wt%以下であるアルミニウムからなる上記1)〜6)のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【0017】
8)外面にろう材層を有する材料により形成され、かつ互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がヘッダタンクに形成された管挿通穴内に挿入された状態でヘッダタンクにろう付された複数の扁平状熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間に配置されて熱交換管にろう付されたコルゲートフィンとを備えており、ヘッダタンクが、少なくとも外面にろう材層を有する筒状体からなり、かつ複数の管挿通穴を有するヘッダタンク本体と、ヘッダタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とからなり、熱交換管のコルゲートフィンがろう付される面に、長さ方向にのびる凹溝が存在している熱交換器を製造する方法であって、
ヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンを一括してろう付することを含み、当該ろう付の前に、ヘッダタンク本体の外面における管挿通穴の近傍部分に、ヘッダタンク本体のろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードを形成しておくことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【0018】
9)2つの溶接ビードを、管挿通穴の通風方向の両側においてヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成しておく請求項8記載の熱交換器の製造方法。
【0019】
10)1つの溶接ビードを、すべての管挿通穴を取り囲むように形成しておく上記8)記載の熱交換器の製造方法。
【0020】
11)管挿通穴と同数の溶接ビードを、各管挿通穴を取り囲むように複数形成しておく上記8)記載の熱交換器の製造方法。
【0021】
12)両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを筒状に成形して両側縁部どうしの突き合わせ部をろう付することによりヘッダタンク本体をつくることを含み、管挿通穴を、筒状に成形したアルミニウムブレージングシートの両側縁部どうしの突き合わせ部とは反対側に形成しておき、筒状に成形したアルミニウムブレージングシートの内面における両側縁部どうしの突き合わせ部の両側において、アルミニウムブレージングシートのろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードを、ヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成しておく上記8)〜11)のうちのいずれかに記載の熱交換器の製造方法。
【0022】
13)両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる複数の構成部材を相互にろう付して筒状とすることによりヘッダタンク本体をつくることを含み、管挿通穴をいずれか1つの構成部材に形成し、管挿通穴が形成された構成部材の内面における管挿通穴の通風方向の両側において、アルミニウムブレージングシートのろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンクと熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードを、ヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成しておく上記8)〜11)のうちのいずれかに記載の熱交換器の製造方法。
【0023】
14)ヘッダタンク本体および熱交換管がアルミニウムからなり、溶接ビードが、Si含有量が5wt%以下であるアルミニウムからなる上記8)〜13)のうちのいずれかに記載の熱交換器の製造方法。
【0024】
15)溶接ビードの溶け込み深さをDmm、アルミニウムブレージングシートのろう材層のクラッド率をR%、アルミニウムブレージングシートの板厚をTmm、アルミニウムブレージングシートのろう材層を形成するろう材中のSi含有量をXwt%、溶接ビード中のSi含有量をYwt%とした場合、D=RTX/100Yという関係を満たす上記8)〜14)のうちのいずれかに記載の熱交換器の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
上記1)の熱交換器によれば、ヘッダタンク本体の外面における管挿通穴の近傍部分に、ヘッダタンク本体のろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードが形成されているので、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、溶接ビードの働きにより、ヘッダタンク本体を形成する材料から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により熱交換管の凹溝に沿って流れることが防止される。したがって、熱交換器の製造時に熱交換管にエロージョンが発生することが防止されるとともに、エロージョンの発生に起因する貫通穴の発生も防止される。しかも、熱交換器の製造の際に、ヘッダタンク本体を形成する材料から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により熱交換管の凹溝に沿って流れることを防止することができるので、熱交換管とコルゲートフィンとの接触部に沿って流れるろう材の量を低減することもできる。したがって、ヘッダタンク本体を形成する材料の外面を覆うろう材量を少なくすることが可能になり、材料コストが安くなって熱交換器の製造コストを低減することができるとともに、熱交換器の軽量化を図ることができる。
【0026】
上記2)〜4)の熱交換器によれば、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、ヘッダタンク本体を形成する材料から溶け出した溶融ろう材の熱交換管の凹溝に沿う流れを、効果的に防止することができる。
【0027】
上記5)の熱交換器によれば、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、ヘッダタンク本体を形成する筒状に成形されたアルミニウムブレージングシートの外面から溶け出した溶融ろう材が、筒状に成形されたアルミニウムブレージングシートの両側縁部どうしの突き合わせ部から大量にヘッダタンク本体内に流れ込むことが防止される。したがって、ヘッダタンク本体を形成する筒状に成形されたアルミニウムブレージングシートの外面を覆うろう材量を少なくすることが可能になり、材料コストが安くなって熱交換器の製造コストを低減することができるとともに、熱交換器の軽量化を図ることができる。
【0028】
上記6)の熱交換器によれば、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、ヘッダタンク本体のアルミニウムブレージングシートからなる構成部材の外面から溶け出した溶融ろう材が、構成部材どうしの継ぎ目部分から大量にヘッダタンク本体内に流れ込むことが防止される。したがって、ヘッダタンク本体の構成部材を形成するアルミニウムブレージングシートの外面を覆うろう材量を少なくすることが可能になり、材料コストが安くなって熱交換器の製造コストを低減することができるとともに、熱交換器の軽量化を図ることができる。
【0029】
上記7)の熱交換器によれば、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、ヘッダタンク本体を形成する材料から溶け出した溶融ろう材の熱交換管の凹溝に沿う流れ、および/またはヘッダタンク本体を形成する材料の外面から溶け出した溶融ろう材のヘッダタンク本体内への流入を効果的に抑えることができる。
【0030】
上記8)の熱交換器の製造方法によれば、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、溶接ビードの働きにより、ヘッダタンク本体を形成する材料から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により熱交換管の凹溝に沿って流れることが防止される。したがって、熱交換器の製造時に熱交換管にエロージョンが発生することが防止されるとともに、エロージョンの発生に起因する貫通穴の発生も防止される。しかも、熱交換器の製造の際に、ヘッダタンク本体を形成する材料から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により熱交換管の凹溝に沿って流れることを防止することができるので、熱交換管とコルゲートフィンとの接触部に沿って流れるろう材の量を低減することもできる。したがって、ヘッダタンク本体を形成する材料の外面を覆うろう材量を少なくすることが可能になり、材料コストが安くなって熱交換器の製造コストを低減することができるとともに、熱交換器の軽量化を図ることができる。
【0031】
上記9)〜11)の熱交換器の製造方法によれば、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、ヘッダタンク本体を形成する材料から溶け出した溶融ろう材の熱交換管の凹溝に沿う流れを、効果的に防止することができる。
【0032】
上記12)の熱交換器の製造方法によれば、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、ヘッダタンク本体を形成する筒状に成形されたアルミニウムブレージングシートの外面から溶け出した溶融ろう材が、筒状に成形されたアルミニウムブレージングシートの両側縁部どうしの突き合わせ部から大量にヘッダタンク本体内に流れ込むことが防止される。したがって、ヘッダタンク本体を形成する筒状に成形されたアルミニウムブレージングシートの外面を覆うろう材量を少なくすることが可能になり、材料コストが安くなって熱交換器の製造コストを低減することができるとともに、熱交換器の軽量化を図ることができる。
【0033】
上記13)の熱交換器の製造方法によれば、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、ヘッダタンク本体のアルミニウムブレージングシートからなる構成部材の外面から溶け出した溶融ろう材が、構成部材どうしの継ぎ目部分から大量にヘッダタンク本体内に流れ込むことが防止される。したがって、ヘッダタンク本体の構成部材を形成するアルミニウムブレージングシートの外面を覆うろう材量を少なくすることが可能になり、材料コストが安くなって熱交換器の製造コストを低減することができるとともに、熱交換器の軽量化を図ることができる。
【0034】
上記14)および15)の熱交換器によれば、熱交換器の製造の際のヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、ヘッダタンク本体を形成する材料から溶け出した溶融ろう材の熱交換管の凹溝に沿う流れ、および/またはヘッダタンク本体を形成する材料の外面から溶け出した溶融ろう材のヘッダタンク本体内への流入を効果的に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による熱交換器を、カーエアコンのコンデンサに適用したものである。
【0036】
なお、以下の説明において、図1の上下、左右をそれぞれ上下、左右というものとし、通風方向下流側(図1に矢印Aで示す方向、図3の右側)を前、これと反対側を後というものとする。
【0037】
図1において、コンデンサ(1)は、上下方向にのびかつ左右方向に間隔をおいて配置された1対のアルミニウム製ヘッダタンク(2)(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間において幅方向を前後方向に向けるとともに上下方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部が両ヘッダタンク(2)(3)に接続された複数の扁平状アルミニウム製熱交換管(4)と、隣り合う熱交換管(4)どうしの間、および上下両端の熱交換管(4)の外側に配置されて熱交換管(4)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(5)と、上下両端のコルゲートフィン(5)の外側に配置されてコルゲートフィン(5)にろう付されたアルミニウムブレージングシート製サイドプレート(6)とよりなり、左側ヘッダタンク(2)が、高さ方向の中央部よりも上方において仕切板(7)により上下2つのヘッダ部(2a)(2b)に仕切られ、右側ヘッダタンク(3)が、高さ方向の中央部よりも下方において仕切板(7)により上下2つのヘッダ部(3a)(3b)に仕切られ、左側ヘッダタンク(2)の上ヘッダ部(2a)に入口部材(8)がろう付され、右側ヘッダタンク(3)の下ヘッダ部(3b)に出口部材(9)がろう付されている。そして、入口部材(8)を通って左側ヘッダタンク(2)の上ヘッダ部(2a)内に流入した冷媒は、熱交換管(4)内を右方に流れて右側ヘッダタンク(3)の上ヘッダ部(3a)内の上部に流入し、上ヘッダ部(3a)内を下方に流れて左側ヘッダタンク(2)の仕切板(7)と右側ヘッダタンク(3)の仕切板(8)との間の高さ位置にある熱交換管(4)内を左方に流れて左側ヘッダタンク(2)の下ヘッダ部(2b)内の上部に流入し、下ヘッダ部(2b)内を下方に流れて右側ヘッダタンク(3)の仕切板(7)よりも下方に位置する熱交換管(4)内を右方に流れて右側ヘッダタンク(3)の下ヘッダ部(3b)内に流入し、出口部材(9)を通ってコンデンサ(1)の外部に流出する。
【0038】
コンデンサ(1)の左右のヘッダタンク(2)(3)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを筒状に成形して両側縁部どうしの突き合わせ部をろう付することにより形成されたヘッダタンク本体(10)と、ヘッダタンク本体(10)の両端にろう付されて両端開口を閉鎖するアルミニウム製閉鎖部材(11)とからなる。
【0039】
図2に示すように、両ヘッダタンク(2)(3)のヘッダタンク本体(10)における筒状に成形されたアルミニウムブレージングシートの両側縁部どうしの突き合わせ部のろう付部(20)とは反対側の部分に、前後方向に長い管挿通穴(12)が上下方向に間隔をおいて複数形成されている。ヘッダタンク本体(10)の外面における管挿通穴(12)の近傍部分に、ヘッダタンク本体(10)のろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体(10)と熱交換管(4)とのろう付の際の熱交換管(4)側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビード(13)が形成されている。すなわち、2つの溶接ビード(13)が、管挿通穴(12)の前後両側においてヘッダタンク本体(10)の長さ方向にのびるように全長にわたって形成されている。また、ヘッダタンク本体(10)の内面におけるろう付部(20)の両側において、アルミニウムブレージングシートのろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体(10)と熱交換管(4)とのろう付の際の熱交換管(4)側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビード(14)が、ヘッダタンク本体(10)の長さ方向にのびるように全長にわたって形成されている。ここで、溶接ビード(13)(14)は、Si含有量が5wt%以下であるアルミニウムからなることが好ましい。
【0040】
図3に示すように、熱交換管(4)は、少なくとも片面にろう材層を有する帯状のアルミニウムブレージングシートを、ろう材層が外側に来るように中空状に曲げてろう付することにより形成されたものであり、互いに対向する上下両壁(15)(16)と、上下両壁(15)(16)の前後両側縁どうしにまたがる前後両側壁(17)(18)と、上下両壁(15)(16)の幅方向の中央部どうしに跨る1つの補強壁(19)とを備えている。下壁(16)は1つの下壁形成部(16A)からなり、上壁(15)は前後両側壁(17)(18)を介して下壁形成部(16A)の前後両側縁に一体に形成されるとともに、前後両側壁(17)(18)とは反対側の縁部どうしが突き合わされた2つの上壁形成部(15A)(15B)からなる。補強壁(19)は、両上壁形成部(15A)(15B)における互いに突き合わされた縁部にそれぞれ下方に突出するように一体に形成されて先端部が下壁形成部(16A)内面に当接させられ、かつ互いに密着状態でろう付された2つの補強壁用凸条(19A)からなる。図4に示すように、上壁形成部(15A)(15B)と補強壁用凸条(19A)との連接部の外面は丸みを帯びており、これにより両上壁形成部(15A)(15B)間には熱交換管(4)の長さ方向にのびる凹溝(21)が全長にわたって形成されている。熱交換管(4)の両端部は、ヘッダタンク本体(10)の管挿通穴(12)内に挿入された状態でヘッダタンク本体(10)、すなわち両ヘッダタンク(2)(3)にろう付されている。
【0041】
コンデンサ(1)は、以下に述べる方法で製造される。
【0042】
まず、図5(a)に示すように、芯材(23)の両面にろう材からなる皮材(24)(ろう材層)を有するアルミニウムブレージングシートからなる素板(22)の幅方向の中央部に管挿通穴(12)を形成する。ついで、素板(22)の片面における管挿通穴(12)の両側部分に、レーザ溶接法、電子ビーム溶接法、ティグ溶接法、ミグ溶接法および摩擦攪拌接合法のうちのいずれかの方法により溶接ビード(13)を全長にわたって形成する。また、素板(22)の他面における両側縁寄りの部分に、レーザ溶接法、電子ビーム溶接法、ティグ溶接法、ミグ溶接法および摩擦攪拌接合法のうちのいずれかの方法により溶接ビード(14)を全長にわたって形成する。レーザ溶接法、電子ビーム溶接法および摩擦攪拌接合法の場合、素板(22)を形成するアルミニウムブレージングシートの芯材(23)とろう材からなる皮材(24)とが混じり合うことにより溶接ビード(13)(14)が形成されるので、溶接ビード(13)(14)の融点はろう材の融点よりも高くなり、後述する全部品の一括ろう付時にも溶融することはない。また、ティグ溶接法およびミグ溶接法の場合、たとえばJIS A1000系の純アルミニウムからなる溶加材と、素板(22)を形成するアルミニウムブレージングシートの芯材(23)およびろう材からなる皮材(24)とが混じり合うことにより溶接ビード(13)(14)が形成されるので、溶接ビード(13)(14)の融点はろう材の融点よりも高くなり、後述する全部品の一括ろう付時にも溶融することはない。
【0043】
ここで、図6に示すように、溶接ビード(13)(14)の溶け込み深さをDmm、アルミニウムブレージングシートからなる素板(22)の皮材(24)(ろう材層)のクラッド率をR%、素板(22)の板厚をTmm、アルミニウムブレージングシートのろう材層を形成するろう材中のSi含有量をXwt%、溶接ビード中のSi含有量をYwt%とした場合、D=RTX/100Yという関係を満たしていることが好ましい。
【0044】
ついで、素板(22)を、溶接ビード(13)が外側に来るとともに、溶接ビード(14)が内側に来るように筒状に成形して両側縁部どうしを突き合わせ、ヘッダタンク本体(10)を形成するための筒状体(25)を得る(図5(b)参照)。
【0045】
また、片面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる平坦な熱交換管用素板(26)を用意する。素板(26)は、1つの下壁形成部(16A)、下壁形成部(16A)の両側縁に設けられかつ前後両側壁(17)(18)を形成する2つの側壁形成部(27)(28)、両側壁形成部(27)(28)における下壁形成部(16A)とは反対側の側縁に設けられた2つの上壁形成部(15A)(15B)、および両上壁形成部(15A)(15B)における側壁形成部(27)(28)とは反対側の側縁に設けられかつ補強壁用凸条(19A)を形成する2つの補強壁形成部(図示略)からなる。
【0046】
そして、素板(26)の両補強壁形成部を両上壁形成部(15A)(15B)に対して上方に曲げて補強壁用凸条(19A)を形成する(図7(a)参照)。ついで、素板(26)を、両側壁形成部(27)(28)において両上壁形成部(15A)(15B)を折り返すように曲げていき(図7(b)および(c)参照)、両補強壁用凸条(19A)の先端を下壁形成部(16A)の内面に当接させるとともに、両補強壁用凸条(19A)どうしを密着させて折り曲げ体(29)をつくる(図7(d)参照)。上述した素板(26)のすべての曲げは、ロールフォーミングにより行われる。なお、図7においては示されていないが、折り曲げ体(29)の両上壁形成部(15A)(15B)間には、折り曲げ体(29)の長さ方向にのびる凹溝(21)が全長にわたって形成されている。
【0047】
さらに、コルゲートフィン(5)、サイドプレート(6)、仕切板(7)、入口部材(8)、出口部材(9)および閉鎖部材(11)を用意する。
【0048】
ついで、筒状体(25)、閉鎖部材(11)、折り曲げ体(29)、コルゲートフィン(5)、サイドプレート(6)、仕切板(7)、入口部材(8)および出口部材(9)を組み合わせて適当な治具により仮止めする。その後、仮止め体を所定のろう付温度に加熱し、筒状体(25)のろう材からなる皮材を利用して筒状体(25)の両側縁部どうしの突き合わせ部をろう付することによりヘッダタンク本体(10)を形成するとともに、ヘッダタンク本体(10)の両端部に閉鎖部材(11)をろう付し、さらに筒状体(25)のろう材からなる皮材を利用してヘッダタンク本体(10)に入口部材(8)および出口部材(9)をろう付する。これと同時に、素板(26)のろう材からなる皮材を利用して折り曲げ体(29)における補強壁用凸条(19A)の先端と下壁形成部(16A)、および両補強壁用凸条(19A)どうしをろう付して熱交換管(4)を形成するとともに、筒状体(25)の皮材および素板(26)の皮材を利用して熱交換管(4)とヘッダタンク本体(10)とをろう付し、さらに素板(26)の皮材を利用して熱交換管(4)とコルゲートフィン(5)とをろう付するとともに、サイドプレート(6)のろう材層を利用してコルゲートフィン(5)とサイドプレート(6)とをろう付する。こうして、コンデンサ(1)が製造される。
【0049】
上述したコンデンサ(1)の製造の際の全部品の一括ろう付時に、外側の溶接ビード(13)の働きによって、筒状体(25)の外面から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により凹溝(21)に沿って流れることが防止される。したがって、ヒータコア(1)の製造時に熱交換管(4)にエロージョンが発生することが防止されるとともに、エロージョンの発生に起因する貫通穴の発生も防止される。
【0050】
また、筒状体(25)の外面から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により凹溝(21)に沿って流れることを防止することができるので、熱交換管(4)とコルゲートフィン(5)との接触部に沿って流れるろう材の量を低減することもできる。しかも、筒状体(25)の外面から溶け出した溶融ろう材が、筒状体(25)を形成する素板(22)の両側縁部どうしの突き合わせ部から大量に筒状体(25)内に流れ込むことが防止される。したがって、筒状体(25)の外面を覆うろう材量を少なくすることが可能になり、材料コストが安くなってコンデンサ(1)の製造コストを低減することができるとともに、コンデンサ(1)の軽量化を図ることができる。
【0051】
次に、この発明の実験例について、比較例とともに示す。
【0052】
実験例
上述したコンデンサ(1)の製造の際に、筒状体(25)を成形する素板(22)として、JIS A3003製の芯材(23)の両面が、JIS A4045製のろう材からなる皮材(24)により被覆されたアルミニウムブレージングシートからなるものを用いた。そして、素板(22)に管挿通穴(12)を形成した後、素板(22)の片面における管挿通穴(12)の前後両端から2mm離れた部分に、レーザビーム溶接法により、ビード幅1mmの溶接ビード(13)を全長にわたって形成した。また、素板(22)の他面における両側縁から5mm離れた部分に、レーザビーム溶接法により、ビード幅2mmの溶接ビード(14)を全長にわたって形成した。ここで、溶接ビード(13)(14)の溶け込み深さD=0.36mm、アルミニウムブレージングシートからなる素板(22)の皮材(24)(ろう材層)のクラッド率R=6%、素板(22)の板厚T=2mm、アルミニウムブレージングシートのろう材層を形成するろう材中のSi含有量X=9wt%、溶接ビード(13)(14)中のSi含有量Y=3wt%であり、D=RTX/100Yという関係を満たしていた。
【0053】
そして、上述したコンデンサ(1)の製造の際に、筒状体(25)における素板(22)の両側縁部どうしの突き合わせ部に沿って、幅3mmのアルミニウム板を配置しておいた。
【0054】
比較例
筒状体(25)の外面および内面に溶接ビードを形成しなかったことを除いては、上記具体的実験例と同様にしてコンデンサ(1)を製造した。
【0055】
評価試験
製造されたヘッダタンク本体(10)とアルミニウム板との間に形成されたフィレットの前後方向の長さを測定したところ、実験例のフィレット長さは比較例のフィレット長さの2倍であった。
【0056】
図8〜図10はヘッダタンク本体の変形例を示す。
【0057】
図8に示すヘッダタンク本体(30)の場合、1つの長方形状の溶接ビード(31)が、すべての管挿通穴(12)を取り囲むように形成されている。ここで、溶接ビード(31)は、Si含有量が5wt%以下であるアルミニウムからなることが好ましい。
【0058】
図9に示すヘッダタンク本体(35)の場合、管挿通穴(12)と同数の長方形状の溶接ビード(36)が、各管挿通穴(12)を取り囲むように形成されている。ここで、溶接ビード(36)は、Si含有量が5wt%以下であるアルミニウムからなることが好ましい。
【0059】
図8および図9に示すヘッダタンク本体(30)(35)のその他の構成は上述した実施形態のヘッダタンク本体(10)と同様であり、溶接ビード(31)(36)は、筒状体(25)を形成する素板(22)の段階で形成される。そして、溶接ビード(31)(36)の溶け込み深さをDmm、アルミニウムブレージングシートからなる素板(22)の皮材(24)(ろう材層)のクラッド率をR%、素板(22)の板厚をTmm、アルミニウムブレージングシートのろう材層を形成するろう材中のSi含有量をXwt%、溶接ビード中のSi含有量をYwt%とした場合、D=RTX/100Yという関係を満たしていることが好ましい。
【0060】
図10に示すヘッダタンク本体(40)は、左右方向内方が開口した上下方向に長い直方体状の箱状体(41)(構成部材)と、箱状体(41)の左右方向内方への端部にろう付されかつ箱状体(41)の左右方向内方への開口を閉鎖するヘッダプレート(42)(構成部材)とよりなる。箱状体(41)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる金属素板を折り曲げて必要箇所をろう付することにより形成され、ヘッダプレート(42)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる金属素板を折り曲げて必要箇所を箱状体(41)にろう付することにより形成されている。なお、図示は省略したが、ヘッダ箱状体(40)の上下両端開口を閉鎖する閉鎖部材は、箱状体(41)および/またはヘッダプレート(42)に一体に形成する場合があり、あるいは箱状体(41)およびヘッダプレート(42)と別個に形成されたものがヘッダタンク本体(40)にろう付される場合もある。
【0061】
ヘッダプレート(42)に、前後方向に長い管挿通穴(12)が上下方向に間隔をおいて複数形成されている。ヘッダプレート(42)の外面、すなわちヘッダタンク本体(40)の外面の管挿通穴(12)の前後両側部分に、箱状体(41)およびヘッダプレート(42)のろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体(40)と熱交換管(4)とのろう付の際の熱交換管(4)側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビード(43)が、ヘッダタンク本体(40)の長さ方向にのびるように全長にわたって形成されている。また、ヘッダプレート(42)の内面、すなわちヘッダタンク本体(40)の内面の管挿通穴(12)の前後両側部分に、箱状体(41)およびヘッダプレート(42)のろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体(40)と熱交換管(4)とのろう付の際の熱交換管(4)側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビード(44)が、ヘッダタンク本体(40)の長さ方向にのびるように全長にわたって形成されている。ここで、溶接ビード(43)(44)は、Si含有量が5wt%以下であるアルミニウムからなることが好ましい。
【0062】
図10に示すヘッダタンク本体(40)の溶接ビード(43)(44)は、箱状体(41)とヘッダプレート(42)とをろう付する前の段階で形成される。そして、溶接ビード(43)(44)の溶け込み深さをDmm、アルミニウムブレージングシートからなる素板の皮材(ろう材層)のクラッド率をR%、素板の板厚をTmm、アルミニウムブレージングシートのろう材層を形成するろう材中のSi含有量をXwt%、溶接ビード中のSi含有量をYwt%とした場合、D=RTX/100Yという関係を満たしていることが好ましい。
【0063】
なお、図10に示すヘッダタンク本体(40)において、内外の溶接ビードは、図8および図9に示すヘッダタンク本体(30)(35)の場合と同様に、すべての管挿通穴(12)を取り囲むように長方形状のものが1つ形成されていたり、あるいは各管挿通穴(12)を取り囲むように長方形状のものが管挿通穴(12)と同数形成されていたりしてもよい。
【0064】
上記実施形態においては、この発明による熱交換器はカーエアコンのコンデンサに適用されているが、これに限定されるものではなく、カーエアコンのエバポレータやヒータコア、あるいは他の熱交換器、たとえばルームエアコンのコンデンサやエバポレータにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明による熱交換器を適用したコンデンサの全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すコンデンサのヘッダタンク本体の一部切り欠き斜視図である。
【図3】図1のA−A線拡大断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】図1に示すコンデンサの製造方法においてヘッダタンク本体をつくる筒状体を形成する方法を示す図である。
【図6】図5(a)の要部を拡大して示す垂直断面図である。
【図7】素板から熱交換管をつくる折り曲げ体を形成する方法を示す正面図である。
【図8】ヘッダタンク本体の変形例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図9】ヘッダタンク本体の他の変形例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図10】ヘッダタンク本体のさらに他の変形例を示す水平横断面図である。
【符号の説明】
【0066】
(1):コンデンサ(熱交換器)
(2)(3):ヘッダタンク
(4):熱交換管
(5):コルゲートフィン
(10):ヘッダタンク本体
(11):閉鎖部材
(12):管挿通穴
(13)(14):溶接ビード
(20):ろう付部
(21):凹溝
(22):素板
(25):筒状体
(30)(35):ヘッダタンク本体
(31)(36):溶接ビード
(40):ヘッダタンク本体
(41):箱状体(構成部材)
(42):ヘッダプレート(構成部材)
(43)(44):溶接ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面にろう材層を有する材料により形成され、かつ互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がヘッダタンクに形成された管挿通穴内に挿入された状態でヘッダタンクにろう付された複数の扁平状熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間に配置されて熱交換管にろう付されたコルゲートフィンとを備えており、ヘッダタンクが、少なくとも外面にろう材層を有する筒状体からなり、かつ複数の管挿通穴を有するヘッダタンク本体と、ヘッダタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とからなり、熱交換管のコルゲートフィンがろう付される面に、長さ方向にのびる凹溝が存在している熱交換器であって、
ヘッダタンク本体の外面における管挿通穴の近傍部分に、ヘッダタンク本体のろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードが形成されている熱交換器。
【請求項2】
2つの溶接ビードが、管挿通穴の通風方向の両側においてヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成されている請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
1つの溶接ビードが、すべての管挿通穴を取り囲むように形成されている請求項1記載の熱交換器。
【請求項4】
管挿通穴と同数の溶接ビードが、各管挿通穴を取り囲むように複数形成されている請求項1記載の熱交換器。
【請求項5】
ヘッダタンクが、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを筒状に成形して両側縁部どうしの突き合わせ部をろう付することにより形成されたヘッダタンク本体と、ヘッダタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とよりなり、管挿通穴が、ヘッダタンク本体のろう付部とは反対側に形成され、ヘッダタンク本体の内面におけるアルミニウムブレージングシートの両側縁部どうしのろう付部の両側において、アルミニウムブレージングシートのろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードが、ヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成されている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【請求項6】
ヘッダタンクが、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる複数の構成部材を相互にろう付して筒状とすることにより形成されたヘッダタンク本体と、ヘッダタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とよりなり、管挿通穴がいずれか1つの構成部材に形成され、ヘッダタンク本体の内面における管挿通穴の通風方向の両側において、アルミニウムブレージングシートのろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードが、ヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成されている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
ヘッダタンク本体および熱交換管がアルミニウムからなり、溶接ビードが、Si含有量が5wt%以下であるアルミニウムからなる請求項1〜6のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【請求項8】
外面にろう材層を有する材料により形成され、かつ互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がヘッダタンクに形成された管挿通穴内に挿入された状態でヘッダタンクにろう付された複数の扁平状熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間に配置されて熱交換管にろう付されたコルゲートフィンとを備えており、ヘッダタンクが、少なくとも外面にろう材層を有する筒状体からなり、かつ複数の管挿通穴を有するヘッダタンク本体と、ヘッダタンク本体の両端開口を閉鎖する閉鎖部材とからなり、熱交換管のコルゲートフィンがろう付される面に、長さ方向にのびる凹溝が存在している熱交換器を製造する方法であって、
ヘッダタンク本体、閉鎖部材、熱交換管およびコルゲートフィンを一括してろう付することを含み、当該ろう付の前に、ヘッダタンク本体の外面における管挿通穴の近傍部分に、ヘッダタンク本体のろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードを形成しておくことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項9】
2つの溶接ビードを、管挿通穴の通風方向の両側においてヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成しておく請求項8記載の熱交換器の製造方法。
【請求項10】
1つの溶接ビードを、すべての管挿通穴を取り囲むように形成しておく請求項8記載の熱交換器の製造方法。
【請求項11】
管層通穴と同数の溶接ビードを、各管挿通穴を取り囲むように複数形成しておく請求項8記載の熱交換器の製造方法。
【請求項12】
両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを筒状に成形して両側縁部どうしの突き合わせ部をろう付することによりヘッダタンク本体をつくることを含み、管挿通穴を、筒状に成形したアルミニウムブレージングシートの両側縁部どうしの突き合わせ部とは反対側に形成しておき、筒状に成形したアルミニウムブレージングシートの内面における両側縁部どうしの突き合わせ部の両側において、アルミニウムブレージングシートのろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンク本体と熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードを、ヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成しておく請求項8〜11のうちのいずれかに記載の熱交換器の製造方法。
【請求項13】
両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる複数の構成部材を相互にろう付して筒状とすることによりヘッダタンク本体をつくることを含み、管挿通穴をいずれか1つの構成部材に形成し、管挿通穴が形成された構成部材の内面における管挿通穴の通風方向の両側において、アルミニウムブレージングシートのろう材層を構成するろう材よりも高融点の材料からなり、かつヘッダタンクと熱交換管とのろう付の際の熱交換管側への溶融ろう材の流れを抑止する溶接ビードを、ヘッダタンク本体の長さ方向にのびるように形成しておく請求項8〜11のうちのいずれかに記載の熱交換器の製造方法。
【請求項14】
ヘッダタンク本体および熱交換管がアルミニウムからなり、溶接ビードが、Si含有量が5wt%以下であるアルミニウムからなる請求項8〜13のうちのいずれかに記載の熱交換器の製造方法。
【請求項15】
溶接ビードの溶け込み深さをDmm、アルミニウムブレージングシートのろう材層のクラッド率をR%、アルミニウムブレージングシートの板厚をTmm、アルミニウムブレージングシートのろう材層を形成するろう材中のSi含有量をXwt%、溶接ビード中のSi含有量をYwt%とした場合、D=RTX/100Yという関係を満たす請求項8〜14のうちのいずれかに記載の熱交換器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−41799(P2009−41799A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204984(P2007−204984)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】