説明

熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物

【課題】 室外機の熱交換器フィン材表面の着霜防止に優れ、及び耐食性に優れる皮膜を形成できる熱交換器フィン材を提供すること。
【解決手段】
特定のアクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)及びフッ素系重合体の水分散体(C)を含有し、アクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、フッ素系重合体の水分散体(C)の含有量が1〜30質量部であることを特徴とする熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室外機の熱交換器フィン材表面の着霜防止に優れ、及び耐食性に優れた皮膜を形成できる熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンは冬期の使用において、ヒートポンプ式エアコンの暖房運転時、室外機の熱交換器フィン材表面に霜が生じ、放っておくとフィン詰まりを起こし、暖房能力が低下するため除霜運転を行わなければならなくなる。この熱交換器のフィン材表面に霜が生じるのを防止する方法として、フィン材表面を疎水化してフィン材表面の結露水が水滴として転がり落ちるようにする方法、が提案されている。
熱交換器のフィン材表面を疎水化する方法は、フィン材表面に埃が溜まりやすく現在のところいまだに実用化されておらず、フィンは着霜するが除霜後に水濡れする、フィン材表面を親水化処理する方法が一般化されている。
上記、室外機用熱交換器におけるフィン材表面の親水化処理剤の代表例として、水ガラスを主体とする無機系皮膜を形成するものが知られており多用されている。しかしながら、水ガラスを主体とする親水化処理剤から形成された皮膜は、親水性は良好で水との接触角も20度以下を保つことができるが、着霜し易く耐食性が悪いという問題があり、さらに特有の臭気があって、皮膜の分解による微粉末の飛散、細菌やカビが発育し易く、これらによる異臭を発生し易い等の問題がある。
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1には、コロイダルシリカ(a)、ポリビニルアルコール(b)、及び3,000〜300,000の範囲内の重量平均分子量を有し400mgKOH/g以上の樹脂酸価を有する高酸価アクリル樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部がアルカリ金属又はアルカリ土類金属と塩を形成してなる中和樹脂(c)を含有することを特徴とする熱交換器フィン材用の親水化処理組成物が開示されている。
【0004】
一方、特許文献2には、親水性、耐食性、臭気などに優れた皮膜を形成できる親水化処理組成物として、(A)ポリグリセリン及び(B)300mgKOH/g以上の樹脂酸価を有する高酸価アクリル樹脂を含有し、該親水化処理組成物の樹脂固形分が200mgKOH/g以上の樹脂酸価を有し且つ100mgKOH/g以上の水酸基価を有することを特徴とする熱交換器のフィン材用の親水化処理組成物が開示されている。
【0005】
他に、特許文献3には、フィン材表面を親水化することによってフィン材表面での水滴の発生を抑制又は防止に関して、(A)87%以上のケン化度を有するポリビニルアルコール及び(B)300mgKOH/g以上の樹脂酸価を有する高酸価アクリル樹脂のカルボキシル基の少なくとも1部が180℃未満の沸点を有さず、且つ180℃未満で分解しない塩基性化合物と塩を形成してなる中和樹脂を含有することを特徴とする熱交換器フィン用の親水化処理組成物が開示されている。
しかし、これらの特許文献1〜3に記載の組成物では、室外機の熱交換器フィン材表面に形成された皮膜の着霜防止能力が不十分であり、さらに耐食性についても十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−172547号公報
【特許文献2】特開2001−323257号公報
【特許文献3】特開2001−329377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、室外機の熱交換器フィン材表面の着霜を抑制し、かつ耐食性に優れた皮膜を形成できる熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者等は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)及びアクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、フッ素系重合体の水分散体(C)の固形分で1〜30質量部含有することを特徴とする熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
1.下記特徴のアクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)及びフッ素系重合体の水分散体(C)を含有し、アクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、フッ素系重合体の水分散体(C)の含有量が1〜30質量部であることを特徴とする熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物、
アクリル変性エポキシ樹脂(A):数平均分子量4,000〜30,000のビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)とをアミン化合物の存在下に反応させてなる樹脂
2.フッ素系重合体の水分散体(C)が、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基のうち少なくとも1つのフッ素含有基と、アクリル酸基とメタクリル基及びα−置換アクリル酸基から選ばれる1つの重合性不飽和基とを有する化合物(i)を重合成分とする共重合体樹脂(c1)、及び下記式(1)で表される界面活性剤(c2)を含有する水分散体である請求項1に記載の着霜抑制処理組成物、
1O−(CHCHO)−(R2O)q−R
式(1)
(式(1)中、R1は炭素数1〜22のアルキル基または炭素数2〜22のアルケニル基、R2は炭素数3以上のアルキレン基であり、R3は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基または炭素数2〜22のアルケニル基、pは2以上の数、qは1以上の数であり、pおよびqはポリオキシエチレンブロックの質量割合が分子全体に対して5〜80質量%になるような数)
3.1項又は2項に記載の熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物をアルミニウムフィン材表面に塗装して加熱乾燥し、乾燥膜厚0.1〜5μmの皮膜を形成することを特徴とする着霜抑制処理皮膜形成方法。
4.3項に記載の着霜抑制処理皮膜形成方法によって得られたアルミニウムフィン材、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の着霜抑制処理組成物は、フィン材の表面に発生した凝縮水による着霜抑制効果が良好で、かつ耐食性に優れる皮膜を形成できる。従って得られた熱交換器用のフィン材は、結露した水が大粒の液滴となることがなく、フィン間で目詰まりを引き起こすことがない為、エアコン稼動時の熱効率に優れ、省エネルギー化に貢献できる。
【0011】
特に、冬期の低温で、かつ高湿度での着霜抑制効果に優れ、除霜運転回数を
低減できる為に、暖房効率が良く電力消費を抑えて省エネルギー化に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、特定のアクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)及びフッ素系重合体の水分散体(C)を含有し、アクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、フッ素系重合体の水分散体(C)の含有量が1〜30質量部であることを特徴とする熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物に関する。以下、詳細に述べる。
【0013】
アクリル変性エポキシ樹脂(A):
本発明の着霜抑制処理組成物は、得られる塗膜の加工性、密着性、耐湿性及び耐食性の点から、以下に述べる特定のアクリル変性エポキシ樹脂(A)を使用する。
【0014】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)の製造に用いられるビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)は、水性媒体中での分散安定性、得られる塗膜の加工性や衛生性などの観点から、数平均分子量が4,000〜30,000、好ましくは5,000〜30,000の範囲内であり、かつエポキシ当量が2,000〜10,000、好ましくは2,500〜10,000の範囲内のものが好適に使用される。
【0015】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)は、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られる樹脂である。
上記ポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)等を挙げることができる。 ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)の中でも、耐食性の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0016】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの重合法によって得ることができる。また、エポキシ当量が比較的低いビスフェノールA型エポキシ樹脂に、ビスフェノールAを付加させる二段重合法によっても得ることができる。
上記エポキシ当量が比較的低いビスフェノールA型エポキシ樹脂は、エポキシ当量約160〜約2,000のものが一般的であり、その市販品としては例えば、ジャパンエポキシレジン社製の、jER828EL、jER1001、jER1004、jER1007;旭化成エポキシ社製の、アラルダイトAER250、アラルダイトAER260、アラルダイトAER6071、アラルダイトAER6004、アラルダイトAER6007;三井化学社製のエポミックR140、エポミックR301、エポミックR304、エポミックR307、旭電化社製のアデカレジンEP−4100、アデカレジンEP−5100等を挙げることができる。
【0017】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)として使用するビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のjER1010、jER1256B40、jER1256等を挙げることができる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を二塩基酸で変性したビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂であってもよい。この場合、二塩基酸と反応させるビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、数平均分子量が2,000〜8,000であり、かつエポキシ当量が1,000〜4,000の範囲内にあるものを好適に使用することができる。また、上記二塩基酸としては、一般式HOOC−(CHn −COOH(式中、nは1〜12の整数を示す)で表される化合物、具体的にはコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等やヘキサヒドロフタル酸等が使用でき、特にアジピン酸が好適に使用できる。
【0018】
上記ビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂は、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と二塩基酸との混合物を、例えばトリ−n−ブチルアミンなどのエステル化触媒や有機溶剤の存在下で、反応温度120〜180℃で、約1〜4時間反応を行うことによって得ることができる。
【0019】
上記ビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の分子中に導入される二塩基酸分子鎖が可塑成分として働き、塗膜の加工性の向上に有利である。
本発明において、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)と反応させてアクリル変性エポキシ樹脂(A)を製造するのに用いられるカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)(以下、「アクリル樹脂(a2)」と略称することがある)は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの重合性不飽和カルボン酸を必須の単量体成分とするアクリル共重合体である。
【0020】
このアクリル共重合体は重量均分子量が5,000〜100,000、好ましくは10,000〜100,000で樹脂酸価150〜700 mgKOH/g、200〜500mgKOH/gの範囲内にあることが、水性媒体中での安定性、得られる塗膜の加工性、密着性の観点から好ましい。
【0021】
上記アクリル樹脂(a2)の重合に用いられる、重合性不飽和カルボン酸以外のその他の単量体成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t− ブチル(メタ)アクリレート、2− エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素原子数1〜22のアルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアミル(メタ)アクリレート及びヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルに対して、ε−カプロラクトン1〜5モルを開環付加反応させてなる、水酸基を有するカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有重合性不飽和単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−sec−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレン、ブタジエンなど挙げることができる。
【0022】
上記アクリル樹脂(a2)は、上記重合性不飽和カルボン酸と上記その他の単量体成分との単量体混合物を、例えば有機溶剤中にて、ラジカル重合開始剤又は連鎖移動剤の存在下にて、80〜150℃で1〜10時間加熱し共重合させることによって得ることができる。
【0023】
上記重合開始剤としては、有機過酸化物系、アゾ系等が用いられ、有機過酸化物系では、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等が挙げられ、アゾ系では、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。上記連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン類などが挙げられる。
【0024】
本発明においてアクリル変性エポキシ樹脂(A)は、前記エポキシ樹脂(a1)と上記カルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)とをアミン化合物の存在下に反応させてなる。
【0025】
前記エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)との反応は、有機溶剤中にてエステル化触媒となる、例えばトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミンなどの第3級のアミン化合物の存在下、80〜120℃で0.5〜8時間加熱してエステル化させることによって、アクリル変性エポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0026】
該アミン化合物の使用量は、エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)の合計固形分を基準にして1〜10質量%の範囲が、得られた皮膜の耐湿性や耐食性の面から好適である。
【0027】
上記反応におけるエポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)との配合割合は、塗装作業性や塗膜性能に応じて適宜選択すればよいが、樹脂(a1)/樹脂(a2)の固形分質量比で、10/90〜95/5、さらには60/40〜90/10の範囲内であることがよい。
【0028】
上記エステル化反応によって得られるアクリル変性エポキシ樹脂(A)は、酸価20〜120mgKOH/g、好ましくは30〜100mgKOH/g、重量平均分子量が1,000〜40,000、好ましくは2,000〜15,000が、水性媒体中での安定性、得られる塗膜の加工性、密着性、耐湿性及び耐食性の点から好ましい。
本明細書において重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した保持時間(保持容量)をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。数平均分子量は、その重量平均分子量から計算によって求めた値である。
【0029】
ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0030】
上記アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、水性媒体中に中和、分散されるが、中和に用いられる中和剤としては、アミン類やアンモニアなどの塩基性化合物が好適に使用される。
【0031】
上記アミン類の代表例としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。中でも特にトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンが好適である。アクリル変性エポキシ樹脂(A)の中和は、樹脂中のカルボキシル基に対して通常0.2〜2.0当量中和の範囲が好ましい。
【0032】
本発明では、上記エステル化反応時及び中和によって形成される第4級アンモニウム塩基量が3.0×10−4mol/g樹脂以下、好ましくは2.5×10−4mol/g樹脂以下であることが、耐湿性や耐食性の為に好ましい。
【0033】
ここで、第4級アンモニウム塩基量の測定は、反応開始後の試料を溶媒に溶解した試料溶液に、官能基としてのスルホン酸基およびヒドロキシル基を有する指示薬を溶媒に溶解してなる指示薬溶液を滴下して滴定反応を行い、該指示薬と第4級アンモニウム塩化エポキシ化合物とが反応してスルホン酸基およびヒドロキシル基の両者が同時にイオン化された指示薬およびカルボン酸を形成する滴定反応の第1段階、及び該指示薬と該イオン化指示薬とが反応してスルホン酸基のみがイオン化された指示薬を形成する滴定反応の第2段階について滴定量と電導度との関係をプロットし、第1段階におけるプロットを結ぶ直線と第2段階におけるプロットを結ぶ直線との交点における滴定量から、第1段階における滴定量t1 を求め、式(1)により、試料固形分換算1g中の第4級アンモニウム塩量(mol/g)を求める。
【0034】
第4級アンモニウム塩量(mol/g)=t(ml)×2×指示薬濃度(mol /1)×(1/1,000)×{100/(試料(g)×固形分(%))・・ 式(1)
なおアクリル変性エポキシ樹脂(A)を分散する水性媒体は、水のみであってもよいし、水と有機溶剤との混合物であってもよい。この有機溶剤としては、アクリル変性エポキシ樹脂(A)の水性媒体中での安定性を損わない限り、従来公知のものをいずれも使用できる。
【0035】
上記有機溶媒としては、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤およびカルビトール系溶剤などが好ましい。この有機溶剤の具体例としては、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ系溶剤;ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのカルビトール系溶剤等を挙げることができる。
【0036】
また有機溶剤としては、上記以外の水と混合しない不活性有機溶剤もアクリル変性エポキシ樹脂(A)の水性媒体中での安定性を損わない範囲で使用可能であり、この有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系を挙げることができる。本発明のアルミニウムフィン材用の下地処理剤における有機溶剤の量は、環境保護の観点などから水性媒体中に50質量%以下、好ましくは20質量%以下の範囲であることが望ましい。
【0037】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)を水性媒体中に中和、分散するには、常法によれば良く、例えば中和剤を含有する水性媒体中に撹拌下にアクリル変性エポキシ樹脂(A)を徐々に添加する方法、アクリル変性エポキシ樹脂(A)を中和剤によって中和した後、撹拌下にて、この中和物に水性媒体を添加するか又はこの中和物を水性媒体中に添加する方法などが挙げられる。
【0038】
アミノ樹脂(B)
本発明の下地処理剤の架橋剤として用いるアミノ樹脂(B)としては、メラ
ミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が挙げられるが、加工性、密着性の面からメラミン樹脂が好ましい。
【0039】
メラミン樹脂としては、例えば、メチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1〜8の1価アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等で、エーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
【0040】
これらは、メチロール基がすべてエーテル化されているか、又は部分的にエーテル化され、メチロール基やイミノ基が残存しているものも使用できる。メチルエーテル化メラミン、エチルエーテル化メラミン、ブチルエーテル化メラミン等のアルキルエーテル化メラミンを挙げることができ、1種のみ、又は必要に応じて2種以上を併用してもよい。なかでもメチロール基の少なくとも一部をメチルエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂が好適である。
【0041】
このような条件を満たすメラミン樹脂の市販品としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル232」、「サイメル235」、「サイメル238」、「サイメル254」、「サイメル266」、「サイメル267」、「サイメル272」、「サイメル285」、「サイメル301」、「サイメル303」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル701」、「サイメル703」、「サイメル736」、「サイメル738」、「サイメル771」、「サイメル1141」、「サイメル1156」、「サイメル1158」等(以上、日本サイテック社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン2061」等(以上、三井化学社製)、および「メラン522」等(日立化成社製)の商品名で市販されている。
【0042】
なお、アクリル変性エポキシ樹脂(A)およびアミノ樹脂(B)の配合割合は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)/アミノ樹脂(B)の固形分質量比において95/5〜50/50、特に93/7〜60/40の範囲内が好ましい。アミノ樹脂(B)の量が少な過ぎると十分な硬化性が得られず、多過ぎるとアルミニウムフィン材の加工性が低下するので好ましくない。
フッ素系重合体の水分散体(C)
フッ素系重合体の水分散体(C)は、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基のうち少なくとも1つのフッ素含有基と、アクリル酸基とメタクリル基及びα−置換アクリル酸基から選ばれる1つの重合性不飽和基とを有する化合物(i)を重合成分とする共重合体樹脂(c1)、及び下記式(1)で表される界面活性剤(c2)を含有する水分散体である。
【0043】
1O−(CHCHO)−(R2O)q−R
式(1)
(式(1)中、R1は炭素数1〜22のアルキル基または炭素数2〜22のアルケニル基、R2は炭素数3以上のアルキレン基であり、R3は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基または炭素数2〜22のアルケニル基、pは2以上の数、qは1以上の数であり、pおよびqはポリオキシエチレンブロックの質量割合が分子全体に対して5〜80質量%になるような数)
共重合体樹脂(c1)の原料である、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基のうち少なくとも1つのフッ素含有基と、アクリル酸基とメタクリル基及びα−置換アクリル酸基から選ばれる1つの重合性不飽和基とを有する化合物(i)は、下記、式(1)〜式(6)が挙げられる。
【0044】
【化1】

【0045】
【化2】

【0046】
(式(1)〜式(6)、Rfは炭素数1〜21(例えば、3〜21)のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基、
は水素または炭素数1〜10のアルキル基、
は炭素数1〜10のアルキレン基、
は水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、Arは置換基を有することも可能なアリール基、nは1〜10の整数を表わす)で示される(メタ)アクリレートエステルが挙げられる。
【0047】
上記式において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜21、好ましくは2〜20、さらに好ましくは4〜16である。Rf基の炭素数は、1〜6、好ましくは1〜4である。
Rf基は、−CF、−CFCF、−CF2CF2CF、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−(CF2)CF3、−(CF2)5CF(CF3)2、−(CF2)6CF(CF3)2、−(CF2)9CF等が挙げられる。
【0048】
パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基のうち少なくとも1つのフッ素含有基と、アクリル酸基とメタクリル基及びα−置換アクリル酸基から選ばれる1種の重合性不飽和基とを有する化合物は、具体的には、次の化合物が例示される。
【0049】
CF(CF2)7(CH2)OCOCH=CH2
CF3(CF2)6(CH2)OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2
CF3CF2(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)3 (CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(C25)(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
【0050】
【化3】

【0051】
【化4】

【0052】
次いで、α−置換アクリル酸基において、α置換基の例は、ハロゲン原子、
ハロゲン原子で水素原子を置換した(例えば、炭素数1〜21の)アルキル基
(例えば、モノフルオロメチル基およびジフルオロメチル基)、シアノ基、芳
香族基(例えば、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニ
ル基)である。
【0053】
パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基のうち少なくとも1つフッ素含有基と、α−置換アクリル酸基を有する含フッ素重合性化合物としては、次のとおりである。
【0054】
【化5】

【0055】
【化6】

【0056】
【化7】

【0057】
【化8】

【0058】
【化9】

【0059】
【化10】

【0060】
(式中、Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基である。)
また、フッ素系重合体の水分散体(C)の製造には、上記パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基のうち少なくとも1つのフッ素含有基と、アクリル酸基とメタクリル基及びα−置換アクリル酸基から選ばれる1つの重合性不飽和基とを有する化合物(i)、及びその他の重合性化合物とを反応して得られた共重合体樹脂も樹脂(c1)として用いることができる。
【0061】
上記化合物(i)とその他の重合性化合物とを共重合体樹脂(c1)の重合成分として用いる場合には、化合物(i)とその他の重合性化合物の質量合計を基準にして、化合物(i)が少なくとも25質量%、好ましくは化合物(i)が少なくとも40質量%用いられることが、着霜抑制と耐食性の面から望ましい。
【0062】
上記、その他の重合性化合物は、例えば、
(1)アクリル酸およびメタクリル酸、並びにこれらのメチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、プロピル、2−エチルヘキシル、ヘキシル、デシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル、β−ヒドロキシエチル、グリシジル、フェニル、ベンジル、4−シアノフェニル等のエステル類、
(2)酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸等の脂肪酸のビニルエステル類、
(3)スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレン系化合物、
(4)フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニルまたはビニリデン化合物類、
(5)ヘプタン酸アリル、カプリル酸アリル、カプロン酸アリル等の脂肪族のアリルエステル類、
(6)ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン等のビニルアルキルケトン類、
(7)N−メチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類および
(8)2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン類、等が挙げられる。
【0063】
上記のその他の重合性化合物の中でも、含塩素重合性化合物(例えば、塩化ビニルおよび塩化ビニリデン)を含むことが好ましい。
【0064】
次に、フッ素系重合体の水分散体(C)の製造に用いる界面活性剤(c2)は、
1O−(CHCHO)p−(R2O)q−R3 式(1)
(式(1)中、R1は炭素数1〜22のアルキル基または炭素数2〜22のアルケニル基、R2は炭素数3以上のアルキレン基であり、R3は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基または炭素数2〜22のアルケニル基、pは2以上の数、qは1以上の数であり、pおよびqはポリオキシエチレンブロックの質量割合が分子全体に対して5〜80質量%になるような数)で示される界面活性剤である。
【0065】
界面活性剤(c2)において、qは、2以上の数であってよい。すなわち、−(R2O)q−がポリオキシアルキレン鎖を形成してもよい。
【0066】
界面活性剤(c2)は、中央に親水性のポリオキシエチレン鎖と疎水性のオキシアルキレン鎖(特に、ポリオキシアルキレン鎖)を含有したポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテルである。疎水性のオキシアルキレン鎖としては、オキシプロピレン鎖、オキシブチレン鎖、スチレン鎖等が挙げられるが、中でも、オキシプロピレン鎖が好ましい。
【0067】
界面活性剤(c2)の具体例は、次のとおりである。
【0068】
1021O-(CH2CH2O)-(C36O)-H
1225O-(CH2CH2O)-(C36O)-H
1631O-(CH2CH2O)-(C36O)-H
1633O-(CH2CH2O)-(C36O)-H
1837O-(CH2CH2O)-(C36O)-H
1225O-(CH2CH2O)-(C36O)-H
1631O-(CH2CH2O)-(C36O)-H
1633O-(CH2CH2O)-(C36O)-C1225
(式中、pおよびqは上記と同意義である)
界面活性剤(c2)(コポリマー)の分子量に対して、ポリオキシエチレンブロックの割合が5〜80質量%、好ましくは30〜75質量%、特に40〜70質量%であるとよい。界面活性剤(c2)の平均分子量は、一般に300〜5,000、例えば、500〜3,000である。界面活性剤(c2)は1種単独でも2種以上を併用することもできる。
【0069】
界面活性剤(c2)は、フッ素系重合体の水分散体(C)の安定性をよくするために、重合後の共重合体樹脂(c1)に保護コロイドとして加えられる。上記界面活性剤(c2)の量は、共重合体樹脂(c1)100質量部当たり0.01〜30質量部、好ましくは1〜20質量部である。
【0070】
また、フッ素系重合体の水分散体(C)の製造には、必要に応じて有機溶剤を加えることができる。有機溶剤の例としては、アセトン、メチルエチルケトンのごときケトン類、エチレングリコール、ポリエチレングリコールのごときエチレングリコール誘導体および、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテルのごときエチレングリコール誘導体のアルキルエーテル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールのごときプロピレングリコール誘導体、シクロデキストリン、デキストリンのごときポリエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルのごときエステル類、N−アルキルピロリドン等である。有機溶剤の量は、フッ素系重合体の水分散体(C)の固形分100質量部あたり5〜200質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは20〜80質量部の範囲である。
【0071】
フッ素系重合体の水分散体(C)の製造は、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基のうち少なくとも1つのフッ素含有基と、アクリル酸基とメタクリル基及びα−置換アクリル酸基から選ばれる1つの重合性不飽和基とを有する化合物(i)と、必要に応じて、その他の重合性化合物とを重合開始剤および界面活性剤の存在下で有機溶剤を加えた水中で乳化重合して、重合体の乳濁液を得る。次いで、乳濁液に、水および/または界面活性剤(c2)を加えることによって得ることができる。
【0072】
このようなフッ素系重合体の水分散体(C)の市販品は、ユニダインTG−5521、ユニダインTG−5601、ユニダインTG−8711、ユニダインTG−470B、ユニダインTG−500S、ユニダインTG−580、ユニダインTG−581、ユニダインTG−658(以上、ダイキン社製、商品名)、SWK−601(セイミケミカル社製)、FS6810(フロロテクノロジー社製)が挙げられる。
【0073】
本発明において、フッ素系重合体の水分散体(C)の含有量は、着霜抑制、耐食性、塗料安定性の面から前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、固形分で1〜30質量部、好ましくは3〜25質量部、さらに好ましくは10〜22質量部である。
【0074】
なお、本発明の着霜抑制組成物には、フッ素系重合体の水分散体(C)以外に、必要に応じて、塩基性化合物、アミノ樹脂(B)以外の架橋剤(例えばブロック化ポリイソシアネート)、コロイダルシリカ、防菌剤、着色顔料、それ自体既知の防錆顔料(たとえばクロム酸塩系、鉛系、モリブデン酸系など)、防錆剤(たとえばタンニン酸、没食子酸などのフェノール性カルボン酸およびその塩類、フイチン酸、ホスフィン酸などの有機リン酸、重リン酸の金属塩類、亜硝酸塩など)等の添加剤、並びに水性媒体を加えることができる。
【0075】
上記水性媒体は、水であってもよいし、水と少量の有機溶剤やアミン類やアンモニアなどの塩基性化合物との混合溶媒であってもよい。混合溶媒において、通常、水の含有量は80質量%以上である。
また、前記コロイダルシリカは、得られる皮膜に親水性を付与し、皮膜の水接触角を低下させるなどの目的で配合されるものであり、該コロイダルシリカとしては、いわゆるシリカゾル又は微粉状シリカであって、粒子径が5nm〜10μm、好ましくは7nm〜1μmで、通常、水分散液として供給されているものをそのまま使用するか、または微粉状シリカを水に分散させて使用することができる。
【0076】
また、前記防菌剤は得られる皮膜における微生物の発生や繁殖を阻止するなどの目的で必要に応じて配合されるものであり、それ自体既知の防菌・殺菌作用をもつ脂肪族系、芳香族系の有機化合物の中から選ぶことができ、例えば、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンツチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、フェノール系、第4級アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロムインダノン系等の防菌剤が挙げられる。
【0077】
上記防菌剤の具体例としては、2−(4−チアゾリル)−ベンツイミダゾール、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N−ジメチル−N’−フェノール−N’−−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、O−フェニルフェノール、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチル−p−トルイルスルホン、2−ベンツイミダゾールカルバミン酸メチル、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジサルファイド、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミドなどを挙げることができる。また、無機塩系の防菌剤も使用でき、例えばメタホウ酸バリウム、ホウ酸銅、ホウ酸亜鉛、ゼオライト(アルミノシリケート)などが代表的なものである。
【0078】
本発明の熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物は、フィン材の表面に塗布し、乾燥させることによって、熱交換器フィン材の表面に発生した凝縮水の氷結温度降下に効果がある。このことから着霜抑制や耐食性に優れた皮膜を熱交換器フィン材表面に形成することができる。
【0079】
熱交換器用のアルミニウムフィン材の皮膜形成方法について
熱交換器用のアルミニウムフィン材の製造は、アルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材の表面に、本発明の着霜抑制組成物を塗装し、乾燥して皮膜を形成する。
【0080】
該基材であるアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材としては、従来、熱交換器アルミニウムフィン材の基材として使用可能なそれ自体既知のものを使用することができ、通常、無処理の上記基材を従来公知の方法で脱脂、水洗、乾燥したものを好適に使用することができる。
【0081】
上記アルミニウム系基材上に着霜抑制組成物を塗装し乾燥させることによって皮膜を形成することができる。着霜抑制組成物は、基材であるアルミニウム系基材(熱交換器に組み立てられたものであってもよい)上に、それ自体既知の塗装方法、例えば、浸漬塗装、シャワー塗装、スプレー塗装、ロール塗装、電着塗装などによって塗装することができる。着霜抑制組成物の乾燥条件は、通常、素材到達最高温度が60〜250℃となる条件で、2秒間〜30分間乾燥させることが好適である。
【0082】
また、着霜抑制組成物の乾燥膜厚としては通常、乾燥膜厚0.1〜5μm、特に0.5〜3μmの範囲が好ましい。0.1μm未満になると、耐食性、耐水性などの性能が劣り、一方5μmを超えると、アルミニウムフィン材の熱伝導性や加工性が劣るので好ましくない。
【実施例】
【0083】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0084】
製造例1 カルボキシル基含有アクリル樹脂No.1溶液の製造
n−ブタノール850部を窒素気流下で100℃に加熱し、その中に単量体混合物及び重合開始剤「メタクリル酸450部、スチレン450部、エチルアクリレート100部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 40部」を3時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いで、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部とn−ブタノール100部との混合溶液を30分間かけて滴下し、滴下後2時間熟成した。次いで、n−ブタノール933部、エチレングリコールモノブチルエーテル400部を加え、固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂No.1を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価300mgKOH/g、重量平均分子量約17,000を有していた。
【0085】
製造例2 カルボキシル基含有アクリル樹脂No.2溶液の製造
n−ブタノール1,400部を窒素気流下で100℃に加熱し、その中に単量体混合物及び重合開始剤「メタクリル酸 670部、スチレン250部、エチルアクリレート80部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート50部 」を3時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いで、 t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部とn−ブタノール100部との混合溶液を30分間かけて滴下し、滴下後2時間熟成した。次いで、 n−ブタノール373部、エチレングリコールモノブチルエーテル400部を加え、固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂No.2を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価450mgKOH/g、重量平均分子量約14,000を有していた。
【0086】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)の製造
製造例3 アクリル変性エポキシ樹脂No.1
jER828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂、エポキシ当量約190、数平均分子量約380)513部、ビスフェノールA287部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.3部及びメチルイソブチルケトン89部を仕込み、窒素気流下で140℃に加熱し、約4時間反応を行いエポキシ樹脂溶液を得た。得られたエポキシ樹脂はエポキシ当量3,700、数平均分子量約1,7000を有していた。
次いで、得られたエポキシ樹脂溶液に製造例1で得た固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂No.1を667部仕込み、90℃に加熱して均一に溶解させた後、同温度で脱イオン水40部を30分かけて滴下し、ついでジメチルエタノールアミン30部を添加して1時間撹拌して反応を行った。
さらに、脱イオン水2380部を1時間かけて添加して固形分約25%のアクリル変性エポキシ樹脂No.1の水分散体を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価48mgKOH/g、第4級アンモニウム塩量(明細書中の導電率滴定方法による)1.2×10−4mol/gを有していた。
【0087】
製造例4 アクリル変性エポキシ樹脂No.2
jER828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂、エポキシ当量約190、数平均分子量約380)519部、ビスフェノールA281部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.3部及びメチルイソブチルケトン89部を仕込み、窒素気流下で140℃に加熱し、約4時間反応を行いエポキシ樹脂溶液を得た。得られたエポキシ樹脂はエポキシ当量2,800、数平均分子量約12,000を有していた。
次いで、得られたエポキシ樹脂溶液に製造例2で得た固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂No.2を667部仕込み、90℃に加熱して均一に溶解させた後、同温度で脱イオン水40部を30分かけて滴下し、次いでジメチルエタノールアミン53部を添加して1時間撹拌して反応を行った。さらに、脱イオン水2,350部を1時間かけて添加して固形分約25%のアクリル変性エポキシ樹脂No.2の水分散体を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価75mgKOH/g、第4級アンモニウム塩量(導電率滴定による結果)1.8×10−4mol/gを有していた。
【0088】
製造例5 アクリル樹脂No.1水溶液の製造(比較例用)
ポリアクリル酸「AC10LP」(日本純薬(株)製のポリアクリル酸、重量平均分子量25,000、酸価779mgKOH/g)80部を水535部に溶解させ、固形分13%のアクリル樹脂No.1水溶液を得た。
【0089】
製造例6 アクリル樹脂No.2水溶液の製造(比較例用)
還流管、温度計、滴下ロート、攪拌機を装着した四つ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル406部を仕込み、窒素気流下で100℃に加熱、保持し、アクリル酸196部、2−ヒドロキシエチルアクリレート49部、エチレングリコールモノブチルエーテル35部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル14部の混合物を滴下ロートから3時間を要して滴下し、滴下後、さらに同温度で2時間攪拌を続け、ついで冷却し、固形分35%のアクリル樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は、酸価623mgKOH/g、重量平均分子量25,000を有していた。得られた35%のアクリル樹脂溶液に水を徐々に添加、攪拌して固形分13%のアクリル樹脂No.2水溶液を得た。
【0090】
製造例7 フッ素系重合体の水分散体No.1
1LオートクレーブにC2n+1CHCHOCOCH=CH (n=6,8,10,12,14(nの平均8)の化合物の混合物)150部、ステアリルアクリレート75部、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート3部、純水300部、トリプロピレングリコール80部、酢酸0.45部、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド6部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル9部、を入れ、撹拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。乳化後n−ドデシルメルカプタン1.5部を添加し、さらに塩化ビニル45部を圧入充填した。さらに2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩1.12部を添加し、60℃で5時間反応させて重合体の水性エマルションを得た。
さらにこの水性エマルションにC1225O−(CO)a−(CO)b−H(ポリオキシエチレン鎖の平均が10モル、ポリオキシプロピレン鎖の平均が4モル)3部を入れ、1時間攪拌させて固形分を調整し、固形分40質量%のフッ素系重合体の水分散体No.1を得た。
【0091】
製造例8 フッ素系重合体の水分散体No.2
1LフラスコにC2n+1CHCHOCOCH=CH(n=6,8,10,12,14(nの平均8)の化合物の混合物)100部、ステアリルメタクリレート50部、N−メチロールアクリルアミド2部、純水200部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル50部、酢酸0.3部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル4部、ポリオキシエチレンセチルエーテル10部を入れ、撹拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。
2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.75部を添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性エマルションを得た。
さらにこの水性エマルションにC1633O−(CO)a−(CO)b−H(ポリオキシエチレン鎖の平均が8モル、ポリオキシプロピレン鎖の平均が4モル)2部を入れ、1時間攪拌させて固形分を調整し、固形分40質量%のフッ素系重合体の水分散体No.2を得た。
【0092】
熱交換器フィン材用の着霜抑制処理剤の製造
実施例1
製造例3で得たアクリル変性エポキシ樹脂No.1を90部(固形分)、サイメル325(注1)10部(固形分)、フッ素系重合体の水分散体No.1を5部(固形分)を加え、さらに脱イオン水を加えて固形分を調整して、固形分10%の着色抑制処理剤No.1を得た。
【0093】
実施例2〜13
下記表1及び表2に示す配合に従って各成分を攪拌機で十分に混合し、脱イオン水を加えて固形分を調整して固形分10%の着霜抑制処理剤No.2〜No.13を作成した。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
比較例1〜7
下記表3に示す配合に従って各成分を攪拌機で十分に混合し、脱イオン水を加えて固形分を調整して固形分10%の着霜抑制処理剤No.14〜No.20を作成した。
【0097】
【表3】

【0098】
(注1)サイメル325:日本サイテックインダストリーズ社製、商品名、メ
チルエーテル化メラミン樹脂、固形分80%。
(注2)サイメル701:日本サイテックインダストリーズ社製、商品名、メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分82%。
(注3)ユニダインTG−500S:ダイキン株式会社製、商品名、フッ素系重合体の水分散体、固形分30質量%
(注4)ユニダインTG−580:ダイキン株式会社製、商品名、フッ素系重合体の水分散体、固形分30質量%
(注5)SWK−601:セイミケミカル社製、商品名、フッ素系重合体の水分散体、固形分11質量%。
【0099】
着霜抑制処理アルミニウム板の作成及び性能評価
アルミニウムフィン材(JIS−A1100)を200×250mmに切断し、濃度2質量%の脱脂剤(ケミクリーナー561B、日本シービーケミカル社製)を用いて脱脂を行った後にリン酸クロメート処理を行い、その表面に上記各着霜抑制処理剤を乾燥皮膜が1μmになるように塗布した。その後、素材到達最高温度(PMT)が150℃になるようにして10秒間焼付け乾燥して、試験板No.1〜No.20を得た。
【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
【表6】

【0103】
(注6)着霜性:温度2℃、湿度89%RHの恒温槽の中に、20×15×5cmのステンレス容器を置き、この側面に試験塗板を貼付けた。ついで、ステンレス製容器の中に−7℃の不凍液を循環させ、経時の試験塗板表面の霜の状態を目視で観察し下記基準で評価した。
【0104】
◎は、循環後、1時間を越えて霜の発生なし
〇は、循環後、30分間を越えて、かつ1時間未満で霜の発生なし
△は、循環後、10分間を越えて、かつ30分間未満で霜の発生なし
×は、循環後、10分間未満で霜が発生する。
【0105】
(注7)耐食性:試験板にJIS−Z−2371塩水噴霧試験法に準じて試験を行った。試験時間は500時間とし、下記基準により評価した。
◎は、塗面に白サビ、フクレの発生が全く認められない 、
〇は、白サビ又はフクレの少なくとも一方がわずかに発生したが、現状製品として問題のないレベル
△は、白サビ又はフクレの少なくとも一方が発生
×は、白サビ又はフクレが著しく発生した。
【0106】
(注8)塗料安定性:
各着霜抑制処理組成物を100mLのガラス容器に入れ、40℃の恒温室にて1ヶ月間貯蔵し、処理組成物の状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
〇は、相分離、沈降、凝集のいずれも確認できない
△は、相分離、沈降、凝集の少なくともいずれかが発生する
×は、相分離、沈降、凝集の少なくともいずれかが著しく発生する。
【0107】
(注9)耐湿性:
各試験板を温度50℃で相対湿度95%の環境に240時間放置した後、塗膜の変色の程度を下記基準で評価した。
○は、変色が平面部の面積の5%未満
△は、平面部の面積の5%以上、80%未満で変色
×は、平面部の面積の80%以上で変色。
【産業上の利用可能性】
【0108】
着霜防止に優れ、かつ耐食性に優れる皮膜を有する熱交換器フィン材を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記特徴のアクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)及びフッ素系重合体の水分散体(C)を含有し、アクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、フッ素系重合体の水分散体(C)の含有量が1〜30質量部であることを特徴とする熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物。
アクリル変性エポキシ樹脂(A):数平均分子量4,000〜30,000のビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)とをアミン化合物の存在下に反応させてなる樹脂
【請求項2】
フッ素系重合体の水分散体(C)が、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基のうち少なくとも1つのフッ素含有基と、アクリル酸基とメタクリル基及びα−置換アクリル酸基から選ばれる1つの重合性不飽和基とを有する化合物(i)を重合成分とする共重合体樹脂(c1)、及び下記式(1)で表される界面活性剤(c2)を含有する水分散体である請求項1に記載の着霜抑制処理組成物。
1O−(CHCHO)−(R2O)q−R
式(1)
(式(1)中、R1は炭素数1〜22のアルキル基または炭素数2〜22のアルケニル基、R2は炭素数3以上のアルキレン基であり、R3は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基または炭素数2〜22のアルケニル基、pは2以上の数、qは1以上の数であり、pおよびqはポリオキシエチレンブロックの質量割合が分子全体に対して5〜80質量%になるような数)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱交換器フィン材用の着霜抑制処理組成物をアルミニウムフィン材表面に塗装して加熱乾燥し、乾燥膜厚0.1〜5μmの皮膜を形成することを特徴とする着霜抑制処理皮膜形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の着霜抑制処理皮膜形成方法によって得られたアルミニウムフィン材。

【公開番号】特開2011−102334(P2011−102334A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256653(P2009−256653)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】