説明

熱伝導型ガスセンサー

【課題】被検ガスの温度変化による擬似信号を発生を防止すること。
【解決手段】基台12を貫通する2本のステー13、13にヒータ線11を張設して構成された温度補償用エレメント10と、中継台22を貫通する2本のステー23、23にヒータ線21を張設して構成された検出用エレメント20と、ガス取り入れ口31を備え基台12に固定されるキャップ30とを備え、検出用エレメント20のステー23、23を基台12を貫通させて温度補償用エレメント10に層状に配置して基台12と中継台22とキャップ30とにより密閉空間からなる補償室50を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率の相違に基づいてガスの濃度を検出する熱伝導型ガスセンサー、より詳細には温度補償素子を付帯させた熱伝導型ガスセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
気体を構成する成分や濃度を見かけの熱伝導率に基づいて検出するガスセンサーは、気体の温度変化による誤差を最小限とするために、図5に見られるように、ヒータ線Rをステーに張設したガスセンサーAと、このガスセンサーを密閉キャップBに収容して被検ガスから絶縁するように構成された温度補償用エレメントCとを可及的に近接させて回路基板などの基板Dに固定して2つのヒータ線R、Rの抵抗差を検出するように構成されている。
【0003】
しかしながら、基準温度、例えば20℃から一定速度で環境の温度が変化すると、密閉キャップを有する温度補償用エレメントBは環境の温度の影響が小さく、これに対してガスセンサーAは即応するため、図5の点線で示したように誤差信号が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは環境の温度または被検ガスの温度の影響を可及的に防止することができる熱伝導型ガスセンサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を達成するために本発明においては、基台を貫通する2本のステーにヒータ線を張設して構成された第1のエレメントと、中継台を貫通する2本のステーにヒータ線を張設して構成された第2のエレメントと、前記第1、第2のエレメントを上下関係となるように収容するとともに前記基台に固定されるキャップとを備え、前記キャップが前記中継台により前記エレメントを収容する2つの領域に区画され、いずれか一方の領域だけが前記キャップに形成された通孔により外部に連通されている。
【発明の効果】
【0006】
温度補償用エレメント及び検出用エレメントを構成する2つのエレメントが共にキャップに収容されているため、外部の温度変化に可及的に同一の形態で追従して温度変化に伴う擬似信号の発生を防止することができる。
また、2つのエレメントを上下関係に配置して1つのキャップを装着することにより構成できるため、封止構造の簡素化、組み立て作業の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1(イ)、(ロ)及び図2(イ)、(ロ)は、本発明の一実施例を示すものであって、温度補償用エレメント10を構成するヒータ線11は基台12を貫通する2本のステー13、13に張設されている。
【0008】
一方、ガス検出エレメント20を構成するヒータ線21は、温度補償用エレメント10のヒータ線11と同一構造で、中継台22を貫通する2本のステー23に張設された上で、温度補償用エレメントのヒータ線11に直交し、かつヒータ線11よりも基台12の遠方側に位置するように基台12にステー23が挿通され層状に配置されている。好ましくは、温度補償用エレメント10のステー13の先端により中継台22を支持するように構成されている。
【0009】
キャップ30は、検出用エレメント20のヒータ線21に被検ガスを接触させるべく先端にガス取り入れ口31を有し、基台12に装着されている。中継台22にはその外周にパッキン40が装着されていて中継台22と基台12との間に密閉空間からなる補償室50が形成され、この補償室50に所要の標準ガスが封入されている。なお、図中符号14は、ステー23を挿通するための貫通孔を示す。
【0010】
この実施例において、温度補償用エレメント10のヒータ線11と検出用エレメント20のヒータ線21をブリッジ接続、もしくは差分接続すると、検出室51に補償室50と同一の被検ガスが流入している状態では両ヒータ線11、21が同一の温度に維持されているため、零信号が出力する。
【0011】
一方、ガス取り入れ口31から標準ガスとは異なる成分を含む被検ガスが検出室51に流れ込むと、ガスの熱伝導率に応じてヒータ線21の熱の放散度に変化が生じて両ヒータ線間の抵抗に差が生じて信号が出力する。
【0012】
一方、被検ガスの温度が変動すると、補償室50の標準ガスを介して温度補償用エレメント10のヒータ線11も検出用エレメント20のヒータ線21と同等の熱的影響を受けるから、被検ガスの温度変化の影響を可及的に防止することができる。
【0013】
すなわち、本発明においては温度補償用エレメントのヒータ線11が収容されている補償室50は、単一のキャップ30を介して被検ガスに接触しているため、略同等の速度で環境の温度に追従する。
【0014】
図3は、被検ガスの温度を0℃から40℃まで200分で一定速度で変化させた場合の出力特性で、本願発明においては検出素子と温度補償素子とが共に単一のキャップに収容されているため、図5の実線で示したようにそれぞれのヒータの温度が同一となり擬似信号の発生が無かった。
これに対して図5の点線で示した従来のものでは、温度補償素子だけがキャップに収容されているため、検出素子との間に温度差が生じて温度変化に対して擬似信号の発生が見られた。
【0015】
なお、上述の実施例においてはキャップの頂部に被検ガス取り入れ口31を形成しているが、図4に示したように下段のヒータ線11を収容した領域のキャップ30の胴部にガス取り入れ口31’を形成し、上部のヒータ線21を温度補償用素子に、下部のヒータ線11を検出素子に使用しても同様の作用を奏することは明らかである。なお、本明細書では上部、下部、または上下関係という用語を使用しているが、これは図面に対応させて説明するためで、同一線上に略同一の姿勢で位置することを含む用語である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図(イ)、(ロ)は本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】図(イ)、(ロ)は、同上ガスセンサーの組み立て分解図である。
【図3】本発明と従来の熱伝導型ガスセンサーの温度変化時における出力を示す線図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す断面図である。
【図5】従来の熱伝導型ガスセンサーの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
10 温度補償用エレメント 11 ヒータ線 12 基台 13 ステー 20 ガス検出エレメント 21 ヒータ線 22 中継台 23 ステー 30 キャップ 31、31’ ガス取り入れ口 40 パッキン 50 補償室 51 検出室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台を貫通する2本のステーにヒータ線を張設して構成された第1のエレメントと、中継台を貫通する2本のステーにヒータ線を張設して構成された第2のエレメントと、前記第1、第2のエレメントを上下関係となるように収容するとともに前記基台に固定されるキャップとを備え、
前記キャップが前記中継台により前記エレメントを収容する2つの領域に区画され、いずれか一方の領域だけが前記キャップに形成された通孔により外部に連通されている熱伝導型ガスセンサー。
【請求項2】
前記中継台の外周と前記キャップの内面との間にパッキンが装填されている請求項1に記載の熱伝導型ガスセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−187466(P2007−187466A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3672(P2006−3672)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】