説明

熱伝導性感圧接着性積層シート、及び電子部品

【課題】熱伝導性、絶縁性、柔軟性、及び難燃性を備える熱伝導性感圧接着性積層シート、及び該シートを備えた電子部品を提供する。
【解決手段】ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S1)と、膨張化黒鉛粉(B)と、縮合リン酸エステル(C1)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)からなるA層、A層の一方の面側に積層される、ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S2)と、難燃性熱伝導無機化合物(D2)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)からなるB1層、A層の他方の面側に積層される、ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S3)と、難燃性熱伝導無機化合物(D3)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)からなるB2層を備え、縮合リン酸エステル(C1)は、25℃における粘度が7000mPa・s以上であり、かつ大気圧下15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体である、熱伝導性感圧接着性積層シート(F)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性感圧接着性積層シート、及び該シートを備えた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)、集積回路(IC)チップ等のような電子部品は、その高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、温度上昇による機能障害対策を講じる必要性が生じている。一般的には、電子部品等の発熱体に、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることで、熱を拡散、放熱させる方法が取られている。発熱体から放熱体への熱伝導を効率よく行うためには、各種熱伝導シートが使用されているが、一般に、発熱体と放熱体とを固定する用途においては熱伝導性感圧接着性シートが必要とされている。
【0003】
このような熱伝導性感圧接着性シートは、熱伝導性に加えて、用途に応じたその他の性能(絶縁性、難燃性、柔軟性等)も要求されることがある。熱伝導性感圧接着性シートなどのようなシート状の部材に複数の性能を備えさせるためには、異なる性能を持った層を積層して積層シートとすることが考えられる。例えば、特許文献1には、芳香族ポリアミドフィルムに樹脂層や金属層を積層した積層シートに関する技術が開示されており、かかる積層シートによれば、絶縁性などを備える信頼性が高い積層シートとすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−144510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、熱伝導性感圧接着性シートは、用途に応じて熱伝導性以外の性能も要求される。具体的には、熱伝導性に加えて、柔軟性を要求され、また特にLED光源等へ直接貼り付ける用途に対応するための絶縁性も要求されてきている。さらに、用途によっては難燃性も要求されてきている。しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術を含めて、これまでに開示されている従来の技術では、熱伝導性、絶縁性、柔軟性、及び難燃性を備えた熱伝導性感圧接着性シートを提供することは困難であった。例えば、熱伝導性及び絶縁性を両立させるためには、金属層と樹脂層からなる積層シートなどが考えられるが、金属層を用いれば、柔軟性が損なわれるため柔軟性が求められる用途には好適ではない。さらに金属層と樹脂層とでは柔軟性に差があるため、折り曲げたりした際に界面で剥離しやすいなどの問題もあった。さらには金属の剛性、高比重の面から金属層を厚くしにくいという問題もあった。また、難燃性の向上を図るためには水酸化アルミニウムなどの無機物を添加することがよく行われていたが、このような難燃剤を多量に用いた場合、粘着性、柔軟性、及び熱伝導性を犠牲にせざるをえなかった。
【0006】
そこで、本発明は、熱伝導性、絶縁性、柔軟性、及び難燃性を備える熱伝導性感圧接着性積層シート、及び該シートを備えた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、所定の材料からなる高い難燃性及び熱伝導性を有する層を、所定の材料からなる絶縁性を有する層で挟持することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、第1の本発明によれば、ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S1)と膨張化黒鉛粉(B)と縮合リン酸エステル(C1)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)からなるA層、ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S2)と難燃性熱伝導無機化合物(D2)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)からなり、A層の一方の面側に積層されるB1層、並びに、ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S3)と難燃性熱伝導無機化合物(D3)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)からなり、A層の他方の面側に積層されるB2層、を備え、縮合リン酸エステル(C1)は、25℃における粘度が7000mPa・s以上であり、かつ大気圧下15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体である、熱伝導性感圧接着性積層シート(F)が提供される。
【0009】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)において、A層が、重合体(S1)100質量部に対し、60質量部以上1800質量部以下の膨張化黒鉛粉(B)及び100質量部以上300質量部以下の縮合リン酸エステル(C1)を含むことが好ましい。本発明ではA層に多量の膨張化黒鉛粉(B)を含有させることが可能であり、膨張化黒鉛粉(B)の含有量の増加に応じて、熱伝導性感圧接着性積層シート(F)の熱伝導性を向上させることができる。また、A層に所定量の縮合リン酸エステル(C1)を含有させることで、難燃性をさらに向上させることができる。
【0010】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)において、B1層及びB2層の厚みが1μm以上600μm以下であることが好ましい。B1層及びB2層が薄すぎればA層に隙間なく均一に積層する事が困難となって、A層をB1層及びB2層で挟持することに因る効果(絶縁性向上)を得難くなり、B1層及びB2層が厚すぎれば熱伝導性感圧接着性積層シート(F)の熱伝導性と難燃性が低下する傾向にある。
【0011】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)において、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)がリン酸塩(G)及び/又は発泡剤(H)を含むことが好ましい。
【0012】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)において、熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)が縮合リン酸エステル(C2)を含み、熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)が縮合リン酸エステル(C3)を含み、縮合リン酸エステル(C2)及び縮合リン酸エステル(C3)は、25℃における粘度が7000mPa・s以上であり、かつ大気圧下15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体であることが好ましい。かかる形態とすることによって、熱伝導性感圧接着性積層シート(F)の難燃性をさらに向上させることができる。
【0013】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)において、重合体(S1)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)であり、重合体(S2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)であり、重合体(S3)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)であることが好ましい。本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル、及び/又は、メタクリル」を意味する。重合体(S1)を(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)とすることによってA層に接着性・柔軟性を付与させやすく、重合体(S2)を(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)とすることによってB1層に接着性・柔軟性を付与させやすく、重合体(S3)を(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)とすることによってB2層に接着性・柔軟性を付与させやすい。
【0014】
第1の本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)において、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られるものであり、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP2)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α2)を重合することにより得られるものであり、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP3)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α3)を重合することにより得られるものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られるものとすることによってA層の成形性を向上させることができ、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP2)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α2)を重合することにより得られるものとすることによってB1層の成形性を向上させることができ、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP3)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α3)を重合することにより得られるものとすることによってB2層の成形性を向上させることができる。
【0015】
また、第2の本発明によれば、第1の本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)を備えた電子部品が提供される。
【0016】
第2の本発明において、電子部品として、エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード(LED)光源を有する機器、自動車のパワーデバイス、燃料電池、太陽電池、バッテリー、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、液晶、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、又は集積回路(IC)が好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱伝導性、絶縁性、柔軟性、及び難燃性を備える熱伝導性感圧接着性積層シート、及び該シートを備えた電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.熱伝導性感圧接着性積層シート(F)
本発明の接着性積層シート熱伝導性感圧(F)は、A層と、A層の一方の面側に積層されるB1層と、A層の他方の面側に積層されるB2層とを備えている。
【0019】
1.1.A層
A層は、ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S1)と、膨張化黒鉛粉(B)と、縮合リン酸エステル(C1)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)からなる。熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)は、さらにリン酸塩(G)及び/又は発泡剤(H)を含むことが好ましい。
【0020】
<重合体(S1)>
重合体(S1)を構成するものとしては、ゴム、エラストマー及び樹脂の中から任意に選んだ少なくとも一種を挙げることができる。そして、A層に接着性及び/又は粘着性を備えさせるためには、重合体(S1)に接着性及び/又は粘着性を備えさせることが好ましい。重合体(S1)に、接着性及び/又は粘着性を備えさせるためには、ゴム、エラストマー及び樹脂は、接着性及び/又は粘着性を有するものの中から選ぶことが好ましい。しかしながら、接着性及び/又は粘着性を有しないゴム、エラストマー及び樹脂に、粘接着性付与剤を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
本発明に用いることができるゴム、エラストマー及び樹脂の具体例を以下に列記する。
【0022】
天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴムなどの、共役ジエン重合体;ブチルゴム;スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などの、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物などの、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物;アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−イソプレン共重合ゴムなどの、シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水素添加物などの、シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体の水素添加物;シアン化ビニル−芳香族ビニル−共役ジエン共重合体;シアン化ビニル化合物−芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加物;シアン化ビニル化合物−共役ジエン共重合体とポリ(ハロゲン化ビニル)との混合物;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ(メタクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリアクリル酸ステアリル、ポリメタクリル酸ステアリルなどの、(メタ)アクリル重合体(「(メタ)アクリル」とは、「アクリル、及び/又は、メタクリル」を意味する。以下同じ。);ポリエピクロロヒドリンゴム、ポリエピブロモヒドリンゴムなどの、ポリエピハロヒドリンゴム;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどの、ポリアルキレンオキシド;エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM);シリコーンゴム;シリコーン樹脂;フッ素ゴム;フッ素樹脂;ポリエチレン;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などの、エチレン−α−オレフィン共重合体;ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−オクテンなどの、α−オレフィン重合体;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ臭化ビニル樹脂などの、ポリハロゲン化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ臭化ビニリデン樹脂などの、ポリハロゲン化ビニリデン樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12などの、ポリアミド;ポリウレタン;ポリエステル;ポリ酢酸ビニル;ポリ(エチレン−ビニルアルコール);などを挙げることができる。
【0023】
上記したゴム、エラストマー及び樹脂の具体例の中でも、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリアクリル酸エチル、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕が、接着性、粘着性に優れるため好ましい。
【0024】
より好ましくは、ポリ(アクリル酸n−ブチル)、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸n−ブチル)−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕が挙げられる。
【0025】
さらに好ましくは、ポリ〔アクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕、ポリ〔アクリル酸−メタクリル酸−(アクリル酸2−エチルヘキシル)〕が挙げられる。
【0026】
ゴム、エラストマー、及び、樹脂の具体例として挙げた上記物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0027】
重合体(S1)に所望により配合される粘接着性付与剤としては、各種公知のものを使用できる。例えば石油樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂及びロジン樹脂が挙げられるが、これらのなかでも石油樹脂が好ましい。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0028】
石油樹脂の具体例としては、ペンテン、ペンタジエン、イソプレンなどから得られるC5石油樹脂;インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどから得られるC9石油樹脂;上記各種モノマーから得られるC5−C9共重合石油樹脂;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンから得られる石油樹脂;それらの石油樹脂の水素化物;それらの石油樹脂を無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノールなどで変性した変性石油樹脂;などを挙げることができる。
【0029】
テルペン系樹脂としてはα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂や、α−ピネン、β−ピネンなどのテルペン類とスチレンなどの芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂などを例示できる。
【0030】
フェノール樹脂としては、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物を使用できる。該フェノール類としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなどが挙げられ、これらフェノール類とホルムアルデヒドをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなどが例示できる。また、ロジンにフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども例示できる。
【0031】
ロジン樹脂としてはガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジンや、前記ロジンを用いて不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジンや重合ロジンや、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、フェノールなどで変性した変性ロジンや、それらのエステル化物などが挙げられる。
【0032】
上記エステル化物を得るためのエステル化に用いられるアルコールとしては多価アルコールが好ましく、その例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価アルコールや、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコールや、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコールや、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなどが挙げられ、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0033】
これら粘接着性付与剤の軟化点は特に限定されないが、200℃以下の高軟化点のものから室温にて液状のものを適宜選択して使用できる。
【0034】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A1))
重合体(S1)を構成するものとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られるものが特に好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を成形してA層とする際に、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)をシート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、重合して(メタ)アクリル酸エステル重合体に変換し、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の成分と混合及び/又は一部結合して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)となる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)とは、A層中の(メタ)アクリル酸エステル重合体成分全てに相当し、A層中の(メタ)アクリル酸エステル重合体成分全てを包括的に表す概念である。
【0035】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1))
以下、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)について詳細に説明する。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)は、特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)、及び、有機酸基を有する単量体単位(a2)を含有することが好ましい。
【0037】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)を与える(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)には、特に限定はないが、例えば、アクリル酸エチル(単独重合体のガラス転移温度は、−24℃)、アクリル酸プロピル(同−37℃)、アクリル酸ブチル(同−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(同−22℃)、アクリル酸ヘプチル(同−60℃)、アクリル酸ヘキシル(同−61℃)、アクリル酸オクチル(同−65℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(同−50℃)、アクリル酸2−メトキシエチル(同−50℃)、アクリル酸3−メトキシプロピル(同−75℃)、アクリル酸3−メトキシブチル(同−56℃)、アクリル酸2−エトキシメチル(同−50℃)、メタクリル酸オクチル(同−25℃)、メタクリル酸デシル(同−49℃)などを挙げることができる。
【0038】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0039】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、それから導かれる単量体単位(a1)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)中、好ましくは80質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは85質量%以上99.5質量%以下となるような量で重合に使用される。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)の使用量が、上記範囲内であると、これから得られるA層の室温付近での感圧接着性に優れる。
【0040】
有機酸基を有する単量体単位(a2)を与える単量体(a2m)は、特に限定されず、その代表的なものとして、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基などの有機酸基を有する単量体を挙げることができるが、これらのほか、スルフェン酸基、スルフィン酸基、燐酸基などを含有する単量体も使用することができる。
【0041】
カルボキシル基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の他、イタコン酸メチル、マレイン酸ブチル、フマル酸プロピルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステルなどを挙げることができる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの、加水分解などによりカルボキシル基に誘導することができる基を有するものも同様に使用することができる。
【0042】
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのα,β−不飽和スルホン酸、及び、これらの塩を挙げることができる。
【0043】
これらの有機酸基を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体がより好ましく、中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。これらは、工業的に安価で容易に入手することができ、他の単量体成分との共重合性も良く、生産性の点でも好ましい。これらの有機酸基を有する単量体(a2m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0044】
これらの有機酸基を有する単量体(a2m)は、それから導かれる単量体単位(a2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)中、0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下となるような量で重合に使用されるのが望ましい。上記範囲内での使用においては、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことができる。
【0045】
なお、有機酸基を有する単量体単位(a2)は、前述のように、有機酸基を有する単量体(a2m)の重合によって、(メタ)アクリル酸エステル重合体中に導入するのが簡便であり好ましいが、(メタ)アクリル酸エステル重合体生成後に、公知の高分子反応により、有機酸基を導入してもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)は、有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)から誘導される単量体単位(a3)を含有していてもよい。
【0047】
有機酸基以外の官能基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、メルカプト基などを挙げることができる。
【0048】
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0049】
アミノ基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アミノスチレンなどを挙げることができる。
【0050】
アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などを挙げることができる。
【0051】
エポキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0052】
有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0053】
これらの有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)は、それから導かれる単量体単位(a3)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)中、10質量%以下となるような量で重合に使用されるのが好ましい。10質量%以下の単量体(a3m)を使用することにより、重合時の粘度を適正に保つことができる。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)は、上述したガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)、有機酸基を有する単量体単位(a2)、及び、有機酸基以外の官能基を含有する単量体単位(a3)以外に、これらの単量体と共重合可能な単量体(a4m)から誘導される単量体単位(a4)を含有していてもよい。単量体(a4m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0055】
単量体(a4m)から導かれる単量体単位(a4)の量は、アクリル酸エステル重合体(AP1)の10質量%以下が好ましく、より好ましくは、5質量%以下である。
【0056】
単量体(a4m)は、特に限定されないが、その具体例として、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステル、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン系単量体、非共役ジエン系単量体、シアン化ビニル単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0057】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル(単独重合体のガラス転移温度は、10℃)、メタクリル酸メチル(同105℃)、メタクリル酸エチル(同63℃)、メタクリル酸プロピル(同25℃)、メタクリル酸ブチル(同20℃)などを挙げることができる。
【0058】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステルの具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどを挙げることができる。
【0059】
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエン、及び、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0060】
共役ジエン系単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3ブタジエン(イソプレンと同義)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。
【0061】
非共役ジエン系単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
【0062】
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0063】
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0064】
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げることができる。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)で測定して、10万から40万の範囲にあることが好ましく、15万から30万の範囲にあることが、より好ましい。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)は、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)、有機酸基を有する単量体(a2m)、必要に応じて使用する、有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)、及び、必要に応じて使用するこれらの単量体と共重合可能な単量体(a4m)を共重合することによって特に好適に得ることができる。
【0067】
重合の方法は、特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などのいずれであってもよく、これ以外の方法でもよい。好ましくは、溶液重合であり、中でも重合溶媒として、酢酸エチル、乳酸エチルなどのカルボン酸エステルやベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒を用いた溶液重合がより好ましい。
【0068】
重合に際して、単量体は、重合反応容器に分割添加してもよいが、全量を一括添加するのが好ましい。
【0069】
重合開始の方法は、特に限定されないが、重合開始剤として熱重合開始剤を用いるのが好ましい。熱重合開始剤は、特に限定されず、過酸化物及びアゾ化合物のいずれでもよい。
【0070】
過酸化物重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドのようなペルオキシドの他、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などを挙げることができる。これらの過酸化物は、還元剤と適宜組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。
【0071】
アゾ化合物重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などを挙げることができる。
【0072】
重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、単量体100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下の範囲であるのが好ましい。
【0073】
これらの単量体のその他の重合条件(重合温度、圧力、撹拌条件など々)は、特に制限がない。
【0074】
重合反応終了後、必要により、得られた重合体を重合媒体から分離する。分離の方法は、特に限定されないが、溶液重合の場合、重合溶液を減圧下に置き、重合溶媒を留去することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)を得ることができる。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の重量平均分子量は、重合の際に使用する重合開始剤の量や、連鎖移動剤の量を適宜調整することによって制御することができる。
【0076】
((メタ)アクリル酸エステル単量体(α1))
上記したように、重合体(S1)を構成するものとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られるものが特に好ましい。
【0077】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有するものであれば、特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)を含有するものであることが好ましい。
【0078】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の合成に用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)と同様の(メタ)アクリル酸エステル単量体を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0079】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及びそれと共重合可能な単量体との混合物として用いてもよい。
【0080】
特に好ましい(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)、有機酸基を有する単量体(a6m)、及び、これらと共重合可能な単量体(a7m)からなるものである。
【0081】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率は、好ましくは69.9質量%以上99.8質量%以下、より好ましくは74.5質量%以上98.5質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率が、上記範囲にあるときは、A層感圧接着性や柔軟性に優れる。
【0082】
有機酸基を有する単量体(a6m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の合成に用いる単量体(a2m)として例示したものと同様の有機酸基を有する単量体を挙げることができる。有機酸基を有する単量体(a6m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0083】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における、有機酸基を有する単量体(a6m)の比率は、0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上25質量%以下である。有機酸基を有する単量体(a6m)の比率が、上記範囲にあるときは、熱伝導性感圧接着性シートの硬度が適正となり、高温(100℃)での感圧接着性が良好なものとなる。
【0084】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及び有機酸基を有する単量体(a6m)の他に、これらと共重合可能な単量体(a7m)を、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下の範囲で用いることが望ましい。
【0085】
上記単量体(a7m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の合成に用いる単量体(a3m)、単量体(a4m)、又は下記に示す多官能性単量体として例示するものと同様の単量体を挙げることができる。
【0086】
共重合可能な単量体(a7m)としては、前述したように、二以上の重合性不飽和結合を有する、多官能性単量体を用いることもできる。多官能性単量体を共重合させることにより、共重合体に分子内及び/又は分子間架橋を導入して、感圧接着剤としての凝集力を高めることができる。
【0087】
多官能性単量体としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートや、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチレン−5−トリアジンなどの置換トリアジンの他、4−アクリルオキシベンゾフェノンのようなモノエチレン系不飽和芳香族ケトンなどを用いることができる。中でも、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0088】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、上記の多官能性単量体を含有していることが好ましい。多官能性単量体は、単量体(a7m)の全部又は一部として用いられるが、多官能性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下含有しているのが望ましい。
【0089】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)に含有される(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)100質量部に対して、下限が20質量部であることが好ましく、40質量部であることがより好ましく、60質量部であることがさらに好ましい。また、上限は170質量部であることが好ましく、150質量部であることがより好ましく、130質量部であることがさらに好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)に含有される(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の量が上記範囲の下限(20質量部)未満又は上限(170質量部)を超えると、A層とした際に、感圧接着保持性に劣ることがある。
【0090】
A層を成形する際に、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は重合する。その重合を促進するため、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)に加えて、さらに、重合開始剤を含有することが好ましい。
【0091】
重合開始剤としては、光重合開始剤、アゾ系熱重合開始剤、有機過酸化物熱重合開始剤などが挙げられるが、得られるA層の接着力等の観点から、有機過酸化物熱重合開始剤が好ましく用いられる。
【0092】
光重合開始剤としては、公知の各種光重合開始剤を用いることができる。その中でも、ホスフォンオキサイド系化合物が好ましい。好ましい光重合開始剤であるホスフォンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンジル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0093】
アゾ系熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などが挙げられる。
【0094】
有機過酸化物熱重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンのようなペルオキシドなどを挙げることができるが、熱分解時に臭気の原因となる揮発性物質を放出しないことが好ましい。有機過酸化物熱重合開始剤の中でも、1分間半減期温度が100℃以上かつ170℃以下のものが好ましい。
【0095】
有機過酸化物熱重合開始剤などの重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)100質量部に対し、下限が、好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.3質量部さらに好ましくは0.5質量部であり、上限が、好ましくは10質量部、より好ましくは5質量部、さらに好ましくは3質量部である。
【0096】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率は、95質量%以上であることが好ましい。重合転化率が低すぎると、得られるA層に単量体臭が残るので好ましくない。
【0097】
<膨張化黒鉛粉(B)>
A層には、膨張化黒鉛粉(B)が含有されていることが好ましい。本発明に用いることができる膨張化黒鉛粉(B)の例としては、酸処理した黒鉛を500℃〜1200℃にて熱処理して100ml/g〜300ml/gに膨張させ、次いで、粉砕することを含む工程を経て得られたものを挙げることができる。より好ましくは、黒鉛を強酸で処理した後アルカリ中で焼結し、その後再度強酸で処理したものを500℃〜1200℃にて熱処理して、酸を除去すると共に100ml/g〜300ml/gに膨張させ、次いで、粉砕することを含む工程を経て得られたものを挙げることができる。上記熱処理の温度は、特に好ましくは800℃〜1000℃である。
【0098】
本発明に用いる膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径は30μm〜500μmであることが好ましく、より好ましくは50μm〜400μmであり、さらに好ましくは80μm〜300μmである。膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径が上記範囲の下限(30μm)未満では、A層の熱伝導率が低くなる傾向にある。一方、膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径が上記範囲の上限(500μm)を超えると、A層の表面に膨張化黒鉛粉(B)が大きなドメインで存在することにより、被接着体との界面において空隙ができやすくなり、A層の熱伝導性及び粘着性が低下する虞や、成形性が悪くなる虞がある。
【0099】
膨張化黒鉛粉(B)の平均粒径は、レーザー式粒度測定機(株式会社セイシン企業製)を用い、マイクロソーティング制御方式(測定領域内にのみ測定対象粒子を通過させ、測定の信頼性を向上させる方式)により測定する。この測定方法は、セル中に測定対象の膨張化黒鉛粉(B)0.01g〜0.02gが流されることで、測定領域内に流れてくる膨張化黒鉛粉(B)に波長670nmの半導体レーザー光が照射され、その際のレーザー光の散乱と回折が測定機にて測定されることにより、フランホーファの回折原理から、平均粒径及び粒径分布が計算され、その結果が表示される。
【0100】
A層に含有させる膨張化黒鉛粉(B)の量は、重合体(S1)を100質量部として、60質量部以上1800質量部以下であることが好ましく、150質量部以上1800質量部以下であることがより好ましく、300質量部以上1800質量部以下であることがさらに好ましく、600質量部以上1700質量部以下であることが特に好ましい。膨張化黒鉛粉(B)の含有量が上記下限(60質量部)未満であれば、A層の熱伝導率が劣る傾向にある。一方、膨張化黒鉛粉(B)の含有量が上記上限(1800質量部)を超えれば、熱伝導性感圧接着性積層シート(F)のシート化が困難になるなどの問題を生じる虞がある。
【0101】
<縮合リン酸エステル(C1)>
本発明に用いることができる縮合リン酸エステル(C1)は、25℃における粘度が7000mPa・s以上のものである。縮合リン酸エステル(C1)の粘度が低すぎる場合は、A層の成形性が悪くなる。なお、本発明において縮合リン酸エステル(C1)の「粘度」とは、以下に説明する方法によって測定した粘度を意味する。
【0102】
(縮合リン酸エステル(C1)の粘度測定方法)
縮合リン酸エステル(C1)の粘度測定には、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用いて、以下に示す手順で行った。
(1)常温の環境で縮合リン酸エステル(C1)を300ml計量し、500mlの容器に入れる。
(2)攪拌用ロータNo.1、2、3、4、5、6、7から、いずれかを選択し、粘度計に取り付ける。
(3)縮合リン酸エステル(C1)が入った容器を粘度計の上に置き、ロータを該容器内の縮合リン酸エステル(C1)に沈める。このとき、ロータの目印となる凹みが丁度、縮合リン酸エステル(C1)の液状界面にくるように沈める。
(4)回転数を20、10、4、2の中から選択する。
(5)攪拌スイッチを入れ、1分後の数値を読み取る。
(6)読み取った数値に、係数Aを掛け算した値が粘度[mPa・s]となる。
なお、係数Aは、下記表1に示すように、選択したロータNoと回転数とから決まる。
【0103】
【表1】

【0104】
また、本発明に用いる縮合リン酸エステル(C1)は、大気圧下において、15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体である。縮合リン酸エステル(C1)は、混合する際に液体でなければ、作業性が悪く、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)をシート化することが困難になる。縮合リン酸エステル(C1)を含んだ熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を得る際、通常は15℃以上100℃以下の環境で、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を構成する各物質を混合する。混合時の温度が低すぎれば、重合体(S1)のガラス転移温度を下回る可能性があり、高すぎれば単量体等の揮発あるいは重合反応が始まってしまうため、環境性及び作業性が悪くなる虞がある。
【0105】
これまでに説明した条件を満たす縮合リン酸エステル(C1)の具体例としては、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族縮合リン酸エステル;ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェートなどの含ハロゲン系縮合リン酸エステル;非芳香族非ハロゲン系縮合リン酸エステル;などが挙げられる。これら一種を単独用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、比重が比較的小さく、有害物質(ハロゲンなど)の放出の危険がなく、入手も容易であることなどから、芳香族縮合リン酸エステルが好ましく、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)がより好ましい。
【0106】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)に含有される縮合リン酸エステル(C1)の量は、重合体(S1)を100質量部として、100質量部以上300質量部以下である。上限は250質量部であることが好ましく、180質量部であることがより好ましい。下限は110質量部であることが好ましく、120質量部であることがより好ましい。縮合リン酸エステル(C1)の含有量が上記範囲の上限(300質量部)を超えれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)をシート化することが困難になり、上記範囲の下限(100質量部)未満であれば、A層の難燃性が十分でなくなる。
【0107】
<リン酸塩(G)>
熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)にリン酸塩(G)を所定量含有させれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)から得られるA層の難燃性をさらに向上させることができる。熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)にリン酸塩(G)を含有させる場合、含有量は重合体(S1)を100質量部として、150質量部以下であることが好ましい。リン酸塩(G)の含有量が多すぎれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)をシート化することが困難になる。
【0108】
本発明に用いることができるリン酸塩(G)の具体例としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸バリウム、ポリリン酸亜鉛などの、ポリリン酸塩;(オルト)リン酸アンモニウム、(オルト)リン酸メラミン、(オルト)リン酸ナトリウム、(オルト)リン酸カリウム、(オルト)リン酸マグネシウム、(オルト)リン酸カルシウム、(オルト)リン酸バリウム、(オルト)リン酸亜鉛などの、(オルト)リン酸塩;などが挙げられる。その中でも、ポリリン酸塩が好ましく、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミンがより好ましい。これらは、一種を単独であるいは二種以上を併用して使用することができる。
また、リン酸塩(G)は、窒素含有化合物、硫酸マンガンや酢酸マンガンなどの有機酸マンガン塩、硫酸亜鉛や酢酸亜鉛などの有機酸亜鉛塩、酸化亜鉛、などと併用することが好ましい。
リン酸塩(G)の形態としては、特に限定されないが、粉末状や微粒子状のものが、分散性が高いため好ましい。
【0109】
<発泡剤(H)>
熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)に発泡剤(H)を所定量含有させれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)をA層とする際に難燃性をさらに向上させることができる。発泡剤(H)としては、熱分解性発泡剤が好ましい。さらに、熱分解性発泡剤としては、80℃以上かつ500℃以下の分解開始温度を有するものが好ましく、120℃以上かつ300℃以下の分解開始温度を有するものがより好ましい。
【0110】
そのような熱分解性発泡剤の具体例としては、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾジカルボアミドなどが挙げられる。熱分解開始温度が500℃より高い発泡剤に後述する発泡助剤を一定量混合して熱分解開始温度を500℃以下とした発泡システムも同様に熱分解性発泡剤とすることができる。
【0111】
上記発泡助剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸と亜鉛華(酸化亜鉛のこと)の混合物、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸と亜鉛華の混合物、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸と亜鉛華の混合物、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、などが挙げられる。
【0112】
<熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)中の任意成分としての、膨張化黒鉛粉以外の熱伝導性無機化合物>
<PITCH系炭素繊維(I)>
任意成分として熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)中に用いることができるPITCH系炭素繊維(I)とは、ピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料とする炭素繊維であり、熱伝導率が高いという特長を有する。熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)にPITCH系炭素繊維(I)が含有される場合、その含有量は、重合体(S1)を100質量部として、好ましくは400質量部以下、より好ましくは300質量部以下、さらに好ましくは270質量部以下であることが望ましい。PITCH系炭素繊維(I)の含有量が上記範囲の上限(400質量部)を超えると、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)をA層とした際に、該A層の表面状態が悪くなる傾向にある。
【0113】
<難燃性熱伝導無機化合物(D1)>
任意成分として熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)中に用いることができる難燃性熱伝導無機化合物(D1)は特に限定されることはなく、その具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、カオリンクレー、アルミン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、ドーソナイトなどが挙げられる。難燃性熱伝導無機化合物(D1)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0114】
難燃性熱伝導無機化合物(D1)の形状も特に限定されず、球状、針状、繊維状、鱗片状、樹枝状、平板状および不定形状のいずれでもよい。
【0115】
難燃性熱伝導無機化合物(D1)の中でも、特に水酸化アルミニウムが好ましい。水酸化アルミニウムを用いることにより、A層に優れた難燃性を付与することができる。
【0116】
水酸化アルミニウムとしては、通常、0.2μm〜150μm、好ましくは0.7μm〜100μmの粒径を有するものを使用する。また、1μm〜80μmの平均粒径を有するのが好ましい。平均粒径が1μm未満のものは熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)の粘度を増大させ、また、同時に硬度も増大し、A層の形状追随性を低下させる虞があり、かつ、熱伝導性が低くなる傾向にある。一方、平均粒径が80μmを超えるものは、A層の表面が荒れてしまい、高温で接着力が低下したり、高温で熱変形したりする虞がある。
【0117】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)に含有される難燃性熱伝導無機化合物(D1)の量は、重合体(S1)を100質量部として、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下であることが望ましい。難燃性熱伝導無機化合物(D1)の含有量が上記範囲の上限(300質量部)を超えると、A層の硬度が増大し、形状追随性が低下する傾向にある。
【0118】
<その他の成分>
熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)には、さらに、必要により、外部架橋剤、顔料、その他の充填材、老化防止剤、増粘剤、などの公知の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0119】
(外部架橋剤)
また、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)には、感圧接着剤としての凝集力を高め、耐熱性などを向上させるために、外部架橋剤を添加して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合してなる重合体に架橋構造を導入することができる。
【0120】
外部架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートなどの多官能性イソシアネート系架橋剤;ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのエポキシ架橋剤;メラミン樹脂架橋剤;アミノ樹脂架橋剤;金属塩架橋剤;金属キレート架橋剤;過酸化物架橋剤;などが挙げられる。
【0121】
外部架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合してなる重合体を得た後、これに添加して、加熱処理や放射線照射処理を行うことにより、共重合体の分子内及び/又は分子間に架橋を形成させるものである。
【0122】
(その他)
顔料としては、カーボンブラックや、二酸化チタンなど、有機系、無機系を問わず使用できる。その他の充填材としては、クレーなどの無機化合物などが挙げられる。フラーレンやカーボンナノチューブ、などのナノ粒子を添加してもよい。老化防止剤としては、ラジカル重合を阻害する可能性が高いため通常は使用しないが、必要に応じてポリフェノール系、ハイドロキノン系、ヒンダードアミン系などの酸化防止剤を使用することができる。増粘剤としては、アクリル系ポリマー粒子、微粒シリカなどの無機化合物微粒子、酸化マグネシウムなどのような反応性無機化合物を使用することできる。
【0123】
1.2.B1層
B1層は、ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S2)と、難燃性熱伝導無機化合物(D2)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)からなる。熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)は、さらに縮合リン酸エステル(C2)を含むことが好ましい。
【0124】
<重合体(S2)>
重合体(S2)は、上記した(S1)と同様とすることができるため、詳細な説明を省略する。
【0125】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A2))
重合体(S2)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP2)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α2)を重合することにより得られるものが特に好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)を成形してB1層とする際に、熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)をシート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(α2)は、重合して(メタ)アクリル酸エステル重合体に変換し、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP2)の成分と混合及び/又は一部結合して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)となる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)とは、B1層中の(メタ)アクリル酸エステル重合体成分全てに相当し、B1層中の(メタ)アクリル酸エステル重合体成分全てを包括的に表す概念である。
【0126】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(AP2))
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP2)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0127】
((メタ)アクリル酸エステル単量体(α2))
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α2)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0128】
<難燃性熱伝導無機化合物(D2)>
熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)中に用いることができる難燃性熱伝導無機化合物(D2)は特に限定されることはなく、その具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、カオリンクレー、アルミン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、ドーソナイトなどが挙げられる。難燃性熱伝導無機化合物(D2)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0129】
難燃性熱伝導無機化合物(D2)の形状も特に限定されず、球状、針状、繊維状、鱗片状、樹枝状、平板状および不定形状のいずれでもよい。
【0130】
難燃性熱伝導無機化合物(D2)の中でも、特に水酸化アルミニウムが好ましい。水酸化アルミニウムを用いることにより、B1層に優れた難燃性を付与することができる。
【0131】
水酸化アルミニウムとしては、通常、0.2μm〜150μm、好ましくは0.7μm〜100μmの粒径を有するものを使用する。また、1μm〜80μmの平均粒径を有するのが好ましい。平均粒径が1μm未満のものは熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)の粘度を増大させ、また、同時に硬度も増大し、B1層の形状追随性を低下させる虞があり、かつ、熱伝導性が低くなる傾向にある。一方、平均粒径が80μmを超えるものは、B1層の表面が荒れてしまい、高温で接着力が低下したり、高温で熱変形したりする虞がある。
【0132】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)に含有される難燃性熱伝導無機化合物(D2)の量は、重合体(S2)を100質量部として、下限が150質量部であることが好ましく、200質量部であることがより好ましい。一方、上限は600質量部であることが好ましく、350質量部であることがより好ましい。難燃性熱伝導無機化合物(D2)の含有量が上記範囲の下限(150質量部)未満であれば、B1層の高温せん断力や熱伝導率、難燃性などが低下する傾向にあり、上記範囲の上限(600質量部)を超えれば、B1層の硬度が増大し、形状追随性が低下する傾向にある。
【0133】
<縮合リン酸エステル(C2)>
縮合リン酸エステル(C2)は、縮合リン酸エステル(C1)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0134】
<その他の成分>
熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)には、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)と同様に、必要により、発泡剤、外部架橋剤、顔料、その他の充填材、老化防止剤、増粘剤、などの公知の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。添加できるその他の成分は熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0135】
1.3.B2層
B2層は、ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S3)と、難燃性熱伝導無機化合物(D3)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)からなる。熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)は、さらに縮合リン酸エステル(C3)を含むことが好ましい。
【0136】
<重合体(S3)>
重合体(S3)は、上記した(S1)と同様とすることができるため、詳細な説明を省略する。
【0137】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A3))
重合体(S3)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP3)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α3)を重合することにより得られるものが特に好ましい。熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)を成形してB2層とする際に、熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)をシート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(α3)は、重合して(メタ)アクリル酸エステル重合体に変換し、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP3)の成分と混合及び/又は一部結合して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)となる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)とは、B2層中の(メタ)アクリル酸エステル重合体成分全てに相当し、B2層中の(メタ)アクリル酸エステル重合体成分全てを包括的に表す概念である。
【0138】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(AP3))
(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP3)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0139】
((メタ)アクリル酸エステル単量体(α3))
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α3)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0140】
<難燃性熱伝導無機化合物(D3)>
熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)中に用いることができる難燃性熱伝導無機化合物(D3)は、難燃性熱伝導無機化合物(D2)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0141】
<縮合リン酸エステル(C3)>
縮合リン酸エステル(C3)は、縮合リン酸エステル(C1)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0142】
<その他の成分>
熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)には、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)と同様に、必要により、発泡剤、外部架橋剤、顔料、その他の充填材、老化防止剤、増粘剤、などの公知の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。添加できるその他の成分は熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0143】
1.4.積層方法
熱伝導性感圧接着性積層シート(F)は、A層、B1層、及びB2層を成形した後、それらの層を積層することによって得られる。また、A層、B1層、及びB2層のいずれかの層を成形した後、成形された層の上に熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)、熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)又は熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)を塗布して他の層を順に層状に成形・積層することでも熱伝導性感圧接着性積層シート(F)を得られる。A層、B1層、及びB2層の成形方法は同様であるため、A層の成形方法について以下に説明する。
【0144】
A層は、シート状に成形しながら又はシート状に成形された後に加熱された熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)からなる。好ましくは、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含有し、該熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)をシート状に成形しながら、又はシート状に成形した後、該(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に該(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られる、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)の固化したシート状成形体である。
【0145】
ただし、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)中の、単量体などに代表される液体成分の含有量が5質量%以下である場合には、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)は固化した場合と略等価とみなすことができる。実際、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)などの液体成分を含んでいない熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)は、固化した場合と等価であると考えることができる。
【0146】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)において、該熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)中の、単量体などに代表される液体成分の含有量が5質量%以下である場合には、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を、該液体成分を固化(例えば、前記単量体を重合)することなしに、そのまま成形してA層とすることができる。
【0147】
熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)をシート状に成形する方法は、特に限定されない。好適な方法としては、例えば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を、剥離処理したポリエステルフィルムなどの工程紙の上に塗布するキャスト法、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を、必要ならば二枚の剥離処理した工程紙間に挟んで、ロールの間を通す方法、及び、押出機を用い、押出す際に、ダイスを通して厚さを制御する方法、などが挙げられる。
【0148】
シート化しながら、あるいはシート化後に、例えば、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を熱風、電気ヒーター、赤外線などにより加熱することによって、A層を好適に得ることができる。このときの加熱温度は、有機過酸化物熱重合開始剤が効率良く分解し、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合が進行する条件が好ましい。温度範囲は、用いる有機過酸化物熱重合開始剤の種類により異なるが、100℃〜200℃が好ましく、130℃〜180℃がより好ましい。
【0149】
A層は、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)を、シート状に成形し、及び100℃以上かつ200℃以下の温度に加熱することにより、熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)のシート化及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合を行うことによりなるシート状成形体であることが好ましい。
【0150】
1.5.その他の構成
本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)は、A層、B1層、及びB2層の3層のみからなるものであってもよく、A層、B1層、及びB2層からなる積層体の一方の面側又は両面側に基材を備えた複合体であってもよい。該基材の種類は、特に限定されない。
【0151】
熱伝導性感圧接着性積層シート(F)をA層、B1層、及びB2層の3層のみからなるものとする場合、上述したようにB1層及びB2層には粘着性を付与させることができるため、両面に粘着性を有した積層シートとすることができる。
【0152】
A層、B1層、及びB2層からなる積層体の一方の面側又は両面側に基材を備えさせる場合、該基材の具体例としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ベリリウム銅などの熱伝導性に優れる金属、及び、合金の箔状物や、熱伝導性シリコーンなどのそれ自体熱伝導性に優れるポリマーからなるシート状物や、熱伝導性フィラーを含有させた熱伝導性プラスチックフィルムや、各種不織布や、ガラスクロスや、ハニカム構造体などを挙げることができる。
【0153】
プラスチックフィルムとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、芳香族ポリアミドなどの耐熱性ポリマーからなるフィルムを使用することができる。
【0154】
1.6.熱伝導性感圧接着性積層シート(F)の性能
従来の熱伝導性感圧接着性シートでは、膨張化黒鉛粉(B)を多量に含有させると成形性が悪くなる(シートにならない)ため、膨張化黒鉛粉(B)を含有させられる量が限られていた。一方、本発明では少なくとも3層を有する熱伝導性感圧接着性積層シート(F)とすることによって、B1層及びB2層に挟持されるA層に膨張化黒鉛粉(B)を高充填することが可能である。そのため、A層には高い熱伝導性も備えさせることができる。また、B1層及びB2層には熱伝導性、絶縁性及び柔軟性を備えさせることができる。そのため、柔軟性を有するA層を、A層と同等、あるいは同等以上の柔軟性を有するB1層及びB2層で挟持した熱伝導性感圧接着性積層シート(F)は、高い熱伝導性、絶縁性及び柔軟性を有し、層間の密着性にも優れた積層シートとすることができる。さらに、単層のB1層又はB2層では難燃性に劣る場合であっても、高い難燃性を有するA層を合わせることによって、熱伝導性感圧接着性積層シート(F)は高い難燃性も有する。
【0155】
本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)におけるA層、B1層、及びB2層の厚さは特に限定されないが、B1層、及びB2層の厚さは1μm以上600μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。B1層、及びB2層が薄すぎればA層をB1層及びB2層で挟持することによる効果(絶縁性向上)を得難く、B1層及びB2層が厚すぎれば難燃性、熱伝導性が劣る傾向にある。また、A層の厚さは100μm以上3000μm以下であることが好ましく、500μm以上1500μm以下であることがより好ましい。A層が薄すぎれば熱伝導性が劣る傾向にあり、厚すぎれば熱伝導性感圧接着性積層シート(F)の厚さが厚くなり、下記のような問題を生じる虞がある。熱伝導性感圧接着性積層シート(F)の厚さは、通常、10μm〜3000μmである。10μmより薄いと、特に面方向への熱拡散性能の低下が起こる可能性がある他、発熱体と放熱体に貼付する際に空気を巻き込み易く、結果として充分な熱伝導性を得られない虞がある。一方、3000μmより厚いと、熱伝導性感圧接着性積層シート(F)の厚み方向の熱抵抗が大きくなり、放熱性が損なわれる虞があり、また薄型化機器等での使用スペースが確保できなくなる可能性がある。
【0156】
なお、本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)は、B1層及びB2層を同じ構成の層としてもよく、異なる構成の層としてもよいが、同じ構成の層とすることが好ましい。同じ構成の層とすることにより、原料、生産プロセスを変更することなく、B1層とB2層の両方の層を作製することができるため、作業性が向上する。
【0157】
2.電子部品
上記した本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)は、電子部品の一部として用いることができる。その際、放熱体のような基材上に直接的に形成して、電子部品の一部として提供することもできる。当該電子部品の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード(LED)光源を有する機器における発熱部周囲の部品、自動車等のパワーデバイス周囲の部品、燃料電池、太陽電池、バッテリー、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、液晶、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、又は集積回路(IC)など発熱部を有する機器や部品を挙げることができる。
【0158】
なお、本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)の電子機器への使用方法の一例として、LED光源を具体例に下記に記述するような方法で使用することを挙げることができる。すなわちLED光源に直接貼り付ける;LED光源と放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシートなど)との間に挟みこむ;LED光源に接続された放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシートなど)に貼り付ける;LED光源を取り囲む筐体として使用する;LED光源を取り囲む筐体に貼り付ける;LED光源と筐体との隙間を埋める;などの方法である。LED光源の用途例としては、透過型の液晶パネルを有する表示装置のバックライト装置(テレビ、携帯、PC、ノートPC、PDAなど);車両用灯具;工業用照明;商業用照明;一般住宅用照明;などが挙げられる。
【0159】
また、LED光源以外の具体例としては、以下が挙げられる。すなわち、PDPパネル;IC発熱部;冷陰極管(CCFL);有機EL光源;無機EL光源;高輝度発光LED光源;高輝度発光有機EL光源;高輝度発光無機EL光源;CPU;MPU;半導体素子;などである。
【0160】
更に本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)の使用方法としては、装置の筐体に貼り付けることなどを挙げることができる。例えば、自動車などに使用される装置では、自動車に備えられる筐体の内部に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の外観に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)と該筐体とを接続する;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)に接続した放熱板に貼り付ける;ことなどが挙げられる。
【0161】
なお、自動車以外にも、同様の方法で本発明の熱伝導性感圧接着性シート(F)を使用する事ができる。例えばパソコン;住宅;テレビ;携帯電話機;自動販売機;冷蔵庫;太陽電池;表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED);有機ELディスプレイ;無機ELディスプレイ;有機EL照明;無機EL照明;有機ELディスプレイ;ノートパソコン;PDA;燃料電池;半導体装置;炊飯器;洗濯機;洗濯乾燥機;光半導体素子と蛍光体を組み合わせた光半導体装置;各種パワーデバイス;ゲーム機;キャパシタ;などが挙げられる。
【0162】
更に、本発明の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)は上記の使用方法に留まらず、用途に応じて使用する事が可能である。例えば、カーペットや温暖マットなどの熱の均一化のために使用する;LED光源/熱源の封止剤として使用する;太陽電池セルの封止剤として使用する;太陽電池のバックシ−トとして使用する;太陽電池のバックシ−トと屋根との間に使用する;自動販売機内部の断熱層の内側に使用する;有機EL照明の筐体内部に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、エポキシ系の放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;人や動物を冷やすための装置、衣類、タオル、シートなどの冷却部材に対し、身体と反対の面に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載する定着装置の加圧部材に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載する定着装置の加圧部材そのものとして使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部として使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部に使用する;放射性物質格納容器の外層と内装の間に使用する;太陽光線を吸収するソーラパネルを設置したボックス体の中に使用する;CCFLバックライトの反射シートとアルミシャーシの間に使用する;ことなどを挙げることができる。
【実施例】
【0163】
以下に、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、ここで用いる「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0164】
<厚さ>
熱伝導性感圧接着性積層シートの各層、又は熱伝導性感圧接着性シートを構成するシートの厚さを測定した。離型剤付きポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「離型PET」という。)が付されている層については、該離型PETの厚みをゼロに補正し、該離型PETが付されたまま測厚器上にのせ、厚さを測定した。その結果を表2及び表3に示す。
【0165】
<表面抵抗>
熱伝導性感圧接着性積層シートまたは熱伝導性感圧接着性シートを幅50mm×長さ50mmの大きさに裁断した試験片について、表面(比較例7の場合はシート(Y1)側の面)の幅方向の両端に電流を流し、その電気抵抗値を確認した。同一の試験片について、上記方法で3回、抵抗値を測定し、平均値を求めた。その結果を表4及び表5に示す。
【0166】
<難燃性>
熱伝導性感圧接着性積層シートを幅10mm×長さ150mmの大きさに裁断した試験片を5本用意した。ブンゼンバーナーの空気およびガスの流量を調整して高さ20mm程度の青色炎をつくり、垂直に支持した試験片の下端にバーナーの炎をあてて(炎と約10mm交わるように)10秒間保った後、試験片とバーナー炎を離した。その後、試験片の炎が消えれば直ちにバーナー炎を試験片にあて、更に10秒間保持した後、試験片とバーナー炎を離した。1回目と2回目の接炎終了後の有炎及び無炎燃焼持続時間や燃焼滴下物(ドリップ)の有無などを評価した。その結果を表4及び表5に示す。表4及び表5において、難燃性の欄に記された数字は、5本の試験片の有炎及び無炎燃焼時間の合計時間を示している。
【0167】
<界面での剥離>
摂氏100度の雰囲気下で熱伝導性感圧接着性積層シートを構成する各層の界面の外観を目視で確認した。界面において、自然に剥離していることを確認できた場合を「あり」、剥離を確認できなかった場合を「なし」として、結果を表4及び表5に示す。
【0168】
<熱特性>
熱伝導性感圧接着性積層シートを幅50mm×長さ80mmの大きさに裁断した試験片について、表面に、接触面積が25mm×25mmとなる平板状のセラミックヒータを載せた。このとき、試験片の中央にセラミックヒータが位置するようにおいた。その後、23℃雰囲気下で、セラミックヒータに16.5Vの電圧を付加し、60分後にセラミックヒータと試験片とを上面側からサーモビジョンで撮影した。セラミックヒータの最も温度が高い部分を確認し、その温度から、セラミックヒータに試験片を接触させてない場合のセラミックヒータの温度を引いた値を熱特性の評価結果とした。熱特性の値が小さいほど、放熱性能が高い。その結果を表4及び表5に示す。
【0169】
<シートの作製>
実施例及び比較例に用いるシート(X1)、(X2)、(X3)、(X4)、(X5)、(X6)、(X7)、(Y1)、(Y1’)、(Y2)、(Y3)、及び(Y4)を以下の手順で作製した。
【0170】
(シート(X1))
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94%とアクリル酸6%とからなる単量体混合物100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のある固体状の(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量(Mw)は270,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は3.1であった。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求めた。
【0171】
次に、電子天秤を用いて、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールジアクリレートを60:35:5の割合で混合した多官能性単量体2.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」と略記する。)10.4部、メタクリル酸(以下、「MAA」と略記する。)4.1部、有機過酸化物熱重合開始剤である1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(以下、「tBCH」と略記する。)〔1分間半減期温度は150℃である。〕2.5部の順で計量して混合し、液体原料を得た。
【0172】
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体83部と、膨張化黒鉛粉(商品名「EC−50」、伊藤黒鉛工業株式会社製、平均粒径:250μm)332部と、カーボンブラック(商品名「EC」、ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製、数密度:100〜145kg/m)2.1部と、縮合リン酸エステル(商品名「CR−741」、大八化学工業株式会社製、粘度:32000mPa・s(25℃)、大気圧下での15〜100℃の温度領域において常に液体、化合物名「ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)」)145部と、上記液体原料と、を列記した順でホバート容器に投入して減圧下において攪拌混合しながら脱泡し、熱伝導性感圧接着剤組成物を得た。使用した原料について、表2に示す。なお、混合は、株式会社小平製作所製のホバートミキサー(商品名「ACM−5LVT型、容量:5L」)を用いて、下記条件に従って行った。
混合条件:
恒温槽(商品名「ビスコメイト 150III」、東機産業株式会社製)を用いて、ホバート容器の温調を60℃に設定。
1.回転数メモリ3×10分で混合
2.回転数メモリ5×10分で混合
3.回転数メモリ3×10分、−0.1MPaで真空脱泡しながら混合
【0173】
その後、上記の熱伝導性感圧接着剤組成物を離型PETで挟み込み、離型PETの上からロールで押さえて熱伝導性感圧接着剤組成物を厚さ1000μmのシート状に成形し、150℃の熱風炉で20分間、重合を行わせ、両面を離型PETで覆われた、シート(X1)を得た。
シート(X1)中の残存単量体量から(メタ)アクリル酸エステル単量体混合物の重合転化率を計算したところ、99.9%であった。
【0174】
(シート(X2))
カーボンブラックを用いず、膨張化黒鉛粉の含有量を830部とした以外はシート(X1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(X2)を得た。使用した原料について、表2に示す。
【0175】
(シート(X3))
膨張化黒鉛粉の含有量を1660部とした以外はシート(X1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(X3)を得た。使用した原料について、表2に示す。
【0176】
(シート(X4))
さらに、リン酸塩(商品名「FP−2200」、株式会社ADEKA製)83部、発泡剤(商品名「N#1000S」、永和化成工業株式会社製)10部を加えた以外はシート(X1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(X4)を得た。使用した原料について、表2に示す。
【0177】
(シート(X5))
イソプレン単独重合体末端水酸基変性液状物(商品名「PP−IP」、出光興産株式会社製)70部と、ポリウレタン(商品名「PU−330」、広野科学工業株式会社製)30部と縮合リン酸エステル140部とをホバート容器に投入し10分間攪拌した後、カーボンブラック(商品名「EC」、ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製、数密度:100〜145kg/m)2.0部と膨張化黒鉛粉320部とをホバート容器に投入して減圧下において10分間攪拌混合しながら脱泡し、熱伝導性感圧接着剤組成物を得た。その他の工程はシート(X1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(X5)を得た。使用した原料について、表2に示す。
【0178】
(シート(X6))
膨張化黒鉛粉にかえてリンペン状黒鉛(商品名「W−5」、伊藤黒鉛工業株式会社製、平均粒径:5μm)332部を用いた以外はシート(X1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(X6)を得た。使用した原料について、表2に示す。
【0179】
(シート(X7))
縮合リン酸エステルを用いなかったこと以外はシート(X1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(X7)を得た。使用した原料について、表2に示す。
【0180】
(シート(Y1))
膨張化黒鉛、カーボンブラック、及び縮合リン酸エステルを含有させず、難燃性熱伝導無機化合物である水酸化アルミニウム(商品名「BF083」、日本軽金属株式会社製、平均粒径:8μm)303部を加え、(メタ)アクリル酸エステル重合体、2EHA、MAA、多官能性単量体、及びtBCHの含有量を変更し、その他はシート(X1)と同様にして熱伝導性感圧接着剤組成物を得た。使用した原料について、表3に示す。得られた熱伝導性感圧接着剤組成物をシート状に成形する際に、該シートの厚さを1000μmから50μmに変更した以外は、シート(X1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(Y1)を得た。
【0181】
(Y1’)
厚さを500μmに変更した以外はシート(Y1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(Y1’)を得た。使用した原料について、表3に示す。
【0182】
(Y2)
縮合リン酸エステル40.4部をさらに含有させた以外はシート(Y1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(Y2)を得た。使用した原料について、表3に示す。
【0183】
(Y3)
(メタ)アクリル酸エステル重合体、2EHA、MAA、多官能性単量体、及びtBCHにかえて、イソプレン単独重合体末端水酸基変性液状物(商品名「PP−IP」、出光興産株式会社製)90.9部と、ポリウレタン(商品名「PU−330」、広野科学工業株式会社製)9.1部とを用い、水酸化アルミニウムの含有量を変更した以外はシート(Y1)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(Y3)を得た。使用した原料について、表3に示す。
【0184】
(Y4)
水酸化アルミニウムを用いない以外はシート(Y2)と同様にして、両面を離型PETで覆われた、シート(Y4)を得た。使用した原料について、表3に示す。
【0185】
<実施例1〜9及び比較例1〜7>
上記のようにして作製したシート(X1)、(X2)、(X3)、(X4)、(X5)、(X6)、(X7)、(Y1)、(Y1’)、(Y2)、(Y3)、及び(Y4)、並びに、アルミニウムシート及びグラファイトシートを用いて、実施例1〜9にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(F1)〜(F9)、比較例1にかかる熱伝導性感圧接着性シート(FC1)、及び比較例2〜7にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(FC2)〜(FC7)を作製した。用いたシートの組み合わせを表4及び表5に示す。なお、比較例にかかるシートについては、実施例にかかる熱伝導性感圧接着性積層シートのA層に相当する層をC層とし、B1層に相当する層をD1層とし、B2層に相当する層をD2層とした。
【0186】
(実施例1)
実施例1にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(F1)は、A層としてシート(X1)を用い、B1層及びB2層としてシート(Y1)を用いた。すなわち、シート(X1)とシート(Y1)とを重ね合わせ、空気が混入しないようにシート(X1)とシート(Y1)とを圧着した。その後、シート(X1)のシート(Y1)が積層されていない側にも他のシート(Y1)を重ね合わせ、該シート(Y1)を圧着した。なお、各層を重ね合わせる前に、離型PETは剥がした。
【0187】
(実施例2〜9)
実施例2〜9にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(F2)〜(F9)は、表4に示したシートを用いて、シート(F1)と同様に、A層の一方の面側にB1層を積層した後他方の面側にB2層を積層した。なお、シート(F1)と同様に、シート(F2)〜(F8)もB1層及びB2層には同様の組成の層を用いた。
【0188】
(比較例1)
比較例1にかかる熱伝導性感圧接着性シート(FC1)は、シート(X1)のみで構成した。
【0189】
(比較例2)
比較例2にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(FC2)は、C層としてアルミニウムシートを用いた以外は熱伝導性感圧接着性積層シート(F1)と同様である。
【0190】
(比較例3)
比較例3にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(FC3)は、C層としてグラファイトシートを用いた以外は熱伝導性感圧接着性積層シート(F1)と同様である。
【0191】
(比較例4)
比較例4にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(FC4)は、D1層及びD2層としてシート(Y4)を用いた以外は積層シート(F1)と同様である。
【0192】
(比較例5)
比較例5にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(FC5)は、C層としてシート(X6)を用いた以外は積層シート(F1)と同様である。
【0193】
(比較例6)
比較例6にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(FC6)は、C層としてシート(X7)を用いた以外は積層シート(F1)と同様である。
【0194】
(比較例7)
比較例7にかかる熱伝導性感圧接着性積層シート(FC7)は、シート(X3)の一方の面側にのみ熱伝導性感圧接着性積層シート(F1)と同様の方法でシート(Y1)を積層してなる。
【0195】
【表2】

【0196】
【表3】

【0197】
<性能評価>
実施例で作製したシートの評価結果を表4に示し、比較例で作製したシートの評価結果を表5に示す。なお、表中の「−」は、他の測定結果において既に、熱伝導性感圧接着性(積層)シートとしての使用に堪えない規格外の結果となったため、当該項目について評価していないことを意味する。
【0198】
【表4】

【0199】
【表5】

【0200】
表4に示すように、実施例にかかる積層シートは全て絶縁性(表面抵抗)、難燃性、および熱伝導性(熱特性)に優れ、層間の剥離は見られなかった。一方、表5に示すように、単層である比較例1のシート(FC1)は絶縁性に劣っていた。比較例2及び3のシート(FC2)、(FC3)は、燃焼試験においてドリップが発生した。また、各層の柔軟性が異なることから、層間での剥離が見られた。水酸化アルミニウムを含有させなかったシート(Y4)をD1層及びD2層に用いた比較例4のシート(FC4)では、燃焼試験においてD1層及びD2層が燃え尽きた。膨張化黒鉛粉にかえてリンペン状黒鉛を用いたシート(X6)をC層に用いた比較例5のシート(FC5)は、燃焼試験において燃え尽きた。縮合リン酸エステルを用いていないシート(X7)をC層に用いた比較例6のシート(FC6)は、燃焼試験において燃え尽きた。シート(X3)の一方の面側にのみにシート(Y1)を積層したが、他方の面側にはシートを有しなかった比較例7では、積層シート(FC7)からの、膨張化黒鉛粉などの粉落ちが激しく、安定な積層シートとすることができなかった。
【0201】
<発光ダイオード(LED)光源を有する機器への表面温度低減>
(実施例10)
市販のLED照明(日立ライティング株式会社/LES7L/K6N−A)を分解し、LEDチップを搭載した基板の裏側に、実施例1で使用したシート(F1)を60cm×60cmの大きさに切って貼り付け、再度組み立てた後再び点灯させた。LED照明を再点灯後、60分後のLEDチップ上の拡散板の表面温度(「LED表面温度」と称する。)をサーモビジョンで測定した。結果を表6に示す。
【0202】
(比較例8)
シート(F1)を用いなかった他は、実施例9と同様にして評価を行った。結果を表6に示す。
【0203】
(比較例9)
シート(F1)の代わりに、60cm×60cmの、0.5W/m・Kの単層シートを使用した他は、実施例9と同様にして評価を行った。結果を表6に示す。
【0204】
【表6】

【0205】
本発明の積層シート(F1)を使用した実施例10では、LED表面温度の低減が達成され、シートを用いない場合(比較例8)に比較して、LED表面温度を5℃下げることができた。
一方、0.5W/m・Kの単層シートを使用した比較例9では、シートを用いない場合(比較例8)に比較して、LED表面温度は1℃しか下がらなかった。
【0206】
以上、現時点において最も実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱伝導性感圧接着性積層シート及び電子部品もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S1)と膨張化黒鉛粉(B)と縮合リン酸エステル(C1)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)からなるA層、
ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S2)と難燃性熱伝導無機化合物(D2)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)からなり、前記A層の一方の面側に積層されるB1層、並びに、
ゴム、エラストマー及び樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(S3)と難燃性熱伝導無機化合物(D3)とを含む熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)からなり、前記A層の他方の面側に積層されるB2層を備え、
前記縮合リン酸エステル(C1)は、25℃における粘度が7000mPa・s以上であり、かつ大気圧下15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体である、熱伝導性感圧接着性積層シート(F)。
【請求項2】
前記A層が、前記重合体(S1)100質量部に対し、60質量部以上1800質量部以下の前記膨張化黒鉛粉(B)及び100質量部以上300質量部以下の前記縮合リン酸エステル(C1)を含む、請求項1に記載の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)。
【請求項3】
前記B1層及び前記B2層の厚みが1μm以上600μm以下である、請求項1または2に記載の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)。
【請求項4】
前記熱伝導性感圧接着剤組成物(E1)がリン酸塩(G)及び/又は発泡剤(H)を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)。
【請求項5】
前記熱伝導性感圧接着剤組成物(E2)が縮合リン酸エステル(C2)を含み、前記熱伝導性感圧接着剤組成物(E3)が縮合リン酸エステル(C3)を含み、
前記縮合リン酸エステル(C2)及び前記縮合リン酸エステル(C3)は、25℃における粘度が7000mPa・s以上であり、かつ大気圧下15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)。
【請求項6】
前記重合体(S1)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)であり、前記重合体(S2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)であり、前記重合体(S3)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP1)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を重合することにより得られるものであり、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP2)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α2)を重合することにより得られるものであり、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A3)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(AP3)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル単量体(α3)を重合することにより得られるものである、請求項6に記載の熱伝導性感圧接着性積層シート(F)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性感圧接着性シート(F)を備えた電子部品。
【請求項9】
エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード(LED)光源を有する機器、自動車のパワーデバイス、燃料電池、太陽電池、バッテリー、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、液晶、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、又は集積回路(IC)である、請求項8に記載の電子部品。

【公開番号】特開2011−68721(P2011−68721A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219154(P2009−219154)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】