説明

熱収縮性フィルム

【課題】
皮脂付着による白化がなく、かつ透明性、高光沢性及び熱収縮性に優れる熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】
脂環式構造を含有する繰返し単位を有し、該繰返し単位のうち、ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位が5〜60重量%、ノルボルナン環を有しない繰返し単位が40〜95重量%の範囲にあり、かつ該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が10重量%以上95重量%以下である脂環式構造含有重合体樹脂を含む樹脂組成物の一軸又は二軸延伸してなる層を少なくとも一層有する熱収縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱収縮性フィルムに関し、さらに詳しくは耐皮脂性、透明性、高光沢性及び熱収縮性に優れた熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
包装分野においては、包装材料としてポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂からなる熱収縮性フィルムが広く使用されている。熱収縮性フィルムは、被包装体を一担ラフに包み、次に、熱風トンネル等の方法で加熱処理を行うことによりフィルム自体に生じる収縮力を利用して収縮させ、被包装体に対してタイトな包装を行う収縮包装用フィルムであり、特に食品業界などではあらゆる食品に使用されている。
【0003】
近年、環境問題を視野にとらえ、包装分野においても廃棄焼却時に有害ガスを発生させるような塩化ビニルをはじめとするハロゲンを含有する樹脂の別材料への切り替えが切望され、包装材料の主流は上記ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系材料となっている。また、食品業界や医薬品業界においては、被包装材料の種類、形状、使用方法等の多様化から、包装材料に要求される特性も、一層の耐熱性、防湿性、耐薬品性、透明性、機械強度などが要求されている。
【0004】
ノルボルネン系重合体樹脂などに代表される脂環式構造含有重合体樹脂は、耐熱性、透明性、防湿性、耐薬品性等の特性に優れるため、上記食品包装や医薬品包装の分野において好適であることが知られている。
【0005】
このような脂環式構造含有重合体樹脂を用いる熱収縮性フィルムとして、特許文献1には、脂環構造を含有してなる繰返し単位を有し、該繰返し単位のうち、ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位の割合が任意であり、ノルボルナン環を有しない繰返し単位が10重量%以上の範囲にあり、かつ該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が任意である脂環式構造含有重合体樹脂からなるシートまたはフィルムを延伸してなる層を少なくとも有することを特徴とする熱収縮性シートまたはフィルムが提案されている。
【0006】
また、実施例には、脂環構造を含有してなる繰返し単位中のノルボルナン環を有しない繰返し単位の割合、及び該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中でノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合がそれぞれ、100重量%及び0重量%(実施例1、2、9)、100重量%及び15重量%(実施例3、4、5、7、8)、35重量%及び100重量%(実施例6)、5重量%及び100重量%(比較例1)、並びに100重量%及び100重量%(比較例4)である脂環式構造含有重合体樹脂からなる熱収縮性シートが開示されている。
【0007】
しかしながら、この公報に記載されている熱収縮フィルムを用いて包装する場合には、指紋などの油脂分が付着している部分が熱収縮時白化してしまう問題があることがわかり、さらなる改良が求められていた。
【0008】
この問題を解決すべく、特許文献2には、脂環構造を含有してなる繰返し単位を有し、該繰返し単位のうち、ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位の割合が任意であり、ノルボルナン環を有しない繰返し単位が10重量%以上の範囲にあり、かつ該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が任意である脂環式構造含有重合体樹脂(A)と、特定の物性を有する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(B)とを含んでなり、前記脂環式構造含有重合体樹脂(A)と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(B)との比率(重量比)が、A/Bで96/4〜50/50であるベースフィルムを少なくとも一方向に一軸延伸してなる層を、少なくとも一層有することを特徴とする熱収縮性フィルムが提案されている。
【0009】
また、実施例には、脂環構造を含有してなる繰返し単位中のノルボルナン環を有しない繰返し単位の割合が100重量%であり、かつ該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中でノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が33重量%である脂環式構造含有重合体樹脂からなるフィルムを延伸してなる熱収縮性フィルムが開示されている。
この文献に記載された熱収縮性フィルムによれば、指紋などの油脂分が付着している部分が熱収縮時白化する問題を解決することが可能である。
【0010】
しかしながら、この文献に記載された熱収縮性フィルムは、脂環式構造含有重合体樹脂(A)と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(B)との相溶性が乏しく、包装用の熱収縮性フィルムに求められる透明性や光沢性、熱収縮特性が実用的に十分に満足できるものとは言えず、さらなる改良が求められていた。
【特許文献1】特開2000−143829号公報
【特許文献2】特開2004−83818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、皮脂付着による白化がなく、かつ透明性、高光沢性及び熱収縮性に優れる熱収縮性フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、脂環式構造含有重合体を含む樹脂組成物の一軸又は二軸延伸してなる層を少なくとも一層有する熱収縮性フィルムにおいて、前記脂環式構造含有重合体として、脂環式構造を有する繰返し単位が、ノルボルナン環を有する繰返し単位とノルボルナン環を有しない繰返し単位とを特定の割合からなるものであり、かつ、該ノルボルナン環を有さない繰返し単位中のノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が特定の範囲であるものを使用すると、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を添加しなくても皮脂付着による白化がなく、かつ透明性、高光沢性及び熱収縮性に優れる熱収縮性フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして本発明によれば、脂環式構造を含有する繰返し単位を有し、該繰返し単位のうち、ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位が5〜60重量%、ノルボルナン環を有しない繰返し単位が40〜95重量%の範囲にあり、かつ該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が10重量%以上95重量%以下である脂環式構造含有重合体樹脂を含む樹脂組成物の一軸又は二軸延伸してなる層を少なくとも一層有する熱収縮性フィルムが提供される。
【0014】
本発明の熱収縮性フィルムにおいては、前記脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度が60〜90℃であることが好ましい。
また本発明の熱収縮性フィルムにおいては、前記脂環式構造含有重合体樹脂を含む樹脂組成物の一軸または二軸延伸してなる第1の樹脂層と、ポリオレフィン系樹脂の一軸または二軸延伸してなる第2の樹脂層とを少なくとも一層ずつ有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱収縮性フィルムは、皮脂付着による白化がなく、かつ透明性、高光沢性及び熱収縮性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の熱収縮性フィルムは、脂環式構造を含有する繰返し単位を有し、該繰返し単位のうち、ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位が5〜60重量%、ノルボルナン環を有しない繰返し単位が40〜95重量%の範囲にあり、かつ、該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が10重量%以上95重量%以下である環状構造含有重合体樹脂を含む樹脂組成物の一軸又は二軸延伸してなる層を、少なくとも一層有することを特徴とする。
【0017】
本発明に用いる脂環式構造含有重合体樹脂は、分子内に脂環式構造を含有してなる繰返し単位を有する。本発明において脂環式構造とは、芳香環以外の環状炭化水素構造である。
重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造が最も好ましい。また、脂環式構造は主鎖にあっても良いし、側鎖にあっても良いが、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
【0018】
脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされる。
【0019】
本発明に用いる重合体樹脂中の脂環式構造を含有してなる繰返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰返し単位の割合がこの範囲にあると熱収縮性フィルムの透明性及び耐熱性の観点から好ましい。
【0020】
このような脂環式構造含有重合体樹脂の具体例としては、ノルボルネン系重合体及びその水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体の水素添加物が好ましい。
脂環式構造含有重合体樹脂は、付加重合により得られるものと開環重合により得られるものとがある。
【0021】
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン系モノマーの(ア)開環重合によって得られるものと、(イ)付加重合によって得られるものに大別される。
(ア)開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ならびにこれらの水素添加物、(イ)付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系モノマーの付加重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体、並びにこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物が、熱収縮性フィルムの耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
本発明において、ノルボルネン系モノマーとは、
【0022】
【化1】

【0023】
で表されるノルボルネン構造を有する化合物である。
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
【0024】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、上記ノルボルネン系モノマーは、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0025】
これらの中でも、環に置換基を有さないモノマーを用いることが好ましく、用いるノルボルネン系モノマー中、環に置換基を有さないモノマーの割合が30重量%以上であるのが好ましく、50重量%以上であるのがより好ましく、90重量%以上であるのが特に好ましい。
【0026】
これらノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体は、これらのモノマーを、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
【0027】
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0028】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物は、通常、上記の開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0029】
ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体は、これらのモノマーを、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて(共)重合させて得ることができる。
【0030】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの鎖状非共役ジエン;シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン;1,4−シクロヘキサジエン、1,4−シクロオクタジエンなどの環状非共役ジエン;ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0031】
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを共重合する場合は、共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常15:85〜99:1、好ましくは20:80〜90:10、より好ましくは25:75〜70:30の範囲となるように適宜選択される。
【0032】
脂環式構造含有重合体樹脂の重量平均分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲である。分子量がこの範囲であると、樹脂の機械的強度及び成形加工性とが高度にバランスされ好ましい。本発明において重量平均分子量は、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の値である。
【0033】
脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上が好ましく、60℃〜90℃の範囲であると特に好ましい。Tgがこの範囲であると、耐熱性・耐久性の点で好ましい。本発明においてTgは、JIS−K7121に基づいて示差走査熱量分析法(DSC)で測定した値である。
【0034】
本発明に用いる脂環式構造含有重合体樹脂は、脂環式構造を含有する繰返し単位を有し、該繰返し単位のうち、ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位が5〜60重量%で、ノルボルナン環を有しない繰返し単位が40〜95重量%の範囲にあり、かつ該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が10重量%以上95重量%以下のものである。
【0035】
前記脂環式構造を含有する繰返し単位のうち、ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位及びノルボルナン環を有しない繰返し単位の割合はそれぞれ、5〜60重量%でありかつ40〜95重量%、好ましくは、10〜55重量%でありかつ45〜90重量%、より好ましくは20〜50重量%でありかつ50〜80重量%、最も好ましくは30〜45重量%でありかつ70〜55重量%である。
ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位及びノルボルナン環を有しない繰返し単位の割合がこの範囲にあると、熱収縮後の防湿性、伸び、及び機械強度に優れる熱収縮性フィルムを得ることができる。
【0036】
また、前記ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の繰返し単位の占める割合は、10〜95重量、好ましくは20〜94重量%、より好ましくは30〜90重量%である。
【0037】
前記ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中のノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が大きくなるほど、指脂付着による白化のない熱収縮性フィルムを得ることができる。その一方、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合があまりに大きい場合には、フィルムの延伸時に結晶化を生じ、延伸フィルムの段階での透明性が低下するおそれがある。また、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合があまりに小さい場合には脂環式構造含有重合体の溶剤に対する安定性が低くなる場合があり、溶液温度が低くなる場合に、沈殿が発生したり溶液粘度が上昇するなど生産性が低下するおそれがある。
【0038】
本発明に用いる脂環式構造含有重合体樹脂として、脂環式構造を含有する繰返し単位を有し、該繰返し単位のうち、ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位が5〜60重量%で、ノルボルナン環を有しない繰返し単位が40〜95重量%の範囲にあり、かつ該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が10〜95重量%のものを使用することにより、皮脂付着による白化がなく、かつ透明性、高光沢性及び熱収縮性に優れる熱収縮性フィルムを得ることができる。
【0039】
なお、ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合は、ノルボルナン環を有しない繰返し単位成分を100としたときの割合である。従って、脂環式構造含有重合体樹脂全体に対する割合は、(ノルボルネン環を有しない繰返し単位の割合)×(ノルボルネン由来の繰返し単位の割合)となる。
【0040】
ここで、ノルボルナン構造について説明する。
ノルボルナンは、式(1)
【0041】
【化2】

【0042】
で表される二環系の橋かけ環式飽和炭化水素である。このような環構造をノルボルナン構造という。
ノルボルネンは、式(2)
【0043】
【化3】

【0044】
で表される二環系の橋かけ環式不飽和炭化水素(環状オレフィン)である。
ノルボルネンを開環重合させると、式(3)
【0045】
【化4】

【0046】
で表される繰返し単位が形成され、橋かけ環式構造がなくなり、主鎖に炭素−炭素二重結合を有する重合体が得られる。また、この二重結合を水素添加することで、飽和重合体が得られる。これらの重合体は、ノルボルナン構造を有さない繰返し単位であり、かつノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位を有するものである。
これに対して、ノルボルネンを付加重合させると、式(4)
【0047】
【化5】

【0048】
で表される繰返し単位を有する重合体が得られる。この重合体は、ノルボルナン構造を有する繰返し構造を有する繰返し単位をもつものである。
また、ジシクロペンタジエンは、式(5)
【0049】
【化6】

【0050】
で表される三環系の環状オレフィンである。
ジシクロペンタジエンを開環重合させると、式(6)
【0051】
【化7】

【0052】
で表される繰返し単位を有する重合体が得られる。この重合体は、ノルボルナン構造を有さない繰返し単位でありかつノルボルネン系モノマー由来の多環式繰返し単位を有するものである。
またテトラシクロドデセンは、式(7)
【0053】
【化8】

【0054】
で表される環状オレフィンである。
テトラシクロドデセンを開環重合させると、式(8)
【0055】
【化9】

【0056】
で表される繰返し単位を有する重合体が得られる。この重合体は、1個のノルボルナン構造を有する繰返し単位をもつことになる。
一方、テトラシクロドデセンを付加重合させると、式(9)
【0057】
【化10】

【0058】
で表される繰返し単位を有する重合体が得られる。この重合体は、2個のノルボルナン構造を有する繰返し単位をもつことになる。
【0059】
このように、用いるノルボルネン系モノマーの種類と重合割合、重合方式を変化させることにより、得られる脂環式構造含有重合体樹脂における、脂環式構造を含有する繰返し単位中のノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位の割合、ノルボルナン環を有しない繰返し単位の割合、及びノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中でノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合を、目的の範囲内となるように調節することができる。
【0060】
例えば、橋かけ環式構造として1個のノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーの開環重合体及びその水素添加物は、繰返し単位中にノルボルナン環構造をもたない。したがって、開環共重合とその水素添加物においては、橋かけ環式構造として1個のノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーの共重合割合を調整することにより、脂環式構造がノルボルナン構造以外の脂環式構造である繰返し単位の割合を、目的の範囲内になるように調節することができる。
【0061】
また、ノルボルネン系モノマーの付加共重合体の場合は、例えば、共重合モノマーのシクロオレフィンなどの共重合割合を調整することにより、脂環式構造がノルボルナン構造以外の脂環式構造である繰返し単位の割合を、目的の範囲内になるように調節することができる。
【0062】
本発明に用いる樹脂組成物は、これらの脂環式構造含有重合体樹脂の一種または二種以上を含有してなる。前記樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機物充填材、無機物充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加されていてもよい。
【0063】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機ホスファイト系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0064】
帯電防止剤としては、ノニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤がある。分散剤としてはビスアミド系分散剤、ワックス系分散剤、有機金属塩系分散剤が挙げられる。
【0065】
難燃剤としては、リン酸系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マグネシウムの炭酸塩、赤リン等が挙げられる。ブロッキング防止剤としては、シリカ、天然ゼオライト、合成ゼオライト、カオリン、タルク、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、溶融シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ハドロタルサイト等が挙げられる。スリップ剤としては、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドが好適である。添加できるその他の樹脂としては、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、ロジン系樹脂やこれらの水素添加誘導体などがある。透明性の観点からジシクロペンタジエン系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂の水素添加誘導体の添加が好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、SEBS、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、SEPSなどが挙げられる。
【0066】
本発明に用いる樹脂組成物はその調製法によって特に限定されず、例えば、脂環式構造含有重合体樹脂、及び必要に応じて他の添加剤とをヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダーなどの混合器を用いて混合することによって、又は更にこの混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどにより溶融混練することによって得られる。樹脂組成物は、フィルムを成形しやすいように、造粒あるいは粉砕、又はペレット化することが好ましい。
【0067】
本発明の熱収縮性フィルムにおいては、前記樹脂組成物のガラス転移温度が60〜90℃であることが好ましい。
【0068】
本発明の熱収縮性フィルムとしては、フィルムを構成する樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも20℃低い温度から80℃高い温度の範囲内、例えば60〜120℃の範囲の温度雰囲気下に保持した場合に熱収縮が起こり、その際の延伸方向の熱収縮率は通常30〜90%の範囲にあり、50〜80%の範囲であるものが好ましい。熱収縮率がこの範囲にあると、該フィルムの被包装体への密着性及びフィルムの諸物性が高度にバランスされ好適である。
【0069】
本発明の熱収縮性フィルムは、上記で得られた樹脂組成物をTダイ法、インフレーション法、プレス成形法など公知の方法でフィルム成形によって未延伸フィルムを得た後、この未延伸フィルムを延伸することにより得ることができる。
【0070】
得られる未延伸フィルムの厚さは、通常50〜500μmの範囲であり、50〜300μmの範囲であるのが好ましい。
【0071】
得られた未延伸フィルムを延伸する方法は、特に限定されず、例えばロール方式、テンター方式、及びチューブ方式のいずれの方式で行うこともできる。
【0072】
延伸するときの温度は、未延伸フィルムを構成する樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)よりも0〜60℃、好ましくは10〜40℃高い温度であることが好ましい。
【0073】
延伸する方法としては、特に制限されず、一軸又は二軸延伸のどちらでもよいが、一軸延伸(横方向;TD方向)に延伸するのが好ましい。延伸倍率は特に限定されないが、TD方向に1.2〜10.0倍の範囲であると好ましく、2.0〜6.0倍の範囲であると特に好ましい。一軸延伸においても必要に応じて、例えば長さ方向(縦方向;MD方向)にも、低い延伸倍率(例えば1.5倍以下)で延伸処理を施すことができる。本発明においては、このように、一方向のみ延伸された一軸延伸フィルム、及び主に一方向に延伸され、且つ該方向と直交する方向に若干延伸された二軸延伸フィルムが含まれる。
【0074】
本発明の熱収縮性フィルムは、前記樹脂組成物の一軸又は二軸延伸してなる層(I)だけからなる単層フィルムであってもよいが、前記樹脂組成物の一軸または二軸延伸してなる第1の樹脂層と、ポリオレフィン系樹脂の一軸または二軸延伸してなる第2の樹脂層とを少なくとも一層ずつ有する積層フィルムであってもよい。
【0075】
積層フィルムの積層態様は特に限定されないが、例えば層(I)/層(II)、層(I)/層(II)/層(I)、層(II)/層(I)/層(II)のように積層することができる。なかでも、皮脂と接触するフィルム表面に層(I)を積層することが好ましい。更に、前記積層フィルムは層(I)と層(II)の間に接着層を含んでもよい。
【0076】
他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系結晶性樹脂、ポリアミド系結晶性樹脂、フッ素系結晶性樹脂、及びその他の結晶性樹脂が挙げられる。なかでも、フィルムの防湿性、機械強度等のバランスの観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、低密度又は高密度ポリエチレン系結晶性樹脂、ポリプロピレン系結晶性樹脂がより好ましく、ポリエチレン系結晶性樹脂及びポリプロピレン系結晶性樹脂が特に好ましい。
【0077】
接着層を構成する接着剤としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂接着剤、ポリビニルエーテル、アクリル樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合体などの熱可塑性樹脂接着剤、ポリアミド樹脂系ホットメルト接着剤、ニトリルゴムなどのゴム系接着剤などが挙げられる。
【0078】
前記樹脂組成物の延伸層(I)と他の樹脂からなる層(II)の厚さの比は特に限定されないが、例えば、層(I)/層(II)/層(I)とした場合は、各層の厚さの比は、1/8/1〜8/1/8であることが好ましい。
【0079】
本発明の積層構造の熱収縮性フィルムは、例えば、(a)前記樹脂組成物の単層未延伸フィルムに、他の樹脂からなるフィルムを貼合した後延伸することによって、(b)前記樹脂組成物の単層フィルムを延伸し、それに他の樹脂からなる延伸又は未延伸のフィルムを貼合することによって、(c)樹脂組成物の単層未延伸フィルムに他の樹脂の溶液を塗布して、乾燥し、延伸することによって、(d)樹脂組成物の延伸フィルムにコーティングすることによって、又は、(e)前記樹脂組成物と他の樹脂とを共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出することによって得ることができる。
【0080】
本発明の熱収縮性フィルムの厚さは、5〜400μmの範囲であると好ましく、8〜150μmの範囲であると特に好ましい。厚さがこの範囲にあると、耐裂性、透明性が良好である。
【0081】
本発明の熱収縮性フィルムは、皮脂付着による白化がなく、かつ防湿性、機械強度、透明性、光沢性及び熱収縮特性に優れている。このような特性から本発明の熱収縮性フィルムは、食品、薬品、及び器具、文具、ノートなど雑貨類の保存・運搬用の熱収縮性包装材料;キャップ、栓等の開封防止用シール包装材料;ボトル、容器等の熱収縮性ラベル材料に適している。
また、本発明の熱収縮性フィルムは、耐熱温度が高く、透明性且つ収縮性も良好なため耐熱のポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルなどのラベルにも好適である。
【0082】
本発明の熱収縮性フィルムによって、被包装体を収縮包装する方法は特に限定はない。一般的な方法としては、当該フィルムによって被包装体を大まかに包み、次に熱風トンネル(以下、シュリンクトンネルという)を通して加熱するとフィルム自体に収縮力があらわれて収縮し、シートやフィルムが被包装体に密着して包装されるような方法が用いられる。
【0083】
本発明の熱収縮性フィルムには、熱収縮後に印刷加工を施してもよい。印刷加工の方法は特に限定されず公知の方法を使用すればよく、例えば、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷が挙げられる。印刷に適用される印刷インキの種類は、前記印刷の方法により適宜最適なものを選択して使用すればよいが、例えば、凸版インキ、フレキソインキ、ドライオフセットインキ、グラビアインキ、グラビアオフセットインキ、オフセットインキ、スクリーンインキ等が挙げられる。
【0084】
印刷インキは少なくとも、色料(顔料、染料等が挙げられる)、ビヒクル(油脂、樹脂、及び溶剤との混合物で、油脂としては乾性油、半乾性油、不乾性油、加工油等;樹脂としては一般的な天然樹脂、合成樹脂;溶剤としては炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、水系溶剤が挙げられる)及び補助剤(コンパウンド類、ドライヤー類、その他分散剤、反応剤、消泡剤等の添加剤)から構成され、印刷される本発明の熱収縮性フィルム中の脂環式構造含有重合体樹脂の種類、使用目的に応じて、印刷インキの種類及び組成は適宜選択される。また、印刷インキを使用する前に本発明の熱収縮性フィルムに対しインクの密着性を高める目的で表面処理を施しておいてもよく、表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理、エンボス加工処理、サンドマット加工処理、梨地加工処理等が挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下において、部または%は、特に断りが無い限り重量基準であり、圧力はゲージ圧力である。
なお、各種の物性の測定は下記の方法に従って行った。
【0086】
(1)分子量
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)はシクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、標準ポリイソプレン換算値として測定した。
(2)水素添加率
ノルボルネン系重合体における、主鎖及び環状炭化水素構造(III)の水素添加率は、H−NMRスペクトルを測定し算出した。
(3)ガラス転移温度(Tg)
Tgは示差操作熱量(DSC)法により測定した。
【0087】
(4)光沢度
TD方向に5倍延伸した熱収縮性フィルム(厚さ20ミクロン)をJIS K7105に基づいて、60度鏡面光沢度を測定する。光沢度が高い方が良好であることを示す。
(5)ヘイズ
TD方向に5倍延伸した熱収縮性フィルム(厚さ20ミクロン)をJIS K6714に準じ、ヘイズメーター(型式:NDH2000、日本電色工業社製)で測定した。
【0088】
(6)耐皮脂白化性
皮脂相当物としてオレイン酸50%、パルミチン酸ステアリル40%、スクアレン10%からなる混合試薬を調整した。延伸した熱収縮性フィルム(厚さ20ミクロン)の表裏両面に上記混合試薬を塗布し、40℃で30分放置後、試薬をふき取り、JIS K6714に基づいて、ヘイズを測定する。塗布前のヘイズからの測定値の上昇分が少ないほど、良好であることを示す。
(7)熱収縮性
延伸した熱収縮性フィルム(厚さ20ミクロン)を、縦100mm×横100mmの大きさに切り取り、90℃の湯浴に10秒間浸漬する。熱収縮性は、TD方向について、浸漬前後の長さの変化の割合(%)〔=(浸漬前のTD方向のフィルムの長さ−浸漬後のTD方向のフィルムの長さ)/(浸漬前のTD方向のフィルムの長さ)×100〕を算出する。収縮率が50%以上100%未満の範囲であると良好である。
【0089】
[製造例1]
乾燥し、窒素置換した重合反応器に、テトラシクロドデセン(以下、「TCD」と略記する)40%、ジシクロペンタジエン(以下、DCPと略記)22%、及びノルボルネン(以下、「NB」と略記する)38%からなる単量体混合物10部、脱水したシクロヘキサン300部、分子量調節剤として1−ヘキセン0.55部、ジイソプロピルエーテル0.2部、イソブチルアルコール0.18部、トリイソブチルアルミニウム0.48部及び六塩化タングステン0.77重量%トルエン溶液15部を入れ、50℃で10分間攪拌した。その後、直ちに攪拌しながら前記重合反応器中に前記単量体混合物90部と六塩化タングステン0.77重量%トルエン溶液25部を2時間かけて連続的に滴下し、さらに滴下終了後30分間攪拌した後にイソプロピルアルコール0.5部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したしたところ、モノマーのポリマーへの転化率は100%であった。
【0090】
次いで、上記重合体を含有する重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部及び珪藻土担持ニッケル触媒(ズードケミー触媒(株)製;G−96D、ニッケル担持率58重量%)10部を加えた。
【0091】
オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃、4.5MPaの水素圧力下で10時間反応させた。水素添加反応終了後、ラジオライト♯800をろ過床として、加圧ろ過器(フンダフィルタ−、石川島播磨重工社製)を使用し、圧力0.25MPaで加圧ろ過して、無色透明な溶液を得た。次いで、得られた溶液に、重合体固形分100部当り、酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]0.1重量部を加えて溶解させた。
【0092】
この溶液を金属ファイバー製フィルター(孔径0.5μm、ニチダイ社製)にてろ過した後、ろ液を「ゼータプラスフィルター30S」(孔径0.5〜1μm、キュノ社製)でろ過し、さらに、金属ファイバ−製フィルタ−(孔径0.2μm、ニチダイ社製)でろ過して異物を除去した。
【0093】
次いで、上記で得たろ液を予備加熱装置で250℃に加熱し、圧力3MPaで円筒型濃縮乾燥機(コントロ、日立製作所社製)に連続的に供給し、濃縮した。濃縮乾燥機の運転条件は、圧力60kPa、内部の濃縮された重合体溶液の温度が290℃となるように調節した。
【0094】
濃縮された溶液は、濃縮乾燥機から連続的に導出し、さらに同型の濃縮乾燥機に温度290℃を保ったまま、圧力1.5MPaで供給した。運転条件は、圧力1.5kPa、温度290℃とした。溶融状態の重合体は、濃縮乾燥機から連続的に導出し、クラス100のクリ−ンル−ム内でダイから押し出し、水冷後、ペレタイザー(OSP−2、長田製作所社製)でカッティングして、開環重合体水素化物のペレットを得た。
【0095】
得られた開環重合体水素化物の分子量はMw=41,000、Mn=16,000、MWD=2.56であり、水素添加率は99.9%、Tgは71℃であった。
【0096】
[製造例2]
単量体混合物の組成をTCD10%、DCP76%及びNB14%とした以外は製造例1と同様にして開環重合体水素化物のペレットを得た。
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの添加率は99.9%であった。水添して得られた開環重合体水素化物の分子量はMw=39,000、Mn=15,000、MWD=2.60であり、水素添加率は99.9%、Tgは84℃であった。
【0097】
[製造例3]
単量体混合物の組成をTCD55%、DCP4%及びNB41%とした以外は製造例1と同様にして開環重合体水素化物のペレットを得た。
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの添加率は99.9%であった。水添して得られた開環重合体水素化物の分子量はMw=41,000、Mn=16,000、MWD=2.56であり、水素添加率は99.9%、Tgは77℃であった。
【0098】
[製造例4]
単量体混合物の組成をTCD55%及びNB45%とした以外は製造例1と同様にして開環重合体水素化物のペレットを得た。
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの添加率は99.8%であった。水添して得られた開環重合体水素化物の分子量はMw=40,000、Mn=16,000、MWD=2.50であり、水素添加率は99.9%、Tgは69℃であった。
【0099】
[製造例5]
単量体混合物の組成をDCP85%、及びNB15%とした以外は製造例1と同様にして開環重合体水素化物のペレットを得た。
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの添加率は99.9%であった。水添して得られた開環重合体水素化物の分子量はMw=37,000、Mn=14,000、MWD=2.64であり、水素添加率は99.9%、Tgは80℃であった。
【0100】
[製造例6]
単量体混合物の組成をTCD65%、DCP15%、及びNB20%とした以外は製造例1と同様にして開環重合体水素化物のペレットを得た。
重合反応溶液のモノマーのポリマーへの添加率は99.9%であった。水添して得られた開環重合体水素化物の分子量はMw=39,000、Mn=15,000、MWD=2.60であり、水素添加率は99.9%、Tgは112℃であった。
【0101】
[実施例1]
製造例1で得た開環重合体水素化物のペレットを、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機を使用し、ダイリップを0.5mm、溶融樹脂温度を200℃、Tダイの温度220℃、Tダイの幅300mm、キャストロール温度60℃、冷却ロール温度50℃の条件で、厚さ100μmの未延伸フィルムを得た。
【0102】
得られた未延伸フィルムを、雰囲気温度Tg±20℃(90℃)の条件で、テンダー延伸機を用いて、TD方向に5倍延伸して厚さ20μmの熱収縮性フィルム(A)を得た。この熱収縮性フィルム(A)の物性評価結果を第1表に示す。
【0103】
[実施例2、3]
製造例2または製造例3で得られたペレットを用いる以外は実施例1と同様にして、熱収縮性フィルム(B)または熱収縮性フィルム(C)を得た。この熱収縮性フィルムの物性評価結果を第1表に示す。
【0104】
[比較例1〜3]
製造例4〜6で得られたペレットを用いる以外は実施例1と同様にして、熱収縮性フィルム(D)〜(F)を得た。この熱収縮性フィルムの物性評価結果を第1表に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
第1表より、実施例1〜3の熱収縮性フィルムは、熱収縮性、光沢度、透明性および耐皮脂白化性の全ての面に優れていた。一方、ノルボルナン環を有しない繰返し単位中のノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の割合が100重量%である比較例1の熱収縮性フィルムは、熱収縮性、光沢度および耐皮脂白化性に優れていたが、透明性が劣るものであった。ノルボルナン環を1つ有する繰返し単位の割合が0%である比較例2の熱収縮性フィルムは、特に耐皮脂白化性に劣るものであった。また、ノルボルナン環を1つ有する繰返し単位の割合が65%である比較例3の熱収縮性フィルムは、熱収縮性が劣っていた。
【0107】
[実施例4〜6]
未延伸フィルムを雰囲気温度Tg+15℃の条件で、縦方向(MD方向)に1.5倍延伸した後、テンダー延伸機を用いて、TD方向に3.3倍延伸する以外は、実施例1〜3と同様にして厚さ20μmの熱収縮性フィルム(G)〜(I)を得た。この熱収縮性フィルムの物性評価結果を第2表に示す。
【0108】
[比較例4〜6]
未延伸フィルムを雰囲気温度Tg+15℃の条件で、縦方向(MD方向)に1.5倍延伸した後、テンダー延伸機を用いて、TD方向に3.3倍延伸する以外は、比較例1〜3と同様にして厚さ20μmの熱収縮性フィルム(J)〜(L)を得た。この熱収縮性フィルムの物性評価結果を第2表に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
第2表より、実施例4〜6の熱収縮性フィルムは、熱収縮性、光沢度、透明性および耐皮脂白化性の全ての面に優れていた。一方、ノルボルナン環を有しない繰返し単位中のノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の割合が100重量%である比較例4の熱収縮性フィルムは、熱収縮性、光沢度および耐皮脂白化性に優れていたが、透明性が劣るものであった。ノルボルナン環を1つ有する繰返し単位の割合が0%である比較例5の熱収縮性フィルムは、特に耐皮脂白化性に劣るものであった。また、ノルボルナン環を1つ有する繰返し単位の割合が65%である比較例6の熱収縮性フィルムは、熱収縮性が劣っていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式構造を含有する繰返し単位を有し、該繰返し単位のうち、ノルボルナン環を1つ以上有する繰返し単位が5〜60重量%、ノルボルナン環を有しない繰返し単位が40〜95重量%の範囲にあり、かつ該ノルボルナン環を有しない繰返し単位全成分の中で、ノルボルネン系モノマー由来の単環式繰返し単位の占める割合が10〜95重量%である脂環式構造含有重合体樹脂を含む樹脂組成物の一軸又は二軸延伸してなる層を少なくとも一層有することを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項2】
前記脂環式構造含有重合体のガラス転移温度が60〜90℃である請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
前記脂環式構造含有重合体樹脂を含む樹脂組成物の一軸または二軸延伸してなる第1の樹脂層と、ポリオレフィン系樹脂の一軸または二軸延伸してなる第2の樹脂層とを少なくとも一層ずつ有する請求項1または2に記載の熱収縮性フィルム。

【公開番号】特開2006−16472(P2006−16472A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194969(P2004−194969)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】