説明

熱収縮性ポリエステル系フィルムラベル

【課題】加工適性、滑り性、帯電防止性等の諸特性に優れた熱収縮ポリエステル系フィルムラベルを提供する。
【解決手段】 本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムラベルは、少なくとも一方の面に、最外層としてシリコーン含有成分を含む易滑層を有し、フィルムラベル外面同士の動摩擦係数μdが0.30未満であり、少なくとも一方の面の表面固有抵抗値が温度23℃、相対湿度65%雰囲気下で1×1014(Ω/□)以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムラベルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、さらに詳しくは飲料ボトルのラベル用フィルムとして用いたときの外面の滑り性が良好で自動販売機飲料用ラベルとして好適でかつ印刷工程やチュービング工程での加工性に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、包装品の、外観向上のための外装、内容物の直接衝撃を避けるための包装、ガラス瓶またはプラスチックボトルの保護と商品の表示を兼ねたラベル包装等を目的として、
加熱により収縮する性質をもつ熱収縮プラスチックフィルムが広範に使用されている。これらの目的で使用されるプラスチック素材としては、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器などの各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている。
【0003】
ラベル等を製造するには、通常、以下の方法が採用されている。すなわち、原料ポリマーを連続的に溶融押出し、未延伸フィルムを製造する。次いで、延伸を行ってフィルムロールを得る。このフィルムロールからフィルムを繰り出しながら、所望幅にスリットし、再びロール状に巻回する。続いて、各種製品名等の文字情報や図柄を印刷する。印刷終了後は、溶剤接着等の手段でフィルムの左右端部を重ね合わせて接合してチューブを製造する(チュービング工程)。なお、スリット工程と印刷工程は順序が逆の場合もある。得られたチューブを適宜長さに裁断すれば筒状ラベルとなり、この筒状ラベルの一方の開口端を接合すれば袋を製造できる。
【0004】
そして、上記ラベルや袋等を容器に被せ、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアー等にのせて通過させ、ラベルや袋等を熱収縮させることにより、容器に密着させて、最終製品(ラベル化容器)を得ている。
【0005】
さらに、ボトル入り飲料のラベルとして使用した場合、自動販売機内部での商品輸送の際に、ラベルの滑性不足によって商品が通路内で詰まって出口に到達しなかったり、ラベルのブロッキングによって商品同士がフィルム内面においても付着しあって多重に排出されてしまうことがあった。
この問題に対し、フィルム表面に滑り性の良好な層を積層するという方法があった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−114358号公報
【0006】
しかしながら、滑り性は向上するが、静電気の発生により商品へ汚れが付着するといった問題があった。
【0007】
静電気によるトラブルとは、例えば製造工程や印刷、接着、その他2次加工工程等においてロールへの巻きつき、人体へのショック、取り扱い困難のような作業能率の低下や、印刷ヒゲの発生、フィルム表面の汚れなと商品価値の低下である。これらを防止する観点から、加工時のフィルムについて、少なくとも一方の面の表面固有抵抗値1×1014(Ω/□)未満が好ましく、更に好ましくは表面固有抵抗値1×1012(Ω/□)未満であることが推奨される。
【0008】
さらに、ボトル入り飲料に装着された状態において、ラベルが静電気を帯び易い状態であると、ラベルに埃が付着しやすくなり、汚れによる外観不良、つまり商品価値の低下が起こり易くなる。これを防ぐためには上記のように、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)によって熱収縮処理を経てボトルに装着された状態において、少なくとも一方の面の表面固有抵抗値1×1014(Ω/□)以下が好ましく、更に好ましくは表面固有抵抗値1×1013(Ω/□)以下であることが推奨される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来の熱収縮フィルムが抱える種々の問題を解決することのできる熱収縮フィルムの提供を目的とし、具体的には、加工適性、滑り性、帯電防止性等の諸特性に優れた熱収縮ポリエステル系フィルムラベルを提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムラベルは、少なくとも一方の面に、最外層としてシリコーン含有成分を含む易滑層を有し、フィルムラベル外面同士の動摩擦係数μdが0.30未満であり、少なくとも一方の面の表面固有抵抗値が温度23℃、相対湿度65%雰囲気下で1×1014(Ω/□)以下であるところに要旨を有する。
【0011】
上記の特性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムラベルは、上記摩擦係数の要件を満たすことで、ボトル飲料のラベルとして用いたとき、自動販売機内の詰りを防止することができ、また、上記の表面固有抵抗値を満足することで静電気の発生を防止し、汚れの付着による外観悪化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱収縮性フィルムラベルは、滑り性に優れておりボトル飲料等のラベルとして用いたとき、自動販売機内の詰りを防止することができ、また、帯電防止性能に優れ、汚れの付着による外観悪化を防ぐことができる。従って、ボトル飲料等の容器被覆用ラベルとして非常に有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
滑り性の点で、本発明のフィルムラベルは、ラベル外面つまり、容器に接していない面同士の動摩擦係数μdが0.30未満でなければならない。μdが前記範囲を満足すると、飲料用ボトルのラベルとして使用されたときの自動販売機内の滑性が良好なフィルムを提供することができ、例えば自動販売機内部との接触面積が大きく詰りが発生しやすい角型ボトルであっても詰りの発生を防ぐことができる。しかし、この範囲を超えると滑性不足となり、自動販売機で容器が詰まるといったトラブルが発生する。より好ましくは、フィルムラベルの動摩擦係数μdが0.28以下である。フィルムラベル外面の動摩擦係数μdはJIS K7125に準拠して、23℃、65%RHの環境下で測定した値である。さらに、少なくとも一方の面の表面固有抵抗値が温度23℃、相対湿度65%雰囲気下で1×1014(Ω/□)以下でなければならない。表面抵抗値が前記範囲を満足すると、静電気が発生することの影響による汚れの付着、つまり飲料容器の外観悪化を防ぐことができる。しかし、この範囲を超えるとラベルが帯電しやすくなり、汚れ付着による外観不良が発生しやすくなる。
【0014】
本発明の熱収縮性フィルムラベルは、上述した各特性を満足するものであれば、その組成、製造方法は特に限定されないが、以下、好ましい態様を説明する。
【0015】
本発明の熱収縮性フィルムを構成するポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸の1種以上を用い、多価アルコール成分と重縮合した公知の(共重合)ポリエステルを用いることができる。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。またこれらのエステル誘導体としては、ジアルキルエステル、ジアリールエステル等の誘導体が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、ダイマー酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等が挙げられる。また、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価のカルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0016】
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等のアルキレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、多価アルコールではないが、ε−カプロラクトンも使用可能である。
【0017】
ポリエステル系熱収縮性フィルムを構成するポリエステル原料は、単独でもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。単独の場合は、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステルが好ましい。ポリエチレンテレフタレート単独では、熱収縮性が発現しないからである。
【0018】
ただし、フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等を考慮すれば、結晶性のエチレンテレフタレートユニットが主たる構成成分であることが好ましく、具体的には、ポリエステル原料の構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットが50モル%以上となるように選択することが推奨される。従って、ジカルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸成分を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中、エチレングリコール成分を50モル%以上、とすることが好ましい。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。そして、エチレンテレフタレートユニット以外のユニットは、ポリエステル原料の構成ユニット100モル%中、5モル%以上、好ましくは7モル%以上、さらに好ましくは9モル%以上とすることが推奨される。非晶性向上成分を上記程度導入することで、フィルムの溶剤接着性や熱収縮性を確保することが可能となるからである。
【0019】
熱収縮特性の点および生産性の点からは、Tgの異なる2種以上のポリエステルをブレンドして使用することが好ましい。ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステル(2種以上であってもよい)を混合して使用することが好ましいが、共重合ポリエステル同士の組み合わせであってもよい。また、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレート同士を組み合わせたり、これらと他の共重合ポリエステルを組み合わせて用いることもできる。最も熱収縮特性的に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレートと、ポリブチレンテレフタレート、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとの混合ジオール成分とテレフタル酸とからなる共重合ポリエステルとの3種類のブレンドタイプである。2種以上のポリエステルを併用する場合は、それぞれのポリマーのチップをホッパ内でブレンドすることが、生産効率の点からは好ましい。
【0020】
ポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。ポリエステルの重合度は、固有粘度にして0.3〜1.3dl/gのものが好ましい。
【0021】
ポリエステルには、着色やゲル発生等の不都合を起こさないようにするため、酸化アンチモン、酸化ゲルモニウム、チタン化合物等の重合触媒以外に、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバルト等のCo塩を、ポリエステルに対して、各々金属イオンとして300ppm以下、リン酸またはリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体を燐(P)換算で200ppm以下、添加してもよい。
【0022】
上記重合触媒以外の金属イオンの総量がポリエステルに対し300ppm、またP量が200ppmを超えるとポリマーの着色が顕著になるのみならず、ポリマーの耐熱性や耐加水分解性が著しく低下するため好ましくない。
【0023】
このとき、耐熱性、耐加水分解性等の点で、総P量(P)と総金属イオン量(M)とのモル原子比(P/M)は、0.4〜1.0であることが好ましい。モル原子比(P/M)が0.4未満または1.0を超える場合には、フィルムが着色したり、フィルム中に粗大粒子が混入することがあるため好ましくない。
【0024】
上記金属イオンおよびリン酸及びその誘導体の添加時期は特に限定されないが、一般的には、金属イオン類は原料仕込み時、すなわちエステル交換前またはエステル化前に、リン酸類は重縮合反応前に添加するのが好ましい。
【0025】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、滑剤として無機粒子、有機塩粒子や架橋高分子粒子を添加することができる。無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リオチウム等が挙げられる。特に、良好なハンドリング性を得た上に更にヘイズの低いフィルムを得るためには無機粒子としては1次粒子が凝集してできた凝集体のシリカ粒子が好ましい。有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
【0026】
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
【0027】
なお、フィルムに滑性を付与しようとする場合、上記滑剤粒子等により表面を粗面化し接触面積を減少させる方法があるが、多量に入れすぎると、フィルムの透明性が低下し、商品価値を損なう場合がある。このため、フィルムの第2面における中心面平均粗さを0.03以下に抑えるレベルで、上記滑剤粒子を使用することが好ましい。この範囲内においてはラベル用フィルムの透明性を損なうことなく、滑性を付与することができる。
【0028】
上記滑剤の添加方法としては、フィルム原料として使用するポリエステルの重合工程中で滑剤を分散する方法、または重合後のポリエステルを再度溶融させて添加する方法等が挙げられる。フィルムロール全長に亘って均一に滑剤を分散させるためには、前述のいずれかの方法でポリエステル中に滑剤を分散させたあと、滑剤を分散させたポリマーチップの形状を合わせてホッパー内での原料偏析の現象を抑止することが好ましい。ポリエステルは、重合後に溶融状態で重合装置よりストランド状で取り出され、直ちに水冷された後ストランドカッターでカットされてチップ化されるが、このチップは底面を楕円形とする円筒状の形状となる。原料偏析を抑えるためには、楕円状底面の長径、短径及び円筒状の高さのそれぞれの平均サイズが、最も使用比率の高い原料種のチップサイズ±20%以内の範囲である異種の原料チップを用いることが好ましく、前記サイズが±15%以内の範囲内とすることがより好ましい。
【0029】
フィルムを製造するための原料組成物中には、上記ポリエステルと滑剤の他に、必要に応じて各種の公知の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤;老化防止剤;紫外線吸収剤;着色剤(染料等)が挙げられる。
上記原料組成物は、公知の方法(例えば、押し出し法、カレンダー法)によりフィルム状に成形される。フィルムの形状は、例えば平面状またはチューブ状であり、特に限定されない。
【0030】
未延伸フィルムに熱収縮性を付与するために、延伸工程を行う。延伸方法としては、例えば、ロール延伸法、長間隙延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等の公知の方法が採用できる。これらの方法のいずれにおいても、逐次2軸延伸、同時2軸延伸、1軸延伸、およびこれらの組み合わせで延伸を行えばよい。上記2軸延伸では、縦横方向の延伸は同時に行われてもよく、どちらか一方を先に行ってもよい。延伸倍率は1.0倍から7.0倍の範囲が好ましく、所定の一方向(最大収縮方向となる)の倍率を3.5倍以上とすることが好ましい。
【0031】
延伸工程においては、フィルムを構成する重合体が有するガラス転移温度(Tg)以上でかつ例えばTg+80℃以下の温度で予熱を行うことが好ましい。延伸時のヒートセットでは、例えば、延伸を行った後に、30〜150℃の加熱ゾーンを約1〜30秒通すことが推奨される。また、フィルムの延伸後、ヒートセットを行う前もしくは行った後に、所定の度合で延伸を行ってもよい。さらに上記延伸後、伸張あるいは緊張状態に保ってフィルムにストレスをかけながら冷却する工程、あるいは、この処理に引き続き、緊張状態を解除した後の冷却工程を付加してもよい。
【0032】
熱収縮性ポリエステル系フィルムからラベルを製造する場合には、1,3−ジオキソランでチューブ化加工を行うことが好ましい。充分な接着力が付与されるからである。チューブ化に際しては、1,3−ジオキソランをフィルムの片面に塗布し、塗布面にフィルムの他方の面を圧着すればよい。接着性が不足である場合、ラベルの熱収縮装着時、または、飲料ボトル取り扱い時にラベル接着部の剥離が発生するおそれがある。
【0033】
前記した動摩擦係数μdを有するフィルムラベルを得るには、フィルムラベルの外側の面に易滑層が形成されている構成が好ましい。易滑層の形成方法としては、フィルム表面に均一に形成できればよいが、フィルム製膜工程中の易滑層用塗布液の塗布(インラインコート)、フィルム製膜後の易滑層用塗布液の塗布(オフラインコート)の方法が簡便であるが、特に、コスト面、また、塗布後の延伸時に熱処理されて塗布層とフィルムの密着性が良好となる効果が期待されることから、インラインコートでの製造が好ましい。塗布方法としては、リバースロール方式、エアナイフ方式、ファウンテン方式等、公知の方法がいずれも採用可能である。コーティングに用いる塗布液中には、滑剤を含有させることが望ましい。
【0034】
滑剤として粒子状の滑剤成分を使用すると、フィルムの透明性を阻害することがあり、また、粒子が凝集することもあるので注意すべきである。こうした問題を生じることのない好ましい滑剤としては、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン−アクリル系ワックス、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ヒマシ油、ステアリン酸ステアリル、シロキサン、高級アルコール系高分子、ステアリルアルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛 シリコーン(ジメチルシロキサン)系の低分子量物(オイル)又はシリコーン(ジメチルシロキサン)系の樹脂などが挙げられ、これらは単独で使用し得る他、必要により2種以上を併用しても構わない。これらの中でもシリコーン系化合物、シリコーン樹脂、特に、シリコーン成分を含む共重合樹脂が推奨される。フィルム表面の動摩擦係数を低減し、かつ、熱水処理前後の同摩擦係数の変化が少ない上、フィルムの溶剤接着性を阻害し難く、易滑層の転写を防ぐ効果が大きいためである。
【0035】
ここでシリコーン系とは、オルガノシロキサン類をいい、その性状は油状、ゴム状、樹脂状のものがあり、それぞれシリコーン油、シリコーンゴム、シリコーン樹脂と呼ばれる。これらは、何れも撥水作用、潤滑作用、離型作用などを有しているので、フィルム最表層部に含有させることで表面の摩擦を低下させるのに有効である。また飲料容器ラベルとして使用する際には、蒸気や熱風を利用して熱収縮させて装着することが多く、耐水性の低い易滑層では、蒸気を用いた熱収縮処理で滑性低下を起こし易いが、シリコーン本来の撥水効果により、蒸気処理後も良好な滑り性を維持できるのである。
【0036】
シリコーン系の中でも特に好ましいのはシリコーン成分を含む有共重合樹脂あり、例えば、シリコーン・アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ポリエステル系フィルムの表面に易滑層として形成した後ロール状に巻き取ったときに、接触するフィルム裏面への転写を起こり難くする効果が大きい。また、飲料ラベルとして使用する際にはフィルム表面に印刷加工が施されるが、印刷性を阻害することが少ない。
【0037】
シリコーン成分の含有量は、易滑層中に占める存在量として10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70%である。含有量が10重量%未満では滑り性の改善効果が小さく、80重量%を超えると、ロール状に巻いたとき裏面に易滑層成分が転写しやすくなる。
【0038】
表面固有抵抗値を抑制するためには、帯電防止剤を添加することが好ましく、このような帯電防止剤には、四級アンモニウム塩、脂肪酸多価アルコールエステル、ポリオキシエチレン付加物、ベタイン塩、アラニン塩、ホスフェート塩、スルホン酸塩、ポリアクリル酸誘導体 等の界面活性剤が効果的である。
特にアルキルスルホン酸ナトリウムは帯電防止効果に加え、滑性への悪影響が少ないことから推奨される。好ましい添加量は易滑層中の存在量として、1〜70重量%の範囲が好ましく、特に10〜60重量%の範囲が好ましい。
また易滑層の表面固有抵抗値1×1014(Ω/□)以下が好ましく、更に好ましくは1×1013(Ω/□)以下であることが推奨される。
【0039】
塗布液中にはバインダー樹脂を含有させてもよい。バインダー樹脂を含有させることは、印刷適性悪化防止にも効果を持つ。透明フィルムラベルでは、通常、印刷は容器と接する面に施されることが多く、特に飲料容器の滑り性向上を目的としたものの場合、易滑層面がラベルが容器と接する面と反対の面になるように使用され、印刷は易滑層と逆の面に施されることが多い。よって、易滑層とは逆の面での印刷適性が重要となのである。この、フィルムラベル外面側の印刷性を阻害する原因となるのが、易滑層の転写である。易滑層を有するフィルムをロールにして巻き取った際、易滑層が逆面に一部あるいは全部移行することによって起きるのである。バインダー樹脂はこの転写を防止する効果を持つ。
更に、バインダー樹脂は、帯電防止効果の保持にも効果的である。帯電防止剤として用いられるものには水溶性が高いものが多い。帯電防止剤を表面にもつラベルを容器に被せ、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)の内部を通過させ、容器に装着させる際、スチームにより帯電防止剤が流れ落ちてしまうと、最終製品(ラベル化容器)で充分な帯電防止性を得られない。バインダー樹脂は帯電防止剤が流れ落ちるのを防止する効果を持つ。
【0040】
樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。シリコーン成分含有共重合体のバインダーとして用いる際には、共重合成分と類似の成分を用いるとバインダーとしての効果が大きい。また、本発明におけるバインダーとして使用する樹脂は耐水性が必要であるため、本質的に水不溶性である必要がある。
【0041】
上記滑剤およびバインダー樹脂成分、帯電防止剤の何れについても、水溶性または水分散性のものを使用することは、安全性や環境対応という観点からも好ましい。
【0042】
塗布液の量は、延伸後のフィルム上に存在する量としては0.002〜0.5g/m2が好ましく、より好ましくは0.005〜0.4g/m2である。0.002g/m2未満では、滑り性が小さくなり、0.5g/m2を超えると、フィルムの透明性の低下が発生する他、溶剤接着性の低下が起こったり、加工時に摩耗屑が発生しやすくなり、生産性の低下に繋がることがあるため、好ましくない。
【0043】
なお、本発明の熱収縮性フィルムラベルの厚みは特に限定するものではないが、例えばラベル用熱収縮性フィルムラベルとして、10〜400μmが好ましく、15〜300μmがより好ましい。さらに好ましくは20〜70μmである。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は以下の通りである。
【0045】
測定サンプルには、飲料ボトルに収縮装着したフィルムラベルの一部を切断してボトルから取り外したものを使用した。
【0046】
(1)摩擦係数
動摩擦係数μdをJIS K−7125に準拠し、23℃,65%RH環境下で測定した。なお、固定側サンプル、スレッド取り付けサンプルの何れもボトルに装着されていたときの周囲に平行な方向を滑り方向とした。
【0047】
(2)表面固有抵抗
表面固有抵抗は、表面抵抗器(KAWAGUCHI ERECTRIC WORKS製固有抵抗測定器)により印加電圧500V、23℃、65%RHの条件で測定した。
【0048】
(3)溶剤接着性
ラベルの非易滑層面の非印刷部分間に1,3−ジオキソランを塗布し、この塗布面にラベル他方の面である易滑層面を圧着し、接合加工した。サンプルがラベルとしてボトルに装着されていたときの周囲に平行な方向に15mm幅に切断し、JIS K 6854に準じ、接合部分の上記方向についてのT型剥離試験を引張速度200mm/分の条件で行った。
【0049】
フィルム1
1)ポリエステル系樹脂及び未延伸フィルム
ポリエチレンテレフタレート40重量%、テレフタル酸100モル%とネオペンチルグリコール30モル%とエチレングリコール70モル%とからなるポリエステル50重量%、およびポリブチレンテレフタレート10重量%を混合したポリエステル組成物を混合し、280℃で単軸式押出し機により溶融押出しし、急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。
【0050】
(塗布液の調合)
シリコーン・アクリル酸エステル系共重合体の水分散液(シャリーヌ NS−626 日信化学工業製)の固形分を塗布液中の全固形分中35質量%、アクリル酸エステル系共重合体の水分散液(ビニブラン 2585 日信化学工業製)の固形分を固形分中10質量%、アセチレングリコール誘導体(サーフィノール486 エアープロダクツジャパン製)の固形分を固形分中5質量%、帯電防止剤(TB214 松本油脂製薬製)を固形分中50質量%含み、イソプロピルアルコール20質量%を含む水系液100kgを調合しタンク内に投入した。
【0051】
上記未延伸フィルムに塗布液をファウンテンダイコート・スムージングバー方式でコーティングし、続いて、テンターで、コーティングフィルムを100℃で10秒間予熱後、横方向に80℃で4.0倍延伸し、80℃で10秒間熱処理を行った。フィルムの厚さ45μm、易滑層のコート量0.02g/m2であった。得られたフィルムをフィルム1とした。
【0052】
フィルム2
塗布液について、シリコーン・アクリル酸エステル系共重合体の水分散液(シャリーヌ FE−230 日信化学工業製)の固形分を塗布液中の全固形分中35質量%、共重合ポリエステル樹脂の水分散液(AGN709 東洋紡製)の固形分を固形分中10質量%、アセチレングリコール誘導体(サーフィノール486 エアープロダクツジャパン製)の固形分を固形分中5質量%、帯電防止剤(ビスターCAP―Y 松本油脂製薬製)を固形分中50質量%含み、イソプロピルアルコール20質量%を含む水系液を塗布液とした以外は、フィルム1と同じ方法で熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムをフィルム2とした。
【0053】
フィルム3
ジメチルシリコーン樹脂(SE4005 日新化学研究所製)の固形分を塗布液中の全固形分中35質量%、共重合ポリエステル樹脂の水分散液(AGN702 東洋紡製)の固形分を固形分中10質量%、アセチレングリコール誘導体(サーフィノール486 信越化学工業製)の固形分を固形分中5質量%、帯電防止剤(アンスティックスHT−100 東邦化学製)を固形分中50質量%含み、イソプロパノール20質量%を含む水系液を塗布液とした以外は、フィルム1と同じ方法で熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムをフィルム3とした。
【0054】
フィルム4
塗布液について、シリコーン・アクリル酸エステル系共重合体の水分散液(シャリーヌ FE−230 日信化学工業製)の固形分を塗布液中の全固形分中70質量%、共重合ポリエステル樹脂の水分散液(AGN709 東洋紡製)の固形分を固形分中20質量%、アセチレングリコール誘導体(サーフィノール486 エアープロダクツジャパン製)の固形分を固形分中10質量%、イソプロピルアルコール20質量%を含む水系液を塗布液とし、コート量0.01g/m2とした以外は、フィルム2と同じ方法で熱収縮性フィルを得た。得られたフィルムをフィルム4とした。
【0055】
フィルム5
塗布液について、帯電防止剤(TB214 松本油脂製)、イソプロパノール20質量%を含む水系液を塗布液としコート量0.01g/m2とした以外は、フィルム1と同じ方法で熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムをフィルム5とした。
【0056】
フィルム6
フィルム1において塗布液を塗布しない以外は同様の方法にて熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムをフィルム6とした。
【0057】
フィルム7
コート量0.8g/m2とした以外はフィルム2と同様の方法で厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムをフィルム7とした。
【0058】
フィルム1〜7について高さ180mm、円周220mmのコート層が外面となるようにして筒状ラベルを作成した。
上記ラベルをFuji Astec Inc製スチームトンネル(型式:SH−1500−L)を用い、通過時間15秒、第1ゾーン温度70℃、第2ゾーン温度75℃、第3ゾーン温度82℃で、500mlのPETボトル飲料に熱収縮、装着した。このラベル装着ボトルを自動販売機に投入、排出したときの詰り評価の結果と、フィルムラベルの一部を切断してボトルから取り外したものの物性測定結果について表1に示す。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の熱収縮性フィルムラベルは、滑り性に優れておりボトル飲料等のラベルとして用いたとき、自動販売機内の詰りを防止することができ、かつ、帯電防止性能に優れ、汚れの付着による外観悪化を防ぐことができる。また、筒状ラベル加工に適した加工特性を有する。従って、ボトル飲料等の容器被覆用ラベルとして非常に有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に易滑層を有し、容器に被覆されたラベル外面同士の動摩擦係数μdが0.30未満であることを特徴とする、容器に被覆された熱収縮性ポリエステル系フィルムラベル。
【請求項2】
容器に被覆されたラベルの少なくとも一方の面の表面固有抵抗値が温度23℃、相対湿度65%雰囲気下で1×1014(Ω/□)以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムラベル。
【請求項3】
容器に被覆されたラベルの少なくとも一方の面の表面固有抵抗値が温度23℃、相対湿度65%雰囲気下で1×1013(Ω/□)以下であることを特徴とする請求項2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムラベル。
【請求項4】
1000ml以下の容量の容器に被覆されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムラベル。
【請求項5】
500ml以下の容量の容器に被覆されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムラベル。
【請求項6】
少なくとも一方の面に、最外層としてシリコーン含有成分を含む易滑層が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムラベル。
【請求項7】
ラベルの易滑層面と非易滑層面の非印刷部分が1,3−ジオキソランで溶剤接着されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムラベル。

【公開番号】特開2007−293212(P2007−293212A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123624(P2006−123624)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】