説明

熱収縮性積層フィルム

【課題】 収縮仕上り性に優れ、かつ、耐破断性及び剛性に優れた熱収縮性積層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも1層の中間層と、この中間層の両側に積層された表裏層から構成され、少なくとも1軸方向に延伸され、また、主収縮方向における80℃温水中の10秒間での熱収縮率が30%以上である熱収縮性積層フィルムにおいて、上記中間層は、少なくとも1種のポリエステル樹脂を含有し、上記表裏層は、少なくとも1種のスチレン系樹脂を含むことを特徴とする熱収縮性積層フィルムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱収縮性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
収縮包装、プラスチック容器の収縮ラベル等に広く利用される熱収縮性フィルムとして、主に、ポリエステル系又はポリスチレン系の熱収縮性フィルムが用いられている。
上記ポリエステル系の熱収縮性フィルムは、低温収縮性がよく、自然収縮率も低く、剛性も良好である。しかし、上記ポリエステル系の熱収縮性フィルムは、均一な収縮を得難いため、収縮ムラ等の収縮仕上り不良の問題があった。また、ラベル用途等では、主収縮方向と直交方向への収縮も生じてしまうため、外観不良を起こす場合があった。
【0003】
また、上記ポリスチレン系熱収縮性フィルムとして、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)を主な材料とするポリスチレン系熱収縮性フィルムが用いられている。このポリスチレン系熱収縮性フィルムは、収縮仕上り性が良好であり、外観が良好となる。
【0004】
しかし、上記ポリスチレン系熱収縮性フィルムは、低温収縮性を与えた際に、自然収縮率が大きくなったり、印刷による溶剤によって、印刷中や製袋中にフィルム自体が破断したりするという問題点を有する。さらに、上記のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)を主成分とするポリスチレン系熱収縮性フィルムにおいて、ブタジエン成分を増加させることにより、耐破断性を向上させることができるが、剛性が低下する傾向があり、耐破断性と剛性とを両立させることが困難である。
【0005】
これに対し、ポリスチレン系樹脂からなる中間層に、ポリエステル系樹脂からなる表裏層を積層した3種5層の積層フィルムが、特許文献1に記載されている。これにより、収縮仕上りが良好となり、また、耐破断性及び剛性を向上させることができる。
【0006】
また、ポリスチレン系樹脂からなる中間層に、1,4−シクロヘキサンジメタノールを有するポリエステル系樹脂からなる表裏層を積層した積層フィルムが、特許文献2や3に記載されている。これにより、収縮仕上りが良好となり、また、収縮時の層間剥離を防止することができる。
【0007】
【特許文献1】特開昭61−41543号公報
【特許文献2】特開平7−137212号公報
【特許文献3】特開2002−351332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の積層フィルムは、透明性に劣る傾向があり、また、収縮させたときに、層間剥離が生じることがある。また、上記特許文献2や3に記載の積層フィルムは、十分な耐破断性が得られない場合がある。
【0009】
そこで、この発明は、収縮仕上り性に優れ、かつ、耐破断性及び剛性に優れた熱収縮性積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、少なくとも1層の中間層と、この中間層の両側に積層された表裏層から構成され、少なくとも1軸方向に延伸され、また、主収縮方向における80℃温水中の10秒間での熱収縮率が30%以上である熱収縮性積層フィルムにおいて、上記中間層は、少なくとも1種のポリエステル樹脂を含有し、上記表裏層は、少なくとも1種のスチレン系樹脂を含むことを特徴とする熱収縮性積層フィルムを提供することにより、上記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によると、ポリエステル系樹脂を含む中間層を用いるので、耐破断性、剛性、低自然収縮性に優れ、また、スチレン系樹脂を含む表裏層を用いるので、収縮仕上り性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明を詳しく説明する。
この発明にかかる熱収縮性積層フィルムは、少なくとも1層の中間層と、この中間層の両側に積層された表裏層から構成され、少なくとも1軸方向に延伸されたフィルムである。
【0013】
上記中間層としては、少なくとも1種のポリエステル樹脂を含有することが好ましい。中間層にポリエステル樹脂を含有させることにより、得られる熱収縮性積層フィルムの耐破断性、剛性、及び低自然収縮性を向上させることができる。
【0014】
上記ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とから得られる樹脂が好ましい。上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等があげられる。また、上記ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等があげられる。これらの中でも、テレフタル酸とエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0015】
上記のポリエステル樹脂は、単独の樹脂に限られず、複数の異なるポリエステル樹脂の混合物であってもよい。
【0016】
また、上記ポリエステル樹脂の構成単位であるジカルボン酸成分及びジオール成分は、それぞれ単独の化合物から構成されてもよく、少なくとも一方が複数の化合物から構成されてもよい。上記のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分の少なくとも一方が複数の化合物から構成されることにより、得られるポリエステル樹脂の結晶性を低下させることができ、中間層を構成する樹脂の一部として配合された場合、中間層の結晶化が生じるのを低下させることができる。
【0017】
なお、この明細書において、上記ジカルボン酸成分又はジオール成分が複数の化合物から構成される場合、複数の化合物のうち、含有量の最も多い化合物をその成分の「主成分」と称し、この主成分以外の化合物又は化合物群をその成分の「副成分」と称する。
【0018】
上記ジカルボン酸成分が複数の化合物から構成される場合、ジカルボン酸成分の主成分としてはテレフタル酸が好ましく、また、ジカルボン酸成分の副成分としては、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、及びアジピン酸から選ばれる少なくとも1種、中でもイソフタル酸が好ましい。
【0019】
また、上記ジオール成分が複数の化合物から構成される場合、ジオール成分の主成分としてはエチレングリコールが好ましく、また、ジオール成分の副成分としては、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及び1、4−シクロヘキサンジメタノールから選ばれる少なくとも1種、中でも1、4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0020】
上記のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が複数の化合物から構成されるとき、上記のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分の副成分の総量は、上記ジカルボン酸成分100モル、及びジオール成分100モルの合計量200モルに対して、10〜40モルがよく、20〜35モルが好ましい。10モル未満だと、得られるポリエステルの結晶化度が高くなってしまう場合があり、上記のジカルボン酸成分及び/又はジオール成分として複数の化合物を使用する必要性がなくなる。一方、40モルを超えると、主成分の長所を生かせなくなる場合がある。
【0021】
特に、上記ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、上記ジオール成分の主成分としてエチレングリコールを用いると共に、上記ジオール成分の副成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合、副成分である1,4−シクロヘキサンジメタノールの量は、上記ジカルボン酸成分100モル及びジオール成分100モルの合計200モルに対し、10〜40モルがよく、20〜35モルが好ましく、25〜35モルがさら好ましい。上記範囲、特に、さらに好ましい範囲とすることにより、得られるポリエステルの結晶性がほとんどなくなり、かつ、耐破断性も向上される。このようなポリエステル系樹脂の具体例としては、イーストマンケミカル社製:PETG6763、エスケーケミカル社製:SKYREEN PETG等があげられる。
【0022】
上記ポリエステル樹脂を含有する層は、得られるフィルムに剛性、耐破断性を付与し、低温収縮を付与しつつ自然収縮を抑えることが可能となる。ところが、均一な収縮が得られ難いため、収縮ムラ等の収縮仕上り不良や、ラベル用途等において、主収縮方向と直交方向への収縮が生じ、外観不良となりやすい。これに対し、このポリエステル樹脂を含有する層を内層とし、少なくとも1種のスチレン系樹脂を含む層を表層及び裏層として形成することにより、得られるフィルムの剛性、耐破断性の付与、及び低温収縮を付与しつつ自然収縮を抑えることに加え、収縮仕上り性や、ラベル用途等における外観性を向上させることが可能となる。
【0023】
上記スチレン系樹脂としては、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体(以下、単に「ブロック共重合体」と称する。)が好ましい。上記スチレン系炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等があげられる。そして、上記スチレン系樹脂中のスチレン系炭化水素ブロックとしては、これらの単独重合体、共重合体、及び/又はこれらのスチレン系炭化水素と、これらスチレン系炭化水素と共重合可能な単量体との共重合体があげられる。
【0024】
また、上記共役ジエン系炭化水素としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等があげられる。そして、上記スチレン系樹脂中の共役ジエン炭化水素ブロックとしては、これらの単独重合体、共重合体、及び/又はこれらの共役ジエン系炭化水素と、これら共役ジエン系炭化水素と共重合可能な単量体との共重合体があげられる。
【0025】
このようなスチレン系樹脂、すなわち、上記ブロック共重合体の好ましい例としては、スチレン系炭化水素がスチレンであり、共役ジエン系炭化水素がブタジエンであるスチレン−ブタンジエンブロック共重合体(SBS)や、スチレン−イソプレン−ブタジエンブロック共重合体(SIBS)、又はこれらの混合物があげられる。
【0026】
上記スチレン−ブタンジエンブロック共重合体(SBS)のスチレンとブタジエンとの重量比は、スチレン/ブタジエン=95/5〜60/40が好ましく、90/10〜60/40が好ましい。95/5より大きいと、フィルムが脆くなりやすい。一方、60/40より小さいと、柔軟性が増し、表面融着が起こりやすくなる。
【0027】
また、上記スチレン−ブタンジエンブロック共重合体(SBS)のメルトフローレート(MFR、測定条件:温度200℃、荷重49N)は、2以上25以下が好ましく、3以上20以下がより好ましい。25より大きいと、延伸しづらく、また、破れやすくなる。一方、2より小さいと、樹脂押出時に、発熱によるブツが発生しやすくなる。
【0028】
上記スチレン−イソプレン−ブタジエンブロック共重合体(SIBS)におけるスチレン、イソプレン、ブタンジエンの重量比は、スチレン/イソプレン/ブタンジエン=60〜85/5〜35/5〜30が好ましく、60〜80/10〜25/5〜20がより好ましい。ブタジエンの量が多すぎて、かつ、イソプレンの量が少なすぎると、成形時、押出機内部等で加熱されたブタジエンが架橋反応を起こして、ゲル状物が増す場合がある。一方、ブタジエンの量が少なくなり、かつ、イソプレンの量が多くなると、原料単価が増大する傾向がある。
【0029】
また、上記スチレン−イソプレン−ブタジエンブロック共重合体(SIBS)のメルトフローレート(MFR、測定条件:温度200℃、荷重49N)は、2以上25以下が好ましく、3以上10以下がより好ましい。25より大きいと、延伸しづらく、また、破れやすくなる。一方、2より小さいと、樹脂押出時に、発熱によるブツが発生しやすくなる。
【0030】
上記スチレン系樹脂の0℃における貯蔵弾性率(E’)は、1.00×109Pa以上が好ましく、1.50×109Pa以上がより好ましい。この0℃における貯蔵弾性率(E’)は、フィルムの剛性、すなわち、フィルムの腰の強さを表す。貯蔵弾性率(E’)が1.00×109Pa未満だと、十分な剛性を得難くなる。なお、この貯蔵弾性率(E’)は、スチレン系樹脂に含まれる上記スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体の種類、組み合わせ、透明性を損なわない範囲での他の樹脂の混合等によって調整することができる。
【0031】
上記スチレン系樹脂として複数のスチレン系樹脂を混合したものを用いる場合や、上記他の樹脂を混合する場合、混合するそれぞれに樹脂として、耐破断性を担わせる樹脂と、剛性を担わせる樹脂とを用い、両者の組成比を、上記の貯蔵弾性率(E’)を満たすようにすることにより、上記の目的を発揮しえるスチレン系樹脂を得ることができる。
【0032】
上記の耐破断性を担わせる樹脂としては、ピュアブロックのSBS、ランダムブロックのSBS等があげられる。これらの中でも、0℃での貯蔵弾性率(E’)が1.00×108〜1.00×109Paであり、かつ、損失弾性率のピーク温度の少なくとも1つが−20℃以下にある粘弾性特性を有するものが好ましい。0℃での貯蔵弾性率(E’)が1.00×108Pa未満では、剛性を担う樹脂のブレンド量を増やしても、十分な腰の強さを付与することが困難となる場合がある。一方、損失弾性率のピーク温度における低温度側の温度は、主に耐破断性を示し、延伸条件によって変化するが、延伸前の状態で損失弾性率のピーク温度が−20℃以下に存在しない場合、十分なフィルム破断性を積層フィルムに付与することが困難となる場合があるからである。
【0033】
一方、上記の剛性を担わせる樹脂としては、ブロック構造を制御したスチレン系炭化水素からなる共重合体、ポリスチレン、スチレン系炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体等の、0℃での貯蔵弾性率(E’)が2.00×109Pa以上の上記ブロック共重合体があげられる。なお、この場合、0℃での貯蔵弾性率(E’)の上限が示されていないが、0℃での貯蔵弾性率(E’)は、本質的に、共重合体の組成比で決定されるので、当然に0℃での貯蔵弾性率(E’)の上限は存在し、この場合の上限は、使用するブロック共重合体が取りえる上限となる。
【0034】
0℃での貯蔵弾性率(E’)が2.00×109Pa以上を満たすSBSのスチレン−ブタジエンの組成比は、重量比で、スチレン/ブタジエン=95/5〜80/20の範囲で調整されるのが好ましい。
【0035】
また、上記のブロック構造を制御したスチレン系炭化水素からなる共重合体としては、ランダムブロック及びテーパーブロックの構造を有することが好ましい。
【0036】
上記剛性を担わせる樹脂の損失弾性率のピーク温度は、40℃以上に存在することが好ましく、40℃以上、好ましくは40〜90℃に損失弾性率のピーク温度が存在すると共に、40℃未満には明確な損失弾性率のピークが存在しないことがより好ましい。損失弾性率のピーク温度が40℃未満に見かけ上存在しない場合、ほぼポリスチレンと同様な貯蔵弾性率特性を示すため、フィルムの剛性を付与することが可能となる。また、損失弾性率のピーク温度が40℃未満に存在する場合、自然収縮が低下してしまい、一方、損失弾性率のピーク温度が90℃を超えて存在する場合、低温収縮性が低下する傾向がある。
【0037】
例えば、剛性を付与する樹脂であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体のブレンド量は、その熱収縮性積層フィルムの特性に応じて適宜調整され、20〜70重量%の範囲で調整されることが好ましい。70重量%を超えると、得られる積層フィルムの剛性は大幅に向上するが、その一方、耐破断性が低下してしまう。また、20重量%未満では、得られる積層フィルムに剛性を付与する効果が少なくなってしまう。
【0038】
上記ポリスチレンとしては、重量平均分子量が10万〜50万のGPPS(汎用ポリスチレン)が好ましい。このポリスチレンは、ガラス転移温度、すなわち、損失弾性率のピーク温度が100℃程度と非常に高いため、上記ブロック共重合体全体に対する混合量は、20重量%以下がよく、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。20重量%を超えると、そのガラス転移温度(損失弾性率のピーク温度)の高さに起因して、積層フィルムの低温での収縮率が低下するおそれがある。
【0039】
上記スチレン系炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体に用いられるスチレン系炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等があげられ、また、上記の共重合体に用いられる脂肪族不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等があげられる。これらの中でも、スチレンと(メタ)アクリル酸ブチルとからなる共重合体が好ましい。なお、この明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0040】
このスチレンと(メタ)アクリル酸ブチルとからなる共重合体を用いる場合、スチレン含有量は、共重合体全体に対して、70重量%以上が好ましい。70重量%未満だと、ガラス転移温度が低くなり、自然収縮が大きくなる傾向にある。
【0041】
また、上記スチレンと(メタ)アクリル酸ブチルとからなる共重合体のガラス転移温度(すなわち、損失弾性率のピーク温度)は、50℃以上90℃以下が好ましく、55℃以上85℃以下がより好ましい。50℃未満だと、フィルム面同士で融着しやすくなる。一方、90℃より高いと、低温での収縮率が低下するおそれがある。
【0042】
さらに、上記スチレンと(メタ)アクリル酸ブチルとからなる共重合体のメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、2以上15以下が好ましく、3以上12以下がより好ましい。2未満だと、押し出し性が低下していく傾向がある。一方、15より高いと、フィルム成形がしにくくなる傾向がある。
【0043】
上記スチレン系樹脂として複数のスチレン系樹脂を混合したものを用いる場合、この発明で得られる熱収縮性積層フィルムの中間層を構成する樹脂全量に対して、20〜70重量%がよく、30〜60重量%が好ましい。この範囲にすることにより、破れにくく、適度な剛性を持つフィルムが得やすい。
【0044】
ところで、上記中間層には、上記表層又は裏層を構成する上記スチレン系樹脂を含有させることができる。上記中間層に、上記スチレン系樹脂を加えることにより、層間の密着が増す傾向がある。
【0045】
上記中間層に上記スチレン系樹脂を含有させる場合、上記スチレン系樹脂の含有割合は、上記中間層を構成する樹脂の総量の3〜30重量%がよく、5〜20重量%が好ましい。上記の範囲を逸脱すると、透明性が損なわれる傾向がある。
【0046】
この発明にかかる熱収縮性積層フィルムは、次の方法で製造することができる。すなわち、中間層を構成する樹脂と、表裏層を構成する樹脂と、Tダイを備えた押出機を用いて、共押出しをすることにより、製造することができる。押出しに際しては、Tダイ法、チューブラ法等の既存の方法を採用してもよい。さらに、中間層を構成する樹脂、表裏層を構成する樹脂をそれぞれ別々にシート化した後、プレス法やロールニップ法等で積層してもよい。
【0047】
溶融押出された積層体は、冷却ロール、空気、水等で冷却された後、熱風、温水、赤外線等の適当な方法で再加熱され、ロール法、テンター法、チューブラ法等によって、1軸又は2軸に延伸される。延伸温度は、フィルムを構成する樹脂の軟化温度や得られる熱収縮性積層フィルムに要求される用途によってかえる必要があるが、60〜130℃がよく、70〜120℃が好ましい。また、収縮方向、すなわち、流れ方向と直角方向の延伸倍率は、フィルム構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて適宜決定されるが、2〜7倍が好ましく、3〜6倍がより好ましい。
【0048】
特に、この発明で得られる熱収縮性積層フィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)ボトル用ラベルに用いられる場合、すなわち、ほぼ一方向の収縮特性を必要とする用途の場合、その収縮方向と直交方向に収縮特性を阻害しない範囲で延伸する。具体的には、その延伸温度は、60〜90℃が好ましく、また、収縮方向、すなわち、流れ方向と直角方向の延伸倍率は、1.03〜1.5倍が好ましい。一方、1.5倍を超えて大きくなればなるほど耐破断性が向上するが、それに伴い収縮率が上がってしまい、良好な収縮仕上りを得ることが困難となる傾向があるため、1.5倍で十分である。
【0049】
この発明にかかる熱収縮性積層フィルムの層の厚さの比は、表層/中間層/裏層で1/2/1〜1/12/1がよく、1/4/1〜1/8/1が好ましい。この範囲内とすることにより、耐破断性、剛性、自然収縮、収縮仕上がりに優れたフィルムを得やすい。
【0050】
ところで、この発明にかかる熱収縮性積層フィルムは、中間層、表層及び裏層が上記した所定の範囲内であれば、2種3層の構成に限定されない。例えば、表裏層と中間層との間に接着層等を配した3種5層であってもよい。この発明においては、2種3層で、十分な層間接着強度を得ることができるが、より層間強度が必要とされる用途、例えば、製袋後のシール強度がより必要な用途等では、透明性を損なわない範囲内で、接着剤層等を設けてもよい。
【0051】
なお、この発明にかかる熱収縮性積層フィルムを構成する各樹脂には、必要に応じ、各樹脂量に応じて可塑剤や粘着付与剤を1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部添加することができる。添加量が8重量部を超えると、溶融粘度低下、耐熱融着性の低下を招き、自然収縮を起こすという問題を生じ易い。さらに、上記の可塑剤や粘着付与剤以外にも、目的に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、無機フィラー等の各種添加剤を、各用途に応じて使用することができる。
【0052】
この発明にかかる熱収縮性積層フィルムの主収縮方向(流れ方向に対して直交方向)の80℃温水中での10秒間の熱収縮率は、30%以上がよく、40%以上が好ましい。さらに、主収縮方向の70℃温水中での10秒間の熱収縮率は、10%以上が好ましい。80℃温水中での熱収縮率が30%未満だと、熱収縮性フィルムとしての特徴を発揮し得ない。なお、熱収縮率の上限は、延伸倍率による。すなわち、熱収縮性フィルムは、延伸前のフィルムの長さより収縮することはないので、熱収縮率の上限は、延伸後のフィルム長/延伸前のフィルム長となる。
【0053】
なお、上記の熱収縮率は、延伸後のフィルムの分子配向が緩和しない時間内に速やかに、得られた熱収縮性積層フィルムの冷却を行うことにより、付与することができる。
【0054】
また、PETラベル用として使用する場合、この発明にかかる熱収縮性積層フィルムからなるラベルの縦方向、すなわち、流れ方向の熱収縮率は、80℃温水中、10秒間において、10%以下がよく、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。10%を超えると、ラベル用途において、収縮後の縦方向の収縮が顕著となり、寸法ずれや外観上不具合が生じ易くなるからである。
【0055】
この発明にかかる熱収縮性積層フィルムの自然収縮性は、30℃環境下にて、30日後で2.0%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましい。2.0%より大きいと、印刷ズレ等を生じやすい。
【0056】
また、この発明にかかる熱収縮性積層フィルムのJIS K 7105にしたがって測定されたヘーズ値は、10%以下が好ましく、6%以下がより好ましい。10%より大きいと、印刷板が所望通りにいかないことがある。
【0057】
さらに、この発明にかかる熱収縮性積層フィルムの耐破断性は、引っ張り伸びによって評価することができ、0℃環境下の引っ張り試験において、特にラベル用途では、流れ方向(MD)で伸び率100%以上がよく、200%以上が好ましく、300%以上がより好ましい。100%より小さいと、印刷、製包、ラベリング等の工程でフィルム搬送中にフィルムの破断が生じることがある。
【0058】
さらにまた、この発明にかかる熱収縮性積層フィルムの剛性は、フィルムの流れ方向(MD)と直行方向(TD)での引張弾性率を測定し、両者の平均値を出し、これをフィルムの腰として評価されるが、この値は、1500MPa以上がよく、1700MPaがより好ましい。1500MPaより小さいと、フィルムの腰が弱く、取扱いが難しくなることがある。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。なお、フィルムの流れ方向をMD、流れ方向と直交方向をTDと記載する(主収縮方向がTDに相当する)。
【0060】
[熱収縮率]
フィルムを、MD100mm、TD100mmの大きさに切り取り、主収縮方向(TD)の収縮量を、70℃、又は80℃の温水バスに10秒間浸漬し測定した。熱収縮率は、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0061】
[自然収縮率]
フィルムを23℃、5時間放置した後、MD50mm、TD1000mmの大きさに切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置後、TDの収縮率を測定した。
【0062】
[引張伸び率]
フィルムをMD方向において、幅15mm、長さ50mmで試験片を切り取り、その試験片をチャック間40mmで恒温槽付引張試験機にセットし、これを0℃、100mm/minの試験速度で引張り、下記の式から引張伸び率を算出した。
引張伸び率=((破断した時のチャック間長さ−40(mm))/40(mm))×100
【0063】
[透明性(全ヘーズ)]
JIS K 7105にしたがって測定した。
【0064】
[引張弾性率]
5mm幅の試験片を切り出し、これをチャック間300mmで23℃の恒温室に設置した引張試験機((株)インテスコ製「IM−20」)にセットする。これを、引張試験速度5mm/分で応力−歪曲線を求め試験開始直後の直線部を用いて、下記式より引張弾性率を求めた。
引張弾性率=直線上の2点間の元の平均断面積による応力差/同じ2点間の歪差
そして、得られたMD及びTDの値から、下記の式にしたがって、引張弾性率を算出した。
引張弾性率=(MD×TD)/2
【0065】
[収縮仕上り性]
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムをMD160mm×TD238mmの大きさに切り取り、TDの両端を10mm重ねて、溶剤等で接着し円筒状にした。この円筒状フィルムを、容量500mlのPETボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブにて調整し、80〜90℃の範囲とした。試験後の収縮状態を観察し、下記の基準で評価した。
A:収縮が十分で、シワ、アバタ、格子の歪みがなく、密着性が良好である。
B:収縮は十分だが、シワ、アバタ、格子の歪みが僅かにあるか、又は縦方向の収縮率が僅かに目立つものの、実用上問題ない。
C:横方向(主収縮方向)の収縮不足、又は縦方向の収縮が目立ち、実用上、問題となる。
【0066】
[粘弾性測定](貯蔵弾性率、損失弾性率)
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティ−計測制御(株)製)を用い、振動周波数10Hz、昇温速度3℃/分、測定温度−120℃から130℃の範囲で測定した。損失弾性率のピーク温度は、損失弾性率の温度依存曲線の傾きが零(一次微分が零)となる温度として求めた。なお、測定フィルムは、構成する樹脂を0.2〜1.0mmの程度の厚み範囲で作成し、ほぼ無配向の方向を測定した。すなわち、構成樹脂を押出機にて押出した後に、横方向を測定する、又は熱プレスにて配向を緩和して測定した。ところで、延伸、未延伸にかかわらず、構成樹脂のフィルムを熱プレスにてシート化した後に測定してもよい。
【0067】
[原材料]
・樹脂A…SBS(電気化学(株)製:CLX、スチレン/ブタジエン=84/16(重量比)、E’(0℃):1.89×108Pa)
・樹脂B…ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル社製:PETG6763、ジカルボン酸成分がテレフタル酸100%、グリコール成分がエチレングリコール70モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール30モル%からなる共重合体ポリエステル)
【0068】
・樹脂C…SBS(旭化成(株)製:AFX881S、スチレン/ブタジエン=90/10(重量比)、E’(0℃):3.15×109Pa、損失弾性率ピーク温度:55℃)
・樹脂D…SIBS(旭化成(株)製:I−100、スチレン/ブタジエン/イソプレン=71/14/15(重量比)、E’(0℃):4.03×108Pa、損失弾性率ピーク温度:−32℃)
【0069】
[実施例1]
樹脂Aを表層及び裏層とし、樹脂Bを中間層として、押出量を表裏層/中間層=1/3の割合にて、210〜230℃の範囲に設定された押出機で溶融し、口金にて合流させて、2種3層(積層比=1/6/1)にて押出し、キャストロールで冷却し、厚さ300μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを流れ方向(MD)に80℃で1.05倍延伸した後、その直交方向(TD)に、90℃で4.5倍延伸し、厚さ50μm(積層比=1/6/1)の積層フィルムを製作した。得られた積層フィルムを用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2]
樹脂Cと樹脂Dとを1:1(重量比)で混合した混合樹脂を表層及び裏層とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムを用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0071】
[実施例3]
樹脂Bと樹脂Aとを9:1(重量比)で混合した混合樹脂を中間層とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。得られた積層フィルムを用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0072】
[比較例1]
樹脂Bを押出機で溶融して口金にて押出し、キャストロールで冷却し、厚さ300μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを流れ方向(MD)に70℃で1.03倍延伸した後、その直交方向(TD)に、85℃で5.1倍延伸し、厚さ50μmの積層フィルムを製作した。得られた積層フィルムを用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0073】
[比較例2]
樹脂Aを押出機で溶融して口金にて押出し、キャストロールで冷却し、厚さ250μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを流れ方向(MD)に90℃で1.05倍延伸した後、その直交方向(TD)に、90℃で5.0倍延伸し、厚さ50μmの積層フィルムを製作した。得られた積層フィルムを用いて、上記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の中間層と、この中間層の両側に積層された表裏層から構成され、少なくとも1軸方向に延伸され、また、主収縮方向における80℃温水中の10秒間での熱収縮率が30%以上である熱収縮性積層フィルムにおいて、
上記中間層は、少なくとも1種のポリエステル樹脂を含有し、
上記表裏層は、少なくとも1種のスチレン系樹脂を含むことを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
【請求項2】
上記スチレン系樹脂が、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項3】
上記のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分から得られ、
上記ジカルボン酸成分及びジオール成分の少なくとも一方は、含有量の最も多い化合物である主成分と、この主成分以外の化合物又は化合物群である副成分とから構成され、
上記副成分の総量は、上記ジカルボン酸成分及びジオール成分の合計量200モルに対して、10〜40モルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項4】
上記ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、上記ジオール成分の主成分は、エチレングリコールであり、上記ジオール成分の副成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノールであることを特徴とする請求項3に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項5】
上記中間層は、これを構成する樹脂の総量の3〜30重量%の上記スチレン系樹脂を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。

【公開番号】特開2006−21353(P2006−21353A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199507(P2004−199507)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】