説明

熱可塑性エラストマー組成物

【課題】本発明は、発泡倍率が2倍以上であり、均一な発泡セルを有する発泡体が得られ、かつ、外観が良好な発泡成形体を得るに好適な熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、エチレンから導かれる単位、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位および非共役ポリエンから導かれる単位を含み、部分的または完全に架橋されたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)15〜85重量%と、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、常温n−デカン可溶分が30重量%未満、およびゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1.80×105以下のポリプロピレン(B)5〜40重量%と、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、および常温n−デカン可溶分が30〜90重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)5〜80重量%(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100重量%とする)とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柔軟性原料として塩化ビニル樹脂や加硫ゴムが広く用いられている。塩化ビニル樹脂は、成形加工性に優れる上に、加硫ゴムは比較的安価であるため、内装材、外装材などに多数使用されている。しかしながら近年、塩化ビニル樹脂は焼却時に有害ガスの発生原因になる可能性が指摘されており、また、加硫ゴムはリサイクル出来ないことから、原料を塩化ビニル樹脂や加硫ゴム以外の原料へ置き換える動向が主流になっている。
【0003】
現在、塩化ビニル樹脂、加硫ゴムの代替として最も広く用いられているのが熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマーは、軽量であり、成形性、加工性に優れ、リサイクルし易く、燃焼時に有害なガスが発生しない点で優れた材料であるため、熱可塑性エラストマーの使用はさらに増加している。
【0004】
熱可塑性エラストマーの成形方法としては、押出成形、射出成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、インフレーション成形、スタンピングモールド成形、圧縮成形、ビーズ成形等、公知の樹脂加工方法が挙げられ、成形品もシート、板、パイプ、チューブ、円柱、楕円、ストランド、フィラメント、ネット、異形押出成形体、多層押出成形体、電線被覆などが知られている。
【0005】
近年では、さらに工程の簡略化や軽量化という観点から、発泡体の使用が検討されている。しかしながら、従来の熱可塑性エラストマーでは発泡性が充分でないため、要求されるソフト感が得られなかったり、発泡が均一でないため良好な外観が得られないという問題がある。
【0006】
一方、熱可塑性エラストマーの発泡方法の検討がなされており、通常の熱可塑性エラストマー、例えば特許文献1、特許文献2などに記載された方法では、オレフィン系プラスチック成分を、有機ペルオキシドの存在下で動的に熱処理するので、当該成分が分解し、得られる材料は溶融時の張力が劣るため、脱泡しやすく、発泡体が得られてもせいぜい1.9倍程度の発泡倍率で、しかも脱泡による肌荒れが顕著であるという問題がある。また、有機ペルオキシドの添加量を減らすと、発泡性は改善されるが、成形品の耐熱性が低下する問題がある。
【0007】
特許文献3〜4では、特定のメルトテンション以上のポリオレフィン系樹脂を含有する発泡体が提案されているが、発泡セルが均一でなく、充分な発泡性が得られていない。
特許文献5〜8については、シンジオタクティック構造を有するプラスチックやさらに高分子量成分を配合させることなどが提案されているが、発泡倍率が2倍以上でも、均一な発泡セルを有する発泡体は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭48−26838号公報
【特許文献2】特開昭54−112967号公報
【特許文献3】特開2007−284484号公報
【特許文献4】特許2008−088283号公報
【特許文献5】特開2007−261102号公報
【特許文献6】特開2007−269829号公報
【特許文献7】特開2007−269942号公報
【特許文献8】特開2007−269943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、発泡倍率が2倍以上であり、均一な発泡セルを有する発泡体が得られ、かつ、外観が良好な発泡成形体を得るに好適な熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来技術における上記問題を解決して、充分な発泡性が得られ、外観が良好な発泡成形体を得ることができる熱可塑性エラストマー組成物について鋭意研究し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明には以下の事項が含まれる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、エチレンから導かれる単位、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位および非共役ポリエンから導かれる単位を含み、部分的または完全に架橋されたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)15〜85重量%と、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、常温n-デカン可溶分が30重量%未満、およびゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1.80×105以下のポリプロピレン(B)5〜40重量%と、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、および常温n−デカン分が30〜90重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)5〜80重量%(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100重量%とする)とを含むことを特徴とする。
【0012】
前記熱可塑性エラストマー組成物は、さらに前記(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対して、エチレンから導かれる構成単位(a)と、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(b)とを、(a)/(b)=60/40〜95/5のモル比で含有する非架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(D)50〜140重量部と、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、常温n−デカン可溶分が30重量%未満、およびゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1.80×105を超える、ポリプロピレン(E)15〜85重量部と、ゴム用軟化剤(F)20〜130重量部と、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140℃未満か、または融解ピークが存在しないシンジオタクティックα−オレフィン系共重合体(G)2〜35重量部を含有し、該共重合体(G)が、プロピレンから導かれる構成単位(G−1)、エチレンから導かれる構成単位(G−2)、および炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(G−3)、必要に応じて、共役ポリエンまたは非共役ポリエンから導かれる構成単位(G−4)とを含み、(G−1)、(G−2)および(G−3)の合計100モル%中、(G−1)を30〜79モル%、(G−2)を1〜30モル%および(G−3)を10〜50モル%(ただし、(G−2)および(G−3)の合計を21〜70モル%とする)含み、(G−1)、(G−2)および(G−3)の合計100モル%に対して、(G−4)を0〜30モル%の量で含み、かつ、1,2,4−トリクロロベンゼン溶液中、テトラメチルシランを基準物質として共重合体(G)の13C−NMRを測定したときの約20.0〜21.0ppmに観測されるプロピレン単位のメチル基の吸収の総和が、約19.0〜22.0ppmに観測されるプロピレン単位のメチル基の吸収の総和の0.5以上であり、かつ、実質的にシンジオタクティック構造であることも好ましい。
【0013】
また、前記ポリプロピレン(E)が、190℃におけるメルトテンションが3.0gf以上であるポリプロピレン(e)を含み、ポリプロピレン(E)100重量部中、該ポリプロピレン(e)を30〜80重量部の量で含むことも好ましい。
【0014】
前記熱可塑性エラストマー組成物は、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1(g/10分)以上であることも好ましい。
【0015】
前記熱可塑性エラストマー組成物は、前記熱可塑性エラストマー組成物から得られた厚さ2mmの成形体を用いて、JIS K6253に準拠して測定したショアーA硬度が85以下であり、かつ、JIS K7196に準拠して測定した0.5mm針進入温度が80℃以上であることも好ましい。
【0016】
前記熱可塑性エラストマー組成物は、下記式(1)を満たすことも好ましい。
P×0.8≦−35×Ln(EB)+178≦P×1.2 (Lnは自然対数) (1)
ここで、式(1)中、EBは、温度190℃での測定される溶融伸び(最大引取速度)であり、Pは、温度190℃での切断時の最大溶融張力を示す。
【0017】
前記熱可塑性エラストマー組成物は、前記熱可塑性エラストマー組成物から得られた厚さ2mmの成形体を用いて、JIS K6262に準拠して測定した70℃での圧縮永久歪が、60%以上であることも好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、発泡性、柔軟性、成形性、耐熱性に優れ、該熱可塑性エラストマー組成物から得られた発泡成形体は、成型品の外観、耐熱性、柔軟性、発泡セルの細かさに非常に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<部分的または完全に架橋されたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)は、エチレンから導かれる単位、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位および非共役ポリエンから導かれる単位を含む共重合体ゴム(a)を部分的または完全に架橋してなる共重合体ゴム(A)(以下、「共重合体ゴム(A)」と略す場合がある。)である。
【0020】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、部分的または完全に架橋されたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)を用いることで、耐熱性を損なうことなく、柔軟性に優れる熱可塑性エラストマー組成物を得ることが出来る。
【0021】
炭素数3〜20のα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11-メチルドデセン-1および12-エチルテトラデセン-1などが挙げられる。なかでも、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセンおよび1-オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0022】
これらのα-オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
非共役ポリエンとしては、具体的には、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエンおよび4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエンおよびノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエンなどが挙げられる。なかでも、5-エチリデン-2-ノルボルネンおよび5-ビニル-2-ノルボルネンが好ましい。
【0023】
これらの非共役ポリエンは、単独で、または2種類以上組み合わせて用いられる。
本発明に係る共重合体ゴム(A)およびその基となる共重合体ゴム(a)は、エチレンから導かれる構成単位(a)と、炭素数3〜20のα-オレフィンから導かれる構成単位(b)とを、通常、40/60〜95/5、好ましくは60/40〜80/20、さらに好ましくは65/35〜75/25のモル比で含有している。上記組成であると、良好な柔軟性、架橋性を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることが出来るため、好ましい。
【0024】
また、本発明に係る共重合体ゴム(a)には、必要に応じて、他のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムをブレンドしてもよい。
他のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムを構成するα-オレフィンとしては、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムを構成するα-オレフィンと同じものが挙げられる。共重合体ゴムは、エチレンから導かれる構成単位を通常50モル%以上、好ましくは50〜90モル%、さらに好ましくは60〜85モル%の量で含み、炭素数3〜20のα-オレフィンから導かれる構成単位を通常50モル%以下、好ましくは50〜10モル%、さらに好ましくは40〜15モル%の量で含む。ただし、エチレンから導かれる単位およびα-オレフィンから導かれる単位の合計を100モル%とする。
【0025】
本発明に係る共重合体ゴム(A)およびその基となる共重合体ゴム(a)中に含まれる非共役ポリエンから導かれる単位の量は、ヨウ素価で、通常1〜50、好ましくは5〜40、さらに好ましくは10〜30である。ヨウ素価が上記範囲であると、良好な柔軟性、架橋性を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることが出来るため、好ましい。また、重量%では、エチレンから導かれる単位、炭素数3〜20のα-オレフィンから導かれる単位および非共役ポリエンから導かれる単位の合計100重量%中、非共役ポリエンから導かれる単位は通常2〜20重量%の量で含まれる。上記組成であると、良好な柔軟性、架橋性を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることが出来るため、好ましい。
【0026】
本発明に係る共重合体ゴム(A)の基となる共重合体ゴム(a)は、135℃、デカリン中で測定される極限粘度〔η〕が通常、1.0〜10.0dl/g、好ましくは1.5〜8.0dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲であると、引張り特性に優れる熱可塑性エラストマー組成物を得ることが出来るため、好ましい。
【0027】
本発明に係る共重合体ゴム(A)のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、通常10〜250、好ましくは30〜150である。
本発明に係る共重合体ゴム(A)は、上記の共重合体ゴム(a)、および必要に応じて、他のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムを部分的または完全に架橋したものである。
【0028】
本発明に係る共重合体ゴム(A)は、従来公知の方法により製造することができる。具体的には、架橋剤の存在下もしくは非存在下に、共重合体ゴム(a)、および必要に応じて、他のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムを動的に熱処理することよって製造することができる。
【0029】
架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物およびフェノール樹脂等のフェノール系加硫剤などが挙げられるが、有機過酸化物が好ましい。
架橋剤を用いる場合は、共重合体ゴム(a)100重量部に対して、0.02〜3重量部、好ましくは0.05〜1重量部となるような量で用いられる。架橋剤が上記配合量で用いられると、良好な架橋性を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることが出来るため、好ましい。
【0030】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドおよびt-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。なかでも、臭気性およびスコーチ安定性の点で、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよびn-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレートが好ましく、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが特に好ましい。
【0031】
有機過酸化物を用いて架橋するに際し、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N,4-ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジンおよびトリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミド等の架橋助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートおよびアリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマーならびにビニルブチラートおよびビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーを含有させることができる。このような化合物を含有させることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。
【0032】
上記のような架橋助剤または多官能性ビニルモノマーなどの化合物は、共重合体ゴム(a)100重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは0.3〜3重量部となるような量で用いられる。
【0033】
架橋は、非開放型の装置中で加熱・混練して行うことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。架橋する際の温度は、後述のポリプロピレン(B)の融点以上〜300℃の範囲であり、用いるポリプロピレン(B)の融点にもよるが、通常150℃〜290℃、好ましくは170℃〜270℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、加熱・混練時に加えられる剪断力は、剪断速度で10〜10,000sec-1、好ましくは100〜5,000sec-1の範囲である。
【0034】
また、有機過酸化物の分解を促進するために、トリエチルアミン、トリブチルアミン、2,4,6-トリ(ジメチルアミノ)フェノール等の三級アミンや、アルミニウム、コバルト、バナジウム、銅、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、マグネシウム、鉛、水銀等のナフテン酸塩などの分解促進剤を用いてもよい。
【0035】
架橋の方法としては、特に限定されないが、架橋剤の存在下もしくは非存在下に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(a)、および必要に応じて、他のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴムを動的に熱処理することよって行うことができる。なお、ここで「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう。
【0036】
本発明に係る共重合体ゴム(A)は、後述のゴム用軟化剤(F)が油展されていても良く、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(a)100重量部に対して200重量部まで油展が可能である。なお、油展に用いられるオイルとしては、後述のゴム用軟化剤(F)で説明する。
【0037】
<ポリプロピレン(B)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれるポリプロピレン(B)は、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、常温n−デカン可溶分が30重量%未満、およびゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1.80×105以下のポリプロピレン(B)である。
【0038】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、上記範囲のポリプロピレン(B)を使用することにより、成形に必要な流動性や耐熱性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0039】
本発明に係るポリプロピレン(B)は、プロピレン単独重合体またはプロピレンと、炭素数2〜20(プロピレンを除く)のα−オレフィンとのランダム共重合体もしくはブロック共重合体であり、通常、プロピレンから導かれる単位および炭素数2〜20(プロピレンを除く)のα−オレフィンから導かれる単位の合計100モル%中、プロピレンから導かれる単位を50モル%以上、好ましくは60モル%以上の量で含む。
【0040】
本発明に係るポリプロピレン(B)としては、具体的には、例えば、プロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体ならびにプロピレン・エチレンランダム共重合体およびプロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体などが挙げられる。中でも、得られる発泡成形体の耐熱性など考慮すると、プロピレン単独共重合体またはプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。
【0041】
本発明に係るポリプロピレン(B)は、上記特性を有する限り、アイソタクティックな構造を有するものであってもよいし、シンジオタクティックな構造を有するものであってもよい、また両者をブレンドしたものであってもよい。
【0042】
本発明に係るポリプロピレン(B)は、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、好ましくは145〜167℃、さらに好ましくは150〜165℃の範囲にある。DSCによる融点は、試料を200℃で5分間保持した後、降温速度10℃/minで20℃まで降温し、次いで、昇温速度10℃/minで再び180℃まで昇温して融解曲線を測定し、融解曲線のピ−ク温度を融点とした。ポリプロピレン(B)の融点が上記の範囲であると充分な耐熱性が得られるので好ましい。
【0043】
本発明に係るポリプロピレン(B)は、常温でのn−デカン可溶分が、30重量%未満であり、好ましくは28重量%未満、さらに好ましくは25重量%未満である。プロピレン(B)に含まれる常温でのn−デカン可溶分は、予め重量を測定したプロピレン(B)のペレットを細かく粉砕し、それを常温でn-デカンに溶解し、ろ過を行い、ろ液にアセトンを添加し、析出物をろ過し、真空乾燥したときの重量を測定し、ゴム成分量を求めた。
【0044】
本発明で用いられるポリプロピレン(B)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が、通常1.80×105以下であり、好ましくは1.75×105以下、より好ましくは1.70×105以下である。なお、下限は、特に限定されないが、0.50×105以上である。なお、Mwは、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)により、次に記載の条件で測定し、検量線は標準ポリスチレンを用いて作成した値である。種類:150−CV(Waters(株)社製)、カラム:Shodex AD−80M/S(昭和電工(株)社製)、測定温度:135℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、サンプル濃度:8mg/4ml、流速:1ml/min。
【0045】
本発明に係るポリプロピレン(B)は、通常、メルトフローレート(MFR:ASTM D 1238−65T、230℃、2.16kg荷重)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜800g/10分である。
本発明に係るポリプロピレン(B)は、その製造方法は、特に限定されず、種々公知の製造方法で製造される。
【0046】
<プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、および常温でのn−デカン可溶分が30〜90重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)である。
【0047】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、上記範囲のプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)を使用することにより、柔軟性、耐熱性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0048】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、常温でのn−デカンに不溶であるプロピレン単独重合体あるいはプロピレンと少量、具体的には10モル%以下の炭素数2〜20(プロピレンを除く)のα−オレフィンとの共重合体である結晶性のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と、常温でのn−デカンに可溶である非晶性あるいは低結晶性のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を含む共重合体である。
【0049】
かかるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、第一重合工程でプロピレン単独重合体あるいは結晶性のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を重合した後、第二重合工程で、常温でのn−デカンに可溶である非晶性あるいは低結晶性のプロピレンとα−オレフィンとを共重合し、その後、重合系で両者を混合することにより得られる、いわゆる、ブロック的に重合して得られる重合体(重合系ブロック共重合体)、
あるいはプロピレン単独重合体または結晶性のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と常温でのn−デカンに可溶である非晶性あるいは低結晶性のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とを溶融混練することにより得られる組成物(溶融混練系ブロック共重合体)、もしくは、重合系ブロック共重合体と溶融混練系ブロック共重合体とを併せて得られる重合体であってもよい。
【0050】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、通常、α−オレフィンから導かれる単位を10〜60モル%、好ましくは15〜55モル%の範囲で含む。
【0051】
プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)としては、耐熱性など考慮すると、プロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。
本発明に係るプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)を構成する、プロピレン単独重合体あるいは結晶性のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、アイソタクティックな構造を有するものであってもよいし、シンジオタクティックな構造を有するものであってもよい、また両者をブレンドしたものであってもよい。
【0052】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、好ましくは145〜167℃、さらに好ましくは150〜165℃の範囲にある。DSCによる融点は、試料を200℃で5分間保持した後、降温速度10℃/minで20℃まで降温し、次いで、昇温速度10℃/minで再び180℃まで昇温して融解曲線を測定し、融解曲線のピ−ク温度を融点とした。プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の融点が上記の範囲であると、充分な耐熱性が得られるので好ましい。
【0053】
本発明で用いられるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、通常、メルトフローレート(MFR:ASTM D 1238−65T、230℃、2.16kg荷重)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜80g/10分である。
【0054】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、常温でのn−デカン可溶分が30〜90重量%、好ましくは32〜88重量%、さらに好ましくは34〜86重量%である。プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)に含まれる常温でのn−デカン可溶分は、予め重量を測定したプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)のペレットを細かく粉砕し、それを常温のn−デカンに溶解し、ろ過を行い、ろ液にアセトンを添加し、析出物をろ過し、真空乾燥したときの重量を測定し、ゴム成分量を求めた。
【0055】
本発明に係るプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の製造方法は、特に限定されないが、一般的に「リアクターTPO」として知られているような、重合によりゴム成分を高含量共重合するのが、ゴム成分の分散性が良く、好ましい。また、押出機により、一般的なポリプロピレンにゴム成分を大量に分散混合させても良い。いずれも公知の製造方法で製造されるものである。
【0056】
<非架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(D)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に任意成分として含まれる非架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(D)は、エチレンから導かれる構成単位(a)と、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(b)とを、(a)/(b)=60/40〜95/5のモル比で含有する非架橋の重合体である。
【0057】
炭素数3〜20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11-メチルドデセン-1、12-エチルテトラデセン-1などが挙げられる。なかでも、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセンおよび1-オクテンが好ましく、1−ブテンおよび1−オクテンが好ましい。
【0058】
これらのα-オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
本発明に係る非架橋のエチレン・α-オレフィン共重合体(D)は、エチレンから導かれる構成単位(a)と、炭素数3〜20のα-オレフィンから導かれる構成単位(b)とを、60/40〜95/5、好ましくは65/35〜90/5のモル比で含有している。
【0059】
本発明に係る非架橋のエチレン・α-オレフィン共重合体(D)は、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238−65T、190℃、2.16kg荷重)が、通常0.1〜500g/10分、好ましくは0.3〜200g/10分であり、135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]は、通常0.2〜5.0dl/g、好ましくは0.5〜3.0dl/gである。
【0060】
本発明に係る非架橋のエチレン・α-オレフィン共重合体(D)は、必要に応じて、非共役ポリエンを含んでもよい。非共役ポリエンとしては、たとえば、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエンおよび4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエンおよびノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエンおよび4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエンなどが挙げられる。なかでも、5-エチリデン-2-ノルボルネンおよび5-ビニル-2-ノルボルネンが好ましい。
【0061】
これらの非共役ポリエンは単独で、または2種類以上組み合わせて用いられる。
なお、非共役ポリエンを含む場合、エチレンから導かれる構成単位、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位および非共役ポリエンから導かれる構成単位の合計100重量%中、非共役ポリエンから導かれる構成単位は、通常2〜20重量%の量で含まれる。
【0062】
また、非共役ポリエンから導かれる単位は、ヨウ素価で、通常1〜50、好ましくは5〜40、さらに好ましくは10〜30である。
本発明に係る非架橋のエチレン・α-オレフィン共重合体(D)が非共役ポリエンから導かれる構成単位を含む場合、エチレン・α-オレフィン共重合体(D)のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、通常1〜100、好ましくは3〜70である。
本発明に係る非架橋のエチレン・α-オレフィン共重合体(D)は、従来公知の方法により製造することができる。
【0063】
<ポリプロピレン(E)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に任意成分として含まれるポリプロピレン(E)は、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、常温でのn−デカン可溶分が30重量%未満、およびゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1.80×105を超えるポリプロピレンである。なお、測定方法は、上記と同じである。
【0064】
本発明に係るポリプロピレン(E)は、プロピレン単独重合体またはプロピレンと、少量、具体的には25モル%以下の炭素数2〜20(プロピレンを除く)のα−オレフィンとのランダム共重合体もしくはブロック共重合体であり、プロピレンから導かれる単位および炭素数2〜20(プロピレンを除く)のα−オレフィンから導かれる単位の合計100モル%中、プロピレンから導かれる単位を50モル%以上、好ましくは60モル%以上の量で含む。
【0065】
ポリプロピレン(E)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体ならびにプロピレン・エチレンランダム共重合体およびプロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体などが挙げられる。中でも、耐熱性など考慮すると、プロピレン単独共重合体またはプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。
【0066】
本発明に係るポリプロピレン(E)は、上記特性を有する限り、アイソタクティックな構造を有するものであってもよいし、シンジオタクティックな構造を有するものであってもよい、また両者をブレンドしたものであってもよい。
【0067】
本発明に係るポリプロピレン(E)は、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、好ましくは145〜167℃、さらに好ましくは150〜165℃の範囲にある。DSCによる融点は、試料を200℃で5分間保持した後、降温速度20℃/minで−20℃まで降温し、次いで、昇温速度20℃/minで再び180℃まで昇温して融解曲線を測定し、融解曲線のピーク温度を融点とした。ポリプロピレン(E)の融点が、上記の範囲であると充分な耐熱性が得られるので好ましい。
【0068】
本発明に係るポリプロピレン(E)は、常温でのn−デカン可溶分が30重量%未満であり、好ましくは28重量%未満、さらに好ましくは25重量%未満である。
また、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる(標準サンプル)換算の重量平均分子量(Mw)が、1.80×105を超える、好ましくは1.85×105以上、さらに好ましくは1.90×105以上である。なお、Mwの上限は、特に限定されないが、1.00×106以下である。
【0069】
本発明に係るポリプロピレン(E)は、通常、メルトフローレート(MFR:ASTM D 1238−65T、230℃、2.16kg荷重)が、0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜70g/10分である。
【0070】
本発明に係るポリプロピレン(E)の製造方法は、特に限定されないが、公知の製造方法で製造されるものである。
本発明に係るポリプロピレン(E)は、190℃におけるメルトテンション(MT)の値が3.0gf以上、好ましくは3.5gf以上、さらに好ましくは4.0gf以上であるポリプロピレン(e)を含有すると、より発泡性および耐熱性に優れる熱可塑性エラストマー組成物を得るため、好ましい。
【0071】
上記メルトテンションは、キャピラリーレオメーターを用いて、押出温度190℃、押出速度10mm/min、押出ノズル径2.095mm、ノズル長さ8mm、引取り速度4m/minで測定される値である。
【0072】
本発明に係るポリプロピレン(E)に含まれてもよいポリプロピレン(e)としては、上記特性を有する限り、ポリプロピレン(E)と同じものが挙げられる。
本発明に係るポリプロピレン(e)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が、通常、5〜20、好ましくは6〜18、さらに好ましくは7〜15である。なお、分子量分布の測定は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)により、次に記載の条件で測定し、検量線は標準ポリスチレンを用いて作成した値である。種類:150−CV(Waters(株)社製)、カラム:Shodex AD−80M/S(昭和電工(株)社製)、測定温度:135℃、溶媒:オルトジクロロベンゼン、サンプル濃度:8mg/4ml、流速:1ml/min。
【0073】
本発明に係るポリプロピレン(e)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が、通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.05〜50g/10分である。
【0074】
また、本発明に係るポリプロピレン(e)は、例えば、高分子量成分を一部含んだ広分子量分布タイプのポリプロピレン、電子線架橋などによる長鎖分岐成分を有するポリプロピレン、一部架橋したポリプロピレンを含んでいてもよい。これらのうち、成形品の発泡性、外観およびリサイクル性を考慮すると、高分子量成分を一部含んだ広分子量分布タイプのポリプロピレンをポリプロピレン(e)に含むことが好ましい。なお、この高分子量成分は、135℃、デカリン中で測定される極限粘度[η]が、通常、3〜15dl/g、好ましくは4〜14dl/g、さらに好ましくは5〜13dl/gである。また、高分子量成分は、ポリプロピレン(e)中に、通常1〜49重量%、好ましくは3〜45重量%、さらに好ましくは5〜40重量%の量で含まれることが好ましい。
本発明で用いられるポリプロピレン(E)および(e)は、その製造方法に限定されず、種々公知の方法で製造される。
【0075】
<ゴム用軟化剤(F)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、任意成分としてゴム用軟化剤(F)を含んでいてもよい。
【0076】
本発明に係るゴム用軟化剤(F)は、通常ゴムに用いられる軟化剤である。具体的には、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルトおよびワセリン等の石油系物質;低分子量エチレン・α−オレフィンランダム共重合体等の合成油;コールタールおよびコールタールピッチ等のコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油およびヤシ油等の脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウムおよびステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩;石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクティックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエンおよび液状チオコールなどが挙げられる。なかでも、パラフィン系のプロセスオイルおよび低分子量エチレン・α−オレフィンランダム共重合体が特に好ましく、さらに、揮発しやすい低分子量成分の含有量が少ない高粘度タイプのパラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。ここで「高粘度タイプ」とは、40℃における動粘度が100〜10000センチストークスの範囲にあるものをいう。
【0077】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に、ゴム用軟化剤(F)を添加する場合は、熱可塑性エラストマー組成物の製造時に添加してもよいし、予め、共重合体ゴム(A)、共重合体ゴム(A)の基となるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(a)にゴム用軟化剤(F)を添加して用いてもよいが、それに限定はされない。
【0078】
<シンジオタクティックα−オレフィン系共重合体(G)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれる任意成分であるシンジオタクティックα−オレフィン系共重合体(G)は、示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140℃未満か、または融解ピークが存在せず、プロピレンから導かれる構成単位(G−1)、エチレンから導かれる構成単位(G−2)、および炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(G−3)、必要に応じて、共役ポリエンまたは非共役ポリエンから導かれる構成単位(G−4)とを含み、
(G−1)、(G−2)および(G−3)の合計100モル%中、
(G−1)を30〜79モル%、(G−2)を1〜30モル%および(G−3)を10〜50モル%(ただし、(G−2)および(G−3)の合計を21〜70モル%とする)含み、
(G−1)、(G−2)および(G−3)の合計100モル%に対して、
(G−4)を0〜30モル%の量で含み、かつ、
1,2,4−トリクロロベンゼン溶液中、テトラメチルシランを基準物質として共重合体(G)の13C−NMRを測定したときの約20.0〜21.0ppmに観測されるプロピレン単位のメチル基の吸収の総和が、約19.0〜22.0ppmに観測されるプロピレン単位のメチル基の吸収の総和の0.5以上であり、かつ、実質的にシンジオタクティック構造である共重合体である。
【0079】
本発明においてシンジオタクティックα−オレフィン系共重合体(G)が、「実質的にシンジオタクティック構造である」とは、シンジオタクティックα−オレフィン系共重合体(G)中のプロピレンメチル基の吸収の総和が、上記の範囲であることを意味する。本発明におけるシンジオタクティックα−オレフィン系共重合体(G)のシンジオタクティック構造は、以下のようにして測定される。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして、日本電子製GX-500型NMR測定装置などのNMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
【0080】
本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)は、示差走査熱量分析(DSC)で測定したとき、融点が140℃未満か、または融解ピークが存在しない。DSCによる測定は、試料を200℃で5分間保持した後、降温速度10℃/minで20℃まで降温し、次いで、昇温速度10℃/minで再び180℃まで昇温して行う。
【0081】
本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)は、プロピレンから導かれる構成単位(G−1)、エチレンから導かれる構成単位(G−2)および炭素数4〜20のα-オレフィンから導かれる構成単位(G−3)の合計100モル%中、(G−1)を30〜79モル%、(G−2)を1〜30モル%および(G−3)を10〜50モル%(ただし、(G−2)および(G−3)の合計を21〜70モル%とする)、好ましくは、(G−1)を35〜75モル%、(G−2)を3〜25モル%および(G−3)を20〜45モル%(ただし、(G−2)および(G−3)の合計を25〜65モル%とする)、さらに好ましくは、(G−1)を35〜65モル%、(G−2)を3〜25モル%および(G−3)を20〜45モル%(ただし、(G−2)および(G−3)の合計を35〜65モル%とする)、特に好ましくは、(G−1)を40〜65モル%、(G−2)を5〜25モル%および(G−3)を20〜40モル%(ただし、(G−2)および(G−3)の合計を35〜60モル%とする)含む。
【0082】
炭素数4〜20のα-オレフィンとしては、炭素数が4〜20、好ましくは4〜12の範囲にあれば特に限定されず、直鎖状であっても、分岐を有していてもよい。
α-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプタン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1―ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン等が挙げられ、1―ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンが好ましく、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンがさらに好ましく、1-ブテンが特に好ましい。
【0083】
これらの炭素数4〜20のα-オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
たとえば、炭素数4〜20のα-オレフィンを2種組み合わせて用いる場合、炭素数4〜20のα-オレフィンから導かれる構成単位(イ)と、α-オレフィン(イ)以外の炭素数4〜20のα-オレフィンから導かれる構成単位(ロ)の合計100モル%中、(イ)を50〜99モル%、(ロ)を1〜50モル%)で用いることができる。
【0084】
本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)は、135℃、デカリン中で測定される極限粘度〔η〕が、通常、0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gであることが好ましい。
【0085】
本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn;ポリスチレン換算)が、通常、4.0以下、好ましくは1.5〜3.0であることが好ましい。なお、測定方法は、上記と同じである。
【0086】
本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)は、必要に応じて、共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種以上のポリエンを含んでいてもよい。この場合、共役ポリエンおよび非共役ポリエンから導かれる構成単位は、プロピレンから導かれる構成単位(G−1)、エチレンから導かれる構成単位(G−2)および炭素数4〜20のα-オレフィンから導かれる構成単位(G−3)の合計100モル%に対して、合計で30モル%以下、好ましくは25モル%以下である。
【0087】
本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)は、共重合体中に非共役ポリエンから導かれる構成単位を含むと、得られる発泡成形体は、耐摩耗性に優れるため好ましい。
【0088】
共役ポリエンとしては、たとえば、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-2,4-ペンタジエン、イソプレン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-プロピル-1,3-ブタジエン、2-ブチル-1,3-ブタジエン、2-ペンチル-1,3-ブタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、2-ヘプチル-1,3- ブタジエン、2-オクチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエンなどの共役ジエン;1,3,5-ヘキサトリエンなどの共役トリエンなどが挙げられる。これらのうちでは、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが共重合性に優れる点で特に好ましい。
【0089】
非共役ポリエンとしては、たとえば、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-エチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘプタジエン、5-エチル-1,4-ヘプタジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、5-エチル-1,5-ヘプタジエン、4-メチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,4-オクタジエン、4-エチル-1,4-オクタジエン、5-エチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,5-オクタジエン、5-エチル-1,5-オクタジエン、6-エチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、6-エチル-1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,4-ノナジエン、4-エチル-1,4-ノナジエン、5-エチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,5-ノナジエン、5-エチル-1,5-ノナジエン、6-エチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,6-ノナジエン、6-エチル-1,6-ノナジエン、7-エチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,7-ノナジエン、8-メチル-1,7-ノナジエン、7-エチル-1,7-ノナジエン、5-メチル-1,4-デカジエン、5-エチル-1,4-デカジエン、5-メチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,5-デカジエン、5-エチル-1,5-デカジエン、6-エチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,6-デカジエン、6-エチル-1,6-デカジエン、7-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,7-デカジエン、7-エチル-1,7-デカジエン、8-エチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、8-エチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-ウンデカジエンなどの非共役ジエン;6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、6,9-ジメチル-1,5,8-デカトリエン、6,8,9-トリメチル-1,5,8-デカトリエン、6-エチル-10-メチル-1,5,9-ウンデカトリエン、4-エチリデン-1,6-オクタジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、7-エチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-6-プロピル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-1,7-ノナジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどの非共役トリエンなどが挙げられる。これらのなかでは、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)が好ましい。
【0090】
共役ポリエンおよび非共役ポリエンは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)は、スチレンなどの芳香族ビニル化合物から導かれる構成単位、二重結合を2つ以上有する上記ポリエン系不飽和化合物から導かれる構成単位、アルコール、カルボン酸、アミンおよびこれら誘導体等から導かれる構成単位等が含まれていてもよい。
【0091】
(シンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)の製造方法)
本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)は、以下に示すメタロセン系触媒の存在下に、前記プロピレンとエチレンとα-オレフィンを共重合させて得ることができる。このようなメタロセン系触媒としては、
(x)下記一般式(1)で表される遷移金属化合物(以下「遷移金属化合物(x)」ともいう。)と、
(y)(y-1)遷移金属化合物(x)中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物(以下「イオン化イオン性化合物(y-1)」という。)、
(y-2)有機アルミニウムオキシ化合物および
(y-3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物とからなる少なくとも1つの触媒系が挙げられる。
【0092】
【化1】

[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、Cp1およびCp2はMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、X1およびX2は、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]
上記一般式(1)中、Cp1およびCp2は異なる基であることが好ましく、より好ましくはCp1およびCp2のうちのいずれか一方の基がシクロペンタジエニル基またはその誘導体基であり、もう一方の基がフルオレニル基またはその誘導体基である。
【0093】
本発明で用いられるシンジオタクティックα-オレフィン共重合体(G)の製造には、上記のメタロセン系触媒に代えて、従来、公知の固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒や、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いてもよい。
【0094】
本発明では、上記のようなメタロセン系触媒の存在下に、エチレン、プロピレンおよびα-オレフィンを通常液相で共重合させることが好ましい。この際、重合溶媒としては、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、プロピレンを溶媒として用いてもよい。共重合はバッチ法または連続法のいずれの方法でも行うことができる。
【0095】
例えば、バッチ法でメタロセン系触媒を用いて共重合を行う場合には、重合系内の遷移金属化合物(x)は、重合容積1リットル当たり、通常0.00005〜1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.5ミリモルとなるような量で用いられる。
【0096】
イオン化イオン性化合物(y-1)は、遷移金属化合物(x)に対するイオン化イオン性化合物のモル比((y-1)/(x))で、通常0.5〜20、好ましくは1〜10となるような量で用いられる。
【0097】
有機アルミニウムオキシ化合物(y-2)は、遷移金属化合物(x)中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、通常1〜10000、好ましくは10〜5000となるような量で用いられる。
【0098】
有機アルミニウム化合物(y-3)は、重合容積1リットル当たり、通常約0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
共重合反応は、温度が通常-20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲で、圧力が通常0を超えて〜80kg/cm2、好ましくは0を超えて〜50kg/cm2の範囲の条件下に行なわれる。また、反応時間(重合が連続法で行われる場合には平均滞留時間)は、触媒濃度および重合温度などの条件によっても異なるが、通常5分間〜3時間、好ましくは10分間〜1.5時間である。
【0099】
プロピレン、エチレンおよびα-オレフィン、必要に応じて、共役ポリエン、非共役ポリエンなどは、上述のような特定組成のシンジオタクティックα-オレフィン共重合体(G)が得られるような量でそれぞれ重合系に供給される。なお、共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。上記のようにしてプロピレン、エチレンおよびα-オレフィンなどを共重合させると、シンジオタクティックα-オレフィン共重合体(G)は通常重合溶媒、未反応のプロピレン、エチレンおよびα-オレフィンを含む重合液として得られる。この重合液は常法により処理されることで、本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)が得られる。
【0100】
<熱可塑性エラストマー組成物>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記共重合体ゴム(A)を15〜85重量%、好ましくは17〜83重量%、さらに好ましくは19〜81重量%、前記ポリプロピレン(B)を5〜40重量%、好ましくは6〜39重量%、さらに好ましくは7〜38重量%および前記プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)を5〜80重量%、好ましくは7〜78重量%、さらに好ましくは9〜76重量%〔ただし、前記共重合体ゴム(A)、ポリプロピレン(B)およびプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の合計を100重量%とする。〕含む組成物である。
【0101】
このように特定の組成を有する本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、発泡性、柔軟性、成形性、耐熱性に優れる。そのため、該熱可塑性エラストマーから得られた発泡成形体は、成型品の外観、耐熱性、柔軟性に非常に優れ、特に、自動車用インストゥルメントパネルの材料として有用である。
【0102】
本発明に係る非架橋のエチレン・α-オレフィン共重合体(D)は、前記共重合体ゴム(A)、ポリプロピレン(B)およびプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の合計100重量部に対して、50〜140重量部、好ましくは52〜138重量部、さらに好ましくは54〜136重量部となるような量で用いられる。エチレン・α-オレフィン共重合体(D)が、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれると、より柔軟性、耐熱性が得られる点で好ましい。
【0103】
本発明に係るポリプロピレン(E)は、前記共重合体ゴム(A)、ポリプロピレン(B)およびプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の合計100重量部に対して、15〜80重量部、好ましくは17〜78重量部、さらに好ましくは19〜76重量部となるような量で用いられる。ポリプロピレン(E)が、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれると、より成形性、耐熱性が得られる点で好ましい。
【0104】
本発明に係るポリプロピレン(e)は、ポリプロピレン(E)100重量部に対して、通常30〜80重量部、好ましくは、32〜78重量部、さらに好ましくは34〜76重量部となるような量で用いられる。
【0105】
本発明で用いられるゴム用軟化剤(F)は、前記共重合体ゴム(A)、ポリプロピレン(B)およびプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の合計100重量部に対して、20〜130重量部、好ましくは22〜128重量部、さらに好ましくは24〜126重量部となるような量で用いられる。ゴム用軟化剤(F)が、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれると、より発泡性、柔軟性が得られる点で好ましい。
【0106】
本発明に係るシンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)は、前記共重合体ゴム(A)、ポリプロピレン(B)およびプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の合計100重量部に対して、2〜35重量部、好ましくは4〜33重量部、さらに好ましくは6〜31重量部となるような量で用いられる。
【0107】
シンジオタクティックα-オレフィン系共重合体(G)が、本発明の熱可塑性エラストマーに用いられると、熱可塑性エラストマー組成物中での相溶性が良好なものとなり、また、得られる発泡成形体は、柔軟性、ゴム弾性、耐摩耗性を十分に発揮する傾向にある。
【0108】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記共重合体ゴム(A)、ポリプロピレン(B)およびプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)100重量部に対して、前記所望の量で、非架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(D)、ポリプロピレン(E)、ゴム用軟化剤(F)およびシンジオタクティックα-オレフィン共重合体(G)が含まれると、特に発泡セルの細かさに優れる。そのため、該熱可塑性エラストマーから得られた発泡成形体は、特に、発泡性、柔軟性、成形性、耐熱性に優れるため、好ましい。
【0109】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が、通常0.1(g/10分)以上である。なお、MFRの上限は、特に限定されないが、通常100(g/10分)以下である。
【0110】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物から得られた成形体を用いて、JIS K6253に準拠して測定したショアーA硬度は、通常85以下であり、かつ、JIS K7196に準拠して測定した0.5mm針進入温度(℃)は、通常80℃以上である。なお、ショアーA硬度の下限は、特に限定されないが、通常20以上であり、針進入温度の上限は、特に限定されないが、通常150℃以下である。また、ショア−A硬度は、JIS K6253に準拠して、熱可塑性エラストマー組成物を用いて、プレス成形機により溶融温度190℃にて10分加熱し、冷却温度20℃にて5分冷却して、厚さ2mmの試験片(シート)を作製し、A型測定器を用い、該試験片を6枚重ねて、押針接触後、直ちに目盛りを読み取った値である。針進入温度は、JIS K7196に準拠し、熱可塑性エラストマー組成物を用いて、プレス成形機により溶融温度190℃にて10分加熱し、冷却温度20℃にて5分冷却して、厚さ2mmの試験片を作成し、該試験片を用いて、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kg/cm2の圧力をかけ、TMA曲線より、0.5mm深さの針進入温度(℃)を求めた値である。
【0111】
本発明において、熱可塑性エラストマー組成物のMFR、熱可塑性エラストマー組成物から得られた成形体のショア−A硬度および針進入温度が、上記範囲であると、成形性、柔軟性、耐熱性が向上するため、好ましい。
【0112】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、下記式(1)を満たすと、発泡性が向上するため好ましい。
P×0.8≦−35×Ln(EB)+178≦P×1.2 (Lnは自然対数) (1)
ここで、式(1)中、EBは、温度190℃での測定される溶融伸び(最大引取速度)(m/min)であり、Pは、温度190℃での切断時の最大溶融張力(g)を示す。
【0113】
なお、上記EB、Pは、キャピラリーレオメーターを用いて、押出温度190℃、押出速度10mm/min、押出ノズル径2.095mm、ノズル長さ8mmにて、引取り速度を変化させて測定されるときの溶融伸び(最大引取速度)および最大溶融張力の値である。
【0114】
上記式は、鋭意検討の結果得られた経験式である。好ましくは、
P×0.82≦−35×Ln(EB)+178≦P×1.19 (Lnは自然対数)
さらに好ましくは
P×0.84≦−35×Ln(EB)+178≦P×1.18 (Lnは自然対数)
である。
【0115】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、190℃におけるメルトテンション(MT)の値は、通常6.0gf以上、好ましくは6.5gf以上、さらに好ましくは7.0gf以上である。なお、メルトテンションの測定は、キャピラリーレオメーターを用いて、押出温度190℃、押出速度10mm/min、押出ノズル径2.095mm、ノズル長さ8mm、引取り速度4m/minにて測定される。
【0116】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、110℃での半結晶化時間が、通常5〜200秒、好ましくは10〜180秒、さらに好ましくは15〜160秒であり、120℃での半結晶化時間が、通常10〜1000秒、好ましくは15〜900秒、さらに好ましくは20〜800秒である。半結晶化時間が、上記範囲にあると、良好な成形性を得ることができるため、好ましい。なお、半結晶化時間は、熱可塑性エラストマー組成物を用いて、プレス成形機により試験片(シート)を作製し、示差走査熱量計(DSC)により、温度200℃にて5分間アニーリングし、320℃/minの降温速度320℃/minで110℃、120℃での半結晶化時間の測定を行った値である。
【0117】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、引張り強度が、通常1.0〜20.0MPa、好ましくは1.5〜17.0MPa、さらに好ましくは2.0〜15.0MPaである。また、伸びは、試験片に対して、通常50〜1500%、好ましくは70〜1300%、さらに好ましくは100〜1000%である。引張り強度および伸びは、JIS K6251に準拠して、熱可塑性エラストマー組成物を用いて、プレス成形機により190℃の温度で10分溶融後、20℃の温度にて5分冷却し、厚さ2mmの試験片(シート)を作製し、JIS3号ダンベルにて、測定した値である。
【0118】
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、該組成物を成形してなる成形体を用いて、JIS K6262に準拠して測定した、70℃での圧縮永久歪が、通常60%以上、好ましくは62%、さらに好ましくは64%以上である。尚、上限は、特に限定されないが、通常95%である。また、圧縮永久歪みは、JIS K6262に準拠して、熱可塑性エラストマー組成物を用いて、プレス成形機により190℃の温度で10分溶融後、20℃の温度にて5分冷却し、厚さ2mmの試験片(シート)を作製し、スペーサーにより25%圧縮、70℃×24時間熱処理を行い、処理後23℃恒温室で30分放置した後、厚さを測定した値である。70℃での圧縮永久歪が60%以上であると、良好な発泡性を得ることができるため、好ましい。
【0119】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて発泡剤(J)を添加してなり、発泡剤(J)を用いて、発泡成形体を得ることができる。
発泡剤(J)としては、無機系または有機系の熱分解型発泡剤(化学発泡剤)、二酸化炭素、窒素ならびに二酸化炭素および窒素の混合物が挙げられる。
【0120】
無機系の熱分解型発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機炭酸塩、亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩を挙げることができる。
【0121】
有機系の熱分解型発泡剤としては、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレ−ト等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0122】
二酸化炭素や窒素を使用する場合は、熱可塑性エラストマー組成物を、樹脂可塑化シリンダー内で、100〜300℃で溶融し、熱可塑性エラストマー組成物と二酸化炭素や窒素が、相溶状態にある溶融発泡性熱可塑性エラストマー組成物を形成する。
【0123】
発泡剤(J)は、熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して、通常0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いられる。
また、必要に応じて発泡助剤を加えることもできる。発泡助剤の添加量は、熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜5重量部である。
【0124】
発泡助剤としては、亜鉛、カルシウム、鉛、鉄およびバリウム等の金属化合物、ステアリン酸等の高級脂肪酸およびその金属塩ならびにタルク、硫酸バリウムおよびシリカ等の微粒無機粒子等が挙げられる。具体的には、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シクロヘキサン1,2−ジカルボン酸、ショウノウ酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸およびニトリロ酸等の多価カルボン酸と、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムアルミニウムおよび炭酸水素カリウム等の無機炭酸化合物との混合物や、これらの反応により生じる中間体、例えば、クエン酸二水素ナトリウム、シュウ酸カリウム等のポリカルボン酸の塩が挙げられる。
【0125】
発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、発泡核の形成、気泡の均一化などの働きを示し、一般に使用することが望ましい。特に、原料ペレット時の押出温度、または、発泡体の溶融温度程度付近で分解する化合物は、発泡セル径を細かく、かつ、均一に生成させる効果がある。
【0126】
このうち、無機系または有機系の熱分解型発泡剤と、発泡助剤として多価カルボン酸と炭酸水素塩との混合物、具体的には、クエン酸と炭酸水素ナトリウムとの混合物またはその反応中間体であるクエン酸二ナトリウムを用いて、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を発泡させることが特に好ましい。
【0127】
これらの発泡剤または発泡助剤は、発泡成形体を射出成形する前にドライブレンドして、射出成形するときに分解するようにしてもよいし、予め、ペレットに溶融ブレンドしてから添加してもよい。
【0128】
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、従来公知のフェノール系などの酸化防止剤、無機充填剤、耐熱安定剤、老化防止剤、ジアゾ系などの耐候安定剤、帯電防止剤、結晶核剤および滑材などの添加剤を添加することができる。なかでも、滑材は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の成形性を向上させる効果がある。
【0129】
上記滑材としては、高級脂肪酸アミド、金属セッケン、ワックス、シリコーンオイル、フッ素系ポリマー等が挙げられる。なかでも、高級脂肪酸アミド、シリコーンオイル、フッ素系ポリマーが好ましい。
【0130】
高級脂肪酸アミドとしては、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エライジン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等のビス脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0131】
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイルなどのアルキルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン、変性シリコーン油などが挙げられる。
【0132】
フッ素系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド共重合物などが挙げられる。
上記無機充填剤としては、具体的には、カーボンブラック、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカーなどが挙げられる。
【0133】
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記共重合体ゴム(A)、前記ポリプロピレン(B)および前記プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)に、必要に応じて、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(D)、前記ポリプロピレン(E)、前記ゴム用軟化剤(F)および前記シンジオタクティックα−オレフィン系共重合体(G)等を、前記記載の量で、溶融混練など、従来公知の方法で混合することにより製造することができる。
【0134】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記共重合体ゴム(A)の基となる共重合体ゴム(a)、ポリプロピレン(B)、必要に応じて、架橋剤、ゴム用軟化剤(F)および各種添加剤などを、単軸あるいは二軸押出機などを用いて、動的に熱処理して、予め、前記共重合体ゴム(A)、ポリプロピレン(B)を含む組成物を製造しておき、その後、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)、必要に応じて、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)、ポリプロピレン(E)、ゴム用軟化剤(F)、シンジオタクティックα−オレフィン系共重合体(G)および各種添加剤等を溶融混練することで、製造することが好ましい。
【0135】
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造する際には、ゴム用軟化剤(F)を押出機内へ直接添加しても良い。
また、混練装置としては、ミキシングロールおよびインテンシブミキサー(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましい。
【0136】
<発泡成形体およびその製造方法>
本発明の発泡成形体は、本発明の前記熱可塑性エラストマー組成物を、種々公知の方法で発泡してなる成形体である。本発明では、本発明の前記熱可塑性エラストマー組成物を用いることで、発泡倍率が2倍以上であり、均一な発泡セルを有し、かつ外観が良好な発泡成形体を得ることができる。
【0137】
本発明の発泡成形体を製造する方法としては、特に制限はなく、公知の樹脂加工方法に使用される成形機を用いて、押出成形、プレス成形、射出成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、インフレーション成形、スタンピングモールド成形、圧縮成形およびビーズ成形等により製造することができる。
【0138】
製造方法の例としては、発泡剤として、超臨界状態の二酸化炭素を用いて、押出成形方法により発泡成形体を製造する方法がある。すなわち、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を押出機で溶融し、二酸化炭素を臨界圧力(7.4〜40MPa)の範囲内で、二酸化炭素の臨界温度(31℃)以上に昇温して、超臨界二酸化炭素としてから、押出機中の溶融した該熱可塑性エラストマー組成物に混合する。次いで、超臨界二酸化炭素が混合された溶融熱可塑性エラストマー組成物を、最適発泡温度に設定した押出機先端部に接続したダイへと移送し、ダイから大気中に押出し急激に圧力を低下させて、二酸化炭素をガス化し発泡させ、後続の冷却装置で冷却固化し,目的の発泡成形体を得る。なお、押出時の熱可塑性エラストマー組成物の温度は、110〜250℃の範囲にすることが好ましい。
【0139】
また、その他の例としては、プレス成形方法により発泡成形体を製造する方法がある。すなわち、前記化学発泡剤と熱可塑性エラストマー組成物のペレットとをプレス成形機の加熱した金型内に装入し、型圧をかけながら、もしくは型圧をかけることなく、熱可塑性エラストマー組成物を溶融させた後、発泡させて発泡成形体を成形する。このとき、金型の温度は110〜250℃の範囲にするのが好ましい。
【0140】
さらに、射出成形方法により本発明の発泡成形体を製造する方法を例に挙げる。すなわち、熱可塑性エラストマー組成物を射出成形機で加熱溶融した後、ノズル先端部で発泡させるように金型内に射出し、発泡成形体を成形する方法がある。射出時の樹脂温度は110〜250℃の範囲が好ましい。
【0141】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、流動性が高いため、射出成形方法を用いた発泡成形体の成形に適している。さらに、射出成形用金型が型閉状態のキャビティ内に熱可塑性エラストマー組成物を射出して、射出が完了した後、発泡ガスによる樹脂の膨脹で金型壁面との接触を維持しながら移動型を移動させ、移動型を予め設定した基準肉厚位置で停止させて成形する。該金型の冷却が完了した後、移動型を後退させて製品を取り出すことにより得られる、コアバックによる射出発泡成形に適している。
【0142】
<複合発泡成形体>
本発明の複合発泡成形体は、たとえば、以下の実施形態1〜3に従って、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる発泡成形体と、ポリオレフィン系樹脂基材とを積層してなる。
【0143】
〔実施形態1〕
成形方法:カレンダー成形またはTダイからの押出発泡成形
積層方法:ポリオレフィン系基材層からなるシートを発泡成形した後に熱可塑性エラストマー組成物からなる表面層を基材層に積層する逐次法、または、Tダイ押出成形の場合は同時多層発泡押出成形を行う。
【0144】
〔実施形態2〕
成形方法:多層押出発泡成形
積層方法:ポリオレフィン系基材層と熱可塑性エラストマー組成物からなる表面層の同時多層押出発泡成形を行う。
【0145】
〔実施形態3〕
成形方法:逐次または同時射出発泡成形
積層方法:ポリオレフィン系基材層を射出発泡した後に、表面層である熱可塑性エラストマー組成物を射出し、金型内で積層する逐次射出発泡成形、または、いわゆるサンドウィッチ成形により基材層と表面層を同時に射出し、積層部品を発泡成形する同時法を行う。
【0146】
本発明の複合発泡成形体は、良好な成形品外観と柔軟性を有するため、特に自動車用インストゥルメントパネルに使用することが好ましい。
その場合、以下の成形方法を行うことが好ましい。
【0147】
二色成形
二色成形法ではポリオレフィン系樹脂基材を成形した後、続いて熱可塑性エラストマー組成物の射出発泡成形を行うことにより、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる発泡成形体にポリオレフィン系樹脂基材が密着した複合発泡成形体が得られる。
【0148】
インサート成形法
インサート成形法ではポリオレフィン系樹脂基材を予め成形し、これを射出成形金型内に設置した後、熱可塑性エラストマー組成物の射出発泡成形を行うことにより射出発泡成形体にポリオレフィン系樹脂基材が密着した複合発泡成形体が得られる。
【0149】
ポリオレフィン系樹脂基材としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂が挙げられるが、特にポリプロピレン系樹脂を用いることにより良好な密着性が得られる。
【0150】
<用途>
本発明の熱可塑性エラストマー発泡体の用途としては、インストゥメントパネル表皮、ドア表皮、インストゥメントパネル表皮やドア表皮の裏打ち発泡体、ドアトリム、ピラー、コンソールボックス、ステアリングホイール、ギアレバー、エアーボックス、ダッシュボード、取り替え式座席シート、デフガーニッシュ、カールトップガーニッシュ、天井材、ウェザーストリップスポンジ、トランクルームの内張り、エンジンルームの内張り、パンバー、フェンダー、ボンネットの表層、サイドシールド、クッション等の自動車部品、二輪部品としては、ハンドルの握り、ヘルメットの内側、レーシングスーツの表層等、OA機器関連としては、マウス、キーボード、OAハウジング、マウスパッド、デスクマット、ヘッドホーン、電卓、電話の受話器、PHS、その他の携帯電話等の筐体等が、雑貨としては。システム手帳、財布、ノート、ファイル、バッグ、便座、ペンシル、ボールペン、万年筆、カーペット、包丁の柄、植木鉢のグリップ、草履、下駄、スリッパ、靴底、サンダル等の履き物、電線被覆、コネクター、キャップ、プラグなどの電気部品、止水板、シールスポンジ、騒音防止等の土木資材、ゴルフクラブのグリップ、水泳用フィン、水中眼鏡などのレジャー用品、ガスケット、防水布、ガーデンホース、ベルト、工業用パッキン等の工業用雑品等が挙げられ、これらが容易に製造可能である。
【0151】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0152】
実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のメルトフローレート、硬度、針侵入温度は、次の方法に従って行った。
〔1〕メルトフローレート(MFR)
ASTM D 1238に準拠して230℃、2.16kg荷重で測定した。
【0153】
〔2〕ショアーA硬度
JIS K6253に準拠して、プレス成形機により溶融温度190℃にて10分加熱し、冷却温度20℃にて5分冷却して厚さ2mmの試験片(シート)を作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
【0154】
〔3〕引張り強度、伸び
JIS K6251に準拠して、プレス成形機により溶融温度190℃にて10分加熱し、冷却温度20℃にて5分冷却して厚さ2mmの試験片(シート)を作製し、JIS3号ダンベルにて、測定した。
【0155】
〔4〕シート圧縮永久歪
JIS K6262に準拠して、プレス成形機により溶融温度190℃にて10分加熱し、冷却温度20℃にて5分冷却して厚さ2mmの試験片(シート)を作製し、スペーサーにより25%圧縮、70℃×24時間熱処理を行い、処理後23℃恒温室で30分放置した後、厚さを測定した。
【0156】
〔5〕針侵入温度
JIS K7196に準拠し、プレス成形機により溶融温度190℃にて10分加熱し、冷却温度20℃にて5分冷却して作製した厚さ2mmの試験片を用いて、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kg/cm2の圧力をかけ、TMA曲線より、0.1mm、0.5mm深さの針進入温度(℃)を求めた。
【0157】
〔6〕メルトテンション
メルトテンションは、キャピラリーレオメーターを用いて、押出温度190℃、押出速度10mm/min、押出ノズル径2.095mm、ノズル長さ8mm、引取り速度4m/minで測定される。
【0158】
〔7〕溶融伸び(最大引取速度)(EB)、最大溶融張力(P)
溶融伸び(最大引取速度)(EB:〔m/min〕)、最大溶融張力(P:〔g〕)は、キャピラリーレオメーターを用いて、押出温度190℃、押出速度10mm/min、押出ノズル径2.095mm、ノズル長さ8mmで、引取り速度を変化させて測定される。
【0159】
〔8〕半結晶化時間
プレス成形機によりシートを作製し、DSCにより温度200℃にて5分間アニーリングし、320℃/minの降温速度320℃/minで110℃、120℃での半結晶化時間の測定を行った。
【0160】
〔9〕発泡倍率
得られた発泡用熱可塑性エラストマー組成物を、プレス成形機で溶融温度170℃にて3mmのシートを作成し、その後170℃ポリエチレンテレフタレート(PET)不織布を用いて裏打ちシートを作成した。スペーサーでPET裏打ちシートを挟み、200℃のオイルバス中で発泡させた。その後、冷水に投入して冷却固化させた。発泡後のシート(t2)を発泡前のシート厚み(t1)で除した値(t2/t1)を発泡倍率として求めた。
【0161】
〔10〕発泡セルの状態
得られた発泡成形品の発泡層を切断し、気泡生成状態を実体顕微鏡(10倍)にて観察した。
発泡セルの状態は下記のように評価した。
◎ 気泡の状態が均一で、気泡の破れ、裂け等がみられない。
○ 気泡の状態が一部不均一であるが、気泡の破れ、裂け等がみられない。
△ 気泡の状態が不均一であり、気泡の破れ、裂け等が一部みられる。
× 気泡の破れ、裂け等が激しい、もしくは膨れが発生し、評価不能である。
【0162】
[重合例1]シンジオタクティックプロピレン・ブテン・エチレン共重合体の合成
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、100mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン480gおよびトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を35℃に昇温し、プロピレンで0.54MPcに加圧し、次いでエチレンで0.62MPcに加圧した。その後、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.005mmolとアルミニウム換算で1.5mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温35℃、エチレン圧0.62MPcを保ちながら5分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下、130℃で12時間乾燥し、ポリマーを36.1g得た。
【0163】
得られたポリマーは、プロピレンから導かれる構成単位が61.3mol%、エチレンから導かれる構成単位が10.3mol%、1−ブテンから導かれる構成単位が28.4mol%であり、極限粘度[η]は2.67dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−27.7℃であり、DSCにおいて融解ピークは観測されず、GPCによる分子量分布(Mw/Mn:ポリスチレン換算)は2.0であった。1,2,4−トリクロロベンゼン溶液中、テトラメチルシランを基準物質として測定した13C−NMRスペクトルによれば、約20.0〜21.0ppmに観測されるプロピレン単位のメチル基(プロピオンメチル基)の吸収の総和は、約19.0〜22.0ppmに観測されるプロピレン単位のメチル基に帰属される吸収強度の0.8であった。
【0164】
[実施例1]
油展されたエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPT−1)(エチレン単位含量/プロピレン単位含量/非共役ジエン単位含量=78モル%/22モル%/4.5重量%;ヨウ素価:13;極限粘度[η]:3.4dl/g;ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]74;油展量 ゴム100重量部に対して、ゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)を40重量部)30重量部と、油展されたエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPT−2)(エチレンから導かれる単位/プロピレンから導かれる単位=78モル%/22モル%;ヨウ素価13;極限粘度[η]3.4dl/g;ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]53;油展量 ゴム100重量部に対して、ゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)を62重量部)50重量部と、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が10g/10分であるブロックタイプのポリプロピレン(エチレン単位含量14モル%、常温でのn−デカン可溶分11.6wt%、融点161℃、PP−1)20重量部と、架橋剤として有機過酸化物(パーヘキサ25B、日本油脂(株)製)0.42重量部と、架橋助剤としてジビニルベンゼン0.28重量部と、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、日本チバガイギー(株)製)0.1重量部とをヘンシェルミキサーで充分に混合し、押出機(品番 KTX−46、神戸製鋼(株)製、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C14 200℃、ダイス温度:200℃、スクリュー回転数:400rpm、押出量:80kg/h)にてゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)20重量部をシリンダーに注入しながら混練を行い、部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−0)のペレットを得た。尚、x−0中のPP−1成分のMwは、1.70×105であった。
【0165】
得られた部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−0)は構成する成分のうち、原料として用いたエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムを、部分的また完全に架橋されたエチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)とみなす。
【0166】
次いで、熱可塑性エラストマー組成物(x−0)40重量部と、メルトフローレート(ASTM−D−1238;230℃、2.16kg荷重)が1.0g/10分であり、エチレン含量が40モル%、n−デカン可溶分が56wt%、融点:153℃であるプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)60重量部と、カーボンマスターバッチとして40%濃度カーボンマスターマッチ2.5重量部と、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、日本チバガイギー(株)製)0.2重量部と、耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤(チヌビン326、日本チバガイギー(株))0.3重量部とをヘンシェルミキサーで充分に混合し、押出機(品番 KTX−46、神戸製鋼(株)製、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C14 200℃、ダイス温度:200℃、スクリュー回転数:400rpm、押出量:80kg/h)にて混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0167】
各原料の配合比を表1に示す。
なお、表2に示すように、熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分は、部分的また完全に架橋されたエチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A):20重量%、ポリプロピレン(B):9重量%、ポリプロピレンブロック共重合体(C):71重量%であった。
【0168】
次に、得られた熱可塑性エラストマー組成物100重量部当たり、発泡核剤としてアゾジカルボンアミド2重量部を添加し、溶融混練して発泡用熱可塑性エラストマー組成物を得た。この発泡用熱可塑性エラストマー組成物をプレス成形機で溶融温度170℃にて3mmのシートを作成し、その後170℃ポリエチレンテレフタレート(PET)不織布を用いて裏打ちシートを作成した。スペーサーでPET裏打ちシートを挟み、200℃のオイルバス中で発泡させた。その後、冷水に投入して冷却固化させた。
熱可塑性エラストマー組成物および発泡成形体を上述した方法にしたがって評価した。結果を表3に示す。
【0169】
[実施例2]
実施例1において、部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−0)を60重量部、プロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)を40重量部とした以外は実施例1と同様に行った。
【0170】
実施例2で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。
【0171】
[実施例3]
実施例1において、部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−0)を41重量部と、プロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)10重量部、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;190℃、2.16kg荷重)が4g/10分である非架橋のエチレン・ブテン−1共重合体ゴム(エチレン単位含量:82モル%、融点:50.3℃、極限粘度[η]=2.4dl/g、EBR−1)を29重量部、ポリプロピレン(E)(融点162℃、常温n−デカン可溶分5.3wt%、Mw:3.00×105)を17重量部、重合例1で得られたシンジオタクティックプロピレン・ブテン・エチレン共重合体を3重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、押出機にてゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)20重量部をシリンダーに注入しながら混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。尚、ポリプロピレン(E)は、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が50g/10分であるブロックタイプのポリプロピレン(エチレン単位含量:14モル%、融点:162℃、常温のn−デカン可溶分:11.4wt%、Mw:1.75×105、PP−3)を47重量部と、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が4g/10分である高メルトテンションポリプロピレン(融点:162℃、常温のn−デカン可溶分:0.5wt%、Mw:4.2×105、メルトテンション:12gf、Mw/Mn:8、高分子量成分の極限粘度[η]:9dl/g、高分子量成分の含量:20wt%)(PP−4)を53重量部よりなる。
【0172】
実施例3で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。
【0173】
[実施例4]
実施例3において、エチレン・ブテン−1共重合体ゴム(EBR−1)を26重量部、重合例1で得られたシンジオタクティックプロピレン・ブテン・エチレン共重合体を6重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、押出機にてゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)20重量部をシリンダーに注入しながら混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0174】
実施例4で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。
【0175】
[実施例5]
EPT−1 30重量部と、EPT−2 50重量部とPP−1 20重量部と、架橋剤として有機過酸化物(パーヘキサ25B、日本油脂(株)製)0.52重量部と、架橋助剤としてジビニルベンゼン0.32重量部と、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、日本チバガイギー(株)製)0.1重量部とをヘンシェルミキサーで充分に混合し、押出機(品番 KTX−46、神戸製鋼(株)製、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C14 200℃、ダイス温度:200℃、スクリュー回転数:400rpm、押出量:80kg/h)にてゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)20重量部をシリンダーに注入しながら混練を行い、部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−1)のペレットを得た。尚、x−1中のPP−1成分のMwは1.5×105であった。
【0176】
部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−1)を41重量部と、プロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)10重量部、エチレン・ブテン−1共重合体ゴム(EBR−1)を29重量部、ポリプロピレン(E)を17重量部、重合例1で得られたシンジオタクティックプロピレン・ブテン・エチレン共重合体を3重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、押出機にてゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)20重量部をシリンダーに注入しながら混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0177】
実施例5で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。
【0178】
[実施例6]
実施例5において、部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−1)を31重量部と、プロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)20重量部、エチレン・ブテン−1共重合体ゴム(EBR−1)を29重量部、ポリプロピレン(E)を17重量部、重合例1で得られたシンジオタクティックプロピレン・ブテン・エチレン共重合体を3重量部としたこと以外は実施例5と同様にして、押出機にてゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)20重量部をシリンダーに注入しながら混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0179】
実施例6で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。
【0180】
[実施例7]
実施例3において、プロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)10重量部のかわりに、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が5g/10分である非架橋で低結晶性のエチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン単位含量:81モル%、融点:21℃、常温でのn−デカン可溶分95wt%、EPR−1)を7重量部と、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が0.5g/10分であるプロピレン単独重合体であるポリプロピレン(融点:160℃、常温のn−デカン可溶分:1.2wt%、PP−5)を3重量部とを使用し、ポリプロピレン(E)(融点:162℃、常温n−デカン可溶分:6.5wt%、Mw:2.90×105)を19重量部としたこと以外は実施例3と同様にして、押出機にてゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)20重量部をシリンダーに注入しながら混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。なお、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)として、前記EPR−1とPP−5を用い、溶融混練することで共重合体(C)(融点:160℃、常温のデカン可溶分:67wt%)を得た。
【0181】
尚、ポリプロピレン(E)は、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が50g/10分であるブロックタイプのポリプロピレン(エチレン単位含量:14モル%、融点:162℃、常温のn−デカン可溶分:11.4wt%、Mw:1.75×105、PP−3)を53重量部と、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が4g/10分である高メルトテンションポリプロピレン(融点:162℃、常温のn−デカン可溶分:0.5wt%、Mw:4.2×105、メルトテンション:12gf、Mw/Mn:8、高分子量成分の極限粘度[η]:9dl/g、高分子量成分の含量:20wt%)(PP−4)を47重量部よりなる。
【0182】
実施例7で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。
【0183】
[比較例1]
実施例1において、部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−0)100重量部とし、PP−2を使用しなかった以外は、実施例1と同様に熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0184】
比較例1で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。なお、比較例1のMFRは、ASTM D 1238に準拠して、230℃、10kg荷重にて測定した。
【0185】
[比較例2]
実施例1において、部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−0)を使用せず、プロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)100重量部とした以外は、実施例1と同様に熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0186】
比較例2で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。
【0187】
[比較例3]
部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−1)を51重量部と、エチレン・ブテン−1共重合体ゴム(EBR−1)を22重量部、ポリプロピレン(E)(融点:162℃、常温n−デカン可溶分:6.9wt%、Mw:2.80×105)を21重量部、重合例1で得られたシンジオタクティックプロピレン・ブテン・エチレン共重合体を6重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、押出機にてゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)20重量部をシリンダーに注入しながら混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0188】
尚、ポリプロピレン(E)は、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が50g/10分であるブロックタイプのポリプロピレン(エチレン単位含量:14モル%、融点:162℃、常温のn−デカン可溶分:11.4wt%、Mw:1.75×105、PP−3)を57重量部と、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が4g/10分である高メルトテンションポリプロピレン(融点:162℃、常温のn−デカン可溶分:0.5wt%、Mw:4.2×105、メルトテンション:12gf、Mw/Mn:8、高分子量成分の極限粘度[η]:9dl/g、高分子量成分の含量:20wt%)(PP−4)を43重量部よりなる。
【0189】
比較例3で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。
【0190】
[比較例4]
部分的または完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(x−1)を45重量部と、エチレン・ブテン−1共重合体ゴム(EBR−1)を17重量部、ポリプロピレン(E)(融点162℃、常温n−デカン可溶分:7.1wt%、Mw:2.80×105)を17重量部、重合例1で得られたシンジオタクティックプロピレン・ブテン・エチレン共重合体を6重量部、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(G−1)(スチレン単位含量:30重量%、数平均分子量(Mn):100,000)16重量部として、実施例1と同様の方法で、押出機にてゴム用軟化剤(F−1)(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)20重量部をシリンダーに注入しながら混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0191】
尚、ポリプロピレン(E)は、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が50g/10分であるブロックタイプのポリプロピレン(エチレン単位含量:14モル%、融点:162℃、常温のn−デカン可溶分:11.4wt%、Mw:1.75×105、PP−3)を59重量部と、メルトフローレート(ASTM−D−1238−65T;230℃、2.16kg荷重)が4g/10分である高メルトテンションポリプロピレン(融点:162℃、常温のn−デカン可溶分:0.5wt%、Mw:4.2×105、メルトテンション:12gf、Mw/Mn:8、高分子量成分の極限粘度[η]:9dl/g、高分子量成分の含量:20wt%)(PP−4)を41重量部よりなる。
【0192】
比較例4で用いた原料の配合比および熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分を表1〜2に示す。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、実施例1と同様にして発泡成形体を作製した。結果を表3に示す。
【0193】
【表1】

【0194】
【表2】

【0195】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンから導かれる単位、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位および非共役ポリエンから導かれる単位を含み、部分的または完全に架橋されたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム(A)15〜85重量%と、
示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、常温n-デカン可溶分が30重量%未満、およびゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1.80×105以下のポリプロピレン(B)5〜40重量%と、
示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、および常温n−デカン分が30〜90重量%であるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)5〜80重量%(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100重量%とする)と
を含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
さらに前記(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対して、
エチレンから導かれる構成単位(a)と、炭素数3〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(b)とを、(a)/(b)=60/40〜95/5のモル比で含有する非架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(D)50〜140重量部と、
示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140〜170℃、常温n−デカン可溶分が30重量%未満、およびゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1.80×105を超える、ポリプロピレン(E)15〜85重量部と、
ゴム用軟化剤(F)20〜130重量部と、
示差走査熱量分析(DSC)で得られる融点が140℃未満か、または融解ピークが存在しないシンジオタクティックα−オレフィン系共重合体(G)2〜35重量部
を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、
該共重合体(G)が、
プロピレンから導かれる構成単位(G−1)、エチレンから導かれる構成単位(G−2)、および炭素数4〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(G−3)、必要に応じて、共役ポリエンまたは非共役ポリエンから導かれる構成単位(G−4)とを含み、
(G−1)、(G−2)および(G−3)の合計100モル%中、
(G−1)を30〜79モル%、(G−2)を1〜30モル%および(G−3)を10〜50モル%(ただし、(G−2)および(G−3)の合計を21〜70モル%とする)含み、
(G−1)、(G−2)および(G−3)の合計100モル%に対して、
(G−4)を0〜30モル%の量で含み、かつ、
1,2,4−トリクロロベンゼン溶液中、テトラメチルシランを基準物質として共重合体(G)の13C−NMRを測定したときの約20.0〜21.0ppmに観測されるプロピレン単位のメチル基の吸収の総和が、約19.0〜22.0ppmに観測されるプロピレン単位のメチル基の吸収の総和の0.5以上であり、かつ、実質的にシンジオタクティック構造であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記ポリプロピレン(E)が、190℃におけるメルトテンションが3.0gf以上であるポリプロピレン(e)を含み、
ポリプロピレン(E)100重量部中、該ポリプロピレン(e)を30〜80重量部の量で含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.1(g/10分)以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物から得られた厚さ2mmの成形体を用いて、
JIS K6253に準拠して測定したショアーA硬度が85以下であり、かつ
JIS K7196に準拠して測定した0.5mm針進入温度が80℃以上である
ことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
P×0.8≦−35×Ln(EB)+178≦P×1.2 (Lnは自然対数) (1)
EB:温度190℃での測定される溶融伸び(最大引取速度)
P:温度190℃での切断時の最大溶融張力
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物から得られた厚さ2mmの成形体を用いて、
JIS K6262に準拠して測定した70℃での圧縮永久歪が、60%以上であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。

【公開番号】特開2010−241933(P2010−241933A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91234(P2009−91234)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】