説明

熱圧着用シート

【課題】熱伝導性、耐久性が高く、帯電防止効果が高い熱圧着用シートを提供する。
【解決手段】本発明の熱圧着用シート10は、圧着装置により加熱加圧して異方導電性フィルム13を介して接続対象物同士の電極12,14間を電気的接続する際に、圧着装置の加熱圧着ツールと接続対象物との間に介在されて使用する熱圧着用シート10において、導電性繊維織物と熱伝導性シリコーンゴム組成物を一体化する。前記シリコーンゴム組成物は、熱伝導性の無機粉末又は金属粉末から選択された少なくても1種類の熱伝導性充填剤を含有し、前記織物は炭素繊維を含み、前記熱圧着用シートの熱伝導率は1.5W/m−K以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気機器部品の圧着結合に用いられ、熱圧着機の圧着子の熱を被圧着体に伝達し、且つ熱圧着時の加圧の不均一を緩衝する事を目的とする熱圧着用シートに関する。さらに詳しくは、熱伝導性に優れ、耐久性が高く、帯電防止効果が高い熱圧着用シートを提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの画素電極と駆動用半導体を搭載したフレキシブル基板(TAB基板)のアウターリードの接合には、狭ピッチの電極どうしを接続するのに最適な異方導電性フィルム(ACF)が多く用いられて接合されている。この液晶パネルの画素電極とTAB基板のアウターリードとの接続に使用する異方導電性フィルムを熱圧着する際に、熱圧着装置の加熱圧着ツールとTAB基板の間に挟み込んで異方導電性フィルムを加熱硬化する目的及び熱圧着面の平行度を高める目的で、従来から使用されている熱圧着用シートとしては、下記の特許文献1〜3に記載のようなシリコーンゴム系のシートや、熱伝導性シリコーンゴムシート(富士高分子工業株式会社製商標名“サーコン”)が多く使用されている。
【特許文献1】特開平5−198344号公報
【特許文献2】特開平7−117175号公報
【特許文献3】特開平10−219199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、最近の液晶パネルの画素電極とTAB基板のアウターリード電極間ピッチは高精細化し、且つ大型化に伴い、従来の熱圧着用シートでは性能が充分でなく、液晶パネルの大型化に伴い熱圧着時の均熱性を確保する為に、熱圧着時間を長時間にする傾向があり、液晶パネルの生産性が低下する問題がある。同時に熱圧着時には熱圧着装置の加熱ツールのヒーター温度を高く設定する必要があるため、熱圧着用シートの耐久性が低下し所定の熱圧着回数に到達しない問題もある。さらには、液晶パネルの画素電極とTAB基板のアウターリードどうしを熱圧着する際に生じる静電気で液晶パネルや駆動用半導体が破損するという問題が多く発生している。
【0004】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、熱伝導性、耐久性が高く、帯電防止効果が高い熱圧着用シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の熱圧着用シートは、圧着装置により加熱加圧して異方導電性フィルムを介して接続対象物同士の電極間を電気的接続する際に、圧着装置の加熱圧着ツールと接続対象物との間に介在されて使用する熱圧着用シートにおいて、導電性繊維織物と熱伝導性シリコーンゴム組成物を一体化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱圧着用シートは、熱伝導性に優れ、耐久性が高く、帯電防止効果が高く、離型性が高いので、熱圧着機における高ショットサイクル化が実現できる。また、大きな熱圧着面を有する液晶パネルの画素電極とTAB基板のアウターリードなど高精細化された接続電極部の熱圧着を短時間で効率よく異方導電性フィルムを用いて接合ができるため、接続工程の生産性向上に大きく寄与する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、熱伝導性が高いシリコーンゴム組成物と、熱伝導性、機械的強度にすぐれ、電気導電性である炭素繊維織物を複合一体化したシート状とする。本発明の熱圧着用シートは液晶パネルの画素電極とTAB基板のアウターリード電極間を異方導電性フィルムによって熱圧着する場合に用いる熱圧着用シートであって、熱伝導性シリコーンゴム組成物と炭素繊維織物を備える。前記シリコーンゴム組成物の熱伝導率は、0.5W/m−K以上であることが好ましい。また前記熱圧着用シートの25℃における熱伝導率(JIS−R2616、非定常熱線法)は1.5W/m−K以上が好ましい。破れ耐久性は150回以上であることが好ましい。
【0008】
本発明の熱圧着用シートは液晶パネルの異方導電性フィルムによる熱圧着に限られることなく、熱可塑樹脂を含むさまざまな熱圧着工程に使用することができる。
【0009】
本発明の熱圧着用シートは液状シリコーンゴムに熱伝導性の無機粉末又は金属粉末から選択される少なくても1種類の熱伝導性充填剤を主成分として構成される熱伝導性シリコーンゴム組成物と繊維織物を複合一体化する事により得られる。順に構成原材料を説明する。
(1)オルガノポリシロキサン組成物
オルガノポリシロキサン組成物としては、付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物、有機過酸化物硬化性オルガノポリシロキサン組成物とする事が好ましい。
【0010】
付加反応硬化型の場合は次の組成物とする。
a.1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン 100質量部
b.1分子中に平均2個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.10〜50質量部
c.付加反応触媒 触媒量(0.5〜1000ppm)
aのオルガノポリシロキサンの構造は、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子両末端がトリオルガノシロキサン基で封鎖された基本的には直鎖状構造を有するジオルガノポリシロキサンであるが、部分的には分岐状の構造、環状構造でも良い。このアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの粘度(又は重合度)は特に制限が無く、室温で液状のものからガム上のものまで使用可能であるが、通常、平均重合度50〜20,000、好ましくは100〜10,00、より好ましくは100〜2,000程度のものが使用される、平均重合度が50未満の時は十分効果せずゴム物性が不十分であるので100以上とした。熱伝導性シリコーンゴム組成物の構成要素である液状シリコーンゴムの主成分は、上記の様なオルガノポリシロキサンで、通常、液状付加反応型シリコーンゴムとして使用されている25℃における粘度が5,000CP以上、好ましくは5,000CPから100,000CPがよい。
【0011】
bの架橋剤は1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖途中のいずれに位置していても良い。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、環状、分岐状、3次元構造状構造の何れでも良いが、1分子中のケイ素原子の数は通常2〜300個、好ましくは4〜150個程度で液状のものが好ましい。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、100質量部に対して0.10〜50質量部、より好ましくは0.30〜20質量部である事が好ましい。
【0012】
cの付加反応触媒は塩化白金酸、塩化第2白金、塩化白金酸と1価アルコールの反応物、塩化第2白金とアレフィン酸との錯体、白金ビスアセトアセテートの白金系触媒、パラジュウム系触媒などが上げられる。この付加反応触媒の添加量は触媒量とする事が出来、好ましくは0.5〜1000ppm、より好ましくは1〜500ppmである事が好ましい。
【0013】
有機過酸化物硬化型の場合は次の組成物とする。
(i)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン 100質量部
(ii)有機過酸化物 触媒量(0.1〜10質量部)
(iii)のオルガノポリシロキサン組成物の構造は成分の1分子中に平均2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン組成物で、前記aの成分と同じ物を使用する事が出来る。
【0014】
の有機過酸化物としては、シリコーンゴム用有機過酸化物として市販されている、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5ジメチル2,5ジ(ターシャリブチルパーオキシヘキサン)、パラクロルベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリブチルパーオキサイド等があげられる。有機過酸化物の配合量は、触媒量であり、通常(i)のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜10質量部である事が好ましい。
(2)熱伝導性充填剤は無機粉末又は金属粉末であり、前記オルガノポリシロキサン組成物に熱伝導性を付与する為に混合される。オルガノポリシロキサン組成物に熱伝導性充填剤を混合したものを熱伝導性シリコーンゴム組成物と言う。
【0015】
無機粉末には、金属酸化物系粉末としては、アルミナ粉末,酸化マグネシュウム粉末,酸化ベリリウム粉末,酸化クロム粉末,酸化チタン粉末などがあげられ。金属窒化物系粉末としては、窒化ホウ素粉末,窒化アルミニュウム粉末などがあげられ。金属炭化物系粉末としては、炭化ホウ素粉末,炭化チタン粉末,炭化ケイ素粉末などがあげられ。軟磁性合金粉末としては、Fe-Si合金,Fe-Al合金,Fe-Si-Al合金などがあげられる。さらにフェライト粉末。金属系粉末としては、アルミニュウム粉末,銅粉末,ニッケル粉末などがあげられる。また、これら2種類以上の混合物があげられる。これらの粉末の形状としては球状,針状,円盤状,棒状,不定形状が上げられる。
【0016】
本発明の熱伝導性シリコーンゴム組成物を硬化して得られる熱伝導性シリコーンゴム硬化物に電気絶縁性が必要とされる場合の熱伝導性充填剤は、金属酸化物系粉末,金属窒化物系粉末,金属炭化物系粉末である事が好ましく、より好ましくはアルミナ粉末である事が好ましい。
【0017】
アルミナ粉末の平均粒度は限定されないが、0.1〜100μmの範囲である事が好ましく、より好ましくは0.1〜50μmの範囲である事が好ましい。又、粒子径が5〜50μmである球状アルミナ粉末と平均粒子径が0.10〜10μmである球状もしくは不定形状アルミナ粉末である事が好ましい。
【0018】
又、球状のアルミナ粉末の含有量は30〜60質量%の範囲であり、0.10〜5μmである球状もしくは不定形状のアルミナ粉末は10〜50質量%の範囲である事が好ましい。
【0019】
熱伝導性シリコーンゴム組成物への具体的なアルミナ粉末の具体的な含有量は、前記、熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物としてあげた、付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物又は有機過酸化物硬化性オルガノポリシロキサン組成物、100質量部に対し100〜1000質量部の範囲である事が好ましく、さらには200〜500質量部の範囲である事がより好ましい。
【0020】
アルミナ粉末の添加量が上記範囲の下限未満であると、得られる熱伝導性シリコーンゴム硬化物の熱伝導率が不十分となり、上限を超えると、得られる熱伝導性シリコーンゴム組成物の粘度が高くなり過ぎて、アルミナ粉末が十分均一に分散混合できず、均一な物理的特性を得る事が出来ない。
(3)無機粉末又は金属粉末の熱伝導性充填剤の表面処理は前記アルミナ粉末を多量に充填混合しても充填混合作業性が良好である熱伝導性シリコーンゴム組成物を得るために市販のシランカップリング剤で表面処理したアルミナ粉末を充填する。熱伝導性充填剤へのシランカップリング剤の表面処理の方法は、直接処理法,インテグラルブレンド法,などを用いる事が出来る。
【0021】
直接処理法は従来技術である乾式法,スラリー法,スプレー法,インテグラルブレンド法,マスターバッチ法などの方法が有り、これらのいずれかの方法で熱伝導性充填剤の表面処理を行う。
(4)炭素繊維織物布
構成要素である織物布は炭素繊維単体、又は炭素繊維とガラス繊維やアラミド繊維、合成繊維、天然繊維などと組み合わせて織り上げた複合織物があり、それらの織組織(クロスの織り方)には、平織り、綾織り,朱子織り、からみ織り、摸紗織りなどの代表的な織り方がある。織物の主たる構成要素である炭素繊維はPAN系,ピッチ系,レーヨン系などの種類があるが、その複合織物化、織組織、炭素繊維の種類、組合せに制限は無く、市販されているものから選択して使用する事が出来る。さらに前記、織物と熱伝導性シリコーンゴム組成物の相互の接着力を向上する為に、ケイ素原子に炭素原子を介して接合された有機官能基を持つシランカップリング剤を使用する事が出来る。
【0022】
シランカップリング剤は一般式Y〜SiX3で示されるもので、Yはアミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基、メルカプト基に代表される反応性有機官能基を示し、Xはアルコキシ基に代表される加水分解性基をそれぞれあらわす。このシランカップリング剤を織物と熱伝導性シリコーンゴムとの接着力を向上する為に界面に適宜選択して用いる事が出来る。
【0023】
本発明では、炭素繊維織物は厚さ0.10mm〜0.55mmの平織り織物(東レ株式会社製、製品名“トレカ”)を使用できる。
(5)積層一体化
連続塗工装置で炭素繊維を含む織物の片面表面に、前記熱伝導性シリコーンゴム組成物を塗工し、例えば100℃で5分間、加熱硬化して熱圧着用シートを得る。炭素繊維を含む織物(A)と熱伝導性シリコーンゴム組成物(B)の割合は、A:B=1:0.5〜1:10の範囲が好ましい。熱伝導性シリコーンゴム組成物の硬化後の厚みは例えば0.25mm、単位面積当たりの質量は、例えば390g/m2である。また、熱伝導率は、ホットデスク法 熱物性測定装置 TP A−501 京都電子工業(株)製で測定したところ例えば1.75W/m−Kである。
【0024】
次に図面を用いて本発明の熱圧着シートとその使用方法を説明する。図1は本発明の一実施形態における熱圧着シート10の断面図であり、1は炭素繊維織物、2,3は熱伝導性シリコーンゴム組成物層である。熱伝導性シリコーンゴム組成物は炭素繊維織物1の内部に含浸され、一部は熱伝導性シリコーンゴム組成物層2,3を形成している。
【0025】
図2は本発明の一実施形態における熱圧着シート10の使用方法を示す断面図である。熱圧着シート10は圧着機ヘッド18のヒーター16とテープキャリアパッケージ(TCP)又はフレキシブル基板(TAB基板)11との間に介在させ、熱圧着時に融着樹脂が圧着機ヘッドのヒーター16にこびりつかないようにするために使用する。12,14は金属配線、13は異方導電性フィルム、15はガラス基板、17は圧着機ヘッドのプレス部である。
【実施例】
【0026】
以下実施例で本発明をさらに具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
(1)熱伝導性シリコーンゴム組成物の作成
一分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、100質量部(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名“エラストシルLR3303/20”)に熱伝導性フィラーとして酸化アルミニウム、AS−50、250質量部(昭和電工株式会社製、商品名“アルミナAL50”)を添加し、常温・常圧下で混合装置(プラネタリュウムミキサー、内容積5リットル)を用いて均一に分散混合した後、一分子中に少なくとも2個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン1質量部(東レダウコーニング株式会社製、商品名“RD−1”)を混合し、熱伝導性シリコーンゴム組成物を作成した。
(2)織物
次に織物を準備した。東レ株式会社製、炭素繊維織物“トレカ”(同社登録商標)、CO6151B(厚み、0.11mm、平織り、目付け92g/m2)を準備し、この織物の表面にシランカップリング剤(GE東芝シリコーン社製、商品名“XP82−B1601”)を塗布し、十分風乾した後、100℃で10分間、熱風循環式乾燥機に入れて乾燥した。このようにしてシラン処理された炭素繊維織物を作成した。
(3)熱圧着用シートの作成
前記炭素繊維織物を縦30cm、横30cmに切断し、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に配置し、さらにその上に前記熱伝導性シリコーンゴム組成物を計量して配置し、さらに別のPETフィルムをかぶせた後、圧延機を用いて全体を圧延し、厚さ400μmの板状とした。次に、PETフィルムを被せたまま熱風循環式乾燥機に投入し、100℃で5分間、硬化した。その後、熱風循環式乾燥機から取り出し十分冷却した後、両面のPETフィルムを剥ぎ取りほぼ中央付近に炭素繊維織物を内包した厚み200μmの熱圧着用シートを得た。炭素繊維織物(A)と熱伝導性シリコーンゴム組成物(B)の割合は、A:B=1:1であった。
【0028】
(比較例1)
(1)熱伝導性シリコーンゴム組成物の作成
一分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、100質量部(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名“エラストシル LR3303/20”)に熱伝導性フィラーとして酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、商品名“AS−50”)、250質量部を添加し、常温・常圧下で混合装置(プラネタリュウムミキサー、内容積5リットル)を用いて均一に分散混合した。その後、一分子中に少なくとも2個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン1質量部(東レダウコーニング株式会社製、商品名“RD−1”)を混合し、熱伝導性シリコーンゴム組成物を作成した。
(2)織物
次に織物を準備した、ガラス繊維織物、(株式会社有沢製作所製、商品名“EPC030”、厚み0.034mm、平織、目付け26g/m2)織物の表面にシランカップリング剤(GE東芝シリコーン社製、商品名“XP82−B1601”)を塗布、十分風乾した後、100℃X10分間、熱風循環式乾燥機に投入し乾燥してシラン処理されたガラス繊維織物を作成した。
(3)熱圧着用シートの作成
ガラス繊維織物、EPC030を縦30cm、横30cmに切断し厚さ100μmのPETフィルムの上に乗せ、さらにその上に前記熱伝導性シリコーンゴム組成物を計量した後のせ、さらに別のPETフィルムをかぶせた後、圧延機を用いて全体を圧延し厚さ400μmの板状とし、PETフィルムのまま熱風循環式乾燥機に投入し100℃で5分間、硬化した後、熱風循環式乾燥機から取り出し十分冷却した後、両面のPETフィルムを剥ぎ取りほぼ中央付近にガラス繊維織物を内包した厚み200μm試験片を得た。ガラス繊維織物(X)と熱伝導性シリコーンゴム組成物(B)の割合は、X:B=1:5であった。
【0029】
(比較例2)
(1)熱伝導性シリコーンゴム組成物の作成
一分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、100質量部(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名“エラストシル LR3303/20”)に熱伝導性フィラーとして酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製アルミナ、商品名“AS−50”)、250質量部を添加し、常温・常圧下で混合装置(プラネタリュウムミキサー、内容積5リットル)を用いて均一に分散混合した後、一分子中に少なくとも2個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン1質量部(東レダウコーニング株式会社製、商品名“RD−1”)を混合し、熱伝導性シリコーンゴム組成物を作成した。
(2)熱圧着用シートの作成
厚さ100μmのPETフィルムの上に前記熱伝導性シリコーンゴム組成物を計量してのせ、さらに別のPETフィルムをかぶせた後、圧延機を用いて全体を圧延し厚さ400μmの板状とし、PETフィルムのまま熱風循環式乾燥機に投入し100℃で5分間、硬化した後、熱風循環式乾燥機から取り出し十分冷却した後、両面のPETフィルムを剥ぎ取り厚み200μm試験片を得た。
【0030】
(耐久性テストの測定)
以上の実施例品、比較例品を用いて耐久性を測定した。耐久性は図3A−Bに示す測定装置を用いて測定した。ガラス基板21の上に熱電対22を置き、その上に熱圧着用シート10を置き、ヒーター24を内蔵する圧着ヘッド23を図3A−Bのように取り付けた。ツール幅は1.5mmとした。そして、実際の液晶パネルの画素電極とTAB基板のアウターリード電極間を異方導電性フィルムによって熱圧着する組立工程における熱圧着機の条件、すなわち圧着ツール温度:300℃、圧着ツール圧力:3MPa、加圧時間:15秒で繰り返し加圧し、亀裂・破れが発生するまでのショット数を測定した。
【0031】
その結果、比較例1は100ショット及び比較例2は30ショットであったのに対して、本発明の実施例品は180ショットの耐久性があった。上記の試験結果の様に同一熱圧着条件下で比較した場合、本発明の実施例品は、1.8倍〜6倍の耐久性を有していることがわかり、大幅な工程改善と資材コストの低減になった。
【0032】
以上の結果を図4に示す。すなわち図4は本発明の実施例と比較例のACF緩衝シート温度曲線である。図4から明らかなとおり、本発明の実施例品は熱伝導性にも優れるので、ツール温度を同じにセットしても、到達温度は高いことが確認できた。
【0033】
(静電気テストの測定)
次に静電気電圧を測定した。実施例1,比較例1,比較例2のシートを縦10cm、横10cmの方形に各2枚作成し相互を5秒間こすり合わせた後、高精度静電気センサー(キーエンス株式会社製、商品名“SK−030/200”)から7cmはなれたところに置き、測定状態とし、5秒後の静電気電圧を測定した結果、比較例1及び比較例2に比較して実施例1の静電気電圧は低く十分目的を果たし、液晶パネルの画素電極と駆動用半導体を搭載したフレキシブル基板(TAB基板)のアウターリードの接合には、狭ピッチの電極どうしを接続する際に生じる静電気により液晶パネルや駆動用半導体が破損する問題が解決できた。
【0034】
表1に実施例1及び比較例1及び2の特性を比較した。
【0035】
【表1】

(備考1)ホットデスク法 熱物性測定装置 TP A−501 京都電子工業(株)製によって測定した。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の一実施形態における熱圧着シートの断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態における熱圧着シートの使用方法を示す断面図である。
【図3】図3Aは本発明の一実施例における耐久性の測定装置を示す斜視図、図3Bは同断面図である。
【図4】図4は本発明の一実施例と比較例のACF緩衝シート温度曲線である。
【符号の説明】
【0037】
1 炭素繊維織物
2,3 熱伝導性シリコーンゴム組成物層
10 熱圧着シート
11 TCPはTAB基板
12,14 金属配線
13 異方導電性フィルム
15 ガラス基板
16 ヒーター
17 圧着機ヘッドのプレス部
18 圧着機ヘッド
21 ガラス基板
22 熱電対
23 圧着ヘッド
24 ヒーター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧着装置により加熱加圧して異方導電性フィルムを介して接続対象物同士の電極間を電気的接続する際に、圧着装置の加熱圧着ツールと接続対象物との間に介在されて使用する熱圧着用シートにおいて、
導電性繊維織物と熱伝導性シリコーンゴム組成物を一体化したことを特徴とする熱圧着用シート。
【請求項2】
前記シリコーンゴム組成物は、熱伝導性の無機粉末又は金属粉末から選択された少なくても1種類の熱伝導性充填剤を含有する請求項1に記載の熱圧着用シート。
【請求項3】
前記シリコーンゴム組成物の熱伝導率は、0.5W/m−K以上である請求項1又は2に記載の熱圧着用シート。
【請求項4】
前記織物は、ポリアクリロニトリル(PAN)系,ピッチ系,及びレーヨン系から選択された少なくとも一つの炭素繊維で織られた織物、前記炭素繊維とガラス繊維、又は炭素繊維とアラミド繊維を組み合わせて織られた織物である請求項1に記載の熱圧着用シート。
【請求項5】
前記熱圧着用シートの熱伝導率は、1.5W/m−K以上である請求項1〜4のいずれかに記載の熱圧着用シート。
【請求項6】
前記熱圧着用シートの全体の厚さが0.10mm〜10.0mmの範囲である請求項1〜5のいずれかに記載の熱圧着用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−128829(P2007−128829A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322657(P2005−322657)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000237422)富士高分子工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】